情 03-9 2006 年度 安藤祐輔 卒業研究 1/2 クチコミを活かしたマーケティング戦略 情03−9 指導教員 安藤祐輔 加藤雅人 序論 近年、インターネットの普及率は驚くほどに上昇している。それにより、不特定多数の人と 情報を共有することが可能となった。そのなかで「流行商品」には必ずといって良いほど、 「ク チコミ」でのやりとりがなされていることに我々は興味を抱いた。そして、流行を生み出すに は、この「クチコミ」を調べることが重要だと感じたのだ。消費者が「クチコミ」をどのよう に捉えているのか、また企業は「クチコミ」をどのように活用しているのかを考察していくこ とにする。そして「クチコミ」は「新たなマーケティング戦略」になるのか見ていく。 本論 第一章「うわさとクチコミの違い」まず、「うわさ」については、様々な定義がなされてい るが、我々は「人から人へと伝えられていく、確認しようのない話」と定義した(1.1.1)。これ に対して「クチコミ」は、消費者が実際に製品を使った感想、つまり「確かな情報」と定義し た。これまでのクチコミは、身近な知り合いだけでの口頭コミュニケーションであった。しか し、現代ではインターネットの普及により、簡単に不特定多数の消費者と情報を共有すること が可能となった(1.3.1)。 第二章「クチコミの重要性」我々の調査(2006 年 10 月)から、商品の購入にあたって、66% の人が「企業の宣伝よりもクチコミを優先する」という結果が得られた。そして 89%もの大学 生が「商品を購入する際に、商品に対するクチコミ(購入した人の実際の感想)が気になる」 と答えた。また、86%の人が「クチコミによって商品を購入したことがある」ことも分かった。 この結果から商品を購入する際に、多くの消費者が「クチコミ」に影響されるということが明 らかになった。このことからも、「クチコミを活かす戦略」は、大きな期待を寄せられるマーケ ティング戦略であることが分かる(2.1.2)。クチコミの利用者には、能動的にクチコミを利用す る「アクティブ・コンシューマー」と、受動的にクチコミを利用する「パッシブ・コンシュー マー」(一般的なクチコミ利用者)がいる(2.2.1)。次に、クチコミを活かした企業のマーケテ ィングについて述べる。まず、 「共進化マーケティング」とは「アクティブ・コンシューマーと の相互作用を前提とした新しいマーケティング」である。これまでのマーケティングにおいて は、消費者と企業の関係は「企業が生産し消費者に提供する」というものであったのに対して、 共進化マーケティングは「消費者からの情報と合わせて製品、アイデアが創造される」という 関係になっている(2.3.1)。そして、これからのマーケティング戦略は、「アクティブ・コンシ ューマー」と「パッシブ・コンシューマー」という二通りの「クチコミを利用する消費者」を 活かすものになる。 第三章「クチコミ戦略」「mixi」という企業は、2004 年 2 月に開始された日本初の「コミュ ニティーエンターテイメント・ソーシャルネットワークサイト」である。ソーシャルネットワ ークサイト(SNS)とは、人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型の Web サイトのことである (3.1.1)。最近では、mixi 内のコミュニティで自社の商品を紹介し、プロ 情 03-9 2006 年度 安藤祐輔 卒業研究 2/2 モーション効果を生みだそうとする企業も現れてきいる。大塚製薬は、自社商品である「ファ イブミニ」に関する「ファイバー美人大学@mixi_campus」と「体内怪人ファンコミュ!」という 二つの mixi 公認コミュニティを開設した。同コミュニティを通して自社サイトへの誘導を図っ た(3.3.2)。また「@cosme」は、株式会社アイスタイルが 1999 年 12 月に開設したサイトであ る。国内外 10000 ブランド、92000 の商品データベースと、クチコミ検索機能や新製品情報な どのコンテンツを備えた、国内最大規模の化粧品情報専門サイトである(3.2.1)。同サイトは、 一般的な消費者が化粧品に関するクチコミを検索し、購買するきっかけになるものであったが、 今では化粧品を製造する様々な企業が、自社の商品の評判やプロモーション効果を知るための 立派なツールになっている。企業が、@cosme に消費者から投稿された様々なデータを閲覧する ことができる「@cosmePRO」というシステムも開発された(3.2.2)。@cosme に投稿された「こ の商品のここをもっとこうしてほしい」というような意見を企業が見て、それをこれからの商 品製作に生かすことができるのである(3.3.3)。これはまさに、消費者と企業が共にマーケテ ィングを進めていく「共進化マーケティング」(2.3.1)である。 文献表 ・市川孝一「消費されるうわさ−「話題型うわさ」の系譜−」 『日本語学』Vol.17、no.1、明治 書院、1998、44-53 頁 ・川上善郎『うわさが走る』、1997、サイエンス社 ・都築誉史「流言と都市伝説」(http://www.ir.rikkyo.ac.jp/~tsuzuki/99db228b/uwasa.html) (2006 年 10 月閲覧) ・廣井脩『流言とデマの社会学』、2001、文春新書、文藝春秋 ・濱岡豊「クチコミをマーケティングで考える」『言語』Vol,32、no.7、大修館書店、2003、 14-22 頁 ・濱岡豊「レビュー 消費者間相互依存性/相互作用」 『マーケティング・サイエンス』2 巻 1 −2 号、60-85 頁、1994 年 ・濱岡豊「『アクティブ・コンシューマー』を理解する共進化マーケティング論の構築に向けて」、 『一橋ビジネスレビュー』50 巻 3 号、2002a 年、57-73 頁 ・濱岡豊「『消費者による開発』の分析に通じた概念の論究」、 『平成13年度 吉田秀雄記念財 団助成研究報告書』、2002b 年、133-146 頁 ・濱岡豊「共進化マーケティング」消費者が開発する時代におけるマーケティング、2001、 http://www.e.u-tokyo.ac.jp/itme/dp/dp67.pdf ・松田美佐「うわさ話の伝播と諸相」『日本語学』Vol.17、no.1、明治書院、1998、14-22 頁 ・吉永達世「クチコミはメディアになり得るのか」 『日本語学』Vol.17、no.1、明治書院、1998、 54-61 頁 ・横山滋「マスコミとミニコミとクチコミ」 『日本語学』Vol.17、no.1、明治書院、1998、62-69 頁 ・@cosme(http://www.cosme.net/)(2006 年 11 月 15 日閲覧) ・@cosme Business Navi(http://b-navi.cosmepro.jp/pro/about_pro2.html)(2006 年 11 月 15 日閲覧) ・@cosmePRO(http://www.cosmepro.jp/)(2006 年 11 月 15 日閲覧) ・mixi(http://mixi.jp/)(2006 年 11 月 13 日閲覧) ・IT pro(http://itpro.nikkeibp.co.jp/index.html)(2006 年 11 月 13 日閲覧) ・CNET Japan(http://japan.cnet.com/news/media/story/)(2006 年 11 月 13 日閲覧)
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