PDF 512kb - 都市未来総合研究所

2011
7
July
トピックス1
東京23区における住宅系利用地の地価動向と
賃貸マンションの投資収益性
2
トピックス2
震災後の小売販売額と商業施設取引の状況
6
マンスリーウォッチャー
特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化促進について
東日本大震災で被災された皆様にお悔やみ、
お見舞いを申し上げます。
被災された地域が一刻も早く復興できますよう、
心よりお祈り申し上げます。
8
東京23区における住宅系利用地の地価動向と
賃貸マンションの投資収益性
東京23区内の住宅地地価は、全般的に下げ止まり傾向にあります。
その中で、賃貸マンションの投資収益性についての水準、地区ごとの水準格差、またその要因
についてシミュレーションを行い、特性を整理しました。
(本稿の使用データは2011年初頭(東日本大震災発生前)のものです。
)
東京23区の住宅地地価は下げ止まり傾向。都心部では一部で上昇もみられる。
都心部では一部で上昇もみられる。
東京23区の住宅地地価は下げ止まり傾向。
万円/㎡の水準となりました[図表1-2]。中央
区では個々の地点をみても下落地点はみられ
ず、一方、2%以上上昇した地点が半数以上を
占めています[図表1-3]。千代田区、港区、
渋谷区でも、2011年1月時点において前年比
変動率0%以上の地点が2〜6割と、
横ばいある
いは上昇地点の比率が他の区より多くなって
います[図表1-3]。ただしこれらの区では前年
比−2%以下の地点も4〜6割を占めており、
地
点間のばらつきが大きい特徴がみられます。
その他の地区をみると
([図表1-2])、城西
地区、城東地区において前年からの下落率が
小さく、下げ止まりの傾向が強くなっていま
す。一方、都心周辺4区の文京区、台東区や
城北地区の足立区では、いずれも2011年1月
時点の前年比変動率が平均値ベースで−3%
前後と大きくなっています。またいずれの区
も前年比変動率−2%以下の地点が8割以上を
占めており、
住宅系利用地の地価下落が依然、
大きい区となっています。
東京23区(以下、
「23区」
と記述)
の住宅系利
*1
用地 の地価は、下げ止まりの傾向が強くな
っています。同地価は2008年1月から2009年
1月にかけて、それまでの上昇基調から転じて
前年比−9%と大きく下落しましたが、その
後下落幅は縮小し、2011年1月には前年比
−1.7%となりました[図表1-1]。下げ止まり
の背景としては、都心部におけるマンション
の素地取得の活発化、値頃感のある住宅地で
の戸建住宅の需要増などが挙げられます。な
お商業地では、前年比下落率のピークは2010
年1月
(−15%)、2011年1月も前年比−4%と
下落しており、住宅系利用地よりも地価の下
げ止まりの動きが遅れています。
住宅系利用地の地価推移を地区別*2にみる
と、傾向に差がみられます。2010年以降で比
較すると、都心5区における下げ止まり傾向
が強いことが特徴としてみられます。なかで
も中央区は平均値ベースで上昇に転じてお
り、
2011年1月は前年に比べ2%超上昇し、
約80
[図表1-1]
東京23区における住宅系利用地の地価推移
(前年比変動率)
(%)
25
20
15
10
5
下げ止まり
傾向
0
2005年1月
2006年1月
2007年1月
2008年1月
2009年1月
2010年1月
2011年1月
-5
-10
2桁増(2008年1月値)
から
一転、急激な下落
-15
下落幅は
やや縮小
-20
住宅系利用地
商業地(参考)
※2004年1月〜2011年1月の全年次データのある調査地点データに基づく
資料:国土交通省「地価公示」より都市未来総合研究所作成
2
July, 2011 ────────────────────────────────── みずほ信託銀行 不動産トピックス
*1:2011年1月地価公示の用途が「住宅地」である調査地
点もしくは、他用途で周辺の土地の利用の現況に「マ
ンション」
または「住宅」の表記が含まれる調査地点を、
本稿において「住宅系利用地」
と表記する。
商業地は、2011年1月地価公示の用途が「商業地」の
調査地点。
*2:地区区分は以下のとおり
都 心 5 区:千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区
都心周辺4区:文京区・台東区・品川区・豊島区
城 南 地 区:目黒区・大田区・世田谷区
城 西 地 区:中野区・杉並区・練馬区
城 北 地 区:北区・荒川区・板橋区・足立区
城 東 地 区:墨田区・江東区・葛飾区・江戸川区
[図表1-2]
2011年1月の住宅系利用地の地価水準および前年比変動率
(万円/G)
200
(%)
180
4
3
160
2
140
1
120
100
0
80
−1
60
−2
40
−3
20
−4
0
千
代
田
区
中
央
区
港
区
新
宿
区
渋
谷
区
都心5区
文
京
区
台
東
区
品
川
区
豊
島
区
都心周辺4区
目
黒
区
世
田
谷
区
大
田
区
中
野
区
城 南
2011年1月公示価格平均(万円/G)
杉
並
区
練
馬
区
北
区
城 西
荒
川
区
板
橋
区
足
立
区
墨
田
区
城 北
江
東
区
葛
飾
区
江
戸
川
区
城 東
前年比変動率(2010年1月〜2011年1月)
※2010年1月、2011年1月の両データのある調査地点データに基づく
資料:国土交通省「地価公示」より都市未来総合研究所作成
[図表1-3]
同地価の前年比変動率のレンジ別構成比率
(2010年1月〜2011年1月)
2010年1月〜2011年1月に
地価が下落した調査地点数の比率
100%
80%
60%
40%
2010年1月〜2011年1月に
地価が横ばいあるいは上昇した調査地点数の比率
20%
0%
0%
千代田区
中 央 区
港
区
新 宿 区
渋 谷 区
文 京 区
台 東 区
品 川 区
豊 島 区
目 黒 区
大 田 区
世田谷区
中 野 区
杉 並 区
練 馬 区
北
区
荒 川 区
板 橋 区
足 立 区
墨 田 区
江 東 区
葛 飾 区
江戸川区
変動率≦-2%の地点
-2%<変動率<0%の地点
変動率=0%の地点
20%
40%
60%
80%
100%
都心
5区
都心周辺
4区
城南
城西
城北
城東
0%<変動率<2%の地点
2%≦変動率の地点
※2010年1月、2011年1月の両データのある調査地点データに基づく
資料:国土交通省「地価公示」より都市未来総合研究所作成
みずほ信託銀行 不動産トピックス ────────────────────────────────── July, 2011
3
23区における賃貸マンションの投資収益性は、都心周辺部および東部で高い傾向
都心周辺部および東部で高い傾向
23区における賃貸マンションの投資収益性は、
賃貸マンシ
ョ
ンのNOI利回り
は
賃貸マンショ
ョンのNOI利回り
ンのNOI利回りは
は
賃貸マンシ
賃貸マンシ
ョ
ンのNOI利回り
は
都心周辺4区、
城東地区で高位
都心周辺4区、城東地区で高位
城東地区で高位
都心周辺4区、
住宅系利用地の地価が下げ止まる傾向にあ
るなか、23区における賃貸マンションの投資
収益性についてシミュレーションを行い、各
地区の水準および地区間格差、要因を整理し
ました。シミュレーションの内容は、東京23
区内に、共通した室数と延床面積を持つ中型
賃貸マンションを整備する
(土地を購入し建
物を建設する)
場合の投資収益性
(NOI利回り
ベース)
を6地区間で比較するものです。整備
費用のうち、建物建設費は各地区共通とし
(東京都の鉄筋コンクリート工事費予定額単
価を使用)、土地購入費を地区ごとに変動さ
せます
(各地区に所在するJ-REIT保有物件の
容積率を適用し、これを最大限利用する前提
で土地面積を設定。さらに同所在地周辺の住
宅系利用地の公示価格平均値を乗じることに
より土地価格を算出)。賃料については、JREIT保有物件の各地区の平均値を適用しま
した
(係る前提条件は、
[図表1-4]
を参照)
。
なお、土地を購入し建物を建設するマンショ
ン整備費と新築物件の取得費は概ね同水準と
仮定し、以下「整備あるいは取得」
と記述し、
整備あるいは取得に係る費用を
「初期投資」
と
します。
シミュレーションによると、賃貸マンショ
ンの整備物件あるいは取得物件のNOI利回り
は、都心周辺4区および城東地区で高位、都
心5区、城南地区、城西地区で中位、城北地
区で低位となりました。利回りのレンジは
6%前後に分布します
[図表1-5上段]
。
比較的高い利回りとなった都心周辺4区お
よび城東地区のモデルでは、初期投資が低く
抑えられる一方で賃料水準が比較的高いこと
が高い利回りの要因となっています
[図表1-5
中段]
。初期投資コストを抑えられる要因は、
都心周辺4区では土地面積を小さくすること
ができること
(都心5区と同水準の高い容積率
を確保可能)、城東地区では加えて土地単価
が相対的に安価であることによります
(都心5
区の半分以下の水準)
[図表1-5下段]
。
都心5区、
ト、
都心5区、
城南、
城西地区は高い土地コス
ト、
都心5区、城南、
城南、城西地区は高い土地コス
城西地区は高い土地コス
ト、
城北地区は低い賃料水準が主な利回り抑制要因
城北地区は低い賃料水準が主な利回り抑制要因
城北地区は低い賃料水準が主な利回り抑制要因
一方で、都心5区、城南地区のモデルでは、
整備あるいは取得物件の賃料水準は比較的高
い水準にあるものの、初期投資コストが高く
なるため、NOI利回りは都心周辺4区、城東
地区に比べて低くなります。初期投資コスト
が大きくなる要因は、都心5区では突出した
[図表1-4]
シミュレーションの前提条件
設定条件
シミュレーションに係る項目
賃料に係る条件
室数
40室
1室あたり賃貸面積
50㎡
建物に係る条件 有効率
延床面積
土地に係る条件
賃貸マンション
(J-REIT保有物件で2010年下期値の開示された物件)
の地区別平均値※
(コンパクトタイプ、
ワンルームタイプを対象)
80%
2,500㎡
(40室×50㎡/80%)
容積率
賃貸マンション
(J-REIT保有物件で情報の開示された物件)
の地区別平均値(地区によって変動)
土地面積
建物全階の面積を同一とし、
かつ容積率を最大限使用した場合の面積(地区によって変動)
地価
当表中※の賃料で使用した物件と同じ町内に所在する調査地点における、
住宅系利用地の
地区別平均値(2011年1月値)
・建物建設費=延床面積×工事単価×1.1
・工事単価は、鉄筋コンクリート住宅の工事費予定額単価2011年1月値(2ヶ月後方移動平均値)
その他
備考(シミュレーションの前提)
(国土交通省「建築着工統計」
より作成)
・入居率は95%(J-REIT保有物件の概ねの平均値)
・NOI比率(NOI/賃料収入)は0.75(同上)
・利回りに着目して実施(出口売却による収益は想定していない)
・時間軸に係るボラティリティは考えていない(2011年初頭の断面値)
・経年変化に伴う賃料変動は考えていない
(注)
データが揃わない足立区、葛飾区については、それぞれ城北地区、城東地区から除外している。
資料:都市未来総合研究所作成
4
July, 2011 ────────────────────────────────── みずほ信託銀行 不動産トピックス
地価水準(他地区の約2倍)、城南地区では土
地面積確保の必要性(容積率が他地区より低
く、土地面積が都心5区、都心周辺4区の1.5
倍程度必要)
に整理されます
(城西地区も城南
地区と同様の傾向にあります)。城北地区の
モデルについては、初期投資が抑えられる一
方で、賃料水準が他地区に比べて低いことが
利回りを抑制する要因となっています。
(以上、都市未来総合研究所 清水 卓)
[図表1-5]
賃貸マンションの投資収益性
(NOI利回り)
8
NOI利回りの水準
(%)
6
4
2
0
都心5区
14
都心周辺4区
城南地区
城西地区
城北地区
城東地区
初期投資と賃料収益(賃料坪単価)の水準比較
(億円)
(万円/G)
1.6
1.4
12
1.2
10
1.0
8
0.8
6
0.6
4
0.4
2
0.2
0
0.0
都心5区
都心周辺4区
城南地区
初期投資
城西地区
城北地区
城東地区
賃料坪単価
土地購入費に係る単価、面積・容積率の水準比較(都心5区を1.0とした場合の水準)
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
都心5区
都心周辺4区
城南地区
土地単価
城西地区
土地面積
城北地区
城東地区
容積率
資料:都市未来総合研究所作成
みずほ信託銀行 不動産トピックス ────────────────────────────────── July, 2011
5
震災後の小売販売額と商業施設取引の状況
株式会社都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査 * 」によると、上場企業および上場REIT等
の半期別の売買額・売買件数は2009年度下期以降3半期連続して前年同期比で増加を続けてき
ました。
本稿ではこうした傾向にある2010年度の上場企業等による商業施設取引の概要を紹介した
うえで、震災後の大型小売店舗の販売額と商業施設取引の状況を整理しました。
2009年度下期以降、商業施設の取引額は前年同期比で増加
商業施設の取引額は前年同期比で増加
2009年度下期以降、
減少を続けていた上場企業及び上場REIT [図表2-1]商業施設取引件数・取引額の推移
(件)
(億円)
等の商業施設取引額は、2009年度上期(取引
140
6,000
売買額
売買件数
件数10件、取引額約125億円)
を底に上昇に転
120
5,000
じました[図表2-1]。2009年度下期以降は、
100
4,000
取引件数、取引額ともに3期連続して前年同
売 80
買
3,000
件
期比で増加しています。
数 60
2,000
2010年度の取引額は上期が約1,900億円、
40
下期が約1,600億円と、不動産取引減退の引
1,000
20
き金となったリーマンショック発生前の2008
0
0
上期 下期 上期 下期 上期 下期 上期 下期 上期 下期
年度上期とほぼ同水準まで回復しています。
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
売
買
額
2010年度
資料:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
震災により一時的に減少した大型小売店舗の販売額は、
急速に回復
震災により一時的に減少した大型小売店舗の販売額は、
震災により一時的に減少した大型小売店舗の販売額は、急速に回復
急速に回復
震災により一時的に減少した大型小売店舗の販売額は、
急速に回復
東日本大震災が発生した3月の大型小売店
舗の販売額は、企業の生産及び物流施設とい
ったサプライチェーンの寸断による供給減を
背景として、百貨店、スーパーともに前年同
月比で減少しました。4月の大型小売店舗販
[図表2-2]
大型百貨店の月別販売額の推移
9,000
小
売
販
売
額
(億円)
[図表2-3]
大型スーパーの月別販売額の推移
(%)
-2
7,000
-4
6,000
-6
5,000
-8
4,000
-10
3,000
-12
2,000
-14
1,000
-16
-18
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月
2010年
2011年
小売販売額
前年同月比
(億円)
14,000
0
8,000
0
売額の前年同月比は、百貨店、スーパーとも
にほぼ震災前の水準まで回復しており、震災
により寸断された物流ラインは概ね復旧し、
消費マインドは持ち直し傾向にあると考えら
れます
[図表2-2,2-3]
。
前
年
同
月
比
増
減
率
小
売
販
売
額
(%)
3
12,000
2
10,000
1
8,000
0
6,000
-1
4,000
-2
2,000
-3
0
前
年
同
月
比
増
減
率
-4
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月
2010年
小売販売額
2011年
前年同月比
資料:
[図表2-2、2-3]とも経済産業省「大型小売店業態別販売額・前年同月比増減率の推移」
*:不動産売買実態調査は、
「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(適時開示規則)」に基
づき東京証券取引所に開示されている固定資産の譲渡または取得などに関する情報や、新聞などに公表され
た情報から、上場企業等が譲渡・取得した土地・建物の売主や買主、所在地、面積、売却額、譲渡損益、売
却理由などについてデータの集計・分析を行っています。
なお、本調査では、情報開示後の追加・変更等に基づいて既存データの更新を適宜行っています。
6
July, 2011 ────────────────────────────────── みずほ信託銀行 不動産トピックス
商業系REIT等による取得は再開、小売業者による取得は依然として停滞
商業系REIT等による取得は再開、小売業者による取得は依然として停滞
2010年度の商業施設取引は地方圏にも拡大、
2010年度の商業施設取引は地方圏にも拡大、
2010年度の商業施設取引は地方圏にも拡大、
2010年度の商業施設取引は地方圏にも拡大、
大型取引は東京圏の商業ビルが中心
大型取引は東京圏の商業ビルが中心
大型取引は東京圏の商業ビルが中心
商業施設の取引額の推移を都市圏別にみる
と、東京圏は全国の場合と同様に2009年度上
期に底を打った後、2009年度下期には約
1,200億円まで急速に回復しました。その後、
2010年度は上期、下期とも900億円から1,600
億円程度の取引額が続いています
[図表2-4]。
一方、その他の圏域では2009年度下期になっ
てもほとんど取引はありませんでしたが、
2010年度になってその他地域や大阪圏で目立
った取引がみられます。
2010年度の取引額50億円超の大型取引は、
2009年度の8件を上回る11件でした
[図表2-5]
。
2009年度の8件はいずれも下期の取引であり、
大型取引に関しても2009年度下期から回復が
みられます。しかしながら、2010年度の大型
[図表2-4]
商業施設取引額の都市圏別推移
(億円)
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
上期 下期
2006年度
上期 下期
2007年度
東京圏
上期 下期
2008年度
大阪圏
上期 下期
2009年度
名古屋圏
取引11件中、過半となる7件の物件所在地は
東京圏であり、商業施設取引が他の圏域へ拡
大したといっても依然として東京圏の商業ビ
ルが取引の中心となっています。
2010年度の大型取引の売主はSPCが11件中
7件を占めており、その買主は4件が投資目的
の投資法人や外国企業であり、3件が小売業
による買い戻しや賃借から保有への変更でし
た。直近の商業施設取引の活発化は、商業系
REIT等による投資物件の取得と小売業者に
よる営業店舗の自己保有への転換によるもの
と考えられます。
震災に伴い一時的に停滞した
震災に伴い一時的に停滞した
震災に伴い一時的に停滞した
震災に伴い一時的に停滞した
商業系REITに物件取得の動き
商業系REITに物件取得の動き
商業系REITに物件取得の動き
商業系REITに物件取得の動き
小売業者による商業施設の取得は、取引額
50億円以下のものも含め震災後は公表ベース
で1件もみられませんが、REITについては取
得の動きが再開されています。
5月23日にユナイテッド・アーバン投資法
人が商業施設「Luz自由が丘」
、
「アクティオー
レ市川」の取得を公表しました。これらの物
件は3月1日付でスポンサー関係者であるSPC
からの取得予定を公表したものの、震災によ
る市況の不透明感から公募増資(PO)による
資金調達は難しいとの判断に基づき取得を中
止したものです。その後、物件の耐震性や被
災状況、市況の回復ぶりが確認できたことか
らPOによる資金調達で取得を決定しました。
上期 下期
2010年度
(以上、都市未来総合研究所 出塚 哲也)
その他
資料:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
[図表2-5]
2010年度の商業施設大型取引一覧
(取引額50億円超)
売 主
NO
業 種
売却理由等
売却不動産
都市圏
従前用途(建物名)
1
SPC
−
東京圏 西武池袋本店土地建物の一部
2
不明
−
東京圏 エスポワール表参道
3
SPC
−
その他
4
SPC
−
大阪圏 心斎橋SIビル
5
不動産
−
その他
6
SPC
−
東京圏 ギンザ・グラッセ
7
SPC
−
東京圏 P'PARCO(池袋パルコ別館)
8
SPC
−
東京圏 三井ショッピングパークララガーデン春日部
9
不動産
財務体質の強化 東京圏 賃貸用不動産(商業施設)
10
SPC
入札
11
不動産
キャナルシティ博多・B
三井ショッピングパークららぽーと磐田
大阪圏 店舗(Hoop)
−
東京圏 六門(商業施設)
買 主
土地面積
建物面積
(㎡)
(㎡)
取引価格
(億円)
業 種
利用用途
16,799
125,400
1,230
小売業
買い戻し
2,274
7,156
310
不動産
投資
18,395
101,308
287
投資法人
投資
1,190
4,631
195
外国企業
投資ファンドに組み入れ
66,915
131,588
152
投資法人
投資
635
7,202
136
投資法人
投資
1,115
9,418
101
小売業
営業力の強化
22,380
56,897
100
投資法人
投資
14,918
17,534
78
小売業
−
4,276
18,470
71
小売業
賃借から保有へ切り替え
489
2,850
52
建設
業績寄与を見込み
資料:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
みずほ信託銀行 不動産トピックス ────────────────────────────────── July, 2011
7
Monthly Watcher
特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化促進について
東京都は、震災時に避難、救急・救援、緊急物資の輸送、復旧・復興の動脈として重要
な役割を担うべき道路として、
[図表3-1]
のように緊急輸送道路を指定しています。しかし、
震災時には、緊急輸送道路沿道の建築物が倒壊により通行者に危害を加えたり、緊急輸送
道路としての機能を損なう恐れがあります。そのため、東京都は緊急輸送道路のうち特に
重要な路線を
「特定緊急輸送道路」
として指定して、その沿道建築物の耐震化を促進すべく、
「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」
(以下、条例)
を今年4月
に施行しました。また、6月には『「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進
する条例」第7条第1項に規定する特定緊急道路の指定の考え方(案)』
([図表3-2])
を公表し
意見募集を行いました。
条例により、次の1〜3のいずれにも該当する建築物は「特定沿道建築物」
とされます。
1. 敷地が「特定緊急輸送道路」
に接する建築物
2. 昭和56年6月1日以後に新築の工事に着手したものを除く建築物(即ち旧耐震基準の建築物)
3. 道路幅員のおおむね2分の1以上の高さの建築物
「特定沿道建築物」
の所有者には平成24年4月1日から耐震診断の義務が課され、耐震性能
が不十分な場合は耐震改修等の努力が義務づけられます。東京都は行政指導や実施命令に
より義務の履行を促しますが、同時に耐震診断や耐震改修等の費用助成を行います。また、
条例は東京都が「特定沿道建築物」の耐震化の進捗状況の情報を都民に提供することを定
め、耐震診断実施命令に違反した者、虚偽報告をした者、耐震化状況等の報告を怠った者
に対する罰則を定めています。
今後、
「特定緊急輸送道路」沿道では多くの建築物の耐震改修が行われるものと思われま
すが、これを契機とした再開発に繋がる可能性もあります。
(以上、都市未来総合研究所 三輪 一雄)
[図表3-1]
東京都の緊急輸送道路の種別
(平成19年9月修正)
第一次緊急輸送道路
応急対策の中枢を担う都本庁舎、立川地域防災センター、重要港湾、空港
等を連絡する路線
第二次緊急輸送道路
一次路線と区市町村役場、主要な防災拠点(警察、消防、医療等の初動
対応機関)
を連絡する路線
第三次緊急輸送道路
その他の防災拠点(広域輸送拠点、備蓄倉庫等)
を連絡する路線
資料:東京都建設局
[図表3-2]
東京都の特定緊急輸送道路の指定の考え方
(抄)
主要な防災拠点、空港や港湾などを結ぶ道路及び他県からの緊急物資や救援活動の受け入れの
1 ための主要な道路の機能を確保するため、第一次緊急輸送道路は全て特定緊急輸送道路に指定
する。
2
地域防災計画に基づき、災害時の区市町村本部を設置する区市町村庁舎との連絡に必要な第二次
又は第三次緊急輸送道路は、特定緊急輸送道路に指定する。
他県の第一次緊急輸送道路との連絡に必要な第二次又は第三次緊急輸送道路は、特定緊急輸送
3 道路に指定する。
資料:「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」第7条第1項に規定する特定緊急道路の指定の考え方(案)
不動産トピックス 2011.
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