2013 年 1 月吉日 ~突撃★ドメーヌ最新情報!!~ ◆VCN°24 ルナール・デ・コート 生産地方:オーヴェルニュ ◆ドメーヌの近況報告 当主ティエリ・ルナールのコメント 2012 年は、フランス中が大凶作と言われている中、ここクレルモンフェランの北西部にある私の畑 は、6 月に軽く雹に当たって収量が 1 割ほど減ったくらいで、あとは収穫まで天候が大きく崩れるこ とはなかった。収穫したブドウは見た目ほとんど無傷で、どれも選果の必要のないきれいな状態のブ ドウを取り入れることができた。 私にとって去年は、まさに赤の当たり年だった!収穫したブドウの潜在アルコール度数は優に 14%を超えていて、しかも、超完熟していたにもかかわらず、ブドウの酸が全く落ちていなかっ た!8 月中旬から夜の気温が急に下がり、日中と大きく寒暖の差があったおかげで、ブドウは酸を 維持することができたのだ!現在、赤は発酵が終わって 2 ヶ月半が経った今も澱引きせずロングマ セラシオンを続けている!すでに果皮は半分以上ワインに溶け込んでしまっているが、ブドウの質が 本当に素晴らしかったので、溶け込んでも余計な雑味は全く抽出されていない!まだ未完成ながら も、現時点ですでにこなれた果実の凝縮味とフィネスがワインから伝わってくる!2011 年も稀に見 る当たり年だが、2012 年はより輪郭のはっきりしたフィネスのあるワインが期待できると思う!出来 上がりがとても楽しみだ! 一方、白はなかなか思うように行かなかった…。特に、収穫直前はストレスの連続だった…。10 月 14 日の時点で赤のブドウはすでに完熟していたが、白のブドウが 12.5%と、自分としてはまだ満 足の行く完熟度合いではなかった。今回は、白の収穫を待つかどうの判断に非常に頭を悩ませた …。なぜなら、天気予報は 15 日以降からほぼ毎日土砂降りの雨マークで、もしここで雨が降るとブ ドウをダメにするリスクがあったからだ。結局、悩んだ末 15 日に収穫を開始したが、実際ふたを開け てみると 15 日~18 日はみごとな快晴…。結果的にブドウはあと 3 日待つことができ、もしかしたら その間に少しでもブドウが熟したかもしれないが、ブドウを失うリスクを考えると賢明な判断だったと 思う。結果、2012 年白ワインはどっしりとした力強いタイプではなく、シャブリのようなミネラリー で酸が上品なタイプに仕上がっている。 「ヨシ」のつ・ぶ・や・き 家の小さな車庫がまさにカーヴであるティエリ・ルナールこそ、ガレージワインの名にふさわしい 「知る人ぞ知るヴィニョロン」だが、今や彼の存在も口コミで徐々に広がりつつあるようだ!私が訪 問した年末にも、アメリカ人カップルの新しいクライアントが同時に訪問に来ていて、2012 年のワイ ンを最低 1 パレット(600 本)は購入したいと相談していたし、今年 1 月に入り、パリのレストラン「サ チュルヌ」のソムリエが彼のドメーヌを訪問し、2012 年の赤と 400 本しかない白ワインを「全て買い 上げたい!」と懇願してきたそうだ!ヴァンクゥールは彼が初期の頃からの付き合いがあり、毎年他 のクライアントに優先して買付枠をもらっているが、決して油断はできない状況だ!そんな中、今回 日本でリリースされるル・クラポ・ノワール 2011 年を、前述のアメリカ人カップルと一緒に試飲した ♪ティエリが当たり年と言うだけあって、ワインは力強くかつチャーミングで旨味がぎっしりと詰まっ ている!手でていねいにブドウを除梗破砕し、そのままタンクに漬け込んだまま何も手を加えず ロングマセラシオン施した効果もあってか、タンニンに収斂味がありつつもしっとり感がありタッチ がとてもやわらかい~!ちなみに、アメリカ人カップルがこの 2011 年を試飲した後に、強気の交 渉に出たのは言うまでもない! (2012.12.27 ドメーヌ突撃訪問&2013.1.9 突撃生電話より) いたずら好きなキツネのマークでちゃめっ気たっぷり!でもワインはすごいぞ!超ド級! Renards des Cotes (ティエリ・ルナール) 生産地 フランスのへそ、クレルモンフェラン市北郊外、ミネラルウォーターで有名なボルヴィックのイメージシンボル「ピュ イ・ド・ドーム(溶岩ドーム) 」の裾野にティエリ・ルナールのワイナリーがある。そして、彼のブドウ畑は、太陽の光 が燦々と当たる南向きに面した高台の勾配急な場所に位置し、そこからはクレルモンフェランの美しい街並みを一望で きる。火山群と火山によってできた独特の痩せた土壌、日中夜そして夏と冬の気温差が著しい内陸性気候等のミクロク リマの影響で、糖と旨み、酸がしっかりとのった晩熟タイプのブドウが出来上がる。 歴史 現オーナーであるティエリ・ルナールの本業はワインの講師で、ボルドーでワインを学んだ後、1989 年から「クラブ・ ド・デギュスタシオン」という企業向けのワイン講座を開講し、現在でも地元の大企業ミシュランなどを中心にワイン テイスティングのセミナーをおこなっている。もともとビオロジックな食物に興味があった彼は、講義に必要な情報を 得るために訪ねたたくさんのワイナリーやテイスティングを通して自然派ワインの存在を知り、次第とワインの嗜好も ナチュラルな方向に傾倒していくこととなる。同じオーヴェルニュ地方で自然派ワインをつくるパトリック・ブージュ やステファン・マジュンヌとも親しく、2002 年に自身のワイナリーを立ち上げて以来、品質向上のためお互いの情報交 換は欠かせない。 生産者 現在ティエリ・ルナールは 3ha の畑を 1 人で管理している。 (繁忙期は季節労働者が数人手伝う)彼の所有するブドウ 品種は、ガメイ、シャルドネで、樹齢はシャルドネが 10~30 年、ガメイが 50~100 年の古樹。そして毎年の平均収穫 量が 15hl/ha と驚異的に少ない。ワインセミナーの主催者兼ヴィニョロンという二つの顔を合わせ持つ彼は、両方のバ ランスをうまく保ちながらも超ド級の個性的なワインをつくり出す。 ティエリ・ルナールの+α情報 <もっと知りたい畑のこと> 土壌:アルジロカリケール 総面積:3 ヘクタール 品種:シャルドネ、ガメイ、ピノノワール(植樹中) 樹齢:シャルドネ 10~30 年、ガメイ 50~100 年 剪定方法:コルドンロワイヤル 生産量:15~20hl(1ヘクタールあたり) 収穫方法:収穫者 6~10 人で手摘み。畑で房レベルの選果。 ビオの認証:なし <もっと知りたい醸造のこと> 醸造方法:赤はトラディショナル、白はバレルファーマンテーション。 ・ 赤は、ブドウを畑で選果後、機械を使わず 100%除梗破砕し木桶タンクへ。発酵中は毎日 1 回はルモンタージュを 施す。(ピジャージュはなし)マセラシオンの期間は約 45 日。フリーランとプレスをアッサンブラージュした後、 古樽に移し約 1 年の熟成、その後ファイバータンクで 1 ヶ月の熟成。 ・ 白は、ブドウ畑で選果後、垂直式圧搾機で 4 時間かけて圧搾。ジュースをそのまま古樽へ移し自然発酵。発酵と熟 成を含めて約 8 ヶ月寝かせる。 酵母:自然酵母 発酵期間:赤は木桶タンクで約 1 ヶ月。白は古樽で 8 ヶ月。 熟成方法:赤、白ともに古樽。 SO2 添加:マロラクティック醗酵終了時に少々。 熟成樽:4~6 年樽 フィルター:なし ちょっと一言、独り言 「ピエールボージェに勝るとも劣らないすごい白ワインをつくっている生産者を紹介してあげる!」 オーヴェルニュのつくり手パトリック・ブージュからこう紹介され、いったいどんな人間なんだろう?と興味津々で会 ってみた最初のティエリ・ルナールの印象は、とても物静かでハンサムな男!という感じだ。話す時も、言葉を選んで いるのか、朴訥で口数が少なく、それが却ってこちらの心理を見透かされているような気にさせる。また、ミシュラン をはじめ地元クレルモンフェランの企業を中心にワインセミナーを主催するなど、ビニョロンとセミナー講師のふたつ の顔を持つと聞いていたので、先生とか講師といった威厳を持った類の人間に弱い私にとっては、正直「解けこみにく いな~」という印象があった。でも、試飲などしながら、ゆっくり時間をかけて話し込んでいくと、何てことない、実 際の彼はただ内気なだけで、慣れてくると冗談も言うとてもいい兄ちゃんという感じで、とても親しみやすい人間だ。 ドメーヌ名である Renards des Cotes も Renard(ルナー)=キツネ(陰でイタズラするのが好き)というイメージ、 そして自らの姓を掛け合わせてエチケットに表現している。また、ルナー・デ・コートは「海賊」という意味があり、 家族を含めた自分たちの仲間はみんな美味しいものをこっそり捕獲する海賊たちという遊び心満載のネーミングだ。 彼のワインづくりにおけるモットーは「自然なかたちで美味しいワインをつくる」で、補糖(シャプタリゼーション) は一切行わない。 「美味しいワインとなるには完熟したブドウが必要」と考える彼の収穫は、しばしばまわりの生産者よ り 2 週間から時には 1 ヶ月近くも遅いのが当たり前だという。また特に驚くべきところはブドウの潜在アルコール度数 で、他の生産者が補糖をしてやっと 12~12.5%とという度数に対し、彼のブドウは平均が 14%以上で、しかも補糖ナ シなのである。たとえば 2004 年の Entre Chiens et Loups 白は、エチケットの表示アルコール度数が 13.5%となって いるが、実際の度数は 14.6%で残糖が 25g!それでいて飲み口にアルコールの重さを感じさせない適度なバランス感が あるのだからスゴイ!ネクターのようなワインとはまさに彼のようなワインのことを言うのだろう。(ちなみに Entre Chiens et Loups のネーミングには、 「犬(ペット)と狼(野性)の間=ワインの特徴にワイルドさと従順さの両面がバ ランスよく出ている」という意味が隠されている!) 彼のつくるワインは赤も白もテーブルワインだが、これは INAO(フランス国立原産地呼称研究所)の規定で、VDQS はアルコール度数が 12.5%までと決まっているらしく、彼のように毎年 13%を補糖なしでも超えてしまうワインはオー ヴェルニュの VDQS では認められていないという何とも皮肉な理由からだそうだ。 「補糖をしなければワインにオーヴ ェルニュの地方らしさが出ないと INAO は考えている。13%以上のワインを補糖なしでつくるのは彼らは不可能だと思 っているのさ」と皮肉たっぷりに言う彼の言葉の裏には、自らのワインに対する確固たる自信がうかがえる。 ティエリ・ルナール…イタズラ好きでお茶目なキツネちゃん。 またひとつオーヴェルニュという土地から個性あるすばらしい生産者が現れた!乞うご期待!
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