情 02-11 浅井 努 2005 年度 卒業研究 1/2 伝える言葉 情02−11 浅井 努 指導教員 加藤雅人 序論 人に何かを伝える過程で自分の言葉が本当に相手に伝わっているのか考えたことはないだろうか。 それは言葉の速さに結びつきがあるのではないか。また、他の人に伝えられた言葉がどのように広 まるのか。 本論 1 章「伝える職業」アナウンスの歴史は長く、始まりは芸としてのものである。大きく広まったのは、ラジオ 放送が開始されて以後で、戦前の国民に聞かせる報道から、戦後の国民に聞いてもらう報道に変化し、さ らにラジオからテレビへ活躍の場を広げ、ニュース報道のみならず、司会、キャスター、リポーターと多岐に わたっている(1.1)。アナウンサーの仕事は放送の最終場面で情報を伝える仕事であり、伝える形式は「話 して伝える」、「読んで伝える」、「聞いて伝える」に分類される。さらに、聞き取りやすい音声と意味のあうこ とばを聞き手にわかりやすく伝えることが重要であり、近年に登場しだしたキャスターには更に臨機応変さ と変化する情報への対応能力も重要とされている(1.2)。今日でもアナウンサー仕事の基本はわかりやすく 伝えることに変わりはない、しかし、時代を重ねるごとにその伝える形式は変化しつつある。今後さらに情 報化が進む中でさらに活躍の場を増やし、さらに伝える形式を変化させていくであろう。 2 章「伝える言葉のスピード」言葉の速さによって、話を理解する速さにも限界があり、早口も一 定のスピードを超えると内容はほとんどわからない。ニュースなど新しい情報を伝える場合、一定 速度を超えた早口は不向きである。ポーズは単なる息継ぎをする「休止」の為だけの時間ではなく、 聞き手にとって話を理解する時間となり、ポーズの時間が長ければ速度がゆっくり聞こえ、聞き手 の話の理解度も上がる(2.1)。報道ステーションを題材にその中で働くことばの職業について論じた。 番組の中では役割に応じてことばの速度に特徴がみられ、キャスターとアナウンサーは話の速度に 緩急をつけることで話の内容を強調し伝える効果を高めている。天気予報とナレーションでは的確 でわかりやすい言葉で伝えるため,余韻を残し表現力を高めるためポーズ時間を長くとっていた (2.2)。心理状態の違いによって話の速度は変わる。話し手は心理状態により話す速度が上昇し、聞 き手は新しいものや難しいものに対し心理的に早口と感じる。また、話者の性格についての聞き手 の印象の協調性に、言葉の速度が関係している(2.3)。人に伝える読みとは、 「ポーズをしっかりと る」 「読みの速度に緩急をつける」 「内容を整理する」があげられ、相手に対しての配慮を加えた上 で話の速度を早めることが大切である(2.4)。 3 章「うわさ」うわさには多くの定義がある。また、うわさは信じられないものというイメージを 作っている背景には、音のコミュニケーションによる不信という点、伝えた情報が事実と異なって いることが、後に明らかになったときうわさとして考えられる点があげられる(3.1)。うわさは 3 つ に分類され、第一に「おしゃべりとしてのうわさ」があり身近に起こったことが中心となる。第二 に「社会情報としてのうわさ」があり一過的で、時事的な話題から構成される。第三に「楽しみと してのうわさ」があり真実かどうかはあまり問題にされず、うわさの情報の共同評価が目的となる (3.2)。うわさの伝達過程ではメディアは全く関与しない個人から個人、一度メディアを通るマスコ 情 02-11 浅井 努 2005 年度 卒業研究 2/2 ミから個人(またその逆もある)、起こったうわさがマスコミやミニコミによって取り上げられ、大 きな広がりを持ったうわさとなるマスコミ又は個人からマスコミ又は個人に分類されうわさは広が っていく。また、うわさが広がる要因は、あいまいな状況であること、不安や関心を抱いているこ と、うわさの内容そのものがあげられる。うわさの流れは既存の人間関係を中心に流れる(3.3)。 文献表 ・稲葉哲朗 「うわさの伝播過程」 『一橋論叢』129 巻 4 号、日本評論社、2003 年、pp.435-447 ・ウォルト J・オング 『声の文化と文字の文化』桜井直文訳、藤原書店、1990 年 ・内田照久 「音声の発話速度が話者の性格印象に与える影響」 『心理学研究』第 73 巻第 2 号、2000 年、pp.131-139 ・岡田真澄 『キャスター: 取材、報道、勉強、ファッション…24時間をフル活用する女たち』広美出版、1996年 ・オールポート、ポストマン 『デマの心理学』南博訳、 岩波書店、1952 年 ・川上善郎 「われわれは事件をどのようにして知るのか」 『日本語学』vol.17、no.1、明治書院、1998、pp.4-13 『うわさが走る』 サイエンス社、1997 年 『うわさの謎』 日本実業出版、1997 年 ・川口幹夫 『アナウンサーたちの70年』 NHKアナウンサー史編集委員会、1992年 ・木下富雄 「現代の噂から口頭伝承の発生のメカニズムを探る」 『流言、うわさ、そして情報』 佐藤達哉編、 至文堂、1999 年、pp.13-30 ・斎藤純男 『日本語音声学入門』 三省堂、1997 年 ・佐々木 端、半谷進彦 『基礎から学ぶアナウンス』 NHK出版 2000年 ・佐藤達哉 「1996 年春、福島でのあたりや情報」 『流言、うわさ、そして情報』佐藤達哉編、至 文堂、1999 年、pp.64-79 .・塩原 慎次朗 『アナウンサーの日本語』 創拓社出版、2003年 ・城生伯太郎 「現代日本語の自然音声談話のスピード」 『月刊言語』vol.28、no.9、大修館書店、 1999、pp.44-50 ・ 杉藤美代子 「言葉のスピード感とは何か」 『月刊言語』vol.28、no.9、大修館書店、1999、pp.30-34、 『声に出して読もう』 明治書院、2003 年 『日本語音声の研究 1-日本人の声』 和泉書院、1994 年 『日本語音声の研究 7-教育者への提言』 和泉書院、1999 年 ・タモツ・シブタニ 『流言と社会』広井脩訳、東京創元社、1985 年 ・三隅譲二 「都市伝説:流言としての理論的一考察」 『流言、うわさ、そして情報』佐藤達哉編、 至文堂、1999 年、pp.229-241 ・最上勝也 「ニュース報道の読みの速さとその計測法」 『月刊言語』vol.28、no.9、大修館書店、 1999、pp.40-41 ・日経woman.net、http://www.nikkeiwoman.net/job/shiritai/job_f17.html ・テレビの「顔」のお値段は?∼アナウンサーの収入、 http://tenshoku.inte.co.jp/saishin/income/006/ ・うわさとニュースの研究会、http://homepage2.nifty.com/rumor/
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