生産者の詳細情報 - 有限会社ヴァンクゥール

2016 年 3 月吉日
~突撃★ドメーヌ最新情報!!~
◆VCN°56
ル・クロ・デュ・テュ=ブッフ
生産地方:ロワール
新着ワイン 3 種類♪
VdF ロモランタン 2014(白)
以前、ネゴスでリリースされていたロモランタンがル・クロ・デュ・テュ・ブッフからリリース!元々ネ
ゴスの時からロモランタンはティエリの自社畑で、ティエリ自身が畑を管理していた。2014 年、彼がネゴ
スを離れると同時に、ロモランタン畑をドメーヌに吸収した形だ!樽熟期間は 14 ヶ月!実際、発酵は 5 週
間ほどで終わっているが、新樽の香りを抑え、酸の角を取り全体の調和を整えるために長期熟成を行ってい
る!
AC トゥーレーヌ クヴェヴリ・ル・ブラン・ド・シェーヴル 2013(白)
ティエリがアンフォラで仕込む初の白ワイン!2013 年はとても厳しいミレジムで、白ワインのブドウの
中で唯一病気の被害が少なく状態の良かったル・ブラン・ド・シェーヴルのムニュピノを使用! 醸造方法
は、収穫した全房のブドウを足で踏み込みながら、ぎゅうぎゅうのすし詰め状態になるまで押し込み、その
まま手を加えず 5 ヶ月間マセラシオンを施した!ワインは、口に含んだ瞬間ベルガモットやヴェルヴェンヌ
の風味がパッと全開に鼻に抜ける。ワインを飲むというよりも、紅茶のような優しい渋みを残しながら自然
と口の中に染み入る感覚!味をしっかり残しながらワインが溶けて消えていく…。試飲のつもりが 1 本丸々
開けてしまった!
AC シュヴェルニー クヴェヴリ・ラ・カイエール 2013(赤)
ティエリがアンフォラで仕込む初の赤ワイン!2013 年はとても厳しいミレジムで、赤ワインのブドウの中
で唯一病気の被害が少なく状態の良かったラ・カイエールのピノノワールを使用!クヴェヴリ白同様に、まず
最初に、アンフォラの 2/3 を収穫した全房のブドウを足で踏み込みながら、すし詰め状態になるまで押し込
み、残りの 1/3 は除梗のブドウで満たし、そのまま手を加えず 5 ヶ月間マセラシオンを施した!ワインの味
わいは、とてもエレガントでフィネスがあり、最後の余韻に残る優しく細かいタンニンと、質の高いマールの
ようなブドウの搾りかすの何とも言えない風味が後を引く!
ミレジム情報
当主ティエリ・ピュズラのコメント
2013 年は、2012 年同様に収量がとても厳しい年で、また、ブドウの潜在アルコール度数が上がらない年
だった…。5 月上旬、下旬と 2 回に渡り霜が降りシュヴェルニーは多大な損害を被った。今回仕込んだル・ブ
ラン・ド・シェーヴルのムニュピノやラ・カイエールのピノノワールは、その中でも被害が比較的少なかった。
その後、冷涼で曇りがちな天候が 9 月まで続いたが、この間雹も病気の被害もほとんどなく、ブドウの成長
は遅れながらも比較的安定を保っていた。だが、9 月終わりの収穫開始時期から天候は再び下り坂…。収穫の
終わりまで雨の多い不安定な天候に見舞われた。この影響で、再びブドウの糖度は希釈され、腐敗も広がり、
後半から多くのブドウを選果せざるを得なかった。
2014 年は、ミルデューが猛威を振るった年だった。例年になく冬が暖かく、霜もほとんど下りずにそのま
ま春を迎えた。春は 5 月上旬まで、まるで初夏のような良い天候に恵まれ、ブドウの成長ペースも 1 ヶ月ほ
ど早かった。だが、5 月中旬に入ると一転して、気温の上がらない雨がちな天気が続き、開花までは順調だっ
たが、それ以降はブドウの成長のスピードが鈍化し、畑に病気が出始めるようになった。病気が本格的に蔓延
したのは 7 月中旬から 8 月中旬にかけて。長雨と湿気によりミルデューが猛威を振るった。シュヴェルニー
は散布が効いたおかげで、どうにか蔓延を防ぐことができたが、モントゥー・シュール・ビエーヴル周辺やロ
モランタンのあるシェール川周辺は被害に遭った。この時点で、ミルデューによる被害は 20%~30%。9 月
に入ってから、再び天候が回復しミルデューは収まったのだが、今度は一部晩熟のコーなどがショウジョウバ
エ「スズキ」の被害にあいブドウは減収となった…。2013 年同様、収量自体は例年を下回っているが、ブド
ウの完熟度は例年以上に高く酸もしっかりとあり、ワインの品質的には当たり年と言えよう。
「ヨシ」のつ・ぶ・や・き
新しくル・クロ・デュ・テュ・ブッフのワインをスタートさせることとなったヴァンクゥール。…と言って
も、取り扱うワインは、元々ティエリ単独のプロジェクトから端を発しているロモランタンとクヴェヴリのみ。
ティエリから見れば、この 3 種類はドメーヌのワインと言うよりも、ティエリ・ピュズラ色の強いワインと
考えているようだ。
さて、今回日本でリリースするワインだが、相変わらずティエリ節は全開!どれも、ピュアでダシのような
旨味の効いた上品な味わいに仕上がっている!
ロモランタンは、新樽を 30%使用し 14 ヶ月の熟成!ティエリ曰く、新樽はその木の性質や焼き加減によ
って多少異なるが、往々にして短い熟成期間の方がワインに樽の香りが付きやすく、樽の香りを抑えたいので
あれば、少し長めに熟成させた方が効果的なのだそうだ。ちなみに、一般的に古樽は新樽よりも樽の香りを抑
えられると言われているが、古すぎると却って樽の香りが極端に浮いてしまう場合があるようで、ティエリは
その辺を考慮しながら常にテイスティングによってワインの熟成期間を判断しているそうだ。
クヴェヴリはジョージアワインからインスピレーションを受け仕込まれている!今回 2013 年、白はル・ブ
ラン・ド・シェーヴルのムニュピノ、赤はラ・カイエールのピノノワールで仕込んでいるが、2014 年は、白
はフリリューズ、赤はラ・ゲルリーでリリースされる予定。現在はまだワインのスタイルを模索中で、ブドウ
も醸造方法も決まっていない。ティエリ曰く、「アンフォラに関して、自分はまだ赤ちゃんみたいなものだ。
大切なのは、同じキュヴェで、樽で仕込んだものとアンフォラで仕込んだものとを比較し、アンフォラを介し
たワインの味わいを十分に把握すること。そこから、次に、アンフォラに合うブドウ品種、テロワール、醸造
方法を少しずつ時間をかけながらゆっくりとひも解いていくつもりだ!」と。試すと言っても、ドメーヌにア
ンフォラは 2 つしかないので、年に赤白 1 つずつしか醸造できない…毎年がティエリにとっても、我々にと
っても大変貴重な経験となる、スペシャルなワインだ!
(2015.9.16. & 2016.2.3.のドメーヌ突撃訪問より)
「アンフォラのワインには剥き出しのテロワールがある!」新たなワインの境地を探る!
ジャン=マリー&ティエリ・ピュズラ
(ル・クロ・デュ・テュ=ブッフ)
生産地
ロワール地方の古城の街ブロワから南に 10 km ほど南下したところに、ル・クロ・デュ・テュ・ブッフのあるレ・
モンティル村がある。ドメーヌはちょうどボノームのドメーヌの真向かいにあり、ティエリの住まいはドメーヌの
隣に併設されている。畑は、レ・モンティル村の周辺にあるシュヴェルニー地区に 10 ha、そして隣村のモントゥ
ー・シュール・ビエーヴルにあるトゥーレーヌの畑 4 ha の計 14 ha を所有する。土壌は、主にシュヴェルニー地
区に多く見られるシレックス混じりの粘土質で、粘土質がふくよかなボディ、そしてシレックスが緻密なミネラル
と締まりのある酸味をワインに与える。海洋性気候と大陸性気候がちょうど交わる境目にあり、さらにロワール川
の影響により、一年中気候は穏やかで夏は暖かく、秋から冬春にかけては川と地上の温暖差で朝夕はしばしば深い
霧に覆われる。また、ロワール川の浸食と堆積によってつくられたテラス状の緩やかな起伏とソローニュの森が複
雑なミクロクリマを作りだす。
歴史
ル・クロ・デュ・テュ・ブッフは、歴史をひも解けば、中世の頃レ・モンティル村にすでにあった 6 ha ほどの畑
にまで遡る。テュ・ブッフのワインは、当時のフランソワ 1 世と女王クロードのお気に入りのワインで、その高い
評価はヘンリー3 世の時代の文献にも残されている。その畑を、1990 年ジャン・マリーが引き継ぎ、その後ティ
エリが加わり、1994 年に兄弟でドメーヌ「ル・クロ・デュ・テュ・ブッフ」を起ち上げた。ドメーヌ立ち上げ前
から、彼らはすでにワインに係わっていたが、以前はそれぞれ別々の場所で個々にワインを学んでいた。ジャン=
マリーは、数年間シャンパーニュで研修し、ティエリは、ボルドーで 2 年、マコンで 1 年醸造の学校に通い、再び
ボルドーに戻り、サンテミリオン地区のプルミエ・グランクリュ「クロ・フルテ」で 1 年の研修、その後カナダで
コマーシャルの勉強をし、帰国後は 4 年間、南仏バンドールの「ドメーヌ・ド・ラ・トゥール・デュ・ボン」での
研修と、多岐にわたっている。1999 年に、ティエリがネゴシアン「ティエリ・ピュズラ」を起ち上げ、以降、テ
ィエリはネゴスとドメーヌの両方を管理する多忙な日々を送ることとなる。2014 年、近々訪れる兄のジャン=マ
リーの引退や、ネゴスの共同経営者ボノームの独立を考え、ティエリはネゴスから手を引き、ル・クロ・デュ・テ
ュ・ブッフ一本に専念し現在に至る。
生産者
ヴァンナチュール界では、超ベテランのトップに君臨するピュズラ兄弟。現在、ドメーヌは兄のジャン=マリーと
ティエリ・ピュズラ、そして正社員 2 名の 4 人で管理している。
(季節労働者数人が常時手伝いに入る)。控えめな
兄のジャン=マリーと、やんちゃで社交的な弟ティエリの性格はまるで正反対だが、両者の息はぴったり合ってい
る。好奇心旺盛なティエリは、ネゴスをやめてできた時間を使い、現在はドメーヌの仕事と並行して世界のワイン
の発見と開拓を精力的に行っている。ヴァンクゥールが今回扱う QVEVRI(クヴェヴリ)赤白も、その流れの一環
で、ジョージアワインに多大なインスピレーションを受けて仕込んだものだ。ロモランタンは、以前ネゴシアンだ
ったが、自社畑のためドメーヌにてリリースされている。
ル・クロ・デュ・テュ・ブッフの+α情報
(ヴァンクゥールが扱うワインのみ)
<もっと知りたい畑のこと>
土壌:アルジロ・シレックス
総面積:14 ha
品種:ピノノワール、ガメイ、コー、ソービニヨン、ロモランタン、シャルドネ、ムニュピノ
樹齢:5~70 年
剪定方法:ギュイヨー・サンプル、ゴブレとコルドンの中間
生産量:30~45 hL/ha
収穫方法:収穫者 12~13 人でケースでの手摘み。畑で房レベルの選果。
ビオの認証:1998 年、ナチュール・エ・プログレ認証
<もっと知りたい醸造のこと>
醸造方法:クヴェヴリ赤白はアンフォラでのマセラシオン、白は樽発酵熟成。
 クヴェヴリは、ブドウを畑で選果後、ブドウの状態に応じて全房もしくは除梗、あるいは白はマセラシオンせ
ずにジュースのみと年によって仕込みの方法を変えている。全房の場合は、ブドウを目一杯に詰め込むために、
ピジャージュをしながらアンフォラに押し込む。その後、何も手を加えずマセラシオンと発酵を行う。マセラ
シオンの期間は約 5 ヶ月。マセラシオン終了後、フリーランとプレスをアッサンブラージュし、再びワインを
アンフォラに戻し、さらに 5 ヶ月熟成。熟成終了後、スーティラージュをして瓶詰め。
 ロモランタンは、ブドウ畑で選果後、プヌマティックプレスで 3~4 時間かけて圧搾。ジュースをそのまま古
樽へ移し自然発酵。発酵期間は 1 ヶ月~3 ヶ月。古樽でトータル 13 ヶ月の熟成。
酵母:自然酵母
発酵期間:クヴェヴリの白は 1000 L のアンフォラ、赤は 800 L アンフォラで約 1 ヶ月。ロモランタンは古樽で 5
週間。
熟成方法:クヴェヴリはマセラシオンのまま赤、白ともにアンフォラで 5 ヶ月。
ロモランタンは古樽 228 L で 1 年~13 ヶ月。
SO2 添加:無添加
フィルター:赤、白共にノンフィルター
ちょっと一言、独り言
2016 年、ティエリとヴァンクゥールが取引を始めてからもう 10 年の月日が流れる。思い起こせば、ヴァンクゥ
ールの立ち上げの祝福としてティエリからプレゼントされたヴァンクゥール・ヴァンキュ。このワインがヴァンク
ゥールの礎を築き、今もなお名実共にフラッグシップとなっている。
立ち上げの時、生産者の間ではまったく無名だった我々が新規のワイナリーと取引をさせてもらうために、如何
にして信頼を得られるかが大きな課題だった。当時「どの生産者と働いているのか?」と訪問するたびに必ず尋ね
られ、会社の夢や資金力を語るよりも、誰と一緒に働いているかということが生産者には非常にわかりやすい会社
のステータスであり、彼らとの距離を縮める近道だと気が付いた。そして、当時その信頼の突破口を開いてくれた
のが、まさにヴァンクゥール・ヴァンキュをプレゼントしてくれたティエリだった。ティエリは、その当時ヴァン
ナチュールの世界では誰もが知る時代の寵児。そのティエリがヴァンクゥールと一緒に働いているということは、
他の生産者にとって信頼以外の何ものでもなかったことを何度も実感させられた。
あれから 10 年…ティエリとヴァンクゥールは、ネゴスを通してお互いに良い形で成長した。そして、2014 年に
ティエリがネゴスを離れ、ボノームという優秀な継承者を残した。実際、ティエリが突然ネゴスから手を引くとい
う話を初めて耳にした時は正直動揺が隠し切れなかったが、今となればボノームとの巡りあわせを与えてくれたテ
ィエリに恩義を感じている。こうして、ヴァンクゥールは節目でティエリとの縁を感じ、親心のような愛情を受け
続けてきたのである。そんな、一度はヴァンクゥールとの取引を離れたティエリだが、今回 3 種類のワインととも
に再び仕事をする機会が訪れる。
3 種類とは、アンフォラで仕込んだ赤白の 2 種類とロモランタン 1 種類。ロモランタンはネゴスだったものを
ドメーヌに吸収したもので、アンフォラの赤白は初めてリリースするもの。既存のル・クロ・デュ・テュ・ブッフ
のワインとは異なる、ティエリの新たな色が全面に出たワインだけを今回取り扱うこととなった。彼自身、ある理
由で突然ネゴスを離れたが、長年仕事を共にしたヴァンクゥールには何らかの形で義理を通したいと思っていたよ
うだ。その気になる「ある理由」であるが、ティエリはジョージアワインとの出会いが大きな転機だと語った。
「アンフォラで仕込むジョージアワインの出会いは、自分がヴァンナチュールに初めて出会った時と同じくらい
の衝撃的なものだった!」2012 年に初めてグルジアを訪れたことが、まだ見ぬ未知の扉を開いたと語るティエリ。
事実、彼がネゴスから離れたのも、その新たなワインの追求に多くの時間を費やしたいためで、彼のつくるクヴェ
ヴリは、まさにその一の例だ。
「初めてジョージアワインを口にした時に、香りもストラクチャーもバランスも今までのワインと違う未知の感
覚に戸惑いを覚えた。まるで頭の中がノックアウトされた感じだ!そして、それらワインが我々のように細かい醸
造管理の中で出来上がったものではなく、ブドウをアンフォラに入れるだけ、つまり本当の意味で Laissez- faire
(放任主義)の状態でワインが出来上がることにさらなる衝撃を受けた!」と、当時の印象を語る。ティエリは、
アンフォラのメリットを「限りなくニュートラルに真のテロワールを表現できること!」と考えている。
「熟成時に
密閉タンクよりもワインを呼吸させるという意味で、今までは樽が最適だと思っていた。でも実際は、それぞれど
の材質から、どのドメーヌで、どういう時を過ごしたかによって、どうしてもワインの味わいに影響してしまう。
その点、アンフォラは、ワインがきちんと呼吸をし、さらに樽よりもニュートラル。さらに、地中に埋められた環
境の中、土の中の自然な温度で静かに発酵と熟成が繰り返される。まさに、人がワインをつくるのではなく、自然
がワインをつくるという究極の形!今までとは全く違う観点からテロワールにたどり着けるのではないか?」と直
感したそうだ。
ジョージアワインの新しい世界に触れることにより、自らの新境地を開いたティエリ。これを機に、彼の関心は
今世界のワインに目を向け始めている!もちろん、メインは、ル・クロ・デュ・テュ・ブッフで今まで通りクオリ
ティーの高いワインをつくり続けることであるが、同時に、世界のワインを通して何かフィードバックできること
を常に探し求めている!
それにしても、ワインに対する貪欲さ、視野の広さと行動力、それを美味しさに落としこめるセンスにおいて、彼
の右に出るものはいないだろう。エキサイティングに進化しつづける、いつの時代も色褪せないティエリ・ピュズラ
のワインはやっぱり面白い!