64列を超えるCTの技術と臨床 - 東芝メディカルシステムズ株式会社

平成25年11月25日発行 月刊インナービジョン第333号付録
64 列を超えるCTの技術と臨床
東芝 CT 事業の展開とこれから
今井喜与志 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 営業部
Aquilion PRIME 製品開発について
新野 俊之 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 事業部 CT 開発部
Technology of Aquilion PRIME
Aquilion PRIME の性能評価
舩山 和光 公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 第 2 放射線部
検診領域への応用
長澤 宏文 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科 / がん予防・検診研究センター
消化管領域への応用
安田 貴明 長崎県上五島病院 放射線科
救急領域への応用
森原 宗憲 大阪府三島救命救急センター 放射線科
Clinical Benefit of Aquilion PRIME
循環器領域の臨床応用
石村理英子 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 循環器センター 内科
Dual Energy 技術を用いた尿路結石の画像診断
山口 聡 医療法人仁友会 北彩都病院 泌尿器科
Aquilion PRIME
Symposium
2013
64 列を超える CTの
技術と臨床
02 東芝 CT 事業の展開とこれから
今井喜与志 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 営業部 部長
2 013
12
03 Aquilion PRIME 製品開発について
新野 俊之 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 事業部 CT 開発部
December
Technology of Aquilion PRIME
04 Aquilion PRIME の性能評価
舩山 和光 公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院
第 2 放射線部
06 検診領域への応用
長澤 宏文 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科 /
がん予防・検診研究センター
08 消化管領域への応用
安田 貴明 長崎県上五島病院 放射線科
別冊付録
企画:東芝メディカルシステムズ 株式会社
〒 324-0036
栃木県大田原市下石上 1385 番地
●問い合わせ先
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編集・制作:株式会社インナービジョン
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TEL 03-3818-3502
FAX 03-3818-3522
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印刷 欧文印刷株式会社
(禁・無断転載)
10 救急領域への応用
∼バリアブルヘリカルピッチスキャンの外傷 Panscan への臨床応用
森原 宗憲 大阪府三島救命救急センター 放射線科
Clinical Benefit of Aquilion PRIME
12 循環器領域の臨床応用
石村理英子 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
循環器センター 内科
15 Dual Energy 技術を用いた尿路結石の画像診断
山口 聡 医療法人仁友会 北彩都病院 泌尿器科
Aquilion PRIME Symposium 2013
東芝CT事業の展開とこれから
今井喜与志 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 営業部 部長
ヘリカル CT の原点「TCT- 900 S」
からの要望に応えて開発したのが Aquilion PRIME です。
2009 年に発売された初代 Aquilion PRIME は,ソフトウェアだけ
東芝の CT の歴史は,1978 年の国産初となる全身用 X 線 CT に始
でなく,ハードウェアも含めて多くのパーツを Aquilion ONE と共有
まります。海外メーカーが先行していた CT 開発に,国産メーカーの
して設計されています。2013 年 4 月に,Aquilion PRIME の新しい
先陣を切って参入しました。なかでもエポックメーキングな製品となっ
ラインナップとして追加された“Focus Edition”と“Beyond
たのが,1985 年に市場投入された,1 回転 1 秒の連続回転撮影を可
Edition”は,技術革新によりコンパクトでさまざまな医療施設に対
能にしたスリップリング方式の「TCT- 900 S」です。当時,
“モンスター
応した装置となっています。新 Aquilion PRIME における Aquilion
マシン”とも呼ばれた TCT- 900 S はヘリカルスキャンの原点であり,
ONE のイノベーションを移植して実現した,驚異的なトランザクショ
東芝の CT が海外メーカーの後追いではなく,新しい価値を創造する
ンが生み出すワークフローと高画質は,ベースとなる堅牢なアーキテ
独創的な製品であるという証明ともなりました。その遺伝子は,現在
クチャと相まって,まさに次世代のヘリカル CT と言えます。
の開発陣に脈々と受け継がれています。TCT- 900 S は,2012 年に
拡大するヘルスケア事業と東芝の使命
未来技術遺産(独立行政法人国立科学博物館)に登録されています。
東芝は,この TCT- 900 S を用いて,1985 年に世界に先駆けてヘリ
株式会社東芝は 2013 年 8 月,経営方針の新しい 3 本柱の 1 つに
カルスキャンを開発,翌年には日・米・欧で特許を取得しました。そし
ヘルスケア事業を位置づけ,東芝の総力を挙げて拡大させると宣言し
てヘリカルスキャンは,広範囲を高速に撮影する根幹技術として確立さ
ました。その最初の成果として,東芝の REGZA 開発部隊とコラボレー
れ,全世界で CT 撮影のスタンダードとなっています。1998 年にはヘリ
ションした世界初の医療用裸眼 3 D ディスプレイを 2013 年 9 月に発
カル技術を搭載したマルチスライス CT「Aquilion」が誕生。Aquilion は,
売しました。現在は,Aquilion ONE のオプションとなっていますが,
わずか 6 年間で 4 列から 64 列へと 16 倍の多列化を果たし,ヘリカル
Aquilion PRIME にも対応すべく開発を進めています。
CT は画像診断装置として医療に欠かせない存在となっています。
もう一つのご報告は,被ばく低減,低線量撮影技術である“AIDR
CT事業の展開
3 D”の普及活動についてです。東芝の現行販売機種への標準搭載
は 2012 年 7 月に,AIDR 3 D が搭載可能な既存の CT 装置へのイ
東芝は,2004 年に面検出器を搭載した「Aquilion ONE」を発売
ンストールは 2013 年 2 月にすべて完了し,現在 AIDR 3 D が搭載
しましたが,すべての CT を 320 列面検出器に置き換えようとしてい
された国内の CT は 1300 台を超えています。弊社社長・綱川の
るわけではありません。東芝の CT 事業は,Aquilion ONE によって
「AIDR 3 D は金儲けの道具にしない,すべての機種に標準装備する」
得られた技術革新をヘリカル CT に投入する相乗効果で,近年大きく
という決断のもと,東芝は 「 日本における CT の医療被ばくを一気
躍進しました。Aquilion ONE の 80 列,160 列ヘリカルの経験をも
に半減させたい! 」 という強い意志を掲げ,CT の医療被ばく低減
とに,最もトータルバランスの良い次世代のヘリカル CT として開発
に邁進しています。東芝の使命感を理解していただき,昔から変わ
されたのが,
「Aquilion PRIME」です。
らぬ情熱で支えてくださっている日本のユーザーの皆さまに改めて
世界初の64列ヘリカルCTであるAquilionは,64 列だけでも日本
深く感謝申し上げます。
で 1000 台,世
界で 4 0 0 0 台
を 出 荷し, 日
本だけでなく全
世 界 でのスタ
ンダード CT と
なっています。
しかし, 登 場
から 10 年を迎
え,64列を超え
る次 世 代ヘリ
カル CT を,と
いう臨 床 現 場
ADCTとヘリカルCTのフィードバックループよる相乗効果
2 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
AIDR 3 D をすべての機種に標準搭載
64 列を超える CT の技術と臨床
Aquilion PRIME 製品開発について
新野俊之 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 事業部 CT 開発部
“Beyond 64”をコンセプトに次世代ヘリカル CTを開発
これらの技術によって,ポジショニングから画像確認までの時間
をすべて短縮し,検査スループットを大幅に向上させています。
東芝は,1986 年に世界初のヘリカルスキャンの特許取得後,
3)64 列 CT を超える環境性能
CT のマルチスライス化を進め,64 列 CT の 「Aquilion 64 」 は短時
CT は性能アップにつれ,ガントリサイズや電源容量が増加する
間での心臓撮影を可能にし,東芝の CT として歴代 No. 1 の普及装
傾向にあり,施設によっては設置条件が問題となるケースが出てき
置となりました。そして今回,さらなる撮影能力の向上や被ばく低減,
ています。新しい Aquilion PRIME では,コンパクトなガントリ設
ワークフローの向上を実現した,新しい 80 列 160 スライス CT の
計を課題のひとつとして開発に取り組みました。
「Aquilion PRIME」 を開発しました。開発にあたって“Beyond
新しい Aquilion PRIME では,80 列検出器と 78 cm のガント
64”というコンセプトを掲げ,64 列 CT を超えるスキャン技術とワー
リ開口径でありながら,高速回転に対応したコンパクトなガントリ
クフローを実現すると同時に,環境性能においても最高峰のヘリカ
を実現しました。従来装置との比較では,体積で 34%,重量で
ル CT をめざしたものです。
28%低減し,狭い部屋への設置と,検査室の有効な空間活用を可
Aquilion PRIME のコンセプト
能にしています。
このほか,施設ごとのワークフローや電源設備にあわせた装置構
1)64 列 CT を超えるスキャン技術
成の選択を可能にしたほか,撮影時だけではなく,待機時の電力消
東芝のマルチスライス CT は,一貫して世界最小 0 . 5 mm スライ
費も低減することでトータル消費量を従来比で約 15%削減しました。
ス厚のアイソトロピック画像によって高精細画質を実現してきました。
* * *
Aquilion PRIME では,検出器を 80 列,40 mm 幅に拡張すると同
すべての面で 64 列 CT を超える新しい Aquilion PRIME が,医
時に,64 列に比べビューレートが約 1 . 5 倍に向上し,0 . 35 s/rot
療の進歩に少しでも貢献できることを願っています。
でのデータ収集を可能にしました。これにより,救急や呼吸停止不
良の撮影でもブレの少ない画像を得られるようになり,心臓検査で
も心拍の変動や不整脈の発生によるリスクを低減できます。
このほか,Aquilion PRIME では,Dual Energy ヘリカルスキャ
ン,ダイナミックヘリカルスキャンなど,東芝が開発した最新のヘ
リカルスキャン技術を搭載しています。
2)64 列 CT を超えるワークフロー
逐次近似再構成を応用した被ばく低減技術“AIDR 3 D”では,
ノイズ低減と高画質の両立を実現しましたが,若干演算時間が延
長するという課題がありました。そこで,新しい Aquilion PRIME
では,再構成エンジンの最適化と処理のマルチタスク化によって,
最大 60 fps の再構成速度を実現しました。
また,ガントリ開口
Aquilion PRIME のヘリカルスキャン技術
径を 78 cm に拡張して
アクセス性を向上させ
たことで,セッティン
グ時間が短縮し,寝台
の 84 mm の左右動機
能によって,患者位置
の修正が容易になりま
した。さらに,画像確
認が撮影完了と同時に
行える“I n s t a V i e w”
を搭載しています。
Aquilion PRIME のワークフロー全体の高速化
Aquilion PRIME のコンパクトガントリ
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 3
Aquilion PRIME
Technology of Aquilion PRIME
2013
Aquilion PRIME の
性能評価
Symposium
64 列を超える CTの
技術と臨床
舩山和光 公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 第 2 放射線部
Technology
勤医協中央病院では,2013 年 5 月の新
のサンプリング精度が 64 列 CT の約 1 . 5 倍
なる HP(Aquilion PRIME/Beyond
築移転を機に,他社製シングルスライス
になったため,0 . 35 s/rot で 900 view,
E d i t i o n:H P 6 5,C X L E d i t i o n:
C T を「A q u i l i o n P R I M E / B e y o n d
秒間 2572 view を実現している。64 列 CT
HP 53)で検討したところ,オフセンター
Edition」に,Aquilion 64 を「Aquilion/
の 0 . 5 s/rot,900 view と比較すると,常
では Aquilion PRIME/Beyond Edition
CXL Edition」にそれぞれ更新した。2 台
時 0 . 35 s/rot で撮影しても十分な高精細
の方がわずかに低下したが,ほぼ同等であっ
の C T 装置においては,冠動脈 C T には
画像を取得できる。また,0 . 5 s/rot では
た(図 5)。
P R I M E,C T 透 視や治 療 計 画 C T には
1200 view となり,さらなる高画質が可能
■ HP の違いによるノイズ,CNR の評価
CXL を使用しているが,それ以外の使い分
となる。当院のように 2 台体制の場合,ど
HP の違いによるノイズ(SD)と CNR
けは行っておらず,現状では全体の 65%
のような設定にするか,運用面で検討の余
について評 価した。C T P 4 8 6 I m a g e
の検査を Aquilion PRIME/Beyond
地があると考える。
uniformity module を用い,SD を測定
Edition で実 施している。検 査 件 数は,
■ MTF の評価
し て C N R を 算 出 し た。 撮 影 条 件 は,
移転前の同月比で 115%(2013 年 7 月
ガントリのセンターとオフセンター(中心
120 kV,150 mAs,FC 13,スライス厚
実績)と増加している。
から約 150 mm)の MTF を,0 . 5 s/rot
5 mm(0 . 5 × 80)で,HP 51(PF 0 . 637)
,
本 講 演 では,A q u i l i o n P R I M E /
と0.35s/rotにて,ヘリカルピッチ(HP)51
64(P F 0 . 813)
,111(P F 1 . 388)で,
Beyond Edition の特長である新設計ガ
(P F 0 . 6 3 7),6 5(P F 0 . 8 1 3),1 1 1
0 . 5 s/rot と 0 . 35 s/rot にてそれぞれ測定
ントリ,ルーチンでの高速撮影,新アプリ
(PF 1 . 388)の各ピッチで測定した。撮影
している。その結果,X 線管回転時間が
ケーション“Dynamic Helical Scan”
条 件は,1 2 0 k V,2 5 0 m A,D - F O V
短いほど,また,HP が大きいほどノイズ
について,当院で行った評価を報告する。
50 cm,FC 13 で,ワイヤ法にて測定した。
が増加し(図 6),CNR が低下した(図 7)。
センターでは,どの条件でも同様の結果
ハイピッチでの撮影の際には,AIDR 3 D
新設計ガントリ
にな っ たのに対し, オフセンター では,
を組み合わせ,ノイズ低下を図る必要があ
Aquilion PRIME/Beyond Edition
0 . 35 s / r o t で低下する傾向が見られた
ると考えられる。
は従来機と比べ,780 mm の開口径はそ
(図 3)
。回転速度ごとに見ると,
0 . 5 s/rot,
のままに,体積を 34%,重量を 28%削減
0 . 35 s/rot ともに,PF 1(HP 111)を超
した新設計となっている(図 1)。
えると MTF の低下が見られた(図 4)。
Aquilion PRIME/Beyond Edition
当院では新築移転にあたり,従来機の
ま た,0 . 3 5 s / r o t の A q u i l i o n
では高速往復撮影により,最大 500 mm
導入を想定して設計していたが,操作窓の
PRIME/Beyond Edition(80 列)と
の広 範 囲の時 間 軸データを取 得できる
すぐ前にガントリが置かれるため,患者の
0 . 5 s/rot の Aquilion/CXL Edition
Dynamic Helical Scan が新しく搭載さ
様子を観察しにくいことが懸念されていた。
(64 列)でも比較した。PF がほぼ同等に
れた。これは,一定範囲内をヘリカルスキャ
Dynamic Helical Scan
しかし,移 転 時に A q u i l i o n P R I M E /
Beyond Edition に更新できたことで,
装置を操作窓に対して斜めに設置して,寝
台までの視野を確保することが可能となっ
た(図 2)。ガントリがコンパクトになった
システム
Aquilion
PRIME/
Beyond
Edition
Bore
780 mm
従来モデル 780 mm
W
D
2150 mm 870 mm
H
Weight
1870 mm 1800 kg
2430 mm 1070 mm 2030 mm 2500 kg
体積を 34%,重量を 28%削減
ことで,施設側の多様な状況にも対応で
見づらい
見やすい
出入口
出入口
きると考えられる。
ルーチンでの高速撮影
Aquilion PRIME/Beyond Edition に
おける 8 0 列 検 出 器の新しい専 用 D a t a
Acquisition System(DAS)は,データ
4 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
図 1 Aquilion PRIME/Beyond Edition の
ガントリサイズ
(東芝メディカルシステムズ社提供)
図 2 斜めに設置して視野確保を実現
Volume スキャン(撮影
範囲の端)を混合した,
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.41.5
D y n a m i c H e l i c a l
Scan での撮影位置によ
る SD の変化を検討した。
全 長 8 7 0 m m, 内 径
200 mm,重量 38 . 8 kg
(水充填時)の大型の筒
状ファントムを用いて,
1
影し,1 mm 間隔で得ら
れた画像の SD をすべて
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.41.5
図 4 MTF 測定結果:オフセンター
(+ 150 mm Offset 0 . 5 s/rot vs. 0 . 35 s/rot)
PRIME HP65(PF0.813)0.35s Offset
0.9
0.8
CXL HP53(PF0.828)0.5s Offset
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
12.00
0.50s
0
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.41.5
8.00
6.00
4.00
2.00
0.00
51
65
図 5 Aquilion PRIME/Beyond Edition(0 . 35 s/rot)
と Aquilion/CXL Edition(0 . 5 s/rot)の MTF の
比較:オフセンター(+ 150 mm Offset)
計測して,同じ撮影方向
(図 10)。これは,撮影範囲の両
IN 方向とガントリから出る OUT 方向では,
端とそれ以外では,スキャン方式
どちらも同様の傾向を示した。なお,スキャ
が異なるためと考えられる。
■ 体軸方向の分解能
性能を評価した。こ
Helical スキャン部分と Volume スキャ
れを機に,今後さらに,
ン部分の分解能について,櫛ファントムを
Aquilion PRIME/
用いて検討した。櫛ファントムのサイズは
Beyond Edition の
0 . 30 ∼ 0 . 55 mm まで 0 . 05 mm 間隔で
可能性を引き出す検
変化させ,ガントリのほぼ中央で撮影した。
討を行っていきたい。
51
1.45
65
1.11
111
Helical Pitch
IN方向 AEC on
35
30
25
20
15
10
5
0
140
120
100
20
80
60
40
20
0
OUT方向 AEC on mAs
position
35
30
25
20
15
10
5
0
position
140
120
100
20
80
60
40
20
0
IN方向 AEC on mAs
position
図 8 AEC 使用における撮影位置による SD の変化
撮影範囲の端(Volume Scan部分)
りが体軸方向分解能の限界であっ
た(図 9)。
櫛サイズ 0.30 mm
0.35mm
0.40 mm
0.45 mm
Volume スキャン部分の CNR を
測定したところ,Helical スキャ
スキャン 部 分 は 1 . 1 9 とな っ た
0.00
position
若干の見た目の違いがあるものの,Heli-
ン部分の 0 . 94 に対し,Volume
1.57 1.50
Standard Deviation
Beyond Edition の
cal スキャン部分と Volume スキャ
1.53
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
ることが可能となる(図 8)。
Standard Deviation
Aquilion P R I M E /
H e l i c a l ス キ ャ ン 部 分 と
1.83
0.50
1
11
21
31
41
51
61
71
81
91
101
111
121
131
141
151
161
171
181
191
201
211
ることで,全体の SD をおおむね平均化す
■撮影位置による CNR の変化
1.00
mAs
今回,
一部ではあるが,
もに 0 . 40 mm か 0 . 45 mm あた
1.50
OUT方向 AEC on
うが,CT-AEC(VolumeEC)を使用す
ン部分の分解能はほぼ同等で,と
0.50s 0.35s
2.00
図 7 HP の違いによる CNR の変化
まとめ
すると両端と中央では SD が異なってしま
2.50
mAs
ン方式が変わることから,線量一定で撮影
111
Helical Pitch
図 6 HP の違いによる SD の変化
Spatial frequency〔cycles/mm〕
で平均化した。その結果,ガントリに入る
0.35s
10.00
0.1
211 m m の範 囲を連 続
モード(2 往 復 )にて撮
0.6
Spatial frequency〔cycles/mm〕
図 3 MTF 測定結果:オフセンター(+ 150 mm Offset)
Modulation Transfer Function
■ 撮影位置による SD
の変化
PRIME HP65 0.35s Offset
0.7
Spatial frequency〔cycles/mm〕
ハイブリッド的な撮影方
法と言える。
PRIME HP65 0.5s Offset
0.8
1
11
21
31
41
51
61
71
81
91
101
111
121
131
141
151
161
171
181
191
201
211
影 範 囲 の 中 心 )と
0.8
1
0.9
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
で,Helical スキャン(撮
PRIME HP51 0.5s Offset
PRIME HP65 0.5s Offset
PRIME HP111 0.5s Offset
PRIME HP51 0.35s Offset
PRIME HP65 0.35s Offset
PRIME HP111 0.35s Offset
0.50 mm
0.55 mm
Contrast Noise Ratio
転(+ α)撮 影するもの
Modulation Transfer Function
台移動を停止して約 1 回
1
0.9
Standard Deviation
し,折り返しの両端で寝
Contrast Noise Ratio
ンモードで往復スキャン
Modulation Transfer Function
Aquilion PRIME Symposium 2013 Technology
1.40
1.20
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
0.00
Helical Scan部分 Volume Scan部分
図 10 Dynamic Helical Scan における CNR
撮影範囲の中心(Helical Scan部分)
図 9 Dynamic Helical Scan における
体軸方向分解能
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 5
Aquilion PRIME
Technology of Aquilion PRIME
2013
検診領域への応用
Symposium
64 列を超える CTの
技術と臨床
長澤宏文 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科 / がん予防・検診研究センター
Technology
国立がん研究センター中央病院では,
た,NPS では,AIDR 3 D の強度が上が
STANDARD,STRONG の 4 種類にて検
Aquilion PRIME 3 台,Aquilion/CXL
るにつれ,主に高周波成分のノイズが大き
討を行った。また,心臓周辺のモーション
Edition(64 列)1 台の計 4 台を使用し,
く低減されていることがわかる(図 1 b)。
アーチファクト低減を考慮して,管球回転
1 日に 160 ∼ 180 人の検査を行っており,
高周波のみの画像と低周波のみの画像
速度やピッチファクタの高速化も含めて検
うち約 80%が造影 CT となっている。また,
を“Image J”を用いて作成した(図 2)。
討した。すべての評価画像は,撮影スライ
がん予防・検診研究センターでは,Aquil-
高周波成分には,ノイズやストリークアー
ス 厚 1 m m × 4 0 列, 画 像 スライス 厚
ion/CXL Edition を用いて 1 日に肺がん
チファクトが含まれているが,物体辺縁も
5 mm としている。
CT 検診を約 15 件,肺フォローアップ外来
描出されていることがわかる。AIDR 3 D
まず初めに,Aquilion/CXL Edition と
で約 10 件の撮影を行っている。当施設で
を用いることで,スムージングされ辺縁が
Aquilion PRIME の画像を合わせる必要
は今 後, 肺がん C T 検 診に A q u i l i o n
ボケてしまう可能性があるため,実際に使
がある。A q u i l i o n P R I M E では線量が
PRIME および AIDR 3 D を使用すること
う場合は,高周波強調関数などを用いて,
従来の Aquilion/CXL Edition における
で,さらなる低線量化を目指すこととし,
画質のバランスをとることが必要である。
30 mA から 35 mA へと増加しているが,
そのための検討を行った。
水ファントムを用いた SD の変化を図 3
CTDI vol では従来同様 1. 9 mGy で変化はな
本講演では,肺がん CT 検診における,
に示す。肺野関数の比較では,高線量領
かった。しかし,LSCTファントム+30 cm
AIDR 3 D と Filtered Back Projec-
域では線量の変化によって SD は大きく上
チェンバーで実測したところ,Aquilion/
tion(FBP)の画像による物理データの比
下しないが,検診で使う低線量領域になる
C X L E d i t i o n での線 量を 1 とすると,
較とパラメータの検討,そして,LSCT ファ
とノイズ増加が多くなる。したがって,低
Aquilion PRIME は 0 . 84 と低値となっ
ントム画像での比較および撮影条件の決
線量領域でノイズ変化が少ない縦隔関数
ていた。これは,アクティブコリメータや
定について報告する。
を用いて検診を行っている。
ボウタイフィルタなどの違いから,実測値
物理データの比較,パラメータの検討
C T の基 本 的な画 質の M o d u l a t i o n
LSCTファントム画像での比較,
撮影条件決定
に差が出たものと考えられる。本検討では,
従来条件を超えずに,かつ画質に相違が
出ない条件を Aquilion PRIME にて設定
Transfer Function(MTF)と Noise
Aquilion PRIME による肺がん CT 検
した(1 2 0 k V,3 5 m A,0 . 5 s / r o t,
Power Spectrum(NPS)を比較する
診における被ばく低減を目的とする撮影条
PF 0 . 825,FC 3,FBP)。この設定によっ
と,従来のワイヤー法を用いた MTF では,
件の検討項目として,管電流は 35,30,
て得られた画像を Aquilion PRIME の元
F B P と A I D R 3 D(W E A K,M I L D,
20,10 mA,NPS と SD データから再構
画像(FBP)とし,A I D R 3 D を使用し
STANDARD,STRONG の 4 種類)は,
成関数は従来のFC3にFC4,FC5を加え,
た画質と比較検討した。
ほぼ変わらない MTF になる(図 1 a)。ま
さらに A I D R 3 D は,W E A K,M I L D,
a
b
高周波成分のみの画像
図 1 基本的な画像(MTF,NPS)
FBP と AIDR 3 D の比較
6 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
低周波成分のみの画像
図 2 高周波画像と低周波画像
(Image J で作成)
図 3 基本的な画質(SD)FBP と AIDR 3 D
の比較
Aquilion PRIME Symposium 2013 Technology
■ 肺がん CT 検診で見つけなければならない
病変の描出
ることがわかる(図 4)。しかし,低線量領
肺 が ん C T 検 診 で は『 肺 癌 検 診 用
いては,A I D R 3 D で 最 も 処 理 の 弱 い
域で目立つストリークアーチファクトにお
MDCT 撮影マニュアル』
(日本 CT 検診学
WEAK を用いるだけでも効果的に改善し
会 )に よ り,
“ 充 実 性 を 呈 する 癌 では
た画質が得られることがわかった。また,
5 mm 以上の病変,すりガラス状を呈する
CTDI vol 0 . 6 mGy のように極端に線量を
癌では 10 mm 以上の病変を見つけなけれ
落としたところでは,ストリークアーチファ
ばならない”とされている。このマニュア
クトは改善しきれず残っている。
ルに準じターゲットとする腫瘤サイズの決
■ 撮影条件の決定
定を行い,LSCT ファントムの模擬腫瘤を
画質優先の検討結果を図 5 に示す。従来
図 4 AIDR 3 D 使用による画質変化
使用し検討した。LSCT ファントムは,肺
検診画像に比べて管球回転速度が 0 . 35 秒
瘍が最もずれた位置での画像から検出可能
尖部と気管分岐部,肺底部において模擬
と速くなり,AIDR 3 D の WEAK 使用に
であるかを確認する必要がある。
腫瘤のサイズが異なり,また,右肺と左肺
よりストリークアーチファクトとノイズが
でΔCT値の異なる模擬腫瘤が入っている。
低減されている。関数は従来同様,FC 3
肺がんCT検診における
Aquilion PRIMEの撮影条件
肺がんの中で最も視認性の悪い部位が,
を使用した。今回検討した 8 mm より小
ストリークアーチファクトや線量不足等に
さい 6 mm の模擬腫瘤も観察できている。
図 7 は,今回検討により決定した撮影
なりやすい 肺 尖 部 である。これらから
図 6 は,検出能優先での検討結果である。
条件である。従来検診条件で注目すべき
L S C T ファントムの 左 肺 では C T 値
管電流を 20 mA まで低減し,管球回転速
点は,実効線量である。実効線量値は,
Δ 270 HU(4 mm),右肺では Δ 100 HU
度も 0 . 35 秒と速くなったが,ノイズは増
それぞれの DLP 値と ICRP の胸部実効線
加するため,AIDR 3 D の MILD を用いて
量 変 換 係 数 0 . 0 1 4 を乗じた値になる。
トに設定し視覚評価を行った。評価者は,
いる。AIDR 3 D の強度が強くなるに伴い,
Aquilion/CXL Edition では 0 . 87 mSv
当施設の肺がん C T 検 診 認 定 技師 3 名,
再構成関数を FC 3 から FC 4 に調整した。
であったが,Aquilion PRIME では画質
(8 mm)の 2 種類の模擬腫瘤をターゲッ
X 線 CT 認定技師 3 名,肺がん CT 検診認
定医師 1 名である。
視覚評価の方法は,境界明瞭にターゲッ
撮影条件決定時の注意点
優先の実効線量が 0 . 62 mSv となり,従
来条件に比べ,線量を約 3 割低減,検出能
現状の空間分解能などの物理評価と視
優先の実効線量では 0 . 35 mSv となり,約
トが認識でき,構造物の見え方や質感が
覚評価には相違があり,物理データのみで
6 割低減できる可能性がある。
FBP での条件と同様,あるいは類似した画
の撮影条件決定は危険である。物理デー
質を維持し,可能な限り線量を低減した「画
タは基礎データとしてパラメータなどの調
まとめ
質優先」と,境界不明瞭だがターゲットが
整に利用し,最終的な画像決定は視覚評
Aquilion PRIME の AIDR 3 D を用い
認識でき,構造物がある程度明瞭に見えて
価で行うことが望ましい。
た画像により,FBP 画像より低線量な撮
最小まで線量を低減した「検出能優先」の
次に,ターゲットの off center 画像(体
影条件の検討を行った。今回の撮影条件
2 種類で行った。Δ 270 HU では CTDI vol
軸 方 向 )を確 認することが重 要である。
を決定した手順は,① AIDR 3 D の物理
0 . 5 mGy でも 4 mm が検出可能であるため,
CT 画像は,常に腫瘍の中心(体軸方向)
特性を理解し,撮影条件の変更点(画質
Δ 100 HU 8 mm で画像の評価を行った。
を再構成できるとは限らず,腫瘍の端を再
改善点)を考慮する,② 検出すべき病変
AIDR 3 D を使用すると,従来検診条
構成してパーシャルボリュームの影響を受
をイメージしてファントム撮 影を行う,
件の画像に比べ,AIDR 3 D が WEAK,
けて画像がぼけてしまい,腫瘍が検出しに
③ 画像の最終決定は多人数で視覚評価を
MILD,STANDARD,STRONG と強
くくなっていることもありうる。よって,
行う,④ 最も見えにくい画 像も想定し,
くなるに従って,物質辺縁のボケも強くな
撮影条件決定の際に,ターゲットとなる腫
評価する,ことである。
AIDR 3 D 不使用の撮影条件
35 mA,0 . 5 s/rot,PF 0 . 825,FC 3,再構成 FBP,
CTDIvol 1 . 9 mGy,DLP 62 . 2 mGy・cm(30 cm 撮影 )
*実効線量 0 . 87 mSv
AIDR 3 D 使用:画質優先の撮影条件
35 mA,0 . 35 s/rot,PF 0 . 825,FC 4,再構成 WEAK,
CTDIvol 1 . 3 mGy,DLP 43 . 9 mGy・cm(30 cm 撮影 )
*実効線量 0 . 62 mSv
AIDR 3 D 使用:検出能優先の撮影条件
20 mA,0 . 35 s/rot,PF 0 . 825,FC 4,再構成 MILD,
CTDIvol 0 . 7 mGy,DLP 25 . 1 mGy・cm(30 cm 撮影 )
*実効線量 0 . 35 mSv
図 5 画質優先での検討結果
従来検診画像より管球回転速度UP。AIDR 3D
WEAK 使用によりストリークアーチファクトと
ノイズが低減している。
図 6 検出能優先での検討結果
*胸部実効線量変換係数 0 . 014 (ICRP 102)
Δ 270 HU 4 mm および Δ 100 HU 8 mm
検出は可能だが,信号の辺縁は FBP より劣る。 図 7 決定した Aquilion PRIME の撮影条件
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 7
Aquilion PRIME
Technology of Aquilion PRIME
2013
消化管領域への応用
Symposium
64 列を超える CTの
技術と臨床
安田貴明 長崎県上五島病院 放射線科
Technology
長崎県上五島病院は,九州の西端に位
の撮影を行う。十分な拡張が保たれていれ
置する人口 2 万 1000 人の新上五島町に
ば,そのまま左側臥位から腹臥位として,
おける地域医療,救急医療,在宅医療,
大腸 CT マットを外して 2 体位目の撮影を
大腸 CT 検査の精度
健診を担い,医療・福祉・保健の統合を
行う。この時,身体が FOV 中心にならな
大 腸 C T の精 度で必 要なものとして,
めざして活動している。
いこともあるため,寝台を左右移動機能で
2 点の解析を行う。1 つは病変ベースの解
2013 年 3 月に,CT 装置を「Aquilion
調整して撮影する。検査時間は,入室か
析(Per-Lesion)で,ポリープや表面型
コロナル画像も遜色のない画像を得られた。
16」から超高速型 80 列 CT「Aquilion
ら退出まで 15 ∼ 20 分であり,非常に簡
病変などを大腸 CT で指摘できるかという,
PRIME/Beyond Edition」に更新した。
便な検査だと言える。
1 つ 1 つの病変に対する精度である。もう
当初,64 列以上の装置に更新の際は,検
■ 症例 1:HP 111 での撮影(図 1)
1 つは症例ベースの解析(Per-Patient)
査 室 の 拡 張 が 必 要 と 言 われていたが,
当院では通常,術前の大腸 CT にヘリカ
で,病変の数は関係なく,受診者がポリー
Aquilion PRIME/Beyond Edition は
ルピッチ(HP)65 を使用しており,撮影時
プなどの対象病変を持っているかどうかを
長寝台でありながら Aquilion 16 よりも
間は 7 . 4 秒となる。16 列装置と比べると約
判断するものである。大腸 CT は,病変の
コンパクトで,検査室を拡張することなく
半分の時間となっているが,さらに HP 111
有無を判断し,大腸内視鏡検査につなげ
設置することができた。
を使用することで,撮影時間を 4 . 5 秒に
るスクリーニング検査と考えているため,
本 講 演 では,A q u i l i o n P R I M E /
まで短縮することができた。
当院では症例ベースでの解析を重要視して
Beyond Edition の大腸 CT への応用に
また,AIDR 3 D を使用して線量を低減
いる。
ついて報告する。
しているが,病変部位を十分に指摘でき,
大腸 CT の精度を検証する日本初の大
高速撮影
Aquilion PRIME/Beyond Edition
アキシャル画像においても遜色のない画像
規模多施設共同臨床試験 JANCT(Japa-
を得ることができた。
nese National CT Colonography
■ 症例 2:HP 111 と 0 . 35 s/rot の併用
(図 2)
の最大の特長である高速撮影は,息止め
困難な受診者の検査を可能にし,適応の
HP 111 と 0 . 35 s/rot を併用した高速
Trial)が 2009 年から行われ,全国 14 施
設の中の 1 施 設として当 院も参 加した。
JANCT は大腸 CT と大腸内視鏡検査の
幅を広げることから,大腸 CT においても
撮影の例を示す。症例 2 では,仰臥位で病
両方を実施して,6 mm 以上の病変に対
非常に有用である。この高速撮影を可能に
変が残液内に埋もれているが,水溶性造影
する精度検証を実施した。
しているのが,view 数の増加である。通常,
剤でタギングされているため,病変の指摘
病変ベースの解析では,6 mm 以上の病
ルーチンで使用している 0 . 5 s/rot の撮影
が可能である。通常の撮影条件では,撮影
変で,感度 82%,陽性的中率 84%とい
では,64 列(Aquilion/CXL Edition)
に 7 . 4 秒を要するが,高速スキャンを用い
う結果であった。一方,症例ベースの解
では 900 view であるのに対し,Aquilion
ることで約 3 秒での撮影が可能で,内腔像
析では,6 mm 以上で感度 87%,特異度
P R I M E / B e y o n d E d i t i o n では
で残液に埋もれた病変を明瞭に描出できた。
92%,10 mm 以上では感度 91%,特異
1200 view となる。64 列と同じ view 数
を維持するならば,0 . 35 s / r o t 撮影が
可能となる。この高速撮影は,部位を問
わずに全身領域に適用でき,腹部全域を
約 3 秒で撮影できる。
撮影時間 7 . 4 秒
撮影時間 4 . 5 秒
腹臥位
撮影時間 7 . 4 秒
撮影時間 3 . 0 秒
仰臥位
大腸 CT 検査の実際
大腸 CT 検査は他の検査と比べ,難しい
手技を必要としない点が特徴である。当院
でも過度な体位変換は行わず,ほとんど左
側臥位で送気を行い,仰臥位で 1 体位目
8 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
SD 18 /HP 65
DLP=421.2mGy・cm 6.32mSv
SD 20 /HP 111
DLP=139.7mGy・cm 2.09mSv
図 1 症例 1: HP 111 での大腸 CT
撮影時間を 4 . 5 秒に短縮可能
SD 20 /HP 65
DLP=240mGy・cm 3.60mSv
SD 20 /HP 111 / 0 . 35 s/rot
DLP=88.8mGy・cm 1.33mSv
図 2 症例 2:HP 111 と 0 . 35 s/rot の併用
撮影時間は約 3 秒
Aquilion PRIME Symposium 2013 Technology
度 98%と,大変良好な成績を示した。大
が 84%(n = 27)
, a
腸 CT は,治療を必要とする患者を内視鏡
粘 膜 下 層(S M)
検査につなげることが十分にできるものと
と固有筋層(MP)
考えられる。
b
が 合 わせて 1 6 %
表面型病変の描出
(n = 5)であった。
これを病変ベース
大腸 CT の課題と言える表面型病変の
で解 析すると,M
症例を 2 例提示する。
が感度 56%である
■ 症例 3:46 歳,女性
のに対し,S M 以
便潜血検査陽性で大腸内視鏡検査を施
深は 100%となり,
行したが,異常なしとされた。しかし,同
S M 以深では十分
日に施行した大腸 CT において,肝彎曲部
に病変を指摘でき
に 30 mm 程度の表面型病変が指摘され
る結果となった。
(図 3 a),後日,再度内視鏡検査を行った。
A → O 方向
O → A 方向
図 3 症例 3 a:大腸 CT の内腔像 b:内視鏡像
a
b
症例数が少なく,
大腸 CT で指摘された部位を何度も往復
表面型病変という
してようやく 同 様 の 病 変 を 指 摘 し( 図
きわめて限定的な
3 b),ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
病変を対象にした
を施行した。
検討であるが,感
■ 症例 4:56 歳,男性
度は今後検討の余
便潜血検査陽性で,大腸 CT を施行し
地があると考えら
た(図 4 a)。前処置,拡張も良好で,正
れる。しかし, 癌
常と判断されたが,同日に行われた内視鏡
や, なかでも S M
検査において,下行結腸に表面型病変が
以深の癌と診断さ
図 4 症例 4
a:大腸 CT b:内視鏡像
指摘された(図 4 b)。
れる病変に対しては,十分に指摘できてい
ば対象とする病変を 10 mm 以上に限ると
大腸 CT 検査は,表面型病変の描出に
るという結果になった。
すれば,さらなる低線量化が図れるものと
ついては課題もあるため,表面型病変に対
する大腸 CT の精度について,当院で検討
低線量化(低被ばく)
への取り組み
考えられる(図 6)。今後,大腸 CT の低線
量化を図り,精度検証も行っていきたい。
を行った。2008 年 11 月∼ 2013 年 1 月
当 院 における A q u i l i o n P R I M E /
までに,当院で大腸 CT 施行後に全大腸
Beyond Edition を用いた大腸 CT の低
内視鏡検査を行った 484 症例中,内視鏡
線量化への取り組みとして,AIDR 3 D の
大腸 CT は,治療対象となる 6 mm 以
的に 10 mm 以上の表面型病変で,病理
検討を紹介する。
上の腺腫ならびに癌に対して良好な精度を
学的に腺腫ならびに癌と診断された 27 症
当院では通常,大腸 CT の撮影条件を
示し,大腸がんスクリーニングの新たなモ
まとめ
例 32 病変を対象とした。病変の分布に偏
SD 20 に設定して撮影している。これを
ダリティとして期待される。われわれは,
りはなく,肉眼形態はⅡ a 型がほとんどで
SD 30 に設定すると,画像はノイズが多く,
Aquilion PRIME/Beyond Edition を
あった。
診断に耐えうるものとは言えない。そこで,
用いた質の高い大腸 CT 検査を活用して,
病変ベースの解析では,感度は 63%,
AIDR 3 D を用いると,SD 20 と遜色のな
離島地域の医療の向上をめざしていく。
陽性的中率は 91%となり,表面型病変の
い画像を得ることができた(図 5)。
検出率は十分とは言えない結果となった。
大腸 CT では内腔を観察するため,例え
これを病理別に
見ると,病変ベー
スの解析では,癌
の 感 度 は 7 1 %,
腺腫では 56%と,
腺腫よりも癌の感
度が高い傾 向に
あった。
さらに,
病変の深
達度別でも検討し
た。症例の深達度
は, 粘 膜 層(M)
図 5 AIDR 3 D によるノイズ低減(VR 画像)
SD 30 /DLP = 38 . 5 mGy・cm/ 0 . 58 mSv
図 6 AIDR 3 D によるノイズ低減(内腔像)
SD 30 /DLP = 38 . 5 mGy・cm/ 0 . 58 mSv
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 9
Aquilion PRIME
Technology of Aquilion PRIME
2013
救急領域への応用
Symposium
64 列を超える CTの
技術と臨床
∼バリアブルヘリカルピッチスキャンの
外傷 Panscan への臨床応用
森原宗憲 大阪府三島救命救急センター 放射線科
Technology
大阪府三島救命救急センターは,1985 年
40 スライス,SD 9,ヘリカルピッチ(HP)
JCS(意識レベル)300,瞳孔散大にて,
にオープンした三次救急に特化した救命救
33 を使用しているが,同一プロトコルでは
気管挿管後,生命を脅かす中枢神経障害
急センター である。一 般 病 床を持たず,
線量不足により頭頸部 CTA の画質が低下
( 切 迫 する D)があり,S e c o n d a r y
ICU 8 床,ACU 33 床の救急単体で運営
し,頭蓋内の脳血管の描出が不十分となる。
Survey の最初に頭部 CT を施行した。頭
されている。2012 年の救急搬入件数は
そこで,Aquilion PRIME に搭載されて
部のコンベンショナル CT(図 4 左上)では,
1221 件,うち内因性疾患が約 74 % を占
いるバリアブルヘリカルピッチスキャン
左急性硬膜下血腫,外傷性 SAH,脳挫傷,
めており,外来死が 211 人,入院後の死
(vHP)の使用を検討した。
頭蓋底骨折を認めた。続いて,頭頂から
亡をあわせると 329 人が亡くなっている。
vHP は,スキャン中に天板を停止する
骨盤まで,新しい外傷 CT プロトコルを適
来院時心肺停止(CPA)からの社会復帰
ことなくヘリカルピッチを変更できる機能
用した v H P による P a n s c a n を行った
率の向上が課題であり,高槻市消防本部
で,一般的には心電図同期の冠動脈 CTA
(図 4)。体幹部では,大動脈損傷の好発
と連携して,医師が同乗して出場する救
と大動脈を 1 回のスキャンで撮影する際な
部位である大動脈峡部に膨らみを認め損
急ワークステーション方式による特別救急
どに使われている(図 1)。この vHP 機能
傷を疑ったが,MPR 像で周囲に血腫がな
隊(ドクターカー)の運用を行い,全国平
を応用して,頭部は低ヘリカルピッチで撮
いことが確認でき,大動脈損傷を否定す
均の 6 . 9 % に比べ 15 . 8 % と,高い社会
影し,体幹部を高ヘリカルピッチで撮影す
ることができた。脳血管については,以前
復帰率を実現している。
る方法で,脳血管の描出能の向上が可能
の 1 mm× 40 の画像(図 4 右上)に比べて
当センターでは,2012年3月に「Aquilion
かどうか検討した。
画質が改善されている(図 4 中上)
。右側は
PRIME」を導入し救命救急領域に活用し
まず,撮影スライス厚とヘリカルピッチ
末梢血管まで描出されているが,左側は血
てきたが(Aquilion PRIME シンポジウ
の組み合わせによる,アーチファクトの影
腫があり,脳圧が高く,末梢血管が圧迫さ
ム 2012 で報告),本講演ではバリアブル
響を検証した(図 2)。体幹部で使用して
れていることが確認できた。
ヘリカルピッチを使った外傷 Panscan を
いる 1 m m × 4 0 スライス,H P 3 3 では
中心に報告する。
強いアーチファクトが認められたため,アー
上肢のポジショニング
チファクト抑制と画質向上の臨床的なメ
次に,Panscan 施行時のアーチファク
外傷 Panscan
リットの方が上回る 0 . 5 mm× 80 を選択
トの原因となる上肢の位置について検討し
以前の 16 列 CT では,全身撮影には頭
し,vHP 使用時の造影 CT Panscan プ
た。われわれは,救急の CT 撮影では,で
部,頸椎,体幹部の 3 回のポジショニング
ロトコルを図 3 のように決定した。
きる限り上肢挙上にて撮影を行っている。
が必要だったが,Aquilion PRIME では
その理由としては,Aquilion PRIME では,
頭部の単純 CT 撮影後に頸部から骨盤ま
■ 症例 1:交通外傷患者の全身外傷
Panscan(vHP)
での造影 CT を一気に撮影する Panscan
60 歳,女性。原付バイクでの交通外傷
レベルであること,体幹部撮影の目的は胸
が可能になった。Aquilion PRIME によ
で 救 急 搬 送 された。救 急 外 来 搬 入 時,
部大血管や腹部実質臓器の損傷の確認で
挙上でも頭頸部へのアーチファクトが許容
る外傷 Panscan では,ポジショニングを
含めた CT 室滞在時間が 10 分以内に短縮
され,現在は外傷のルーチン検査となって
いる。
バリアブルヘリカルピッチスキャン
による全身外傷Panscan
冠動脈心電図同期撮影+大動脈 CTA
頸部以下の外傷全身 CT Panscan が
可能になったことで,次に頭部を含めた
Panscan の要望が出てきた。頸部以下の
P a n s c a n 造 影プロトコルは,1 m m ×
10 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
図 1 バリアブルヘリカルピッチスキャン
(vHP)
図 2 撮影スライス厚とヘリカルピッチに
よるアーチファクトの検証
Aquilion PRIME Symposium 2013 Technology
図 3 vHP による外傷 CT プロトコル:全身造影 CT
図 4 症例 1:交通外傷患者の全身外傷 Panscan(vHP)
あるため,アーチファクトの少ない画像が
求められるからである。しかし,Primary
HP 51,頸部を SD 18,HP 65 で撮影し,
Surveyで撮影した胸部写真から,鎖骨骨
AIDR 3 D は Weak を使用する(図 6)
。
折や肩甲骨骨折があらかじめ判明し,上肢
を挙上できない症例もしばしば経験する。
■ 症例 2:頭頸部のヘリカルスキャン
(vHP)
その解決策として,CT 寝台のバックボー
頭頸部でvHP によるヘリカルスキャンを
ドの高さを利用して腕を下ろすことで,アー
行った症例を提示する(図 7)。バイクの
チファクトを抑える方法を実施している。
単独事故で搬入された患者で,搬入時,
Aquilion PRIME はフラット天板ではな
見当識のある JCS 2 で耳出血があった。
くバックボードが沈み込んでしまうため,
搬入時のヘリカル CT(図 7 左上)と,翌
市販のスタイロフォームを成形したスペー
日に撮影したコンベンショナル CT(図 7 右
サーによって腕を下ろす段差をつくり,肘
上)では,画質だけを比較するとコンベン
を肩の方に引くことで脊椎と上肢が直線
ショナル CT が優れているが,外傷患者の
入された。今後ますます,外傷 Panscan
状に並ぶことを避け,アーチファクトを軽
搬入時検査においてはヘリカルスキャンで
が注目され,適正な画像をスピーディに提
減している(図 5)。
も十分な診断能力があると考える。外傷
供することが,われわれ診療放射線技師に
CT の読影方法である“FACT(Focused
求められるのではないかと考える。
頭部単純 CT 撮影における
バリアブルヘリカルピッチスキャン
図 5 バックボードのスペーサーによる
上肢ポジショニング
Panscan の読影方法である FACT が導
Assessment with CT for Trauma)”
においても,頭部の評価のポイントは緊急
まとめ
救急の頭部単純 CT の撮影を,コンベン
開頭が必要な血腫などの有無であり,その
高度化,多機能化する CT をいかに使い
ショナルで行うか,ヘリカルスキャンを選
ためにはモーションアーチファクトに強く,
こなすかが診療放射線技師の役割として
択するかについてはさまざまな見解があるが,
多断面から総合的に判断できるヘリカルス
重要になる。すべての技師が質の高い CT
当センターでは基本的にコンベンショナル
キャンが有益と考える。
検査を常に提供できるように,施設全体の
スキャンを行っている。しかし,最近では,
2013 年春に外傷初期診療ガイドライン
レベルアップを図ることが求められると考
顔 面 外 傷 や 頭 部 外 傷 がある 場 合 には,
が改訂され,画像検査の項目も更新された。
える。
vHP を使った頭頸部のヘリカルスキャンを
従来の頸椎 X 線読影
始めている。プロトコルは,頭部を SD 3,
に代わって,trauma
図 6 vHP による外傷 CT プロトコル:頭頸部単純 CT
図 7 症例 2:頭頸部 CT(P)+体部造影 Panscan(vHP)
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 11
Aquilion PRIME
Clinical Benefit of Aquilion PRIME
2013
循環器領域の臨床応用
Symposium
64 列を超える CTの
技術と臨床
石村理英子 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 循環器センター 内科
Clinical Benefit
虎の門病院の CT 検査は年間約 3 万件
ている。当院ではコスト面から,禁忌でな
めて,積極的に PCI を行うという考え方
にのぼり,うち心臓 CT が 312 件,大血
い限りはメトプロロール 20 mg を検査 1 時
に変わってきた。
管領域が 374 件を占めている(2012 年度
間前に投与する。患者の飲み忘れや,前
また,急性心筋梗塞では,発症から治
実績)。2011 年 3 月の Aquilion PRIME
処置のオーダが入っていない場合は,検査
療までの時間をできるだけ短縮することが
導入以降,循環器領域の心大血管関連 CT
室で超短時間作用型のランジオロールを投
求められるため,梗塞が強く疑われる場合
は全例 Aquilion PRIME で行っている。
与する。冠動脈 CTA の撮影フローチャー
には,すぐにカテーテル検査を行うべきと
本講演では,循環器領域における CT
トを図 3 に示す。
されている。したがって CTA は,心筋梗
の臨床応用とその有用性について,実際
当院における心電図同期フラッシュヘリ
塞の診断に苦慮するような場合に,陰性を
の症例を提示しながら報告する。
カルスキャンの実施率は,メトプロロール
証明するためのツールとして用いられる。
のみの時は 74 . 3%だったが,ランジオロー
虚 血 性 心 疾 患の診 断ツールとしての
ルの使用によって,84 . 3%まで上昇した。
CTA の役割は限定的であるが,それ以外
■ Aquilion PRIME における
冠動脈 CTA
■ 冠動脈 CTA の位置づけ
で有 用性が高い適 応は多い。当院では,
日本循環器学会の『冠動脈病変の非侵
CABG(冠動脈バイパス術)の術後評価
冠動脈CTA
冠動脈 CTA における Aquilion PRIME
襲的診断法に関するガイドライン』では,
に,冠動脈 CTA を用いている。CABG
の優位性としては,第一に AIDR 3 D によ
冠動脈 CTA が推奨されているのは,運動
の血管造影によるフォローアップはカテー
る被ばく低減が挙げられる。さらに,拡張
負荷心電図で中程度リスクないし判定不
テル手技が難しく,リスクも伴うことから,
中期にのみ X 線を曝射する心電図同期フ
能とされた症例のみであり,限定的な位置
CTA の有用性は高いと言える。
ラッシュヘリカルスキャンを行うことによ
づけにとどまっている。
り被ばく量を低減できる。両方を併用する
COURAGE trial では,冠動脈狭窄に
■ 冠動脈 CTA の活用:PCI 術前評価の
観点から
ことで,64 列 CT の半分程度にまで被ば
対する PCI と薬物治療の効果を比較した
PCI の術前評価も,冠動脈 CTA の良
く線量を抑えることができる(図 1)。また,
ところ,両者には差がなかったと報告され
い適応である。以下,代表的な 4 項目に
心電図同期フラッシュヘリカルスキャンは
た 1),2)。しかし,サブスタディにおいては,
ついて述べる。
高 速 ヘ リ カ ル ピ ッ チ を 採 用 し て お り,
心筋シンチグラフィによる心筋虚血の証明
1)左冠動脈主幹部病変(LMT)
4 ∼ 5 心拍での撮影が可能となったため,
と虚血の改善があれば,生命予後が改善
病変が LAD と LCX の両方にまたがる
モーションアーチファクトも軽減される。
することが証明されている。この結果から,
場合は,PCI の手技は煩雑になり,リスク
従来の 64 列 CT と 80 列の Aquilion
労作性狭心症の診療にあたっては,単に
も 高 まることから, 当 院 では 積 極 的に
PRIME の冠動脈 CTA を比較してみると,
冠動脈の狭窄を見つけるだけではなく,冠
CABG を行っている。しかし,どちらか
Aquilion PRIME では線量を落としてい
動脈狭窄と心筋虚血の両方がそろって初
片方だけで済むのであれば,患者さんへの
るためノイズは少し増え
心電図同期フラッシュヘリカルスキャン
るものの,ステントの構
造やステント内腔の病変
64 列
従来スキャン
80 列
心電図同期フラッシュスキャン
が明瞭に描出されている
ことがわかる(図 2)。
■ β遮断薬の使用の実際
AIDR 3 D
心電図同期フラッシュ
心電図同期
心電図同期フラッシュ
ヘリカルスキャン
ヘリカルスキャン
被ばく量
−49 %
ヘリカルスキャンを使う
には,脈拍数を 65 bpm
未 満で安 定させる必 要
があり,当院では β 遮
断薬の使用を徹底させ
Original
AIDR 3D on
DLP(64) DLP(PRIME)
同一症例の経時的フォローアップ
図 1 冠動脈 CTA における Aquilion PRIME の優位性 図 2 64 列 CTと 80 列 Aquilion PRIME の画像の比較
12 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
Aquilion PRIME Symposium 2013 Clinical Benefit
負担の少ない PCI を選
択 す る。 し た が っ て,
LAD のプラークが LCX
まで及んでいるかどうか
の 確 認 が 重 要 となる。
また PCI では,入口部
のどこまでプラークが及
んでいるかによって手技
が異なり,選択するガイ
ディングカテーテルも異
なるため, 術 前の治 療
計 画にと っ て C T が有
用となる。
図 3 虎の門病院における冠動脈 CTA の
撮影フローチャート
図 4 症例 1:冠動脈主幹部病変の PCI 術前評価
症 例 1 では,C T の c r o s s s e c t i o n
いスポットが確認された。血管内エコー
塞しているか(閉塞長)がわかる。また,
image(直交断面画像)からは LCX には
(IVUS)でも,同様の所見が得られている
ガイドワイヤの経路のプランニングにも,
プラークがないことが確 認されたため,
(図 5)。
冠動脈 CTA の情報が重要である。
PCI を選択した(図 4)。しかし,プラーク
3)石灰化病変の評価
症例 4 の血管造影では,造影剤が入っ
はほとんど LMT 入口部まで及んでいるこ
PCI の術前では,石灰化の評価も重要で
ていく腔が認められたが,仮に側副血管で
とがわかったため,カテーテルを浮かせた
ある。石灰化の性状によっては,バルーン
あった場合,バルーンを膨らませることで
状態で PCI を行えるガイディングカテーテ
やステントのみでは拡張が不十分であり,
perforation を起こし,重篤な合併症が生
ルを選択して手術に臨むことができた。
石灰化部分を削る rotablator が必要にな
じる可能性がある。近位部の造影部分を
2)プラークの性状評価
ることがある。これも,必ずしも施設に常
CT で観察すると,血管の外側に沿って降
冠動脈 CTA では,プラークの性状を評
備されているデバイスではなく,準備に時
りていくかなり外側を走る腔であり,側副
価することが可能である。CT 値とプラー
間がかかるため,事前の情報が不可欠である。
血管である可能性が高いと思われた(図 7)
。
クの性状(硬さ)には相関があり,数値に
症例 3 の cross section image を見
しかし,末梢側は血管の真ん中を通ってお
よ っ て s o f t プラーク(5 0 H U 以 下 ),
ると,近位部のプラークは深在性の石灰
り,真腔であることが確認できたため,こ
fibrous プラーク(50 ∼ 150 HU),石灰
化のみだが,中央は非常に厚く内腔を圧
こにガイドワイヤを通して PCI を行うとい
化プラーク(500 HU 以上)に分けること
排している(図 6)。また,遠位端はプラー
う治療計画を立てた(図 8)
。ガイドワイヤ
ができる。
クの表面に乗った表在性の石灰化で,形
の通過後,血管内エコーで管の真腔を通過
soft プラークの多い病変では,留置し
状的にも内腔に突出している。これらの所
していることが確認され,冠動脈 CTA に
たステントが広がっているにもかかわらず
見から,本症例は rotablator の適応と判
よる術前評価の有用性が証明された。
血流が改善しない,いわゆる slow flow と
断した。
いう合併症を起こす場合がある。これは非
4)慢性閉塞性病変(CTO)
常に重篤な合併症であり,リスクが高い場
冠動脈 CTA は慢性閉塞性病変に対す
下肢 CTA
■撮影時の固定の工夫
合には distal protection device を用い
る術前評価として有用性が高い。血管造
下肢 CTA の画質向上のため,当院では
る場合がある。特殊なデバイスであるため
影では閉塞した血管の末梢側の情報は得
固定用のビーズクッションを用いている(図
事前に準備しておく必要があり,プラーク
られないが,冠動脈 CTA ではどこまで閉
9)。ビーズクッションは空気を抜くとしっ
の性 状についての術 前
の情 報がきわめて重 要
となる。ただし,プラー
deep calcification
CT 値
1100 ∼ 1500 HU
クの CT 値はあくまで相
対値であり,血管内腔
の造 影 剤 充 填につれて
変化することに注意が必
要である。
症例 2 では,半 月形
の fibrous プラークと末
deep calcificationが主体
だがmassive calcification
CT値 1100∼1450HU
最も狭窄度が強い部位:
superficial calcification
CT値 950∼1040HU
rotablator適応
梢の表面の石灰化,そ
して,近位部の fibrous
プラークの一部に軟らか
図 5 症例 2:CT 値によるプラークの性状評価(上段) 図 6 症例 3:CTA による石灰化評価
と IVUS 画像(下段)
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 13
Aquilion PRIME Symposium 2013 Clinical Benefit
かりと固まって,下肢全体を固定できる。
間にどれくらいのマージンがとれるかによっ
当院では,ボーラストラッキングの ROI は
て,穿刺位置を同側とするか対側とするか
療方針の決定にも影響するため,CTA は
膝に置いているため,ROI が動かないとい
が変わるため,重要なポイントとなる。
きわめて有用性の高い検査であると言える。
う利点もある。軌道同期サブトラクション
症例 6 では,病変部まで 15 cm のマー
を行っている施設でも有用と考える。
ジンがあることが確認できたため,同側か
■ MRA との比較
らシースを挿入し,ステントを留置した。
MRA と CTA にはそれぞれ得意とする
まとめ
分野があり,使い分けが必要である(図
1 0)。ステント部 分のフォローアップは
冠動脈においても下肢においても,CTA
MRA より CTA の方が有用性が高い。イ
はインターベンションの術前評価としてき
ンターベンションの術前評価を行う場合,
わめて豊富な情報をもたらす。目的に合わ
MRA ではプラークの性状はわからないが,
せて評価することで,治療の成功率や安全
性を向上させることができる。さらに,治
●参考文献
1)Boden, W.E., et al. : Optimal Medical Therapy with or without PCI for Stable Coronary
Disease. NEJM , 356(15), 1503-1516, 2007.
2)Shaw, L.J., et al. : Optimal Medical Therapy
With or Without Percutaneous Coronary Intervention to Reduce Ischemic Burden ; Results
From the Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation
(COURAGE)Trial Nuclear Substudy. Circulation , 117, 1283-1291, 2008.
C T A の C P R では
プラークの性 状や
石 灰 化の分 布の情
報が得られ, 治 療
に必要なデバイスの
選択に有用である。
■ PTA 術前評価
症 例 5 は, 左
A B I 低下が指摘さ
○部分:bridge collateral
○部分:真腔
れ た 症 例 で, 左
CIA(総腸骨動脈)
に強 度の石 灰 化を
伴う 90%狭窄が認
められる。硬 い 石
灰 化 の 中に C T 値
5 0 0 H U 程 度の非
常に軟らかい石 灰
化があることが確認
図 7 症例 4:CTA の CPR による側副血管の確認
血管造影(左)では末梢が描出されず閉塞長も不明。
真腔か側副血管か判別できない。
下肢CTA
管電流
管球回転速度
Pitch factor
120 kV
AEC(SD 10)
@ 5 mm AIDR 3 D mild
0.5 s
0.825
撮影スライス厚
1.0×40
管電圧
図 8 症例 4:CTA による真腔と側副血管の判定
(CTO RCA ♯ 1)
MRA
CTA(MIP)
CTA(CPR)
されたため, 本 症
例はバイパス術では
なく PTA を選択し
た(図 11,12)。
石 灰 化プラーク
狭窄が一目でわかる。狭窄はわかりにくいが 狭窄部のプラークの
石灰化の分布がわかる。 分布がわかる。
であっても,CT 値
が低ければバルーン
で 拡 張 することが
図 9 下肢 CTA 撮影時の固定の工夫
図 10 MRA と CTA の比較
できる。P T A とバ
イパス術では患 者
さんの負 担が大き
く異なることから,
プラークの性 状 評
価はきわめて重要で
ある。
(SFA)
浅大腿動脈
病 変では, 穿 刺プ
ランにも冠 動 脈
CTA が有用である。
穿 刺 部と病 変 部の
バイパス? PTA?
図 11 症例 5:PTA 術前の石灰化の評価
(左 CIA 石灰化病変)
14 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
図 12 症例 6:PTA 術前(左)
・術後(右)の CAG
Aquilion PRIME
Clinical Benefit of Aquilion PRIME
2013
Dual Energy 技術を用いた
尿路結石の画像診断
Symposium
64 列を超える CTの
技術と臨床
Clinical Benefit
山口 聡 医療法人仁友会 北彩都病院 泌尿器科
CT 装置は尿路結石の診断にとって不
しかし,カルシウムが混じったカーボネー
尿路結石における
従来のCT の位置づけ
トアパタイト結石では,80 kV の CT 値は
尿路結石では,結石の存在診断とともに,
尿路結石治療では,結石の成分によっ
によって,客観的なデータに基づく結石
結石の硬さの情報を得ることも非常に重要
て治療戦略が異なるため,結石の物質弁
成分の質的診断が可能になってきた。
である。リン酸カルシウム,シュウ酸カル
別(material decomposition)が重要
可欠なツールである。さらに最近では,エ
ネルギー(管電圧)の異なる 2 種類の X 線
源で撮影する Dual Energy CT の登場
135 kV のおよそ 2 倍を示す。
本講演では,Aquilion PRIME におけ
シウム(1 水和物),シスチンなどの結石は
になってくる。Dual Energy Scan に
る Dual Energy CT を用いた尿路結石
きわめて硬いため,大きな結石では体外衝
よって得られた異なる電圧の C T 値をプ
成分の推定,およびその臨床的有用性に
撃波結石破砕術(ESWL)単独では破砕
ロットすると,尿酸結石と非尿酸結石が
ついて検討した研究を中心に報告する。
困難であり,内視鏡手術や溶解療法の適
それぞれ特有の分布を示し,両者の分離
用も考慮される。そこで,結石除去方法
が可能になる。
Dual Energy CTによる
尿路結石成分推定と
臨床的有用性の研究の背景
1000 HU を超えていれば,ESWL では破
80 k V では 120 H U という C T 値になる
尿路結石は,腎臓結石,尿管結石,膀
砕しにくい結石であると予想でき,次の治
(図 1)。軟部組織では CT 値に差は出ない
胱結石,尿道結石のカテゴリーに分かれ,
療法も検討しやすくなる。欧州泌尿器科
が,造影剤は 135 kV で 100 HU,80 kV
その成分によって,シュウ酸カルシウムや
学会のガイドライン(2013 年版)において
で 150 HU となる。135 kV の CT 値はい
リン酸カルシウムなどのカルシウム含有結
も,エビデンスレベルが高く,推奨されて
ずれも 100 HU で同じだが,80 kV では異
石,リン酸マグネシウムアンモニウム結石,
いる方法である。
なることを基本概念として検討した。
尿酸結石,先天性代謝異常のシスチンな
の決定前に,非造影 CT の CT 値により結
チョークファントムを 135 kV と 80 kV
石 の 組 成 を 推 定 す る。 平 均 C T 値 が
で撮 影すると,1 3 5 k V では 1 0 0 H U,
どに分類される。本邦における結石の分析
Dual Energy Scanによる物質弁別
Dual Energy Scanの臨床的意義
統計を見ると,カルシウム含有結石が約
異なる 2 種類のエネルギー(管電圧)で
画像診断により,尿路結石の確定診断
90%と圧倒的に多い。一方,尿酸結石は
CT 撮影を行い,物質固有のエネルギー透
が可能になれば,化学溶解も治療の選択
5%程度であるが,他の結石とは異なる治
過性(物質吸収係数)の違いを利用して,
肢に加えることができる。例えば,高齢者
療法を選択できることから,正しい術前診
物質を弁別し,さまざまな解析を行うのが
や抗血栓療法が中止できない患者,重篤
断をつけることがきわめて重要である。そ
Dual Energy Scan である。例えば,尿
な合併症で積極的な結石除去療法を行え
酸結石では,高電圧(135 kV)と低電圧
ない患者の場合,尿アルカリ化薬での結石
こで,尿酸結石とその他の結石を CT で区
別できないかと考えた。
(80 kV)の CT 値にはほとんど差がない。
溶解療法の選択が可能になる。
尿酸結石は放射線透過性であり,腹部
られているが,近年,Dual Energy 技術
135 kV
ら,カルシウム含有結石と尿酸結石を客
観的に区別できるようになった。そこでわ
れわれは,Dual Energy 技術を用いて尿
路結石成分の推定を行い,その臨床的有
用性について検討した。
Dual Energy mapping
Dual Energy
を用いて, 高 電 圧(1 3 5 k V)と低 電 圧
(80 kV)撮影の 2 種類の CT 値(HU)か
80 kV
135kVでも80kVでも100HU
チョーク
チョーク
80 kVと135 kVで撮影,
それぞれの画像を得る
135kV CT#
単純撮影では描出されにくいことはよく知
軟部組織
135 kVでは100HU
80 kVでは120HU
造影剤
135 kVで
は100HU
80 kVでは
150HU
チョーク
80kV CT#
135 kVのCT値は同じだが
80 kVのCT値は異なる
図 1 ファントムを用いた
Dual Energy 解析
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 15
そこでわれわれは,1169 例・906 結石
を対象に,A quili on PRIME を用いて
13 5 k V と 8 0 k V の C T 値にはほとんど
差がなく,尿酸結石であると推定された
であることが確認された。
Dual Energy Scan の撮影方法
Dual Energy Scan を施行し,in vivo
(図 3)。
で結石成分を推定し,摘出された実際の
■症例 2
Dual Energy は,135 kV と 80 kV の
結石の赤外分光分析結果と比較する研究
腹部単純撮影(KUB)では,左下腎杯
管電圧を高速で切り替えてスキャンし,画
)。
像データを取得している(図 6)。
を行った。実際に排出された 232 結石の
の結石が明瞭に描出されている(図 4
成分分析を実施し,分析率は約 20%だっ
Dual Energy Scan では 80 kV の CT 値
実際の撮影方法は,まず腹部・骨盤部
た。以下に症例を提示する。
が高く,尿酸結石とは明らかに異なるパター
の単純 CT を撮影し,結石の位置を確定
■症例 1
ンを示した(図 5)。赤外分光分析の結果,
し て R O I を 設 定 す る。 次 に,D u a l
腎臓の腹部単純撮影(KUB)では,わ
症例 2 の結石成分はシュウ酸カルシウムで
Energy ヘリカルスキャンを施行し,得ら
ずかに淡く左腎孟結石が描出されている
あった。Dual Energy Scan では,尿酸
れた 2 種類の管電圧の CT 値を計算してグ
結石とカルシウム結石の物質弁別が可能
ラフ表示する。あらかじめ確認されている
(図 2
)。Dual Energy Scan では,
尿酸結石の CT 値のグラフ近くにプロット
されれば,尿酸結石が疑われることになる。
検討の結果,排出された結石の 8 割以
上(196 / 232)がシュウ酸カルシウムであ
り,尿酸結石は 232 結石中 22 結石だっ
た。Dual Energy による正診率は,シュ
ウ酸カルシウムが 88 . 3%,尿酸結石が
高電圧(135 kV)
と低電圧(80 kV)
の CT 値にはほと
んど差がなく,尿
酸結石と推定(赤
の実線 )
図 2 症例 1:腹部単純 X 線画像
わずかに淡く描出される左腎孟
結石( )
81 . 8%であり,非常に高い陽性的中率で
CaCO3
あった(図 7)。
Dual Energy Scan の問題点
Dual Energy 解析の標準物質として,
図 3 症例 1:Dual Energy Scan の解析結果
カルシウム結石は炭酸カルシウムを使用
している。Dual Energy 解析の CT値の回
帰直線として,高電圧 CT 値 = 1 . 060 × 低
電圧CT値(尿酸)
,高電圧CT値=0.740×
低電圧 CT 値(カルシウム結石)を定義して
いたが,尿路結石には炭酸カルシウムは
低電圧
(80kV)
での CT 値は
高電圧
(135kV)
より大きく,
尿酸
結石とは明らか
に異なるパターン
(青の実線 )
。
結石分析の結果
は,
シュウ酸カ
ルシウム。
図 4 症例 2:腹部単純 X 線画像
明瞭に描出される左腎杯結石(
)
きわめて稀であり,標準物質としてふさ
わしくないと言える。尿 酸についても,
実際の結石との差異も考えられる。したがっ
CaCO3
て,一般的な結石の成分を用い,D u a l
Energy 解析の代表的な標準直線の作成を
試みた。
図 5 症例 2:Dual Energy Scan 解析結果
排出した結石の主成分(赤外分光分析)
例数
シュウ酸カルシウム(1 水和物,2 水和物)
196
尿酸
22
カーボネイトアパタイト
11
シスチン
2
リン酸マグネシウムアンモニウム
(合 計)
1
232
Dual Energy Scan における正診率
シュウ酸カルシウム:88 . 3%(173 / 196)
尿酸結石:81 . 8%(18 / 22)
図 6 Dual Energy Scan のスキャン方法
16 INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録
図 7 尿路結石の種類と Dual Energy Scan 正診率
Aquilion PRIME Symposium 2013 Clinical Benefit
ex vivo での尿路結石の
Dual Energy 解析
また,尿酸結石ではほぼ同様な結果で
結石では,直線の傾きに違いがあることが
あり,非尿酸結石との差は著明であった。
明らかとなった(図 10 , 11)。
リン酸マグネシウムアンモニウムやシス
また,最近臨床的に発見された,きわ
赤外分光分析で成分がわかっている尿
チンは,尿酸とシュウ酸カルシウムの中間
めて珍しい 2 , 8 -Dihydroxyadenine 結
路結石(156 結石)をサンプルチューブに
の値を示した。
石(DHA 結石)の Dual Energy 解析の
入れた上で,ex vivo に Dual Energy
カーボネートアパタイトの混合結石では
結果は,シュウ酸カルシウムでも尿酸でも
Scan を行い,2 種類の CT 値をプロット・
高電位と低電位の CT 値の差が最も大きく,
ない位置にプロットされた(図 12)。尿路
解析した。最も典型的なシュウ酸カルシウ
尿酸結石以外の結石との物質弁別の可能
結石の診療にあたっては,このような例も
ム 1 水和物 74 結石では,標準のカルシウ
性が示唆された(図 9)。
あることを念頭に置いておく必要があろう。
ム結石とされる炭酸カルシウムより CT 値
さまざまな種類の結石の Dual Energy
の差が大きいことが明らかとなり,標準直
解析をまとめた結果,現在標準物質とし
まとめ
線の変更が必要と思われる(図 8)。
て用意されている炭酸カルシウムと実際の
尿酸結石は,放射線透過性という特徴
から臨床的に成分推定が行われてきたが,
その判断は経験的な側面があった。しかし,
Dual Energy Scan ではより客観的な評
2500
価が可能となり,尿酸結石に対する結石
High kV CT value(HU)
(n=74)
2000
溶解療法の適応決定などへの応用が期待
される。各種カルシウム含有結石では,尿
1500
酸やシュウ酸カルシウムとも異なる Dual
1000
炭酸カルシウムは,0.740
Energy 解析結果が示唆されている。尿酸
y = 0.669x
500
や非尿酸結石以外にも物質弁別できる可
R² = 0.969
0
0
500
1000
1500
2000
2500
能性があり,今後も研究を続けたいと考え
ている。
3000
Low kV CT value(HU)
図 8 シュウ酸カルシウム 1 水和物の Dual Energy 解析結果
2000
1500
COD+CAp(18)
p<0.001
COM+CAp(33)
p<0.001
COD(6)
1000
COM(74)
500
シスチン
(2)
MAP(13)
y = 0.6385x
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
0
High kV CT value(HU)
図 9 シュウ酸カルシウム+カーボネートアパタイト混合結石の
Dual Energy 解析結果
0
炭
赤外分光分析
シュウ酸カルシウム+
カーボネートアパタイト
500
図 11 Dual Energy Scan による尿路結石の物質弁別の可能性
p<0.001
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
図 10 尿路結石の種類による Dual Energy 解析結果
MAP
シスチン
ウム
シュウ酸
ルシ
カ
カルシウム
酸
Low kV CT value(HU)
NS
High kV-HU / Low kV-HU
Low kV CT value(HU)
尿酸
p<0.05
尿酸
(10)
R² = 0.96589
0
vsシュウ酸Ca
NS
High kV CT value(HU)
High kV CT value(HU)
(n=51)
尿酸とシュウ酸
600 カルシウムの中間
400
200
0
200
400
600
Low kV CT value(HU)
図 12 DHA 結石の Dual Energy 解析結果
INNERVISION (28・12) 2013 別冊付録 17
64 列を超えるCTの技術と臨床
2709-①