上場会社の株価等が類似業種比準価額へ与える影響

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KOTAX レポート No.004
平成 25 年 6 月 28 日
上場会社の株価等が類似業種比準価額へ与える影響
国税庁より平成 25 年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等が公表されました(平成 25
年 6 月 13 日)
。下記算式のとおり類似業種比準価額は評価対象会社の業績と、事業内容が類似する業種目に属
する上場会社(以下「類似業種」といいます。)の株価、業績によりそれぞれ影響を受けます。そこで今回は、
公表された業種目別株価等が類似業種比準価額へ与える影響について考察します。
1.
業種目別株価等の
業種目別株価等の分析
現在、類似業種の平成 25 年分の配当・利益・純資産の数値と、株価については平成 24 年平均、平成
25 年 1 月、2 月分が公表されています。
① 類似業種株価と日経平均の推移
平成 24 年平均と平成 25 年 2 月の類似業
平 24 年
平 25 年
株価
変動率
種株価を比べると約 20%上昇しています。
平均
2月
国税庁から公表される類似業種の株価等は
類似業種
200 円
242 円
121%
金融商品取引所に上場しているすべての内
株価(全業種平均)
国法人(上場廃止が見込まれている会社等を除く)
日経平均
9,160 円
11,376 円
124%
を対象としていますので、日経平均株価の推
株価
移と同程度であることが読み取れます。
※日経平均株価は各月の初値と終値の平均値
② 比準要素の比較
類似業種の配当、利益、純資産は上場会社
平 24 年分
平 25 年分
比準要素
変動率
の前年(1 月~12 月)の数値によって計算さ
(全業種平均)
(全業種平均)
れていますので、例えば 3 月決算の上場会社
配当
4.4 円
4.4 円
100%
であれば平成 25 年 3 期の業績回復が織り込
利益
22.1 円
22.8 円
103%
まれていない数値となっています。類似業種
純資産
235.5 円
240 円
102%
の各種数値(全業種平均)は平成 24 年と平成
(出所)国税庁 HP のより筆者が加工
25 年とで大きな変動はありません。
2. 類似業種比準価額への
類似業種比準価額への影響
への影響
まず、類似業種の株価は、課税時期(相続、贈与の日)の属する月、前月、前前月、前年平均の 4 つの
数値のうち最も低いものを使います。平成 25 年 12 月末までの贈与等であれば平成 24 年平均を使うこ
とができますので、今年に入っての”株高”の影響を受けることはありません。
次に比準割合の計算ですが、昨年の数値と大きな変動はありませんので、こちらも類似業種比準価額
への影響は小さいでしょう。
3.
自社株対策の
自社株対策の考え方
類似業種比準価額は純資産価額に比べて毎期の価額変動が大きい評価方式ですので、価額が低いタイ
ミングを見計らって贈与等を行うことが最も基本的な自社株対策の考え方です。
上記 1.の分析結果を見る限りは、類似業種の株価等により類似業種比準価額が昨年と今年で大きく増
減するケースは少ないと考えられます(実際には各業種の数値を確認する必要があります)。しかし、平成 25
年 1 月から 6 月までの日経平均株価の平均値は 1 万 2,000 円を超えていますので、このままいけば、類
似業種の平成 25 年平均の株価は平成 24 年平均に比べて 30%以上の上昇が予測されます。
類似業種比準方式が適用される非上場会社のうち業績の改善・向上が見込まれる会社については、前
期実績と今期の業績予測に基づき類似業種比準価額の計算を行ったうえで、類似業種比準価額が上昇す
る前に自社株の贈与等を検討すべきと考えます。
(税理士 小高 育幸)