韓国の競技スポーツ政策とセカンドキャリア問題

韓国の競技スポーツ政策とセカンドキャリア問題
朱
成鐸(慶熙大学校 体育大学)
吉田
章(筑波大学)
序 論
韓国のエリートスポーツ(競技スポーツ)の育成政策と支援現況を調べるために、第一にエリ
ートスポーツ政策の変遷、第二に優秀選手発掘及び育成体系、第三に国際競技力向上のための
訓練施設、第四にスポーツ科学の支援、第五に体育• スポーツ振興の予算などを中心に紹介す
る。そして、国家代表引退選手の支援体系の現況及び問題点を考察し、今後に向けての国家代
表引退選手の進路強化における発展方向及び改善点を中心に論じることにする。
1.韓国スポーツ政策における競技力向上
1) 韓国のエリートスポーツ政策の変遷
韓国の体育• スポーツ政策は、国民体育進興法(1962 年)が制定されることによって始まり、
主にエリートスポーツを中心に行われてきた。このような政策の流れは、ソウルアジア大会
(1986 年)とソウルオリンピック(1988 年)の開催が確定されてから加速化した。
1993 年には、第 1 次国民体育振興 5 ヶ年計画を樹立し、エリートスポーツの持続的な育成な
どを通じてエリートスポーツを発展させようとした。そして、1998 年に樹立された第 2 次国民
体育振 5 ヶ年計画では、生活体育と専門体育(エリートスポーツ)の連携強化、国際スポーツの
舞台での上位圏競技力維持など、エリートスポーツ発展の目標を揚げていた。2003 年に樹立さ
れた第 3 次国民体育振興計画の主要政策課題は、科学的な訓練支援を通じた専門体育の競技力
向上であった。
李明博政府(2008 年~2013 年)で発表された、体育• スポーツ部分の主要な政策課題(文化ビ
ジョン 2008~2012)の中で提示されたエリートスポーツ政策の方向は、主として国際競争力の強
化であって、2012 年ロンドンオリンピックに備えての国家代表選手の体系的な養成及び訓練の
科学化、優秀選手支援の拡大及び育成システム強化、非人気種目の活性化、スポーツの科学化
及び情報支援システムの構築、陸上競技振興のための計画、エリートスポーツ施設の拡充を通
した訓練条件改善のような主要政策課題などが揚げられた(表 1 参照)。
特に、1988 年のソウルオリンピックでは、総合 4 位(金 12 個、銀 10 個、銅 11 個 )の成績
をあげ、以後 2012 年のロンドンオリンピックでは、総合 5 位(金 13 個、銀 8 個、銅 7 個)の
成績をおさめた。このような結果を出したことは、政府のエリートスポーツに対する関心と体
系的な支援策を推進した結果であると言える。
韓国のエリートスポーツ政策は、主に優れた素質を有する選手の発掘及び育成体系に関する
政策と、エリートスポーツを管理する組職の競争力を強化する次元から推進している。特に、
スポーツ科学化を通した競技力向上、訓練施設支援を通した環境条件の造成などを推進させて
来たが、学校体育、生活体育、専門体育(エリートスポーツ)の間に断絶された結果をもたらし
た。その結果、学校において生徒の権利、とりわけ学生運動選手たちの学習権を侵害する問題、
さらに引退後の選手たちの福祉及び職業に対する多様な問題点に囲まれるようになった。
1
表 1.韓国のエリートスポーツ政策の変遷(体育百書、2011)
政策課題
推進内容
第 1 次国民体育振興
5 ヶ年計画
(1993~1997)
エリートスポーツの持続的な育
成
第 2 次国民体育振興
5 ヶ年計画
(1998~2002)
世界上位圏の競技力の維持及び
生活体育と専門体育(エリートス
ポーツ)の連携強化
第 3 次国民体育振興
5 ヶ年計画
(2003~2007)
科学的な訓練支援を通じる専門
体育(エリートスポーツ)の競技
力向上
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
▫
文化ビジョン
(2008~2012)
専門体育(エリートスポーツ)国
際競争力の強化
▫
▫
▫
▫
▫
▫
※
優秀選手の科学的•体系的な養成
国内競技大会の運営の改善
優秀競技指導者の養成
体育人福祉向上及び体育団体の自律性の向上
選手発掘及び育成体系の専門性の補強
競技団体の自律性向上および体育人の福祉向上
競技大会の運営の合理化
国家代表訓練施設の拡充
優秀選手の発掘及び育成
専門体育施設の多機能化、現代化
体育特技者制度改善など学校体育活性化への支
援
専門体育団体の自律性及び財政自立度の強化
スポーツクラブ育成を通じた生活体育と専門体
育間の均衡的な発展
2012 年ロンドンオリンピックに備えた国家代表
選手の体系的な養成及び科学的訓練
優秀選手の発掘及び育成システムの強化
非人気種目の活性化
スポーツの科学及び情報支援システムの構築
陸上競技振興の推進計画への移行
エリート体育• スポーツ施設拡充を通じた訓練
条件の改善
資料:体育百書(2011)からエリートスポーツ政策変遷に関する資料整理(p.64-72)。
2) 優秀選手の発掘及び育成体系
韓国のエリート選手育成システムを一口で言えば、‘選択’と‘集中’と言える。その理由
は、限定された資源の中から大きい成果を得るため、オリンピックあるいは国際大会でメダル
を得られる種目を選び、集中的に優秀な成績を持っている選手たちを早期選抜して集中的に支
援しているからである。
エリート選手育成システムは、kkumnamu(有望な人)-青少年代表-国家代表候補選手-国家代表
で構成されている。1993 年から‘新人選手発掘事業’が始まった。この事業は、2002 年から
kkumnamu(有望な人)選手制度に改編された。 kkumnamu(有望な人)選手選抜の種目別で市• 道か
ら推薦を受けた者を対象として、体格(30%∼ 50%)、体力(30%∼ 40%)、競技力(20%∼ 30%)の 3 種
の要因を測定して点数化した評価結果及び特性不安と集中力などの心理検査結果を合算して種
目別選抜委員会で最終的に選抜する。
この kkumnamu(有望な人)選抜を通じて 2011 年には 8 種目 753 人を測定• 評価し、最終的に
370 人を選抜した。1993 年の選抜基準は、すべての種目の基本になり他種目選手への波及効果
が大きいと認められる 3 種目(陸上、体操、スイミング)を対象で実施されたが、2003 年には、
冬季オリンピックを備えて氷上種目とスキー種目が追加された。
また 2008 年には、ハンドボール、卓球、柔道が追加され、全体 8 種目で kkumnamu(有望
な人)制度が運営されている。青少年代表選手制度は、選手供給体系の細分化及び体系化のため
2
に導入され、14 歳から 19 歳までの非人気種目 15 種目の選手を中心に国内外大会の入賞成績、
記録、成長可能性などを考慮して選抜している。 国家代表候補選手育成は、優秀な人材を早期
育成• 管理し、優秀選手の資源の供給を円滑にして国家代表選手との相互競争を通じて競技力
向上や代表選手の欠員時に対応するなど、国家代表選手の運営管理及び支援を目的としている。
夏季種目は 24 種目の選手を対象として選抜し、冬季種目は 4 種目(氷上、スキー、アイス・ホ
ッケー、バイアスロン)の選手を選抜し、冬季、夏季合宿訓練、国外転地訓練などを支援してい
る。
最後に、国家代表選手制度は、国際大会の優秀な成果を通じて国外に宣揚することと、国民
統合に寄与することを目的としている。国家代表選手は、国外転地訓練、外国人コーチの招聘、
リーダー海外研修などを通して競技力向上を図るための体育科学研究院などを通じた科学的な
支援を受け、主要国際競技大会に備えている。競技力向上のために選手村で集中訓練を実施し、
それ以外にも選手たちが安定的な環境で訓練及び競技に参加することができるように、多様な
支援を受けている(L,Y. 2010、体育百書、2011)。
このような選手育成システムを通じて選手一人ひとりの能力を向上させ、これを通してエリ
ートスポーツの競争力を強化している。しかしエリート選手育成システムは、選手供給形態の
間に連係性がない。いまだに優秀選手の養成システムは画一的になっている。したがって選手
供給の多様化及び育成システムを有機的に連係させ、選手強化育成のための一貫指導体制の構
築及び選手選抜と訓練プログラムをより具体的で制度的なシステムとすることを必要としてい
る。
3) 国際競技力向上のための訓練施設現況
韓国の体育• スポーツ施設造成政策は、導入初期から 1950 年代まで民間が中心的な役割を遂
行してきた。1960 年代からは国民体育進興法が制定され、体育• スポーツ施設は政府の政策を
中心に展開されてきた(体育百書、2011)。エリート選手訓練施設は、泰陵トレーニングセンタ
ー(1966)、太白トレーニングセンター(1997)、鎭川トレーニングセンター(2011)、茂朱トレー
ニングセンター(1997 年から工事中)、利川パラスポーツトレーニングセンター(2009、10)など
があり、中でも泰陵トレーニングセンターは、全体で 42 種目の入村が可能で、21 種目の訓練場
が整えてあり、500 人の選手を収容できる国内最大規模の訓練施設と評価されている。また、太
白トレーニングセンター(1998 開村)は、国家代表選手の高地帯適応訓練、肺機能強化及び持久
力増強をさせるためのトレーニング施設として設置された。鎭川トレーニングセンターは、陸
上とスイミング、射撃、バスケットボール、野球、漕艇など 12 種目の訓練場があり、2017 年ま
でに 3,300 億ウォンを投入して 2 段階造成事業を推進している。2 段階造成事業が完了すると、
全体で 37 種目の選手 1,115 人を収容できる。最後に利川パラスポーツトレーニングセンターは、
卓球、スイミング、車椅子バスケットボール, 車椅子ラグビーなど 14 種目を同時に訓練できる
施設などが整備されている(大韓体育会 HP)。
3
4) スポーツ科学の支援
エリートスポーツ発展のための科学的な訓練の支援は、国民体育振興公団の体育科学研究院
(1980 年設置)によって行われている。体育科学研究院は、スポーツ政策のシンクタンクとして
の研究開発事業、エリートスポーツ選手のための科学的な研究、スポーツ産業研究、受託研究
事業などを担当している。このように体育科学研究院は、30 年の間エリートスポーツの競技力
向上のための多くの努力を傾けて来た。特に 2008 年の北京オリンピックでは、重量挙げの張美
蘭(チャン・ミラン)選手とスイミングの朴泰桓(パク・テファン)選手が金メダルを獲得するの
に影響を及ばした(Kim,Y.2011)。そして 2012 年のロンドンオリンピックの射撃でも、スポーツ
心理学的な要素を考慮した訓練方法と競技運営方法などを持ち入れて、金メダル 3 個、銀メダ
ル 2 個、銅メダル 2 個を獲得するのに重要な役割をした(Moon,Y.2012)。また体育科学研究院で
は、メダル獲得可能性が高い種目を選んで担当研究員を配置し、競技力向上に寄与している。
該当の種目を担当する研究員の役割は、協会役員及びリーダーたちとの協議を通じて代表選手
の効果的な訓練と競技能力向上に寄与するよう助言している。
5) 韓国の体育•スポーツ振興予算
体育• スポーツ振興の予算は、中央政府の国庫予算、地方自治体の地方費、国民体育振興基
金で管理運営する国民体育振興基金、大韓体育会及び国民生活体育会などの民間スポーツ団体
から自主的に調達する自主財源から構成されている。
表2に示したスポーツ予算の総額をみると、2003 年度から 2011 までのスポーツ財源は増加傾
向にある。また地方費が最も大きい比重を占めており、次いで国民体育振興基金となっている。
国の予算である文化体育観光部体育局の予算よりも国民体育振興基金が上回っている。
表2
韓国のスポーツ振興財源の構成(2003-2011)
年
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
国庫
1,426
1,093
1,137
1,489
1,812
2,343
2,131
1,529
1,559
(段位: 億ウォン)
国民体育振興基金
1,726
1,526
1,747
2,291
2,367
2,578
3,860
5,295
6,568
地方費
12,847
14,443
16,041
13,835
20,510
24,808
25,949
26,193
25,677
スポーツ団体
601
914
837
1,342
1,266
1,574
2,146
2,327
2,134
合計
16,600
17,976
19,762
18,957
25,955
31,303
34,090
35,344
35,938
*
*
*
国庫:文化体育観光部体育局予算
地方費:市•道及び市•郡•区の一般会計予算
スポーツ団体:大韓体育会、加盟競技団体(中央)の自主財源による予算。国民生活体育会、
市•道•郡•区の生活体育、種目別連合会(中央)の自主財源による予算
出展:文化体育観光部(2011)体育百書 p145
エリートスポーツの予算は、競技力向上のための訓練及び競技施設、宿泊施設などに主に支
援され、エリートスポーツ選手が安定的な環境で運動に専念するように訓練及び競技実績に対
する補償を行っている。ここで、中央政府の国庫予算と国民体育振興基金を中心に調べてみる
4
と、韓国の体育財政の特徴は、第一に政府の予算で占める体育予算の割合が低いことである。
表 3 から見ると、2011 年の全体国家予算の中で体育と係わる予算の占める割合はわずか 0.07%
に過ぎない。第二に年度別政府予算対比の体育予算割合が一定しない。2006 年には政府予算対
比体育予算の割合が 0.10%を占めて小幅増加したが、長期的な観点から見ると財政確保が困難な
状況である。
表 3.政府予算対比体育予算現況
年度
政府予算(A)
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
1,343,704
1,448,076
1,641,435
1,782,797
2,041,000
2,053,312
2,099,303
(段位: 億ウォン)
文化体育部
予算(B)
占有率
(B/A,%)
15,676
1.17
9,644
0.66
12,681
0.77
15,136
0.85
16,579
0.81
18,166
0.88
19,603
0.93
体育部分
予算(C)
占有率
(C/A,%)
1,137
0.08
1,489
0.10
1,812
0.11
2.343
0.13
2.213
0.11
1.529
0.07
1.559
0.07
*文化体育観光部(2011)体育百書 p147
2. 国家代表引退選手支援体系の現況及び問題点
韓国における国家代表引退選手に対する代表的な支援事業では、大韓体育会のスポーツ組織
である人権益センターでの 1)選手経歴管理プログラム、2)引退選手オーダーメード型就業支援
教育、3)転職支援サービスなどがある。そして体育人材育成財団では、引退選手を対象に引退
選手特別教育過程及び海外修士• 博士学位課程を運営している。ここでは特に、国家代表引退
選手に対する代表的な支援政策としての財政的な支援である体育人福祉事業について検討する。
その他にも、国家代表引退選手の有關政策で体育補助講師配置事業、語学教育関連事業を行っ
ている。
1) 大韓体育会の選手経歴管理プログラム(Athlete Career Program)
大韓体育会では、エリートスポーツ選手の引退後進路支援のための‘選手経歴管理プログラ
ム’を Adecco Korea 社(グローバル人力ソリューション企業)と協約を結び(2011.2.10)、選手
経歴管理プログラムを通じて引退選手の経歴開発訓練及び就業を支援している。選手経歴管理
プログラムは、2011 年 4 月から 2012 年 12 月まで 3 ヶ月単位で 7 次にわたって行われた。
a) 目的
IOC(International Olympic Committee)を通して Adecco 社と協約を結び、引退選手の経歴開
発訓練及び就業支援と、選手活動による悩み解決及び引退後の進路相談を願う選手に実質的な
支援を提供することができるサポートシステムを構築することを目的にする。
b) 対象
国家代表及び候補出身引退選手を対象とする。但し、韓国を代表して国際大会への出場経験
がある引退選手も対象に含む。
5
c) 推進根拠
引退選手進路支援事業の推進根拠は、国民体育進興法第 14 条(選手などの保護•育成)と、第
22 条(基金の使用など)及び第 33 条(大韓体育会)を根拠として推進する。
d) 主な教育内容
引退選手たちに対する自分の開発及び経歴開発のための教育、創業・就業のための多様な特
別講義と教育情報の提供及び相談などを行う。特に、引退後の変化管理及び新しい社会適応戦
略、未来職業市場の変化及び労動市場の現況、履歴書の作成、インタビュースキルなどを中心
に教育が行われる。
e) 事業推進と運営方式
大韓体育会が事業を総括し、大韓体育会と協約を締結した Adecco Korea 社が事業を実施して
いる。運営方式は、全体で 3 ヶ月 12 週過程であり、週 1 回 2 時間ずつ7次にわたって教育が実
施された。最初の申請者は 160 人、その中で修了者は僅か 59 人であった。
f)事業に対する問題点
集中訓練方式で養成された国家代表選手たちは、小学校(初等學校)、中学校、高校、大学で
大部分の時間を訓練に集中する。従って、引退後において体育に係わる職業から脱すれば一般
的な職業を持つことが難しいのが現実である。この事業に関しては、運動選手たちに対する経
歴開発プログラム事業として試みたことは肯定的に評価ができる。なお、この事業は 2012 年 12
月に終了した。
2) 大韓体育会の引退選手オーダーメード型就業支援教育
大韓体育会では、選手の引退後の進路支援のために、2012 年から‘引退選手オーダーメード
型就業支援教育’を設け、2012 年 5 月に 1 次選抜を始めて現在 4 次まで進行して来た。
a) 目的
若い時代を運動に専念する過程で、現役以後の就業進路に多くの困難を経験している引退選
手たちのオーダーメード型就業支援教育を一定金額内で、または無料で支援し、特に引退選手
たちの希望進路に対する教育、経歴などについて、自分なりの開発が行われるようオーダーメ
ード型就業支援教育することにその目的を置いている。
b) 対象
1992 年以前に生まれた者、20 才以上で大韓体育会(競技団体)選手登録システム上での確認が
可能な引退選手とする。
c) 推進根拠
国民体育進興法第 33 条(大韓体育会)第 1 項第 5 号‘国家代表引退選手支援事業’の規定を根
拠として推進される。
d) 事業内容
○ スポーツ関連資格証取得の支援
- サポート資格証;運動處方士、スポーツ経営管理士などスポーツ関連資格証
- 教育機関;韓国職業能力開発院(民間資格証)及び韓国産業人力公団(国家公認資格証)な
どに登録されたスポーツ関連資格証発給機関
- 民間資格証機関検索;民間資格情報サービス( http://www.pqi.or.kr)
6
○ 事務実務基本過程支援
- 教育内容;語学(外国語会話、文法など)、O&A(コンピューター活用過程など)
- 教育機関;個人別地域別状況による教育機関の選択
e)
事業推進と運営方式
○ 委託教育形式で進行
○ スポーツ関連資格証取得及び事務実務基本過程において、1 人 60 万ウォン内で教育費全額
支援
○ 教育過程受講後に、領収証と 80%以上の出席証明書を提出した時点で、体育会から教育費
還給を受けることができる。
3) 大韓体育会の転職支援サービス(転職支援センター連携サービス)
大韓体育会では、選手たちが転職支援サービスから簡単に情報を得られるように、就業教育
の一環で引退選手支援ポトルに転職支援サービスを連係させている。
a)
目的
退職(予定)する引退選手に体系的な転職(再就職または創業)を支援することで、退職による
衝撃を緩和して新しい進路を模索することができるようにサポートする。
b) 対象
引退選手転職支援サービスを提供する。
c) 推進根拠
労働部で運営経費を支援している転職支援センターは、失職勤労者及び退職(予定)勤労者を
対象で無料転職支援サービスを提供し、積極的に企業の求人業務を支援するために専担人力を
担当して運営する。
)事業内容
d)
個人の適性• 力量に対する自分の診断から、力量強化、面接戦略など就業準備に関する全般的なコ
ンサルティングと同時に、個人のすべての要素を総合的に考慮したオーダーメード型採用情報提供な
ど、専門コンサルタントを通じて支援可能なすべてのサービスが提供される。
e) 事業推進と運営方式
○ 委託教育形式で進行する
- 初期相談後に個人別で 3 ヶ月以内に進行され、サービス終了の前に再就職及び創業した
場合には、早期修了になって以後 3 ヶ月ほど事後管理を受けることができる。
- 選手経歴管理サービス事業で現われた問題点を改善するために、転職支援事後管理サー
ビス事業を推進中である。この事業は、2013 年 3 月から実施する予定である。
4) 体育人材育成財団の引退選手関連
7
体育人材育成財団(2007 年 1 月 30 日設立)では国家代表引退選手を対象に、引退選手特別教育
課程(財団と連係された海外大学附設語学研修正規課程)とともに該当大学の体育関連講座を提
供する 5~6 ヶ月くらいの特別課程) 及び海外修士• 博士学位課程などを運営している。
a)目的
○ 海外優秀研修プログラムを通じて体育分野グローバルリーダーを養成する
- スポーツ専門人材の海外進出及び影響力強化を通じて、韓国スポーツの国際的地位を向
上させる
b)
対象
○ 資格条件; オリンピック及びアジア大会正式種目の引退選手の中で、以下の該当者に限る
- オリンピック、アジア大会、世界選手権大会及びその他国際大会など出場経歴者
- 国家代表、常備軍、青少年代表選手経歴者
- 大韓体育会種目別競技団体登録選手経歴者(3 年以上)
c)
推進根拠
○ 財団定款に基づいて実施する
d) 事業内容
○ リーダー教育
- 海外優秀リーダー招聘講習会を開催し、国内リーダーのコーチング法先進化のためのコ
ーチング講習会などを支援し、種目別海外の世界的なリーダーを招待して、国内リーダー
たちが簡単には接することができない情報とコーチング法を習得することにより、国内選
手たちの競技力向上を支援する。
- 学校運動部指導者の職務教育を通じて、学校運動部リーダーの資質涵養と指導能力を培
うように体系的な教育を施行し、学校運動部リーダーがより体系的で科学的な指導できる
ように実務能力及び指導能力向上のための教育を支援する。
○ 相談及び就業支援
- 体育分野インターンシップを通じて、体育専攻者及び一般専攻者の体育分野業務能力培養
と就業競争力確保のためにインターンとしての働き場を支援する。
)事業推進と運営方式(表 4、5、6 参照)
e)
○ 引退選手特別教育課程には、国内外研修と国際機構への派遣がある
表 4. 国内研修
区
分
主要内容
教育日程
1 学期 '09 年 5 月 11 日 ~8 月 21 日 /2 学期 9 月 7 日~ 12 月 18 日
教育費
全額支援
教育人員
00 人(レベル別 Class 運営)
教育機関
外国語大学
教育内容
週当り外国語教育(7 時間)、素養教育(2 時間)
運営形態
午後 7 時~10 時、週 9 時間(月水金 / 火木金)
8
備考
欠員発生の時新規選抜、最大 2 学期教育可能
表 5. 海外研修
区
分
主要内容
教育期間
'09 年 8 月~12 月(4 ヶ月)
教育対象
国内研修後語学成績一定の水準以上者のうち国際機関進出可能者
※ 海外派遣条件 : TOEIC 700, TOEFL PBT 530, CBT 200, IBT 70, TEPS(Test
of English Proficiency developed by Seoul National University) 600 点以上
者及び語学機関自体試験通過者
教育機関
テネシー大学(アメリカ)ほか財団指定語学研修機関
教育内容
語学教育、体育専攻講座受講及び聴講、クラブ指導活動など
支援内訳
最大 2,000 万ウォン(学費、滞在費、医療補助費, 航空料など)
※ 公務員国外訓練業務処理指針準用、国家別差別支給
表 6.国際機関派遣
区
分
主要内容
派遣期間
'10 年 1 月 ~ 8 月(8 ヶ月)
派遣対象
国際機関進出可能者
出先機関
海外所在国際体育機構及び海外各国の競技連盟など
支援内訳
最大 4,000 万ウォン(滞在費、医療補助費、航空料など)
※ 公務員国外訓練業務処理指針準用、国家別差別支給
5)体育人福祉事業
体育人福祉事業は、各種競技大会で国外を宣揚した体育人と、国家代表選手の福祉増進のために競
技力向上研究金などに財政的な支援をする事業として、「国民体育進興法」第 14 条及び第 22 条を根
拠に行われる。この事業は、国民体育振興公団の「体育人福祉事業運営規定」によって競技力向上研
究年金、国外留学支援金、特別補助金、福祉厚省金(生活補助費、大学院進学奨学金、短期訓練費)、
障害年金、競技指導者研究費、体育奨学金、選手リーダー保護支援金など、全体で 8 分野の体育人福
祉事業に対して国民体育振興基金を支援している。このうち国家代表引退選手を対象にする事業は、
競技力向上研究年金、国外留学支援金、特別補助金、大学院進学奨学金、短期訓練費、障害年金など
の 5 種類であり、各事業別主要内容は次の表7のようになっている。
9
表 7.体育人福祉事業の主要内容
区 分
内
容
競技力向上研究金
▷ 支給対象
- 体育活動を通じてオリンピック大会、世界選手権大会、世界大学学生競技大
会、アジア競技大会、世界軍人体育大会(障害人選手の場合は障害人オリンピック
大会及び聾唖オリンピック大会) など国際大会で国威を宣揚した選手
▷ 支給基準
- 国際競技大会入賞実績にあたる評価点数を合算して支給額を算出し、評価点数
合算累計が 20 点になると年金対象者が月定金(支給上限額 100 万ウォン、オリン
ピック金メダルの月 100 万ウォン支給)または一時金の中で一つを選んで支給
- 評価点数が 110 点を超過した場合一時奨励金支給
国外留学支援金
▷ 支給対象
- オリンピック大会(障害人オリンピック大会及び聾唖オリンピック大会含む)か
ら金、銀、銅メダルを受賞した者(候補受賞者含む)として引退後国外留学を希望
する者(ただし現役選手で活動がずっと必要な者、体育以外の分野に留学する者、
理事長の支援する必要がないと認める者は除く)
▷ 支給基準
- 国外留学に必要な入学金及び登録料と公務員教育訓練施行令の国外訓練費支給
基準による航空料、滞在費など
特別補助金
▷ 支給対象及び支給基準
- 体育発展及び国外宣揚に寄与したが競技力向上研究年金または競技指導者研究
金を受けることができなかった不遇な体育人対象
- 1 件当たり 1,000 万ウォンの内で一時金に支給
▷ 特別対象者
- 競技力向上研究年金または競技指導者研究費を受ける体育人として 1 年以上長
期療養が必要な患者の場合、医療費に限って本人負担の一部または全部を 1 件当
たり 5,000 万ウォン範囲内で一時金に支給可能
福祉厚省金
大学院進学
奨学金
▷ 支給対象
- 引退した国家代表選手として国内大学院の体育関連専攻課程を履修しようとす
る者、公団の各種支援金を受けない者をまず選定
▷ 支給基準
- 大学院課程 2 年以内の期間、学期当たり 300 万ウォンの範囲内で入学金及び登
録料を支援
短期訓練費
▷ 支給対象
- 引退した国家代表選手として体育関連分野または社会進出のための専門教育過
程を履修しようとする者、 公団の各種支援金を受けない者をまず選定
▷ 支給基準
- 1 年以内の期間の間 300 万ウォンの範囲内で入学金及び登録金を毎月支給
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障害年金
▷ 国家代表選手及びリーダーの中で、国際大会で国威宣揚のための強化訓練また
は競技の中で発生した傷害によって今後の生活に差し支えがある者に生計保障の
ために支給される財政的な支援
資料: 体育人福祉事業運営規定「(改訂 2007-11-28 文化観光省体育政策チーム-3590 号)」整理、金信愛、2009 にて再人用 p.5
3. エリートスポーツ政策とエリート選手のセカンドキャリア事業に関する
問題及び発展方向
以上、韓国におけるエリートスポーツ競技力向上のための育成政策と支援現況及び国家代表
引退選手進路強化のための支援体制について述べてきた。これらに対する問題点及び発展方向
は次のようにまとめることができる。
第一に、国家代表引退選手支援政策が、文化体育観光部、大韓体育会、国民体育振興公団、
体育人人才育成財団など、多様な主体によって散発的に推進され、体系的• 具体的な政策樹立
が困難である。例えば、体育人人才育成財団が運営している引退選手特別教育課程、海外修士•
博士学位課程の場合、体育人福祉事業の中で国外留学支援金または大韓体育会のスポーツ外交
力強化事業と重複されている。したがって散発的に運営されている引退選手支援事業を統合し
て運営すること、予算の重複投資を避けて事業の効率性を高めていくことが緊要である。
第二に、競技力向上研究年金及び国外留学支援金、大韓体育会のスポーツ外交人才養成事業
など、大部分の引退選手支援政策がメダリストを対象にしていて非メダリストに対する支援が
不足である。できれば全国大会選手で経験がある、あるいは入賞経歴がある選手まで事業を拡
大する必要がある。
第三に、現在国家代表引退選手に対する支援は、競技力向上研究年金に代表される財政的な
サポート主として構成されていて、国家代表選手の引退後進路強化のための職業教育や職業紹
介などの実質的な支援は行われていない。したがって、企業の一般業務と係わった働き場所を
提供すること以外に、選手の経歴を活用することができる制度を活用する必要があると考えら
れる。例えば、国民体育進興法の第 7 条(職場体育の振興のための措置)に明示されているよう
に、公共機関の職場体育活性化のために競技指導者と生活体育リーダーを配置し、これを公共
機関経営評価に反映することも引退選手の就業機会拡大のための一つの方案になる。
一方、引退選手に対する進路支援は、短期的な方案と長期的な方案をともに実行される必要
がある。短期的な方案では、引退後進路に対する相談とともに職業教育や就業に関する情報を
提供することができる経歴カウンセラー制度の活性化や、スポーツ関連団体の支援を広げる必
要がある。長期的な方案では、学生選手たちの学習権と運動権をともに保障する制度、すなわ
ち 複線型経歴制度が強化される必要がある。複線型経歴は長らく選手生活をした後に新しい領
域で自分の進路を開拓しなければならない引退選手、そして特に運動を中途であきらめた多く
の学生スポーツ選手たちの学校適応に大きく役に立つと考えられる。特にこのような制度に先
立って改善しなければならない点は、小学校(初等學校)、中学校、高校、大学での運動選手た
ちの授業欠損を最小化にすることができる学校教育制度の改善が緊要な時点に置かれていると
考えられる. 最近になって最低学歴制、全国単位大会の出場回数制限、一部種目で週末リーグ
制導入などを通じて学生選手たちの学習権保障のために努力しているが、訓練や試合などによ
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る授業欠損を補う方案やこのための財政サポート方案はまだ具体化されてない。これに対する
実現可能な制度的な装置の上に運動選手たちに対するセカンドキャリア政策が具体的に樹立さ
れなければならない。
最後に、韓国におけるエリートスポーツ選手の育成に対する問題を部分的な改選ではなく、
全面的な改選策が必要な段階に置かれている。したがって、教育部と文化体育観光部、そして
総ての体育団体が協力して、未来志向的なエリートスポーツ選手育成策を提示しなければなら
ないと言える。
参考文献
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Sport Science.
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国民体育振興公団ホームページ. http://www.kspo.or.kr
大韓体育会ホームページ. www.sports.or.kr
体育科学研究院ホームページ www.sports.re.kr
泰陵選手村ホームページ
体育人福祉事業 http://www.sports.or.kr/player/player.tae rung
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