p02-03 特集「そこにいるんだね “命の花”となって」.

第2章
全国で1日224頭殺処分
2 0 15 年 度 の 環 境 省 の 統
計によると、全国の動物愛護
センターに引き取られた犬と
猫は約
% 、猫
性を磨き、考え方を深めてい
自分たちなりに命に対する感
たちはこの命の活動を通して、
それぞれ違うのは当然。生徒
なりません。命の捉え方は人
命と向き合い、命を考える
万6 千 頭 。 そ の う ち 、
﹁命の花プロジェクト﹂を
授業の一環で行い、〝殺処分
引き取られた犬の約
る三本木農業高校︵以下﹁三
くのだと思います﹂と穏やか
ゼロ社会″を目指して活動す
たり、新しい飼い主に譲渡さ
本木農高﹂︶を訪ね、瀧口孝
% は飼い主に返還され
れたりしていますが、残りは
さに、大きな衝撃を受けまし
と出会い、生徒の発想の豊か
﹁20 14 年に本校に赴任
して〝命の花プロジェクト〟
ことを真摯に受けとめながら
ただくことも現実です。その
間の反響は大きく、批判をい
最後に瀧口校長は﹁〝命の
花プロジェクト〟に対する世
に語ります。
之校長にお話を聞きました。
た﹂と振り返ります。
う努めています。同センター
に新しい飼い主に譲渡するよ
で言い合える関係を築いてい
神にあふれ、先生方とも本音
瀧口校長の自慢は生徒。
﹁明るく元気でチャレンジ精
機会となれば⋮﹂と、今後の
さに気づき、再認識するよい
ジェクトを通して、命の大切
も、それ以上に本校のプロ
年度まで
年度から
活動に期待を込めながら、プ
の間、犬や猫の殺処分は
では、
ます﹂と話し、続けて﹁生徒
ロジェクトの意義を強調して
ピー推進事業による癒しの効
の大切さと、アニマルセラ
また、同センターでは、動
物とのふれあい事業による命
1 2 40 頭 と な っ て い ま す 。
物〟と接して学ぶこと、それ
と向き合っています。〝本
たちは、常に植物や動物の命
成長につながるのです。生徒
教室での授業に加え、実体験
% 減って、
果を体験してもらうため、園
が、まさに〝命の授業〟で
20 35 頭 か ら 約
児や、児童・生徒、社会福祉
す﹂と胸を張ります。
土に還らせたい
この見学を機に、愛玩動物
研究室が動き出します。
﹁私たちは生きている以上、
命と向き合っていかなければ
を通して得るものが、大きな
施設利用者を対象に活動を展
開するなど、動物の幸せのた
めの愛護事業を行っています。
かなどを調べます。検査に合
格した動物は、ホームページ
に掲載して新しい飼い主を募
り、譲渡されます。しかし、
県動物愛護センターを見学
した次の日、生徒たちは﹁骨
学校で話し合い、研究室の赤
かしい。せめて土に還らせて
態を見て、言葉を失いました。
坂先生に相談します。すると、
飼い主が現れなかったり、検
査に不合格だった動物は殺処
あげることができないか﹂と
がごみになるなんて絶対にお
分され、焼却されます。
生徒たちは職員からその話
を聞き、実際に管理施設の実
生徒の胸には、殺処分にやり
赤坂先生が言いました。﹁骨
ない一言が生徒たちの心を動
があるぞ﹂。赤坂先生の何気
が肥料になるって聞いたこと
場のない怒りがこみ上げてい
ました。
胸に刻まれた犬や猫の姿
生徒の一人が言いました。
﹁名前は〝命の花〟なんてど
かしました。
いくつもの袋を見ました。そ
う?﹂と。このアイデアで
見学の最後に、焼却炉の裏
に移動して、積み上げられた
の中に入っているのは、焼却
﹁命の花プロジェクト﹂が誕
しい花﹂
向井愛実著﹁命の花﹂、瀧
晴巳著﹁世界でいちばんかな
︵参考︶
生しました。
されたたくさんの犬や猫の骨
だと説明を受けました。
動物の骨は事業系一般廃棄
物、いわゆるごみとして廃棄
されるのだそうです。
﹁センターに集められた犬
や猫は、まだ生きたいのに、
人間の勝手な理由で命を奪わ
れ、ごみとして処分されるな
るだろうか。絶対にこのまま
んて、こんな理不尽な事があ
容されていました。同セン
終わらせることはできない﹂
いました。
は農場で育つと信じています。
し、飼い主に返還するととも
をインターネットなどで公開
青森県動物愛護センターで
は、保護された犬や猫の写真
たります。
頭。1 日平均約224 頭にあ
で の 殺 処 分 数 は 、 約8 万 2 千
殺処分されています。同統計
の約
64
という気持ちが、生徒一人一
瀧口 孝之 校長
26
ターに連れて来られた動物は、
動。檻の中には数匹の犬が収
明を受けた後、管理施設へ移
生徒たちはセンター職員か
ら本体施設の概要と事業の説
処分も行う施設でした。
の、行き先のない犬や猫の殺
い飼い主を募ってはいるもの
どを保護するところで、新し
えなくなった県内の犬や猫な
同センターは、動物の愛護
事業のほか、人間の都合で飼
ことでした。
ンターに見学に行ったときの
森市にある青森県動物愛護セ
習 す る た め 、20 1 2 年 に 青
科学科で動物の命の尊さを学
﹁命の花プロジェクト﹂の
きっかけとなったのは、動物
やり場のない怒り
誕生
第1章
健康診断と性格診断をして、
青森県立三本木農業高校
15
39
2
2016年(平成28年)12月号 広報
3 広報 2016年(平成28年)12月号
安田 凛
赤坂 圭一
13
13
人の胸に深く刻まれました。
インタビュー
まだ生きたいのに
写真は三本木農業高校の愛犬「エル」
青森県立三本木農業高校
1898(明治31)年「青森県農学校」として創立、2018年度には創
立120周年を迎える。約52ヘクタール、東京ドーム11個分の広大な敷
地が特徴の農業高校。植物科学科、動物科学科、農業機械科、環境土
木科、農業経済科、生活科学科の6学科があり約600人の生徒が在籍。
農場での実習や全校田植えなど独自の取り組みを行っている。 同校では2008年に映画化された「三本木農業高校、馬術部 ∼盲目
の馬と少女の実話∼」に続いて、“命の花プロジェクト”の取り組み
が映画化される予定。
県動物愛護センターに見学
に行き、殺処分場にいる動物
たち、殺処分された動物たち
に何かしてあげたいと思いま
した。プロジェクトを行うこ
とに、迷いはものすごくあり
ましたが、赤坂先生はとても
力になってくださいましたし、
仲間同士でも「みんなで頑張
ろう、動物たちのためにも」
命の花プロジェクト1期生
と団結して頑張りました。
このプロジェクトを受け継
さん
いでいくには覚悟が必要だと
思います。だから、後輩たちにはとても感謝していま
す。プロジェクトが大きくなればなるほど賛否両論も
大きくなると思いますが、“殺処分ゼロ社会の実現”
という目標に向かって頑張ってほしいです。
愛玩動物研究室の研究テーマを
考える時に、殺処分の現状を数値
では理解していても、現実に捉え
ることは難しいと思い、県動物愛
護センターの見学を始めました。
センターの方々も獣医師であり
ながら、殺処分を行わなければな
らないという現実を知った生徒た
ちは「自分自身に何ができるの
か」と考えます。そして、始まっ
名久井農業高校教諭
たのがこのプロジェクトです。
(前三本木農高)
私にとって“命の花”とは、殺
処分された動物たちの声を代弁す
教諭
ることができる存在です。この花
は、動物たちの生まれ変わりだと思っています。
「殺処分をなくしたい」という生徒たちの純粋な思いで
始まったこの活動を、日本中に届けてほしいと思います。
プロジェクトを実行する覚悟
生徒たちの純粋な思いを日本中に
命の花 となって」
病気がないか、噛み癖がない
県動物愛護センターに向かう生徒たち
特集「そこにいるんだね
命の花
特集「そこにいるんだね 命の花 となって」