2014年 年次報告 (日本語) - 第50回アジア開発銀行年次総会

アジア・太平洋地域に
おける人々の生活の
改善
年次報告
ア ジ ア 開 発 銀 行
目 次
3
総裁からのメッセージ
4
理事会
6
財務実績
第1章
8
アジア・太平洋地域のニーズへの対応
第2章
16
中央・西アジア
20
東アジア
24
太平洋
28
南アジア
32
東南アジア
第3章
36
民間セクター開発
第4章
42
効果的な組織の実現
付属資料
48
2014年上位受益国 (承認額ベース、協調融資を含む)
49
セクター別内訳・OCR および特別基金
51
ソブリンおよびノンソブリン承認額(2013/2014年)
52
機材、工事、およびコンサルティング・サービスの調達の概要(2014年)
54
加盟国、資本金、および議決権(2014年末現在)
55
総務会(2014年末現在)
58
理事会及び議決グループ(2014年末現在)
59
組織図(2014年末現在)
60
加盟国別経営陣および職員数(2014年末現在)
62
駐在員事務所の定員数(2014年末現在)
貧困の減少
格差の拡大
過去20年間で以前
より多くの 人 々 が
貧困から脱却
富裕層と貧困層の
隔たりが拡大
ADBの支援実績
2014年のADBの支援総額は、
229億3,000万ドル
うち136億9,000万ドルはADB資金、
92億4,000万ドルは協調融資
急速に変わる
地域別内訳
アジア・太平洋地域
各国の開発が進むに
連れて起きる新たな問題
国民の高齢化
質の高い雇用の不足
環境の悪化
根強い貧困
インフラ投資に8兆ドル
気候変動の影響の緩和に
2,400億ドル
それに伴いADBも変革
ADB の長期戦略枠組み「ストラテジー 2020」では、
次の支援を通じて、ADB がアジア・太平洋地域および
同地域の人々の開発を後押しすることを目標とした。
インクルーシブな
経済成長
環境に調和した
持続可能な
成長
ADBとは
地域統合
ADB は国際開発金融機関。開発途上加盟国への融
資、グラント、専門知識の提供を通じて、貧困削減と
成長の恩恵を皆で共有できる世界づくりを支援。
「アジア・太平洋地域には
今もなお多くの課題が残され
ており、従来の課題だけでなく
新たな課題も出てきています。
こうした課題に改革と革新的な
ソリューションを通じて対応
できるようADBも変わる
必要があります」
67
71億8,000万ドル
東南アジア
域内
2億ドル
太平洋
67億5,000万ドル
南アジア
2014年
セクター別内訳
エネルギー
66億5,000万ドル
金融
35億ドル
保健
3,000万ドル
産業・貿易
4億8,000万ドル
インクルーシブ
ネスの一層の
重視
イノベーションと
強靭性の促進
中所得国への
支援強化
教育
9億8,000万ドル
情報通信技術
179万ドル
農業・天然資源・農村開発
14億5,000万ドル
本部所在地
フィリピン、マニラ
域内
加盟国数
東アジア
5億8,000万ドル
ADB の「ストラテジー 2020」の中間見直し
(MTR)
では、以下を
通じて、変わりゆくアジア・太平洋地域のこれらの開発課題に
より適切に対応できるよう重点業務を明確化した。
総裁
中尾 武彦
加盟国数
30億ドル
中央・西アジア
2020年までに域内で見
込まれる資金不足
2008年
52億1,000万ドル
48
域外
加盟国数
19
現地
事務所数
創設年
1966年
32
職員数
2,997
マルチセクター
7億9,000万ドル
公共政策
24億1,000万ドル
水道・都市インフラ
22億9,000万ドル
交通
43億6,000万ドル
年次報告
ア ジ ア 開 発 銀 行
MTR 行動計画:
ADB は、 環 境 お よ び
気候変動への適応の
ための支援を拡大する。
2
ADB 年次報告 | 2014
総裁からのメッセージ
す。これを受け、ADB をより効率的で効果的な組織とする
ための 190 を超える取り組みが盛り込まれた MTR 行動計
画が 7 月に承認されました。地域の膨大なインフラ・ニー
ズへの支援が引き続き ADB の重点業務となる一方で、ニー
ズの高い分野である民間セクター開発、気候変動、災害リ
スクの予防・管理、および社会保障に、より多くの資源を
投入していきます。また、保健および教育分野への投資を
倍増させます。我々の業務において、インクルーシブネス、
イノベーション、および開発に関する知識や知見の共有が
重視されます。
西暦 2000 年というミレニアムの節目以降、アジア・太
平洋地域は大きな変化を経てきました。わずか 15 年前
には貧困が同地域に蔓延していましたが、現在では、ミ
レニアム開発目標の第 1 の目標である絶対貧困の半減を、
2015 年の目標期限前に達成しています。しかし、統計は
必ずしもすべてを語る訳ではありません。地域内のプロジェ
クトを実際に訪れ、開発パートナーと議論をすると、今な
お非常に多くの人々が困窮していることに気付かされます。
こうした人々の所得は 1 日 1.25 ドル(絶対貧困の公式な
指標。アジア・太平洋地域内では約 7 億人が該当)を超え
ているかもしれませんが、適切な住居、栄養のある食物、
安全な環境を子ども達に与えるには依然として不十分な状
況です。
絶対貧困を定義するにあたっては、食料価格の上昇や自
然災害の増加がアジア地域の貧しい人々にもたらす影響を
考慮する必要があります。そうすると、貧困ラインは 1 日
1.51 ドルに引き上げられ、貧困層の人口は 18 億人近くに
なります。これほど深刻な貧困は容認できるものではあり
ません。したがって、1 日 1.51 ドルの貧困ラインにより
貧困とみなされる人々、これまで貧困から脱したことのな
い人々へに対する支援に引き続き優先して取り組まなけれ
ばなりません。
アジア開発銀行(ADB)は優先事項の見直しを行いまし
た。我々の長期戦略である「ストラテジー 2020」の導入
から約 6 年が経過した 2014 年、加盟国の変わりゆくニー
ズに対して ADB が引き続き適切かつ敏速に対応出来るよ
うに見直したのです。この「ストラテジー 2020」の中間
見直し(MTR)を通じ、重点業務の明確化と調整を行いま
本年次報告では、こうした取り組みをご紹介しています。
例えば、9 月には民間セクターからインフラ・プロジェク
トのためのファイナンスや専門知識をいかに呼び込むかに
ついて政府に助言を行う官民連携部を新設しました(37
ページ参照)。また、プロジェクトの遅延を最小限に抑える
ために、調達手続きを簡素化しました(44 ページ参照)。
さらに、譲許的融資業務を通常資本財源のバランスシート
に統合することにより、ADB の融資能力を大幅に拡大させ
ます(14 ページ参照)。
2014 年に ADB が承認した開発支援の総額は、229 億
3,000 万ドルに達しました。その内訳は、ADB および特別
基金から 136 億 9,000 万ドル、協調融資により過去最大
の 92 億 4,000 万ドルとなっています。また、過去 5 年間
で初めて融資実行額が 100 億ドルを超えました。ADB は
プロジェクト実施の改善や、民間セクターの参画と協調融
資の枠組みの拡大を通じて、今後 10 年間に見込まれるア
ジア・太平洋地域のインフラ・ギャップを解消するために
必要とされる 8 兆ドルの資金調達を支援しようとしており、
これらの数字は ADB のそうした取組みが反映されたもの
といえます。
私は、2020 年に向けて、貧困削減により大きな成果が
出せるよう、ADB が先見性に富み、かつ課題に機敏に対応
する組織であり続けるよう努力してまいります。
中尾 武彦
総裁・理事会議長
経営陣
左から:副総裁 Bindu N. Lohani、Lakshmi Venkatachalam、Stephen P. Groff、Thierry de Longuemar、Bruce L. Davis、Wencai
Zhang;事務総局長 Juan Miranda;官房長 Woo-Chong Um
総裁からのメッセージ
3
理事会
前列左から:(理事)Maurizio Ghirga、Umesh Kumar、Maliami bin Hamad、小口一彦、Robert M. Orr、(総裁・理事会議長)中尾武彦、
(理事)Yeo Kwon Yoon、Zhongjing Wang、Anthony Baker、Muhammad Sami Saeed、David Murchison
後列:(理事代理)René Legrand、Iqbal Mahmood、Khin Khin Lwin、福島秀生、Michael Strauss、M P D U K Mapa Pathirana、Wenxing Pan、
Richard Sisson、Dominic Walton-France、Gaudencio Hernandez, Jr.、Armand Evers
写真外:(理事)Bhimantara Widyajala、Richard Edwards、(理事代理)Mario Sander
理
事会は政策、融資、グラント(無償援助)、出資、
保証の承認を含め、ADB の全体的な方向性につ
いて責任を有している。また、株主である加盟
国の指針が確実に実施されるよう監督する重要な役割を
担っている。
理事会は、業務計画と予算枠組み、そして職員の給与
および福利厚生について承認する。また、ADB の年次財
務諸表、予算および純利益の配分を検討・確認し、年次
総会において総務会の承認を得る。理事会は ADB の年
次総会における様々な行事に出席する。2014 年の年次
総会は、カザフスタンのアスタナ市で開催された。
理事会は ADB 業務管理の必要に応じて随時開催され
る。2014 年、理事会は正式会合を 44 回、非正式会合、
セミナー、および説明会を 25 回開催した。同年に理事
会が承認した融資、グラント、出資、保証、技術協力の
総額は 136 億 9,000 万ドルとなった。
4
委員会の業務
理事会の業務を支えるため、監査、予算、コンプライ
アンス審査、開発効果、倫理、人事の 6 つの委員会が
設置されている。これらの委員会は年間数回の会合を行
い、経営陣と理事会に指針を示す。
予 算 委 員 会 は 2014 年、 新 た な 課 題 を 検 討 し た。
ADB は融資能力、業務、予算、給与・福利厚生の検討
に関し、より統合的なアプローチを導入した。このアプ
ローチには、財務および予算計画に関する新たな双方向
プロセスが含まれ、予算委員会がリードして理事会は同
プロセスに関与した。また、同委員会は、
「ストラテジー
2020」の中間見直し(MTR)に係る行動計画や、業務
および管理部門の職員が取り組む業務効率化策の実施に
必要とされるリソースについても検討した。こうした事
項は、理事会と経営陣の年次リトリートでも議論された。
ADB 年次報告 | 2014
理事会は予算委員会からの助言に基づ
き、2015 ~ 2017 年の業務計画と予算
枠組みを承認した。また、アジア開発銀
行 研 究 所 の 3 カ 年 業 務 計 画(2015 ~
2017 年)と 2015 年予算を承認した。
開 発 効 果 委 員 会 は、ADB の プ ロ グ ラ
ムや活動が効果的に実施されるよう、理
事会を補佐する。2014 年には、ADB の
独立評価局が作成した多数の評価書の検
討を行った。これにはインクルーシブな
成長、気候変動、公共セクター業務にお
けるガバナンス強化、ADB 業務における
技術協力の役割、ADB の貿易金融プログ
ラムの実績に対する ADB の支援が含ま
れ る。 ま た 同 委 員 会 は、ADB の セ ー フ
ガード政策に関する業務レビューの第 1
フェーズや、1998 年から 2013 年にお
ける ADB の対タジキスタン支援の実績に
関する第 1 回評価についても検討した。
原動力の変化
理事会は同年、ADB の戦略的方向性に
関わる 2 つの事項である「ストラテジー
2020」の中間見直し(MTR)、ならびに
ADB の譲許的資金であるアジア開発基金
(ADF)の融資業務の通常資本財源のバラ
ンスシートへの統合案について検討した。
理事会は「ストラテジー 2020」の中
間見直し(MTR)のプロセスに深く関与
した。理事会メンバーはそれぞれの理事
選出母体と協議し、加盟国の優先事項を
伝える手助けをした。理事会は ADB との
間で、同中間見直しに関する公式・非公
式の議論を行った。
理事会は、ADB の資本基盤の拡大につ
いて議論したほか、ADB の全体的な融資
能力の強化を目的とした多数の措置を検
討した。資本財源のより効率的かつ効果
的な運用を通じた ADB の財務能力強化が
期待される ADF 融資の ADB の通常資本
財源への統合に関して、理事会は広範な
助言を行った。この改革により、根強い
貧困や経済的弱さに対する脆弱国(多く
は ADF の対象国)による取組への ADB
の支援が強化される。また財務能力の改
善を通じて、環境問題、インフラ・ギャッ
プ、紛争状態への取り組みも後押しされ
るであろう。これにより民間セクター業
務への支援も拡大されるであろう。
理事会
借入国との協働
理事会は開発途上加盟国との協働を
様々な形で行っている。マニラの ADB 本
部への代表団受け入れのほか、各開発途
上加盟国の開発計画の目標達成をいかに
支援すべきかの指針を示した国別支援戦
略の検討と承認を行った。
2014 年 2 月下旬には
ブータンへの理事会グ
2014 年、理事会はアゼルバイジャン、 ル ー プ 訪 問 が 実 施 さ れ
ブータン、カンボジア、フィジーに対す た。同訪問では、ADB が
資金支援したティンプー
る国別支援戦略を承認した。
の都市インフラ開発プロ
理事会は理事会グループ訪問や協議の ジェクトとダガナのダガ
形で開発途上加盟国を訪問した。同訪問 チュ水力発電プロジェク
では、複数の理事会メンバーが特定の国 ト( 写 真 ) を 視 察 し た。
を訪問し、ADB の業務視察や、開発上の また、ブータン王国ジグ
優先事項や課題に関する政府官僚、開発 ミ・ケサル・ナムギャル・
パートナー、現地の経済界や地域住民グ ワンチュク国王陛下に謁
ループ、ADB が資金提供したプロジェク 見し、またツェリン・ト
トの受益者との議論を行う。協議では、 ブゲー首相をはじめとす
理事会メンバーが代表する国々を訪問し、 る政府高官と面談した。
各国政府と議論を行う。
2014 年は、2 月、3 月にブータンとネ
パール、6 月にミクロネシア連邦とマー
シャル諸島、9 月にバングラデシュ、また
10 月にカンボジアとベトナムへの理事会
グループ訪問が実施された。
また理事会メンバーは、台風 30 号(国
際名:ハイエン、フィリピン名:ヨラン
ダ)で被災したフィリピンのレイテ州や
その他地域の様々な市町村を訪問した。
ADB 支援の対象者や州と自治体の政府職
員と面談し、進行中の復興活動を視察し、
タクロバン市の ADB 現地事務所を訪問し
た。
5
財務実績
財務
財源別承認額(2014 年)
通常資本財源
104億3,800万ドル
特別基金財源
32億5,000万ドル
直接価値付加(DVA)協調融資
92億3,700万ドル
2014 年、ADB の業務総額は 229 億 3,000 万ドルとなり、うち 136 億
9,000 万ドルが ADB の通常資本財源(OCR)および特別基金財源から、
92 億 4,000 万ドルが協調融資パートナーより供与された。ソブリン業務
(公共協調融資、技術協力協調融資を含む)の総額は 159 億 9,000 万ドル、
ノンソブリン業務(協調融資を含む)の総額は 69 億 4,000 万ドルとなった。
実行総額は 100 億 1,000 万ドルとなり、2013 年比で 14 億 7,000 万
ドル(17%)増加した。
2010 ~ 2014 年のソブリン・ノンソブリン承認額
(単位:百万ドル)
ソブリン
融資
出資
グラント b
技術協力
直接付加価値(DVA)協調融資
公共協調融資 c
技術協力協調融資 d
ノンソブリン
融資
出資
保証
サプライチェーン・ファイナンス e
技術協力
直接付加価値(DVA)協調融資
公共協調融資 c
民間協調融資 f
B ローン
パラレル・ローン
パラレル出資
貿易金融プログラム協調融資
保証協調融資 h
リスク移転 i
技術協力協調融資 d
合計
2010a
2011a
2012a
2013a
2014
14,463
10,410
952
171
2,930
2,782
148
14,600
10,580
150
614
137
3,119
2,909
210
13,429
10,457
670
146
2,155
2,009
146
16,450
11,740
849
149
3,712
3,435
277
15,990
11,205
405
148
4,232
4,090
142
3,474
815
235
190
2
2,232
5,774
1,250
44
267
8
4,205
7,496
916
131
128
200
5
6,117
4,541
1,425
142
35
6
2,933
6,935
1,714
185
20
11
5,006
2
-
2,229
200
479
1,549
-
4,204
200
1,623
2,381
-
19
6,097
200g
3,341
2,344
87
126
135
194
2,797
220g
109
2,279
75
113
4,809
863g
1,503
340
2,039
8
56
1
1
0
1
2
17,936
20,374
20,925
20,991
22,925
-=ゼロ、0 = 50 万ドル未満
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
a
終了した融資、グラント、出資、保証、技術協力を除く。
b
投資グラント。
c
2014 年には、民間セクター、および、二国間・多国間の援助機関を除く公共財源からの譲許的資金から
成る新カテゴリー「その他の譲許的協調融資」が導入され、新たな協調融資の財源が明確化された。
d
2014 年は、技術協力協調融資にその他の譲許的協調融資が含まれている。
e
サプライチェーン・ファイナンスは、ADB の開発途上加盟国におけるサプライヤーと販売事業者による決済
支援のため、
パートナー金融機関を通じて保証と融資(いずれも政府保証なし)を提供するプログラムである。
f
2011 年に直接付加価値(DVA)民間協調融資の定義が明確化され、DVA 協調融資分類の詳細な基準が
設定された。2010 年から 2014 年の数値はこの新しい定義を反映している。
g
B ローンはドルと現地通貨による補完的融資を含む。
h
第三者が供与し ADB によって完全に保証されない融資(部分信用保証または部分リスク保証等)につい
ては、ADB の保証を受けない部分が純 DVA 協調融資に分類され、保証契約が締結された年に計上される。
i
第三者が ADB の保証または融資のもとでリスクを負担するリスク移転取極めに伴って減少する通常資本
財源の配分額を示す。配分の減少額はカウンターパーティのリスク格付けおよび性質に依る。
6
ADB 年次報告 | 2014
財源
授権資本と応募済資本はそれぞれ 1,540 億 9,000 万ドルおよび 1,530
億 6,000 万ドルであった。授権資本と応募済資本の 2013 年比での減少
は、特別引出権(SDR)に対するドル高が主因となっている。通常資本財
源(OCR)に含まれるその他の財源である収入および実現純利益は 12 億
6,000 万ドルとなり、うち 6 億 534 万ドルは融資ポートフォリオ、3 億
5,167 万ドルは投資ポートフォリオ、3 億 394 万ドルは出資その他による
ものであった。財源としての ADB 特別基金への拠出金および収入の合計は
約 4 億 8,067 万ドルで、その主な内訳は、アジア開発基金が 4 億 2,770
万ドル、技術協力特別基金が 3,462 万ドル、アジア開発銀行研究所特別基
金が 1,265 万ドル、地域協力・統合基金が 366 万ドル、金融セクター開
発パートナーシップ特別基金が 188 万ドルだった。
2014 年、ADB は計 11 種類の通貨建て公募債および私募債の発行を通
じて 142 億 5,000 万ドルの中長期資金を調達した。公募債の合計は 121
億 5,000 万ドルで、ユーロおよびドル建てグローバル・ベンチマーク債 2
件を含む。残りの 21 億ドルは私募債の発行を通じて調達された。
2014 年の ADB の資本市場における主な活動実績としては、4 月の同行
初のユーロ建てベンチマーク債発行(計 15 億ユーロ(21 億ドル相当))、
8 月の同行初のオフショア・ルピー・リンク債発行(30 億ルピー(4,900
万ドル相当))、9 月のメープル債再発行(4 億カナダドル(3 億 6,400 万
ドル相当))、11 月の第 2 回オフショア人民元債券発行(10 億元(1 億 6,400
万ドル相当))が挙げられる。ADB はテーマ型債券を引き続き発行し、ウォー
ター・ボンドにより 2 億 8,400 万ドルを調達した。
また ADB は、ユーロ・コマーシャル・ペーパー・プログラムを通じて
24 億 2,000 万ドルの短期資金を調達した。2014 年末時点の借入の未返
済額はわずか 4 億 7,500 万ドルであった。
2010
7,976
2011
8,266
2012
8,592
2013
8,542
2014
2010
2011
2012
2013
2014
授権資本
163,843
163,336
163,512
163,840
154,092
応募済資本
143,950
162,487
163,129
162,809
153,056
払込資本および準備金
15,878
16,534
16,420
17,138
16,938
借入残高
51,822
58,257
64,762a
61,615
62,688
アジア開発基金
32,651
33,055
33,346
33,359
31,478
通常資本財源
10,009
通常資本財源の借入額
(2010 ~ 2014 年)
(単位:百万ドル)
2010
2011
14,940
14,446
2012
15,067
201312,725
2014
14,724
通常資本財源の業務利益
(2010 ~ 2014 年)
(単位:百万ドル)
2010
各期末時点の財源状況
(単位:百万ドル)
実行総額(2010 ~ 2014 年)
(単位:百万ドル)
548
2011
587
2012
465
2013
469
2014
571
2012 年以降の金額には、未払いの利息と手数料を含む。
a
財務実績
7
MTR 行動計画:
ADB は域内の連結性
向上を通じて、生産性
と競争力を強化する。
アジア・太平洋地域の
ニーズへの対応
8
ADB 年次報告 | 2014
ア
ジア・太平洋地域は目覚ましい経済成長を遂げ
ており、2004 ~ 2014 年の年間成長率の平均
は 7.6% を記録した。2014 年は成長ペースが
鈍化したものの、域内の 45 の国・地域の平均は 6.3%
と、依然として堅調な伸びとなっている。今後数年間
も年率 6% を超える成長が予測されている。
こうした成長は同地域に大きな効果をもたらしてい
る。1990 年から 2011 年の間に、絶対貧困の状態に
ある人々(1 日 1.25 ドル未満で生活する人)は約 9
億 5,000 万人減少し、人口に占める割合は 55.3% か
ら 15.3% へと低下した。
こうした見出し的数値からは見えないが、様々な開
発問題が依然として同地域の政策決定者にとっての課
題となっている。
経済成長の恩恵が均一に行き渡っていないため、格
差、つまり富裕層と貧困層の隔たりは拡大し続けてい
る。
同地域は、気候変動による環境リスクの拡大にさら
されているうえ、経済ショックや自然災害の影響も
受けやすい。インフラのニーズと調達可能な資金との
ギャップも引き続き問題となっている。
数億人の人々が今もなお貧困状態にある。
絶対貧困を示す公式指標は 1 日当たりの生活費を
1.25 ドルとしているが、様々な根拠により、この基準
は低すぎると考えられるようになっている。同地域に
おける最新のデータや消費パターンをこの貧困ライン
に反映させ、食料安全保障の問題や経済ショックに対
する脆弱性も考慮すると、2010 年時点で域内人口の
50% が絶対貧困の状態にあるとされている。
地域全体における高い経済成長、それもインクルー
シブ(全ての人々に恩恵が行き渡る)かつ環境に調和
した持続可能な経済成長を促進するためには、こうし
た開発課題に野心的かつ戦略的に取り組む必要がある。
2011 ~ 2014 年の間に
年間6,875万トン超
の越境貨物輸送を促進
土を耕して生活が好転
40 歳の Elham Musayev 氏(写真)は何年も前から、
父親のそばで身に付けた農業技術で小さな事業を興そう
と考えていた。事業に必要だったのは、生産性を上げる
ための小型トラクターとそのための資金だけだった。
今では、以前の 1/4 ヘクタールの畑よりも約 33 倍大
きな農地でキャベツ、トウモロコシ、ビーツを栽培し、
毎年 4 カ月にわたり 40 人に職を与えている。
Musayev 氏をはじめ、近年アゼルバイジャンで生まれ
た数千人の小起業家の成功の第一歩はアクセスバンクに
よる貸付であった。Musayev 氏の投資を実現したのはア
クセスバンクに対する ADB の融資だ。この融資により、
こうした国有銀行の貸付サービスから通常排除されてき
た層の資金調達が可能となった。
同プロジェクトは、同国内でも相対的に貧しく、サー
ビスが十分普及していない農村地域への銀行サービスを
拡大することにより、アゼルバイジャンにおける貧困
削減とよりインクルーシブな成長を後押しした。また、
Musayev 氏のような多くの中小零細企業への元手資本の
供給を通じて、貧困・脆弱層に雇用や収入、サービスが
もたらされた。
この手法により、アゼルバイジャンの民間セクター開
発が促進された。ADB の支援開始以降、民間銀行は金融
セクターにおける総資産額、融資額、預金額におけるシェ
アを毎年拡大している。アクセスバンクは、2006 年に
純損失を出した後は着実に利益を増やし、その基準や業
務を改善したほか起債により資金を調達し、初の配当実
施を発表した。
ADB は、アクセスバンクの融資先が環境や社会に配慮
したプロジェクトや企業となるよう特に配慮しており、
これは両行間での知識共有が伴うプロセスであった。
の
ADB
動
支援活
アジア・太平洋地域のニーズへの対応
9
戦略的重点:即応性、適切性、実効性
ADB は変わりゆく開発課題に対応し、適切な対処を
確実に行っていくために、長期戦略枠組み「ストラテ
ジー 2020」の中間見直し(MTR)を実施した。
2014 年 7 月、ADB は「ストラテジー 2020」の中間見
直し(MTR)を踏まえた行動計画(MTR 行動計画)を採
択した。同行動計画は、ADB の業務の即応性、適切性、実
効性の向上を図るための 190 以上の措置からなる。引き続
きインフラ投資が重点業務の要となる一方で、MTR 行動計
画はインクルーシブネスやイノベーション、知識の活用を
一層推進するための措置も示している。
2014 年 4 月に ADB の理事会による承認を受けた
「ストラテジー 2020」の中間見直し(MTR)は、開発
途上加盟国の既存および新規の課題を評価し、すべて ADB は 2014 年、
「ストラテジー 2020」の中間見直し
の加盟国に対する ADB のサービス向上のための方策 (MTR)に沿って、貧困レベルが最も高い地区や地域にお
を策定したものである。
ける持続的でインクルーシブな経済成長を支援した。
2020 年に向けた ADB の行動計画の 10 項目
新たな課題に対応できる体制
職員のスキルやインセンティブ、組織配置
を強化する。
よりダイナミックで機敏で革
新的な組織となる。
ADB に お け る バリュー・
フォー・マネーの実現
効率性、実効性、そして組織
の経済性を高める。業務プ
ロセスの合理化と強化を図
る。成果評価のフレームワー
クを組織、国、プロジェクトレ
ベルで体系的に適用する。
財源とパートナー
シップ
ADB の資本基盤
を拡大し、多国間
および二国間機関、
民間セクター、市
民 社 会 団 体との
パートナーシップ
を強化するための
方法を検討。
10
「ストラテジー 2020」
を
導入
10
中間見直し(MTR)は、ADB
が重点業務を明確化し調整する
よう提言している。ADB はそれを
実現すべく、
「ストラテジー 2020」の
MTR 行動計画を策定した。同計画は、
現場での業務を改善し、スキルを培い、
加盟国により良いサービスを提供
することを目的とした未来志向の
プログラムである。MTR 行動計画は、
ビジネス・ニーズの変容や実施
経験を反映して随時改訂される
「生きた」文書となる。
04
05
06
環境と気候変動
環境および 気候変動への適応
面での支援を拡大する。天然資
源管理と統合的な災害リスク
管理を推進する。
03
07
民間セクター開発・業務
2020 年までに、民間セクター開発・業務向け支
援を年間業務の 50% まで拡大する。
より革新的
なプロジェクト資金調達ソリューションを開発する。
官民連携(PPP)
を促進する。
2008 年
02
09
08
ナレッジ・ソリューション
ADB の全部局が「一つの
ADB」
(One ADB)アプ
ローチを採 用・実 施し、
より緊密な業務の遂行を
図る。ナレッジ活動と業務
の相乗効果を高める。
01
貧困削減とインクルーシブな経済成長
迅速かつインクルーシブな経済成長の実現のための支援を拡
大する。社会保護、金融サービスの裾野拡大、
インクルーシブ・
ビジネスの支援にも力を入れる。開発途上加盟国のうち低所
得国、脆弱・紛争影響国に対し、追加的なリソースを提供する。
地域協力・統合
国境を越えたインフ
ラ投 資 へ の 支 援を
拡大する。域内の連
結性向上を通じて、
加 盟 国 の 生 産 性と
競争力を強化する。
インフラ整備
政策、規制、およびガバ
ナンスの改革への支援
を強 化する。公 共イン
フラの管理システムを
強 化する。より大 規 模
なインフラ・プロジェ
クトを開発し、ADB の
リソースをより効果的
に活 用する。民 間セク
ターの参画を推進する。
中所得国
開発途上加盟国の変わりゆく開発
ニーズに対し、適切で即応性のあ
る機関であり続ける。
2014 年
「ストラテジー 2020」の中間
見直し
(MTR)
を実施
2020 年
MTR により ADB は 2020 年までの
戦略的目標を達成
ADB 年次報告 | 2014
MTR 行動計画 :
ADB は、 よ り 大 規 模
なインフラ・プロジェ
クトを開発し、ADB の
リソースを活用する。
2014 年、ADB は
32億ドル
の気候変動資金を動員した。
アジア・太平洋地域のニーズへの対応
11
感染症の阻止に向けた協働
AFP
国境を越えた感染症のまん延を阻止するための域
内での取り組みの支援において、ADB は重要な役割
を果たしている。メコン河流域圏(GMS)の国々は
ADB の支援により、感染症の脅威を検知し対処する
システムを構築した。これは、鳥インフルエンザ等
未だ抑制されていない感染症による経済や社会への
潜在的な打撃の阻止に役立った。また、この協力は、
GMS による薬物耐性マラリア、エボラ・ウイルス病
その他の新たな脅威への対応にも役立つ。
ADB が管理するマラリアその他の感染症の脅威に
対する地域信託基金は、カンボジア、ラオス、ミャ
ンマー、ベトナムにおける地域的なまたは国固有の
深刻な感染症の阻止を支援するため、オーストラリ
ア、カナダ、および英国政府から 3,500 万ドル強の
資金を受けた。同信託基金は、現在策定中の第 2 次
GMS 地域保健安全保障プロジェクトへの支援も予定
している。
ADB は雇用創出や、電力、上水道およ
び衛生、教育および保健等のサービス拡
大への取り組みを強化した。
エネルギーへの
普遍的アクセスに弾み
2014 年 6 月、ADB
は世界的なイニシア
ティブである「すべて
の人のための持続可能
エ ネ ル ギ ー」(SE4All)
の ア ジ ア・ 太 平 洋 ハ
ブにおけるホスト機
関 と し て 選 定 さ れ た。
SE4All は 2030 年まで
にエネルギー・ミック
スに占める再生可能エ
ネルギーの割合を倍増
し、エネルギー効率を
高めることにより、エ
ネルギーへの普遍的ア
クセスの達成を目標と
しており、これは ADB
のアジア・太平洋地域
におけるビジョンにも
沿っている。
12
国における業務を拡大している。
各セクターの主な取り組み:成果に向け
た投資
ADB は急速な経済成長に伴う環境スト
レスを軽減すべく、再生可能エネルギー・ 「 ス ト ラ テ ジ ー 2020」 の 中 間 見 直 し
エネルギー効率・省エネルギー、持続的 (MTR)を受け、ADB はクリーン・エネ
な交通、上水・衛生・廃棄物管理、なら ルギーへの投資を通じ、エネルギー安全
びに気候変動への取り組みの管理に焦点 保障と気候変動という二つの課題に対応
を当てたプロジェクトに 125 億 5,000 万 するとの重点業務を強化した。2014 年、
エネルギー効率と再生可能エネルギー関
ドルを承認した。
連のプロジェクトへの投資額は、ADB の
ADB は成長促進と貧困削減の手段とし 年間目標額 20 億ドルを 4 年連続で上回っ
て、地域協力・統合(RCI)を引き続き推 た。再生可能エネルギー、エネルギー効率、
進している。2014 年の RCI 活動におい クリーン燃料転換への投資を含めた同年
ては、プロジェクトに 34 億ドルを投じ、 のクリーン・エネルギー投資額は計 24 億
12 億ドルの協調融資を動員し、1 億 1,500 ドルに達した。同年のエネルギー・セク
ター全体の融資承認額は計 66 億ドルにの
万ドルの技術協力を提供した。
ぼり、うち自己資金は 28 億ドル、協調融
ADB は 2020 年までにノンソブリン開 資は 38 億ドルであった。
発・業務の割合を年間業務の半分以上と
することを目標に、現在ノンソブリン業 ADB は持続可能な交通インフラ・サー
務の拡大と官民連携(PPP)への支援強化 ビスの提供を通じて、低炭素で安全かつ
に取り組んでいる。PPP は通常、インフラ・ 安価な交通ネットワークの実現に寄与し
サービスの資金調達と提供に関する政府 ている。2014 年には、ADB の融資総額
と民間セクター間の長期契約取極めとな の約 28% を交通セクター向けが占めた。
る。ADB は PPP に必要とされる規制、制 そのうち鉄道関連プロジェクトは計 8 億
度、資金調達、ビジネス枠組みの構築に 500 万ドルと、過去最大の規模となった。
取り組んでいる。また、プロジェクトに アジアの都市人口は毎年 4,400 万人ずつ
よるインクルーシブ効果の高いアグリビ 増加しており、ADB は、今後の経済成長
ジネス等の産業向けノンソブリン融資を の 80% は都市部で創出されると推測して
合理化し、低所得国およびフロンティア いる。これに対応すべく、ADB では、都
ADB 年次報告 | 2014
市交通への融資額を過去 10 年間と比較して 3 倍以上に
拡大している。
2014 年、ADB は都市開発を支援するプロジェクトに
計 11 億 5,000 万ドルを承認した。これらのプロジェク
トでは、インクルーシブで競争力があり、環境的に持続
可能かつ良好なガバナンスを促進する都市づくりに重点
が置かれた。うち 1 億 4,000 万ドルは、バンメトート、
ハティン、タムキー等のベトナムの地方都市の開発に充
てられた。同プログラムは、廃棄物管理や汚水・雨水の
排水システム、道路インフラの向上を通じて、よりグリー
ンで気候変動に耐性のある都市づくりを目的としている。
2014 年における ADB の水関連の融資額は計 28 億
8,000 万ドルに達し、アジア・太平洋地域の 2,000 万
人近くの人々が、水関連インフラ・サービス・セクター、
および農業・天然資源・農村開発セクターのプロジェク
トを通じて恩恵を受けることとなる。この投資は、水を
ADB の業務の重点分野にするという ADB の決意を実行
したもので、年間目標額の 25 億ドルを上回った。ADB
は 2011 年、水関連の融資全体に占める衛生関連プロジェ
クトの割合を、当時の 14% から 2020 年までに 25% 以
上に引き上げるという目標を設定した。2014 年の時点
で、同割合はすでに 27.5% に達した。
ADB は、中等教育、技術教育・職業訓練(TVET)、お
よび高等教育に引き続き大きな支援を行っている。2014
年、ADB の教育投資は協調融資、特別基金を含めると 9
億 7,600 万ドルに達し、うち 50% が開発途上加盟国 6
カ国における TVET および技能開発への支援に充てられ
た。特にバングラデシュ、カンボジア、スリランカにお
いては、主要産業に必要な技能開発のためのプログラム
が実施され、バングラデシュだけで 26 万人が訓練を受
けた。
る健康保険の試験的適用等がある。
ADB は、農業および食料安全保障に年間 20 億ドル
投資するとの目標に近づいてきている。2014 年の農業
セクターへの投資額は合計 14 億 5,000 万ドルにのぼ
り、うち 856 万ドルは技術協力に充てられた。これら
の投資は、洪水管理、水資源管理、およびアグリビジネ
ス開発を通じて食料生産・加工チェーンを活性化させる
ことを目的としている。ADB によるインクルーシブな
農業への取り組みは、安全で栄養価の高い食料需要への
対応を支援する一方で、農村地域で大きな商機や雇用も
生み出している。
受益者の声:
「プロジェクトのおかげで国立病
院への電力供給の信頼性が向上し、
病院の医療サービス改善に結びつ
きました」
プロジェクト技師 Tupai Mau Simanu:サモアにお
ける電力供給の拡充・改善による恩恵について
各テーマの主な取り組み:すべての人々に恩恵を
ADB はアジア・太平洋地域での協力活動において、
ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントを後押しし
ている。ADB は教育、技術教育・職業訓練(TVET)、
インフラ、金融、企業開発等様々なセクターにおける女
2014 年における金融セクター業務では、金融サービ 性や女子の将来性を向上させるべく、公共政策・投資の
スの裾野拡大とインフラ金融に重点が置かれた。ADB は 策定を支援している。2014 年は ADB のソブリン・プ
マイクロ・ファイナンスを通じた金融サービスの裾野拡 ロジェクトの 55% がジェンダーの平等を重視する内容
大、中小企業の金融環境改善、および資本市場と金融安 となっていた。また特筆すべき点として、ADB が支援
定を強化するための措置を講じた。中小企業の利益が拡 する教育・保健プロジェクトの 90% 以上が、過去 3 年
大することにより、インクルーシブな経済成長が促され、 間にわたり高い割合のジェンダーの平等を含む内容と
経済の耐性が高まり、域内・国際サプライ・チェーンが なっている。農業、水インフラ、都市インフラでもその
多様化する。2014 年の金融セクターにおける投資額は 割合は高く、プロジェクトの 80 ~ 90% がジェンダー
合計 35 億ドルとなった。
の平等を含んでいる。
ADB は保健セクターにおける年間貸出額を 2020 年ま
でに倍増させると表明している。ユニバーサル・ヘルス・
カバレッジ(すべての人に手の届く安価な保健サービス
の実施を示す概念)の支援業務の拡大に重点が置かれた。
2014 年は保健に関わる新規融資は承認されていないも
のの、ADB はバングラデシュ、カンボジア、ラオス、モ
ンゴル、ミャンマー、パキスタン、パプアニューギニア、
フィリピン、ベトナムで進行中の保健プロジェクトの実
施を継続した。こうしたプロジェクトによる恩恵として
は、モンゴルにおける病院サービスの質と費用負担の改
善、バングラデシュにおける 10 市町村の診療所と医師
数の拡充、パキスタンにおける社会扶助の受給者に対す
アジア・太平洋地域のニーズへの対応
ジェンダーの平等を重視したプロジェクトは実際に変
化をもたらしている。パキスタンのシンド州では、海
岸地域コミュニティ開発プロジェクトにより、孤立した
農村地域に住む 9,700 人の女性が家畜管理や園芸農業、
その他の職業技能の訓練を受けることができた。1,500
の地域女性グループが発足し、上水道やその他の小規模
インフラの建設といったコミュニティの重要な事項に関
する意思決定プロセスに女性が寄与する場となった。ま
た、同プロジェクトでは、女性に対する国民カードの登
録支援も行われ、6,000 人以上の女性が初めて法的な身
分証明書を手に入れた。
13
2014 年、ADB はアジア・太平洋
地域における教育支援に
9億7,600万ドル
を提供した。
2014 年、ADB はジェンダー・バランス対策を含む
4 件の民間セクタープロジェクトを承認した。これらの
プロジェクトは教育、アグリビジネス、住宅、および金
融サービスの裾野拡大が対象となっており、承認された
プロジェクト件数が 1 件であった 2013 年よりも増え
た。
2014 年、ADB は社会保護への支援を行った。高齢
化が急速に進む中国では、湖北省宜昌市の高齢者介護
サービスを改善するための職業訓練を提供した。同市は
中国における高齢者介護のモデル都市となることが期
待されている。
「ストラテジー 2020」の中間見直し(MTR)では、
アジア地域における気候変動およびその他の環境問題
の対処への支援に係る責務を再確認している。ADB は
重要な業務である気候変動の緩和支援を続ける一方で、
適応策をさらに重視する。緩和策には、再生可能エネル
ギー、エネルギー効率、鉄道、および都市大量輸送が含
まれる。適応策には、開発計画の策定に気候耐性の要素
を採り入れることや、開発途上加盟国の気候リスクに
係る計画や管理における能力強化が含まれる。ADB は
世界・地域規模の気候ファイナンス財源へのアクセス
を提供しており、2014 年は約 32 億ドルの気候変動資
金を動員した。うち 25 億 8,000 万ドルは自己資金、6
億 400 万ドルは外部資金だった。
ADB は引き続き災害耐性の重要性、特に災害リスク
管理と気候変動適応の統合の必要性を重視している。災
害リスク管理の要素を含む 80 件の融資およびグラント
を承認する等、災害リスク管理への資金支援が増加し
た。こうした支援には、ソロモン諸島の大洪水に対する
14
緊急支援や、バングラデシュの洪水・河川堤防浸食リス
ク管理プログラムへの資金支援が含まれる。ADB はア
フガニスタン、カンボジア、インド、トンガの災害復旧・
復興も支援した。
MTR 行動計画では、業務および公共政策におけるガ
バナンスや能力強化の改善に、さらに多くのリソースを
必要としている。2014 年、ADB は公共セクターにお
ける技術面の変革に重点を置いた。ミャンマー政府等に
対し、電子政府マスタープランの策定や地方における情
報通信技術能力の評価を支援するなど、途上国における
IT ソリューションの導入と実施を後押しした。2014 年、
ADB は開かれた政府と社会的説明責任の向上に向けた
各国の取り組みを支援するオープン・ガバメント・パー
トナーシップの多国間メンバーとなった。
ADB は、開発途上加盟国の開発課題への取り組みを
支援するナレッジ・ソリューションを構築する必要性を
強調している。中国と次期 5 カ年計画策定に向けた情報
提供のため、またインドネシアとエネルギー安全保障、
食料安全保障、技能開発のためのナレッジ・ソリューショ
ン構築のため、ナレッジの共有を図っている。さらに、
ナレッジ・ソリューションの実現を強化するため国別ナ
レッジ・プラン策定をすべての開発途上加盟国と開始し
ている。また、ナレッジ・ワークを中央で一本化するた
め、ナレッジの成果物・サービスに係るデータベースの
構築にも取り組んでいる。
ADB 資金によるレバレッジ:よりダイナミックなソ
リューション
ADB およびドナー国にとって、開発途上加盟国の巨
ADB 年次報告 | 2014
「生命の要」を管理
アジア・太平洋地域の多くで水資源が不足し
つつある中、「ストラテジー 2020」の中間見直
し(MTR)では、水効率化を重視し、
「生命の要」
である水を最も生産的に利用・管理する方法を
定めるよう提言がなされている。その好例がバ
ングラデシュの灌漑プロジェクトだ。ADB にとっ
ては初の灌漑分野での官民連携(PPP)として、
成果主義に基づく管理契約の下、建設段階で 5
年間、その後灌漑運営で 15 年間の契約が民間
事業者に委託される予定だ。農場レベルでの節
水対策としては、約 1 万 7,000 ヘクタールに広
がる高効率の配水管網等が含まれる。その他の
イノベーションでは、プリペイドカード式の水
道メーターによる料金の支払い・清算の改善や、
約 60 ヘクタールにおよぶソーラー・ポンプの試
験的利用を通じた持続可能な電源の調査が挙げ
られる。
大な資金ニーズに応えることは年々厳しくなっている。
ADB はこの状況を受けて、通常資本財源(OCR)のバ
ランスシートにアジア開発基金(ADF)の融資業務を
統合することで資本基盤を拡大する提案を策定した。
これにより、通常資本財源の自己資金規模は 3 倍近
くに拡大することが見込まれ、財務状況の強化やリス
ク負担能力の拡大、開発支援の増額が可能となる。
この新たな自己資金構造案により、ADF 支援対象国
を中心に民間セクター業務の支援増額も可能となる。
総務会の承認が得られれば、同案は 2017 年 1 月より
実施される予定である。
ADB は自己資金による融資能力の拡大に加え、域
内の開発ニーズへの対応を強化すべく資金レバレッジ
のための革新的な方策を引き続き模索した。ADB は、
2020 年までに協調融資が自己資金を上回るよう目標
を設定しており、その目標は達成されつつある。2014
年、ADB は 136 億 9,000 万ドルの自己資金をレバレッ
ジし、92 億 4,000 万ドルの協調融資を動員した。こ
のうち 52% は民間協調融資、48% は公共協調融資お
よびその他の譲許的協調融資で、これらの他ノンソブ
リンのシンジケーション業務もある。
2014 年、ADB はドイツ復興金融公庫(KfW)およ
び国際農業開発基金(IFAD)と協調融資取極めを締結
したほか、イスラム開発銀行との現行協定を延長した。
ADB はオーストラリア、日本、英国政府との協力の下、
新たな信託基金を設立した。
アジア・太平洋地域のニーズへの対応
また、ADB は再生可能エネルギー・セクターをはじ
めとするインフラへの民間投資拡大を促すための新たな
手段を引き続き構築している。これには信用補完ファシ
リティの利用拡大、B ローンおよびパラレル・ローンの
シンジケーション(2014 年には ADB の B ローン・シ
ンジケーション活動により 8 億 6,000 万ドル超を調達)
を通じた外部資金動員の重点強化、譲許的資金の革新的
利用が含まれる。ADB はこうした手段を通じて、拡大
する開発目標の達成を支援するための外部資金源である
民間セクターとのつながりを強化している。
2011 ~ 2014 年の間に
166万人超の教員
が資質・能力に関する
訓練を受けた。
の
ADB
動
活
支援
15
2
014 年の中央・西アジア諸国
経済にはばらつきが生じた。一
部の国では高成長のモメンタ
ムが持続したが、他ではロシアの景
気低迷や低調な世界経済の見通しの
影響がみられた。
中央・
西アジア
アフガニスタン、アルメニア、アゼルバイジャン、
ジョージア、カザフスタン、キルギス、パキスタン、
タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン
MTR 行動計画:
ADB は加盟国のうち、
低所得国、脆弱・紛争
影響国に対し、さらに
多くのリソースを提供
する。
カ ザ フ ス タ ン の 経 済 成 長 率 は、
2009 年 以 来 最 低 に 落 ち 込 ん だ。
2014 年 2 月の通貨テンゲの下落に
よりサービス産業が打撃を受け、原
油価格の下落を背景に鉱工業生産も
減少した。ウズベキスタンは、政府
の大型投資プログラムにより安定し
た成長を続けた。
アゼルバイジャンは、非石油セク
ターが公共投資の下支えにより、石
油生産量の減少を相殺して経済成長
を実現した。その一方で、トルクメ
ニスタンは新しいガス田関連施設に
より GDP 成長率が上昇した。
キルギスは、ロシアとカザフスタ
ンの景気低迷を受け 2014 年の GDP
成長率が 3.6% に減速した。現地通貨
が約 19% 下落したことでインフレ率
が 7.5% に上昇した。同国からの主な
出稼ぎ先であるカザフスタンとロシ
ア経済の低調と通貨安により、国外
からの送金が 5% 減少した。金鉱石
の質低下とともに金の生産量と輸出
が減少し、金の価格下落が追い打ち
をかけた。
同様に、2015 年は国外からの送金
が大幅に減少する見通しであること
から、タジキスタン政府は景気に深
2011 ~ 2014 年の間に
230万
ヘクタール超
の土地の灌漑、排水、
または洪水管理が改善
の
ADB
動
活
支援
16
ADB 年次報告 | 2014
刻な影響が生じるとみている。国外から帰還する多数の
出稼ぎ労働者の雇用を創出するべく、政府は ADB を含
む開発パートナーに予算支援を要請した。
ジョージアは、内需や輸出、外国直接投資の拡大から
2014 年の成長率が上昇した。
アルメニアは、主に供給サイドの成長鈍化により経済成
長が減速した。
アフガニスタンは、国際治安部隊が撤退し、治安責任
がアフガニスタン側に移譲されたことから、公共支出が
増えた。
同地方は内陸国をはじめとして、依然高い輸送コスト
に制約されている。一部の国では貧困率が未だ上昇し
て 30% 以上となっており、インクルーシブな成長基盤
を実現するには一層の努力が求められる。キルギスとタ
ジキスタンは引き続き冬季の電力不足に悩まされている
ほか、パキスタンとアフガニスタンは年間を通じエネル
ギー不足の問題を抱えている。
2014 年の主な業務内容
2014 年、ADB は中央・西アジア諸国の政府に対し、
総額 27 億 5,000 万ドルの新規融資および 3,816 万ド
ルの技術協力を承認した。この融資は、11 億 6,000 万
ドルの協調融資の支援を受けた。新規の融資・グラント
のセクター別内訳は、エネルギー(57%)、交通(25%)、
公共財政管理(8%)、環境・天然資源(5%)
、都市サー
ビス(3%)、緊急支援(2%)となった。契約締結額と
実行額はそれぞれ 18 億 9,000 万ドル、23 億 3,000 万
ドルとなった。
同年は ADB とアゼルバイジャンの関係にとって重要
な年となった。9 月、ADB は 2014 ~ 2018 年の同国
に対する支援の概要を示した新国別支援戦略を承認し
た。同戦略では交通、エネルギー、水、およびその他の
都市インフラ・サービスの支援に重点を置き、アゼル
バイジャンの国家開発目標の達成を支援する。ADB は
2014 年中に、ギャンジャ~ガザク間の地方道路の改修
と橋梁の建設、およびジャリラバード~ショルスル間の
30 km の高速道路建設の 2 件の重要な輸送プロジェク
トへの資金支援を承認した。
2014 年、ADB はカザフスタンとの間で同国国家基
金からの資金との協調融資枠組みという革新的なパート
ナーシップを締結した。この枠組みは、インフラ、中小
企業、および金融セクターの開発に向けた資金の効果的
な管理におけるまったく新しい試みとなる。
アフガニスタンが過去数十年間で最悪の鉄砲水に見舞
われ、27 州で計 12 万 5,000 人が被災した際、ADB は
灌漑システムと農村道路の再建で緊急支援に対応した。
同プロジェクトは、擁壁の建設支援を通じて洪水による
浸食を防ぎ、灌漑農地の生産レベルを早急に完全回復さ
中央・ 西アジア
せることを目的としている。また道路や橋梁の復旧によ
り、通行や貨物輸送が再開する。12 月、ADB はアフガ
ニスタンの 4 州におけるオフ・グリッド電化の財源と技
術の検討および再生可能エネルギー開発計画の策定に関
するプロジェクトを承認した。
キルギスでは新たな開発支援により教育制度の質と妥
当性を向上させ、またパキスタンでは電力セクター全体
の政策およびプロジェクト融資を通じて、慢性的なエネ
ルギー不足に対処する。
受益者の声:
「以前は朝食の支度のために、子
供が学校に出掛ける前に早起きし
て薪拾いに行っていました。バイ
オ・ガスのおかげで、ゆっくり眠
り、食事もすぐにできるようにな
りました」
五児の母 Shameem Bibi:パキスタンにおける生活
支援プロジェクトについて
アルメニアでは、ADB は欧州復興開発銀行との間で、
老朽化した送電システムの修復への資金支援を行うこと
で合意した。この取り組みにより、同国の電力供給の信
頼性および効率が向上する。
知識共有を通じた貿易促進
2014 年の中央・西アジアにおける ADB の知識成果
物・サービスは、民間セクターの成長促進に重点を置き
つつ、広範なテーマを網羅した。
中央アジア地域経済協力(CAREC)プログラムは、
知識の創出において引き続き中心的な役割を果たし、カ
ザフスタンのアルマティとキルギスの首都ビシュケク間
の経済回廊に関する調査等が実施された。キルギスにつ
いては、成長分析調査が完成した。
域内の貿易振興や経済の多様化の機会分析、観光の促
進、域内の農業市場の競争力向上を目的とした、会議や
ワークショップ等の知識共有イベントが実施された。各
国の中央銀行や財務省の職員を対象に、銀行規制、リス
ク管理、金融規制当局の監督能力に関する研修プログラ
ムが開催された。
17
アルメニアでは、同国の市町村水道システムの政策・
制度改革経験に関するワークショップが開催された。同
ワークショップでは、過去と現在の慣習を分析し、改
革の概要、得られた教訓、および将来の計画について説
明がなされた。ワークショップには太平洋地域の東ティ
モールからも政府高官が出席し、アルメニアにおける改
革や民間セクターとの協働を通じた水セクターの転換に
ついて直に学んだ。
カザフスタンの孤立した
地域における交通の円滑化
と安全向上
カザフスタンのジャンブル州の住民は道路の不備に悩ま
されていた。特に冬季は、旅客や貨物輸送が困難となり、
しばしば小さなトラックが過積載の危険な状態で通行する
状況となっていた。
ADB はこのような貧しく孤立した地域の住民の困難を
軽減するべく、CAREC 第一回廊の今では完成区間(ジャ
ンブル州のタラズ~コルダイ間)をサポートするため 2
億 2,400 万ドルを提供した。同区間は 125 km におよび、
受益者数は 40 万人にのぼる。また、建設ピーク時には約
1,600 人の雇用を創出し、完成後は移動時間が短縮され、
貨物や旅客の移動が容易になり、新しい道路沿いにガソリ
ンスタンドや自動車修理工場等の小規模ビジネスを始めよ
うという機運が高まっている。
今ではジャンブル州の住民は診療所や学校等の基礎的社
会サービス・施設へのアクセスが大幅に改善され、アルマ
ティやコルダイ、メルケ、タラズの市場や商業地区への交
通が容易になった。歩行者専用道が設けられ自動車やト
ラックの通行と分離されたことで、個人の安全も改善され
たほか、動物が幹線道路に入らないように排水渠も設置さ
れた。
従って現在は、ADB が一部協力した開発支援によって
ジャンブル州の住民は冬季に入っても以前ほど孤立感を感
じていない。
CAREC 第一回廊は ADB、イスラム開発銀行、および
JICA が支援する投資プログラムである。同プログラムは、
最終的にはジャンブル州の道路 470 km を改善すること
を目的としている。この継続的な実施により、カザフスタ
ンの持続可能な経済開発の促進、国内商業や貿易の拡大、
アルマティ~シムケント間の道路輸送の効率改善をもたら
す。
18
アゼルバイジャンでは、政府が電力投資を重点化し、
電力供給の信頼性向上や停電の削減を目指すマスタープ
ランを策定することを ADB は支援した。ADB は電力
セクターにおける民間参画の可能性に関する政府の調査
取り組みも支援した。
地域協力への直行ルート
CAREC プログラムは引き続き ADB の中央・西アジ
ア地域開発支援の要となっている。同プログラムが始
動した 1996 年以降、ADB は合計 158 件の地域協力・
統合(RCI)プロジェクトに 246 億ドルを投資した。
CAREC プロジェクトは、従来同様、交通、エネルギー、
貿易円滑化、および通商政策に重点を置いたものとなっ
た。
ADB はキルギスとタジキスタンを結ぶ 250 km の道
路建設の完成に計 1 億 200 万ドルのグラントおよび融
資を実施し、RCI の強化を支援した。同プロジェクトは、
両国間だけでなく中国等近隣諸国からの輸送コスト削減
に貢献した。ADB はカザフスタン、ジャンブル州のタ
ラズ~コルダイ間の道路区間 125 km の建設完成のた
めに 2 億 2,400 万ドルの追加支援を行った。この道路
により、移動がより迅速かつ快適となり、観光等のサー
ビスセクターを含む経済機会が多様化したほか、農業・
酪農セクターではより多くの地場産品が遠方の市場に良
い状態で出荷できるようになり、地域間の市場の競争力
が向上した(コラム参照)。
CAREC は各国の輸送網の改修や国境間の交通回廊の
改善、経済多様化の恩恵を各国間に循環させる経済回廊
の構築のためのさらなる選択肢を検討している。キルギ
スで開催された CAREC の第 13 回閣僚会合において、
アルマティ~ビシュケク経済回廊の構想が立ち上げられ
た。両都市の代表者も、サービスセクターをカバーする
覚書を締結した。
同閣僚会合では、ADB およびその他の代表団も中国
の新疆ウイグル自治区ウルムチに CAREC 研究所を設置
することで合意した。同研究所は、経済成長を加速させ
るための知識創出と能力強化を通じて CAREC プログラ
ムの質を向上させることを使命としている。ADB は同
研究所の活動初期段階における技術協力と運営支援を行
う。
ADB 年次報告 | 2014
ADB は CAREC の
プロジェクト 158 件に
246億ドル
を投資した。
教育とビジネスを通じたインクルーシブ
な成長
ADB は中央・西アジアの貧困層およ
び恵まれない人々のための経済的機会の
拡大や、同地域の女性の起業促進に取り
組んでいる。
キルギスでは、より多くの学童が教科
書を使えるようレンタル方式を導入する
教育プログラムを支援した。同プログラ
ムは、孤立地域や貧困地域の学校に対す
るリソース拡大も行う。
ジョージアでは、社会扶助プログラム、
年金、および社会インフラへの公共支出
拡大を支援した。これにより家計や国内
企業、政府による貯蓄と投資の拡大を支
援する。同プログラムは財政的に持続可
能な国民皆年金制度を構築するための改
革を導入しており、中小零細企業を経営
する女性企業家をはじめとする女性のた
めに平等な社会保障を確立することを目
指している。また、関連官民連携(PPP)
案件やインフラ整備案件の支援を通じ
中央・ 西アジア
て、より効果的な社会サービスの実現を
推進する。
アルメニアでは、道路および水セク
ターの持続可能性と、同国政府の 2014
~ 2025 年における優先開発事項の達成
を支援するため、4,900 万ドルの融資と
90 万ドルの技術協力グラントを承認し
た。このプログラムでは政府の結果重視
型の管理が採用された。同アプローチは
各セクターおよびセクター間の計画策
定、予算策定、実施、モニタリングの実
施要領に用いられる。
再び軌道に乗った経済
ADB はマザリシャリフ
とウズベキスタンとの国
境部のハイラタンを結ぶ
延 長 75 km の 鉄 道 建 設
支援に 1 億 6,500 万ドル
を提供した。運行初年の
輸送量は、石油・同精製
品 200 万 ト ン、 小 麦 54
万 ト ン、 建 材 34 万 ト ン
に の ぼ っ た。2012 年 の
アフガニスタンとウズベ
キスタン間の貿易規模は
約 35% 増 加 し た。7 月、
同鉄道は米財務省が提供
する開発インパクト賞を
受賞した。
19
2
014 年の東アジア諸国は、こ
こ数年の急速な経済成長が収束
した。中国は政府が引き続き量
より質の成長を重視する中、着実なが
ら管理された経済成長を達成した。モ
ンゴルは依然として世界や域内平均を
上回る高い成長率を続けたものの、一
桁成長に減速した。
東アジア
中国、モンゴル
中国は急速な経済成長を経て貧困削
減と生活の質が大幅に進展し、高中所
得国となった。すべての人々に恩恵を
もたらす経済成長を創出するための新
たな成長の原動力を構築することが課
題となっている。同国は環境保護、格
差、金融セクター規制、地方自治体の
債務、国有企業への民間投資といった
問題に対処しなければならない。
MTR 行動計画:
ADB は社会保護に力
を入れつつ、迅速かつ
インクルーシブな経済
成長を支援する。
2014 年にみられた前向きな兆しと
しては、上海の自由貿易区における規
制枠組みの導入がある。同区は、サー
ビスセクター開発や金融セクター自由
化の試験場となる。また同国は資本の
移動と移転を改善すべく、人民元の 1
日の許容変動幅を従来の 2 倍に拡大
し、上海と香港の証券取引所の相互乗
り入れを始めた。
モンゴルでは、外国直接投資の急減
や一次産品価格の下落、鉱業プロジェ
クトの遅延により 2014 年は経済が
減速した。同年は通貨が 13.8% 下落
した。再度の景気過熱を防ぎ、鉱業収
入への依存を軽減するうえで、雇用創
出にとっても極めて重要な経済の多様
化が引き続き優先事項となっている。
2011 ~ 2014 年の間に
6万4,900 km超
の道路を新規建設
または改修
の
ADB
動
活
援
支
20
ADB 年次報告 | 2014
2014 年の主な業務内容
2014 年、ADB の東アジア地域への支援額は、融資・
グラントプロジェクト 14 件に対し計 16 億 6,000 万ド
ル、技術協力プロジェクト 52 件に対し計 2,941 万ドル
となった。さらに 1 億 6,748 万ドルの協調融資も合わせ
た支援のセクター別内訳は、交通(49%)、都市・社会サー
ビス(36%)、エネルギー(9%)、天然資源・農村開発(6%)
だった。
中国における ADB のプログラムはイノベーションを
重視するようになり、付加価値をもたらし、開発インパ
クトの高いプロジェクトとなった。2014 年の融資支援
総額は 14 億 9,000 万ドルにのぼり、エネルギー、天然
資源・農村開発、交通、都市・社会サービスのプロジェ
クト 11 件が対象となった。
ADB は中国の交通セクターに対し 6 億 9,255 万ドル
の融資を承認した。これには、安徽省における内陸水輸
送プロジェクト、および雲南省と広西チワン族自治区に
おける旅客鉄道輸送のエネルギー効率化と安全向上のた
めのプロジェクトが含まれる。この融資は、江西省吉安
におけるコミューター用都市公共輸送機関の改善と、雲
南省普洱におけるクロスボーダー交通や農村道路関連プ
ロジェクトを通じた人やモノの移動の円滑化も支援して
いる。
ADB は、吉林省、甘粛省、湖北省、および雲南省にお
ける合計 5 億ドルのプロジェクト等、中国の都市開発に
大規模な投資を行っている。こうしたプロジェクトは、
都市インフラのサービスや施設、固形廃棄物管理、上水道、
環境汚染管理、洪水管理の向上を目指している。広東省
では、1 億ドルが水資源の保護と水安全保障向上の支援
に充てられている。
中国の教育セクターでは、ADB は広西チワン族自治区
百色市において 5,000 万ドル規模の技術教育・職業訓練
(TVET)のプロジェクトを支援している。同プロジェク
トは企業が必要とする技能を提供する柔軟かつニーズに
対応した訓練カリキュラムの策定を支援している。同プ
ロジェクトが成功すれば、中国の他の地域でも実施され
る可能性がある。
プロジェクト準備支援(679 万ドル)を除く ADB の
2014 年における対中技術協力の総額は合計 1,118 万ド
ルとなり、政府の政策改革の措置や中国の第 13 次 5 カ
年計画の策定を支援すべく政策・助言サービスや能力強
化に重点が置かれた。
甘粛省のグリーン化
2006 年、中国・甘粛省の北西部にある芭蕉湾村に安定
した電力供給がもたらされたことで、Zhang Huiping 氏
(写真(家族とともに))の生活は一変した。近代的な冷蔵
庫、冷凍庫、炊飯器、洗濯機等の家電製品を利用できるよ
うになったことで、羊の飼育に従事している Zhang 氏の
日常的な負担は軽減された。「以前は羊をと殺したら、数
日以内にすべて食べてしまわなければなりませんでした。
今では冷凍庫のおかげで肉を腐らせる心配がなくなりまし
た」と Zhang 氏はいう。
ADB の支援で黒河流域沿いに水力発電所が 3 基建設さ
れることで、芭蕉湾村をはじめとする多くの村に電力が供
給される予定だ。これらの発電所の年間発電量は 8 億キ
ロワット時にのぼり、クリーンかつ再生可能、費用効率も
高い電力源となる。
黒河の中流沿いに位置する張掖市も同プロジェクトの恩
恵を受けている。従来、同市の経済は農業や畜産が中心と
なっていたが、産業開発が進み電力不足に陥った。ADB
が支援した発電所はこの電力不足の解消に寄与した。
水力発電所 3 基からは年間 63 万トンの温室効果ガス削
減効果が見込まれ、年間約 30 万トンの標準石炭の燃焼削
減に相当する。
これらの水力発電プロジェクトは、国連気候変動枠組条
約の下で開発途上国のクリーン・エネルギー・プロジェク
トを促進するためのインセンティブであるクリーン開発メ
カニズム(CDM)プロジェクトとして登録されている。
CDM 登録プロジェクトでは、認証排出削減量の売却を通
じた追加収益を生み出すことが可能である。CDM の枠組
みの下、これらの水力発電所は 2014 年末までに計 3,050
万ドルの炭素収益を得ている。
ADB は モ ン ゴ ル の プ ロ ジ ェ ク ト 3 件 に 対 し 計 1 億
6,850 万ドルのソブリン融資を行った。1 億 7,000 万ド
ルの輸送プロジェクトは、1 億 2,500 万ドルが 2014 年
に承認され、現在延長 293 km の道路を建設中である。
これにより孤立しているモンゴル西部地域は、南は中国、
北はロシアと連結される。同プロジェクトは、雇用創出、
貿易円滑化、および同地域の社会・経済開発の促進をも
たらす。1,850 万ドルの融資により、モンゴル第 3 の都
東アジア
21
中国の将来の青写真
2014 年 10 月 23 日に
北京において、中尾武彦
総裁に率いられた中国向
けの「一つの ADB」ナレッ
ジ・ワーキング・グルー
プ は、 第 13 次 5 カ 年 計
画の策定に関する中国政
府との政策対話を行った。
ADB は中国に対し、同国
が採択した政策の方向性
に従い、徹底した構造改
革に裏打ちされた市場主
導型の産業転換を行うこ
との重要性を強調した。
市ダルハンにおける最新式の下水処理場
建設を支援する。同プロジェクトは受益
者が 8 万人以上にのぼり、ハラ川の保護
につながる。また、ADB はモンゴル人
が農業、建設、交通セクターの雇用に適
した技能を学習できるよう、技術職業教
育の推進支援に 2,500 万ドルを約定し
た。
モンゴルへの技術協力の総額は 995
万ドルにのぼり、エネルギー、金融、交
通セクターの支援、および公共政策改善
に充てられた。
東アジアで「一つ」となっての取り組み
ADB は 2014 年、 東 ア ジ ア に お け る
知 識 共 有 活 動 を 強 化 し、 グ リ ー ン 成
長、都市開発、交通、技術教育・職業訓
練(TVET)、および官民連携(PPP)に
重点的に取り組む新たな知識プラット
フォーム・ハブの構築を支援した。北
京での PPP に関する知識共有プラット
フォームの展開や、都市・農村間の貧困
に関する意見交換の取り組みの促進、中
国農業大学における生態補償ハブの設立
を 支 援 し た。 ま た、ADB は 2014 年、
中 国 と モ ン ゴ ル に お い て 知 識 成 果 物・
サービス 70 件を作成し、知識共有活動
80 件を実施した。
2014 年、 中 国 は「 一 つ の ADB」 ア
プローチの初の対象国となった。同アプ
ローチは「ストラテジー 2020」の中間
見直し(MTR)を基に策定された行動計
画の重要な要素の一つである。ADB の
各部局に対し、開発途上加盟国のための
ナレッジ・ソリューションの構築で協力
するよう促すほか、ADB の現地事務所
間の交流を促進し、地域間の知識共有も
目指す。2014 年 10 月、ADB は「一つ
の ADB」アプローチを用いて、中国の
高所得国への転換を支援するための政策
提言を行った。これらの提言は、第 13
次 5 カ年計画(2016 ~ 2020 年)の策
定に先立ち議論された。
ADB は孤立したモンゴル
西部地域における延長
293 km
の道路建設を支援した。
22
ADB 年次報告 | 2014
国境を越えた開発
ADB はメコン河流域圏(GMS)の経済協力プログ
ラムへの中国の参加を引き続き支援した。3 億 5,000
万ドルの融資により、GMS 南北経済回廊沿いに位置
する雲南省の道路インフラと都市環境の改善を支援す
る。中国とベトナム間の覚書を通じて、開発支援は国
境経済区の設置や共同マスタープラン策定を支援し、
二国間の貿易・投資を促進した。
2014 年、ADB は中国とモンゴルに対し、中央アジ
ア地域経済協力(CAREC)プログラム下の他の開発
途上加盟国との協働を継続するための支援を行った。
ADB は税関手続きの合理化、輸送協定の管理、および
国境間における動物の疾病管理の改善等、同プログラ
ムの中心的活動を後押しした。また、新たに完成した
ウランバートルと中国側国境のエレンホトを結ぶ国際
回廊、およびモンゴル西部と中国・ロシアを連結する
延長 293 km の道路を通じて、東アジアの人々を物理
的に結び付ける支援を行った。
貧困に対する長期的な対策を見い出す
2014 年、ADB は中国およびモンゴルの貧窮した
人々や恵まれない人々を中心に生活水準向上に引き続
き取り組んだ。
ADB は中国の広東省潮南区における水供給改善プロ
ジェクトを支援し、123 万人が受益した。また都市交
通および上水道の改善を通じて、吉林省の白山市と白
城市の貧困層も支援している。雲南省では、資金支援
により洪水管理や固形廃棄物管理、その他の基礎的都
市インフラ・サービスの向上を支援し、楚雄県の 3 つ
の二級都市における貧窮した人々の生活を改善してい
る。
ADB は中国の多様化する経済の需要に応えるべく、
低開発地域を中心に訓練プログラムによる労働力の技
能開発を支援している。2014 年、ADB は職能に基
づく技術教育・職業訓練(TVET)カリキュラム作成
のほか、教員の養成、施設・設備の改善を支援した。
ADB は高等教育においては、大学卒業者の雇用見込み
を改善するための政策策定について教育省への支援を
行った。また、湖北省宜昌で高齢者介護をはじめとす
るケア職の訓練も支援した。
また ADB は、モンゴルの障害者サービスの改善や貧
困層のための全国規模の遠隔治療ネットワークの拡大
を支援している。
ADB は 2014 年もモンゴルのフード・スタンプ制
度への支援を継続した。同制度は、人口の 5% に相当
する最貧層に栄養のある食料を提供するプログラムで
ある。
受益者の声:
「私達はプロジェクトのおかげで
牧草地と家畜、実務教育に加え、
金融援助も受けることができ大変
幸運だと感じています。これによ
り所得を向上させられるよう願っ
ています」
Ts. Battumur 氏:ADB が支援したモンゴルの羊飼
いを対象とした気候変動影響への対処プログラムに
ついて
環境持続可能性への道筋
2014 年 1 月、ADB は中国の環境保護部および国家
発展改革委員会との間で覚書 2 件を締結した。これら
の覚書は、大気、水質、および土壌の汚染を防止およ
び管理し、気候保護への革新的なアプローチを立案す
ることを目的としている。
ADB は内モンゴル自治区フフホト市における 1 億
5,000 万ドルの地域暖房プロジェクト(低炭素、低
排出の天然ガス技術を利用)への支援を承認した。ま
た、寧夏回族自治区における低炭素交通の開発、エネ
ルギー効率の高い鉄道建築物の設計、および北京の大
気汚染削減に関する技術協力も提供している。
モンゴルではトーラ川流域の統合的水管理計画の実
施支援を通じて、ウランバートルおよび周辺地域の水
安全保障に寄与している。
モンゴルでは、ADB は中小零細企業の開発を支援
すべく金融セクターへのアクセス拡大に取り組んでい
る。中小零細企業は同国の企業の 98% を占めている
ことから、ADB の取り組みを通じて商業の拡大や起業
家の所得向上、雇用創出を支援する。
貧困削減日本基金からのグラントにより、モンゴル
の 1,400 人以上の羊飼いが牧草地管理の改善や、気候
変動と自然災害への耐性強化について訓練を受けた。
東アジア
23
2
014 年は太平洋地域全体とし
て経済成長が小幅の伸びを示し
たが、各国の景気にはばらつき
がみられた。
太平洋
クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、
ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、
東ティモール、トンガ、ツバル、バヌアツ
MTR 行動計画:
ADB は 2020 年
までに支援総額に
占める教育の割合
を 6 ~ 10% に拡大
する。
地域の経済成長率は 5.3% となった
が、これは主に域内の2大経済である
パプアニューギニアと東ティモールの
2 国の牽引による。フィジーは 2014
年に総選挙が平和裏に開催されたこと
で、3.3% の持続した成長となり、今
後の見通しも良好である。トンガとソ
ロモン諸島は自然災害の打撃を受け、
成長が鈍化して財政負担が拡大した。
太平洋の小島嶼国は、政府開発援助
から資金提供を受けることの多い公共
支出に、経済成長の下支えを頼ってい
る。ADB はこうした国々の財政基盤
がより持続的となるよう財政改革プロ
グラムや民間セクター開発を促進する
ための構造改革を支援している。
太平洋地域は世界でも最も気候変動
や自然災害の影響を受けやすい地域で
あり、ADB は極度の自然現象や海面
上昇に耐えうるインフラの開発に取り
組んでいる。投資プロジェクトでは気
候・災害耐性に重点を置き、気候変動
緩和を支援し化石燃料依存を軽減する
べく、再生可能エネルギーのプロジェ
クトに資金を提供している。
2011 ~ 2014 年の間に
1,730万人超
の生徒が教育施設の新規建設
または改修による恩恵を享受
の
ADB
動
支援活
24
ADB 年次報告 | 2014
ADB とフィジー:息の長い
パートナーシップ
ADB はフィジーが 1970 年に加盟して以降、合
計 4 億 1,726 万ドルの融資と 3,072 万ドルの技術
協力を提供してきた。経済インフラ投資、公共セク
ター管理の改善、民間セクター開発を通じた経済成
長の促進、雇用創出、および貧困削減に重点を置い
ている。2006 年の軍事クーデター後、ADB は既
存の投資案件を完了させるため 4,980 万ドルの追
加支援を 2009 年に承認した。235 km の道路復
旧により、住民 1 万 3,000 人の生活が向上したほ
か、上下水道システムへの投資ではフィジー人口の
4 分の 1 以上の人々が恩恵を受けた。2009 年から
2012 年の間の深刻な洪水に対応し、観光や製糖、
農業といった主要産業における数千人の被災者の生
計再建のための緊急支援の実行総額は 1,960 万ド
ルにのぼった。2014 年 12 月、ADB はフィジー
に対する新たな国別支援戦略を承認し、1 億ドルの
交通プロジェクトを決定した。世界銀行も ADB の
システムを通じて同プロジェクトへの支援を約束す
る予定であり、両機関の間における新しいレベルの
協力となる。現在、1 億ドルの上水道・衛生プロジェ
クトが開発段階にある。
2014 年、ADB は太平洋地域諸国の
連結性の改善に重点を置き、交通・通信
への投資が域内でのサービスの提供に資
するよう取り組んだ。この取り組みは、
外島やその他の孤立地コミュニティにお
ける保健、教育、および金融サービスの
提供に寄与している。
また ADB は 2014 年にアジア開発基
金より、300 万ドルの年間最低割当額
を開発途上加盟国の小国(キリバス、マー
シャル諸島、ミクロネシア連邦、ナウル、
パラオ、およびツバル)に承認した。こ
の資金により、これらの国々の成長の制
約要因に対処し、福利を向上させる。
2014 年の主な業務内容
2014 年、ADB は太平洋地域の融資・
グラントプロジェクト 14 件に対し 1
億 8,575 万ドル、技術協力プロジェク
ト 25 件に対し 2,665 万ドルを承認し
た。さらに 3,094 万ドルの協調融資も
合わせた融資・グラント支援の主な対象
となったセクターは、交通(67.7%)、
エネルギー(18%)、公共セクター管理
(6.2%)である。
太平洋
フィジーで 2014 年 9 月に国際的に
認知された総選挙が行われた後、ADB
は同国政府への支援を完全に再開し、
道路および港湾の再建および改修に 1
億ドルの支援を承認した。
東ティモールでは、同国最大の輸送
プロジェクトに対する 1,178 万ドルの
追加支援により、100 km 超の道路の
改修および気候変動耐性化工事を継続
している。同プロジェクトは女性をは
じめとする地域住民の雇用をもたらす
ほか、信頼性が高く安全な道路の建設
を通じた移動時間の短縮と住民の交通
事故防止に寄与している。
パプアニューギニアでは 1 億 8,748
万ドルの融資により、ラエ港の潮泊渠、
多目的係留施設、およびターミナル設
備の建設を通じた港湾拡張を支援した。
また 1 億 900 万ドルの別の融資によ
り、同国の山岳地方の道路改善と国内
の航空サービスの強化を支援している。
これらの取り組みは、貧しく孤立した
地域の住民を市場や政府サービスに結
び付けることを目的としている。
水道の不備:コスト算定
キリバスの中心地であ
る南タラワは上水道およ
び衛生の整備が進んでお
らず、水系感染症の高い
発生率につながっている。
上水道・衛生設備の不備
や劣悪な衛生状態により
毎年 3 万 5,000 人が疾病
に感染しているとされる。
ADB はより多くの情報に
基づいた政策対応を行う
べく、この状況に付随す
る経済コストの試算につ
いて調査した結果、南タ
ラワの住民が負担する水
関連費用は 1 世帯あたり
年 間 534 ~ 1,045 ド ル
となった。
25
ADB はクック諸島、ナウル、サモア、およびソロモ
ン諸島に対する 3,642 万ドルの融資を通じて、太平洋
地域全体における再生可能エネルギー投資の促進や、電
力サービスの信頼性向上を支援している。
財政計画・モデルにおける情報交換や南南協力の促進
を行った。
トンガとソロモン諸島における自然災害の発生を受
け、ADB は迅速に 1,794 万ドルの緊急融資・グラント
の提供に踏み切った。2014 年 4 月にソロモン諸島で洪
水が発生した際は、アジア太平洋災害対応基金より直ち
に 20 万ドルのグラントを支出した。それぞれ 661 万
ドルの融資およびグラントにより、道路と橋梁の再建取
り組みを後押しした。トンガでは、2014 年 1 月の熱帯
サイクロン「イアン」の発生を受け、同国の電力網と学
校の再建(必要な気候・災害耐性化も含む)のためニュー
ジーランドとの協調融資を通じ 879 万ドルのプロジェ
クトを承認した。
2014 年 5 月、太平洋諸島フォーラムの首脳らは地
域協力・統合(RCI)の迅速化と強化のための新たな枠
組みを承認した。同枠組みは、地域の優先事項の特定
や地域のニーズへの支援調整に対する開発パートナー
の直接的関与の拡大を求めている。
ADB は引き続き他の開発パートナーとの連携の下、
地域全体でグッド・ガバナンス政策を推進した。2014
年はキリバスの財政安定強化のため、ニュージーランド
および世界銀行との協力協調融資を含む 1,210 万ドル
の資金を発動した。
受益者の声:
「今ではランプ用の灯油に依存しな
くてもよくなり、携帯電話も太陽
エネルギーを使って充電が可能と
なりました」
ADB のソーラー・パネル修理訓練を受けたソロモン諸島
住民 Joyce Suite’ e:太陽エネルギーの恩恵について
知識共有を通じたソリューション
2014 年、ADB は太平洋地域全体における知識共有
の強化に積極的に取り組んだ。ADB は国際通貨基金
(IMF)や世界銀行等他の開発パートナーの協力も得つ
つ『太平洋経済モニター 』を発表した。同報告書は太平
洋諸国の最新経済動向と同地域の政策担当者への政策提
言をまとめたものである。毎年 12 月に発表される号で
は財政動向を特集している。
2014 年 12 月号では、太平洋諸島フォーラム事務局、
行政に関する太平洋諸島センター、および IMF の太平
洋金融技術支援センターとの協力により開催された同地
域の知識共有ワークショップについて取り上げた。同
ワークショップには太平洋地域の開発途上加盟国 14 カ
国のうち 10 カ国が集まり、マクロ経済予測と長期的な
26
数百の島々が同じ一つの視野を持つ
ADB は同地域の複雑な開発問題への対応や、民間セ
クター開発の促進、国有企業の構造改革の実施、太平
洋地域の貿易や交通の接続性の改善に取り組んでいる。
2014 年はオーストラリアからの大規模な支援の下、
同地域の開発途上加盟国 7 カ国間の貿易促進を目的と
したビジネス規制枠組みの簡素化および調和化された。
東ティモールの東南アジア諸国連合(ASEAN)やそ
の他の地域イニシアティブへの加盟準備の一環として、
ADB は同国の貿易投資に関する法制度枠組みの文書化
や地域統合に必要な改革のマッピングを支援した。
ADB は現在進行中のパプアニューギニアの航空サー
ビス向上への投資プログラムを通じて RCI を支援して
いる。2014 年は政府が所有・運営し年間 300 万人に
サービスを提供する 21 空港の安全性、アクセス、信頼
性の強化のため、第 2 トランシェとして 1 億 3,000 万
ドルが締結された。同プロジェクトを通じて地方を国
内外の主要都市の市場と連結させることで、域内の経
済的機会を与えることとなる。
教育においては、ADB は南太平洋大学(USP)に対
し、キリバス・キャンパスの拡張計画を支援するため
100 万ドルを提供した。この資金は、2012 年に ADB
が各国キャンパスにおける学習施設の改善や革新的な
情報通信技術(ICT)に基づく通信教育プログラムの支
援を目的として同大学に提供した 1,900 万ドルの融資
パッケージを財源としている。同プロジェクトにより、
太平洋地域全体でより多くの学生が質の高い学問研究
に取り組むことが可能となり、地域内の教育ネットワー
クの構築も支援されることとなる。
太平洋地域を貧困から引き上げる
ADB は太平洋地域における貧困削減を目的として、
景気や事業の持続可能性の拡大を通じた雇用創出に一
層力を入れた。
サモアにおけるアグリビジネス支援プロジェクトは、
市場の制約要因や輸出障壁に対処している。2014 年、
オーストラリアとの協調融資により、中小企業育成の
支援を目的とした企業投資のための地域ファシリティ
が新たに承認された。
ADB 年次報告 | 2014
ADB は低所得世帯が投資資金を確保し、不測の出費
に対応でき、最終的には最低限の生活水準から抜け出せ
るよう、金融サービスの裾野拡大に関する多くの取り組
みを支援している。この支援は、基礎的な金融サービス
にアクセスできないことの多い女性や農村部の住民を特
に対象としている。
ADB はすべての人々が恩恵を受ける交通サービスを
促進すべく 2014 年を通じてソロモン諸島とバヌアツ
における新たな島嶼間船舶輸送を支援した。同支援によ
り、インフラを改善し、採算性が確保できない離島輸送
サービスに対する補助金プログラムを確立している。
開発支援を通じて、基礎的なサービス提供を改善し、
太平洋地域の開発途上加盟国全体において社会包摂的な
価格政策を可能とする政策や規制、法令の実施を手助け
している。
環境の価値
2014 年、ADB はミクロネシア連邦において同国政
府の環境保護と現地での雇用創出を促進する観光促進計
画を支援した。
ADB はキリバスにおいて、同国政府によるマグロ入
漁協定の管理を支援した。新たなアプローチは、中期的
に漁獲量を持続可能な水準まで削減し、公共財・サービ
スの資金捻出のための歳入拡大を目指す。
複数の太平洋諸国では、水資源不足が生活の制約要因
となっている。ミクロネシア連邦ではインフラ開発プロ
ジェクトのもと、コスラエ、ポンペイ、ヤップ州の下水
道システムの改善と安全かつ持続可能な上水道への投資
が実施され、住民 9,500 人以上が恩恵を受けた。フィ
ジーでも 2014 年に同様の上下水道プロジェクトが完
成し、スバ~ナウソリ地域の住民約 25 万人に恩恵をも
たらした。
8 月、ADB はサモアで開催された第 3 回小島嶼開発
途上国国際会議に参加した。9 月には再生可能エネル
ギーフォーラムにおいて、持続可能で信頼性が高く安価
なエネルギーを地域全体に拡大すべく支援することを表
明した。
またクック諸島に対して 2,428 万ドルのソーラー・
プロジェクトを承認し、再生可能エネルギーへの決意を
再確認した。同プロジェクトにより、年間 109 万リッ
トルのディーゼル油消費と 2,930 トンの二酸化炭素の
排出削減が見込まれる。
太平洋
島での会社設立が
大幅に迅速化
最近までソロモン諸島で会社を設立するには煩雑な
行 政 手 続 き が 必 要 で あ っ た。 会 計 士 の Aloysio Ma’
ahanao 氏は当時のことを苦々しく振り返る。「以前は最
長で 3 カ月もかかりました。しかし新法により長くても
2 日で済むようになりました。登記自体は 5 分もあれば
終わります」
同氏の顧客が享受できるようになった迅速な事業登記
手続きは太平洋民間セクター開発イニシアティブ(PSDI)
を通じて実施された地域改革の成果の一つである。PSDI
による改革には、会社設立の所要時間短縮と事業運転資
金の融資アクセス機会の拡大が含まれ、ビジネスを阻害
していた時代遅れの法規制は改正された。太平洋地域諸
国の政府は同イニシアティブを通じて、企業新設の際に
弁護士を不要とし、煩雑な身分証明要件を廃止した。
同イニシアティブは、ADB のグラント(610 万ドル)、
ならびにオーストラリア(4,174 万ドル)とニュージー
ランド(450 万ドル)の政府による支援を受けた。
ソロモン諸島は、この地域技術協力の支援を受ける太
平洋地域の開発途上加盟国 14 カ国のうちの一つである。
現在、ソロモン諸島では会社登記はすべてオンライン
手続きが可能で、迅速な会社名の検索、簡素な登録フォー
ム、事業関連文書の自動点検が行われる。同改革により、
企業新設の費用と時間も、336 ドルから 175 ドル、また
45 日から 2 日以内にまで削減された。また新たに制定さ
れた取引の安全に関する法とこれに関連する電子登記制
度により、現地銀行の情報へのアクセスが改善され、事
業向け融資の承認にかかる時間が 28 日から 1 日へと大
幅に削減された。ソロモン諸島では民間セクターの事業
者が増加し、金融アクセスが改善されたことで、新たな
雇用機会が創出されている。
27
2
014 年の南アジア地域は堅調
で安定した経済成長を遂げ、同
地域の大部分の国々は目覚まし
い成長ぶりを示した。
南アジア
バングラデシュ、ブータン、インド、モルジブ、
ネパール、スリランカ
MTR 行動計画:
ADB は 2020 年まで
に 農 業・ 食 料 安 全 保
障 分 野 に 年 間 20 億
ドルを投資すること
を目指す。
インド経済は投資と工業生産が増加
し、2014/2015 年度の成長率は 7.4%
となった。スリランカは堅調な外需と
低金利、低インフレ環境の下での国内
投資の回復に後押しされ、7.4% の成
長率を示した。ネパールは豊作に加え、
サービスセクターと国外からの送金が
伸びたことにより成長率は 5% を超え
た。バングラデシュは政治が比較的安
定し景況感が改善したことにより、モ
ンスーン降雨不足や輸出の減速にもか
かわらず 6.1% の成長となった。その
一方で、モルジブ(主に観光の牽引に
より 6.8% の成長)およびブータン(主
に水力発電の牽引により 4% の成長)
は、持続可能な成長を続けるためには
経済の多様化が必要とされる。
食品価格が高騰した後、2014 年前
半に顕著だったインフレ圧力は、地域
全体で後退した。インドとバングラデ
シュにおける金融引き締めにより、消
費需要が弱まり、物価が低水準で安定
した。
同地域の開発課題としては、域内の
連結性不足やインフラ不足、スキル・
ギャップの拡大があった。こうした課
題に取り組むため、南アジア地域経済
協力(SASEC)プログラムが地域内
のすべての国を包括するべく拡大され
た。
2011 ~ 2014 年の間に
500万超
の世帯が新規建設
または改修された上水道を利用
の
ADB
動
活
支援
28
ADB 年次報告 | 2014
2014 年の主な業務内容
2014 年における南アジアへの支援額はプロジェクト
31 件に対し 40 億 5,000 万ドル、技術協力プロジェク
トに対し 4,939 万ドルとなった。支援の中心となった
のは、持続可能でインクルーシブな成長の達成において
重要な、インフラ、エネルギー安全保障、都市開発、教
育・技能訓練の分野である。
インドは同地域で最大の借入国であり、融資総額の
54% を占めている。これにバングラデシュ(22%)、ス
リランカ(11%)が続く。プロジェクト実行の約定総額
は 30 億ドル(プロジェクト融資・グラントのみ)に達し、
実行額は 26 億 2,000 万ドル(政策ベース・プログラム
を含む)となった。ADB は他の開発パートナーとの関
係を強化し、協調融資により全業務の 28% に相当する
11 億 4,000 万ドルを調達した。
インフラは ADB の対南アジア支援の 79% を占めた。
2014 年は交通セクターへの投資が 16 億 3,000 万ド
ル増加した。うち 5 億ドルは同地域初のクロスボーダー
道路整備プロジェクトで、インド北東部とミャンマーを
連結する。スリランカでは、8 億ドルの農村道路改修プ
ロジェクトにより生産者と市場が結ばれ、近年の好景気
の恩恵を行き渡らせる役割を果たしている。バングラデ
シュでは、同地域における鉄道旅客・貨物輸送の改善の
ために、ADB が 5 億 500 万ドルを拠出し、欧州投資銀
行が 1 億 7,500 万ドルの協調融資を行った。
エネルギー・セクターでは、ADB はインドのクリーン・
エネルギー・プロジェクトに 5 億ドルを投資し、欧州
投資銀行から 2 億 5,300 万ドルの協調融資を動員した。
ネパールでは、国内の送電能力の拡大および域内におけ
るクリーン・エネルギーの共有のため 1 億 8,000 万ド
ルを投資した。また、ブータンとモルジブのクリーン・
エネルギー案件に計 1 億 5,850 万ドルを投じた。モル
ジブおよびネパールのクリーン・エネルギー案件に対し、
気候投資基金と二国間ドナーが 8,320 万ドルの協調融
資を行った。スリランカにおいては、クリーン・エネル
ギー開発およびシステムの効率性と信頼性の向上のため
に 3 億ドルを投資した。
ADB は南アジアの都市開発に取り組むべく、2014
年はインドのラジャスタン州における都市セクターの大
型改革と上下水道の改善プログラムに 5 億ドルを割り当
てた。バングラデシュでは、海岸都市の気候変動および
自然災害への耐性向上を支援した。ネパールでは、ADB
は成果重視の支援やコミュニティ開発といったアプロー
チを通じて、よりインクルーシブな都市プロジェクト設
計を図っている。こうしたアプローチは多くの人々にき
れいな水を与え、またネパールの都市貧困層の雇用機会
を拡大している。
南アジア地域の各国政府は、人間開発において雇用創
出、技能不足への対応、生産性向上の 3 つの共通の課題
南アジア
を抱えている。ADB はこれらの課題に対処するための
イニシアティブに 3 億ドルを投資した。
ADB は 2014 年も引き続き南アジアにおけるジェン
ダー平等の向上に取り組んだ。同地域のプロジェクト
の 61% がジェンダー・バランスの要素を考慮しており、
教育・技能開発、農業・農村インフラ、および都市開発
分野でのプロジェクトが多数含まれている。
知識共有を通じて恩恵を共有
ADB は加盟国に開発知識を提供するだけでなく、そ
の知識が国内・国間で共有されるよう取り組んでいる。
2014 年、ADB の能力開発リソース・センターでは 1,300
人以上のインドの中央・地方政府職員を対象に、調達・
契約管理、水管理、道路安全性、アグリビジネス・イ
ンフラ、建設管理、自治体会計改革等のテーマを含む
ADB の政策・手続きに関する研修が実施された。
受益者の声:
「橋ができる前は、ネパール南部
平原地域まで行くのに 14 時間以
上 も か か り ま し た。 今 で は 4 時
間もあれば到着することができま
す」
プ ロジ ェクト 責 任 者 Umeshananda Misra:ADB
の資金支援を受けたクルコット橋により、ネパール中
部丘陵部からの移動時間が短縮されたことについて
ADB は、各国および地域全体の経済見通しおよびマ
クロ経済分析を定期的に刊行している。国別報告として
『バングラデシュ四半期経済動向』 や『ネパール・
は、
マクロ経済動向』 がある。
2014 年、ADB はブータンとモルジブについてジェ
ンダーに関する報告書を作成した。同報告書は、プロジェ
クト開発の設計段階でジェンダー問題を特定する基礎と
なり、ADB と開発途上加盟国間の国別支援戦略に資す
るものとなっている。教育、エネルギー、交通、都市開
発セクターについては、同地域に合わせたビデオを用い
て、ジェンダー・バランス達成の優良事例を伝える。
地域強化のための新たな機会
2014 年、SASEC プログラムにモルジブとスリラン
カが加わった。これにより、南アジアの開発途上加盟
国 6 カ国が交通、エネルギー、および貿易円滑化で協
力する機会が開けた。ADB はこの協力を支援すべく、
SASEC プロジェクトに対し過去最大規模の 12 億ドル
29
にのぼる融資・グラントを提供した。バングラデシュ、
ブータン、およびネパールは貿易円滑化に迅速に取り組
み、予定よりも 1 年早く税関当局の近代化のための政
策改革を遂行した。地域エネルギー協力においては、水
力発電プロジェクト 3 件、およびネパールとインド国
境をまたぐ第 2 送電線プロジェクトの準備が進んでい
る。ADB はインド政府と共同で経済・産業回廊の活性
化イニシアティブの策定に取り組む意向を示した。
すべての人々を受け入れる成長
道が開けた Nelson さん
55 歳の Nelson Wickramasekara 氏(写真)は、ス
リランカの交通セクターに対する ADB の支援により、子
供世代が借金の重荷を負うことなく成長できると考えてい
る。
Nelson 氏は 30 年近く前からカンディ~マヒヤンガナ
間の国道沿いで果実を販売している。「ハイウェイ」と呼
ばれるスリランカの国道は、ADB が支援したスリランカ
国道改修プロジェクト以前は、ほこりっぽくて交通量の少
ない、観光客もほとんど通らない道だった。
現在、両都市間の国道は近代的で交通量の安定した道路
となり、同地域の史跡を訪れる観光客の利用も伸びている。
国道が改修されて以降、Nelson 氏の売り上げは 30%
増加し、収入の余剰分でバンを購入した。Nelson 氏の息
子は、そのバンを用いて学校への送迎サービスを営み、世
帯収入が増加し、次世代の生活改善の手段となっている。
「借金を返すことができ、子供達が負債を負わないで済
む財産基盤を作ることができます」と Nelson 氏は言う。
カンディ~マヒヤンガナ間の国道改修のほか、ADB の
スリランカ交通セクター支援は国道や県道のネットワーク
の改修、および国内最大のコンテナ港であるコロンボ港の
改善に重点を置いている。これまでに建設または改修さ
れた高速道路と国道の総延長は 634 km にのぼる。また、
県や地区、農村部では計 1,707 の道路が建設または改修
されている。
この事業を通じて、農村部や孤立地を含めすべての国民
を市場に結びつけ、Nelson 氏のように人々の事業の見通
しを改善している。
30
ADB は南アジア地域におけるすべてのプロジェクト
にインクルーシブな成長目標を盛り込んでいる。女性が
雇用に有益な技能を獲得するため、2014 年、技術教育・
職業訓練プログラムを支援した。交通およびエネルギー・
セクターにおいては、ADB は農村地域の小事業者によ
る市場開拓プロジェクトを支援し、広域な需要に獲得し
て一層大きな収益をあげられるよう図った。
バングラデシュでは、ADB は電力システムの拡大、
エネルギー効率の向上、および教育とヘルスケアへのア
クセス拡大に取り組んでいる。7 億ドルの投資を通じて、
45 万世帯(その多くが困窮層)を電力網に接続し、停
電や電力不足を軽減する。同プロジェクトでは、約 4,000
世帯の貧困農家に 200 台のソーラー灌漑ポンプの試験
的導入も行う。インクルーシブな成長を促進する別のプ
ログラムでは、中等教育への資金支援を拡大し労働者の
技能開発を目指している。また、ADB はスラムや人口
過密地域における総合リプロダクティブ・ヘルスケア・
センター 12 カ所とプライマリ・へルスケア・センター
26 カ所の建設も支援している。貧困層に対しては、必
要不可欠な医薬品を含む全てのサービスの 30% 程度が
無料で提供されている。無料医療サービスでは女性が中
心的な対象層の一つとなっているほか、路上生活者や絶
対貧困層を対象とした訪問型アウトリーチ医療サービス
も毎週実施している。インドでは、マディヤ・プラデシュ
州の電化プロジェクトを通じて、零細企業を経営する 2
万人の女性に研修を実施している。ケララ州での技能プ
ログラムにおいては、職業訓練と若年雇用に重点を置い
ている。ADB の対インド支援の約 60% は後進諸州が
対象となっている。
ネパールでは、貧困削減日本基金の資金提供を受けた
プロジェクトを通じて、民族やカーストを理由に社会か
ら疎外された 2,000 の貧困世帯を対象に事業・技能訓
練を提供した。
また、ADB は南アジアを一つの地域としてインクルー
シブな成長の達成を支援している。SASEC 地域におけ
る道路連結プロジェクトを通じて、域内を結ぶ重要な高
速道路とバングラデシュのランドポート 2 カ所の改修
を行い、域内の連結性を高め貿易を促進する。このよう
な改修を通じて、貿易量が拡大するほか交通が改善し腐
敗し易い商品の損失が削減され、農業従事者や経済全般
に恩恵を与える。さらに税関手続きの改善を通じてバン
グラデシュ、ブータン、およびネパールを通過するモ
ADB 年次報告 | 2014
ADB はバングラデシュの
45万
CORBIS
世帯の電化を支援している。
ノの流れを効率化している。こうした措
置は最終的に農業従事者のコスト削減や、
貧しい消費者が支払う商品価格の低下に
つながる。
地球を念頭に置いた繁栄
南アジア地域における ADB のプロジェ
クトの 3 分の 2 以上は、環境的に持続可
能な成長に寄与している。
ADB はモルジブにおいて、観光業や
漁業が依存する脆弱な生態系の保全取り
組みを支援している。マヒバドゥー島と
フォナドゥー島の下水処理場の処理能力
拡大プロジェクトにより、両島の全住民
571 世帯の衛生状態が改善された。また、
ADB の戦略的気候基金からのグラントと
欧州投資銀行およびイスラム開発銀行か
らの援助を通じて、モルジブにおける再
生可能エネルギーを用いた効率的な小規
模電力網への移行を支援している。
バングラデシュでは海岸部都市の洪水
リスクと堤防浸食を低減し、環境インフ
ラを改善することにより、気候変動影響
への対応を支援している。
南アジア
インドのカルナタカ州では、都市の
上水道および衛生セクターにおいて気
候耐性のある開発、および農業におけ
る統合的水管理を推進している。
ネパールでは効率的な灌漑と水管理
に関するプロジェクトを通じて、河川
流域の保護を支援している。また、環
境に配慮した持続可能な土地利用を推
進する農業プログラムに対し、技術協
力を提供した。
スリランカの山脈地帯である中部州
ではモラゴラ近辺の川におけるグリー
ン水力発電プロジェクトを支援してい
る。同プロジェクトにより、クリーン
で安価かつ安定した電力エネルギーが
供給される。
ネパールで
希望の種をまく
ADB は ネ パ ー ル の ア
グリビジネス開発と孤
立・山岳地域の住民の生
活 改 善 の た め に 2,000
万ドルのグラントを提
供 し た。 同 グ ラ ン ト は
2017 年 ま で に 7,500
人の新規雇用を創出し、
南アジアの最貧地域を支
援 す る。2013 年 5 月、
Suk Prasad Sherpa 氏
(写真)はムスタン郡で
苗床と苗木の倉庫に 1 万
2,000 ドルを投資し、リ
ンゴ園を始めた。現在、
同 氏 は 年 間 5,000 ~
6,000 本の苗木を生産す
るに至った。
31
2
東南アジア
ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、
ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
014 年の東南アジアの中心的
な開発課題は、成長の持続とイ
ンフラのボトルネック解消で
あ っ た。ADB は 公 共 セ ク タ ー 管 理、
インフラ・社会サービス要件、および
協調融資の動員という 3 つの重要分
野に支援の的をしぼった。ADB は同
地域のすべての加盟国と政策対話を継
続し、各国の開発課題に対応したプロ
ジェクトを組成した。
投資、財政支出、域内からの輸出へ
の世界的需要の減少を受け、地域全体
で経済成長が減速した。
MTR 行動計画:
ADB は天然資源管理
と統合的災害リスク
管理を推進する。
インドネシアでは、政府はインフレ
と経常赤字の抑制のための政策を採っ
た。新政府は 2014 年 11 月に燃料補
助金の減額に踏み切っており、これに
より、インフラ・社会開発のための予
算が捻出されることとなる。フィリピ
ンは、輸出の回復と個人消費および投
資の拡大を受け、年前半は GDP がプ
ラス成長となった。しかし、その後財
政支出と公共工事の減速で成長は鈍化
した。
カンボジアは、観光と衣料・靴およ
びコメの輸出の減少を受け、同年の
経済成長が減速した。ラオスは引き続
き安定した成長となった。以前、支払
い遅延につながった財政問題は 2014
年には緩和されたものの、同国の財政
赤字は高い水準にあり、公共インフラ
案件には遅延がみられた。
ミャンマーは投資拡大に刺激され、
成長を示した。投資拡大の背景には、
景況感の改善や商品輸出の増加、天然
ガスの生産増、観光、信用の増加が
2011 ~ 2014 年の間に年間
1,230万トン超
の温室効果ガスの
排出を削減
の
ADB
動
支援活
32
ADB 年次報告 | 2014
2014 年、東南アジアの公共セクター
に対する ADB 新規融資の総額は
29億9,000万ドル
となった。
ある。また、ベトナムは対内直接投資
の増加により経済成長に弾みがついた。
長期的に高い成長率を続けるには、一
層の構造改革やガバナンス改革が必要
とされる。
2014 年の主な業務内容
2014 年、ADB は東南アジア地域の
政府に対し、計 29 億 9,000 万ドルの
新規融資および 7,166 万ドルの技術協
力を提供した。この融資は、16 億ドル
の協調融資(ASEAN インフラ基金(AIF)
を通じたものを含む)の支援を受けた。
これらの融資は主として、公共セクター
管理(41%)、交通(14%)、教育(14%)、
および金融(14%)を対象とした。契
約締結額および実行額は、それぞれ 17
億 9,000 万ドルおよび 18 億ドルに達
した。
ADB はカンボジアの新たな国別支援
戦略を承認した。新戦略は農村-都市
-地域の連結と人間・社会開発に重点
を置いている。2014 年に承認されたプ
東南アジア
ロジェクトには、道路改修プロジェクト
が含まれる。9 州で総延長 729 km の農
村道路改修プロジェクトを実施し、62 万
人に市場、雇用、および社会サービスへ
のアクセスをもたらす。また、都市上水道・
衛生プロジェクトを通じて、9 都市の住
民 55 万 1,000 人に清浄で安全な水を提
供し、公衆衛生の向上、投資促進、およ
び雇用機会の拡大をもたらす。
インドネシアでは、公共・民間投資を
改善する改革を支援すべく、4 億ドルの
融資を承認した。この資金提供により、
同国が今後 10 年間の中期的な経済成長目
標である年間 7 ~ 9% の成長を達成でき
るよう支援する。その一方で、8,000 万
ドルの衛生プロジェクトを通じて、都市
部 7 万 300 世帯の衛生状態を改善する。
ラオスでは、同国のガバナンス枠組み
の強化を支援するために 1,500 万ドルの
融資を提供した。これを通じて、行政お
よび公共財政管理の改革を支援する。
ミャンマーでは、8,000 万ドルの輸送
ASEAN のコーポレート・
ガバナンス・スコアカード
ADB と ASEAN 資 本
市場フォーラムは透明性
の向上と投資促進を目的
『ASEAN コ ー
と し て、
ポレート・ガバナンス・
ス コ ア カ ー ド:2013 ~
2014 年国別報告・評価
書』 を発表した。同スコ
アカードは国際的なベス
ト・プラクティスを検討
し、ASEAN 地 域 の 上 場
企業のコーポレート・ガ
バナンスを評価する。
33
プロジェクトを通じて、ヤンゴンと国内の一大農業生産
地エーヤワディー・デルタを結ぶ総延長 54.5 km の道
路改修により、生産者・生産物と市場との距離を近づけ
る。
フィリピンでは、3 億 5,000 万ドルの競争力向上プ
ログラムを通じて、若年層の雇用見込みの改善、観光業
における技能・サービス向上、および同国の長期的なビ
ジネス・投資環境の改革を支援している。2 億 5,000
万ドルの融資を通じて、地方自治体のサービス提供を改
善し、インクルーシブな成長に貢献している。
受益者の声:
「台風の後長い間、私達の教室はテ
ントでした。雨の日は濡れてしま
い、晴れの日は暑い思いをしまし
た。今では教室が補修されたおか
げで、快適に勉強できています」
フ ィ リ ピ ン・ レ イ テ 島 の 12 歳 の 生 徒 Honeylette
Molina
ベトナムでは、3 億 2,000 万ドルの国有企業の効率
性・透明性向上プログラムを実施している。また、銀行、
財政政策、および公共セクター管理、ならびにアカウン
タビリティに関する改革に対し 2 億 3,000 万ドルの資
金提供を行い、同国の競争力向上に寄与している。同プ
ログラムでは、国営企業の経営、公共投資管理、および
ビジネス環境への取り組みも行う。また、ハノイおよび
ホーチミン市の企業と住民向け電力供給の信頼性向上の
ため、ADB は送電線 200 回線の新設または改修を行う
1 億 7,200 万ドルのエネルギー・プロジェクトに資金
提供をしている。
知識面での協力
ADB は 2014 年、東南アジアにおける知識成果への
支援面で大きく前進した。
2014 年 1 月、ADB はジャカルタにおいて、インド
ネシア政府との情報連携の強化を目的としたハイレベル
知識パートナーシップ会議を開催した。同会議では、エ
ネルギー安全保障、技能開発、および食料安全保障のた
めのより効果的なナレッジ・ソリューションが特定され
『地
た。また、インドネシアの地熱法改正に示唆を与える
熱エネルギーの可能性を切り開く』 というタイトルの出
版物が作成された。
34
ADB の支援による ASEAN コーポレート・ガバナン
ス・スコアカード は、コーポレート・ガバナンス基準の
向上、統合された資本市場の育成、および上場企業の投
資家に対する認知度の向上における ASEAN の取り組み
を支援した。
2014 年 5 月、ADB は 3E(経済競争力、環境面での
持続可能性、平等)の概念を広めるためマニラで地域会
議を開催した。同会議には 170 名の各国代表が出席し、
「GrEEEn 都市」の業務枠組みを共有したほか、東南ア
ジア全体で模倣可能な都市成長モデルについて紹介がな
された。
より緊密な地域連携
2014 年、ADB は東南アジアにおける地域統合に対
し強力な支援を示した。ADB は第 5 回メコン河流域圏
(GMS)首脳会合に参加し、総額 300 億ドルにのぼる
92 件の優先順位の高いプロジェクトを支持した。また、
第 6 回 GMS 経済回廊フォーラムに参加し、越境経済区、
物流センター、および工業団地の整備促進を支持した。
2014 年、ADB はカンボジア、ラオス、ベトナムで
12 万 9,000 人の観光関連雇用の創出を目指す地域観光
インフラ・プロジェクトに 1 億 800 万ドルの資金を提
供することを承認した。ASEAN 準地域プログラムの下、
ADB は域内の連結性向上において優先順位の高いプロ
ジェクトを支持した。これらのプロジェクトには、イン
ドネシアのカリマンタン島とフィリピンのミンダナオ島
の道路の改修・拡張事業が含まれる。一方、インドネシア、
マレーシア、およびタイは首脳会合での協力の下、マレー
シアのマラッカ市におけるグリーン都市行動計画を承認
した。ADB は他の都市において経済と環境のバランス
をとる青写真ともなる同計画の策定で協力した。
ADB が管理する AIF は、2 件のプロジェクトに計 1
億 4,000 万ドルの協調融資を行った。うち 1 件はイン
ドネシアにおける下水道・下水処理場施設の改善、も
う 1 件はベトナムにおける電力システムの信頼性向上・
温室効果ガスの排出削減に関するプロジェクトである。
2014 年に AIF の理事会にミャンマーが加わったこと
で、現在はアセアンに加盟している全 10 カ国が ADB
とともに同基金の出資者となっている。
成長の恩恵を共有
2014 年、ADB は東南アジアのインクルーシブな成
長を支援すべく、被災コミュニティやその他の脆弱層に
援助を提供した。
フィリピンでは、台風 30 号(国際名:ハイエン)の
被災地における基礎的社会サービスの復旧とコミュニ
ティ再建のため、4 億 7,900 万ドルの協調融資を承認
した。同事業を通じて、6,000 以上のコミュニティの
90 万世帯を対象に住宅や生計手段を再建する。
ADB 年次報告 | 2014
また 3 億ドルの融資により、同国政府が効果的な高
等学校制度を確立することを支援し、若年の雇用機会を
促進する。同プログラムは 3 年間で約 590 万人の生徒
を対象に教育の質向上を行う。
カンボジアでは、4 万人以上の貧しく恵まれない女性
を対象に、基礎的な技能向上と雇用機会促進を目的とし
た訓練を受けるための道を開いた。また、総延長 257
km の農村道路を改修し、貧困層の 28 万 4,400 人が洪
水被害から立ち直ることを支援するため、追加融資を承
認した。
インドネシアでは、20 の都市のスラム地区の住民を
対象とした基礎的なインフラ向上と新規住宅建設を支援
し、計 67 万の低所得世帯に恩恵をもたらす。
ラオスでは、畜産農家の商業的経営に 2,100 万ドル
の融資を行い、畜産・食肉加工技術の向上のほか、融資
にアクセスするための会計、マーケティング、事業計画
策定に関する訓練を提供する。
ADB はベトナム中央部で潜在的生産性のある農地約
2 万 9,000 ヘクタールの改良を支援するため、8,500
万ドルの追加融資を承認した。同融資を通じて、農業生
産性を向上し自然災害の影響を管理するためのインフラ
強化も行う。ADB は少数民族の生徒 64 万人を対象と
したベトナムの中学校の改善プロジェクトを支援した。
低所得層の銀行利用者を対象とした、持続可能で負担可
能な小口融資へのアクセスを支援するマイクロ・ファイ
ナンス・プログラムを支援した。
東南アジアにおける環境持続可能性
ADB は東南アジア地域において気候変動への適応と
環境的に持続可能な天然資源管理を引き続き支援した。
カンボジアでは、農村道路の改修および気候耐性の向上
のほか、トンレサップ川流域における都市上水道および
衛生インフラ改善のパイロット・プログラムも支援した。
ベトナムの二大都市であるハノイおよびホーチミン市
では、クリーン・テクノロジー基金からの資金により、
エネルギー効率の向上、交通効率化、および温室効果ガ
スの排出削減を目的としたプロジェクトを実施する。
ADB は海岸・海洋資源の保全・再生とコミュニティ
による富の創出を支援するコーラル・トライアングル・
イニシアティブの下、インドネシア、マレーシア、およ
びフィリピンにおける行動計画の実施のための資金動員
を後押しした。
東南アジア
古代の交易路に
新たな繁栄を
1,200 年以上前の唐王朝の時代、中国・雲南地方の商人
は香り高い茶葉等の品をアジアの果てに運ぶために交易路
を開いた。
南方に向かう隊商路の一つは現在のラオスのルアン・ナ
ムター県を蛇行し、メコン河を渡ってタイに入っていた。
ADB はラオスの人々のために、こうした交易路の活性
化を支援した。中国と隣接する北部国境からタイと隣接す
る南部国境を通るアジア・ハイウェイ 3 号線の建設を支援
したほか、メコン河にかかる第 4 タイ・ラオス友好橋の建
設のための資金提供も行った。
「この道路が完成して以来、貿易量は 70% 以上増加し
ました。そして友好橋が昨年完成した以降、さらに 12%
増加しました」とタイのチェンコン税関の調査責任者
Tinnawat Silarug 氏は言う。
毎朝この橋を、中国やラオスからの生産品、機器、その他
の商品を積載したトラックの長い列がタイに向かって通っ
て行く。これらの商品は同じ日の夕方にはバンコクの賑や
かな市場に並んでいる。ラオスでは観光も顕著な伸びを示
している。「この地域への観光客もこれまで以上に増え、1
カ月あたり 2 万人になりました」と第 4 メコン友好橋のラ
オス側局長の Sibounheuang Phanthalak 氏は言う。「観
光客の多くは中国とタイからですが、ASEAN や西欧諸国
からも増えつつあります」
北部国境における往来が大幅に増加した結果、2008 年
から 2012 年の間にラオスの輸出量は 3 倍に拡大した。変
化の要である道路と橋は、再生された交易路沿いのコミュ
ニティに一層大きな繁栄をもたらした。
35
MTR 行動計画:
2020 年までに、民間
セクター開発・業務向
け支援を年間業務の
50% まで拡大する。
民間セクター
開発
36
ADB 年次報告 | 2014
民
間セクター開発は、アジア・太平洋地域におけ
る経済成長の基盤として「ストラテジー 2020」
の重点項目となっている。
ADB は長年にわたり民間のインフラや金融仲介機関
に対する重要な資金提供者となってきたが、2014 年も
その点は強調された。同年、ADB は 19 億ドルを超え
る計 25 件の民間セクタープロジェクトを承認したほか、
50 億ドルを超える協調融資があった。ADB は民間セク
ターへの関与拡大を通じて、地域全体でインクルーシブ
かつ環境的に持続可能な成長を促進していく。
「ストラテジー 2020」の中間見直し(MTR)では、
ADB がより活発なプロジェクト開発者となり、プロ
ジェクトの準備や市場への提供を後押しするよう求め
ている。ADB はこれを受け、2014 年 9 月に官民連携
部(OPPP)を新設した。同部は投融資可能な官民連携
(PPP)プロジェクトの準備・提供を支援すべく、取引
面での助言を提供している。PPP とは、本質的に、公共
インフラの建設と維持に関する政府と民間企業の間の長
期契約を指す。PPP のアプローチは、高品質で持続可能
なインフラ整備案件を実現するためのモデルの一つとし
て、世界的に採用されている。しかし、アジア開発途上
国では、市場に出せる適切なプロジェクトの準備に必要
な資金の不足により、PPP の活用が遅れている。OPPP
は ADB の地域局による PPP の促進・実施業務を支援し
ている。ADB は 2014 年 11 月、アジア・太平洋プロジェ
クト組成ファシリティ(AP3F)を設立し、自らの決意
を強化した。AP3F は開発途上加盟国における PPP の準
備および組成を担当する公共セクター機関に支援を提供
する。
2014 年における ADB の民間セクター向け資金支援
には、融資や出資のほか、銀行への保証や B ローン(他
行による資金提供)の信用補完商品等様々な形態がみら
れた。
ADB は投資活動に第三者機関の資本を動員する手段
としてのリスク移転の活用を増やすと同時に、限られた
自己資金の管理を向上させた。
2011 ~ 2014 年の間に
1万7,900メガワット超
の発電能力を実現
の
ADB
動
活
援
支
民間セクター開発
ADB は 2014 年中に民間セクター業務改革を複数実
施した。その結果、同年に承認された民間セクター融資
の総額は 2013 年比で 19% 増加し、融資件数も過去最
多の水準となった。B ローンの組成も堅調で、計 8 億
6,000 万ドルを動員した。
技能向上とビジネス支援
ADB は、民間投資機会の計画、準備、実現には各国
政府にとって多大なリソースが求められることを認識し
ていることから、投融資可能な民間投資プロジェクトの
準備を担当する公務員の技能向上に広範な支援を提供し
ている。また、民間投資の事業採算性を高めるビジネス
環境づくりの支援にも取り組んでいる。
受益者の声:
「ADB からの住宅資金提供枠によ
り、人々がマイホームを持つこと
は夢ではなく現実となりました」
Lakshman Silva、スリランカ DFCC ヴァルダーナ銀
行最高経営責任者(CEO)
能力強化と知識共有
ADB は世界銀行および米州開発銀行との協力の下、
世界的に認知された PPP 認証・認定プログラムの構築
に取り組んでいる。同プログラムは公務員や民間企業担
当者のための PPP の設計および実施に関する専門的基
準の確立にも資する。
また、ADB は各開発途上加盟国に即した支援も提供
している。10 月にはマレーシア政府の PPP 部局と共同
で同国の PPP を評価し、同国のインフラ PPP 案件拡大
の支援や、東南アジア地域の他の開発途上加盟国との経
験共有を目的として、国際的なベスト・プラクティスを
共有した。ミャンマーでは、政府とともに国家 PPP プ
ログラムの基盤づくりに取り組んでいる。2 月には発電
における民間投資拡大、および計画策定・公的債務管理
の支援を目的に、電力省への技術協力を承認した。この
ように、ADB は現在、東南アジア各国における PPP 政
策策定およびプロジェクト管理に取り組んでいる。
東ティモールでは、太平洋民間セクター開発イニシア
ティブ(PSDI)が PPP 部局とともに、水、電力、交通
を中心とするプロジェクト管理能力の強化に取り組ん
だ。
37
AFP
企業にとってプラスの環境を構築
ADB は政策・規制改革への支援を通じて、各開発
途上加盟国における民間企業のビジネス環境の改善に
努めている。こうした改革には、事業規制の安定性や
透明性の向上、租税・貿易政策の簡素化が含まれる。
民間投資パイプラインを
開く
信頼性が高い電力や水道供給からしっかりした道路、空
港まで、高品質なインフラは一国の開発の要である。しか
し、アジア・太平洋地域ではインフラ不足が深刻となって
いる。ADB は 2010 ~ 2020 年における同地域のインフ
ラ投資ニーズは 8 兆ドルとみている。
官民連携(PPP)は同地域のインフラ・ギャップの解消
にとって効果的なツールとなりうる。PPP は政府が民間
セクターと協力してインフラ・サービスの提供を行う契約
取極めである。単純な民営サービス契約から、民間事業者
が資金調達、建設、一定期間の運営を行ってリターンを得
た後に所有権を政府に譲渡する BOT(建設-運営-譲渡)
等の複雑な取極めまで様々な形態がある。
民間資金を引き付けられる PPP を組成するには、適切
な助言と準備がカギとなる。例えばフィリピンでは、ADB
は数年前から政府と緊密な協力の下で PPP の準備と実施に
取り組んでいる。2010 年における同国の PPP 件数は 11
件に過ぎなかったのが、現在では 61 件、合計約 30 億ドル、
GDP の 1% 超に相当する有望案件がある。これらのプロ
ジェクトには、高速道路、国有鉄道、都市型ライトレール
交通、学校の教室、病院、空港等が含まれる。この一つで
あるマクタン・セブ国際空港の PPP 案件は、発着数と旅客
数の増加に伴いキャパシティが限界に達している同空港の
改修・拡張を行う。ADB は一貫した PPP 支援への姿勢を
示し、自己資金 7,500 万ドルを含む借入調達の動員にお
いても重要な役割を果たした。
このようなプロジェクトの例からも、ADB は単なる資
金提供者以上の役割を果たせることを示している。「スト
ラテジー 2020」の中間見直し(MTR)でも、PPP の準
備と助言のためのリソースが要であると結論付けられてい
る。ADB は 9 月に官民連携部を新設し、開発途上加盟国
の政府への独立した取引助言サービスの提供や、投融資可
能な PPP プロジェクトの組成支援を行っている。こうした
サービスには、財務構造の組成、デューデリジェンス、必
要書類の準備、マーケティング、評価、および資金調達円
滑化が含まれる。また同部は、ADB の PPP 業務の調整も
支援する。
38
2014 年 12 月、ADB はメコン・ビジネス・イニ
シアティブの設立を承認した。同イニシアティブは
オーストラリア政府からの 1,000 万ドルの資金提供
により、カンボジア、ラオス、ミャンマー、およびベ
トナムにおけるビジネス環境改善のための政策助言や
提唱活動に力を入れる。また、2023 年までに上記の
国々における中小企業数を 150 万社に増加させるこ
とを目標としている。
インドネシアでは、優先的インフラ整備プロジェク
ト加速を目指した取り組み等の事業環境改善、および
財務省における PPP 部局の設置に向けて様々な改革
を支援した。
ラオスでは同国政府に対し、PPP 規制枠組みの策
定と教育および保健における 4 件の事業化可能性調
査の実施を支援した。
中国では、PPP に関する国内法、手続き、および指
針の策定を支援した。こうした支援活動を通じて、商
取引の信頼を高め、インフラをはじめとする民間投資
誘致を拡大することを目的としている。また同国では、
政府の PPP 向け資金支援基金の設立も支援している。
ネパールでは同国政府に対し、安定した PPP 規制・
制度的枠組みの構築に向け、政策・法規・ガイドライ
ンの策定を支援した。2014 年 12 月現在、ネパール
政府は 5 件の PPP 候補案件を特定しており、その可
能性を示すための試験的案件の実施を計画している。
太平洋民間セクター開発イニシアティブ(PSDI)
は太平洋地域の開発途上加盟国において、貸出リスク
の低減と信用へのアクセスの拡大を支援している。担
保付取引と個人財産保証の導入により、借り手が動産
または非固定資産を融資の担保として利用することが
可能となる。PSDI は 2006 年より、太平洋地域の開
発途上加盟国のうち 8 カ国に対し、法整備の支援を
行っている。このうち 6 カ国が担保付取引の登記台
帳を設置済みである。2014 年、PSDI は東ティモー
ルおよび同地域のその他の開発途上加盟国における担
保付取引の枠組みの利用普及を目的とした金融商品を
考案した。
民間参画プロジェクトの準備と提供
ADB は民間投資を促進すべく、開発途上加盟国が
実現可能かつ投融資可能なプロジェクトを特定・準備
し、適切に組成できるよう広範な支援を提供している。
ADB 年次報告 | 2014
フ ィ リ ピ ン で は PPP セ ン タ ー へ の 支 援 を 通 じ て、
2014 年は 3 件の国家 PPP プロジェクトを準備し約定
するに至った。12 月現在、7 件のプロジェクトが入札
段階、また 39 件のプロジェクトが準備段階にある。世
界経済フォーラムと G20 が 2014 年に発表した報告書
では、フィリピンを政府による PPP の促進と管理の代
表例として挙げている。
ADB は、越境プロジェクトにおける PPP の後押しも
行っている。4 月には ASEAN の地域プロジェクト開
発促進を目的とした技術協力を、カナダ政府とシンガ
ポール国際企業庁との協調融資により提供した。また
同支援を通じて、PPP プロジェクトを ASEAN インフ
ラ基金(AIF)に繋ぐ取り組みも推進していく。
ADB はモンゴル政府に対し、同国初の PPP プロジェ
クトであるウランバートルにおける 13 億ドルの電熱
供給プラント案件について引き続き助言を提供してい
る。2014 年 6 月、民間コンソーシアムが政府との間
で同プロジェクトの建設、資金調達、運営、および維
持を行う 25 年間の契約が締結された。中央・西アジ
アでは、ADB はトルクメニスタン~アフガニスタン~
パキスタン~インド間を横断する総延長 1,800 km の
TAPI 天然ガス・パイプライン・プロジェクトの準備と
入札を担当する各国のガス会社で構成されるコンソー
シアムに対し、助言を続けている。2014 年 11 月には、
TAPI パイプライン会社の設立に至った。
また、ADB は他の多国間開発銀行、国際機関、およ
び主要な国家開発銀行数行より、国際インフラ支援シ
ステムの下でプロジェクト準備ソフトウェアの共同開
発を行うための支持と支援を取り付けた。同ソフトウェ
アは、民間投資を引き付けるインフラ案件を公共セク
ターがより適切に策定出来るよう支援するための指針
やテンプレートを提供する。
重点セクターへの金融支援提供
ADB は 2014 年を通じて、エネルギー(特に再生可
能エネルギー)、上水道および衛生、交通、および都市
開発の分野において、金融仲介機関やインフラ開発へ
の支援を続けた。教育やアグリビジネスも新たな重点
分野となった。
同年は特にジェンダーに重点を置いたプロジェクト
が顕著であった。多くの主要プロジェクトに、女性や
女子が教育、雇用、金融サービスに円滑にアクセスす
るための措置が盛り込まれた。こうしたプロジェクト
として、インドの農村部教育や安価な住宅金融、カン
ボジアとインドの食料バリュー・チェーン開発、およ
びタジキスタンの金融サービスの裾野拡大が挙げられ
る。
民間セクター開発
新たな分野への移行
2014 年、ADB は民間セクター業務を新たな分野に
拡大した。
初の民営教育プロジェクト投資として、インドのヒッ
ポキャンパス・ラーニングセンター(HLC)に対し、
200 万ドルの資金提供を決定した。HLC はインド農村
部の子供に対する就学前教育や放課後指導プログラムを
運営しており、各センターを監督するのは地域コミュニ
ティの女性教員となっている。これは正規教育の普及が
制限的または大きく制約されている農村地域における先
駆的かつ低コストの補完的教育システムである。
また、国境を越えて展開する民間アグリビジネスへの
初の支援として、ADB はカンボジアとインドで事業展
開するアカイ・フレーバーズ & アロマティクス社に対し、
1,650 万ドルの融資を決定した。同社は、気候耐性があ
りインクルーシブな農業モデル、加工、輸出を通じ、香
辛料のサプライ・チェーンに付加価値をもたらすべく、
投資を行っている。同プロジェクトは、カンボジアの地
域貿易や外国直接投資を促進する一方で、貧しい農民の
ための機会を創出し農村部の貧困を削減することを目指
す。
2014 年、ADB はミャンマーにおいて民間セクター
業務を開始し、同国の商業インフラの改善を目的とし
た 2 件の大型投資を行った。国内最大の都市であるヤ
ンゴン商業地区の約 10 エーカーの区画の再生プロジェ
クトに対し、融資、出資、B ローン、および政治リスク
保証から成る計 1 億 2,000 万ドルの金融支援を承認し
た。同区画は、中央鉄道駅やボージョー市場に隣接した
賑やかな中心ビジネス地区に生まれ変わる。この開発プ
ロジェクトは、サービスアパート付きホテル、オフィス・
ビル 2 棟、小売施設、マンション 1 棟、歴史的建造物
の改修、およびミャンマー初の地域冷房プラントで構成
されている。また、ADB は同国の連結インフラ案件に
対し 1 億ドルの融資を承認した。同プロジェクトでは、
電気通信基地局の建設、冷蔵施設の設置、および貨物輸
送企業への支援を行う。
港湾サービス会社への支援も初めて実施した。ADB
はインドの港湾物流大手オーシャン・スパークル社に対
し、曳船、プラットフォーム補給船、およびタグ補給船
の購入のために 4,000 万ドルの融資を承認した。同融
資により、インドの港湾業務や海運インフラへの民間投
資に対する信頼感を向上させることが期待されている。
39
フィリピンでは、マクタン・セブ国際空港の旅客ター
ミナルの拡張・改修のため、GMR メガワイド・セブ空
港会社に対する 7,500 万ドルの融資を承認した。ADB
にとっては初のフィリピン航空セクター向け融資、また
同国にとっても画期的な PPP 案件となっている。同空
港はビサヤ地方では唯一の大量旅客対応が可能な国際空
港であり、キャパシティの拡大は地元に新規雇用機会を
もたらす。
資本市場と金融サービスの拡大
2014 年、ADB はインクルーシブな成長の原動力で
あり、貧困削減に中心的な役割を果たす中小零細企業へ
の支援を強化した。アゼルバイジャンのデミール銀行に
2,000 万ドルの融資、モンゴルのハーン銀行に 4,000
万ドルの融資、またタジキスタンのアクセスバンクに
1,100 万ドルの投資(融資、出資、および B ローン)を行っ
た。
インドでは、農業とアグリビジネスの開発を目的とし
て、アクシス銀行とイエス銀行にそれぞれ 2 億ドルを融
資した。同融資は貧しい農民世帯および農村地域の低所
得女性への資金提供に活用される。また、ADB は、ア
ジアにおけるアグリビジネス・食品、金融・企業サービ
ス、および環境開発の中堅企業支援を目的として、オリ
ンパス・キャピタル・アジア V ファンドに対する 4,000
万ドルの出資を承認した。
また、アジア・太平洋地域の環境ファイナンスへのプ
ライベート・エクイティ参画を促進し、地域における環
境的に持続可能な成長を後押しするために、アジア環境
パートナー II ファンドに対し 3,000 万ドルの出資を行っ
ている。
インドでは、低所得層の顧客(半分以上を女性とする)
に安価な住宅の購入資金を融資するために、デワン・ハ
ウジング・ファイナンス・コープに対する 1 億 2,500
万ドルの支援を決定した。この投資は、貧困削減、雇用
創出、および生活水準の向上に資する。
スリランカでは、ハットン・ナショナル銀行に対する
7,500 万ドルの直接融資および 2,500 万ドルの B ロー
貿易金融をニーズのあるところに振り向ける
輸出入活動を支える資金が不十分だと、貿易が経済成
長の創出、雇用創出、貧困削減をもたらす可能性を最大
限に発揮できない。
2014 年に ADB が実施した調査によると、世界の貿
易金融市場における需給ギャップは推計 1 兆 9,000 億
ドルとなっており、うち 1 兆ドル近くはアジア地域が
必要としている。調査対象となった企業は、貿易金融へ
のアクセスが 15% 拡大されれば、生産は 21% 増加し、
雇用需要も 17% 増加するとしている。
ADB は、貿易金融プログラム(TFP)を通じて銀行
に貿易保証・融資を提供し、この需給ギャップの解消に
取り組んでいる。
2014 年、TFP は銀行、民間保険事業者、輸出信用機関、
およびシンガポールの国際企業庁からの 20 億ドル超の
協調融資を得て、総額 38 億ドルを超える約 2,000 件
の取引の円滑化を支援した。TFP が支援する貿易取引の
98% 以上をアジア開発基金の支援対象国が占め、1,549
社の中小企業数が開発途上加盟国間の貿易取引 246 件
に対して支援を受けた。独立評価局が発表した TFP 報
告書では、同プログラムは、アジアにおける貿易、およ
び、同プログラム無くして存在しなかった貿易金融セク
ターの発展に大きく貢献したとしている。
必須インフラへの資金提供
2014 年、ADB は引き続き域内における基幹インフ
ラ整備案件への民間セクター参画に道を開いた。
重点分野の再生可能エネルギーについては、インドの
風力発電大手リニュー・パワー・ベンチャーズに対する
5,000 万ドルの出資を承認した。また、インド国内にお
ける計 200 メガワットの複数の太陽光発電プロジェク
ト開発のため、ACME ソーラー・エナジーに対する 1
億ドルの融資も承認した。
従来型エネルギー・セクターについては、バングラデ
シュの出力 341 メガワットのガス発電プロジェクトに
対する 7,500 万ドルの融資を承認した。同プロジェク
トはバングラデシュの深刻な電力不足を軽減し、石炭や
炭化水素による発電と比較して温室効果ガスの排出を削
減する。
2011 ~ 2014 年の間に
150億ドル超
の貿易金融を支援
の
ADB
動
支援活
40
ンを通じて、インフラ開発金融へのアクセス拡大と、銀
行システムにおける民間への信用供与の水準向上を支援
している。この資金提供は、インクルーシブな成長と紛
争後地域の復旧に貢献する。
また、ADB は中国の農村部貧困層を対象とした廃水
処理・下水道を改善すべく、1 億ドルの直接融資および
2 億ドルの B ローンを提供し、複数の小型下水処理場プ
ラント建設、および同プラントに接続する下水管の整備
ADB 年次報告 | 2014
2014 年、ADB は総額
19億ドル超
25 件の民間セクター
プロジェクトを承認した。
を支援した。同プロジェクトは、深刻
な環境問題を抱える河川沿いの農村区
画やその他気候変動の影響を受ける地
域を対象としている。
協調融資とパートナーシップの促進
2014 年、ADB の民間セクター業務
では自己資金を補完すべく、民間から
多額の資金をレバレッジした。TFP を
通じた 20 億ドル超を含め、50 億ドル
を超える協調融資を調達した。B ローン
のシンジケーションおよびパラレル協
調融資が堅調に伸びた。ADB の民間セ
クター業務は、第三者資金の動員にお
いて今後も重要な役割を果たすことと
なり、これは「ストラテジー 2020」の
重点項目にもなっている。
ADB の資本が限られている一方、域
内のニーズが拡大していることを考慮
すると、銀行および開発パートナーの
資金をレバレッジすることは不可欠と
い え る。 ジ ョ ー ジ ア で は、ADB と し
ては初の対ジョージア民間エネルギー
支援案件となるアジャラ地方の南西部
における水力発電プロジェクトの開発
を、ADB は 後 押 し し た。 同 プ ロ ジ ェ
クトは、アジャラ地方とトルコ北部の
民間セクター開発
一部地域に信頼性の高い電力供給を提供
し、ジョージアの化石燃料依存を軽減す
ることを目的としている。ADB は 7,500
万ドルの直接融資を承認したほか、アジ
ア民間セクター向けカナダ気候基金より
1,500 万ドルを動員した。困難な同大プ
ロジェクトを協調融資すべく、ADB は国
際金融公社および欧州復興開発銀行とも
緊密に協力した。
2014 年、ADB は ク リ ー ン・ テ ク ノ
ロジー基金(CTF)からの譲許的資金を
革新的に活用した。インドネシアでは、
2013 年のサルーラ地熱発電プロジェク
トの成功を受け、パレンバンから約 225
km 離れた南スマトラ州のムアラ・エニ
ム県、ラハト県、およびパガル・アラム
県にまたがる 240 メガワットの地熱発電
プロジェクトに 5,000 万ドル融資するこ
とを承認した。タイ北東部では、チャイ
ヤプーム県サップ・ヤイ郡における 80
メガワットの風力発電所に、5,300 万ド
ルの融資を承認したほか、CTF からの資
金 3,000 万ドルを動員した。同プロジェ
クトは、タイのエネルギー・ミックスの
多様化をさらに推進し、同国のクリーン・
エネルギー目標の達成を支援する。
官民連携(PPP)に
関する世界的な見通し
PPP がアジア・太平洋
地域の開発課題に対する
効果的な対処手段となっ
て い く 中、PPP の 経 験
に関する知識共有が極め
て重要になりつつある。
ADB は 世 界 銀 行 お よ び
米州開発銀行とともに、
PPP 参照ガイドの第 2 版
を公表した。同ガイドで
は、世界における PPP の
実施に関するアプローチ
や経験の概観に加え、ア
ジア・太平洋地域および
米州地域のより広範な事
例研究が紹介されてい
る。
41
MTR 行動計画:
ADB は、 よ り ダ イ ナ
ミックで迅速かつ革新
的な組織となる。
効果的な組織
の実現
42
ADB 年次報告 | 2014
「ス
トラテジー 2020」の中間見直し(MTR)
では、「ADB は業務の合理化を通じて、加
盟国へのサービス向上を目指す」という明
確な提言が示された。
ADB は迅速に、組織能力と実効性を強化するため
の措置の導入に踏み切り、プロジェクト実施の改善、
資金動員の拡大、人材管理における柔軟性向上、およ
びナレッジ・ワークの強化を図るべく、ビジネスモデ
ルと組織枠組みを再検討した。
ADB はスケール・メリットとバリュー・フォー・
マネーを実現するため、プロジェクトの品質保証と融
資業務のプロセス合理化の改善を目指すワーキング・
グループを設置した。2014 年 7 月には技術協力プ
ロジェクトの割り当て方法を刷新し、成果と連動した
インセンティブの導入や透明性の向上を図った。プロ
ジェクトの準備状況を改善するために、開発途上加盟
国に対するプロジェクト開発の融資を迅速に実行する
ための同資金枠の試験期間を 2 年延長した。組織成果
枠組みを改訂し、現在は国別およびプロジェクト別の
成果枠組みガイドラインの改良を行っている。
ADB が金融商品・プロセスの一層の改良を行った
ことで、より広範な民間協調融資団にリスクを移転し、
既存資金を新規取引に投入することが可能になると期
待される。
ADB は、よりダイナミックかつ迅速な組織へと変
わる決意をした。2014 年には、職員の技能、インセ
ンティブ、および人事施策の強化に踏み切った。地域
局は、技能ギャップの解消やチームワーク強化に加え、
地域間における知識と経験を確実に移転するため、職
員の共有を始めた。現地事務所(駐在員事務所)の強
化も進められており、将来的には、知識業務の管理に
より重要な役割を担い、調達や融資実行の意思決定に
関する権限も拡大される。
ADB の成果実現を徹底
開発効果
ADB は 2008 年 に 導 入 さ れ た 開 発 効 果 見 直 し
(DEfR)作業において、ADB の組織目標の進捗を評価
し、意思決定の参考としている。2014 年の DEfR は、
「ストラテジー 2020」の MTR 行動計画と組織成果枠
組み改訂を反映させた 91 の指標に基づいて、組織パ
フォーマンスを評価した。同評価では、ADB の業務
達成率は引き続き上昇し、概ね予算の範囲内で達成さ
れたと結論付けられている。成果目標の達成率が、初
めて 80% を超えた。協調融資、官民連携、融資実行、
予算効率性、契約段階におけるプロジェクト品質、お
よび「ストラテジー 2020」との業務整合性などすべ
ての活動で改善がみられた。その一方で、DEfR はプ
ロジェクト実施遅延や、プロジェクト成果の多くで財
務的な持続可能性が不確かである点に特に注意する必
要があるとの結論も示している。
効果的な組織の実現
独立評価:開発効果の基盤
2014 年 9 月、ADB はマニラ本部で過去 10 年間の独
立評価の節目となる国際会議を開催した。同会議には開発
途上加盟国 26 カ国からの代表者を含む 200 名以上が出
席し、アジア・太平洋地域の開発課題に対処するうえで評
価、学習、イノベーションが果たす力について議論した。
ADB の評価作業は 2004 年から 2014 年の 10 年間で
大きく様変わりし、完了したプログラムやプロジェクトの
評価から、組織全体の政策・プログラムに対する洞察的、
予測的かつ長期的な助言の提供へと進化した。
独立評価局(IED)は ADB の政策や方向性の構築に重
要な役割を果たしてきた。 2014 年、IED は ADB の「ス
トラテジー 2020」について、影響力の大きい独自評価を
作成した。
同評価は、
「ストラテジー 2020」の中間見直し(MTR)
を行うにあたっての参考となり、評価で特定された MTR
の中のインクルージョン、持続可能性、開発効果といった
分野に寄与する行動案を示した。
国別評価は、国別支援戦略および業務計画の作成や、プ
ログラムとプロジェクトの設計の参考とされた。2014 年
に IED が完了したガバナンス、自然災害、社会保護、お
よびインクルーシブな成長に関する評価は、ADB の戦略・
業務面における方向性に貢献している。ADB の業務にお
ける技術協力の役割に対する組織評価、ADB のセーフガー
ド政策に関する業務見直し、および貿易金融プログラムの
パフォーマンスを通じて、ADB のプロセスやプログラム
に関する詳細な分析がなされた。
43
調達改善を目指した計画
2014 年、ADB は「ストラテジー 2020」の中間
見直し(MTR)を踏まえた行動計画の一環として、
調達改革のための行動計画 10 項目を承認した。この
調達行動計画とそれに伴う改革は、調達時間の短縮、
手続きの効率化、およびプロジェクトの実施改善を目
指す一方で、健全な財務管理を維持している。プロ
ジェクトサイクルの各段階(国別支援戦略やプロジェ
クト・コンセプトから、プロジェクト準備、契約遂
行まで)において、リスクを考慮・評価し、調達行
動を決定する。
現在実施段階にある上記の改革は、各国制度の見
直しや信頼向上をもたらす。これには国際競争入札
の最低価格や事前・事後審査の最低価格等、調達に
係る最低価格の見直しも含まれる。事務手続きが効
率的な事後審査方式が新たに導入され、地域局と現
地事務所への調達に関する意思決定の権限移譲がさ
らに進んでいる。オンライン上の調達審査システム
が立ち上げられ、また、質を向上させ時間を短縮す
べくコンサルタント雇用に係る技量向上のための行
動もとられている。
再生可能エネルギーに
おいて範を示す
2014 年 2 月 27 日、
ADB の Bruce Davis 副
総裁は ADB 本部で使用
するエネルギーを 100%
再生可能エネルギーに
転換したと発表した。本
部のオフィスは現在、ル
ソン島にあるティウィお
よびマキリン-バナハオ
地熱発電所から電力供給
を受けているほか、本部
ビル屋上のソーラー・パ
ネルで自家発電も行って
い る。ADB 本 部 で 必 要
とされるエネルギーは全
てこの地熱、太陽エネル
ギーでまかなわれてい
る。
44
ADB は、DEfR 作 業 を 補 完 す べ く、
2014 年 5 月に報告書『ともに実現す
る』を公表した。同報告書は、ADB が
支援し大きな開発効果をもたらしたプ
ロジェクトを紹介し、ベスト・プラク
ティスやイノベーションの事例の概要
について説明している。
グローバル・パートナーシップの進展
ADB は、2011 年に韓国の釜山で開
催された援助効果に関する第 4 回ハイ
レベル・フォーラムにおいて合意され
た、効果的な開発協力のための原則の
堅持を決意している。同原則は、被援
助国の主体性、成果重視、インクルー
シブなパートナーシップ、透明性と説
明責任、および脆弱・紛争影響国への
支援を強調している。2011 年の会合
では効果的な開発協力のためのグロー
バル・パートナーシップ(GPEDC)が
立ち上げられ、同原則の進捗状況を測
るための枠組みが提供された。
ADB は GPEDC の枠組みに基づき、
各国主導の成果枠組みと整合的な業務、
および各国制度(公共財政管理と調達)
を利用したソブリン業務という 2 つの
手法を用いて進捗を測っている。ADB
が 2014 年に承認した業務のほとんど
は、各開発途上加盟国の国家開発計画の
セクター成果・目標のアウトプット指標
に明確に連動または寄与している。各国
制度の利用は、当該国の公共財政管理制
度および調達制度の利用状況を含む。政
策ベース業務の伸びにより、同指標にお
ける ADB のパフォーマンスは 2013 年
の 50% か ら 2014 年 は 55% に 改 善 さ
れたものの、ベースラインの 59% を依
然下回っている。
2014 年、ADB はメキシコで開催さ
れた GPEDC の第 1 回ハイレベル会合
に貢献した。同会合では、効果的な開発
協力のための原則が再確認されたほか、
新たな優先事項(南南協力・知識共有、
国内資金の動員、中所得国、および開発
パートナーとしての企業)が明示された。
ADB はメキシコでの同会合の事後報告
書として『効果的な開発協力のためのグ
ローバル・パートナーシップ~ ADB に
とっての意義』 を発表した。
ADB 年次報告 | 2014
2004 年以降、ADB は節電、
節水、紙の消費削減、
ならびにごみ削減により
110万ドル
の支出を節減した。
透明性と情報公開
2014 年 に ADB は 透 明 性 を 改 善 し、68 の 世 界 主 要
ドナー機関の透明性を測る援助透明性指数のランキング
で ADB の順位は 5 位と 2013 年から 5 段階上昇した。
ADB の 透 明 性 評 価 は 2013 年 の 57% か ら 2014 年 は
83.8% まで増加し、多国間開発銀行の中では最高位にラ
ンクした。
2014 年は新たなカテゴリーの融資文書を開示したほ
か、ウェブサイト経由の情報開示要求に対する ADB の
回答を追跡できるシステムのアップグレード版の使用を
開始した。職員に向け、情報公開要件の実施指針も示した。
職員の能力強化
人材管理
2014 年、開発途上加盟国が可能な限り最も優秀かつ
意欲のある専門家からサービスを提供されることを確保
すべく、ADB は様々な新たな措置を講じた。新たなタレ
ント・マネジメントの取り組みには、採用におけるソー
シャルメディアの利用拡大、現地事務所へのアウトリー
チ・採用活動の重点化、職員評価期間の短縮、および管
理職選抜の個別化が含まれる。また、後継者育成や更新
可能な期限付き契約、上級職の 360 度多面評価の導入も
進めた。年次タレント・レビューの実施を通じ、職員の
パフォーマンスや可能性に係る評価の向上を図ったほか、
体系的な技能監査を確立することで組織内の既存スキル
におけるギャップを特定した。
効果的な組織の実現
現地事務所の強化も進めており、本部職員の現地事
務所への常駐や、セーフガードや社会開発、調達、融
資実行等の専門職員を配置した地域ハブの確立も行っ
ている。また、すべての人材政策・プログラムに含ま
れる原則に沿って、よりジェンダー・バランスが取れ、
多様で、インクルーシブな職場づくりを図っている。
学習と開発
ADB はビジネス・ニーズへの対応や個人的成長の
ため、引き続き職員の育成に取り組んだ。2014 年は、
119 の内部プログラムを実施し、計 2,195 名の職員が
参加した。リーダーシップと管理能力の強化に重点が
置かれた。新任の管理職、監督者、ミッションリーダー
およびメンバーの能力強化のためのプログラムを実施
したほか、新任の局長や現地事務所長を対象とした基
礎研修プログラムも開始した。また、調達リスクの回
避、プロジェクト実施の改善、財務報告・監査要求へ
の対応を目的とした研修プログラムも実施された。さ
らに、リーダーシップや多様性、インクルージョンに
関するオンライン・プログラムも導入された。2014 年、
ADB は地域業務の支援と開発途上加盟国間の知識共有
の拡大を目的とした 42 の特別プログラムと関連活動
を実施した。域内全域の現地事務所から計 248 名の職
員がこれらのイベントに参加した。
45
セーフガード
2014 年、ADB は開発途上加盟国とともにセーフガー
ドに関する法的枠組みと制度的能力の強化に取り組ん
だ。また、セーフガード管理に関する加盟国間における
知識共有を促進した。計 118 件のプロジェクトについ
て、環境、非自発的移住、および先住民族に関する潜
在的影響を調べるスクリーニングと見直しを実施した。
ADB は、セーフガードに関して配慮が必要な問題に対
する職員の能力向上のためのオリエンテーション・セミ
ナーを実施した。また、プロジェクトによる生物多様性
への影響の評価と軽減、また環境管理計画・実施の改善
の 2 つのテーマ別研修を開催した。国別、プロジェク
ト別では、開発途上加盟国の政府職員、実施機関、およ
びプロジェクト管理部局を対象に、セーフガード計画お
よび枠組みの実施とモニタリングに関する研修を実施し
た。また、国レベルやプロジェクト・レベルでのセーフ
ガード順守に係るコスト削減を支援するため、主要開発
パートナーを対象とした活動も実施した。
リソースの最大限の有効活用
内部管理リソース
新たな効率改善・費用削減措置により、2014 年の管
理費は小幅の増加に留まった。独立評価局の管理費を含
め、内部管理費は計 5 億 2,844 万ドルとなった。総額は、
当初予算の 5 億 9,839 万ドルに対する利用率は 88.3%
となった。予算繰越は予算の 2% に相当する 1,197 万
ドルとなり、これを含めた実績額は 5 億 4,040 万ドル、
利用率は 90.3% となった。費用削減は、主に人件費、
職員教育・転勤費、出張旅費、コンサルタント関連費、
およびその他の管理費(通信費、オフィス賃料、事務用品、
契約サービス、保険、減価償却、その他の諸経費)から
実現された。
2015 年の内部管理費予算は 6 億 1,770 万ドルであ
る。MTR 行動計画の効果的な実施には、2014 年の中
間予算見込み額から 3.5% の微増が必要とされるが、増
加分の半分以上は効率改善措置を通じて捻出される見込
みである。2015 年予算には、880 万ドルの年間資本予
算も計上されており、これは定期的な設備投資に充当さ
れる。
リスク管理
ADB はリスクに敏感な組織文化を維持している。各
部局や事務所の業務に伴う固有リスクのモニタリング、
軽減、管理を可能にする業務プロセスを実施している。
2014 年、ADB は民間セクターにおける活動の拡大を
踏まえ、民間貸付に伴う信用リスクの管理補強に留意し
た。民間セクター案件の与信プロセス改善、信用リスク
管理のための新たなテクノロジー・プラットフォームの
導入や、組織全体での新たな業務リスク管理アプローチ
の実施に相当の資源を投入した。また、中央アジア、太
平洋地域の金融機関に対し、リスク管理に関する知識・
能力を向上させるための技術協力を提供した。
46
監査
監査部(OAG)は、ADB の業務改善に資する中立的
かつ客観的な監査・助言サービスを提供しており、リス
クの管理および ADB の開発目標の実現のために設計さ
れた内部コントロールが効率的かつ効果的に機能するこ
とを確かなものとしている。また、ADB の業務・戦略
的政策の評価およびモニタリングにおいて中心的な役割
を果たしている。
同部は 2014 年、ソブリン業務、ノンソブリン業務、
リスク管理、財務、情報技術、および財務管理を対象に
19 件の監査報告書を作成した。監査勧告の実施をモニ
タリングし、リスクを軽減するため各部局の行動を確認
した。
また、内部プロセスについての助言提供を 16 件完了
したほか、拠出機関や協調融資機関の監査要件に関する
助言を行い、主要な委員会に参加した。ADB の部局お
よび事務所は同部に対し、新たな研修プロセスに関する
助言を求めた。さらに、内部監査における専門実務につ
いて外部機関と協力したほか、内部監査の実習プログラ
ムを開始した。
2014 年 8 月、同部はフィリピン政府内部監査協会の
ために、内部監査責任者を対象とした第 1 回フォーラム
を開催した。
公平性および汚職防止活動
ADB は融資・支援・管理対象の活動におけるあらゆ
る汚職に積極的に対処している。2014 年、ADB は公
平性の侵害を理由に 139 の組織・個人をブラックリス
トに掲載した。同年は、公平性に関する研修イベントを
55 回実施したほか、公平性調査と調達関連レビューで
得られた識見を共有すべく、14 の知識成果物を作成し
た。
ADB 職員と外部ステークホルダーは、公平性侵害
の予防・報告において一層の取り組みを行っている。
2014 年、公平性侵害に関する報告件数は、ADB 職員
からの報告が 89 件に達したほか、外部機関からの報告
は 132 件に増加した。4 月、ADB は第 5 回国際金融機
関民間セクター公平性会議を開催し、IMF、世界銀行、
地域銀行、国際金融公社、多数国間投資保証機関、欧州
評議会開発銀行、欧州投資銀行、および欧州投資基金か
ら 35 名が参加した。ADB は、民間セクター業務にお
いて公平性を担保するための政策、プロセス、およびア
プローチに関する議論をリードした。
総務関連
ADB は、職員に安全で安心できる、快適かつ自然
環境に配慮した職場を提供するための投資を行った。
2014 年 2 月、本部の電力供給を 100% 再生可能エネ
ルギーに転換し、同年末までに約 7,800 トンの温室効
果ガス排出を削減すると発表した。2014 年はその他の
グリーンな取り組みや環境保全プログラムを通じて、コ
ストを約 10 万ドル節減した。ADB は 2004 年以降、
ADB 年次報告 | 2014
10 年間のフィードバックの上に
構築されたアカウンタビリティ
10 月、ADB のアカウンタビリティ・メカニズムが 10
年目を迎えた。アカウンタビリティ・メカニズムとは、
ADB が支援するプロジェクトにより悪影響を被った人々
に、不服申し立てや問題解決の要求、ADB の業務政策・
手続き違反の申し立てを行う手段を与える。同メカニズ
ムは、問題解決(特別案件促進部が主導)とコンプライ
アンス審査(独立した観察審査部)という 2 つの別のし
かし補完的な機能で構成されている。2014 年、SPF が
検討した問題事案としては、サモアにおける慣習的土地
の経済的利用促進のための技術協力プロジェクト、およ
びアグリビジネス支援プロジェクトがある。これらのプ
ロジェクトに対する苦情の問題解決は未だ進行中である
が、ネパールの農村インフラ分権化・生活支援プロジェ
クトは、ステークホルダー間で友好的に解決に至った。
CRP はカンボジアの鉄道プロジェクトに関するレビュー
報告書を発表した。同プロジェクトではコンプライアン
ス違反の要素があるとされ、ADB は 2014 年を通じて、
影響を被った者と共にこれら問題に対処した。
節電、節水、紙の消費削減、ならびにごみ削減により
110 万ドルの支出を節減した。最新の空調およびエレ
ベーター・システムの入れ替えは、年間約 65 万ドルの
電気料金および維持管理コストを節減する。出張と食
事サービスに係る新制度導入と電子申請・管理システ
ムの段階的実施により、120 万ドルの節減が見込まれ
る。ADB は 2014 年 4 月に事業継続マネジメントシス
テムの要件と基準を満たし、ISO 22301:2012 の認証
を取得した。
サード・アトリウムについて:2014 年 11 月 11 日、
ADB 本部のサード・アトリウム・ビルが正式にオー
プンした。同ビルにより、オフィス・スペースと施設
が 3 万 1,000 平方メートル拡大した。本館の建築的特
徴を反映しつつも、カーボン・フットプリントは大幅
に削減され、環境への影響も最小限に抑えられている。
その特徴は、より多くの自然光、雨水貯留・屋根排水
システム、天窓からの光による発電、屋上のソーラー・
パネル、高エネルギー効率の空調・照明・エレベーター、
水をあまり必要としない現地の植物、点滴灌漑等であ
る。
情報技術
2014 年、ADB は「ストラテジー 2020」の中間見
直し(MTR)の提言に従い、情報通信技術(ICT)シ
ステムと知識ベースの改善とアップグレードを行った。
本部における無線 LAN や職員個人のモバイル機器から
効果的な組織の実現
の E メール利用の導入により、情報への効果的なアク
セスと共有が可能となった。プロジェクトの調達の迅速
化と事務手続きのオンライン化のためのシステムが設置
された。ADB は、現地事務所と本部間の ICT 接続の最
適化により、迅速でアクセス性や信頼性が高く、安全な
情報のやりとりを可能にし、現地事務所への業務の委
譲を進めた。また、現地事務所の職員を対象に、ICT 知
識の向上と ICT の生産的利用に関する研修を実施した。
ADB は知識共有イベントの ICT ウィーク 2014 を実施
し、ADB 職員、援助・開発専門家、および技術専門家
が一堂に会した。
相互理解
ADB のオンブズパーソンは職場問題の解決に対し非
公式な支援を提供することで、ADB 職員間の協力を促
進している。2014 年には、150 名以上の職員が問題
解決のためにオンブズパーソンに支援を要請した。同部
のサービスに対する認知度を高めるため、オンブズパー
ソンは本部のすべての部局と各現地事務所に対し説明を
行った。また、定期的に ADB 総裁および経営陣と会い、
職場で発生している新たな問題についてフィードバック
を行った。さらに国際オンブズマン協会の年次会議や、
国連および関連国際機関のオンブズマン仲裁者グループ
会合において、ベスト・プラクティスに関する発表を行っ
た。
47
48
ADB 年次報告 | 2014
年次報告2014
2,834.7
820.0
1,820.0
739.7
554.4
975.0
475.0
344.0
144.0
300.0
6.5
1,219.4
10,232.7
融資
20.0
20.0
保証
82.0
80.0
23.0
185.0
出資
563.0
409.2
493.0
188.0
76.0
1.0
955.6
2,685.8
保証
ADF
405.1
405.1
グラント
a会計基準に基づき、財務諸表内で「債務証券」に分類される1,000万ドルを含む。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
11.5
6.6
16.8
5.0
3.7
2.4
2.3
4.4
2.9
1.4
54.8
40.4
152.1
0.2
0.2
0.2
0.6
0.4
3.0
2.6
6.8
523.6
1,633.4
916.4
1,203.7
1,199.4
629.0
519.9
380.0
514.8
408.2
345.1
819.5
9,092.9
5.6
2.1
2.9
3.3
2.8
3.0
2.1
1.5
0.4
92.2
28.5
144.4
その他の特別基金
協調融資
TASF グラント TAグラント プロジェクト
TA
ADB特別基金
-=ゼロ、ADB=アジア開発銀行、ADF=アジア開発基金、OCR=通常資本財源、TA=技術協力、TASF=技術協力特別基金
インド
パキスタン
中国
ベトナム
インドネシア
フィリピン
バングラデシュ
スリランカ
ラオス
ウズベキスタン
地域
その他の開発途上加盟国
合計
国
OCR
2014年上位受益国
(承認額ベース、協調融資を含む)
(単位:百万ドル)
Keywords: cofinancing, approvals, nonsovereign, private sector
www.adb.org/ar2014
3,457.7
3,025.0
2,756.7
2,360.8
1,760.7
1,609.4
1,492.3
916.4
739.1
710.0
582.4
3,514.4
22,925.0
合計
セクター別内訳
49
年次報告2014
90.0
19.4
1,519.7
3,603.2
1,763.8
保健
産業・貿易
情報通信技術
公共部門管理
交通
水道・その他都市インフラ・サービス
13,165.4
1
21
20.0
185.0
4
60.0
142.0
金融
保健
産業・貿易
情報通信技術
公共部門管理
b会計基準に基づき、財務諸表内で「債務証券」に分類される1,000万ドルを含む。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
-=ゼロ、TA=技術協力
合計
マルチセクター
水道・その他都市インフラ・サービス
交通
-
82.0
-
-
-
1
3
-
-
-
-
43.0
80.0
2.0
40.0
エネルギー
-
-
-
百万ドル
-
出資件数
出資
12,918.5
-
1,735.4
3,824.8
1,559.0
-
458.0
-
1,060.0
2,512.8
786.0
982.5
百万ドル
教育
百万ドル
2013
4
28
121
-
2
2
17
29
6
11
融資件数
融資
農業・天然資源・農村開発
セクター
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
-=ゼロ、OCR=通常資本財源
合計
372.1
1,246.2
金融
マルチセクター
3,366.4
490.0
エネルギー
694.6
教育
百万ドル
農業・天然資源・農村開発
セクター
2013
2014a
2014
30.0
154.9
20.0
13.5
1
8
33.7
-
4.6
5.0
10.6
14.9
9.2
13.4
百万ドル
849.0
3.0
-
325.0
47.6
-
-
0.2
23.4
325.3
20.0
104.5
百万ドル
-
-
-
-
2
2
1
2
出資件数
136
-
19
34
12
-
4
-
11
28
11
17
融資件数
45
247
18
30
55
-
7
8
25
23
14
22
405.3
-
-
138.9
25.0
-
-
0.2
-
174.3
22.0
45.0
2014
18
-
-
4
2
-
-
1
-
7
2
2
11.4
158.9
18.1
27.6
30.4
1.3
10.1
2.5
16.7
20.9
5.1
14.9
15
256
28
39
53
3
16
4
33
34
7
24
百万ドル TAグラント件数
TAグラント
TAグラント件数
2013
25
1
-
3
7
-
-
1
3
7
1
2
グラント件数
2014
百万ドル
グラント
グラント件数
2013
セクター別内訳
(2013/2014年、
ソブリンおよびノンソブリン承認額、
協調融資を含む)
OCRおよび特別基金
Keywords: sector, approvals, sectoral, loans, public loans, sovereign, cofinancing, nonsovereign, private sector
www.adb.org/ar2014
35.0
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
35.0
百万ドル
2013
1
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1
保証件数
保証
20.0
-
20.0
-
-
-
-
-
-
-
-
-
百万ドル
2014
1
1
-
-
-
-
-
-
-
-
-
保証件数
50
ADB 年次報告 | 2014
10.0
保健
産業・貿易
情報通信技術
公共部門管理
bドルおよび現地通貨建て補完融資を含む。
-
464.4
5,884.3
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
-=ゼロ、TA=技術協力、TFP=貿易金融プログラム
合計
マルチセクター
水道・その他都市インフラ・サービス
1,180.7
2,550.0
金融
交通
1,374.3
200.0
教育
エネルギー
105.0
百万ドル
農業・天然資源・農村開発
セクター
協調融資
続き
31
-
5
5
1
-
-
-
3
13
2
2
8,776.7
772.8
419.0
313.9
750.0
-
-
-
2,363.8
3,730.5
126.8
300.0
百万ドル
57
3
8
4
3
-
-
-
8
24
2
5
融資およびTFP件数
2014
融資および貿易金融プログラムb
融資およびTFP件数
2013
482.3
53.8
11.7
183.8
-
-
-
10.0
1.5
134.3
8.5
78.8
百万ドル
グラント
29
4
3
5
-
-
-
1
1
6
2
7
グラント件数
2013
316.2
-
72.5
48.2
15.1
-
-
-
-
111.3
25.4
43.6
百万ドル
35
-
9
8
4
-
-
-
-
8
2
4
グラント件数
2014
278.2
91.6
21.1
8.8
16.4
-
23.0
5.2
5.2
28.7
55.1
23.1
百万ドル
163
28
24
8
18
-
10
5
7
27
9
27
144.4
2.9
6.9
7.2
25.7
0.5
11.2
23.7
15.2
19.1
8.4
23.7
百万ドル
TA グラント
TAグラント件数
2013
111
6
13
10
21
1
8
8
8
16
8
12
TAグラント件数
2014
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: loans, approvals, public loans, sovereign, cofinancing, nonsovereign, private sector
ソブリンおよびノンソブリン承認額
(2013/2014年)
(単位:百万ドル)
項目
ソブリン
融資
グラントa
技術協力
直接価値付加協調融資
公共協調融資
技術協力協調融資
2013
16,450.0
11,740.1
849.0
149.1
2014
15,990.1
11,205.0
405.3
148.1
3,434.9
276.9
4,089.6
142.1
ノンソブリン
4,541.0
112.8
112.8
4,428.3
1,425.3
142.0
35.0
5.8
135.0
220.0
109.5
1.3
2,279.5
75.0
20,991.1
6,934.9
0.2
0.2
6,934.7
1,713.5
185.0
20.0
10.5
194.3
863.0
1,502.8
339.5
2.3
2,039.3
8.0
56.5
22,925.0
公共
リスク移転
技術協力
民間
融資
出資c
保証
技術協力
公共協調融資
Bローンd
パラレル・ローン
パラレル出資
技術協力協調融資
貿易金融プログラム協調融資
保証協調融資e
リスク移転f
合計
b
-=ゼロ。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
a 投資グラントを指す。
b 公共セクターにより資本の過半数を所有されている企業向けのノンソブリンの融資、保証、Bローンおよびリスク移転を指す。
c 2014年の数字は、会計基準に基づき、財務諸表内で「債務証券」に分類される1,000万ドルを含む。
d ドルおよび現地通貨建て補完融資を含む。
e 第三者が供与した融資のうちADBによって保証(部分信用保証または部分リスク保証等)されていない部分については、純直接価値付加協調
融資に分類され、保証契約が締結された年に計上される。
f 第三者がADBの保証または融資のリスクを負担するリスク移転契約により軽減される通常資本財源の配分額を示す。配分の軽減額は、カウン
ターパーティーのリスク格付けおよび性質に依る。
ソブリンおよびノンソブリン承認額
51
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: contracts, contract awards
機材、工事、およびコンサルティング・サービスの調達の概要
(2014年)
プロジェクト/プログラム融資・グラント・技術協力案件に係る機材・サービス原産国別の内訳
融資
コンサルティング・サービス
金額
機材・サービスの原産国
アフガニスタン
アルメニア
オーストラリア
オーストリア
アゼルバイジャン
バングラデシュ
ベルギー
ブータン
ブルネイ
カンボジア
カナダ
中国
クック諸島
デンマーク
フィジー
フィンランド
フランス
ジョージア
ドイツ
香港(中国)
インド
インドネシア
アイルランド
イタリア
日本
カザフスタン
キリバス
韓国
キルギス
ラオス
ルクセンブルク
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
ポルトガル
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スペイン
スリランカ
スウェーデン
スイス
台湾
タジキスタン
タイ
東ティモール
トンガ
トルコ
トルクメニスタン
ツバル
英国
米国
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
グランド合計
0.12
24.41
0.04
0.26
1.23
0.22
0.85
5.41
6.74
8.28
7.21
0.22
7.13
4.53
44.81
4.02
6.92
3.97
16.81
0.23
0.49
2.70
0.34
0.07
5.95
2.28
0.63
4.00
3.13
4.63
3.72
0.05
1.46
9.80
5.73
3.71
4.23
1.00
0.04
0.06
14.09
0.66
31.75
243.95
構成比
0.05
10.01
0.02
0.11
0.50
0.09
0.35
2.22
2.76
3.39
2.96
0.09
2.92
1.86
18.37
1.65
2.84
1.63
6.89
0.09
0.20
1.11
0.14
0.03
2.44
0.93
0.26
1.64
1.28
1.90
1.53
0.02
0.60
4.02
2.35
1.52
1.74
0.41
0.02
0.03
5.78
0.27
13.02
100.00
グラント
機材、工事、および
その他関連サービス
金額
0.04
23.46
38.75
27.21
24.98
249.23
1.74
0.04
0.21
25.55
2.29
1,997.45
0.67
5.08
1.87
5.03
36.77
76.82
15.37
1,436.34
219.32
2.28
20.68
45.72
0.00
282.47
5.10
4.55
16.13
0.43
0.09
9.26
0.09
94.28
3.12
3.06
0.39
218.87
31.63
113.84
0.03
0.07
75.24
0.09
73.35
268.64
0.93
1.90
0.01
0.27
25.74
0.08
411.91
9.02
104.81
80.00
0.09
546.98
6,639.38
構成比
0.00
0.35
0.58
0.41
0.38
3.75
0.03
0.00
0.00
0.38
0.03
30.08
0.01
0.08
0.03
0.08
0.55
1.16
0.23
21.63
3.30
0.03
0.31
0.69
0.00
4.25
0.08
0.07
0.24
0.01
0.00
0.14
0.00
1.42
0.05
0.05
0.01
3.30
0.48
1.71
0.00
0.00
1.13
0.00
1.10
4.05
0.01
0.03
0.00
0.00
0.39
0.00
6.20
0.14
1.58
1.20
0.00
8.24
100.00
コンサルティング・サービス
金額
0.08
5.05
0.21
1.48
3.65
9.69
0.61
0.03
3.84
1.82
2.20
2.30
0.29
0.02
0.38
0.13
9.37
4.91
2.59
0.02
0.10
0.40
11.38
0.41
2.64
9.54
0.84
4.18
0.02
6.75
4.42
1.10
0.15
0.78
1.13
1.23
8.10
0.13
1.04
102.99
構成比
0.07
4.91
0.20
1.44
3.54
9.41
0.59
0.03
3.73
1.77
2.14
2.24
0.28
0.01
0.37
0.13
9.10
4.77
2.51
0.02
0.09
0.39
11.05
0.40
2.56
9.27
0.81
4.06
0.02
6.55
4.29
1.07
0.14
0.76
1.09
1.19
7.87
0.12
1.01
100.00
技術協力
機材、工事、および
その他関連サービス
コンサルティング・サービス
政策ベース融資
調達合計
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
88.65
4.33
3.56
2.82
33.41
0.19
33.54
14.17
0.67
3.94
0.53
0.09
4.44
0.00
10.32
1.36
29.43
1.08
0.01
0.09
0.00
10.13
11.11
1.59
22.49
2.99
4.83
3.43
0.67
9.73
1.74
0.24
0.66
0.56
2.55
0.48
3.34
0.35
0.66
38.00
348.18
25.46
1.24
1.02
0.81
9.60
0.05
9.63
4.07
0.19
1.13
0.15
0.03
1.27
0.00
2.97
0.39
8.45
0.31
0.00
0.02
0.00
2.91
3.19
0.46
6.46
0.86
1.39
0.99
0.19
2.79
0.50
0.07
0.19
0.16
0.73
0.14
0.96
0.10
0.19
10.92
100.00
0.33
0.32
19.02
0.16
0.18
2.01
1.03
0.63
0.58
5.97
11.05
0.93
0.15
0.20
4.66
0.54
15.12
5.83
18.65
8.02
1.89
0.35
12.86
0.45
0.62
0.76
0.63
0.43
0.07
0.09
0.98
0.51
2.04
8.08
6.66
0.13
3.23
0.12
0.17
14.37
0.04
0.21
6.42
0.05
4.17
1.97
1.44
4.30
0.06
0.51
2.61
0.04
0.03
0.01
15.98
18.81
0.27
0.09
1.54
208.37
0.16
0.15
9.13
0.08
0.09
0.96
0.49
0.30
0.28
2.87
5.30
0.45
0.07
0.09
2.23
0.26
7.26
2.80
8.95
3.85
0.91
0.17
6.17
0.22
0.30
0.36
0.30
0.21
0.03
0.04
0.47
0.25
0.98
3.88
3.20
0.06
1.55
0.06
0.08
6.90
0.02
0.10
3.08
0.02
2.00
0.95
0.69
2.06
0.03
0.24
1.25
0.02
0.01
0.01
7.67
9.03
0.13
0.04
0.74
100.00
2.81
2.22
57.33
6.00
13.14
2.06
21.36
0.21
3.42
0.45
15.08
359.27
3.03
0.03
21.82
26.54
0.61
57.63
30.84
67.48
51.35
3.97
26.42
141.86
1.27
0.01
93.31
0.03
0.52
1.33
85.19
0.01
0.00
2.73
0.00
0.69
15.69
6.91
2.30
1.86
0.00
1.59
4.07
0.82
0.01
124.55
0.08
8.68
4.53
9.52
37.51
0.00
0.32
82.56
0.00
0.00
27.30
0.58
24.66
122.18
0.46
0.62
20.13
1,596.96
0.18
0.14
3.59
0.38
0.82
0.13
1.34
0.01
0.21
0.03
0.94
22.50
0.19
0.00
1.37
1.66
0.04
3.61
1.93
4.23
3.22
0.25
1.65
8.88
0.08
0.00
5.84
0.00
0.03
0.08
5.33
0.00
0.00
0.17
0.00
0.04
0.98
0.43
0.14
0.12
0.00
0.10
0.25
0.05
0.00
7.80
0.01
0.54
0.28
0.60
2.35
0.00
0.02
5.17
0.00
0.00
1.71
0.04
1.54
7.65
0.03
0.04
1.26
100.00
91.90
26.11
148.91
33.41
38.57
258.30
24.35
5.18
3.63
64.49
38.64
2,408.66
0.03
16.76
5.26
23.89
59.43
38.14
159.57
56.57
1,573.52
283.52
8.25
54.38
209.23
1.72
0.14
412.90
12.39
38.20
1.33
105.55
0.61
0.17
0.09
21.11
3.40
0.00
125.46
29.16
19.26
2.82
250.45
3.25
43.65
150.38
0.90
4.59
207.67
0.89
100.18
290.64
20.38
52.08
4.31
2.85
112.62
3.49
1.64
439.23
0.58
54.30
268.34
82.06
0.93
639.45
9,139.83
構成比
1.01
0.29
1.63
0.37
0.42
2.83
0.27
0.06
0.04
0.71
0.42
26.35
0.00
0.18
0.06
0.26
0.65
0.42
1.75
0.62
17.22
3.10
0.09
0.59
2.29
0.02
0.00
4.52
0.14
0.42
0.01
1.15
0.01
0.00
0.00
0.23
0.04
0.00
1.37
0.32
0.21
0.03
2.74
0.04
0.48
1.65
0.01
0.05
2.27
0.01
1.10
3.18
0.22
0.57
0.05
0.03
1.23
0.04
0.02
4.81
0.01
0.59
2.94
0.90
0.01
7.00
100.00
-=ゼロ、0.00=0.01%未満。
注:
1.小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
2.本書で「$」または「ドル」という場合には米ドルを指す。
52
ADB 年次報告 | 2014
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: contracts, contract awards
機材、工事、およびコンサルティング・サービスの調達の概要
(2014年)
プロジェクト/プログラム融資・グラント・技術協力案件に係る加盟国別の内訳
融資
コンサルティング・サービス
加盟国
金額
構成比
金額
アフガニスタン
0.12
23.53
9.89
14.58
1.18
2.66
6.18
8.28
9.87
1.66
2.42
4.82
48.92
3.48
1.11
1.84
5.91
0.23
0.56
2.70
1.05
1.91
3.72
3.80
0.40
0.30
4.00
3.13
5.24
0.68
0.05
6.33
5.73
3.71
1.00
7.41
0.50
15.85
2.17
27.04
-
0.05
9.64
4.05
5.98
0.48
1.09
2.53
3.39
4.04
0.68
0.99
1.98
20.05
1.43
0.45
0.75
2.42
0.09
0.23
1.11
0.43
0.78
1.52
1.56
0.16
0.12
1.64
1.28
2.15
0.28
0.02
2.59
2.35
1.52
0.41
3.04
0.20
6.50
0.89
11.09
-
243.95
100.00
アルメニア
オーストラリア
オーストリア
アゼルバイジャン
バングラデシュ
ベルギー
ブータン
ブルネイ
カンボジア
カナダ
中国
クック諸島
デンマーク
フィジー
フィンランド
フランス
ジョージア
ドイツ
香港(中国)
インド
インドネシア
アイルランド
イタリア
日本
カザフスタン
キリバス
韓国
キルギス
ラオス
ルクセンブルク
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
ポルトガル
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スペイン
スリランカ
スウェーデン
スイス
台湾
タジキスタン
タイ
東ティモール
トンガ
トルコ
トルクメニスタン
ツバル
英国
米国
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
その他域内
グランド合計
技術協力
グラント
機材、工事、および
その他関連サービス
コンサルティング・サービス
機材、工事、および
その他関連サービス
コンサルティング・サービス
政策ベース融資
調達合計
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
0.04
32.07
39.69
226.26
252.37
0.10
26.32
1,720.14
5.08
115.55
18.48
4.52
1,330.54
205.10
17.95
0.98
0.17
0.00
44.12
35.13
4.73
0.03
0.43
0.09
9.26
126.13
0.51
0.02
355.34
30.19
102.95
0.07
24.65
149.09
329.52
0.27
0.01
24.72
212.05
5.56
308.14
334.17
0.06
546.78
-
0.00
0.48
0.60
3.41
3.80
0.00
0.40
25.91
0.08
1.74
0.28
0.07
20.04
3.09
0.27
0.01
0.00
0.00
0.66
0.53
0.07
0.00
0.01
0.00
0.14
1.90
0.01
0.00
5.35
0.45
1.55
0.00
0.37
2.25
4.96
0.00
0.00
0.37
3.19
0.08
4.64
5.03
0.00
8.24
-
0.08
5.10
0.21
1.48
3.65
9.69
0.61
0.03
3.84
2.51
2.20
2.30
0.29
0.02
0.38
0.13
9.37
4.91
2.63
0.02
0.10
0.40
8.77
1.11
2.64
9.54
0.09
0.75
4.18
0.02
6.75
4.42
0.41
0.15
0.78
0.38
3.84
8.06
0.13
1.04
-
0.07
4.96
0.20
1.44
3.54
9.41
0.59
0.03
3.73
2.43
2.14
2.24
0.28
0.01
0.37
0.13
9.10
4.77
2.55
0.02
0.09
0.39
8.52
1.07
2.56
9.27
0.09
0.73
4.06
0.02
6.55
4.29
0.40
0.14
0.76
0.36
3.73
7.83
0.12
1.01
-
88.65
4.33
3.61
2.82
36.52
30.24
14.17
0.67
7.28
0.48
2.44
0.00
10.31
1.36
30.59
0.01
0.00
10.13
11.11
1.73
22.47
3.40
4.88
3.45
0.15
0.67
6.04
1.74
0.24
0.66
0.52
2.55
0.48
3.34
0.02
0.66
40.15
0.32
25.46
1.24
1.04
0.81
10.49
8.69
4.07
0.19
2.09
0.14
0.70
0.00
2.96
0.39
8.79
0.00
0.00
2.91
3.19
0.50
6.45
0.98
1.40
0.99
0.04
0.19
1.73
0.50
0.07
0.19
0.15
0.73
0.14
0.96
0.00
0.19
11.53
0.09
0.33
0.32
19.02
0.16
0.18
2.01
1.03
0.63
0.58
5.97
11.05
0.93
0.15
0.20
4.66
0.54
15.12
5.83
18.65
8.02
1.89
0.35
12.86
0.45
0.62
0.76
0.63
0.43
0.07
0.09
0.98
0.51
2.04
8.08
6.66
0.13
3.23
0.12
0.17
14.37
0.04
0.21
6.42
0.05
4.17
1.97
1.44
4.30
0.06
0.51
2.61
0.04
0.03
0.01
15.98
18.81
0.27
0.09
1.54
-
0.16
0.15
9.13
0.08
0.09
0.96
0.49
0.30
0.28
2.87
5.30
0.45
0.07
0.09
2.23
0.26
7.26
2.80
8.95
3.85
0.91
0.17
6.17
0.22
0.30
0.36
0.30
0.21
0.03
0.04
0.47
0.25
0.98
3.88
3.20
0.06
1.55
0.06
0.08
6.90
0.02
0.10
3.08
0.02
2.00
0.95
0.69
2.06
0.03
0.24
1.25
0.02
0.01
0.01
7.67
9.03
0.13
0.04
0.74
-
19.00
9.47
19.08
73.50
257.00
3.00
22.00
19.51
2.00
27.07
399.16
746.17
-
1.19
0.59
1.19
4.60
16.09
0.19
1.38
1.22
0.13
1.70
24.99
46.72
-
89.09
51.50
91.67
0.16
236.32
282.25
1.03
24.11
68.25
18.32
1,768.22
0.03
13.05
5.24
0.20
31.20
191.25
38.89
15.17
1,664.70
217.37
1.90
19.41
18.49
0.62
3.13
70.32
64.38
58.65
3.17
0.60
0.09
1.15
22.68
4.23
2.00
178.93
8.98
9.82
0.13
784.20
3.25
41.64
132.43
0.04
3.86
31.96
0.72
163.77
343.29
9.93
12.67
0.06
1.85
4.29
35.51
0.89
212.07
29.22
1,097.05
337.28
0.28
616.55
0.32
構成比
0.97
0.56
1.00
0.00
2.59
3.09
0.01
0.26
0.75
0.20
19.35
0.00
0.14
0.06
0.00
0.34
2.09
0.43
0.17
18.21
2.38
0.02
0.21
0.20
0.01
0.03
0.77
0.70
0.64
0.03
0.01
0.00
0.01
0.25
0.05
0.02
1.96
0.10
0.11
0.00
8.58
0.04
0.46
1.45
0.00
0.04
0.35
0.01
1.79
3.76
0.11
0.14
0.00
0.02
0.05
0.39
0.01
2.32
0.32
12.00
3.69
0.00
6.75
0.00
6,639.38
100.00
102.99
100.00
348.18
100.00
208.37
100.00
1,596.96
100.00
9,139.83
100.00
-=ゼロ、0.00=0.01%未満。
注:
1.小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
2.本書で「$」または「ドル」という場合には米ドルを指す。
機材、工事、およびコンサルティング・サービスの調達の概要
53
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: membership, capital stock, stock, voting power
加盟国、資本金、および議決権
(2014年末現在)
加盟年
応募済資本a
議決権b
(構成比%) (構成比%)
域内
アフガニスタン
アルメニア
オーストラリア
アゼルバイジャン
バングラデシュ
ブータン
ブルネイ
カンボジア
1966
2005
1966
1999
1973
1982
2006
1966
0.034
0.300
5.812
0.447
1.026
0.006
0.354
0.050
0.326
0.538
4.948
0.656
1.119
0.304
0.582
0.338
中国
クック諸島
フィジー
ジョージア
香港
(中国)
インド
インドネシア
日本
カザフスタン
キリバス
韓国
キルギス
1986
1976
1970
2007
1969
1966
1966
1966
1994
1974
1966
1994
6.473
0.003
0.068
0.343
0.547
6.359
5.131
15.677
0.810
0.004
5.060
0.300
5.477
0.301
0.353
0.573
0.736
5.386
4.404
12.840
0.947
0.302
4.347
0.539
ラオス
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
1966
1966
1978
1990
0.014
2.735
0.004
0.003
0.310
2.487
0.302
0.301
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
ニュージーランド
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スリランカ
台湾
タジキスタン
タイ
東ティモール
トンガ
トルクメニスタン
ツバル
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
小計
1990
1991
1973
1991
1966
1966
1966
2003
1971
1966
1966
1966
1973
1966
1966
1998
1966
2002
1972
2000
1993
1995
1981
1966
0.004
0.015
0.547
0.004
0.148
1.543
2.188
0.003
0.094
2.393
0.003
0.342
0.007
0.583
1.094
0.288
1.368
0.010
0.004
0.254
0.001
0.677
0.007
0.343
63.480
0.302
0.311
0.736
0.302
0.417
1.533
2.049
0.301
0.374
2.213
0.301
0.572
0.304
0.765
1.174
0.529
1.393
0.306
0.302
0.502
0.300
0.840
0.304
0.573
65.112
54
加盟年
域外
オーストリア
ベルギー
カナダ
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
アイルランド
イタリア
ルクセンブルク
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
トルコ
英国
米国
小計
合計
1966
1966
1966
1966
1966
1970
1966
2006
1966
2003
1966
1966
2002
1986
1966
1967
1991
1966
1966
議決権b
応募済資本a
(構成比%) (構成比%)
0.342
0.342
5.254
0.342
0.342
2.338
4.345
0.342
1.815
0.342
1.030
0.342
0.114
0.342
0.342
0.586
0.342
2.051
15.567
36.520
100.000
0.572
0.572
4.502
0.572
0.572
2.169
3.775
0.572
1.751
0.572
1.123
0.572
0.390
0.572
0.572
0.767
0.572
1.940
12.752
34.888
100.000
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。その他の詳細については、
年次報告2014の財務諸表にある応募済資本・議決権計算書(OCR-8)の表を参照。
a 応募済資本とは、ADBの資本に対する加盟国の応募済持ち分をいう。
b 各加盟国の総議決権は、基本議決権と比例議決権からなる。各加盟国の基本議決権
数は、全加盟国の基本議決権と比例議決権の合計の20%を全加盟国で均等に配分
した議決権数である。各加盟国の比例議決権数は、当該加盟国が保有するADBの
株式の数と同じである。
ADB 年次報告 | 2014
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: board of governors, governors, board
総務会
(2014年末現在)
加盟国
総務
アフガニスタン
Omar Zakhilwal
アルメニア
総務代理
Karen Chshmaritian
Pavel Safaryan3
Johann Georg Schelling4
Günther Schönleitner
オーストラリア
Joe Hockey MP
アゼルバイジャン
Samir Sharifov
オーストリア
バングラデシュ
ベルギー
ブータン
ブルネイ
カンボジア
カナダ
中国
クック諸島
デンマーク
フィジー
フィンランド
フランス
ジョージア
ドイツ
香港
(中国)
インド
インドネシア
アイルランド
イタリア
日本
カザフスタン
キリバス
Mohammad Mustafa Mastoor1
2
Johan Van Overtveldt
6
Lyonpo Namgay Dorji
Pehin Dato Abdul Rahman Ibrahim
Aun Pornmoniroth
Mark Brown
Michael Starbaek Christensen
Aiyaz Sayed-Khaiyum7
Nodar Khaduri
Hans Joachim Fuchtel
10
John Tsang Chun-wah
11
Bambang P.S. Brodjonegoro13
Tom Murdoch
Vongsey Vissoth
Richard Neves
Christian Dons Christensen
Barry Whiteside
Bruno Bézard9
Michel Sapin8
Erbolat Dossaev
Nazmi Mohamad
Riikka Laatu
Anne Sipiläinen
麻生 太郎
Nim Dorji
Shi Yaobin
Lou Jiwei
Ignazio Visco
Franciscus Godts
Rob Stewart
John Baird
Michael Noonan T.D.
Shahin Mustafayev
Mohammad Mejbahuddin5
Abul Maal A. Muhith
Arun Jaitley
Steven Ciobo MP
George Kvirikashvili
Wilfried Steinheuer
Norman Chan
Rajiv Mehrishi12
Andrinof Chaniago14
Paul Ryan
Carlo Monticelli
黒田 東彦
Ruslan Erbolatovich Dalenov
Elliot Ali15
1 3月にAbdul Qadeer Fitratの後任として就任。
2 6月にVahram Avanesyanの後任として就任。
3 6月にKarine Minasyanの後任として就任。
4 9月にMichael Spindeleggerの後任として就任。Michael Spindeleggerは2月にMaria Fekterの後任として就任。
5 2月にMd. Abdul Kalam Azadの後任として就任。
6 10月にKoen Greensの後任として就任。
7 9月にJosaia Voreqe Bainimaramaの後任として就任。
8 4月にPierre Moscoviciの後任として就任。
9 7月にRamon Fernandezの後任として就任。
10 3月にGudrun Koppの後任として就任。
11 5月にP.Chidambaramの後任として就任。
12 10月にArvin Mayaramの後任として就任。
13 12月にMuhamad Chatib Basriの後任として就任。
14 12月にArmida Alisjahbanaの後任として就任。
15 3月にAtanteora Beiatauの後任として就任。
総務会
55
続き
加盟国
総務
総務代理
韓国
Kyung Hwan Choi16
Ju Yeol Lee17
ラオス
Liane Thykeo
Sonexay Sitphaxay
キルギス
ルクセンブルク
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
ポルトガル
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スペイン
スリランカ
スウェーデン
スイス
台湾
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
56
Olga Lavrova18
20
Pierre Gramegna
Dato' Sri Mohd Najib Bin Tun
Haji Abdul Razak
Abdulla Jihad
Jack J. Ading
Temir Sariev19
Arsène Jacoby
Tan Sri Dato' Sri Dr. Mohd Irwan
Serigar bin Abdullah
Abdulla Ali21
Amon Tibon
22
Kensley Ikosia
Jargaltulga Erdenebat23
Win Shein
David Adeang MP
Ram Sharan Mahat25
Lilianne Ploumen
Bill English
Hans Brattskar
Mohammad Ishaq Dar
Elbuchel Sadang
Patrick Pruaitch
30
Cesar V. Purisima
Manuel Rodrigues31
Tuilaepa Sailele Malielegaoi33
Tharman Shanmugaratnam
Rick N. Houenipwela
Luis de Guindos Jurado
Mahinda Rajapaksa
Ulrika Modéer
36
Beatrice Maser Mallor
Sheng-Ford Chang37
Lorin Robert
Naidansuren Zoljargal
Daw Lei Lei Thein24
Martin Hunt
Suman Prasad Sharma26
A.C.C. (Christiaan) Rebergen27
Gabriel Makhlouf
Henrik Harboe28
Muhammad Saleem Sethi29
Rhinehart Silas
Dairi Vele
Amando M. Tetangco, Jr.
Alvaro Matias32
Tupaimatuna lulai Lavea
Peter Ong Boon Kwee
Fred Fakarii34
Iñigo Fernández de Mesa35
P.B. Jayasundera
Per Orneus
Willi Graf
Tzung-Ta Yen38
7月にOh-Seok Hyunの後任として就任。
4月にChoongsoo Kimの後任として就任。
7月にDjoomart Ortobaevの後任として就任。
7月にOlga Lavrovaの後任として就任。
5月にPhouphet Khamphounvongの後任として就任。
12月にAminath Ali Manikの後任として就任。
10月にDennis Momotaroの後任として就任。
12月にChultem Ulaanの後任として就任。
3月にDaw Khin San Yeeの後任として就任。
2月にShankar Prasad Koiralaの後任として就任。
8月にYuba Raj Bhusalの後任として就任。Yuba Raj Bhusalは4月にShanta Raj Subediの後任として就任。
11月にRob Swartbolの後任として就任。
8月にKare Stormarkの後任として就任。
10月にNargis Sethiの後任として就任。
3月にDon Poyleの後任として就任。
8月にMaria Luis Albuquerqueの後任として就任。
8月にManuel Rodriguesの後任として就任。
4月にFaumuina Tiatia Liugaの後任として就任。
10月にShadrach Fanegaの後任として就任。
9月にFernando Jimenez Latorreの後任として就任。
11月にTanja Rasmussonの後任として就任。Tanja Rasmussonは 2013年12月にPer Orneusの後任として就任。
6月にFai-nan Perngの後任として就任。
6月にTang-Chieh Wuの後任として就任。
ADB 年次報告 | 2014
続き
加盟国
総務
総務代理
タジキスタン
Davlatali S. Saidov
Sharif Rahimzoda
東ティモール
Emilia Pires
Santina J.R.F. Viegas-Cardoso
タイ
トンガ
トルコ
トルクメニスタン
ツバル
英国
米国
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
39
40
41
42
43
44
45
46
Sommai Phasee39
'Aisake Valu Eke
40
Cavit Dağdaş41
Myradov Gochmyrat
Ashyrmuhammedovich43
Rungson Sriworasat
Tatafu Moeaki
Burhanettin Aktaş42
Muhammetgeldi Atayev
Maatia Toafa
Limasene Teatu44
Jacob J. Lew
Catherine Novelli46
Justine Greening
Rustam Azimov
Maki Stanley Simelum
Nguyen Van Binh
Desmond Swayne45
空席
George Singara Maniuri
Le Minh Hung
8月にKittiratt Na-Ranongの後任として就任。
3月にLisiate ‘Aloveita Akoloの後任として就任。
10月にIbrahim H. Canakciの後任として就任。
10月にCavit Dagdasの後任として就任。
1月にTuvakmammet Japarovの後任として就任。
2月にTemate Melitianaの後任として就任。
7月にAlan Duncanの後任として就任。
3月に任命を受け、Robert D. Hormats
(2013年11月に任期満了)
の後任として就任。
総務会
57
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: voting groups, voting power, board, board of directors
理事会および議決グループ
(2014年末現在)
理事
理事代理
Anthony Baker
Richard Sisson
オーストラリア、
アゼルバイジャン、
カンボジア、
ジョージア、香港
(中国)
、
キリバス、
ミクロネシア連邦、ナウル、
パラオ、
ソロモン諸島、
ツバル
Maliami bin Hamad
Khin Khin Lwin
ブルネイ、
マレーシア、
ミャンマー、
ネパール、
シンガポール、
タイ
Won-Mok Choi
M P D U K Mapa Pathirana
韓国、
パプアニューギニア、
スリランカ、台湾、
ウズベキスタン、
バヌアツ、ベトナム
Richard Edwards
Mario Sander
オーストリア、
ドイツ、ルクセンブルク、
トルコ、
英国
Maurizio Ghirga
René Legrand
ベルギー、
フランス、
イタリア、
ポルトガル、
スペイン、
スイス
小口 一彦
福島 秀生
日本
Umesh Kumar
Iqbal Mahmood
アフガニスタン、
バングラデシュ、
ブータン、
インド、
ラオス、
タジキスタン、
トルクメニスタン
David Murchison
Armand Evers
カナダ、
デンマーク、
フィンランド、
アイルランド、
オランダ、
ノルウェー、
スウェーデン
Robert M. Orr
Michael Strauss
米国
Muhammad Sami Saeed
Gaudencio Hernandez, Jr.
カザフスタン、
モルジブ、
マーシャル諸島、
モン
ゴル、
パキスタン、
フィリピン、東ティモール
Zhongjing Wang
Wenxing Pan
中国
Bhimantara Widyajala
Dominic Walton-France
アルメニア、
クック諸島、
フィジー、
インドネシア、
キルギス、
ニュージーランド、
サモア、
トンガ
58
代表される加盟国
ADB 年次報告 | 2014
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: organizational structure, organization, structure
組織図1
(2014年末現在)
総務会
理事会
監察審査部2
D.Tang 部長
独立評価局3
V.Thomas 局長
総裁
中尾 武彦
事務総局長
J.Miranda
アジア開発銀行研究所
吉野 直行 所長
副総裁
(知識管理・持続的開発担当)
B.Lohani
副総裁(業務1地域担当)
W.Zhang
副総裁(業務2地域担当)
S.Groff
副総裁(民間部門・協調融資担当)
L.Venkatachalam
副総裁(財務・リスク管理担当)
T.de Longuemar
副総裁(総務・組織運営担当)
B.Davis
オンブズパーソン部
N.Diehl オンブズパーソン
地域経済統合室4
(空席)
南アジア局
H.Kim 局長
東アジア局
小西 歩 局長
民間部門業務局
T.Freeland 局長
リスク管理部
山脇 光洋 部長
官房
W.Um 官房長
監査部
H.Ong 監査部長
地域・持続的開発局
C.Locsin 局長
バングラデシュ駐在員事務所
樋口 和彦 所長
中国駐在員事務所
H.Sharif 所長
協調融資業務部
R.Stroem 部長
会計局
C.Kim コントローラー
総務部
H.J.Yu 主任ディレクター
汚職防止・公正管理部
C.Wee 部長
経済調査局
S.Wei チーフエコノミスト
インド駐在員事務所
T.Kho 所長
モンゴル駐在員事務所
R.Schoellhammer 所長
財務局
(空席)
法務部
C.Stephens 部長
官民連携部
加賀 隆一 部長
情報システム技術部
S.Venkataraman
主任ディレクター
特別案件促進部
J.Shah 特別案件ファシリテーター
ネパール駐在員事務所
横山 謙一 所長
スリランカ駐在員事務所
S.Widowati 所長
東南アジア局
J.Nugent 局長
カンボジア駐在員事務所
E.Sidgwick所長
中央・西アジア局
K.Gerhaeusser 局長
インドネシア駐在員事務所
A.Ruthenberg所長
アフガニスタン駐在員事務所
T.Panella所長
ラオス駐在員事務所
S.Nicoll所長
アルメニア駐在員事務所
D.Dole 代表
ミャンマー駐在員事務所
W.Wicklein所長
アゼルバイジャン駐在員事務所
O.Norojono 代表
フィリピン事務所
R.Bolt所長
駐日代表事務所
玉置 知己 代表
ジョージア駐在員事務所
K.Julian 代表
タイ駐在員事務所
根岸 靖 所長
米代表事務所
C.Steffensen 代表
カザフスタン駐在員事務所
J.Yang 所長
ベトナム駐在員事務所
木村 知之 所長
広報局
S.Bindra 主任ディレクター
戦略・政策局(空席)
欧州代表事務所
N.Chakwin 代表
キルギス駐在員事務所
平岡 理恵 所長
パキスタン駐在員事務所
W.Liepach 所長
タジキスタン駐在員事務所
C.C.Yu 所長
トルクメニスタン駐在員事務所
P.Bozakov 代表
ウズベキスタン駐在員事務所
小西 健夫 所長
予算・人事・経営システム局
神崎 康史 局長
業務サービス・財務管理局
S.O’Sullivan 局長
太平洋局
X.Yao 局長
太平洋連絡調整事務所
A.Iffland 地域ディレクター
太平洋地域事務所
R.Jauncey 地域ディレクター
パプアニューギニア駐在員事務所
M.Minc 所長
東ティモール駐在員事務所
S.Rosenthal 代表
1 経営陣および幹部職員の連絡先はhttp://www.adb.org/contacts/management-senior-staffを参照。
2 監察審査部は理事会に報告を行う。
3 独立評価局は開発効果委員会を通じて理事会に報告を行う。
4 2015年1月1日より、経済調査局と地域経済統合室の一部が統合され、経済調査・地域協力局となる。
組織図
59
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: representation, members
加盟国別経営陣および職員数
(2014年末現在)
加盟国
域内
アフガニスタン
アルメニア
オーストラリア
アゼルバイジャン
バングラデシュ
ブータン
ブルネイ
カンボジア
中国
クック諸島
フィジー
ジョージア
香港(中国)
インド
インドネシア
日本
カザフスタン
キリバス
韓国
キルギス
ラオス
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
ニュージーランド
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スリランカ
台湾
タジキスタン
タイ
東ティモール
トンガ
トルクメニスタン
ツバル
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
小計
60
経営陣
国際職員
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
1
65
0
7
3
1
1
62
0
4
1
3
79
33
151
7
1
50
8
2
22
1
0
0
2
2
0
10
18
32
0
1
42
3
9
0
13
5
2
7
0
2
0
0
11
0
10
671
現地職員/事務職員
19
6
8
6
49
2
0
26
51
0
16
6
0
64
40
4
10
0
1
11
20
0
0
0
0
16
5
0
36
0
37
0
11
1,345
0
0
0
33
0
14
11
5
1
4
1
15
0
38
1,911
合計
19
7
74
6
56
5
1
27
114
0
20
7
3
144
73
156
17
1
51
19
22
22
1
0
0
18
7
0
47
18
69
0
12
1,387
3
9
0
46
5
16
18
5
3
4
1
26
0
48
2,587
ADB 年次報告 | 2014
続き
加盟国
域外
オーストリア
ベルギー
カナダ
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
アイルランド
イタリア
ルクセンブルク
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
トルコ
英国
米国
小計
合計
加盟国別経営陣および職員数
経営陣
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
7
国際職員
9
5
46
6
4
29
41
4
19
1
15
2
4
16
6
4
3
43
146
403
1,074
現地職員/事務職員
0
0
0
0
0
0
2
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
5
1,916
合計
9
5
46
6
4
30
43
5
19
1
15
2
4
16
6
4
3
43
149
410
2,997
61
年次報告2014
www.adb.org/ar2014
Keywords: resident mission, staffing, field office
駐在員事務所の定員数a(2014年末現在)
国
I.業務1地域
南アジア
バングラデシュ
ブータン
インド
ネパール
スリランカ
中央・西アジア
アフガニスタン
アルメニア
アゼルバイジャン
ジョージア
カザフスタン
キルギス
パキスタン
タジキスタン
トルコ
トルクメニスタン
ウズベキスタン
II.業務2地域
東アジア
中国
モンゴル
東南アジア
カンボジア
インドネシア
ラオス
ミャンマー
フィリピン
タイ
ベトナム
太平洋
太平洋連絡調整事務所(オーストラリア・シドニー)b
太平洋地域事務所(フィジー・スヴァ)c
パプアニューギニア
東ティモール
小計
代表事務所
欧州
日本
北米
小計
本部d
総計
国際職員
事務職員
合計
21
1
31
17
15
25
1
32
16
14
55
2
78
39
33
11
2
2
2
6
7
17
10
1
6
11
4
4
4
7
5
20
4
1
3
9
1
8
28
8
7
7
17
14
43
16
1
5
23
13
5
27
8
22
7
62
20
6
11
4
6
4
7
13
10
18
10
4
5
6
19
11
15
10
2
4
5
16
27
44
24
12
13
18
48
5
5
4
3
151
6
8
4
4
286
5
11
7
2
271
16
24
15
9
708
2
2
2
6
1
1
1
3
2
2
2
6
5
5
5
15
917
471
957
2,345
1,074
760
1,234
3,068
9
15
6
4
6
2
1
1
4
2
6
2
現地職員
a 本部からの出向ポストを含む。
b ナウル、ソロモン諸島およびバヌアツを管轄。
c クック諸島、フィジー、キリバス、サモア、トンガおよびツバルを管轄。
d ヤング・プロフェッショナルおよび理事会を除く。
62
ADB 年次報告 | 2014
謝辞
理事会「年次報告 2014」作業グループ
Richard Sisson(委員長)、福島秀生、Gaudencio Hernandez,
Jr. 、Réne Legrand、Michael Strauss、Wenxing Pan *
* 2014 年 12 月 2 日に Guoxi Wu 理事代理と交替
理事会「年次報告 2014」作業グループは、ADB のすべての部局
と事務所による本報告書への多大な協力に謝意を表する。
表紙写真について:ADB がインドの大手香辛料メーカーに対し、
生産・市場拡大のために提供した 1,650 万ドルの融資により、
同国の唐辛子農家は恩恵を受ける。(著作権者:Rakesh Sahai
/アジア開発銀行)
本書では、用いられるデータの正確性の確保に全力を尽くして
いる。アジア開発銀行(ADB)の出版物におけるデータは、出
版時期の違い、データ情報源、解釈等により差異が生じること
もある。データの使用において生じる結果について、ADB は一
切責任を負わない。
本書において特定の領域または地域に何らかの呼称をつけ、も
しくは言及し、または「国」という言葉を使うことがあっても、
ADB はそれをもって領域または地域の法的その他の地位につい
て何らかの判断を下すことを意図していない。
本書で「$」または「ドル」という場合には米ドルを指す。
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年次報告
アジア開発銀行
年次報告2014は再生紙に植物油ベースのインクを用いて
印刷されている。
「アジア・太平洋地域は急速に変化しています。
ADB も変化しなければなりません。」
ADB 総裁 中尾 武彦
(2014 年 5 月にカザフスタンのアスタナで開催された ADB 第 47 回年次総会にて)