2016年 第6巻 第1号(PDF:1.6MB

千歳科学技術大学
フォトニクス研究所紀要
2016 年
第6巻 第1号
千歳科学技術大学
フォトニクス研究所
1
目次
巻頭言
ネイチャー・アイランド北海道からの発信
下村 政嗣
5
フォトニクス材料研究
臭化ベンジル誘導体の光分解反応を利用する多層カーボンナノチューブの表面修飾
高田 知哉
6
坂井 賢一
7
谷尾 宣久
8
分子内や分子間の水素結合制御による固体蛍光クロミズム
含硫黄透明ポリマーの屈折率予測に関する研究
太さの異なる棒状高分子の混合系におけるスメクチック相の相分離
大越 研人
9
花粉バイオミメティクス‐リンクル構造を用いた高分子マイクロ粒子の作成‐
カートハウス オラフ 10
Eu をドープしたゾルゲルシリカガラスからの青色発光
川辺 豊
11
山中明生
12
希土類を添加した SrAl2O4 の結晶成長と光学特性
5mol% MgO 添加 LiNbO3 結晶における常光線の屈折率温度分散式
梅村 信弘
13
フォトニクスデバイス研究
AgSnO2 接点対の誘導性負荷電流開離時のアーク継続時間に対する電極開離速度の影響
長谷川 誠
2
14
自己組織化を利用したプラストロン模倣酸素補給デバイスの作製
平井 悠司
15
小林 壮一
16
ビスマス添加ダブルクラッドファイバの広帯域利得特性
2 光子励起を利用した W3 型フォトニック結晶導波路型レーザの観測
小田 久哉
17
唐澤 直樹
18
液晶コア PCF の分散特性の温度変化に関する検討
フォトニック結晶ファイバデバイス開発および大規模シミュレーション技術の研究
江口 真史
19
長谷川 誠
20
張 公儉
21
光ファイバへの荷重印加によるスペックルパターンの変動
計算機合成ホログラムによる光波のマニピュレーション
フォトニクスシステム研究
両面受光型太陽電池の発電量解析-表面と裏面それぞれの発電量の年間推移を実験データ
から分析-
吉田 淳一
22
福田 誠
23
MMIC を用いた広帯域アンプ
Effects of A/D converter in fiber optic communication system with electronic dispersion
佐々木 愼也
compensator on chromatic dispersion penalty
24
視空間環境統合に基づく二足歩行ロボットのモーション制御 ~段差等の不整地への着地
角度推定~
小田 尚樹
25
次世代 PON システムを用いたマルチサービスアクセス基盤の提案 〜光・無線アクセスの
シームレスな融合を目指して〜
吉本 直人
3
26
運転者間意思疎通円滑化のための車車間可視光通信方式の提案
山林 由明
27
小林 大二
28
バイオフォトニクス研究
高齢者にも判りやすい振動パターン作成法の検討
ナノスーツ法‐バイオミメティクスが拓く電子顕微鏡観察の新地平‐
下村 政嗣
29
李 黎明
30
ICG を用いたリンパ節組織の蛍光画像処理と分析
超高速液体クロマトグラフィーと赤外イメージングによるカンゾウの分析
木村-須田 廣美
31
その他
コロキウム報告
32
バイオミメティクスセンター活動報告
バイオミメティクスセンター
33
ナノテク支援運営委員会
35
文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業
16th Chitose International Forum on Photonics Science and Technology (CIF’16) 開催報告
CIF’16 組織委員会
編集後記
36
39
4
巻頭言
ネイチャー・アイランド北海道からの発信
バイオミメティクスセンター長 下村 政嗣
バイオミメティクスに関する学内外の研究拠点を目指し、2014 年にフォトニクス研究所
内にバイオミメティクス研究センターを設立して頂きました。バイオミメティクス(生物
模倣)とは、
“生物に学ぶ”という古くからある考え方で、鳥を観察して飛行機の設計図を
書いたレオナルド・ダ・ヴィンチにまで遡ります。蚕が吐く絹糸をまねたナイロン、植物
の種である“オナモミ(ひっつきむし)
”にヒントを得たマジックテープ、海の生物“海綿
(カイメン)
”を模倣したウレタン樹脂製のスポンジなど、バイオミメティクスは私たちの
身の回りにある“ありふれた”技術のように思われていますが、実は、バイオミメティク
スの国際標準は2015年5月に発効したばかりなのです。
国際標準化発効の背景には、今世紀になってバイオミメティクスが世界的に注目された
ことがあります。ハスの葉の表面に形成されるナノメータからマイクロメータに至る階層
的な微細構造が超撥水性をもたらすことにヒントを得て、自己洗浄効果を有する塗料が開
発されたことが契機になって、ヤモリの指先の微細毛を模倣した接着テープや、蛾の複眼
表面のナノ構造を模した無反射フィルムなど、生物学とナノテクノロジーの連携によって
新しい材料が開発されました。さらに最近では、自然史学と工学の異分野連携によって、
バイオミメティクスは、材料分野のみならずロボティクスや工業デザイン、建築や都市設
計など、総合的な科学技術体系として様々な産業分野において技術革新をもたらすものと
期待されています。
さらに、バイオミメティクスの現代的な意義は、持続可能性社会への寄与にあります。
バイオミメティクスのお手本である生物多様性は、長い時間をかけて多様な環境において
進化適応した結果であり、壮大なるコンビナトリアル・ケミストリーだと考えることがで
きます。つまり、生物の生き残り戦略にヒントを得て人類の未来を築くこと、即ち、持続
可能性に向けたパラダイム変換と技術革新を意味しています。
千歳空港の真横にあり、昆虫採集などのフィールドワークを併設した国際会議の開催も
可能な自然豊かなキャンパスは、支笏湖温泉も近く、日本最大級の淡水水槽を有する水族
館である“サケのふるさと 千歳水族館”も近い、恵まれた教育研究環境にあります。また
本学は、文部科学省ナノテクノロジープラットフォームの拠点として電子顕微鏡や分光装
置などナノテク関連の装置も充実しており、
「生きた状態で」生物を観察するナノスーツ法
の普及を始めたところです。ネイチャー・アイランド北海道からバイオミメティクスを世
界に発信して参ります。
5
フォトニクス材料研究
臭化ベンジル誘導体の光分解反応を利用する多層カーボンナノチュ
ーブの表面修飾
Surface modification of multi-walled carbon nanotubes utilizing photolysis of benzyl
bromide derivatives
応用化学生物学科 高田知哉(Tomoya TAKADA)
A novel technique for surface modification of multi-walled carbon nanotubes (MWCNTs) with
benzyl radicals was developed. The radicals were generated by UV photolysis of corresponding
bromide derivatives. Attachment of the radicals onto MWCNTs was confirmed by means of
chemical analysis and Fourier-transform infrared absorption (FT/IR) spectroscopy. The modified
MWCNTs were kept dispersed well in water.
カーボンナノチューブの表面修飾は、溶媒への可溶化や他素材との複合化などを実現す
る上で重要な技術である。本研究では、臭化ベンジル誘導体の光分解で生成するベンジル
ラジカルを反応種とする多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)の表面修飾を試み、得ら
れた生成物の親水性を評価した。
本研究での MWCNTs の表面修飾過程では、まず臭化ベンジル誘導体への光照射による
C–Br 結合の開裂でベンジルラジカルが生成する。ハロゲン化ベンジルの光分解でベンジル
ラジカルが生じることは古くから知られている[1]。生成したラジカルは直ちに MWCNTs
に捕捉され、共有結合が生じると期待される。本研究では、カルボキシル基を有する p-ブ
ロモメチル安息香酸(Br-CH2-C6H4-COOH)を反応物質として用い、そのジメチルホルムア
ミド溶液に MWCNTs を加えてキセノン光源からの紫外光を照射し下記の反応を進行させた。
Br-CH2-C6H4-COOH
→
•CH2-C6H4-COOH
+ Br•
(ベンジルラジカル誘導体)
•CH2-C6H4-COOH + MWCNTs → MWCNTs-CH2-C6H4-COOH
(表面修飾 MWCNTs)
ベンジルラジカルの結合量は、酸塩基滴定によるカルボキシル基の定量分析により調べた。
MWCNTs の親水性は、上述の通り光照射を行った MWCNTs、反応物質と混合しただけ(光
照射は行っていない)の MWCNTs、未処理の MWCNTs の2種類をそれぞれ水に超音波分
散させたのち、粒子の沈降状態の時間変化を観察することで比較した。
定量分析の結果からは、光照射した試料でカルボキシル基の導入が確認できた一方で、
光照射していない試料と未処理試料ではカルボキシル基が導入されていないことがわかっ
た。このことから、本法での表面修飾では光照射が必須であることがわかる。MWCNTs の
親水性の比較では、カルボキシル基の導入量に対応して、光照射した試料では長期間にわ
たり親水性を維持する一方で、光照射していない試料では徐々に粒子が沈降し、未処理試
料では速やかにほぼ全量が沈殿した。このことから、本法で MWCNTs の親水性を向上させ
ることが可能であることがわかる。
本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(C)(No. 25420814)の支援を受けて実施された。
ここに謝意を表する。
参考文献:
[1] G. Porter, F. J. Wright “Primary Photochemical Processes in Aromatic Molecules”, Trans.
Faraday Soc. 51, 1469 (1955).
6
フォトニクス材料研究
分子内や分子間の水素結合制御による固体蛍光クロミズム
Solid-state Fluorochromism Based on Control of Intra- and Intermolecular Hydrogen
Bondings
応用化学生物学科 坂井賢一(Ken-ichi SAKAI)
Fluorophores showing excited state intramolecular proton transfer (ESIPT) reaction are promising as
solid-state emitting materials because they are much less likely to cause concentration quenching.
Here we report a novel solid-state fluorochromic system using an ESIPT fluorophore, in which the
fluorochromism is based on switching between the two possible ESIPT sites within the molecule by
use of acid/base stimuli.
励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)を示す蛍光色素は、蛍光波長や蛍光強度が溶媒やイオ
ンなどの外的要因に影響受けやすく、またプロトン移動に伴う大きなストークスシフトのため、
自己吸収を回避できる、濃度消光を起こしにくいなど、蛍光プローブや固体蛍光材料として優れ
た特性をもつ。本研究では、ESIPT 色素を利用した固体状態での蛍光クロミズムの発現を目指し
て分子内プロトン移動の制御を目指した。具体的には、フェノールの2位と6位の炭素にそれぞ
れイミダゾール環およびベンゾチアゾール環を連結し、分子内に切換え可能な水素結合を組み込
んだ色素を合成し、外部刺激による蛍光特性の変化を調べた。
合成した色素(TPI-OMeHBT)は黄緑色の強い蛍光を示す黄色結晶として得られた。単結晶 X
線結晶構造解析の結果、フェノールのプロトンはイミダゾール環の窒素原子と水素結合を形成し
ていることが確認出来た。この結晶性粉末は、545 nm に極大をもつ蛍光スペクトルを与え、ま
たそれをクロロホルムに溶解した溶液でもほぼ同じスペクトルを与えた(Fig. 1a の青色実線と
青色点線)
。一方、吸収スペクトルの吸収極大は 380 nm 付近にあり、それらの値から算出され
るストークスシフトは 8,000 cm-1 におよぶことから、黄緑色の蛍光は ESIPT 反応を経由して発光
したものと言える。蛍光スペクトルの溶媒依存性を調べたところ、酢酸に溶解した場合、蛍光色
は橙色に劇的に変化した(Fig. 2 の赤色実線)。スト
ークスシフトも 9,500 cm-1 と大きく、この橙色蛍光も
ESIPT 経由の発光であることが示唆される。実際、
酸性条件下で作製した単結晶の構造解析を行ったと
ころ、期待した通り水素結合はベンゾチアゾール環
側に形成されており、ESIPT 部位の切換えによる蛍
光色のスイッチングを達成した。この現象を固体状
態で実現するため、薄膜化の検討を行った。薄膜化
には、フッ素系ポリマーでプロトン伝導体としても
知られるナフィオンを使用し、市販のナフィオン分
散液に色素を溶解させ、キャスト法でガラス基板上
に製膜した.得られた薄膜は、1N の NaOH 水溶液に
浸すと、緑色の蛍光を発したが、今度はそれを 1N の
HCl 水溶液に浸すと蛍光は即座に橙色へと変化した.
このような操作を数回繰り返しても緑色と橙色の蛍
光色スイッチングを確認することが出来た.色素は
ナフィオン膜の細孔内に取り込まれていると考えら
Fig. 1 (a) Absorption and fluorescence spectra of
TPI-OMeHBT in chloroform (blue lines) and in
れ、そこへ H+ や OH- が浸透することで、色素の2つ
acetic acid (red lines). A dotted line is the
の状態の安定性に影響を与えているものと推測され
fluorescence spectrum in powder. The fluorescence
る.緑色蛍光の薄膜に HCl 水溶液をインクとして、ま
spectra were obtained by excitation at 390 nm. (b)
た逆に橙色蛍光の薄膜に NaOH 水溶液をインクとし
Photographs of TPI-OMeHBT doped Nafion films
under irradiation with a 365 nm lamp.
て使用することで文字などを書き込むことも出来た
(Fig. 1b)。
7
フォトニクス材料研究
含硫黄透明ポリマーの屈折率予測に関する研究
Refractive index prediction of sulfur-containing transparent polymers
応用化学生物学科 谷尾宣久(Norihisa TANIO)
Refractive index of transparent polymers is determined by the chemical structure of the repeat unit.
We clarified uncertain the atomic refraction and atomic dispersion value for sulfur. The system
which predicts refractive index of polymers is reported.
ポリマーの繰り返し単位を構成する原子の種類とその数をパソコンに入力するのみで、
屈折率が計算できる屈折率予測システムの開発を行っている。屈折率を計算する際に基盤
となる“原子屈折、原子分散値”および“ポリマー固体中での分子鎖パッキング状態”を決定、
解明することにより、様々な化学構造、結合様式をもつ透明ポリマーに対応できる予測シ
ステムに発展させることができる。本研究では、高屈折率化に有利となる硫黄(S)の原子
屈折、原子分散を解明し、含硫黄透明ポリマーの屈折率予測を可能にした。
Fig.1 に示すようにポリマーの屈折率を化学構造から計算するためには原子屈折および原
子分散値が必須である。原子屈折および原子分散値は、解明したい原子を含むポリマーま
たは液体化合物の各波長における屈折率と密
度から決定できる。試料の屈折率と密度から
Lorentz-Lorenz 式に基づき化合物の分子屈折
が求められ、そこから既に判明している原子
屈折を差し引くことで、解明したい原子につ
いての原子屈折が決定される。硫黄(S)の原
子屈折および原子分散値を屈折率精密測定に
より決定した。解明した硫黄の原子屈折([R]D)
および原子分散([R]F-[R]C)を Table.1 に示す。
Table.2 に示すように、解明した硫黄の原子屈
折、原子分散値より計算された含硫黄透明ポ
リマーの屈折率 nD およびアッベ数 νD は、報告
値とよく合い、解明した原子屈折及び原子分 Fig 1. Estimate of refractive index (n) and Abbe’s
number (νD) of transparent polymer from the
散値の信憑性が確認された 3)。
chemical structure of repeat unit.
【謝辞】本研究で用いた硫黄化合物の一部は、
ダイセル化学㈱より提供していただいた。
1) Y.Suzuki, T.Higashihara, S.Ando, M.Ueda. Polym.J., 41, 860(2009)
2) R.Okutsu, Y.Suzuki, S.Ando, M.Ueda. Macromolecules.,41, 6165(2008)
3) 平井郁乃、谷尾宣久:
「含硫黄透明ポリマーの屈折率予測に関する研究」
、第 49 回高分子
学会北海道支部研究発表会講演要旨集、P41、平成 27 年 1 月、札幌
Table 2 Refractive index (nD) and Abbe’s
number (νD) for polysulfone.
Table 1 Atomic refraction ([R]D) and atomic
dispersion ([R]F-[R]C) for sulfur.
8
フォトニクス材料研究
太さの異なる棒状高分子の混合系におけるスメクチック相の相分離
Segregation of smectic phases in the binary mixture of rod-like polymers with different
diameters
応用化学生物学科 大越研人(Kento OKOSHI)
The binary systems of mono-disperse hard-rod-like particles with different diameters have been
predicted to segregate into smectic phases by the numerical experiments and computer simulations.
This segregation is entropically driven based on the steric repulsion between particles. In this study,
we present an experimental finding of the predicted segregation by synchrotron radiation
small-angle (SR-SAXS) and wide-angle X-ray diffraction (SR-WAXD) in the thermotropic LC
systems of the binary mixtures of the polysilanes with different alkyl side chain length
(poly{n-tridecyl-(S)-2-methylbutylsilane}, poly{n-dodecyl-(S)-2-methylbutylsilane}, poly{n-unde
cyl-(S)-2-methylbutylsilane}, and poly{n-decyl-(S)-2-methylbutylsilane}), which can be regarded as
rods with different diameters.
棒状の剛体粒子が濃厚相においてスメクチ
ック相と呼ばれる層状の液晶相を形成するこ
とが、力学モデルを用いた理論的研究によって
古くから予測されている。我々は、ポリシラン
(Fig 1)と呼ばれる非常に剛直な高分子の分
子量分布を狭く調製することにより、予測され
たスメクチック相が発現することをこれまで
報告してきた。また近年、太さの異なる棒状粒
子を混合すると枯渇作用とよばれるエントロ
ピー的な相互作用によって、混合した二成分の
相分離が起こることが、同様な理論的研究によ
り予測されている。
(Fig 2)
。
本研究では、アルキル側鎖の炭素数を異なる
分子量分布が非常に狭いポリシラン(P13MBS,
P11MBS, P10MBS(Fig 3))を合成し、その混
合系において発現する液晶相の構造を、シンク
ロトロン放射光を用いた小角 X 線散乱測定、
広角 X 線回折測定、および原子間力顕微鏡観
察を用いて調べた。1
その結果、
P11MBS と P10MBS の混合系では、
スメクチック相の層間隔を表す小角 X 線散乱
のレイヤーリフレクションが1つだけ観測さ
れ、混合比に対して計算される層間隔に加成性
が成り立っていることから、2つの成分の混合
が起こるのに対して、もう少し太さの差が大き
い P13MBS と P10MBS の混合系では、それぞ
れスメクチック相の層間隔が別々のピークと
して観察され、それぞれのスメクチック相が相
分離していることが確認された。
同様な結果は混合サンプルの原子間力顕微鏡像でも観察さ
れており、理論的予測が実験的に再現することが確かめられた。
参考文献:
1. 加藤樹・田中汰久冶・篠原成輝・大越研人 “太さの異なる棒状高分子の混合系における
スメクチック相の相分離” 第 64 回高分子学会年次大会予稿集 1F22 (2015).
9
フォトニクス材料研究
花粉バイオミメティクス
‐リンクル構造を用いた高分子マイクロ粒子の作成‐
Pollen Biomimetics
-Preparation of Wrinkled Polymer Microparticles応用化学生物学科 カートハウス オラフ(Olaf KARTHAUS)
Pollen particles are fascinating biological structures with the sole purpose to transfer genetic material
from one flower to the other. Pollen particles have a very durable outer shell, the exine that is formed
by sporopollenin with distinct surface structures that are specific for the plant species. Some pollen
show a wrinkled surface structure with valleys and trenches that is typical for a pattern that can be
obtained by shrinking a spherical particle. Here, this process is mimicked by subjecting a
metal-coated polymer particle to an electron beam. The polymer decomposes in the beam and
shrinks, thus leading to a wrinkled surface structure.
花粉は不思議で驚くような存在です。おおよそ直径20μm 前後のごく微小な丸い粒で、
25万種類もの花粉があり、その全てが形状が異なっています。また、子孫を残すために
遺伝子を「守る」
「遠くまで運ぶ」という二つの重大なミッション遂行のため、紫外線、低・
高湿度、熱などどんな過酷な環境にも耐えうる強靭な外壁の材料や構造を持っています。
このような花粉を人工的に真似ることがこの研究の目標です。
花粉と構造の似た高分子微粒子を以下のように作製しました。ポリスチレンやポリメチ
ルメタクリル酸の有機溶媒と水を用いて乳化状態を作り出し、基板に塗布し、マイクロ粒
子を作製します。微粒子は、Pt や Au をスパッターしたのち走査型電子顕微鏡で電子ビーム
(20 kV)を照射します。電子ビームによってポリメチルメタクリル酸は分解され[1]、粒子の
体積が減ります。照射時間が長くなるほどリンクル構造は深くなり、金属のスパッター膜
が厚くなるほどリンクル構造は細かくなります。
簡単な方法で、表面に二次元的に粒子を並べてできる凹凸とそれぞれの粒子の表面にあ
る凹凸の階層構造パターン形成が可能となります。応用としては、超撥水表面や摩擦の少
ない表面が考えられます。
Fig 1. Left: Electron microscope image of pollen (from www.paldat.org). Middle: Effect of
irradiation time on wrinkle structure. Right: Effect of metal layer thickness (sputtering time) on
wrinkle wavelength.
[1] M. Tabata, J. Sohma: Degradation of poly(methyl methacrylate) by ionizing radiation and
mechanical forces, Developments in Polymer Degradation, Elsevier Applied Science Publishers 1987
10
フォトニクス材料研究
Eu をドープしたゾルゲルシリカガラスからの青色発光
Blue light emission from Eu ions doped in silica glass prepared by sol-gel method
応用化学生物学科 川辺豊(Yutaka KAWABE)
Europium ions as well as Al co-dopant were doped in silica glass matrix with a sol-gel method. The
samples densified in ambient atmosphere at 1050 oC showed bright blue emission under UV
illuminations. Lifetime of the luminescence was about 1 s, indicating that europium existed as
divalent form.
ゾルゲル法は希土類等のイオンをガラス中に比較的低温で均一でドープする手段として
注目されている。また、Al を共ドープすることで発光効率が改善されることも知られてい
る。われわれは、TMOS と DMF の混合溶液に塩酸を含む水・メタノール混合溶媒を滴下し、
さらに硝酸 Eu および硝酸 Al の各水和物を溶解した。Si に対する Eu の mol 濃度は 0.1%で、
Al については、0.1, 0.2, 0.5, 1.0 および 2.0%として作製した。乾燥後、1050℃で 8 時間焼結
したものを紫外光照射下で観測したところ青色の発光が得られた(Fig. 1)。また、Fig. 2 に
示す発光スペクトルは、広帯域であり寿命が 1 s 程度の減衰を示していることから、その
起源は 2 価の Eu の d-f 遷移によるものであることがわかる。
Fig. 1 Blue light emission from Al- and Eu-doped silica glass samples observed under UV illumination.
Fig. 2 Photoluminescence spectrum and decay behavior after excitation with ns laser (355 nm).
本研究は主として大学院生の村上祐今によって行われたものであり、その成果の詳細は
以下に示す学術論文として公開されている。
参考文献:
Yukon Murakami and Yutaka Kawabe, “Photoluminescence from Divalent Europium Ion
Doped in Silica Glass Prepared with Sol-Gel Technique,” e-J. Surf. Sci. Nanotech. 13, 51-53,
(2015).
11
フォトニクス材料研究
希土類を添加した SrAl2O4 の結晶成長と光学特性
Crystal Growth and Optical Properties of Rare Earth Doped SrAl2O4 Single-Crystals
電子光工学科 山中明生(Akio YAMANAKA)
Single-crystals of SrAl2O4:Eu and rare earth co-doped SrAl2O4:Eu,Re have been grown by
floating-zone method. The optical absorption and emission spectra of SrAl2O4:Eu and
SrAl2O4:Eu,Re (Re: other rare earth) are primarily governed by Eu2+ ions, whereas the afterglow
depends remarkably on Re. We have also grown single-crystals of SrAl2O4:Re and examined their
optical properties.
アルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4)は、希土類 Eu と Dy の共添加により緑色光を発す
る長残光性蛍光体となる。SrAl2O4 の長残光性起源については不明な点が多々あり、単結晶
試料での研究が必須である。そこで様々な Eu 単添加・共添加の SrAl2O4 単結晶を浮遊帯域
結晶成長法により作製し、その光学特性を詳細に測定・検討した。
本研究では、千歳科学技術大学・分子物質合成プラットホームに設置されているキセノ
ンランプを加熱光源とする赤外線加熱単結晶製造装置を用いて単結晶育成を行った。単結
晶育成は、強酸化から強還元まで様々な雰囲気条件下で試みた。Fig. 1 の上の写真は、自然
光下で撮影した、Eu( 1%),Nd( 1%)共添加 SrAl2O4 単結晶である。直径 5、長さ 40mm 程度
の良質単結晶が安定して作成可能である。下の写真は、照射 UV 光を消灯した直後の様子で、
Eu,Dy 共添加試料と同様に顕著な緑色蓄光が確認された。残光性は共添加希土類に大きく
依存するので、希土類の 2 価準位が電子トラップとして働くことが推測される。
Fig. 2 は SrAl2O4:Eu(1%)の吸収スペクトルで、
酸化条件から還元に向かっていくと SrAl2O4
のバンド端~200nm (~6eV)の直下から 500nm の波長域で Eu2+の光吸収が大きく発達する。こ
の変化は吸収強度の Eu 濃度依存性と定性的に概ね一致するので、酸化条件では Eu2+の生成
が抑制されることを表わす。挿入図は PL スペクトルで、還元に向かうほど強くなる。この
変化も PL 強度の Eu 濃度依存性と概ね一致する。
蓄光強度は強還元の育成で顕著になるが、
蓄光時間には大きな変化はない。以上より、光吸収と蛍光は 2 価 Eu の 4f-5d 電子遷移によ
り支配されることが分かった。
Fig.2 Absorption and PL (inset) in single crystals of
SrAl2O4:Eu(1%).
Fig.1 Single-crystal of SrAl2O4:Eu,Nd grown in
the floating-zone furnace.
12
フォトニクス材料研究
5mol% MgO 添加 LiNbO3 結晶における常光線の屈折率温度分散式
Thermo-optic dispersion formulas for the ordinary ray of 5mol% MgO doped LiNbO3
応用化学生物学科 梅村信弘(Nobuhiro UMEMURA)
The Sellmeier and thermo-optic dispersion formulas for the ordinary ray of 5mol% MgO doped
congruent LiNbO3 are reported. A set of our formulas for the ordinary and extraordinary Sellmeier
and thermo-optic dispersion formulas reproduces well our new experimental data for the
temperature-dependent quasi-phase-matching properties of the MgO:PPLN with the oo-e and oo-o
interactions.
ΔT·ℓ (℃cm)
近年、レーザ用波長変換素子として、分極反転型波長変換デバイスが注目されており、
その中でも 5mol%MgO ドープのニオブ酸リチウム結晶を用いた波長変換素子(MgO:PPLN)
が市販されている。MgO:PPLN については、2011 年より研究を進めており、擬似位相整合
特性を正確に計算するための、異常光線のセルマイヤー方程式及び屈折率温度分散式を既
に発表している 1,2)。一方、利用できる非線形光学定数が小さく、通常の擬似位相整合では
用いない常光線との組み合わせによる擬似位相整合において、その温度安定性については
殆どデータがないのが現状である。そのため、常光線の正確な屈折率温度分散式はあまり
報告されておらず、2008 年に Gayer らが発表した温度依存型セルマイヤー方程式 3) が、現
在用いられている常光線の方程式である。しかし、彼らの方程式では oo-e (o:常光線、e:
異常光線) 偏光による位相整合温度同調を正確に再現できない 3)。そこで今回、MgO:PPLN
(反転周期長=29.0m)を用いて oo-e、oo-o 及び oe-o 相互作用の擬似位相整合第2高調波発
生(SHG)における温度許容幅T·ℓ(FWHM)の実験データを取得した。基本波波長1 に対する
実験結果を Fig. 1 に示す。
図中の理論曲線は、既に発表している
異常光線のセルマイヤー方程式及び屈
◇ : oe-o
100.0
△ : oo-o
oo-o
折率温度分散式(dne/dT) 1) と本研究で新
□ : ee-e
たに導出した以下の常光線のセルマイ
ヤー方程式及び屈折率温度分散式
ee-e
(dno/dT)を元に計算したものである。
10.0
0.11745
8132.45
no  19.5542  2
 2
  0.04557   554.57
2
 0.4519 2.1143 4.0283
no  


4
3
2
 
2.9264


 1.0908  10 5



 T   0.00108T 
2
,
oe-o
1.0
0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6
Fundamental Wavelength (m)
Fig. 1. Temperature phase-matching bandwidths
(FWHM) at 20 ℃ as a function of
fundamental wavelengths for QPM/SHG.
(0.424m≦≦3.8m)
ここでの単位はm である。図を見ればわかるように、oo-o 及び oe-o 相互作用の擬似位相
整合においては、SHG 波長により温度許容幅が大きく異なり、T·ℓが理論値で 100℃·cm
を超える温度安定点が存在することが判明した。また、今回導出した常光線の屈折率温度
分散式により計算された擬似位相整合におけるT·ℓは、我々の実験データと一致している。
参考文献
1. N. Umemura et al., Appl. Opt. 53, 111-115 (2014).
2. D. Matsuda et al., SPIE Proc. 9347, 93471S (2015).
3. O. Gayer et al., Appl. Phys. B 91, 343-348 (2008).
13
フォトニクスデバイス研究
AgSnO2 接点対の誘導性負荷電流開離時のアーク継続時間に対する
電極開離速度の影響
Influences of contact opening speeds on break arc characteristics of AgSnO2 contact
pair at interruptions of inductive DC inductive load currents
グローバルシステムデザイン学科 長谷川誠(Makoto HASEGAWA)
In a DC inductive load circuit (L=20mH) with a power supply voltage of DC14V, break operations
of a load current in the range from about 1 to 9 A were conducted with a AgSnO2 contact pair at a
contact opening speed in the range from 0.5 mm/s to 200 mm/s. During the operations, break arc
durations were measured and the average break arc duration was calculated in each operating
condition. Although break arc durations are said to become shorter with a faster contact opening
speed, such tendencies were clearly recognized only with larger load current levels. With faster
contact opening speed levels, the tendencies became less significant. Moreover, increases in
contact opening speeds were found to provide significant increases on metallic phase durations,
leading to their reduction.
電気接点対では、一般に電極開離速度が速くなると開離アーク継続時間は短縮するとさ
れるが、著者らの検討では、開離アーク継続時間が開離速度の影響を顕著に受けないとい
う結果が再現性良く観測されている。今回は、負荷電源電圧 DC14V の直流誘導性負荷回路
(L=20mH)にて、約 1~9A の負荷電流を AgSnO2 接点対で 1mm/s~200mm/s の範囲の接点開
離速度で遮断する際の開離アーク継続時間を測定し、平均開離アーク継続時間を算出した。
その結果、負荷電流が大きい場合にのみ接点開離速度の増加に伴う開離アーク継続時間の
短縮効果が認められたが、その効果も開離速度を大きくするにつれて顕著ではなくなった。
さらに、開離アークのうち金属相のみの継続時間に着目すると、接点開離速度の増加に反
比例して金属相アーク継続時間が短縮する領域が見出された。これより、接点開離速度の
増加は主に金属相アークの継続時間を短縮させると考えられることが分かった。
Average arc duration (ms)
9A
7A
5A
3A
10
1A
Metallic phase duration (ms)
100.0
100
9A
7A
5A
10.0
3A
1A
1.0
0.1
1
0.1
1
10
100
Contact opening speed (mm/s)
1000
(a) total arc duration
0.1
1
10
100
Contact opening speed (mm/s)
1000
(b) metallic phase arc durations
Fig.1 Influences of electrode opening speeds on average break arc durations (2).
参考文献:
(1) M.Hasegawa, H.Sonobe and Y.Ohmae, “Influences of contact opening speeds in the range of 0.5 to 200mm/s on
break arc behaviors of Ag and AgSnO2 contacts in DC14V inductive load circuits of 1 to 5A”, Proc. 60th IEEE
Holm Conference on Electrical Contacts, pp.14-18, 2014
(2) 長谷川、他:
「AgSnO2 接点対による直流誘導性電流遮断時のアーク放電特性に対する電極開離速度の影
響に関する実験的検討」
、電子情報通信学会機構デバイス研究会、信学技報 EMD2014-102 (2015-5)
14
フォトニクスデバイス研究
自己組織化を利用したプラストロン模倣酸素補給デバイスの作製
Preparations of the oxygen supply device learning from the insect plastron
応用化学生物学科 平井悠司(Yuji HIRAI)
Oxygen is an essential resource for action of humans or autonomous underwater vehicles in water.
However, it is limited in the present situation because of a capacity of O2 cylinders. In nature, there
are some insects, which utilize superhydrophobic hair structures as physical gills, semipermanently
living in water. We focused on this physical gill of the plastron and attempted to prepare artificial
plastrons by using self-organized honeycomb-patterned films. In this report, we showed the
preparation of artificial plastron and measurements of O2 permeability in water. As results, it was
suggested that O2 was transferred from water to bottle inside via the films, and the film acted as
artificial plastrons.
自然界にいる昆虫の中には、我々人間同様に肺呼吸であるにも関わらず水中で生活できる
種が存在する。彼らは腹部に持つプラストロン 1)と呼ばれる超撥水性の微細構造により水中
で気泡をトラップし、プラストロンにある気孔から微細構造によってトラップされた空気
層内の酸素を取り込むことにより呼吸を行う。そこで本研究では水中での酸素供給デバイ
スを開発するため、模倣材料としてハニカムフィルム 2)に着目、水中での酸素透過性及び溶
存酸素による影響について検証した。ハニカムフィルムは Poly(Bisphenol A carbonate)と両親
媒性化合物である Cap を用いて作製した。作製したハニカムフィルムをガラス基板から剥
がしとり、穴をあけたスチロール管の側面を覆い、図1(a-c)に示すような実験系を作製した。
スチロール管内部の酸素分圧の減少と二酸化炭素分圧を上昇させるために、酸素を吸収し
炭酸ガスを出す脱酸素剤(エージレス® GE タイプ)を入れ、内部の酸素濃度の推移を測定
するため蓋に酸素濃度計と二酸化炭素濃度計を取り付け水槽内に浸漬させ、水温はヒータ
ーを用いて 26 ℃に設定した。また、水槽内の溶存酸素を曝気により飽和、あるいは窒素バ
ブリングにより除去した2パターンにおいて測定を行った。図1(d)にハニカムフィルムを
貼付けたスチロール管内の酸素濃度変化を示す。スチロール管内の酸素濃度は、時間経過
とともに徐々に減少するものの、ハニカムフィルムで内部と水を隔てている面積の大きい
ものほど酸素濃度の低下が遅く、減少速度に差が見られた。以上の結果から、ハニカムフ
ィルムを介して水中の溶存酸素からスチロール管内部に酸素を供給していると考えられ、
ハニカムフィルムは昆虫のプラストロンと同様に水中の溶存酸素をハニカムフィルムを介
してスチロール管内部に遊離させる機能を有していることが示唆された。
図1 (a-c) 酸素透過性を評価するための実験系概略図。(a) 全体のイメージ図、(b) スチロ
ール管の拡大イメージ図、(c) スチロール観測面の拡大イメージ図。(d) スチロール管内部
の酸素濃度測定結果
参考文献:
1. M. R. Flynn and J. W. M. Bush, J. Fluid Mech. 608, 275 (2008).
2. H. Yabu, Y. Hirai, M. Shimomura, Langmuir 22(23), 9760-9764 (2006).
15
フォトニクスデバイス研究
ビスマス添加ダブルクラッドファイバの広帯域利得特性
Broadband gain characteristics with Bi-doped double-clad optical fiber
電子光工学科 小林壮一(Soichi KOBAYASHI)
In 1.3μm band to the telephone office from the subscriber and 1.55μm band from the telephone
office to the subscriber, the amplification for both bands with one amplifier is very attractive for the
compensation of PON split loss in urban area and a long-distance propagation loss in rural area. In
this report the broadband amplification in 1.3m and 1.55m with the Bi-doped optical fiber
fabricated by the vapor-phase axial deposition (VAD) method is discussed with 808 nm laser
pumping.
近年のインターネット利用者の増加に伴う情報量の増大により、各電話会社は光通信ネ
ットワークの拡大に追われている。加入者系では電話会社から加入者に向けた「下り」に
は 1.55μm 帯光信号が使用されており、一方で加入者から電話会社へ向けた「上り」には
1.3μm 帯光信号が使用されている。従来の加入者系では電話会社-加入者間の平均距離は
10km 未満であったが、近年の光通信の普及に伴い、20km 以上の地域まで光ファイバを敷
設することが求められている。また、都市部では映像配信に伴う高速 LAN の要求から加入
者の増大が見込まれる。本報告では、1.3μm 帯および 1.55μm 帯に及ぶ広帯域光増幅器を作
製するために、励起効率の向上に向けて第一クラッド形状の異なる 2 種類のダブルクラッ
ドビスマス添加石英光ファイバを用い主に第一クラッド外部からの励起法による光増幅利
得特性を測定し、励起効率の向上に向けて最適クラッド形状について検討したので報告す
る[1],[2]。六角形ダブルクラッド(Fig.1)の場合は平面な側面を有しているため外部から斜め
研磨したマルチモード光ファイバを用いて励起することが容易である。小信号入力パワー
は40dBm であり励起パワーは Bi 添加ファイバ通過後、40dBm であって得られた増幅利得
は 0.5dB/m でありSNRは 35dB 以上得られた。1310nm における伝搬損失は 1.9dB/m であ
った。808 nm 光の第1クラッド伝搬損失は 0.6dB/m であった。Fig.2 は 808nm 励起による
蛍光強度を表し、高帯域性を示している。
本研究は、
(独)情報通信研究機構の高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信イン
フラの研究開発の一環としてなされたものである。
Fig.2 Amplified spontaneous fluorescence on Bi-doped
optical fiber vs pumping power (40mW-388mW)
Fig.1 Cross section of hexagonal fisrt-clad Bi-doped
optical fiber.
[1] M. Takahashi, T. Fujii, Y. Saito, Y. Fujii, and S. Kobayashi, CLEO-OECC , Kyoto, Japan, TuPS-9 (2013).
[2] M. Takahashi, et al., SPIE Photonics West 2015, San Francisco, USA, 9344-88 (2015).
16
フォトニクスデバイス研究
2 光子励起を利用した W3 型フォトニック結晶導波路型レーザの観
測
Observation of W3 type photonic-crystal slab waveguide laser by using two-photon
pumping
電子光工学科 小田久哉(Hisaya ODA)
The photonic crystal waveguide (PhC-WG) is also attractive for laser lasing, because very small
group velocity of near the Brillouin zone (BZ) edge should enhance interactions between the
radiation field and matter. In this work, we present we observe laser action in InAs-quantum-dots
embedded GaAs PhC-WG of the single-mode W3 type (three row missing line-defect) by using
two-photon pumping.
2 次元フォトニック結晶スラブ線欠陥導波路(PhC-WGs)では、ブリルアンゾーンのバ
ンドエッジに対応する波長では、光と物質との相互作用が大きくなる。そのため光が大き
く増幅し、PhC-WGs 中に共振器を用いなくともレーザ発振することが可能である。一方高
い非線形光学定数を持つ GaAs で作製された PhC-WGs はスローライトの効果により容易に
非線形光学効果を利用することができる。一般的に GaAs では 1.5μm 帯の波長は透明である
が、光強度が大きい場合に 3 次の非線形光学現象である 2 光子吸収(TPA)により光吸収が
おこる。TPA によりキャリア励起することにより、励起光よりも高エネルギー側でレーザ
発振することが期待できる。我々は発光体として InAs 量子ドットを埋め込んだ W1 型 GaAs
PhC-WGs に 1.55μm 帯の波長で光励起し、1.3μm 帯でのレーザ発振を確認した。今回は導波
路幅の広い W3 型 PhC-WGs において同様の実験をおこなうことで W1 型との比較検討を行
った。
試料は試料長 500 μm のエアブリッジ型 W3 型 hC-WGs である(格子定数:321 nm、空孔
径:240 nm、コア厚:250 nm)。励起光としてパルス幅 4.9 ps のファイバーレーザ(1550 nm)
を使用し、PhC-WGs 入射した。入射端面から出射された発光のスペクトル観測を行った。
Fig.1(a)に放射スペクトルを示す。励起強度を大きくすることで特定の波長(1285 nm)にお
いて幅が狭く、強い放射スペクトルが確認
された。Fig.1(b)にこの特定の波長の励起光
強度とピーク強度の関係をプロットした
(b)
(a)
結果を示す。この結果から閾値の存在が確
認でき、約 14pJ であった。これらの結果よ
り得られた放射光はレーザ発振している
可 能 性 が 高 い と 考 え る 。 ま た 、 W1 型
PhC-WGs からの出力と比較し約2桁大き
い出力が得られた。
Fig. 1. (a) Emission spectrum of InAs-QD embedded
W3 type GaAs PhC-WG. (b) A plot of the peak intensity
of the 1285 nm line as a function of pump power.
17
フォトニクスデバイス研究
液晶コアPCFの分散特性の温度変化に関する検討
Dispersion properties of liquid crystal core photonic crystal fibers
電子光工学科 唐澤直樹(Naoki KARASAWA)
Temperature dependences of dispersion properties of liquid crystal core photonic crystal fibers were
calculated by a multipole method, which was modified to treat anisotropic inclusions rigorously.
Liquid crystal molecules were assumed to be oriented parallel to the propagation direction of a fiber
and highly anisotropic when the temperature was below 331 K. The large changes of dispersion
properties were found when the temperature was above 331 K, where liquid crystal became
isotropic.
フォトニック結晶ファイバー(PCF)は光の導波方向に空孔が規則的に配列された光ファ
イバーである。
PCF に超短光パルスを導波すると超広帯域光波が発生することが見出され、
様々な分野で応用されている。ネマティック相の液晶は光学的異方性を持つ物質であり、
分子の配向方向の屈折率が垂直な方向の屈折率より大きいという特徴を持つ。液晶分子の
配向方向は外部電場により制御可能である。また温度を上昇させると等方相になることが
知られている。液晶の非線形屈折率は石英ガラスの 100 倍以上であり、それによる低パワ
ーでの超広帯域光波発生が期待される。本研究では液晶コア PCF の群速度分散(GVD)特
性を正確に計算するため、従来等方性媒質にのみ用いられていたマルチポール法を非等方
性媒質に適用できるように拡張し、ネマティック相と等方相の GVD の理論計算を行った。
計算においては空孔直径 d の空孔が空孔間距離=d+0.1m で 3 リング配置された石英ガラ
ス PCF を用い、その中心の空孔に E7 液晶が充填されているものを用いた。ネマティック相
において液晶分子は光軸と平行な方向に配向していると仮定した。空孔直径が異なる PCF
についてネマティック相(温度 323 K)と等方相(温度 331 K)の場合で GVD を計算した。
このとき液晶の屈折率の波長依存性は各温度においてフィットされたコーシー方程式を用
いて計算した。Fig 1. (a)に計算に用いた PCF の断面図、Fig 1. (b)に GVD の計算結果を示す。
この図において、実線はネマティック相、点線は等方相における GVD 曲線を示す。計算よ
り、温度を変化させて液晶がネマティック相から等方相に変化すると、空孔直径が 1 m 以
上の場合、零分散波長が
長波長側に約 60 nm シ
フトすることがわかっ
た。零分散波長が変化す
ると発生する超広帯域
光波スペクトルも大き
く変化することが予測
され、スペクトルの制御
が可能になると考えら
れる。今後は外部から電
場を与えて液晶の配向
を 変 化さ せた 場 合の
Fig 1. (a) Cross section of a liquid crystal core PCF. Gray circles show air holes
and a central hole is filled with liquid crystal. (b) GVD curves of liquid crystal
分 散 特性 の変 化 につ
core PCFs with different hole diameters (d). Solid curves show GVDs at 323 K
いても検討する。
and dotted curves show GVDs at 331 K.
参考文献:
N. Karasawa “Dispersion properties of liquid crystal core photonic crystal fibers calculated by a
multipole method modified for anisotropic inclusions,” Opt. Commun, 338, 123-127 (2015).
18
フォトニクスデバイス研究
フォトニック結晶ファイバデバイス開発および大規模シミュレーシ
ョン技術の研究
Developments of Photonic Crystal Fiber Devices and Large Scale Simulation
Techniques
電子光工学科 江口真史(Masashi EGUCHI)
Photonic crystal fiber devices are important devices in optical communications and optical signal
processing technologies. We are developing analysis techniques and simulation systems for such
devices, and new devices using their techniques.
この 20 年余りの間に劇的な発展を遂げているフォトニック結晶技術に関する研究を行っ
ている。本研究室では、光通信、光信号処理の要となる光ファイバ、導波路のシミュレー
ション、およびそのために必要となる大規模コンピュータシミュレーション技術の開発を
中心とした研究を行っている。
ここでは、異方性構造を導入し
たフォトニック結晶ファイバ
(PCF)を用いて、偏波の分離を実現
するフォトニック結晶ファイバ偏
波スプリッタについて述べる。下
図は、平行する3本の PCF の真ん
中に入射された両偏波成分を含ん
だ光が伝搬と共に、x,y の偏波に
分離して左右のポートから出力さ
れていることがわかる。偏波スプ
リッタは偏波依存のある光デバイ
スへの入射や偏波合分波において
重要となる。本研究は米国光学会
/ 米 国 光 学 会 誌 (J. Lightwave
Technol.)に掲載されている。
Fig 1. Propagation in a novel photonic crystal fiber polarization-spliter.
19
フォトニクスデバイス研究
光ファイバへの荷重印加によるスペックルパターンの変動
Changes in Speckle Patterns Induced by Load Application onto an Optical Fiber
グローバルシステムデザイン学科 長谷川誠(Makoto HASEGAWA)
When a certain load is being applied onto an jacket-covered communication-grade multimode glass
optical fiber through which laser beams form a laser diode as a light source is propagating, some
changes can be recognized in speckle patterns to be observed in an output light spot from the fiber.
In the load range up to 15kg, an area covered by distributed patterns (a diameter of the output light
spot) is reduced with increasing the applied load, and the counted number of speckles in the pattern
is also reduced. In contrast, with gradual decreases in the applied load level from 15kg, the area
covered by distributed patterns (a diameter of the output light spot) as well as the counted number of
speckles are likely to increase toward their original state. Relatively good repeatabilities can be
found in such characteristics. In addition, when a photovoltaic panel was irradiated with the whole
output light spot, its output voltage shows changes in accordance with changes in the counted
number of speckles in the pattern.
半導体レーザ光が伝搬しているジャケット付きで通信グレードの石英系マルチモード光
ファイバに荷重を印加すると、光ファイバ出射光スポット内に観察されるスペックパター
ンに変動が生じる。15kg までの荷重範囲では、荷重印加量の増加と共にパターンの分布範
囲(出射光スポットの直径)が減少し、パターン内の粒状形状のカウント数が減少するこ
と、逆に 15kg 印加状態から徐々に荷重を減らしていくとパターンの分布範囲(出射光スポ
ットの直径)及びパターン内の粒状形状カウント数が初期値に向かって増加傾向を示すこ
と、さらに、これらの特性は比較的良好な再現性を示すことが確認された。また、出射光
スポット全体を光電池パネルに照射した場合の出力電圧が、パターン内の粒状形状カウン
ト数の変化と対応するように変化した。図1には、光ファイバを荷重印加部にて一往復半
させた設置状態(S 字状の設置状態)で荷重を 500g ずつ印加及び除去した場合について、
出射光スポットで照射された光電池パネルの出力電圧値の推移を示す。計 5 回行った各々
の測定結果と共に、それらの平均値を白色のダイヤモンド形状のプロットで示している。
各測定における再現性はよく、荷重の印加及び除去による変化が明瞭に検出できている。
PD output voltage (mV)
1.2
S-shape
1
0.8
0.6
0.4
0.2
(a) upon load application
(b) upon load removal
0 upon load application and its removal (1)
Fig.1 Changes in the output voltages of the PV panel
15 14 13 12 11 10 9 8 7 6
Weights (kg)
5
4
3
2
1
0
参考文献:
(1) 長谷川誠、清水雄大、中丸卓也:
「光ファイバへの荷重印加によるスペックルパターンの変動に関する
実験的検討」
、電子情報通信学会機構デバイス研究会、信学技報 EMD2014-100 (2014-1)
20
フォトニクスデバイス研究
計算機合成ホログラムによる光波のマニピュレーション
Light wave manipulation using computer generated holograms
電子光工学科 張公儉(ZHANG Gongjian)
Optical vortex wave possesses a screw phase structure usually appears donuts like beam pattern.
This kind of light wave is phase screw dislocation in the center of propagation axes and carries
quantized orbital angular momentum. It has possible applications in the emerging field of quantum
computing and in optical manipulation. To get an optical vortex, there are several methods such as
use of spiral phase plates and holography. We utilized holographic techniques to construct optical
vortices of varying modes and analyzed the properties of diffracted optical vortex beams.
Vortex 光波ビームは位相の特異点を持つことや軌道角運動量を持つという特徴があるか
ら光学操作や量子計算及び量子通信等の分野で潜在的に実用化の可能性を有している。光
学 vortex 波の発生は普通螺旋状位相板と言われる Vortex Phase Plate(ボルテックスフェイズ
プレート)による方法とレーザー共振器からモードの制御およびモードの合成等の方法が
ある。本研究は計算機合成ホログラムにより光波 Vortex の発生についてホログラフィック
回折特性の解析および確認実験を行う。
l 次ラゲールガウスビームは次のように書ける。
|l|
2
2
2
2
2 + y2
As,r √xs,r
xs,r
+ ys,r
xs,r
+ ys,r
zs,r − zs0,r0
s,r
us,r =
(
) exp [−
+
ik
− i(|l| + 1) tan−1 (
)]
2
2
bs,r
bs,r
2bs,r
2R s,r
kbs,r
ただし、A は書き込む光波の振幅で、(x,y,z)は書き込むビームの各自の座標系を示す。b、
R,はそれぞれ LG ビームのウェストと波面の曲率半径である。
ホログラムを発生する信号波と参照波はそれぞれ 0 次と高次数のラゲールガウスビーム
である。Fig.1 に実際に計算したベクトルビームを発生するホログラムマスクの例を示して
いる。このホログラムの透過関数は次のようになる。
T = exp(ikδn) ∝ exp[ikδn0 γp I]
ただし、I は信号波と参照波の干渉強度分布である。この場合では 0 次ガウスモードでの
回折波は Kirchhoff 公式を用い
|m|
Γ ( 2 + 1)
|m|
η2
m
Um (p, Ψ) ≡ UK (p, Ψ) = |m|/2
zR (−iη)|m| eimΨ M (
+ 1, |m| + 1, − )
2
2
2
Γ(|m| + 1)
1/2
が得られる。ここでビームウェスト w0 に関するパラメーターはη=kpw0/2 で、(p,Ψ)は観
測面の極座標を示す。
Fig.1 CGH of LG beam,
Pattern of diffracted Vortex beam (insert is an analytical result ) and few of vector
beams from vortex beam (analytical and experimental results)。
Fig.1 に示した実験結果から各次数の回折光それぞれ異なる charge 数の Vortex ビームであ
る。実験結果は理論解析とよく一致している。また CGH の構造による次数の選択は可能で
あることから、実用に向け高効率、様々な vortex ビームの発生とその応用において今後、
さらなる研究にて検討していきたい。
21
フォトニクスシステム研究
両面受光型太陽電池の発電量解析
-表面と裏面それぞれの発電量の年間推移を実験データから分析-
Yearly fluctuation in the front- and back-surface generated power of bifacial solar cells
グローバルシステムデザイン学科 吉田淳一(Junichi YOSHIDA)
Electrical power generated by bifacial solar cells are investigated from the view point of yealy
fluctuation in the front- and back-surface generated power separately. Based on the experimental
data of the solar power plant located on the field of our Institute, it was found that the generated
power from the front- or back-surface of the solar cell varies differently depending on the inclination
angle due to the difference in the amount of the reflected light from the ground.
従来から広く普及している片面受光型の太陽電池ではなく、両面から受光が可能な太陽
電池は、
「パネルを垂直に立てて使うことで積雪の影響が無い」、
「垂直設置により、地面か
らの強い反射光を有効に受光して、冬の発電量が夏よりも多い」など、北海道のような積
雪寒冷地においても太陽光発電を普及させるには大変好都合な特徴を有している 1)。近年で
は、メガソーラー発電設備においても一部の太陽電池を両面に置き換えて発電量比較が行
われたりしている 2)。両面受光型においては裏面の発電により 10-30%程度の発電量増加が
期待される 1,2) が、季節や設置角度等との関連についての報告はあまり無い。そこで,千歳
科学技術大学に設置されている両面受光型太陽電池実証実験設備において蓄積された継続
的な発電データを用いて、年間を通して表面と裏面のそれぞれの発電量の推移を解析した。
発電データは、千歳科学技術大学構内に設置された実証実験設備 1)において測定したもの
を使用した。両面受光型太陽電池は受光面を南北側に向けて、垂直及び傾斜設置した二種
類があり、10 秒間隔で表裏の合計発電量及び傾斜面日射量(表裏別々)を計測している。
パネルの定格発電量は表面側 78W/kw/m2, 裏面側 62 W/kw/m2 で、計測された日射量からこ
の値を用いて表面及び裏面それぞれの発電量を推定し、月ごとに合計して比較した。なお、
表裏の合計値として実測された発電量と日射量からの推定値との差は、10%程度だった。
夏季は南面垂直日射が減少し水平全天日射が大きくなるので、垂直設置では冬季に比べ
て裏面の寄与が大きくなり、60°傾斜設置では傾斜のため地面から裏面への反射光が垂直
設置より減少する結果、年間を通して 20%程度のほぼ一定した寄与になっているものと考
えられる。設置角度をさらに小さくすると裏面に入射する反射光(散乱光)は減少する方
向なので、裏面発電量の寄与は減少するはずである。しかし、現実には地面から高い位置
にパネルが設置されることから、水平設置であっても一定量の反射散乱光が裏面に入射し、
その分の寄与が一定量あることを、発電量シミュレーション時は考慮する必要があると言
える。
参考文献
1) 荒木一郎他、火力原子力発電、Vol.55, No.569, 169-176 (2004)
2) http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20140901/373632/?ST=msb(2014.10.30 参照)
22
フォトニクスシステム研究
MMIC を用いた広帯域アンプ
Broadband amplifier using MMIC
電子光工学科 福田誠(Makoto FUKUDA)
We designed a broadband amplifier using MMIC. A series feedback configuration between the
ground pins of the MMIC and the ground plane of the circuit board was adopted. We achieved over
8GHz-bandwidth with the amplifier.
増幅帯域が 8GHz 以上の広帯域増幅回路の設計および製作を行った。増幅素子には複数の
トランジスタと抵抗から成る回路を内蔵した MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)
を採用した。構造を工夫した外付けのフィードバック回路とバイアスを与えるための RFC
(Radio Frequency Choke coil)を MMIC に付加して増幅帯域の広帯域化を図った。
Fig.1 に製作した増幅回路の写真およびフィードバック回路の構造図を示す。増幅素子に
はミニサーキット社製の MMIC である ERA-1+を用いた。図に示すように基板に直径 1mm
の穴を貫通させ、10Ωのチップ抵抗 2 個を並列接続して穴の中に入れ、MMIC のグラウン
ドピンと基板裏側のグラウンドプレーンとの間にハンダ付けしてフィードバック回路を実
現した。MMIC にバイアスを供給するための RFC は、太さ 0.1mm の銅線による直径約 1mm
の空芯コイルとした。
Fig.2 に製作した広帯域アンプの周波数特性の測定結果を示す。使用したネットワークア
ナライザの最高周波数である 8GHz まで増幅率(S21)が 7dB 以上あることがわかった。ま
た 5GHz 以上で増幅率のデータにピークが生じているが、コンピュータ解析によって、RFC
における並列共振が原因であることがわかった。広帯域アンプの周波数特性を平坦にする
ために、RFC の寄生キャパシタを小さくすることが今後の課題として浮かび上がった。
Fig.1 Photograph of the broadband amplifier and the structure of the feedback circuit.
Fig 2. Frequency characteristics of the amplifier.
23
フォトニクスシステム研究
Effects of A/D converter in fiber optic communication system with
electronic dispersion compensator on chromatic dispersion penalty
電子等化器を用いた光通信システムにおける、A/D 変換器の波長分散ペナルテ
ィに与える影響
電子光工学科 佐々木愼也(Shinya SASAKI)
適応 FIR フィルタ形式の電子等化器を搭載した光受信機を用いた強度変調―直接検波光通
信システムにおいて、光受信機に搭載する A/D 変換器のサンプリング速度と分解能が波長
分散ペナルティに与える影響をシミュレーションによって検討した。その結果、波長分散
ペナルティが 2dB 以下を実現するには、A/D 変換器の分解能は 4 ビット以上、サンプリン
グ速度はシンボルあたり 4 サンプル以上が必要である、という結論を得た。
In this paper, we present simulation results about the effects of ADC resolution and sampling rate
on chromatic dispersion penalty (@ BER = 10-6) of 10 Gb/s and 40 Gb/s fiber optic communication
systems equipped with adaptive FIR filter as EDC (Electronic Dispersion Compensator). In addition,
supposing the allowable penalty of 2 dB, we determine the minimum ADC resolution and sampling
rate that chromatic dispersion penalty is less than the maximum penalty. Figure 1 shows the
simulation model of the fiber optic transmission system, and all the components shown here is
described in Scilab Language. One of the simulation results is shown in Fig. 2, which shows
dispersion penalty vs. resolution of ADC @ 10Gbit/s.
Fig.1 Simulation model
Dispersion Penalty [dB]
In conclusion, we have investigated the effects of
ADC resolution and sampling rate on chromatic
dispersion penalty by simulations. The result indicates
that EDC performance requires the ADC with at least 4
bit resolution and 4 samples/bit in simulated fiber optic
communication systems.
This research has been conducted mainly by Mr.
Hirotaka Ochi, graduate of Sasaki’s laboratory.
6
120km
100km
80km
60km
40km
5
4
3
2
1
0
2
3
4
5
6
Resolution of ADC [bit]
Fig.2 Dispersion Penalty vs. Resolution of ADC
24
フォトニクスシステム研究
視空間環境統合に基づく二足歩行ロボットのモーション制御
~段差等の不整地への着地角度推定~
Vision-based Motion Control for Biped Walking Robot --- Landing Foot Angle
Estimation
電子光工学科 小田尚樹(Naoki ODA)
In this research, the vision-based motion controller is developed for biped robot to stabilize the
walking motion. By using visual environmental information, an estimation method of landing foot
angle has been proposed in order to consider uneven terrain. Furthermore, the stable contact after
landing was also demonstrated through several experiments.
本研究の取り組みでは,これまでカメラ画
像から得られる視空間環境情報を二足歩行ロ
Impedance
ボットの安定化制御に効果的に活用したビジ
Control
ュアルフィードバック形のモーション制御系
の開発を進めてきた。視空間環境情報を主体
Landing
Obstacle
的に用いてロボットの安定化を実現している
Foot
点が特徴である。しかしながら,これまでの
研究では床面を水平と仮定して視覚情報を利
用してきたため,段差などの不整地への対応
Fig. 1. Biped Robots
まで考慮することが困難であった。
そこで 2014 年度においては,Fig.1 のよう
な未知の段差に乗り上げるような状況を想定
し,二足歩行ロボットの振り出した脚(遊脚)
が床面に着地する際の着地角度を推定する方
法の検討を行った。まず,地面に対してコン
プライアントに着地できるように遊脚の足首
関節にインピーダンス制御を導入した。そし
て,着地と同時に視野環境中の物体位置とロ
ボット内部の姿勢角を利用することで,遊脚
の着地角度を推定する計算について導出し,
同時に接地状態を安定に維持する方法につい
ても視覚情報を有効に活用できることを示し
た[1]。
Fig. 2. Snapshots of Landing Foot under uneven terrain
Fig.2 に実験の様子を示している。左の写真
は 1cm 程度の段差であるが一定の精度で段差角を推定できることを示した。また,着地後
の安定化制御の効果について実験により確認した。右の写真はスロープへ応用した様子で
ある。
ただし,ラテラル面(横方向)における姿勢安定化の実装に至っていないため今後さら
に制御系の拡張を検討していく必要がある。また,現状では画像処理の簡単化のため視野
環境にランドマークとなる物体を配置しているが,今後は画像特徴点を自動的に抽出する
などの方法で,ランドマークを必要としない手法へと展開することも考えている。
参考文献:
[1] 山崎美奈,小田尚樹:"二足歩行ロボットにおけるビジョンベースの環境情報に基づく
着地脚の接地角度推定",電気学会論文誌 D, Vol.135 No.3, pp.220–226, 2015
25
フォトニクスシステム研究
次世代 PON システムを用いたマルチサービスアクセス基盤の提案
〜光・無線アクセスのシームレスな融合を目指して〜
A proposal of multiple service access platform using the next-generation passive optical
network systems towards seamless convergence between optical and wireless access.
電子光工学科 吉本直人(Naoto YOSHIMOTO)
Deep-penetrated optical fiber infrastructure using advanced photonic technologies such as the
next-generation Passive Optical Network (PON) systems will play an important role in the
construction of multiple service platforms that can provide not only future small-cell based wireless
services beyond 4G, but also M2M/IoT towards big-data society.
スマートフォンの爆発的な普及によって、進展を続けるモバイルサービスや、今後期待
されているクラウド技術とセンサを活用した IoT(Internet of Things)関連サービス等、あらゆ
るサービスに対して、平時のみならず如何なる時にもユーザに様々なアクセス手段を提供
可能とするマルチアクセス基盤の構築が期待されている(図 2)。日本において、広く普及
している光ファイバアクセスネットワークは、ユーザ端末やセンサを様々な無線インタフ
ェースによって収容する中核インフラとして重要である[1]。昨年、標準化が完了した次世
代 Passive Optical Network(NG-PON2)の特徴の一つは、帯域リソースとして新たに複数の
波長を柔軟に利用することが可能となった点である。図 2 はその活用例である。提案した
仮想化セル構成は、これまで敷設されてきた光ファイバ網を有効に活用しつつ、波長をダ
イナミックに制御[2]することによって、エリア毎の無線トラヒック動態に応じて、セルサ
イズを変更する方式である。また、遅延要求や帯域確保等、属性の異なるサービスを簡易
に重畳させるため、サービス毎に波長を割り当てることも可能である。このように、多様
なサービス事業者がオンデマンドでアクセスネットワークのリソースを柔軟に活用できる
ことから、今後の産業活性化・地方創生を支えるインフラとして期待される。
Fig.2 A sample of Virtual cell configuration by λ
Fig 1. Multiple service access network platform
-tunable WDM/TDM-PON
参考文献:
1.Naoto Yoshimoto, “A New Trend in Optical Access Networks Toward 2020 in Japan,”
OECC/ACOFT2014, Tu4A-1, Melbourne, Australia, July 2014
2.Masahiro Sarashina, Hideaki Tamai, Satoshi Furusawa, Akiya Suzuki, Masayuki,Kashima,
Toshiaki Mukojima, Shin Kaneko, Tomoaki Yoshida, Shunji Kimura, Naoto Yoshimoto, “First
demonstration of a wavelength swept discovery process for λ-tunable WDM/TDM-PON system,”
OFC/NFOEC2014, W2A.34, San Francisco, LA, 2014
26
フォトニクスシステム研究
運転者間意思疎通円滑化のための車車間可視光通信方式の提案
A proposal for vehicle-to-vehicle communication with using visible light
グローバルシステムデザイン学科 山林由明(Yoshiaki YAMABAYASHI)
A proposal and preliminary experiment is described for vehicle-to-vehicle communication with
using visible light. In order to reduce traffic risks by eliminating misunderstandings between drivers,
lights from head/tail lamps and/or blinkers are modulated very fast for human eye to send messages
conveying sender driver’s intention or will. We assume an on-vehicle movie camera could be the
receiver. After decoding the message, a display in the front, such as head-up display in future,
should be used to let the receiving driver know which driver around him/her send it and what kind of
message is that. As the first step, an experiment was performed with using a commercially
available compact digital camera to confirm signal receiving ability by analyzing every frame image
現在の自動車交通において、負傷事故約 50 万件の7割を占めるとみられる(H26 警察庁
統計)運転者の不注意や運転者間の誤解/意思疎通不足に起因する事故を低減すべく、可
視光を用いた車車間通信方式を提案する。既存技術には、運転者に送信メッセージを選択
するための追加操作を要求したり、逆に自動的にメッセージを生成することで多数のメッ
セージが交換され、重要な情報を見落としてしまう懸念があった。
提案技術は以下の通りである。
発信/受信/中継の機能を有す
る各車両はヘッド/テールライ
トで ID を発信し続ける。②送信
側運転者は伝えたいメッセージ
を音声入力する。③システムは音
声認識技術で発話内容を理解し、
最も近いメッセージを既定の中
から自動選択する。④そのメッセ
ージを ASCII コード化あるいは、
メッセージに番号を付してその
番号を送る。⑤受信側システムは、
常に前方の画像を撮影する車載
動画カメラからの画像のフレー
ム間の差分を取ることにより、メ
ッセージ信号を抽出する。⑥受信
機で検出したメッセージを、例え
ばヘッドアップディスプレイに
表示させる。メッセージ抽出予備
実験では、500 kit/s プリアンブル
「10101010」で変調された LED
を 市 販 の デ ジ タ ル カ メ ラ (1000 Fig. 1 An LED modulated with 500 kbit/s “10101010” preamble
signal was captured with a 1000 fps digital camera in order to grasp
fps)で撮影、得られたコマ送り画 its proper bit phase.
像を 2 つの位相に分けて比較する
ことで、正しい位相(Fig. 1 の場合は位相 2)が 識別できることを示した。これにより、可
視光の車車間通信への応用に向けて第一歩が踏み出せた。
27
バイオフォトニクス研究
高齢者にも判りやすい振動パターン作成法の検討
Study on the method of making accessible vibration patterns for aged users.
グローバルシステムデザイン学科 小林大二(Daiji KOBAYASHI)
To create memorable vibration patterns enabling the older persons to understand the meaning of the
many vibration patterns presented, a method was tested in which we designed vibration patterns with
language rhythms that implied the Japanese pronunciation of the corresponding message. This
method was evaluated through experiments. The participants were 14 elderly persons. From the
results, we concluded that the method can help the aged user improve his learning skills and memory.
Although we found that it is necessary to design software to easily create vibration patterns for aged
users, our proposed new method is a better option for creating memorable vibration patterns.
多くの携帯端末にはユーザにメッセージを伝える振動を発生させる偏心モータが組み込
まれている。これらの端末には単純な振動パターンを提示するものが多く、ユーザに「メ
ールや電話の着信」といった、数少ないメッセージを伝達するために用いられている。
近年、視覚・聴覚以外の感覚器を利用した情報伝達手段が数多く検討されているが、複
数の感覚器に対して同じ情報手を同時に提示すると認識が速く・正確になるといった報告
もあり、健常者を対象としたコンピュータからの新たな情報伝達手段の検討が求められて
いる。携帯端末のユーザの中には加齢、糖尿病や喫煙などによる末梢神経障害によって振
動感覚が低下している場合があるが、高齢者の中には聴覚の低下を補う目的としてバイブ
レーション機能を活用する例もある。そこで、実験を通して高齢者でも知覚・認識しやす
い振動パターンを設計するための設計指針を探ることとした。実験の被験者は高齢者 12 人、
若年者 14 人とした。振動を提示する携帯端末には、あらかじめ実験者が作成した振動パタ
ーンと被験者が独自に作成した振動パターンを再生できるプログラムを実装したスマート
フォン (Nokia Lumia 636, OS: Windows Phone 8.1)を用いた。プログラムは Microsoft Visual
Studio 2013 を用いて開発した。
昨年度得られた知見によると、高齢者にとってリズミカルな振動パターンは認識しやす
いが、振動パターンに対応するメッセージを記憶することが難しく、2 つの意味を認識する
のが限界であった。そこで、提示するメッセージの音韻がイメージできるような振動パタ
ーンを新たに提案し、5 種類の振動パターンの知覚・認識のしやすさを正当数によって比較
した。また、指で画面を叩くことで振動パターンを作れるオリジナルのアプリによって被
験者が自ら作成した振動パターンとの正当数の比較も行った。
実験の結果、リズミカルな振動パターンではその特徴の違いが判らなくなり、実験を繰
り返すと正当数が減少することが判った。一方、音韻に基づいた振動パターンでは、再生
を繰り返しても正当数に差異は生じなかったが、高齢者が正しく認識できた振動パターン
は 3 種類にとどまった。高齢者自らが作成した振動パターンの場合、平均正当数は 4 以上
となり、実験を繰り返すと若年者の正当数との有意差(有意水準 5%)も見られなくなった。
つまり、高齢者が自ら作成した振動パターンならば、若年者と同様に数種類のメッセージ
を認識できたと言える。
高齢者 12 人が作成した振動パターンは 12 人中 9 人が音韻に基づいて作成していたが、
実験者が提示した音韻に基づく振動パターンに比べて発音のテンポが遅かった。このこと
は、ユーザの発音の仕方やテンポに合わせることで、音韻に基づく振動パターンの認識の
しやすさを高められることを示唆している。
なお、この成果は 2015 年 8 月にオーストラリア・メルボルンで行なわれた 19th Triennial
Congress of the International Ergonomics Association にて報告した。
28
バイオフォトニクス研究
ナノスーツ法
‐バイオミメティクスが拓く電子顕微鏡観察の新地平‐
The “NanoSuit®”
- A novel Scanning Electron Microscopy based on Biomimetics 応用化学生物学科 下村政嗣(Masatsugu SHIMOMURA)
We have found that electron beam radiation or plasma treatment of the extracellular substances
(ECS) of drosophila’s maggots allowed them to survive in the high vacuum environment of a
scanning electron microscope (SEM). The plasma-polymerized nano-film of the ECS act as a
protective layer for the rapid dehydration under the reduced pressure of SEM observation. Artificial
coating of amphiphilic substance like non-toxic compound polysorbitan monolaurate (Tween-20)
allowed organisms without a natural ECS to survive under SEM experiment. We have proposed a
novel method of “nano-suit” for the high resolution SEM observation of living specimens.
ショウジョウバエの幼虫が細胞外に分泌し体表面を保護する粘性の細胞外物質(ECS)に
電子線やプラズマを照射することで、高真空下でも乾燥することなく生きた状態で高分解
能走査型電子顕微鏡観察が可能な事を見出した。プラズマ照射によってECSが重合する
ことでナノ薄膜が形成され、生体内部に含まれる気体や液体が保持されたためである。界
面活性剤を生体表面に塗布しプラズマ重合したバイオミメティック・ECSでも生きたま
までの高分解能電子顕微鏡観察が可能となった。生きた状態でさまざまな生物の表面微細
構造や運動等の生態を直接観察できる“ナノスーツ法”を開発した。
ボウフラに大気プラズマを照射した後に FE-SEM 観察すると、直ちに体の収縮による変
形が起こり(図 1 B)数分の間に扁平になる(C)。一方、1%の Tween 20 の水溶液を体表面
に塗布し濾紙などの上に置いて余分な溶液を除いた後、プラズマ処理をすると、乾燥によ
る体積収縮はなく(G、H)生きたまま微細構造が観察できる。観察後に飼育水に戻すと、
一週間ほどで蚊に成長した。D は C の△部分の拡大で、乾燥によって皺が形成されている
が、生きた状態では規則性の表面構造であることが明確に判る(I)。表面の断面 TEM 観察
を行うと、Tween 20 のナノスーツで被覆した試料では最外層に 50〜100 nm の薄膜が形成さ
れていた(J)
。
Fig 1. SEM imaging of living organisms by NanoSuit® method.
29
バイオフォトニクス研究
ICG を用いたリンパ節組織の蛍光画像処理と分析
Image Analysis and Processing of Indocyanine Green(ICG) in lymph node Tissue
応用化学生物学科 李黎明(Liming LI)
The new system developed by the Li Laboratory uses Indocyanine Green (ICG) with excitation
wavelength of 785 nm and fluorescence emission wavelength about 830nm.Then use CCD camera
and Near-infrared camera to get real time color video and near-infrared video. With using image
analysis and processing by computer, doctors can find sentinel lymph node easily. With C# language,
the main work of this research is image analysis. With acquisition of color video, near-infrared video
and spectrum data, observe and analyze the lymph node tissue in real time.
胃癌リンパ節診断用近赤外線蛍光画像腹腔鏡システムは李研究室にて開発されている。
このシステムにより、カメラで撮影したリアルタイムの画像を画像処理することで、医師
は容易にリンパ節を発見することができる。本研究は主に C#を用いた画像処理を行い、可
視画像と近赤外線蛍光画像を合成し、ICG の蛍光スペクトルと同一の画面表示でリアルタイ
ムに生体組織を観測する。実験には豚胃組織を使用した。豚胃組織の胃前壁漿膜下層に ICG
溶液(濃度 1×10-4M)を注射し、リンパ組織に流れている ICG 溶液を半導体レーザ(波長:
785nm パワー: 50mW)で励起させ、イメージングファイバと近赤外線カメラによって、リア
ルタイムの近赤外線蛍光画像を撮影した(図 1b、矢印がリンパ節である)
。LED 光源の照射
により、可視の画像も撮影した(図 1a)
。また、ICG の蛍光スペクトルを分光器と CCD 検
出器で取得した(図略)
。そして、二つの画像を合成し、蛍光スペクトルと同時に、リンパ
組織内の ICG の蛍光を観測することにより、リンパ節の位置の観測が出来た(図 1c)。可視
画像の再生スピードは約 10fps(Frames Per Second)であり、近赤外線蛍光画像の再生スピード
は約 7fps である。合成画像の再生スピードは約 5fps である。更に、近赤外線蛍光画像によ
り、リンパ管の流れも明確に観測できた。
a
b
Fig.1
c
Color video(a) near-infrared video(b) and composite video(c) of ICG in lymph node
【文献】S. Kaneshiro, Visual C# 2010 Perfect master―MICROSOFT VISUAL STUDIO 2010,
Shuwasystem, 2011
30
バイオフォトニクス研究
超高速液体クロマトグラフィーと赤外イメージングによるカンゾウ
の分析
Analysis of Chinese licorice root (Glycyrrhiza uralensis) with ultra high-performance
liquid chromatography and FTIR imaging
応用化学生物学科 木村-須田廣美(Hiromi KIMURA-SUDA)
The most important active ingredient of Chinese licorice root (Glycyrrhiza uralensis), glycyrrhizin,
is used as drugs and food additives. Here, we have demonstrated that combination of ultra
high-performance liquid chromatography (UHPLC) and FTIR imaging to determine glycyrrhizin in
Glycyrrhiza uralensis is a more effective and efficient quality control method.
カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis)の根は生薬「甘草」として知られており、有効成分であ
るグリチルリチン酸は甘味料としても広く用いられている。生薬「甘草」はチップ状で流
通しているものが多いため、その品質管理や産地判別が極めて重要な課題となっている。
これまで我々は、赤外イメージングと顕微ラマン分光に着目し、カンゾウのキャラクタリ
ゼーションを行ってきた。また、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)や同位体顕微
鏡による元素分析を用い、カンゾウの産地判別法についても検討してきた。その中でグリ
チルリチン酸の分布を示した赤外イメージによるグリチルリチン酸の簡易定量法や同位体
顕微鏡による産地判別法の可能性を示してきた。本研究では実際の品質管理の現場を想定
し、食用ならび生薬として市販されているカンゾウについて、赤外イメージング及び超高
速クロマトグラフィー(UHPLC)を用いてグリチルリチン酸を評価・検討したので報告する。
試料には食用ならび生薬として市販されているカンゾウ、標準試薬にはグリチルリチン
酸(和光純薬)
、測定には UHPLC (Agilent Technologies, 1260 Infinity)と赤外イメージング
(Spotlight 400/Spectrum 400)を用いた。
図1は UHPLC で測定した食用(a)ならび生薬(b)カンゾウの抽出液のクロマトグラムを示
した。リテンションタイム 10.94-10.97 には有効成分であるグリチルリチン酸のピークが検
出され、クロマトグラムのパターンからカンゾウであることが確認できた。また、グリチ
ルリチン酸の含有量を比較した結果、食用では明らかに少ないことが示された。図2には
食用(a)ならび生薬(b)カンゾウのグリチルリチン酸分布を表した赤外イメージを示した。グ
リチルリチン酸の分布と強度を比較検討した結果、生薬は食用に比べてグリチルリチン酸
が木部に集中していることが観察され、UHPLC と赤外イメージングを併用することで、カ
ンゾウの効果的な品質管理が行えることが示された。
(b)
Intensity
10.94
(グリチルリチン酸)
4.96
(リクイリチンアピオシド)
Time[min]
10.97
(グリチルリチン酸)
Intensity
(a)
Time[min]
図 1. カンゾウの UHPLC クロマトグラム
(a)食用、(b)生薬
図 2. カンゾウの赤外イメージ:
グリチルリチン酸の分布
(a)食用、(b)生薬
31
コロキウム報告
平成 27 年度中に開催されたコロキウムを以下に記す。今回の主催はフォトニクス研究所
で、共催は応用物理学会北海道支部とホトニクスワールドコンソーシアムである。
日時:平成 28(2016)年 2 月 29 日(月)
場所;本学実験棟 D209 号室
講師:Prof. Jean-Michel Nunzi(カナダ、クイーンズ大学)
演題:”Nonlinear optical nano-photovoltaics”
聴講者数は 16 名であった。
32
バイオミメティクス研究センター活動報告
バイオミメティクス研究センター
2015 年度の活動を以下に示す。
1.北海道大学総合博物館が主催し、科学技術研究費新学術領域「生物規範工学(領域代
表:下村政嗣)
」が共催する「バイオミメティクス市民セミナー」に高分子学会北海道支部
とともに協賛し以下の活動を行った。
(1-1) セミナー40:2015 年 4 月 5 日 (日) 北海道大学 学術交流会館
「自然に学ぶ : 地域づくり ― 滋賀での実践」
星野敬子(NPO 法人 アスクネイチャー・ジャパン 研究員・コーディネーター)
(1-2) セミナー41:2015 年 5 月 2 日 (土) 北海道大学 学術交流会館
「生体にとても近い材料 ~ゲル~」
黒川孝幸(北海道大学 先端生命科学研究院 准教授)
(1-3) セミナー42:2015 年 6 月 6 日 (土) 紀伊國屋書店 札幌本店
「昆虫のすごい生活」
丸山宗利(九州大学 総合研究博物館 助教)
(1-4) セミナー43:2015 年 7 月 5 日 (日) 北海道大学 学術交流会館
「フナムシから着想を得た流路の設計と応用」
石井大佑(名古屋工業大学 若手研究イノベータ養成センター テニュアトラック助教)
(1-5) セミナー44:2015 年 8 月 2 日 (日) 紀伊國屋書店 札幌本店
「環境とイノベーション : 農工医連携によるフィールドデータサイエンス」
渡邊高志(高知工科大学 地域連携機構 教授)
(1-6) セミナー45:2015 年 9 月 5 日 (土)
北海道大学 クラーク会館
「特許からみるバイオミメティクス」
長谷川誠(株式会社 富士通総研 第一コンサルティング本部社会調査室 シニアコンサ
ルタント)
(1-7) セミナー46:2015 年 10 月 3 日(土) 北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟
「生物と材料のシンフォニー:バイオマテリアルと境界科学」
赤澤敏之(北海道立総合研究機構 工業試験場材料技術部 研究主幹)
(1-8) セミナー47:2015 年 11 月 7 日(土) 北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟
「昆虫腸内菌の生き様に学ぶ」
出川洋介(筑波大学 菅平高原実験センター 助教)
(1-9) セミナー48:2015 年 12 月 5 日(土) 北海道大学 学術交流会館
33
「骨粗鬆症の病態から学ぶ強い骨の構造と質」
木村-須田廣美(千歳科学技術大学 理工学部 応用化学生物学科 教授)
(1-10) セミナー49:2016 年 1 月 11 日(月)北海道大学 学術交流会館
「人間とフジツボ」
室崎喬之(旭川医科大学 医学部化学教室 助教)
(1-11) セミナー50:2016 年 2 月 6 日(土) 北海道大学学術交流会館
「バイオミメティック材料の開発:微粒子が拓く省エネルギー型ものづくり」
藤井秀司(大阪工業大学 工学部 応用化学科 准教授)
2.PWC バイオミメティクスクラスター講演会に協賛した。講演は以下のとおりである。
日時:2015 年 11 月 25 日(水)千歳科技大講義棟
講師:斉藤彰(大阪大学大学院工学研究科 准教授)
演題:モルフォ蝶のミステリーと産業応用
3.2016 年 1 月 27 日〜29 日に東京ビッグサイトにおいて開催された「国際ナノテクノロ
ジー総合展・技術会議」に出展した Biomimetics Network Japan に共同展示を行った。
34
文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業
ナノテク支援運営委員会
ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウ機関が緊密に連携し
て全国的な設備の共用体制を共同で構築することを目指した「文部科学省ナノテクノロジ
ープラットフォーム事業」が 2012 年度から開始されてから、すでに 4 年が過ぎた。本学の
フォトニクス研究所は「分子・物質合成プラットフォーム」を他大学と分担して担当して
きたが、年々利用が伸びつつある。
以下に活動の紹介として、2015 年 1 月以降に実施した主な行事を列挙する。
・nano tech 2015 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(東京ビックサイト)に出展
1 月 28 日(水)~1 月 30 日(金))
・
「新装置披露会」
(千歳科学技術大学)を開催
6 月 22 日(月)
・ナノテクノロジープラットフォーム学生研修プログラムを実施(千歳科学技術大学)
9 月 8 日(火)~9 月 11 日(金)
・インターオプト 2015(パシフィコ横浜)に出展
10 月 14 日(水)-10 月 16 日(金)
・ビジネス EXPO「第 29 回北海道技術・ビジネス交流会」
(アクセスサッポロ)に出展
11 月 5 日(木)-11 月 6 日(金)
・
「ラマン測定会」
(千歳科学技術大学)を開催
12 月 9 日(水)
2016 年 3 月現在の運用体制(ナノテク支援運営委員会)は以下のとおりである。
Olaf Karthaus(応用化学生物学科)委員長
下村 政嗣(応用化学生物学科)
木村-須田 廣美(応用化学生物学科)
大越 研人(応用化学生物学科)
平井 悠司(応用化学生物学科)
小田 久哉(電子光工学科)
河野 敬一 (北海道大学名誉教授)シニアアドバイザー
雀部 博之 (本学前学長・名誉教授)顧問
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16th Chitose International Forum on Photonics Science and
Technology (CIF’16) 開催報告
CIF’16 組織委員会
2015 年 9 月 30 日、
10 月 1 日の両日、
本学において恒例の Chitose International Forum (CIF’16)
が開催された。第 16 回目を迎える今年は、基礎から応用まで光技術全般を対象に「Applied
Material for Photonics」と「Optical Devices and Systems」を主題として三つのオーラルセッシ
ョン(招待講演 7 件と一般講演 2 件で構成)とポスターセッションを開催した。
さらに米国 Purdue 大学根岸英一先生と北九州産業学術推進機構國武豊喜理事長を講師に
お迎えして、一般市民も対象とする特別講演を行った。
三つのセッションでは国外からの 1 名の研究者を含む 9 件の講演が行われ、大学院生な
ど学生の参加もあり、それぞれの研究分野において活発に意見が交換された。
ポスターセッションでは 23 件の発表があり、本学の大学院生や北大、名古屋工大、室蘭
工大、シュトゥットガルト大、ベルリン自由大の研究員らがそれぞれの研究について熱心
に発表し、国内外からの研究者とも熱心な意見交換が行われた。
特別講演
特別講演をされる根岸英一博士(左)と国武豊喜博士(右)
今回の特別講演は、2010 年のノーベル化学賞を受賞されたパデュー大学特別教授の根岸
英一先生と 2014 年に文化勲章を受章された九州大学名誉教授・北九州産業学術推進機構理
事長の國武豊喜先生のお二人にお願いした。
根岸英一先生の特別講演のタイトルは「夢を持ち続けよう!」で、ノーベル賞受賞者の
確率は 1,000 万人に一人であることにたとえて、ご自身の研究の足跡を語られた。さらに「遷
移金属の Magical Power」と題したクロスカップリング研究に関する講演があり、聴講した
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学生や研究者に大きな刺激を与えられた。
國武豊喜先生の講演タイトルは「ナノテクと分子の組織化」で、地球や身近なものの大
きさをたとえにして「ナノ」のサイズの説明をされ、その技術が我々の実生活でどのよう
に役立っているか等、ナノ技術の有用性について解説された。さらに先生のご専門である
合成二分子膜の解説と今後の展開について話され、ナノテクノロジーの未来はまだこれか
らであると言う主旨をわかりやすく講演された。
國武先生は 2015 年の京都賞受賞が決まっており、授賞式が 11 月 10 日と間近に迫ってい
る中のご講演で、会場からお祝いの拍手が送られた。
なお、本特別講演の参加者は学会参加者、学生等学内関係者、市民あわせて約 200 名で
あった。
Session 1:
本セッションでは有機フォトニクスに関する 3 件の招待講演が行われた。最初は九州大
学安達千波矢教授による有機 EL(有機 LED)に関して、スピン統計に起因する効率の限界
を打破するさまざまなアプローチが紹介された。次いで山形大学の城戸淳二教授により、
同じく有機 EL の講演が行われ主として白色 EL の基本から応用展開に至るさまざまな話題
をお話しいただいた。照明に有機 EL が広く用いられる日も近いことをうかがわせた。最後
は韓国ハンヤン大の Nakjoon Kim 教授による有機フォトリフラクティブ材料に関する講演
であった。ひところに比べ沈滞がちに見える有機フォトリフラクティブの分野ではあるが、
ナノ材料などの導入による新しい展開が期待される内容であった。
ちなみに、最初に講演いただいた安達教授は、元千歳科技大教授である。紹介された業
績に付せられた名前の中に、本学の卒業生で現在の安達研のスタッフとして活躍している
もの数名を見出し、往時を知るものとしては感慨深いものがあった。
Session 2:
このセッションでは、最先端の光技術と通信技術に関する、基礎から応用に至る講演が
行われた。最初に産業技術総合研究所電子光技術研究部門シリコンフォトニクスグループ
研究グループ長、山田浩治博士から、シリコンフォトニクスの現状に関する講演が行われ、
他の技術との組み合わせを考慮することによる極小、超高密度、超低消費電力のシリコン
電子光デバイス実用化への可能性が示された。続いて日本電信電話株式会社NTT未来ね
っと研究所フォトニクストランスポートネットワーク研究部光波処理基盤研究グループ主
任研究員、佐野明秀博士によってマルチモード・マルチコア光ファイバーを用いた空間分
割多重大容量光通信技術の現状とその将来予測が報告された。最後に、千歳科学技術大学
理工学部電子光工学科、吉本直人教授からは、急速に帯域が増大しているスマートファン
等のための無線通信システムと光通信システムを融合させ、インターネットオブシングス
(IoT)を実現するためのプラットフォームの例が提示された。講演後は参加者からの質疑
応答など、活発な議論がおこなわれた。
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Session 3:
本セッションの最初の講演は飯田和利博士(Air Liquide Laboratories 社)による、日本に
おける博士号に関する問題点と改善を議論した招待講演が行われた。CIF 本来のテーマから
は離れた講演ではあったが、日本の博士号および博士課程に関して考えさせる講演であっ
た。続いて、平井悠一氏(北海道大学大学院)から希土類蛍光錯体として有望な Eu 錯体の
合成法、蛍光特性、ガラス転移温度などの光学的、熱力学的特性の報告があった。続いて
水本朔氏(千歳科学技術大学大学院)は、胆石の治療法として短光パルス照射による治療
の可能性を探るため、短光パルス照射による胆石の分子構造の変化を観測する等の基礎研
究を報告した。
Poster Session
ポスターセッションは第 2 日目の 10 時より 2 時間にわたって開催された。全 23 件の申
し込みがあり、内訳は数え方にもよるが本学関係が 18 件、他に北海道大学、名古屋工大、
室蘭工大より各 1 件、さらにドイツより 2 件であった。例年に比べ件数が少なかったのは
残念であったが、この第一の原因は企業の内定式と日程が重なるため参加できない M2 が多
数いたためである。今後の反省材料としたい。
分野は例年通り本学の領域の広さを反映して多岐にわたっており、多彩な内容が随所で
活発に討議されていた。
本ポスターセッションにおいては以下に示す 3 件の発表に対し、ポスター賞が川瀬委員
長から授与された。
P-8 Analysis of Bone Quality of Femurs in Smoking Rats
Yuya Kanehira, Hidetoshi Ueno (CIST), Koichi Tomoda Kaoru Kubo, Hiroshi Limura (Nara
Medical Univ.), Hiromi Kimura-Suda (CIST)
P-9 Effects of D/A and A/D converter on 40 Gb/s 64-Cap fiber optic communication systems
Hirotaka Ochi, Shinya Sasaki (CIST)
P-22 Biomimetic Liquid Selective Channel
Shuto Ito, Daisuke Ishii (Nagoya Institute of Technology)
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編集後記
本学は平成 27 年 4 月より学部名称を総合
光科学部から「理工学部」へと改めた。あ
わせて、バイオ・マテリアル学科を「応用
化学生物学科」に、光システム学科を「電
子光工学科」に改めた。この 28 年 4 月から
はグローバルシステムデザイン学科を「情
報システム工学科」に改組することも決ま
っている。
光を専門とする大学として発足した本学
の学部名から「光」が消えた。名称変更の
一つの理由は世の中の誤解を解くことであ
る。総合光科学部では「極めて光に特化し
た教育研究を行っている」と捉えられるき
らいがあり、いろいろな場で多少の釈明を
求められたわけである。光科学は光のみで
成り立つものではなく、電子・機械・物理・
化学などを横断する分野であり、学生も教
員も光を含む広いフィールドで活動してい
るということは本紀要を一覧しただけも明
らかである。しかしながら学生募集や就職
活動においては、本学の姿を理解してもら
うために繰返しそれを説明する必要があっ
た。
理工学部となると、世の中にあまた存在
する理工学部の中で、改めて本学の特色が
問われるはずである。その一つはやはり「光」
であり、理工学部になった今こそそれを再
認識すべきではなかろうか。その中でフォ
トニクス研究所の位置付けや役割もおのず
と浮かび上がってこよう。
(YK 生)
千歳科学技術大学
編集委員
佐々木 愼也(委員長)
川辺 豊
(幹事)
カートハウス オラフ
下村 政嗣
山林 由明
唐澤 直樹
大越 研人
小田 久哉
大沼 友一郎
編集庶務担当
柏倉 喜美子
フォトニクス研究所紀要
第6巻
第1号
平成 28 年 3 月 31 日発行
編集
フォトニクス研究所紀要編集委員会
発行者 千歳科学技術大学
〒066-8655 北海道千歳市美々758-65
電 話
0123-27-6003
39
通巻 6 号