2. 信用リスク 1.信用リスク管理体制 2.エクスポージャー(与信額)管理 3

2. 信用リスク
信用リスクとは、
「信用供与先の財務状況の悪化等により、資産(オフバランス資産を含む)の価値が減少ないし消
失し、金融機関が損失を被るリスク」
と定義しています。銀行業務の根幹である信用創造機能に伴うリスクであり、金
融の本質に係るもっとも基本的なリスクと言えます。当社は、案件審査や自己査定を通じた個別管理に加えて、ポート
フォリオ管理により集中リスクを排除する等、与信管理に万全の配慮を払う一方、
リスク量計測を通じて効率的かつ
適切な資本配分をめざしています。
1.信用リスク管理体制
当社では、関係機関・部門の有機的な結び付きにより、相互サポートならびにチェックの働く管理体制を構築しています。
具体的には、取締役会、投融資審議会が策定した与信方針・信用リスク管理方針のもとで、
① 営業店部は、適切な貸出運営および自己査定(第一次査定)の実施
② 審査部門は、厳正な審査および営業店部への適切な指導と自己査定(第二次査定)の実施
③ 調査部門は、営業店や審査部とは独立した客観的な立場からの産業調査・信用調査ならびに定量的分析等に
基づく信用格付の実施
④ 審査部門・調査部門のいずれからも独立したリスク管理部は、信用リスク量の計測・モニタリング等ポートフォ
リオ管理および信用格付や自己査定の監査を実施
といった、それぞれの役割が万全に機能するような組織となっています。
2.エクスポージャー(与信額)管理
信用供与先毎および信用供与先の企業グループ毎のエクスポージャー
(与信額)の把握を信用リスク管理の原点
として、貸出やオフバランスなどの取引の種類にかかわりなく総合的に一元管理しています。オフバランス取引につい
ても、カレント・エクスポージャー
(当該取引の再構築コスト)
によるモニタリングを実施しています。
また、カントリーリスクへの対策として、信用供与先毎のエクスポージャー管理とは別に国別エクスポージャー
(各信用
供与先所在国毎にエクスポージャーを合計したもの)の管理を行っています。
3.社内格付および自己査定
個別与信判断や与信ポートフォリオ管理の基礎データとして、
信用格付を行っています。信用格付は信用供与先の信用状況
を段階的に表現したものですが、当社の信用格付制度は、実
自己査定
債務者格付
債務者区分
分類区分
正常先
非分類
1
2
績データに基づく統計的手法も用いる等、客観性を保持する
3
一方で、銀行を含む全ての法人信用供与先のほか、海外プロ
4
ジェクトファイナンスやストラクチャードファイナンス
(仕組み金融)
5
を含む極めて広い格付対象先に対して、ランク1からランク10
6
までの信用格付を実施しています。
7
要注意先
8
格付とならんで、毎期自己査定を行い、必要な償却および
引当を実施し与信ポートフォリオの健全性を維持しています。
格付と自己査定の両制度は、取引先の信用力を適切に反映
するような整合を保ちながら円滑に運営しています。
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9
破綻懸念先
10
実質破綻・破綻先
(注)債務者格付は必要に応じてさらに細分して(「+」
「−」を
付して)使用しています。
4.リスク・リターンの適正化
業
績
ハ
イ
ラ
イ
ト
経営体質の維持向上のために、与信ポートフォリオの分散化とともに、
リスクに見合ったスプレッド確保に努めてい
ます。信用格付毎の経費率や予想損失率等を勘案した収益水準を測定して個別案件の取引条件に反映させること
により、
リスクを意識した採算管理を行っています。
5.信用リスクの計量化
社
長
メ
ッ
セ
ー
ジ
■信用リスク量
当社の信用リスク量計測は、向こう1年間に銀行の資
産がどれだけ貸倒による損失を被る可能性があるかを
平均値
最大値
量的に把握するものです。格付別デフォルト
(債務不履
行)率や回収率等のデータをもとに、
1万回のシミュレー
ションを行い、最大予想貸倒損失額と予想貸倒損失額
の期待値(平均)の差額を算出しています。
こうして計測された信用リスク量は与信事業を担当す
当
社
経
営
戦
略
計測値
発
生
頻
度
る事業部門への資本配分の基礎となるものであり、国
内・海外を含めた当社全体の与信ポートフォリオの信用
ト
ピ
ッ
ク
ス
リスク量を定期的にモニタリングすることで資本配分の
適切さや事業運営の健全さをチェックすることができま
す。モニタリング結果は定期的に取締役会や投融資審
議会に報告しています。
小
予想貸倒損失
大
計測は通常過去のヒストリカルデータをもとに将来予想もおり込んだ前提で行われますが、その一方で、その前提と
事
業
部
門
かけ離れた事態を想定しシミュレーションを行うことはリスク把握を補完するものとして重要です。これがストレス・テス
トと呼ばれるものですが、当社ではいくつかのストレス・シナリオを設定して、それぞれの場合にリスク量がどうなるの
か、シミュレーションを行い、その結果も経営陣に対して直接報告しています。
信用リスク計量化の成果を活かしつつ、与信ポートフォリオ運営にあたっては、分散化等によりリスク量を一定範囲内
に保ちつつ、ポートフォリオ全体の収益を最大化することをめざしています。さらに信用リスク量の測定・把握の高度化の
ために、デフォルト率や回収率等の基礎データの整備やより精度の高い信用リスク計測手法の開発を進めています。
3. 市場リスク・流動性リスク
市場リスクとは、市場要因の変動により当社が保有する資産や負債の価値が変動し損失を被るリスクを言います。
デ
ィ
レ
ク
ト
リ
ー
流動性リスクとは、必要な資金調達ができなくなるリスクと、迅速かつ適切な価格で取引ができなくなるリスクを言い
ます。
1.リスク管理体制
市場リスクについては、取締役会において、半期に一度、経営体力やリスク・リターン等を総合的に勘案し資本配分
資
料
編
を決定しています。また、市場リスク・流動性リスクの管理・運営については、機動的かつ迅速な意思決定を行うため
に、取締役をメンバーとしたALM審議会を設置し、市場環境と業務環境の動向を踏まえた資産・負債構成の健全化
と収益の安定化に取り組み、連結ベースの市場リスク・流動性リスクのコントロールを実施しています。
リスク運営状況に対しては分析・評価が行われ、四半期毎に取締役会に報告しています。
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〔リスク管理の過程〕
ALM審議会では、市場リスクへの資本配分内において、目的別・リスクカテゴリー別・ポジション別にリスクリミッ
ト、ロスリミットなど市場リスクの運営・管理に関する基本方針を決定しています。
また、流動性リスクについては、当社の資金繰りにおける日々のギャップ額について上限を設定し、日次で管理
を行うとともに、運用予定額と調達可能額を把握したうえでガイドラインを設定し、将来の資金繰りが適正に行われ
るようにモニタリングを実施する等の基本方針を決定しています。その他、緊急時に備えた対応プランも策定する
等流動性リスクの管理に万全を期しています。
これらの基本方針のもと、独立したミドルオフィスであるリスク管理部が市場リスク・流動性リスクおよび損益の計
測・集計を行い、合わせてリスクリミットおよびロスリミットの遵守状況を直接経営陣に報告しています。
このようなリスク管理体制を実効性あるものとするため、
ミドルオフィス、後方事務部門(バックオフィス)および市
場性取引部門(フロントオフィス)間において相互牽制体制を確立しています。また、業務監査部による監査・検査
の実施に加えて、外部監査人による定期的監査を受けており、万全のリスク管理体制を構築・維持しています。
■市場リスク・流動性リスクの管理体制
取締役会
経営会議
●リスク管理の基本方針の決定
●市場リスク量の決定
●リスク管理運営状況の監督
リスク量の配分
ALM審議会
●リスク量・損益状況の報告
バックオフィス
取引内容照合
フロントオフィス
リスク量・損益状況のモニタリング
牽制
ミドルオフィス
牽制
運営状況の検査
業務監査部
2.市場リスクの管理方法
市場リスクの把握にはVaR
(Value at Risk)
を用いています。VaRとは過去の市場変動実績から、一定の条件のも
とでの将来起りうる最大損失額を統計的に予測する手法です。当社では、VaR計測のための市場リスク管理システ
ムを導入しています。このシステムによりVaR計測の他、さまざまなリスク管理指標の算出やシミュレーションの実施が
可能であり、システムに裏付けられた高度な市場リスク管理体制となっています。なお、市場リスク管理システムによる
当社のVaR算出は分散・共分散法を基本に、一部、オプション取引のリスク
(非線型リスク)の計測についてはヒストリ
カル・シミュレーション法を併用しています。
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3.市場リスクの状況
平成12年度のトレーディング業務の市場リスクの状況
業
績
ハ
イ
ラ
イ
ト
■平成12年度の市場リスクの状況
(VaR:信頼区間99%、保有期間1日、観測期間1年 単位:億円)
は、右記の通りとなっています。
最 大
最 小
平 均
金利リスク
4.6
1.0
2.2
為替リスク
4.8
0.8
1.9
連結ベースVaR
7.3
2.4
4.4
社
長
メ
ッ
セ
ー
ジ
4.ストレス・テスト
当社は、予想される変動を超えた事態を想定し、そのシミュレーションを行うことも、VaRによる市場リスクの把握を
補完するものとして重要であると認識しています。リスク管理部では、市場の変化、ポートフォリオの変化に応じて定期
的に見直した複数のストレス・シナリオに基づき適切にストレス・テストを実施し、その結果を経営陣に対して直接報告
当
社
経
営
戦
略
しています。
5.バック・テスティング
当社のリスク計測モデルの正確性を検証
するために、日々算出したVaRと日々の実際
の損益あるいはポートフォリオを固定した仮
想損益とを比較する方法により、バック・テ
■ バック・テスティングの状況(連結ベース、トレーディング業務)
ト
ピ
ッ
ク
ス
損益前日比(単位:億円)
9.
0
6.
0
スティングを実施しています。平成12年度に
おけるトレーディング業務のテスト結果につ
3.
0
事
業
部
門
いては、右記の通り、実際の損益がVaRを
超えた事例は発生せず、これは即ち当社の
0.
0
3.
0
6.
0
9.
0
リスク計測モデルが十分な精度を保ってい
ることを表しています。
-3.
0
-6.
0
-9.
0
VaR(1日,
99%)
(単位:億円)
6.政策投資株式リスク管理
市場性取引部門以外が保有する政策投資株式についても、通常の市場業務とは性格を異にするものの、市場リス
デ
ィ
レ
ク
ト
リ
ー
クを負担する取引であることを認識し、将来の株価変動リスクを管理する必要があります。
当社は、市場リスク管理システムを通じて政策投資株式リスクを把握し、多面的なポートフォリオ分析、市場流動性
リスクの検証等を通じて、総合的な観点からリスク・リターン状況が妥当であるか、また当社の経営体力に対して適正
なリスク負担であるか等を勘案しながら、政策投資株式リスクのマネージ
(管理)
を行っています。
資
料
編
7.決済リスク
決済リスクは信用リスクと流動性リスクの二面性を有する点を踏まえつつ、それぞれのフレームワークの中でリスクの
把握に努めています。さらに、外為決済リスクについては、主要通貨を対象とした外為決済専門銀行であるCLS 銀行
(Continuous Linked Settlement Bank)への参加を通じてリスクの削減を進めていく方針です。
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