アジア各国・地域におけるIT・電気 電子産業の政策・産業動向等に関する実

平成 21 年度
「アジア各国・地域におけるIT・電気
電子産業の政策・産業動向等に関する実態調査」
報告書
平成 22 年 3 月
財団法人
国際情報化協力センター
【目次】
目次】
第一部 ········································································ 1
1. 世界/地域市場動向·························································· 1
1.1 世界市場シェア/市場動向················································· 1
1.2 地域別市場シェア/市場動向··············································· 5
1.3 生産動向 ······························································ 13
1.4 地域別需要動向························································· 22
2. 企業動向と企業戦略························································· 26
2.1 Samsung ······························································· 26
2.2 LG ···································································· 32
2.3 Acer ·································································· 37
2.4 Asus(AsusTek) ························································· 41
2.5 Lenovo ································································ 46
2.6 中国市場における日本と韓国企業の違い··································· 48
2.7 各企業別生産地域と動向················································· 51
2.8 企業名一覧(英語名と日本語名の対応表)································· 56
3. アジア各国・地域の IT・電気電子産業支援策 ·································· 57
3.1 中国 ··································································· 57
3.2 台湾 ··································································· 85
3.3 韓国 ··································································· 89
3.4 シンガポール ··························································· 97
3.5 タイ ·································································· 100
3.6 インド ································································ 108
4. 人材育成 ································································· 122
4.1 中国 ·································································· 128
4.2 韓国 ·································································· 138
4.3 タイ ·································································· 147
4.4 ラオスとミャンマー····················································· 152
4.3 インド ································································ 173
5. 各国・地域の標準化施策の状況·············································· 181
5.1 アジア各国・地域の標準化活動について ··································· 181
5.2 中国、韓国、台湾などの標準先進諸国・地域の状況························· 184
5.3 タイおよびその他主要国の状況··········································· 195
6. 各国の環境・リサイクル政策················································ 198
第二部 ······································································
1.アジア OSS ワークショップの概要·············································
2.事業内容 ··································································
3.プログラム ································································
4.参加者 ····································································
5. ワークショップでの検討内容················································
5.1 OSS の開発、活用、導入などについて ····································
5.2 OSS の利用、開発の促進のためのより効果的な人材育成のあり方 ············
2
204
204
204
205
205
206
206
206
5.3 アジア OSS(AOSS)コミュニティの自律的活動について ······················ 207
6. AOSS ワークショップの成果と課題 ··········································· 209
7. 参加者によるフィードバックの要約·········································· 209
第三部 ······································································
1. IT・電気電子産業振興施策の動向············································
2. IT 電気電子産業の動向(デジタル家電含む) ·································
3. IT 電気・電子産業の人材育成の動向 ·········································
4. 標準及び知的財産権関連施策の取組状況······································
5. 環境・リサイクル施策の現状及び対策の実態··································
6. 国際連携・政府間協力の状況················································
7. 情報化の動向 ·····························································
211
211
227
258
260
264
265
268
参考資料 1 アジア各国地域における IT・電気電子関連政策・法制度 ·············
参考資料 2 アジア OSS ワークショッププログラム詳細 ·························
参考資料 3 アジア OSS ワークショップ参加者一覧 ·····························
参考資料 4 アジア OSS ワークショップ写真集 ·································
参考文献 ··································································
273
277
280
282
284
3
第一部
アジア各国・地域のIT・電気電子産業における日本企業の存在感は、年々低下してきている。
一方、SamsungやLGに代表される韓国企業、パソコン分野で存在感を増すAcerやAsusなど台湾企
業に加えて、Lenovoなど中国企業の追い上げは激しさを増している。
本レポートでは、デジタル家電および情報通信機器分野に焦点をあて、これら企業の台頭が
目立つフラットパネルテレビ(LCD, PDP)、PC、携帯電話を具体的な事例として取り上げる。
世界や地域別の市場動向や生産状況の現状を把握し、各企業の経営方針や地域別戦略策を比較
することにより、韓国、台湾、中国企業と日本企業の相違や、彼らの強みを比較することとす
る。
1. 世界/
世界/地域市場動向
地域市場動向
1.1 世界市場
世界市場シェア
市場シェア/
シェア/市場動向
フラットパネルテレビ(液晶(以下LCD)
、プラズマ(以下PDP))
、PCおよび携帯電話の出荷高
ベースの市場シェアならびに市場動向は以下の通りである。特にLCDテレビと携帯電話において
韓国企業の躍進が目立つ。
1.1.1 フラットテレビ
LCD テレビ世界市場のシェアをみると、Samsung がトップで 23%、続いて Sony が 14%、LG11%、
Sharp7%、Toshiba5%、Panasonic4%と、Sony を始めとした日系各社も健闘している一方、Samsung
や LG など韓国企業が躍進している。2008 年と比較し、2009 年は Samsung に大きく水をあけら
れ、2007 年 Panasonic や Sharp など日系企業と拮抗していた LG は、2 位の Sony に迫る勢いを
見せている。LG が右肩上がりで伸びているのに対し、日系企業は伸び悩んでいることがわかる。
LCD テレビ市場は、デザイン性、製品の低価格化、デジタル放送開始による高解像度テレビ
の需要増加により生産台数や市場のパイは拡大しているものの、パネル価格の下落に伴い、製
品が低価格化したため、2009 年の市場は前年比 4 ポイント増の$84,586,339 となり成長率が伸
び悩んだ。
図表 1-1 2009 年 LCD テレビの世界市場シェアと市場動向(2007~2009)
(数値単位:出荷高ベース)
1
TV世界市場動向
$25,000,000
Samsung
$20,000,000
$15,000,000
出
荷
額
Sony
LG
$10,000,000
Panasonic
Philips
Sharp
$5,000,000
Toshiba
Pioneer
$0
2007
LG
2008
Panasonic
Samsung
Sharp
2009
Sony
Toshiba
Philips
Pioneer
出典:ディスプレイリサーチ
一方、PDPテレビは日系企業が善戦している。Panasonicがトップで43%を占めており、次いで
Samsungが25%、LGが20%、Pioneerが2%となっており、日本勢と韓国勢が各々45%程度のシェアで
拮抗している。しかし、2009年PDPテレビの世界出荷額規模は$11,759,041で、LCDテレビの出荷
額規模$84,586,339と比較すると、1/7程度にとどまる。
これは、従来PDPテレビは大型サイズにおいてLCDテレビより有利とされてきたが、近年のLCD
テレビの大型化戦略、低価格化に加えて、各企業がPDP事業から撤退し始めたことによる。日立
がパネル事業から撤退し、パイオニアオがパネルとTV事業から撤退したこと、韓国PDPパネルメ
ーカの新規投資の凍結などにより減少傾向にある。すなわち、フラットテレビ分野全体で見る
と、Samsungなど韓国勢がトップを占めていることが明らかである。
図表 1-2 2009 年 PDP テレビの世界市場シェア(数値単位:出荷高ベース)
出典:ディスプレイリサーチ
2
1.1.2 PC
2009年PC市場(デスクトップ、ノートブック含む)は、デスクトップPC市場からノートPCへ
のシフトが進んだ。HPは世界出荷高45,998ドルで市場シェア21%、Dellは出荷高28,245ドルで市
場シェア13%に続き、Netbookを投入した台湾企業のAcerが22,627ドルで10%の3位につけ、2位の
Dellを追い越す勢いを見せている。2008年からの景気後退の影響と低価格化が進んだことから、
特に欧米企業は2009年に出荷額が落ち込んでいる中、マルチブランド戦略を打ち立てたAcerと
2009年2月に創業者がトップに交代し、地域別の市場および製品戦略を打ち出し、人員削減等を
行なったLenovoは、ほぼ横ばいを維持した。
図表 1-3 2009 年 PC の世界市場シェアと市場動向(数値単位:出荷高ベース)
PC世界市場動向
$60,000
$50,000
HP
$40,000
Dell
出
荷 $30,000
高
Acer
Lenovo
Apple
$20,000
Toshiba
ASUS
$10,000
Sony
Fujitsu
Samsung
$0
2004
2005
HP
Dell
Acer
2006
Lenovo
Apple
2007
Toshiba
2008
ASUS
Sony
Fujitsu
2009
Samsung
出典:IDC
3
1.1.3 携帯電話
2009年携帯電話の世界市場シェアは、Nokiaが27%、それに続きSamsung, LGがそれぞれ20%、
11%を占めている。日本企業はSony Erricsonが6%を占めるのみである。
2007年から2008年にかけて、SamsungとLGは各々26ポイント、40ポイントと高い成長率を記録
したが、2009年はほぼ横ばいである。2007年Appleのi-phoneが投入され、2008年には前年比293
ポイント増、2009年は前年比85ポイント増と急増しており、BlackBerryを販売しているResearch
in Motionも2008年に前年比92ポイント増、2009年に前年比48ポイント増えている。これらのメ
ーカの成長におされ、シェアトップのNokiaは2009年に前年比25ポイント減となった。
図表 1-4 2009 年携帯電話の世界市場シェアと市場動向(数値単位:出荷高ベース)
携帯電話 世界市場動向
$90,000
$80,000
$70,000
$60,000
出
荷
高
Nokia
$50,000
Samsung
$40,000
$30,000
Motorola
LG
$20,000
Sony Ericsson
$10,000
Research In Motion
Apple
$0
2007
Nokia
2008
Samsung
LG
Sony Ericsson
2009
Apple
Motorola
Research In Motion
出典:IDC
4
1.2 地域別市場
地域別市場シェア
市場シェア/
シェア/市場動向
世界市場において、特に LCD テレビと携帯電話において韓国企業の躍進が目立ち、日本
企業は PDP テレビのみ Panasonic が躍進していることが確認できたが、次に地域別市場の
シェアの状況を概観する。
1.2.1 LCD テレビ
LCD テレビの地域別市場は、日本と中国を除くと全て Samsung と LG が市場の約半数を占
めていることがわかる。日本は Sharp、Toshiba、Sony、Panasonic など日本勢で約 8 割占
められており、他の地域と異なる。
アジアパシフィック(AP、日本と中国以外)の経年データを見ると、Samsung は首位を
維持し、2008 年には LG がそれまで 2 位だった Sony を抜いて 2009 年一気に差を広げた。
また中国の経年データでは、2008 年までは各社ともそれほどシェアの開きはなかったが、
2009 年に中国企業が一気にシェアを伸ばした。中国では「家電下郷」と「家電以旧換新」
キャンペーンにより買い替えが進み、特に韓国企業と同等の質を低価格で販売する中国企
業が躍進し、中国市場の 7 割を占めるほどになった。
図表 1-5 LCD テレビ 地域別市場シェア
地域別市場シェア及
シェア及び AP と中国の
中国の市場動向(
市場動向(単位数値
単位数値:
数値:出荷高)
出荷高)
TV(LCD)地域別
地域別シェア
地域別 シェア
出典:
出典:ディスプレイリサーチ
5
TV(LCD) AP市場動向
$2,000,000
Samsung
$1,800,000
$1,600,000
$1,400,000
LG
出荷高
$1,200,000
$1,000,000
Sony
$800,000
$600,000
$400,000
Panasonic
Philips
Sharp
$200,000
Toshiba
$0
2007
2008
年
LG
Panasonic
Philips
2009
Samsung
Sharp
Sony
Toshiba
TV(LCD)中国市場動向
$3,500,000
Hisense
$3,000,000
Skyworth
TCL
$2,500,000
$2,000,000
出
荷
高
Konka
$1,500,000
Changchong
$1,000,000
Samsung
Sony
Sharp
LG
Haier
$500,000
$0
2007
Changchong
2008
年
Haier
Haisense
Konka
LG
2009
Samsung
Sharp
Skyworth
Sony
TCL
出典:ディスプレイリサーチ
6
コラム【東南アジアにおける Samsung の躍進】
JETRO バンコクによると、家電分野では Samsung が大きなプレゼンスを示しており、進
出日系企業は「脅威」や追い越すことが困難な「目標」とする声も聞かれている。他方で、
部品調達先あるいは供給先として韓国企業をパートナと捉える日系企業も数多い。中国系
メーカは現時点でプレゼンスは概して低い。
JETRO フィリピンによると、2009 年フィリピンの LCD テレビの市場シェアで、Samsung
が Panasonic, Sony, Sharp など日本企業をおさえ、3 年連続でトップになったという。こ
の要因は、LCD テレビは従来、日系メーカがある程度の相場価格を維持してきたハイエン
ド商品だったが、この 1-2 年で Samsung が相場より 20%安い価格での販売に踏み切り、フ
ィリピンの上位中間層にも手が届く商品として需要を拡大させた。経営戦略として、
「リス
クを恐れず積極的に市場ニーズをトップを掴みに行くこと」、
「トップの権限が強く意思決
定が迅速」という強みも指摘されている。
(JETRO 通商弘報 2010/3/24)
7
1.2.2 PDP テレビ
PDP テレビは、日本と中国を除くと各地域とも Panasonic, LG, Samsung が拮抗している。
日本は Panasonic、Hitachi、Pioneer 全て日本企業が占める。中国は中国現地企業である
Changhong と Hisense が入り込んでいる。ただ PDP テレビ市場は LCD テレビ市場の 1/7 に
とどまること、今後も LCD テレビの大型化戦略と低価格化が進むことが予想されているこ
とから、PDP テレビ市場の将来はあまり明るいとはいえない。
図表 1-6 PDP テレビ地域別市場シェア及び AP と中国の市場動向(単位:出荷高)
TV(PDP)地域別
地域別シェア
地域別シェア
出典:
:ディスプレイリサーチ
出典
8
TV(PDP) AP市場動向
$700,000
$600,000
$500,000
Panasonic
LG
Samsung
出荷高
$400,000
$300,000
$200,000
$100,000
$0
Pioneer
Philips
Toshiba
2007
2008
年
LG
Panasonic
Philips
2009
Pioneer
Samsung
Toshiba
TV(PDP)中国市場動向
$450,000
Changchong
$400,000
Panasonic
$350,000
出荷高
$300,000
$250,000
$200,000
$150,000
Hisense
$100,000
Haier
Hitachi
$50,000
Samsung
$0
2007
2008
年
Changhong
Haier
Haisense
2009
Hitachi
Panasonic
Samsung
出典:ディスプレイリサーチ
9
1.2.3 PC
アジアパシフィック(AP、日本以外、中国含む)のシェアを見ると、Lenovoが20%とトッ
プで、次いでHPが18%、Dellが10%、その後はAcer, Asusの台湾企業が続いている。日本市場
は他の市場と異なり、NEC, Fujitsu, Toshibaなど日本企業がトップ3を占めている。USA,
WE(Western Europe), CEMA(Central Eastern Europe, Middle East and Africa)、ROW
(Rest of the World)ともに、HP, Dell, Acerがトップ3に入っているケースがほとんどで、
日本勢は世界市場において非常に劣勢であることがわかる。
APの経年データを見ると、Lenovoが2005年にHPを追い越し、以降トップを維持している。
同社の5年間の平均成長率(CARG)は137%である。続いてAsusが136%、Acer125%、HP124%、
Dell120%となっており、欧米勢と比べて中国勢と台湾勢の成長が比較的高いことがわかる。
図表 1-7 PC 地域別市場シェアと AP の市場動向(単位:出荷高)
[注
注 ]地域
地域の
地域の略称:
略称:
AP:
: Asia Pacific
WE: Western Europe
CEMA:
: Central Eastern Europe, Middle East and Africa
ROW_CANLA : Rest of the World(Canada and Latin America
PC地域別
地域別シェア
地域別シェア
出典:
出典: IDC
10
PC AP市場動向
$12,000
Lenovo
$10,000
HP
出荷額
$8,000
$6,000
Dell
Acer
$4,000
$2,000
Sony
$0
2004
2005
2006
2007
2008
Asus
Samsung
Founder
Toshiba
Apple
2009
年
Lenovo
HP
Dell
Acer
Asus
Samsung
Founder
Toshiba
Apple
Sony
出典:IDC
1.2.4 携帯電話市場
携帯電話市場は、USAと日本市場以外はNokiaがトップを走る。USAはSamsungとLGで40%を
占め、BlackBerryを販売しているResearch in Motionが続く。日本市場のみは他の市場と異
なりSharp, Fujitsu, Panasonic, NECの日本企業がほとんどを占める。
AP市場を見ると、以前Nokiaが40%でトップだが、Samsungがシェアを伸ばしていることが
わかる。
11
図表 1-8 携帯電話 地域別市場シェア及び AP の市場動向(単位:出荷高)
[注
注 ]地域
地域の
地域の略称:
略称:
AP:
: Asia Pacific
WE: Western Europe
CEMA:
: Central Eastern Europe, Middle East and Africa
ROW_CANLA : Rest of the World(Canada and Latin America
携帯電話地域別シェア
携帯電話地域別シェア
出典:
出典: IDC
携帯電話 AP市場動向
$35,000
$30,000
Nokia
$25,000
出荷高
$20,000
$15,000
Samsung
$10,000
$5,000
LG
Sony Ericcson
Motorola
$0
SKY
2007
2008
年
Nokia
Samsung
LG
Apple
Sony Erricson
Apple
2009
Motorola
SKY
出典:IDC
12
以上のことから、世界市場でのシェアと同じく、アジアパシフィックを始めとした地域別
市場においても特に LCD テレビや携帯電話において Samsung や LG が、PC において Acer や
Asus, Lenovo が台頭していることがわかる。
1.3 生産動向
次に、この市場シェアを支える生産動向を述べる。まず、製品別の世界生産シェアを確
認した後、近年の OEM/ODM ならびに LCD テレビやパネルの生産委託状況について述べる。
1.3.1 製品別世界生産シェア
製品別世界生産シェア
2009 年 LCD テレビの日系企業生産シェアは前年比 8.3%減の 30.6%に低下し、Sumsung, LG
など韓国勢の生産シェアが増加している。2009 年までは韓国、台湾、日本メーカとも高度
な技術が必要なパネル生産の前工程を中国へ提供することは後ろ向きだったが、2011~12
年以降各社とも単独あるいは中国メーカと組み、中国で生産することが計画されている
(詳
細は 1.3.4 項参照)。一方、PDP テレビ市場は LDC 市場の大型化や低価格化に押されて減少
傾向にある上、パイオニアがパネル・テレビ市場から撤退、日立もパネル事業から撤退し、
韓国 PDP パネルメーカが新規投資を凍結するなど各社の PDP 事業の撤退及び縮小が相次ぎ
生産と市場ともに縮小傾向にある。
PC はデスクトップ PC もノート PC も OEM 生産が多く、ノート PC では台湾 OEM メーカの
Compal や Quanta などが生産シェアの大部分を占める。生産の大半はコスト削減のため中
国で行なわれている。これら PC ブランドメーカと EMS メーカの取引関係と、EMS メーカの
概要については、1.3.2 および 1.3.3 項参照のこと。
図表 1-9 各製品別世界生産シェア
(数値:生産台数 単位:1,000 台)
13
出典:富士キメラ総研
14
1.3.2 IT・
IT・液晶メーカ
液晶メーカの
メーカの生産拠点
次に各社の生産体制について述べる。下図は、代表的なIT及び液晶関連製品の製造拠点を
掲げたものだが、TFTパネルの製造を例外として、従来から言われているとおり、どの国の
メーカも中国を製品の第一の製造拠点として考えていることが読み取れる。
図表1-10 製品別生産拠点比率
製品別生産国
100%
80%
60%
40%
20%
台湾
中南米
小
型
TF
T
型
TF
T
大
タ
Dモ
ニ
LC
TV
TV
中国
東欧
その他
中
話
帯
電
携
日本
その他アジア諸国
北米
LC
D
(C
話
電
携
帯
出典:富士キメラ総研
PD
P
DM
(U
M
TS
,他
)
A)
M
)
(G
S
話
帯
電
携
ク
トッ
プ
PC
デ
ス
ノ
ー
トP
C
0%
韓国
西欧
「2010 ワルドワイドエレクトロニクス総市場調査」
15
特に、EMSによるOEM/ODM生産を主体とする台湾メーカは、中国での生産が多く、ノートPCのみならずLCD
テレビの生産や携帯電話の生産まで手を広げている。
図表1-11 日韓台主要IT・液晶メーカの生産拠点
出典:富士キメラ総研
「2010 ワルドワイドエレクトロニクス総市場調査」
出荷台数は、09年実績。
[注]
*1 鴻海は、09年末に奇美電子・統宝を買収し、同社LCD子会社郡創と統合、
上記にその数値含む
*2 Asusteckが、2008年1月分離したOEM子会社Pegatron社OEM生産品含む
*3 Acerが、2000年に分社化したWistronのLCD TV生産160万台は含まず。
但し、同社が生産するPC及び同じく分離されたAUOのTFTパネル及びBenQのLCD TVは含む。
1.3.3 PCの
PCの委託生産状況
販売台数の多い PC ベンダほどより多く EMS を活用する傾向にある。PC ベンダに比べ PC
出荷台数が圧倒的に多い EMS は、コスト削減を上流の材料メーカにより強く要求できる。
このため、コスト削減のため、より多くを販売する PC ベンダほど多くを EMS に発注してい
る。PC ベンダで出荷台数トップ 10 は 6 位の Dell と 10 位の富士通のみ。1。
図表1-12 PC EMS / ブランドベンダ取引関係
ノート PC
ブランド
シェア
シェア(‘09)
ノート PC
出荷シェア
シェア
出荷
(‘09)
(販売)
(製造)
22%
22%
HP
Foxconn
2%
12%
12%
Dell
Quanta
23%
23%
19%
19%
ACER
Pegatron
7%
10%
10%
東芝
Wistron
15%
15%
7%
Lenovo
Compal
富士通
Inventec
24%
24%
12%
12%
ソニー
出典:Daily Tech 2006.5.21(取引関係)、Gartner Q1 09(ブランドシェア)、
富士キメラ総研
「2010/2009 エレクトロニクス総市場調査」(出荷シェア)
[注] ノート PC 出荷は全て台湾メーカ
1
DIGITIMES
2010/2/12
17
1.3.4 中国での
中国での液晶
での液晶パネル
液晶パネル生産
パネル生産
TFTパネルの中国での製造は、昨年まで各国が規制していたため、以下のとおり、外国メ
ーカの大型パネルの製造拠点は中国に存在しない。しかし、中国のLCD TVが既に世界市場の
20%近くを占め、今後、最も高い毎年二桁以上の成長が見込まれる中、代表的な海外企業は
全て中国での生産を表明している。
(1)2009年まで中国向け第6世代以降のパネル製造技術輸出規制2
従来、韓国・台湾・日本メーカとも技術流出を懸念して高度な技術が必要なパネル生産の
前工程の技術の中国への提供に後ろ向きであった。また、各国政府も輸出規制をしており、
第6世代以上の液晶パネル(前工程)の生産ラインは中国で稼働していない(下図表1-13)。
図表1-13 液晶パネル生産
パネル生産メーカ TVアセンブリ
メーカ
前工程 後工程
2009年まで台湾にて高度技術として第6世代以上の輸出を規制
液晶TV
ブランドベン
ダ
上記3項LCDメーカLCM拠点の工程
図表1-13は各社の生産計画であるが、中国各地方政府の了解は得られているものの、韓国
政府の許可が下りたのはSamsun/LGの計画とも2009年末。台湾政府も条件付きで2010年2月に
友達/奇美電子の計画を認可しているが、両社が自国で稼働させている一世代前までの技術
の輸出を認めるに留まっている。
(2)中国中央政府の第6世代液晶パネル建設認可は、現状、中国企業3社のみ
中国中央政府より第6世代以降の液晶パネル生産許可を得ているのは、供給過剰の恐れも
あり、中国企業3案件のみである。(図表1-13参照)その一社である華星光電は中国第1位
の液晶TVメーカTCLと地元深超科技の合弁会社だが、ここには世界最大のEMS、Foxconn子会
社に吸収される奇美電子液晶パネル事業部最高技術責任者他100名が移籍している3。
Samsungは、昨年中国での第7.5世代液晶パネル工場の建設計画を発表しているが、中国政
府が台湾企業の進出を期待していると伝えられる中、台湾中華映管傘下企業「CPT Display
Technology(ビンビン東)」を通じて福建省福州に液晶パネル工場を設立することも模索して
いる模様である4。
LG ディスプレイは8.5世代工場建設について、資本金13.4億 US ドルで合弁会社を設立
する予定だ。LG ディスプレイが70%、広州市政府が20%、中国第2位の液晶TVメーSKYWORTH(創
2
3
4
http://nna.jp/free/news/20100212twd002A.html
Chinawave 10/1/7
EMS One 2010/2
18
維)が残りの10%を保有する。同液晶パネル工場落成後は、関連する上流の半導体、IC、バ
ックライトから、下流の携帯電話、PC、液晶 TV、関連電子製品、機械、化学工業などの製
造業が一堂に会する液晶パネル産業サプライチェーンを工業開発区内に完備する計画だと
いう。こうした総合工業区全体の年間生産高は156億 US ドルに達する5。
図表 1-14 中国での大型液晶パネル生産計画(一部建設中)
場所
世代
生産開始
計画生産量
Samsung
LG Display
LG Display
奇美電(台湾)CMO
パートナー
(中国企業)
-
楽金顕示(広州)
-
広新光電
蘇州
広州
広州
仏山
7.5
8.5
8.5
6
11年Q4
稼働中(08年4月)
12年Q2
12年
2011年3月
6万シート/月
30万枚/月
6~12万シート/月
6万シート/月
8万シート/月
投資額
(資本金)
3000億円
1100億円
4100億円
3200億円
1900億円
Sharp
中電熊猫
南京
8
12年Q4
9万シート/月
4100億円
郡創(台湾)INNOLUX
郡創(台湾)INNOLUX
-
深超光電+TCL
深超光電
京東方(BOE)
京東方(BOE)
龍騰光電 (IVO)
龍飛光電
11年
12年
11年10月
10年Q4
11年
6万シート/月
3万シート/月
8万シート/月
-
華星光電
深セン
8.5 *
11年3Q
120万枚/月
3800億円
3100億円
3200億円
(1300億円)
-
合肥市
合肥
-
11年3月
-
LCDパネルメーカ名
深セン
8.5
成都
8.5
北京
8 *
合肥
6
昆山
7.5
昆山 7.5/8.5 *
275億円
備考
中国政府認可待ち
Sharp生産ライン売却
中国電子情報産業
グループとJV
建設中
建設中
計画中
建設中(台湾友達が出資検討中)
深超科技とTCL
出資のJV(建設中)
日立よりプラズマ生産
ライン購入
出典:Jetro 通商広報 2010/1/25、EMSOne 2009/12/25, 2009/10/16
(3)第 5 世代液晶パネル技術導入するも成功せず
既存の前工程も含む液晶パネル製造ラインは以下の通り。いずれのケースでも海外の技
術を受け入れているが必ずしも成功していない6。
京東方は、2003 年に 2003 年 3.8 億米ドルで韓国 BOEHYDI を買収し、第 3.5 世代まで液
晶パネル生産装置及び技術者 1,700 人を取得。現在も 300 人の韓国籍技術者を抱える。
上海広電は、2003 年に NEC との合弁で第 5 世代液晶パネルの生産ラインを NEC との合弁
で導入するも、設立以来赤字続き。上海広電も債務超過。
LCDパネルメーカ名
NEC
-
パートナー
(中国企業)
京東方(BOE)
京東方(BOE)
龍騰光電 (IVO)
上海広電
天馬微電子
場所
世代
生産開始
計画生産量
北京
成都
昆山
上海
武漢
5
4.5
5
5
4.5
稼働中
稼働中
稼働中(05年)
稼働中(03年)
稼働中(07年)
-
投資額
(資本金)
6000億円
1500億円
-
備考
債務超過
図表 1-15 現状の液晶パネル生産工場
(出典:Jetro通商広報)
5
6
EMSOne 2009/11/5, 2009/12/25、日本経済新聞 2010/3/23
EMSOne 2009/4/2
19
図表1-16 海外LCDメーカの中国LCM(LCDモジュール後工程)拠点
なお、主要パネルメーカと TV アセンブリブランドのパートナ関係は以下の通り。
図表 1-17 主要パネルメーカと TV アセンブリブランドの TV(LCD)パートナ関係
20
[注]
*
図のとおり、Sharp/Samsung のようにパネルの生産から自社ブランドでの販売までを行なうメーカが
ある一方、パネル生産のみを行なうメーカ、自社ブランドで販売すると同時に他社にパネル供給するも
のもある。
*
(
)内枚数は、09 年大型 LCD 生産枚数
*1 Vizio は、09 年北米液晶 TV シェア No.1。FOXCONN と AmTRAM の合弁会社。AmTRAN の他 TPV(冠捷)にも
委託。2010 年は Innolux にも発注予定。(EMS One 09.10.28)
*2 出資比率は既に僅かだが、AUO、BenQ、Qisda とも Acer から分離された会社。
*3 TPV(冠捷)は、欧州液晶 TV アセンブリ市場で圧倒的なシェア。液晶 TV は関税が高いため、販売地域で
生産することが絶対条件。両社共同アセンブリ工場はチェコ・スロバキア・ポーランド3社。TPV は、
世界最大の PC モニターメーカ(08 年 4800 万台/シェア 27%)である。(EMS One 10.3.16、TPV HP)
*4 EMS 最大手台湾鴻海(FOXCONN)が、傘下郡創(INNOLUX)と奇美電子及び統宝(TPO)を統合 10 年 3 月 16 日
に新会社が発足する予定。(EMS One 10.3.16)
*5 奇美電子は、中国 LCD TV 各社に LCD パネルを供給しており、そのシェアは 50%近くに上る。
*6 Compal が Sharp から北米向け LCD TV 生産を受託した模様。
(EMS One 09.10.22)
*7 Samsung は、CPT の中国子会社を通じて中国福州に LCD パネル工場を設立するために協議している模様。
AUO/CMO/INNOLUX も Samsung のサプライチェーンパートナ。
(EMS One 10.2.10)
21
1.4 地域別需要動向
地域別需要動向
各社が今後の戦略や重点地域を考慮するにあたり不可欠となる地域別需要動向(2008~
2015 年)を以下に述べる。
(1)フラットテレビ
LCD テレビの今後の需要動向は、低価格化に伴い新興国のアジア、中南米、中国などで、
ボリュームゾーンをターゲットにした需要が高くなると予想されている。特に中国は「家
電下郷」政策により市場が拡大し、中国 LCD メーカのシェアも益々拡大していくであろう。
また、Samsung は 2009 年 3 月に薄型 LED テレビを全世界に低価格で投入しシェア拡大を図
っており、今後益々のシェア拡大が予想される。
富士キメラ総研によると、PDP テレビは低価格化が困難なため、市場拡大は期待できな
いが、大画面を好む欧州や北米は LCD テレビより PDP テレビのほうが有利とされている。
図表 1-18 フラットテレビ地域別需要動向
LCD TV
80,000
70,000
欧州
60,000
1000台
50,000
中国
北米
40,000
アジア
30,000
中南米
20,000
その他
10,000
日本
0
2008
2009
2010
日本
中国
2011
アジア
22
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
その他
2015
PDP-TV
5,000
欧州
北米
4,000
中国
3,000
1000台
アジア
2,000
日本
1,000
中南米
その他
0
2008
2009
2010
日本
2011
中国
アジア
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
2015
その他
(2)PC
デスクトップ PC は欧州、北米、日本など先進国において大幅に減少し、新興国でも 2008
年から 2009 年にかけて急激に落ち込み、2010 年以降はほぼ横ばいの予測である。ノート
ブック PC は既に普及が進んでいる先進国向けで引き続き成長が見込まれ、中国やアジアな
ど新興国の需要も著しく増加する見込みである。
今後は地域別の戦略が重要となるだろう。例えば台湾企業の Acer は、自社低価格ブラン
ド「eMachines」と高機能ブランド「Acer」に加え、米国と Asia Pacific 向けは「Gateway」
ブランドで、欧州向けは「Packard Bell」(2008 年買収)を販売するなど、ニーズにあっ
たマルチブランド戦略を打ち出している。
図 1-19
PC 地域別需要動向
デスクトップPC
40,000
欧州
北米
1000台
30,000
アジア
中国
その他
20,000
中南米
10,000
日本
0
2008
2009
2010
日本
中国
2011
アジア
23
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
その他
2015
ノートPC
80,000
70,000
60,000
1000台
50,000
アジア
欧州
北米
40,000
中南米
30,000
その他
中国
20,000
日本
10,000
0
2008
2009
2010
日本
中国
2011
アジア
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
2015
その他
出典:富士キメラ総研
(3)携帯電話
富士キメラ総研によると、GSM 携帯は引き続き中国を含むアジア地域での需要が全体の
50%前後を占めるが、中国は山塞機(海外ブランド企業の機種のコピー製品)がローエンド
市場で出回っているため正規品としての市場が縮小していること、また新興国も UMTS
(Universal Mobile Telecommunications System、3G 以降の通信方式 WCDMA、HSPA、TD-SCDMA、
LTE を含む)への置き換えが進むことから、将来的に全体として減少していくと予想され
ている。CDMA については、北米、韓国、日本市場は 2014 年以降に導入が見込まれている
次世代通信方式の LTE により CDMA 市場も影響を受け、減少が予想される。UMTS は今後大
きく市場が拡大していく可能性があるが、3G を急速に進めようとしている中国市場と、
CDMA から LTE へまもなく移行する北米市場で大きく異なることが予想される。
各政府や市場動向を見ながらどの方式による携帯を生産・販売していくのかが重要とな
ろう。
24
図 1-20 携帯電話地域別需要動向
携帯電話(GSM)
180,000
160,000
アジア
140,000
1000台
120,000
中国
中南米
100,000
欧州
80,000
その他
60,000
40,000
北米
20,000
日本
0
2008
2009
2010
日本
中国
2011
アジア
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
2015
その他
携帯電話(CDMA)
120,000
100,000
1000台
80,000
北米
60,000
40,000
20,000
0
その他
日本
欧州
2008
中国
2009
2010
日本
中国
2011
アジア
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
アジア
中南米
2015
その他
携帯電話(UMTS,他)
250,000
欧州
200,000
アジア
150,000
1000台
北米
中国
100,000
中南米
その他
50,000
日本
0
2008
2009
2010
日本
中国
2011
アジア
2012
北米
中南米
2013
欧州
2014
2015
その他
出典:富士キメラ総研
25
2. 企業動向と
企業動向と企業戦略
第1章では、韓国企業(Samsung, LG)、台湾企業(Acer, Asus)企業、中国企業(lenovo)
等が、世界市場のデジタル家電や情報通信機器分野において、大きくシェアを伸ばし、我が
国企業はその後塵を拝している状況が明らかになった。
本章では、これら伸長著しい企業群に関して、企業ごとに最新動向、事業戦略について述
べる。
2.1 Samsung
2.1.1 企業概要
韓国最大の企業グループのひとつである Samsung(三星)は、子会社数 44 社、70 近くの
国と地域に 300 弱の法人、事業所があり、従業員総数は 19 万 6,000 人、事業内容は電子、
金融、機械、化学等多岐にわたる。2008 年 5 月からイ・ウンユ副会長が CEO として新たな
スタートを切った。2009 年 1 月に、Samsung は「2 部門と 10 事業部」に組織編成を行なう
と発表した。今回の方針は、「現場を中心とした経営の強化」、
「意思決定構造の簡素化」、
「関連組織の集中化によるシナジー効果の向上」である。経営陣は、全役員の 3 分の 2 以
上の人事異動を行なうなど、過去最大規模の組織再編が行なわれた。
2004 年からの年間売上高と営業利益率の推移は以下の通りである。
図表 2-1:年間売上高と営業利益率(2004~2009 年)
(単位:兆ウォン)
160
16
14.4
140
136.29
118.38
120
10.5
100
9.4
82
85.4
14
12
98.5
10
9.1
80.6
80
8
60
8
6
5
40
4
20
2
0
0
2004年
2005年
2006年
売上高
2007年
2008年
2009年
営業利益率
出典:Samsung 電子
26
2004 年には売上高 82 兆ウォンを記録し、ソニーを抜いて世界トップの売上高を誇る企
業になった。同社の売上げは、2005 年には 80 兆ウォンに小幅後退したが、新たな技術と
製品、特に液晶ディスプレイ(LCD)を市場に投入し続けた結果、2007 年には回復し、以降
2009 年まで増加している。なお、売上げが上昇する一方で営業利益率が悪化する現状につ
いて、調査会社 ROA Group(2009)は、IT 産業の競争激化により市況が下がったことに加
え、原材料の価格上昇や研究開発費の膨張、Samsung グループの不正資金疑惑事件による
社内士気低下などの要因が考えられるとしている。
図表 2-2 に関して、JETRO によれば、部門別の売上高および営業利益は以下の通りであ
る。各部門の状況について、同社 IR 資料によると、それぞれの部門について、半導体は
DRAM のコスト競争力強化や大容量への転換による収益増加で全社営業利益の 5 割を占めた。
液晶パネルについて価格の下落が営業利益減少に繋がった。通信は市場特性にあわせた戦
略モデルを拡大したが価格競争の激化のため販売価格は低下している、という。
図表 2-2 Samsung 電子の売上高・営業利益(連結)
2.1.2 事業地域
事業地域
韓国国内市場が限られていることから、韓国企業は常に海外市場をターゲットとしてい
るが、Samsung も例外ではなく、海外ビジネスに注力している。世界の主要エレクトロニ
クス・IT 企業の海外売上高比率・営業利益率を見ると、Samsung の海外売上比率は 81%と
非常に高い。因みに、日本企業は 20~60%(最も高い Sony で 76%)である。
Samsung は経営戦略で「現場を中心とした経営の強化」と掲げられているように、海外
市場の拡大に非常に重きを置いていることがわかる。この戦略は、市場の近くで生産して
いる状況からも明らかである。
27
図表 2-3 世界の主要エレクトロニクス・IT 企業の海外売上高比率・営業利益率
営業利益率
(2008年)
40%
35%
オラクル, 56%
マイクロソフト, 43%
グーグル, 51%
30%
25%
SAP, 81%
20%
15%
GE, 53%
10%
HP, 69%
NTTデータ, 5%
三菱電機, 25%
5%
NEC, 22%
富士通, 32%
0%
0%
10%
20%
30%
サムスン, 81%
ジーメンス, 83%
アマゾン, 47%
40%
日立, 41% パナソニック, 47%
50%
東芝, 51%
三洋, 62%
60%
シャープ, 54%
70%
80%
ソニー, 76%
-5%
-10%
海外売上高比率(2008年)
出典:各社有価証券報告書を基に三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
Samsung は海外市場攻略のために、「現場のニーズに即した製品を提供」
「ブランドマー
ケティング(スポーツマーケティングを含む)」「人材育成」に注力している。以下、各地
域における戦略を述べる。
図表 2-4 各地域における戦略
中東
2005 年から中東地域に Samsung の製品だけを扱う「Samsung ブランドシ
取引先の韓国
ョップ」を設立し、2009 年 10 月現在、48 ヵ所の Samsung ブランドショ
への招聘研修
ップがある。
(LCD TV)7
しかし、ブランドショップの歴史は浅く、運用面での経験が不足してい
るため、現地パートナを韓国に招聘し、Samsung デジタルプラザで販売促
進活動と営業システムについてのノウハウ研修プログラムを実施した。
その結果、LCD TV の市場シェアが、UAE で 36.4%、クェート 48.6%、オマ
ーンで 37.5%となった。特に、UAE とクェートでは 46 インチ以上の大型
LCD TV、ブルーHD(超高画質)LCD TV など、プレミアム TV 市場のシェア
7
「三星電子 中東取引先への韓国型マーケティングのベンチマーキング 2009/10/15」
http://www.monitor4u.com
28
90%
がそれぞれ、50%、70%となった。
欧州市場:
大型情報表示モニタをギリシャ他ヨーロッパ各地の博物館に設置し、ブ
ブランドマー
ランドマーケティングを行なった。
ケティング
スポーツマー
1998 年の長野冬季オリンピック以来、7 回続けてオリンピックのスポン
ケティング
サーとなり、ブランドイメージ向上を図った。バンクーバーオリンピッ
クでも、差別化した多様なマーケティング活動を展開し、
「環境にやさし
い」をキーワードに無線通信機器分野のワールドワイド公式パートナと
して、全世界の人々に無線通信サービスを行なった。また、自社のスマ
ートフォン 5 機種などを提供し、全世界の顧客にオリンピック情報をリ
アルタイムで届ける。
出典:朝鮮日報(2009/6)
、韓国 IT 消費者ニュース(2010/02/07)
Samsung は、,市場での Samsung ブランド知名度向上のために莫大な予算を費やしている。
前出の調査会社 ROA Group(2009)によると、2007 年に広告・マーケティングに費やした
金額は、売上の 4%強にあたる 4 兆ウォンを超えるといわれている(広告宣伝費、販売促進
費、企業広告費を合算したもの)。
2.1.3 研究開発(R&D)
研究開発(R&D)投資
(R&D)投資
Samsung は技術力を支えるために R&D 分野にも莫大な金額を投入している。ROA
Group(2009)によると、2007 年末現在で約 3 万 9,300 人が働いており、本社売上の 9.4%に
あたる 5 兆 9,047 億ウォンが R&D に投資されている。同社の R&D 費用は、世界各国の企業
と比較しても高いレベルで、しかも、年々増加し続けている。
29
図表 2-5 R&D 費用(2005~2007 年)
70,000
59,047
60,000
55,851
53,492
50,000
39,300
40,000
36,000
32,000
30,000
20,000
10,000
0
2005年
2006年
R&D費用
2007年
R&D担当者
出典:Samsung Annual Report
また、Samsung 研究所は 34 あり、海外では米国、イギリス、ロシア、イスラエル、イン
ド、日本、中国などの地域に研究開発組織があり、製品開発および基礎技術研究などの研
究活動を厳しい管理の下で行なっている8。
8
ソウルの Samsung 研究所を 2006 年に訪問した際、USB メモリ、カメラ付き携帯電話の持ち込みはすべて
禁止で、違反した場合、メモリ及びカメラの内容をすべてチェックされた。入門の際は、空港の通関と同
じく X 腺による手荷物チェックが行われ、検査されたシールが張られる。
30
コラム【韓国企業の強さ】
■企業あたり国内市場規模
携帯電話産業には、韓国は 2 社(Samsung、LG)。日本は主要 6 社。国内市場の取り合
いで、
疲弊して海外ビジネスに回す余力がない。
だから海外で韓国勢に追いつけない。
(日経新聞 3 月 4 日社説)
■官民一体で商談推進
韓国政府は UAE の原発建設商談を官民一体で受注し、半導体など得意分野の技術支援
も進めている。
(日経新聞 3 月 4 日社説)
■韓国家電大手が新興国市場を席巻
ブラジルの薄型テレビで、Samsung と LG 電子がトップを競っている。インドネシアで
は LG 電子が液晶テレビ、冷蔵庫でシェア首位。中国では、Samsung がトップの NOKIA
に肉薄。(日経新聞 2009 年 12 月 16 日)
■日本の商品開発は国内中心。韓国は現地中心
・日本企業は、現地拠点を通じて現地事情を吸い上げているが、あくまで商品開発は
日本中心。Samsung や LG は研究開発拠点を現地に作り現地人を採用して商品開発をそ
こで行っている。その結果、インドでは、LG が家電部門、Samsung はカラーモニター
部門で市場シェア 1 位を占めている。LG より先にインドに進出したソニーは製品の現
地生産ではなく、日本製の製品を輸入する戦略をたて、市場掌握に失敗した。
・日本企業の戦略は国内市場と先進国向け輸出が中心。韓国は市場シェアを高めるた
め開発途上国向け輸出に力を入れた。また、97 年以降の景気後退時、日本企業は投資
を減らしたが、韓国は「選択と集中」により逆に投資を果敢に行った。不況期だから安
く設備投資ができたメリットがあった。
(韓国の挑戦~景気低迷木に躍進する韓国電機
業界 http://news.onekoreanews.net/print_paper.php?number=50490)
■日本家電の次は NOKIA(Samsung の挑戦)
2010 年、中国の薄型テレビ市場は 3,700 万台と世界市場の 22%を占めるが、Samsung
はこの市場で、ソニー、パナソニックを下し、確固たる地位を築いた。その矛先は携
帯電話の巨人 Nokia に向けられている。チェチソン CEO はテレビ、半導体についで、
携帯でもナンバーワンを奪取すると宣言した。(週間ダイヤモンド 2010/02/27)
31
2.2 LG
2.2.1 企業概要と
企業概要と主要データ
主要データ
LG グループは、電子、化学、情報サービスの三大事業をメインとし、LG エレクトロニク
スは世界に研究開発センター30 カ所と、設計センター6 カ所(ソウル、ニュージャージー
州、北京、東京、ニューデリー、ロンドン)がある。
LG グループの連結売上は以下の通りである。2005 年から 2007 年にかけて LCD パネル及
びテレビ(LCD, PDP, CRT 全て含む)の割合が増加している。
図表 2-6 連結売上げ経緯
Others LCD
10% 12%
Home
Mobile
Appl16%
iance
28%
TV
10%
PC
Optical
9%
Monitor
Storage
7%
8%
2007年 連 結 売 上 53.4兆 won
2005年 連 結 売 上 44.4兆 won
2002年 連 結 売 上 22.3兆 won
Others
3%
Optical
Storage
6%
PC
PDP
3%
Monitor 6%
7%
Home
Appliance
23%
LCD
22%
Optical
Storage
4%
Mobile
21%
TV
9%
PC
2%
Home
Appliance
22%
TV
15%
PDP
3%
Monitor
7%
出典:LG 電子 Annual Report/LG HP 掲載プレゼン資料/
Wikipedia/Display Research '08.3Q Report
2.2.2 経営方針
経営方針および
方針および販売
および販売戦略
販売戦略9
LG は、2007 年過去最高の売上を上げたが、これは「ナム・ヨン革命」
(2007 年に副会長
から CEO に就任)の成果といえる。
「ナム・ヨン革命」は、「電子・情報・通信業界におけるグローバルトップ 3 入り」とい
うスローガンを掲げ、携帯電話「チョコレートフォン」を 1,000 万台販売が貢献するなど、
2007 年の売上げが過去最高の 50 兆ウォン(約 3.5 兆円)となった。以下、6 つの戦略で売
上を伸ばした。
9
出典:2008 年版サムスン電子と LG 電子の競争分析
32
ROA Group, INC から抜粋
LCD
27%
Mobile
20%
1
組織再編
マーケティング強化のため、「外国幹部多数の登用」と「顧客
の声を聞くマーケティング」を行なった。
特に「顧客の声を聞くマーケティング」は、経営会議で顧客相
談スタッフに顧客の電話録音数件を確認し、また、CEO は海外
出張時 2~3 の顧客を訪問し、顧客と1~2時間程度対話する
など顧客の生の声を吸い上げるシステムを作った。
2
責任明確化
世界 8 地域事業本部傘下にコーポレートマーケティングチー
ムを設置した。従来の供給元中心のマーケティングからユーザ
中心の製品毎の地域別マーケティング組織を構築した。
3
デザイン差別化戦
地域別顧客需要に合わせて、顧客のニーズを探り、トレンドを
略
創出するデザイン競争力の高い製品開発を行なう。開発初期か
らデザイン中心に、商品企画、設計、マーケティング等関係部
門で共同チーム編成し、各地(ミラノ、北京・米国、東京)に
デザインセンタを設置。LG は、マーケティングが技術部隊よ
り力がある。
4
人材育成(①トップ
①次期事業部長候補育成のため、製品サイクルに合わせて商品
人材育成と新人教
企画から全てのプロセスを担当する任期1~3年 Product
育)
Business Leader(小事業部長)を選任(現在約 100 名選任)。
また、一定の実績により昇進制度を設定している。
②新人集合教育を既存の 2 ヶ月から 5 ヶ月に延長、6 ヶ月間の
メンター制度と海外市場体験のプログラムにより、LG グルー
プ内で様々な現場体験を積む。
5
ブランドマーケテ
外国人 CMO(Chief Marketing Officer)体制、ヘッドハンテ
ィング戦略
ィングした優秀な人材から構成されるチームによる製品開発
体制構築により、世界最高レベルのマーケティング力を目指
す。
6
スポーツマーケテ
スポーツに特化したマーケティング戦略を推進する(特にサッ
イング
カー)
。
33
2.2.3 その他
その他
沿革は以下の通りである。
出典:LG 電子 Annual Report/Wikipedia
34
コラム【韓国、官民一体型グローバル市場攻略】
多くの重要産業同様、韓国の携帯電話産業の発展は、選択と集中で官民一体となってグ
ローバル市場を攻め、サムスン・LG が世界第二位、三位のメーカとなった。企業と政府が
互いにどのような戦略でグローバル市場を攻略しようとしていたのだろうか。
■米国方式
米国方式の
米国方式の CDMA を採用
90 年代初頭に韓国がデジタル携帯電話の導入を検討した際、世界のデファクトである
GSM のような「強者」がひしめく欧州市場へ参入せず、競争相手が手薄な米国方式の CDMA
で行くと国が決め、国家の命運を賭けたギャンブルに打って出て、見事に「一人勝ち」
した。
■テスト
テスト市場
テスト市場として
市場として狭
として狭い韓国の
韓国の優位性
韓国メーカが情報通信機器を市場に投入する際の優位性は、国土が狭い割に利用者がい
て、少ない投資でビジネスを立ち上げることができることだ。韓国は、北海道の 1.3 倍
の広さしかないところに、4,700 万人の人口、うち 3,000 万人が携帯電話利用者がいる。
韓国全体をカバーするのに 4,000 の基地局で済む。一方、国土が広大な米国では、5 万
もの基地局が必要。
韓国携帯電話メーカは、相対的に割安にテストが出来る韓国で CDMA の実証実験を行い、
その実績を持って米国市場を攻略した。
■政策
政策による
政策による韓国
による韓国メーカ
韓国メーカの
メーカのバックアップ
第三世代携帯電話の導入を決める際、携帯電話事業者は米国方式の CDMA2000 と欧州方式
の W-CDMA のどちらの方式を採用するのか選択を迫られていた。
韓国政府は、CDMA2000 一本でいくと、W-CDMA が欧州やアジアで圧倒的に強くなる可能性
がある中で、韓国が孤立する危険性があることを危惧し、韓国政府が第三世代のライセ
ンスを通信事業者に与える際の条件は、2003 年末までに W-CDMA を立ち上げ、端末は現
行の CDMA とも繋がるデユアルバンドで、CDMA2000 にも対応するデユアルモードとする
ことに決定した。
(現在でこそ、デユアルモードは多くの携帯電話が対応しているが、当
時としては、通信事業者・携帯電話会社双方に多大な負担となり画期的な決定であった)
この韓国政府の決定があり、韓国は携帯電話市場において国際的な競争力のあるメーカ
になったといえる。
■メーカ
メーカの
メーカのグローバル市場展開
グローバル市場展開を
市場展開を一致団結して
一致団結して応援
して応援する
応援する韓国
する韓国
韓国には、自然発生的な愛国心的な気持ちがあり、貿易立国である韓国メーカが海外市
場で成功するためなら協力を惜しまない風土がある。
■ 一方、
一方、高い技術力を
技術力を持つ日本企業は
日本企業は...
日本は独自の i モードなどが使える PDC 方式で、海外方式と互換性がなく日本メーカは
国際市場で競争力を失った。また、欧州勢は GSM に特化していたので、韓国勢が米国市
場では比較的に容易に独占的な地位を築くことができた。
(出典;光文社新書「韓国企業モノづくりの衝撃」2002 年 10 月初版)
35
コラム【顧客目線の現地向け商品開発】
「ナム・ヨン改革」では、地域別顧客需要に合わせて、顧客のニーズを探り、現地にあ
った商品開発を行なうことが重視された。世界各国に 200 人以上いるマーケティングマネ
ージャーが、現地の消費者の声を聞き、様々な商品のアイデアを考え出す。企画にゴーサ
インが出ると韓国本社の技術者が加わり、商品化を進めていく。現地ニーズに沿って開発
された製品をいくつか取り上げる。
■「
「コーラン」
コーラン」を読み上げるプラズマテレビ
げるプラズマテレビ
イスラム教の聖典である「コーラン」を内蔵したプラズマテレビも、2008 年 9 月に UAE
で発売した。全 114 章のコーランを内蔵し、文章の閲覧だけでなく音声で読み上げたり
する機能を付けたところ中東地区でヒットし、同地域で LG が 4 割のシェアを獲得する力
となった。
■伝染病
伝染病を
伝染病を媒介する
媒介する蚊
する蚊を殺すエアコン
2009 年夏、LG はインドネシアで発売した「デング熱」などの伝染病を媒介する蚊を殺す
エアコンを発売した。内蔵した 30~100 キロヘルツの高周波の超音波を発生させる装置
で蚊を駆除できる。この国のマーケティング担当者は、公衆衛生を担当する機関や大学
関係者と共同で何度も効果を検証した。
■デザイン
デザインを
デザインを意識した
意識した「
した「プラダフォン」
プラダフォン」の開発
イタリア「プラダ」と提携して商品化された「PRADA フォン」が、2008 年夏に日本で発
売された。10 万円近い高級機種だが、
日本で当初用意した台数が 2 ヶ月余りで完売した。
プラダフォンは、世界で 100 万台を販売したグローバル機種だが、日本で売るために 500
人の消費者の声を聞いて変更したという。
例えば、液晶画面を触って操作するタッチパネル。グローバル機種では、
「静電式」だが、
爪の長い女性が多い日本では使えず、
「感圧式」に変更した。また、ネット閲覧が多い日
本の事情に合わせ液晶画面も 0.5 インチ大きくして 3 インチとするなど、徹底して現地
の顧客ニーズを把握し、商品開発に直接生かしている。
■一方
一方、
.
一方、日本メーカ
日本メーカは
メーカは..
日本メーカの商品開発は、国内の技術者が主導し、海外の消費者の声がなかなか商品に
反映されない。
「日本向けの高機能な製品を持ち込んで、付加価値を理解できない消費者
が悪い」と言っている。
(出典:「LGE 顧客原理主義で“ガラパゴス”開拓」日経ビジネス 2010/1/25)
36
2.3 Acer
2.3.1 企業概要と
企業概要と主要データ
主要データ
世界第 2 位の PC メーカである Acer は、1972 年に設立され、コンピュータ、液晶ディス
プレイ、サーバ、プロジェクタ等の製品を有する。傘下に「eMachines」
(低価格)、
「Gateway」
及び「Packardbell」
(ファッショナブル)、「Acer」
(高性能)のマルチブランド戦略で PC
を販売している。
世界シェアおよび Acer 製品別の売上比率を見ると、2008 年に PC 市場全体で第 3 位、市
場シェア 12.8%、NoteBook 市場で第 2 位、市場シェア 19.6%を記録している。特に、2008
年は、PC 出荷台数は前年比 57.9%の成長率で他社を圧倒している。
図表 2-7 Acer の市場シェア
Acer
NotePC Topベンダ市場シェア
PC Topベンダ市場シェア
25
25
HP
20
20
Dell
15
15
Lenovo
10
10
Toshiba
5
5
0
0
01 02 03 04 05 06 07 08 09
01
02
03
04
05
06
07
08
09
出典:DataMonitror 社 Acer Company Profile 2009/6/26
図表 2-8 製品別売上げ比率
Acer製品別売上比率
Note PC
Desktop PC
Display
9%
19%
15%
57%
4%
17
%
15
%
19 6%
%
60
15
%
%
64
%
Others
2005年Q1-Q3
2006年Q1-Q3
2007年 Q1-Q3
3%
10%
15%
72%
2008年 Q3
3%
9%
15
73
%
%
2009年 Q3
出典:DataMonitror 社 Acer Company Profile 2009/6/26
37
2.3.2 製品および
製品および販売
および販売戦略
販売戦略10
Acer は分社化と自社ブランド強化により、ニーズに応じて異なる生産体制およびブラン
ドで対応している。同社は、2000 年に OEM ビジネスの分離として、研究及び生産部門を
Wiatron、PC ペリフェラル部門を Benq として独立させた。
「Acer」「eMachines」という同社の基本ブランドに加えて、
「Gateway」「Packard Bell」
で使い分けるマルチブランド戦略を行い、ニーズに応じて異なるブランドで対応している。
例えば、
「Gateway」
(2007 年買収)は、米国・Asia Pacific で販売し、
「Packard Bell」
(2008
年)は欧州を中心に販売している。
直販は行なわず、チャンネル販売形式によるシェア拡大も強みとなっている。
2.3.3 事業地域
Acer は、最も市場が大きく重要な市場である米国市場に真っ先に製品を投入する代わり
に、周りの市場を先に攻略する戦法を取った。このため、Acer は、激戦地域ではない南米・
中米、東南アジア、中近東において販売し、認知度を向上させて行った。そして、1995 年
には、台湾以外にメキシコ、ボリビア、チリ、パナマ、ウルグアイ、タイ、フィリピンに
おいてトップシェアであった11。2009 年の地域別売上を見ると、Western Europe と CEMA
地域においては HP に続き 2 位につけており、それぞれ 18%、13%のシェアを占めている。
2.3.4 その他
その他
Acer の SWOT 分析は以下の通りとなる(DataMonitror 社 Acer Company Profile(2009/6/26
より抜粋)。
10
11
詳細は日経エレクトロニクス 2007/8/27、日経マイクロデバイス
http://www.answers.com/topic/acer-inc
38
08/9/28 参照のこと。
図表 2-9 Acer の SWOT 分析
強み
弱み
①ノート PC 市場で強固な地位を獲得
②低価格販売によるシェア獲得
欧州市場への過度な依存
③企業買収による企業基盤の強化
機会
脅威
①激しい競争
①成長するスマートフォン市場
②特許権訴訟の歴史
②Netbook 市場の成長
③為替リスク
出典:DataMonitror 社 Acer Company Profile(2009/6/26 より抜粋
「強み」は次の通りである。
①ノートブック市場で 2 位を獲得し頑強なノート PC 市場で地位を獲得している。
②直販販売体制はとらず、世界各地の販社を通して販売することで徹底的にコストカット
を図っていること、商品企画や製品デザインを ODM 企業任せにしていることなどから、
低価格販売によるシェア獲得が可能となっている。
③2007 年 Gateway 社買収、2008 年台湾デバイスメーカ E-Ten を買収等、企業買収による企
業基盤の強化を図っていること、などが挙げられる。
「弱み」として、Acer の 2007-2008 年の売上比率の 51%が欧州市場が占め、今後も成長が
見込めないことから、欧州市場への過度な依存が挙げられる。
「機会」については、2008 年台湾デバイスメーカ E-Ten の買収、スマートフォン市場は今
後数年 15%の成長率で 2013 年の市場は US$950 億以上、携帯端末市場全体の 47%を占めると
予想されていることなどから、成長するスマートフォン市場の外部環境が機会になると考
えられる。またブランドを築き上げている Netbook 市場の 2008 年成長率は 68.5%(ノート
PC は 2.7%)であることから、今後益々の成長が見込まれている。
「脅威」については、
①無ブランドの PC メーカを含む競争激化や低価格化、
②他社による特許訴訟(2008 年 Acer は HP との訴訟を決着)、2008 年 Acer 売上の 95.3%は
台湾国外からの商売により得られるため、為替リスクに左右されることなど挙げられる。
39
なお、Acer の沿革は以下の通り。
概要
1972
~
80年
確実な成長期
72年、創業者Shih Chen Jung氏National Chiao Tung
大学を主席で卒業、設計技術者としてQualitron
Industrial Corp.入社。
'76年、数人の仲間と後のAcerとなるMultitech
International社を創業(初期投資:US$25,000)、当
初、携帯電子ゲーム機を設計、その後、半導体の輸
入販売も実施。
81年、社名をAcerに変更。教材としての
技術力を背景
MicroProcesserを販売し、海外販売の最初の成功を
にPCのOEM生産
味わう。
を拡大
'83年、PCのOEM生産を開始。
1981
'86年、当時、多くの台湾企業が製品のコピー生産の
~
段階にあったが、Acerは、調査研究にも力を入れ、
88年
世界で初めて漢字入力システムを開発。また、32bit
PCの販売もCompaqに次ぐ2番目だった。
'88年、株式公開。創業以来、毎年100%成長し、'88
年は営業利益US$2500万。
後退期
1989
~
'92年
IBMから米国
Acer社長招
聘、PC市場競
争激化及び台
湾ドル高によ
る業績悪化
1993 再浮揚期
~
99年
2000 OEM生産
ビジネスの分
~
離
89年、米国TI・台湾の銀行とDRAM工場を建設(投資総
額US$2.4億)、生産DRAMの半分をACERが引取り、残り
を世界市場で販売する計画。(Acerの参入により
DRAMの供給過剰が噂され、収益を懸念する意見が多
かった)
また、同年IBM20年の経歴のLiu氏を米国AcerのTopに
就任。しかし、Acerの伝統的進歩主義企業文化とIBM
流経営は合わず、混乱を招くこととなる。一方、市
場が成熟化し、価格競争が激化、また、台湾ドル高
となり、利益を生むことが困難となった。
'91年、初めての損失計上、その多くが米国Acerに起
因。
'92年、Liu氏辞任、Shih氏が米国も含め全てのAcer
の指揮を執ることに。
92年、Intel 386及び486対応のPCの他、UNIXシステ
ムを発表。'93年、RISC仕様のPCを発表。
'93年、TIとのDRAM合弁生産が寄与し、最高益
US$7500万(内、43%がDRAM)を更新。
'94年、マレーシアにKeyboard及びMonitor工場設立
'97年、TIのNoteBook事業を買収。同年、米国
AcerUS$1.4億の損失計上。(当時、Acerの事業の1
/3が米国)
'98年、メキシコにアジア地域以外で初めての工場を
建設。メキシコ・南アフリカ等多くのEMEA地域で
Acerがトップブランドとなった。
00年、OEM受託先からAcerブランドPCと競合している
とのクレームを受け、受託生産部門をWistron社とし
て分離。同時に、ディスプレー(AU Optronics)・光
ディスクドライブ等PC周辺機器(BenQ)・半導体部門
も分離。
'03年、欧州PC販売US$46億、市場シェア48%。
OEM販売の分離をきっかけとして、直販をやめ、販
社・ディーラとより緊密な関係を築くこととした。
同時に、企業向けの販売により注力することとし
た。
'05年、世界初のカーボンファイバー製NoteBook
Ferrari 4000を発売。
'07年10月、Gateway社をUS$7.1億で買収(100%子会
社)
'08年6月、Packard Bell社をEuro6600万で買収
(100%子会社)
売上
(US$)
税前利益
(US$)
-
-
$5.3億
('88)
$2650万
('88)
$360万
$9.8億
('90)
('90) ▲$2270万
('91)
主要製品/備考
・携帯電子Game機
・輸入半導体
OEM PC
-
$32億
('94)
$57億
('95)
$7500万
('93)
$2億
('94) アジア地区に37ヶ所
$0.9億 の組立て工場
('96)
$1.2億
('97)
$66億
('04)
$101億
('05)
$109億
('06)
$141億
('07)
$180億
('08)
$8億
('04) 03年、世界第5位
$11億 のPCベンダー
('05)
$12億
04年、
('06)
同4位
$14億
('07)
08年、
$19億
同3位
('08)
出典: http://www.answers.com/topic/acer-inc 及び Acer 社 Annual Report
参考文献:日経エレクトロニクス 2007/8/27、日経マイクロデバイス 08/9/28
40
2.4 Asus(AsusTek)
2.4.1 企業概要と
企業概要と主要データ
主要データ
ASUS(華碩:アスーステック コンピュータ)は 1989 年に台湾で設立され、わずか 20 年で
世界的な 3C(コンピュータ、コミュニケーション、コンシューマー・エレクトロニクス)メ
ーカとなった。
同社はノートパソコン、マザーボード、ビデオカード、サーバ、光学記憶装置、ADSL/
ケーブルモデム LCD、PDA モバイルコンピュータ、携帯電話等の製品を生産しており、その
うち、マザーボード、ビデオカード、ADSL/ケーブルモデム LCD の出荷量は世界第 1 位、ゲ
ーム機の ODM、OEM 製品は世界第 2 位、ノートパソコンは第 6 位、光学記憶装置製品は第 4
位である。また、世界初のネットブックである EeePC を販売している。
ASUS は世界 40 以上の国と地域に拠点があり、年間収入は 230 億ドル、従業員数は 10 万
人を超える。
製品販売比率は以下の通り。ノートブック内システム製品の割合が成長している。
図表 2-10 Asus のコンポーネント別販売比率
2009年第2四半期(NT$490億)
Handheld
1%
2009年第3四半期(NT$680億)
Handheld 1%
Open
Open
Platform
内 31%
MB &
VGA 23%
PC
System
68%
内
NoteBook
43%
NetBook
21%
Platform
25%
内 MB &
VGA 19%
PC
System
74%
内
NoteB
49%
NetB
22%
2009年第4四半期(NT$850億)
Handheld
1%
Open
Platform
PC
19%
System
内 MB &
78%
VGA 14%
NoteB
55%
NetB
19%
出典:Asus Annual Report 及び Pegatron 投資家紹介プレゼン資料
41
2.4.2 製品および
製品および販売
および販売戦略
販売戦略12
2010 年 6 月、100%子会社だった Pegatron 株式の 75%を Asus 株主に割当て、Asus の
Pegatron 出資比率を 25%に減額した。Pegatron は独立企業となり、契約ベースで Asus 向
けにノート PC、MotherBoard やその他コンポーネントを販売することになった。このこと
で、他企業も平等に発注され競争が促進されることになった。
図表 2-11 Asus グループ
Asus
2482億NT$(単独)
100%→25%
ASRock
MotherBoard
Pegatron
52億NT$
OEM Component
4461億NT$(連結)
100%→25%
Proteck
NotebookPC、
CE*1
Aslink
Maintek
1153億NT$
MotherBoard、 145億NT$
DesktopPC、CE*1
Unihan
1483億NT$(連結)
Cable
CaseTek
Casing、Mold
36億NT$
出典:Asus Annual Report 及び Pegatron 投資家紹介プレゼン資料
2.4.3 事業地域
Asus の事業地域は以下の通りである。ヨーロッパに占める割合が高く、同社の弱みとも
なっている。
図表 2-12 Aus の事業地域別比率
2009年第2四半期
Others
17%
Europe
35%
2009年第3四半期
Others
16%
2009年第4四半期
Others
19%
Europe
42%
Asia
30%
Asia
42%
Asia
48%
Europe
51%
出典:Asus Annual Report 及び Pegatron 投資家紹介プレゼン資料
12
Xbit Laboratories 2010/1/5 より一部抜粋
42
2.4.4 R&D 体制
企業内の研究開発能力及び有力企業との協業の両面において Asus は協業他社より優れて
いる。
図表 2-13 PC メーカ各社の R&D 支出額比較
R&D 支出
対売上比
Asus
NT$144 億(US$4.57 億)
2.2%
Acer
NT$5.5 億 (US$1700 万)
対売上比 0.1%
Lenovo
US$1.3 億
対売上比 1.4%
出典:Data Monitor 社 Asusteck Company Profile 2009/6/26
2008 年時点のデータ
2.4.5 その他
その他
Acer の SWOT 分析は以下の通りとなる。
図表 2-14 Asus の SWOT 分析
強み
①市場における優位性
②R&D手腕
弱み
欧米市場への過度な依存
機会
Netbook市場の急成長
脅威
①End User市場の縮小
②他企業との競争激化
出典:Data Monitor 社 Asusteck Company Profile 2009/6/26
「強み」としては、①市場における優位性(以下)
、②前項で説明した他企業と比較し R&D
投資が多いことなどがあげられる。
43
・世界一の Motherboard メーカ
・PC 市場で世界第6位。2008 年:NoteBook 580 万台、NetBook 490 万台を出荷
・欧州・中近東・アフリカ及びアジアの PC 市場全体で、第 5 位('09 年第1Q)
・アジア NoteBook 市場第 4 位('09 年第1Q)
・Business Week IT 100 社の 11 位にランク('08 年)
・ 台湾 IT 市場 Global ブランド TOP10 の第 1 位
「弱み」として、Acer 同様に欧米市場への過度な依存が挙げられる。2008 年総収入の 36%
が欧米市場向けが占めた。
「機会」として、Netobook 市場の急成長が挙げられる。
「脅威」は、世界的な経済不況の影響を受けて End User 市場が縮小すること(2008 年世
界の IT 支出は前年比 4%の減少)と、厳しい競合が挙げられる。
競争企業は、Asus が注力する PC 市場では、HP、Dell、東芝、Acer であり、携帯市場では、
ノキア、モトローラ、ソニーエリクソン、Samsung、LG、Apple、HTC、Palm が挙げられる。
44
Asus の沿革は以下の通りである。
概要
Acerの技術者4名、1990年4月2日設立
(当初社名:Hung-Shuo Computer/
1994よりAsusteck)
MotherBoard
メーカとし まずIntelがPCプロセッサをIBM仕様で開発し、
て設立
その後、台湾企業がMotherBoardを開発して
いた時代に、Asusの4名の創業技術者が、
1990 ~ 1994年、 80386互換MotherBoard開発の際に得たIntel
Dual
92年
の技術データを元に80486MotherBoardサン
Pentium
プルをIntelに先駆けて開発。AsusがIntel
MotherBoard
に持ち込み試験したところ完璧に動作、こ
はAsusが最
れをきっかけにIntelとAsusの交流開始。
初に開発
1990年
1993 ~
95年
PentiumベースのMotherBoardが生産できる
数少ないメーカとして売上を伸ばす。
主要製品
売上
利益(税引前)
MotherBoard
(MB)
NT$2.3億
NT$3700万
MotherBoard
(3-8万台/月
/'92)
NT$14億('91)
NT$1.2憶('91)
NT$22億('92)
NT$2億('92)
サーバ投入('97)
NT$34億('94) NT7.5億('94)
NT$79億('95) NT$19.5億('95)
NT$133億
('96)
NT$214億
('97)
NT$352億
('98)
NT$707億
('00)
NT$744億
('03)
NT$781億
('04)
NT$1798億
('05)
NT$3860億
95年、PCサーバを投入、97年、ノートPC・
PC関連製品
CD-ROMドライブを市場投入、
1996 ~
ラインアップを
99年
PC関連の製品ラインアップを拡張、事業業
拡大
績を増強。
MotherBoard
(80万台/月/'97)
Netbook・CDROM投入
PC関連から
PDA・携帯電話でモバイル市場に参入
2000 ~
携帯電話に
06年
2003年、905gのNetbook投入
事業拡大
MotherBoard
(1700万台/年
/'02)
世界1/6Asus
(4200万台/年
/'04)
VGA780万台/年
/'04
安価なNetbook Eee PCを市場投入、
2007年
NetPC投入で Asusブランドを築く
6月
Asus一躍
世界ブランド
10月
PDA/スマートフォンを英国市場に投入
Notebook 420万
台
Netbook 30万台
NT$5899億
('07)
Notebook 580万
台
Netbook 490万
台
NT$2669億
('08)
NT$206億('08)
NT$2482億
('09)
NT$128億('09)
2008年
1月
OEM受託先であるDell/HPからAsusの自社ブラ
ンド事業にノウハウ・営業機密が漏洩してい
るとの懸念が表面化、‛08年1月、Asus100%子
会社 Pegatron・UnihanにOEMビジネスを分社
化
Notebook 680万
OEM受託先から更なる明確なオペレーションの
台
分離要求あり、AsusブランドビジネスとOEMビ Netbook 540万
台
ジネスを完全に切り離すため、Pegatronへの
MotherBoard
出資比率を25%まで削減方針決定
2300万台
・'10年6月1日、Petaton株式の75%をAsus株主
Asusは、
に割当て、AsusのPetagron出資比率を25%に 2010年目標
ブランド事業 減額
MotherBoard:
に特化
・'10年7月1日、Pegatron、台湾証券取引所に 2500~2800万
2010年
NoteBook:
上場予定 -簿価:NT$929億(US$28億)-
6月
1000~1200万
NetBook:
・'09年第1~3Q
860~970万
Pegatron営業利益:NT$45億
Asus営業利益:NT$23億
OEM事業を
2009年 Pegatron
12月
/Unihan
に分離、
出典: Asus Annual Report 及び
Asus 投資家向けプレゼン資料より
45
NT38億('96)
NT$70億('97)
NT$116億('98)
2.5 Lenovo
2.5.1 企業概要
1984 年、中国科学院計算機研究所の研究員 11 名が資本金 20 万元(約 280 万円)で設立
し、1994 年には香港株式市場に上場した。1997 年聯想ブランドのパソコンが中国内で売上
トップを記録した。聯想(レノボ)は中国最大の PC 企業であり、HP、ACER、DELL に次ぐ世
界第 4 位の PC メーカでもある。主な製品はデスクトップパソコン、サーバ、ノートパソコ
ン、プリンタ、パームトップパソコン、マザーボード等である。
2005 年聯想は IBM の PC 部門を買収し、グローバル経営への重要な一歩を踏み出した。
聯想は本社を北京から、IBM の PC 部門があった米国ノースカロライナ州ローリー近郊のモ
ーリスビルに移転した。世界 66 カ国に支社を持ち、166 カ国で事業展開しており、全世界
の従業員総数は約 23,000 人である。中国・北京、日本・東京、米国・ローリーの 3 ヶ所に
研究開発拠点を設け、中国本土では、北京の他、深セン、上海、成都にも研究所がある。
聯想の販売網は全世界に及び、中国国内では 10,000 ヵ所近くの小売販売店がある。製造・
物流拠点も中国、メキシコ、米国、ポーランド、インド、マレーシア、日本、オーストラ
リア等に及ぶ。
2.5.2 企業再編成
2008 年下半期は世界金融危機の影響を受け、ハイエンドを中心に全世界で PC 販売が減
少し、聯想は手痛い打撃を受けた。特に 2008 年度(2008 年 4 月 1 日~2009 年 3 月 31 日)
第 3 四半期は世界各地で売上高が大幅に下落し、アジア太平洋地域で 23%減、中国でも 1%
減となり、2008 年度の売上高は 149 億ドル、当期純損失 2.26 億ドル、過去 11 期で初の赤
字となった 。
このような厳しい情勢の下、聯想の創業者である柳伝志 氏は 2009 年 2 月董事長に再度
就任し、短期利益志向が強かった米国人 CEO に替えて、楊元慶氏を新 CEO に据え、再編と
発展戦略の策定に乗り出した。
「市場戦略」では地域別区分を改め、高成長の中国市場と新興国市場での事業強化及び
先進国市場での事業安定化を目指し、中国市場、新興国市場、成熟市場の三大市場に再編
した。
「製品戦略」についても再構築を行った。IBM 買収で聯想は IBM のビジネス顧客を入手
したが、近年の PC 市場を分析すると、成長が著しい個人市場と鈍化したビジネス市場に分
かれ、
聯想は個人向け Idea Pad とビジネス向け Think Pad の 2 大製品グループに再編した。
市場戦略と製品戦略の見直しと平行して、事業構造の大規模再編も行った。2009 年第1
四半期に、全世界の総従業員数の 11%に相当する 2,500 人の人員削減と、管理職の年間給
与と福利厚生費の 30-50%カットを実施した。
46
これら施策が功を奏し、聯想は急速に苦境から抜け出した。2009 年度第 1 四半期に損益
分岐し、第 2 四半期に 5,300 万ドルの黒字に転じた。
第 3 四半期も好調を続け、
黒字は 8,000
万ドルに増加した。2009 年度の第 1~第 3 四半期(2009 年 4 月 1 日~2009 年 12 月 31 日)
の累計売上高も 123 億ドルに達した。
世界市場において、
聯想は 2009 年度第 1~第 3 四半期にわたり、
連続してシェアが伸び、
全世界市場シェア 9%に達した。売上高伸び率も業界平均の 17%を抜き、42%に達した。
2.5.3
2.5.3 地域別戦略
地域別戦略
聯想の急速な業績回復を支えたのは急成長する中国市場と新興国市場である。中国市場
の 2009 年第 3 四半期の売上高は 23 億ドル、前年同期比 45%増、前期比 14%増となり、世界
総売上高の 47%を占めている。中国市場シェアも 2.8 ポイント増の 33.5%と過去最高となっ
た。
聯想が中国市場で好業績を上げた主因は、中国政府が推進した「家電下郷」(※農村への
家電・パソコン普及プロジェクト)による需要創出、中国農村部の郷鎮地区における販売ル
ートの整備強化や販売店の増加が挙げられる。
中国以外の新興国市場における同社の第 3 四半期売上高は 8 億 5,700 万ドル、前年同期
比で 53%増、世界総売上高の 18%を占める。新興国市場の総売上高前年同期比は、業界平均
の 19%を大きく超え 53%増となり、新興国市場シェアも 1.2 ポイント上昇した。
成熟市場における同社の第 3 四半期売上高は 17 億ドル、前年同期比で 13%増、世界総売
上高の 35%を占める。北米市場は安定しており、西欧市場でも黒字に転じた。
聯想が短期間で業績の低迷から回復したことで、その戦略の正さが実証された。
2.5.4 製品戦略
聯想は中長期の成長戦略として、コンシューマ事業の強化を図る方針である。既存の PC
関連製品の優位性を固める一方で、2010 年初頭モバイルインターネット市場の開拓を目指
した発展戦略を定めた。2010 年 1 月米国ラスベガスで開催された世界最大規模の国際家電
見本市「2010 International CES」で、聯想は「モバイルインターネット戦略」を発表し
た。この戦略は、ネット接続モバイル端末、クラウド方式の採用、
「モバイルインターネッ
ト端末+コンテンツ+サービス」を連携した End-to-End の事業モデル構築、及びその海外
展開を含めた内容となっている。
聯想は「モバイルインターネット戦略」を具体的に推進する為、2009 年 11 月携帯電話
事業部門である聯想移動(レノボ・モバイル)の株式を 2 億ドル分買い戻し 、2010 年初
頭にはスマートフォン、ネットブックなど 3 モデルのモバイルインターネット端末を発表
した。
47
2.6 中国市場における
中国市場における日本
における日本と
日本と韓国企業の
韓国企業の違い
新興国の一つとして市場が急成長している中国を事例として、韓国、日本企業がどのよう
に市場にアプローチしているのかを紹介する。
分野
現況
TV
・ 2009年中国のカラーTV生産台数は9,899万台(成長率9.6%)、世界シェアは48.3%。
2009年中国のフラットTV販売数は2,500万台で、2010年には3,500万台以上に増
え、30%増の見込み。
・ 小型テレビの市場シェアは減少、46インチ以上の大型スクリーンTVは2005年の
6.2%から2009年の32%へ増加。フラットTVの値下がりスピードは速く、価格帯
7,000~10,000元のフラットTVが主流(中国電子視像産業協会のデータ)。
・ 2009年の政府による農村部を対象にした家電普及支援策である「家電下郷」と「家
電以旧換新」により、特にテレビの販売を後押し。中国政府は2010年に奨励政策
をさらに強化し、特にフラットテレビの販売へとつなげていく方針。
PC
・ 2009年生産量は1億8,200万台(前年比33.3%増)、うちノートPC成長率は38.3%
・ 大・中規模都市(一二級都市)の PC 市場は飽和状況、中・小規模都市や農村市
場が発展のポイント、つまりボリュームゾーン市場へのシフト
・ 販売策略が、2009 年に大きく変化。国美、蘇寧等の家電量販店や、宏図三胞等
の IT 量販店の市場影響力が拡大。各 PC メーカは、販売ルートの整備を強化。
携帯
電話
・ 2009年携帯電話の契約件数総計は7億4,700万件で、普及率は56%。中国の携帯電
話生産量は世界の約半分。
・ 中国には300社余りの携帯電話メーカがあり、特に現地企業と外資系企業の市場
競争は熾烈。2009年、現地企業は矢継ぎ早に新製品を発売したが、効果はまだ見
えず、以前として外資系企業が70%を占める。2009年第3四半期の市場シェアは、
Nokia50.08%、Samsung12.36%、Dopod9.02%、Sony Erricson5.65%、Motolora2.94%、
LG2.71%、Lenovo1.91%(Datacenter.Uesky.com 2009/10)。
・ 市場トレンドとして、第三世代(3G)携帯電話の拡大、PHSの市場撤退による大
量のローエンド携帯電話の販売、「山寨」携帯電話(低コスト、低価格が売りの
偽ブランド携帯電話)の拡大による正規版携帯電話売上の減少、などが挙げられ
る。なお、iPhoneが聯通(チャイナユニコム)から発売されたが、WiFiを外した
為iPhoneを生かせず、中国では普及が緩やかである。
デジ
カメ
・ 2009年デジカメ生産量は8,026万台で、2008年よりやや減少。生産量は世界の80%
以上。販売量は年間販売量970万台、前年比10%増。
・ 市場は数年間の熾烈な競争を経て、数十のブランドが乱立する状態から、現在は
2009年にさらに拡大し、キヤノン、ソニー、ニコンが上位3位を占め、パナソニ
ック、富士フイルム、オリンパス、コダック、サムスン、カシオ、ペンタックス、
リコー、アイゴ(愛国者)等の十数ブランドに絞られるようになった。
48
拡大する中国市場に対し、各国企業の戦略は異なる。日立、NEC等に代表される日本、欧
米の企業は比較的早期に中国進出を果たしたが、SamsungやLGに代表される韓国企業、Acer
やAsusに代表される台湾企業の出足はやや遅かった。しかしここ数年、韓国、台湾企業の中
国における発展はめざましく、日本企業は逆に落ち込みつつある。以下に、いくつかの観点
から韓国と日本企業の戦略や方針の違いをまとめた。
観点
企業戦略/活動
韓
現地化が比較的進んでおり、多くの中国人が管理職に就いている。
国
人材の
現地化
管理職は主に本社からの直接派遣で、上級管理職はほぼ全員日本人。中
日
国人社員は昇進しても課長止まりでキャリアの限界がある。給与は年功
本
序列で、社員に対するインセンティブも乏しい。結果、中国現地の人材
にとって日本企業の魅力は薄い。
Samsung は社名を「中国三星(中国 Samsung)」とし、「中国人に愛され
韓
ブランド
マーケティ
ング
国
る企業、中国社会に貢献する企業に」というスローガンを掲げ、韓国企
業のイメージを薄め、企業の好感度を高めている。日本企業と同様グル
ープ会社は多いが、Samsung ブランドで統一し、販売ルートも資源共有
を強化している。
多種多彩な製品を抱える企業グループが多く、子会社や製品ライン毎に
日
合弁企業を作ったり、独自の販売ルートを開拓しているため、統一され
本
たブランドイメージは低くなり、企業グループとしての相乗効果を発揮
することができていない。
研究開発
拠点
韓
Samsung は 2004 年に中国に研究開発センタを設立、現在中国に 5 つの研
国
究所があり、4,000 人以上の研究員を抱える。
日
研究開発の規模が小さく現地化業務が主で、中核技術に関わるような研
本
究は少ない。
ニーズの変化が激しい中国市場の特徴に対応し、中国本土に研究開発セ
韓
ンタを設け、ターゲットに合った多彩な製品をスピーディーに開発し発
国
表。例えば LG は 2009 年に、前年比 2 倍にあたる約 60 種類の携帯電話
を発売。
タ ー ゲ ッ
ト・製品
以前はトップブランドであったが、製品の多くは日本で研究開発、設計
するため、中国市場のニーズにあわない。日本の家電製品は高価格を維
日
持し、ボリュームゾーンをターゲットとした低価格競争には参入せず、
本
販売促進キャンペーンに取り組むことも多くなかった。日立は 2009 年
末中国のテレビ市場から撤退したが、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯
機等の事業でも苦戦中。
49
コラム【海外売上比率の高い韓国企業、低い日本企業、営業利益率の高い欧米系企業】
各社の海外売上比率を見ると、Samsungが81%と非常に高く、日系企業は最も多いソニ
ーで76%、三洋54%、シャープ51%と続き、最も低いのはNTTデータの5%である。このこ
とから、Samsungに比べ日本企業は国内市場に目が向いているといわざるを得ない。営業
利益率は2008年Samsungは景気の後退等を受けて落ちこんだため5%にとどまる一方
(2006年は10.5%、2007年は9.1%、2009年は8%で、2008年を除くと比較的高い営業利益
率となっている)、日系企業はマイナス数%から1%程度の企業が目立ち、営業利益は非常に
低い。なお、欧米系企業は概して海外売上高比率が高く、営業利益率も高いのが特徴となっ
ている。
90%
83%
81%
80%
海外売上高比率
(2008年、%)
営業利益率
(2008年、%)
81%
76%
69%
70%
62%
60%
54%
56%
51%
53% 51%
47%
50%
47%
41%
40%
43%
36%
35%
32%
30%
30%
25%
25%
22%
20%
0% -2% -4%
1%
1%
1%
Sa
m
-10%
日
立
富
士
三 通
菱
電
機
su
ng
ソ
ニ
ー
三
洋
シ
ャ
ー
プ
パ 東
ナ 芝
ソ
ニ
ック
0%
4%
0%
5%
10%
4%
4%
HP
Or
ac
le
-3%
9%
GE
Go
og
Am le
a
M zon
ic r
os
of
t
9%
SA
P
5%
NT NE
Tデ C
ー
タ
Si
em
en
s
10%
出典:各社有価証券報告書を基に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが
作成したデータを元に、弊財団で編集
50
2.7 各企業別生産地域と
各企業別生産地域と動向
これまで韓国企業、台湾企業、中国企業の企業戦略や強みを見ることで、地域によって異
なる戦略を打ち出していることがわかったが、本項では実際各企業がどこで生産しているの
か、また生産動向を述べる。
図表2-15 メーカ別生産地域(Samsung)
中国/香港
中国 香港
TV(CRT, LCD)、
、 STB、
、コンパクトDSC、
、 DVC、
、
コンパクト
デジタルオーディオプレーヤ、
レコーダ
デジタルオーディオプレーヤ、 DVDレコーダ
電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機
ノートブックPC、
モニタ、
ノートブック 、LDCモニタ
モニタ、ファクシミリ、
ファクシミリ、ページ/インクジェットプリンタ
ページ インクジェットプリンタ、
インクジェットプリンタ、
携帯電話(GSM,CDMA,UTMS)、
携帯電話
、 コードレス電話
コードレス電話
北米
韓国
チェコ
TV(PDP, LCD)、
、コンパクトDSC、
、 DVC、
、
コンパクト
ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、掃除機
LDCモニタ
モニタ、
モニタ、ファクシミリ、
ファクシミリ、ページ/インクジェットプリンタ
ページ インクジェットプリンタ、
インクジェットプリンタ、
携帯電話(GSM,CDMA,UTMS)、
、 コードレス電話
携帯電話
コードレス電話
大型/中小型
、有機EL、
大型 中小型TFT、
中小型
有機 、 HDD
TV(LCD)、
、 LCDモニタ
モニタ
インド
TV(CRT, LCD)、
、ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
、携帯電話(
冷蔵庫
携帯電話( CDMA)
マレーシア
電子レンジ
電子レンジ
ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫
中南米
タイ
TV(CRT, PDP, LCD)、
、
LCDモニタ
モニタ、
モニタ、携帯電話(
携帯電話(GSM)
TV(CRT, LCD)、
、電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、
ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機
インドネシア
TV(CRT, LCD)、
、
STB、
、 DVDプレーヤ
プレーヤ
Samsung
■ユニット製品
機器や
ユニット製品・
製品・部品は
部品は主に韓国内で
韓国内で生産、
生産、完成品の
完成品の AV機器
機器 や家電は
家電は
北米向け
製品は
は中南米地域で
北米向け製品
中南米地域で、欧州向けは
欧州向けは欧州地域
けは欧州地域で
欧州地域 で生産。
生産。
AV機器
機器や
機器や 情報通信機器の
情報通信機器 の多くが生産
くが生産コスト
生産 コストの
コストの安い中国で
中国で生産。
生産。
■ LCD-TV等
等ディスプレイ分野
世界シェア
位。
ディスプレイ分野の
分野の実績高く
実績高く、TV世界
世界シェア1位
シェア 位、大型TFT2位
大型
中小型TFTでは
ではシャープ
に次 いで2位
中小型
では シャープに
シャープ に代わり1位
わり 位。携帯電話は
携帯電話はNokiaに
いで 位 。
■近年LED事業
事業に
近年
事業 に注力。
注力。シェアトップ日亜化学工業
シェアトップ日亜化学工業の
日亜化学工業のキャッチアップを
キャッチアップを狙う。
(注)本項の
には、
本項のSamsungには
には、グループ企業全
グループ企業全てを
企業全てを含
てを 含む。
出典:富士キメラ総研究所のデータを元に弊財団で編集
図表 2-16 メーカ別生産地域(LG)
ポーランド
TV(PDP, LCD)、
、
電子レンジ
レンジ、
電子
レンジ、ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
モニタ、
冷蔵庫、LCDモニタ
モニタ、
携帯電話(
携帯電話(GSM)
中国
TV(CRT,PDP,LCD)、
、STB、
、 DVDプレーヤ
プレーヤ
LCDモニタ
モニタ、
CDMA, UMTS)
モニタ、携帯電話(GSM,
携帯電話
リチウムイオン2次電池
リチウムイオン 次電池セル
次電池セル
韓国
インド
TV(PDP, LCD)、
、電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、掃除機、
掃除機、空気清浄機
携帯電話(
携帯電話(GSM, CDMA, UMTS)、
、
大型/中小型
、有機EL、
大型 中小型TFT、
中小型
有機 、光ピックアップ
TV(CRT, LCD)、
、
洗濯機、
洗濯機、掃除機、
掃除機、
携帯電話(GSM)
携帯電話
中南米
TV(PDP, LCD)、
、
電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
モニタ、
冷蔵庫、LCDモニタ
モニタ、
携帯電話(GSM)
携帯電話
タイ
TV(CRT)、
、ルームエアコン、
ルームエアコン、
洗濯機
インドネシア
TV(CRT, LCD)、
、
DVDプレーヤ
プレーヤ/レコーダ
プレーヤ レコーダ
洗濯機、
モニタ
洗濯機、LCDモニタ
LG
■海外20ヵ
海外 ヵ所の工場を
工場を持つが、
つが、ウォン安
ウォン安の影響で
影響で海外工場の
海外工場の 見直し
見直し中 。
家電製品組み
家電製品組み立ては、
ては、販売先地域の
販売先地域の隣接工場で
隣接工場で、 ユニット・
ユニット・部材は
部材 は
中国・
中国・韓国内で
韓国内で生産。
生産 。アジア市場向
アジア市場向けは
市場向けは中国
けは中国、
中国、韓国、
韓国、東南アジア
東南アジア、
アジア、
北米向けは
北米向けは中南米
けは中南米、
中南米、欧米市場向けは
欧米市場向けはポーランド
けはポーランド。
ポーランド。
■主力製品は
、大型TFT。
。LCD-TVは
は3位
位。
主力製品は家電と
家電 とTV、
大型
■電気自動車への
電気自動車への高
への高い関心から
関心からリチウムイオン
からリチウムイオン2次電池
リチウムイオン 次電池の
次電池の生産開始。
生産開始。
(注)本項の
には、
本項のLGには
には、グループ企業全
グループ企業全てを
企業全 てを含
てを含む。
出典:富士キメラ総研究所のデータを元に弊財団で編集
51
図表 2-17 メーカ別生産地域(Acer)
中国
チェコ
デスクトップPC
デスクトップ
TV(LCD)、
、 プロジェクタ、
プロジェクタ、
STB, コンパクトDSC、
、
コンパクト
デスクトップ/ノートブック
デスクトップ ノートブックPC、
ノートブック 、
LCDモニタ
モニタ、
モニタ、マザーボード
台湾
携帯電話(
、
携帯電話( UMTS)、
大型/中小型
大型 中小型TFT
中小型
中南米
LCDモニタ
モニタ
Acer
■ Acerは
は 2000年分社化
年分社化。
年分社化 。
WIATRON(独立
独立、
研究・生産部門)、
生産部門 、 BENQ(独立
独立、
周辺部門)、
独立、研究・
独立、 PC周辺部門
周辺部門 、
QISDA(独立
独立、
の OEM部門
部門を
子会社)
独立、 BENQの
部門を分社化)、
分社化 、 AOPEN(ACER子会社
子会社
■ PC事業強化
事業強化、
年 Dellを
を逆転し
位。
事業強化、 2009年
逆転 し2位
■中国昆山に
世代TFT工場
工場を
中国昆山に第 8世代
世代
工場を建設計画。
建設計画。
生産地域は
中心)、
生産地域はアジア=
アジア=台湾(
台湾( TFT中心
中心)、セット
)、セット製品
セット製品の
製品の大半は
大半は中国。
中国。
出典:富士キメラ総研究所のデータを元に弊財団で編集
図表 2-18 メーカ別生産地域(Asus)
中国(
中国(蘇州、
蘇州、上海)
上海
チェコ
デスクトップPC
デスクトップ
デジタルオーディオプレーヤ、
デジタルオーディオプレーヤ、
カーオーディオ、
カーオーディオ、ポータブルゲーム機
ポータブルゲーム機、
デスクトップ/ノートブック
デスクトップ ノートブックPC、
ノートブック 、マザーボード
台湾
マザーボード
Asus
■世界最大手の
世界最大手の台湾系マザーボードメーカ
台湾系マザーボードメーカ。
マザーボードメーカ。
OEM代表製品
代表製品に
Shuffle, ソニーの
代表製品にアップルi-Pod
アップル
ソニーのPSP3
■ 2008年
年 1月
月 OEM事業部門
事業部門を
事業部門を分社化(
分社化( Pegatron technology,
Unihan Technology)、
)、Asusは
は OBM部門
部門を
)、
部門を持つ
■ノートPC、
ノート 、マザーボードは
マザーボードは大半が
大半 が中国・
中国・蘇州で
蘇州で生産、
生産 、
スマートフォンなど
スマートフォンなど通信機器
上海。
など通信機器は
通信機器は上海。
出典:富士キメラ総研究所のデータを元に弊財団で編集
52
図表 2-19 メーカ別生産地域(Sharp)
スペイン
TV(LCD)
ポーランド
LCDモジュール
モジュール
日本
中国/香港
中国 香港
TV(LCD)、
、ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫、
冷蔵庫、
洗濯機、
、掃除機、
洗濯機
掃除機、空気清浄機、
空気清浄機、
携帯電話(
、光ピックアップ
携帯電話( GSM)、
TV(LCD)、
、携帯電話(
、電気レンジ
携帯電話( CDMA, UMTS)、
電気レンジ、
レンジ、
ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、掃除機、
掃除機、空気清浄機
コードレス電話
、光ピックアップ
コードレス電話、
電話、大型/中小型
大型 中小型TFT、
中小型
北米
電気レンジ
電気レンジ
タイ
電気レンジ
電気レンジ、
レンジ、
ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫
インドネシア
TV(CRT)、
)、冷蔵庫
)、冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機
中南米
TV(LCD)、
、掃除機
Sharp
■生産地域は
。
生産地域は日本が
日本が 大半の
大半の 87.2%。
日本では
中小型TFT)、
)、光
。
日本では液晶
では液晶パネル
液晶パネル(
パネル(大 /中小型
中小型
)、光 ピックアップ、
ピックアップ、携帯電話、
携帯電話、 LCD-TV。
■ LCD-TVは
は省エネモデルの
バックライトを
エネモデルの強化、
強化、次世代液晶パネル
次世代液晶パネルと
パネルと LEDバックライト
バックライトを
搭載し
アクオス」
搭載し省エネを
エネを実現した
実現した「
した「 LEDアクオス
アクオス」の ラインアップを
ラインアップを拡大予定。
拡大予定。
■ LCD-TVは
は日本の
日本のシェアだけでなく
シェアだけでなく、
今後は海外も
海外も視野に
視野に。
だけでなく、今後は
アクオスブランドの
アクオスブランドの認知が
認知 が高まる中国
まる中国、
中国、環境規制が
環境規制 が厳しくなる欧米
しくなる欧米で
欧米で
製品展開を
製品展開を予定。
予定 。現地の
現地の ニーズにあった
ニーズにあった新興国向
にあった新興国向け
新興国向 け製品生産を
製品生産を目指す
目指す。
出典:富士キメラ総研究所、Sharpプレスリリースの
データを元に弊財団で編集
図表 2-20 メーカ別生産地域(Panasonic)
チェコ
TV(LCD)、
、
カーオーディオ
中国
日本
TV(PDP, LCD)、
、SBT、
、コンパクトDCS、
、
コンパクト
DVC、
、 DVDレコーダ
レコーダ/プレーヤ
レコーダ プレーヤ、
プレーヤ、
カーオーディオ、
カーオーディオ、電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、
ルームエアコン、
ルームエアコン、冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、
掃除機、
掃除機、空気清浄機、
空気清浄機、
コードレス電話
コードレス電話、
電話、光ピックアップ、
ピックアップ、
TV(PDP, LCD)、
、プロジェクタ、
、コンパクトDCS、
、
プロジェクタ、SBT、
コンパクト
DVC、
、 DVDレコーダ
レコーダ、
レコーダ、
カーオーディオ、
カーオーディオ、電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、掃除機、
掃除機、
携帯電話(
、コードレス電話
携帯電話(CDMA, UMTS)、
コードレス電話、
電話、
カーナビ、
、 DVD=ROM、
、 Blue-rayディスク
ディスク、
カーナビ、大型TFT、
大型
ディスク、
光ピックアップ、
ピックアップ、リチウムイオン2次電池
リチウムイオン 次電池セル
次電池セル
北米
カーオーディオ、
カーオーディオ 、
掃除機
マレーシア
タイ
TV(CRT, LCD)、
、 DVDレコーダ
レコーダ、
レコーダ、
ルームエアコン、
ルームエアコン、掃除機、
掃除機、ファクシミリ、
ファクシミリ、
TV(CRT)、
、 カーオーディオ、
カーオーディオ 、
冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、コードレス電話
コードレス電話
シンガポール
TV(PDP)
フィリピン
中南米
TV(LCD)、
、 STB、
、
コンパクトDSC、
、
コンパクト
カーオーディオ、
カーオーディオ 、
ファクシミリ
インドネシア
DVC、
、 ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
、洗濯機、
冷蔵庫
洗濯機、DVD-ROM
ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫
Panasonic
■ グループの
グループの重点事業である
重点事業であるエナジー
であるエナジー事業
エナジー事業の
事業の 強化に
強化に向け、
リチウムイオン電池事業
リチウムイオン電池事業の
電池事業の成長戦略を
成長戦略を強力に
強力 に推進。
推進。
■同社は
同社は三洋電機の
三洋電機の 議決権株式の
議決権株式の 過半数を
過半数を取得、
取得、
グローバル競争力
グローバル競争力の
競争力の強化を
強化を図る。
■MT (旧:松下東芝)
松下東芝)映像ディスプレイ
映像ディスプレイは
ディスプレイは、同社が
同社が出資する
出資する北京
する北京・
北京・松下ディスプレイ
松下ディスプレイ
デバイスの
デバイスの出資持分全てを
出資持分全てを中国側合弁
に譲渡。
譲渡。
てを中国側合弁パートナ
中国側合弁パートナ京東方科技集団
パートナ京東方科技集団(
京東方科技集団( BOE)に
出典:富士キメラ総研究所のデータを元に弊財団で編集
53
図表 2-21 メーカ別生産地域(Sony)
中国
TV(LCD)、
、 プロジェクタ、
、コンパクトDCS、
、 DVC、
、
プロジェクタ、SBT、
コンパクト
デジタルオーディオプレーヤ、
レコーダ、
デジタルオーディオプレーヤ、 DVDレコーダ
レコーダ、 カーオーディオ、
カーオーディオ、
電子書籍、
、
電子書籍、携帯電話(
携帯電話(GSM, UMTS)、
Blue-rayディスク
ディスク、
ディスク、光ピックアップ、
ピックアップ、
スイッチング電源
スイッチング電源、
電源、リチウムイオン2次電池
リチウムイオン 次電池セル
次電池セル
スロバキア、
スロバキア、スペイン
TV(LCD)
ハンガリー
ブルーレイディスク
日本
TV(LCD)、
、 プロジェクタ、
、
プロジェクタ、SBT、
コンパクトDCS、
、デジタル一眼
、
コンパクト
デジタル一眼レフ
一眼レフ、
レフ、DVC、
ノートブックPC、
ノートブック 、コードレス電話
コードレス電話、
電話、
中小型TFT、
、リチウムイオン2次電池
中小型
リチウムイオン 次電池セル
次電池セル
タイ
中南米
TV(LCD)、
、コンパクトDCS、
、
コンパクト
デジタル一眼
デジタル一眼レフ
一眼レフ、
レフ、 カーオーディオ
TV(LCD)、
、コンパクトDCS、
、
コンパクト
カーオーディオ
マレーシア
TV(LCD)、
、デジタルオーディオプレーヤ、
デジタルオーディオプレーヤ、
DVDレコーダ
レコーダ、
レコーダ、 DVD-ROM
Sony
■日本国内での
日本国内での生産比率
での生産比率が
生産比率が比較的高いが
比較的高いが、
いが、コスト削減
コスト削減のため
削減のため中国生産
のため中国生産の
中国生産の割合増加。
割合増加。
■主力の
は高級品は
等EMS
主力 のLCD-TVは
高級品は自社工場生産、
自社工場生産 、新興国向け
新興国向 け低価格品は
低価格品 はFoxxconn等
メーカに
メーカに委託、
委託、今年度は
今年度は黒字化を
黒字化を目指す
目指す計画。
計画。
■アジア地域
の基幹工場で
まで行
アジア地域では
地域 ではマレーシア
ではマレーシアが
マレーシアが LCD-TVの
基幹工場 で基盤Assyまで
基盤
まで行 い、
各地域の
を
各地域の向上で
向上 で組み立てを行
てを 行なうケース
なうケースが
ケースが多 い。タイは
タイはインドと
インドとFTAを
結 んでいるため、
んでいるため、インド向
インド向けカーオーディオは
カーオーディオは タイで
タイで生産予定。
生産予定。
■今後は
事業単体ではなく
今後 は、営業利益が
営業利益が見込めない
見込 めないLCD-TV事業単体
めない
事業単体ではなく、
ではなく、サービスとあわせた
サービスとあわせた
ネットワークサービスを
ネットワークサービスを今後の
今後の成長戦略と
成長戦略と位置づける
位置づける。
づける 。
出典:富士キメラ総研究所、Sonyプレスリリースの
データを元に弊財団で編集
図表 2-22 メーカ別生産地域(Toshiba)
英国
TV(LCD) (2009年末
年末
までに生産中止
生産中止)
までに
生産中止)
ポーランド
日本
TV(LCD)
TV(LCD)、
、ルームエアコン、
ルームエアコン、洗濯機、
洗濯機、掃除機、
掃除機、
携帯電話(
(CDMA, UMTS)、
、大型/中小型
携帯電話
大型 中小型TFT
中小型
インド
DVD-ROM
シンガポール
大型TFT
大型
タイ
電子レンジ
電子レンジ、
レンジ、ルームエアコン、
ルームエアコン、
冷蔵庫、
冷蔵庫、洗濯機、
洗濯機、 HDD
フィリピン
HDD
インドネシア
中南米
TV(CRT, LCD)、
、
HDD、
、 DVD-ROM
TV(LCD)
Toshiba
■日本国内生産の
日本国内生産の割合が
割合が減少し
減少 し、中国・
中国・アジアの
アジアの割合が
割合が増加。
増加。
■白物家電は
白物家電は新興国向け
新興国向け(特 に中国)
中国)を拡大予定、
拡大予定、
国内生産は
国内生産はハイエンド製品
ハイエンド製品に
製品に絞り、タイ・
タイ・中国での
中国での生産
での生産を
生産を 増加予定。
増加予定。
携帯電話事業再建に
年夏以降中国へ
メーカに
携帯電話事業再建に向 け、2009年夏以降中国
年夏以降中国へ移管、
移管 、一部EMSメーカ
一部
メーカ に委託。
委託 。
■日系TVブランドメーカ
低価格化の
日系 ブランドメーカ各社
ブランドメーカ各社が
各社がLCD-TV低価格化
低価格化の影響で
影響で赤字になる
赤字 になる中
になる 中、
同社は
活用等により
同社は OEM活用等
活用等により黒字
により黒字の
黒字の見込み
見込み 。
■今後の
事業は
今後 のTV事業
事業は 新興国や
新興国や欧米向けに
欧米向けに注力
けに注力。
注力。新興国は
新興国は現地パートナー
現地 パートナー提携
パートナー提携や
提携や
外部委託を
外部委託を行 い、現地ニーズ
現地 ニーズに
ニーズに沿った製品
った製品を
製品を 展開。
展開。
出典:富士キメラ総研究所とToshibaプレスリリースの
データを元に弊財団で編集
54
図表 2-23 メーカ別生産地域(Fujitsu)
中国/香港
中国 香港
-カーオーディオ
カーオーディオ
-ルームエアコン
ルームエアコン
その他欧州
その他欧州
-ルームエアコン
ルームエアコン
ドイツ
-デスクトップ
デスクトップPC
デスクトップ
タイ
-カーオーディオ
カーオーディオ
フィリピン
-カーオーディオ
カーオーディオ
日本
-LDCモニタ
モニタ
-携帯電話
携帯電話
-カーナビ
カーナビ
-カーオーディオ
カーオーディオ
-デスクトップ
デスクトップPC
デスクトップ
-ノートブック
ノートブック
中南米
-カーオーディオ
カーオーディオ
マレーシア
-キーボード
キーボード
Fujitsu
■企業買収、
企業買収、合弁会社設立、
合弁会社設立、 工場閉鎖など
工場閉鎖など事業再編
など事業再編が
事業再編が行なわれた。
なわれた。
PFU完全子会社化
完全子会社化により
端末の
完全子会社化により、
により 、イメージスキャナや
イメージスキャナや KIOSK端末
端末の
ソリューションビジネス分野
ソリューションビジネス 分野での
分野での事業拡大見込
での事業拡大見込み
事業拡大見込み 。
HDD装置関連開発
装置関連開発/製造
装置関連開発 製造の
製造の山形富士通は
山形富士通は解散。
解散。
富士通BSCと
とニコンシステムは
富士通
ニコンシステムは、カメラ向
カメラ向けファームウェア開発
ファームウェア開発の
開発の合弁企業設立
■今後、
ソリューションを
今後、プラットフォームや
プラットフォームやITソリューション
ソリューションを 含むテクノロジーソリューション
分野を
分野を主力事業として
主力事業 として位置
として 位置づけ
位置づけ。
づけ。
出典:富士キメラ総研究所のデータを元に弊財団で編集
55
2.8 企業名一覧(
企業名一覧(英語名と
英語名と日本語名の
日本語名の対応表)
対応表)
台湾企業と中国器量のにつき、英語名と日本語名の対応は以下の通り。
台湾企業
英語名
日本語名
Acer
宏基
Altek
華晶科技
Asia Potical
亜州光学
Asustek
華碩
Compal
仁宝電脳
ECS
精英電脳
Foxconn
鴻海科技
HTC
宏達
Inventec
英業達
Pegatron
和碩聯合科技
Quanta
広達電脳
Wistron
緯創
中国企業
Changhong
四川長虹集団
Hisense
海信科技
Huawei
華為科技
lenovo
聯想
ZTE
中興通迅
56
3. アジア各国
アジア各国・
各国・地域の
地域のIT・
IT・電気電子産業支援策
電気電子産業支援策
前章までで、Samsung、LG、Lenovo、Acer など、進展著しい韓国、中国、台湾企業の全
世界におけるシェア動向と、アジアにおけるシェアから彼らの戦略・戦術動向などについ
て述べた。
本章では、アジア各国・地域の政府が行っている政策、産業支援を、中国、韓国、台湾
を中心に述べる。次に、シンガポールは、東京都 23 区とほぼ同じ広さの国土しかなく、そ
の産業支援策として国としての国外進出支援が積極的に行われているので、参考として同
国の施策を述べる。IT 分野で進出著しいインドについても、その産業支援策を述べる。
その他のアジア各国・地域の IT・電気電子関連各種政策施策は、添付資料に示す。
調査に際しては、2008 年のリーマンショックに続く世界同時経済不況への対応として、
各国・地域政府が自国産業保護のため、海外資本に対して排他的な産業支援策を講じた、
あるいは講じているのではないか、という観点も念頭においた。
その結果、ベトナムで販売目的の中古カメラや携帯等を 2010 年 2 月から輸入禁止とした
情報や、中国の強制認証制度(CCC:China Compulsory Certification) を 情報セキ
ュリティ製品に適 用 の 動 き 、 タ イ の 民 間 団 体 ATSI ( The Assiciation of Thai
Software Industry) 13が 「Buy Thai First(タ イ 製 品 を 買 お う )」キ ャ ン ペ ー ン な
どが明らかになった。しかしながら、現地日本人商工会などに対するヒアリン
グでは、保護主義に根ざしたものだという認識は薄いようである。例えばベト
ナムの例は、新製品は従来どおり輸入可能であり、安い中国製品などが輸入さ
れ て い る 。 CCC に つ い て は 、 外 資 に と っ て 重 大 な の は 、 保 護 主 義 と い う よ り 、
技術開示という認識である。
3.1 中国
3.1.1 2009
2009 年の主な産業政策
世界金融危機の影響により、2009 年中国情報産業の成長も大きなダメージを受けた。中
国政府は、
特に輸出をメインとした電子製造業については、積極的な経済刺激政策をとり、
IT 産業の発展をサポートしている。
2009 年 4 月、
《電子情報産業調整及び振興計画》を公布、2009 年”家電下郷計画”
(農村
での家電購入時の補助政策、家電普及プロジェクト、すなわち、政府による農村部を対象
とした家電普及支援策)の範囲を拡大し、農村地域の消費を促進、2009 年下半期には 9 個
13
理事長 Mr. Somkiat Ungaree はタイ政府のソフトウェア関連委員会の委員長である。
57
のモデル省市で家電の”以旧換新”政策(買換え促進政策)を実施し、中国電子情報製造
業の窮地からの脱出を支援した。
市場環境の発展に従い、工信部(工業情報化部、MIIT)は一部の政策法規に補足修正を
行った。
図表 3-1 2009 年中国公布した主な IT 政策
政策名称
《電子情報産業調整及び振興計画》
発表時期
主な内容
2009-2
金融危機に対応するため、公布した電子産
業振興計画、9 つの優先発展重点領域を確
定した。
《電気通信業務経営免許管理弁法》の
2009-3
修正
《電子認証サービス管理弁法》の修正
電気通信業務経営免許書の申請を調整し
た。
2009-3
工信部が電子認証サービス機構に対する
監督検査の管理職責を行使することを明
確し、電子認証サービス機構の資格条件を
定めた。
《ソフトウェア製品管理弁法》の修正
2009-3
《廃棄電器電子製品回収処理管理条
2009-2
例》
中国の廃棄電器電子製品の回収処理につ
いての規定、国家廃棄電器/電子製品処理
ファンドを設立し、複数ルートによる回収
と集中処理の制度を実施する。
2009 年 3 月、工信部は、
《電気通信業務経営免許管理弁法》、
《電子認証サービス管理弁
法》、《ソフトウェア製品管理弁法》、
《ラジオ放送局免許管理規定》、《衛星通信網の構築及
び地球局の設置使用管理規定》など 9 つの規定を修正した。
・《電気通信業務経営免許書管理弁法》
電気通信業務経営免許書管理弁法》の修正
2009 年 3 月、工信部は最新の《電気通信業務経営免許書管理弁法》を公布、2009 年 4
月 10 日から実施し、同時に 2001 年末に公布した《電気通信業務経営免許14書管理弁法》
を廃止する。
2008 年、中国政府は機構調整を行い、元の情報産業主管機構―情報産業部を工業情報化
14
中国の電信市場では許可書管理を実現、電信業務は基礎電信業務と付加価値電信業務の 2 種類があり、
経営範囲は全国と省内の 2 種類がある。今回の調整は以下の通り。省内の基礎電信業務を申請する場合に
は、登録資本金は過去の最低 2 億元から 1 億元へと下方修正。全国基礎電信業務を申請する場合には、登
録資本金は過去の最低 20 億元から 10 億元へと下方修正。
58
部に調整したため、修正後の《電気通信業務経営免許書管理弁法》においても電気通信業
務の経営免許書の申請、審査認可、使用、経営行為の規範及び経営免許書の変更と取り消
し、監督検査と罰則についての調整を行った。同時に、登録資本金の下限を下げるという
方式により、基礎電気通信業務の新規参入の壁を低くした。、付加価値電気通信業務の経営
申請の登録資本金については変更はない。
・《電子認証サービス
電子認証サービス管理弁法
サービス管理弁法》
管理弁法》の修正
2009 年 3 月、工信部修正後の《電子認証サービス管理弁法》が公布され、2009 年 3 月
31 日から実施される。同時に 2005 年 2 月に公布した《電子認証サービス管理弁法》は廃
止される。
新《電子認証サービス管理弁法》は、主に電子認証サービス機構の設立条件、申請に必
要な書類、監督管理方式などの内容についての修正、補足を行ったものとなる。工信部が
電子認証サービス機構の監督検査機構であることを明確にし、電子認証サービス機構は独
立企業法人資格を有し、登録資本金は 3000 万元を下回らないこと、国家暗証番号管理機構
に認可された暗証番号使用可の証明書類を有するなどの条件を再度言明した。
・《ソフトウェア製品管理弁法
)の
ソフトウェア製品管理弁法》
製品管理弁法》(略称
(略称《
略称《弁法》
弁法》
)の修正
2009 年 3 月、工信部は新しく修正した《ソフトウェア製品管理弁法》を公布し、2009
年 4 月 10 日から実施、同時に 2000 年 10 月公布した《ソフトウェア製品管理弁法》を廃止
する。
新《弁法》はソフトウェア製品の管理方式に調整を行った。中国ソフトウェア製品は行
政許可による管理をやめ、登記及び記録制度を施行することとなった。ソフトウェア製品
の登記有効期間は 5 年であり、有効期間満了前に継続申請ができる。ソフトウェア企業認
定及びソフトウェア製品の登記記録作業を続行し(略称”双軟認定”)、登記記録された国
産ソフトウェア製品は、
《ソフトウェア産業及び集積回路産業発展を奨励する若干の政策》
に定めた優遇政策を享受できる。
新《弁法》はソフトウェア製品の販売各フェイズでの監督管理を強化し、工信部は関連
部門と共にソフトウェア製品の開発、生産、販売、輸出入などの活動を監督管理する。ソ
フトウェア製品のベータ版は”ベータ版”の明示及び無料提供するものとし、収益を目的
する販売をしてはならない。
・《廃棄電器電子製品回収処理管理条例》
廃棄電器電子製品回収処理管理条例》
中国は既に電子製品の生産並びに消費大国になっており、毎年大量の電子製品が廃棄さ
れている。そこで、2009 年 2 月に《廃棄電器電子製品回収処理管理条例》が公布され、2011
年 1 月 1 日から実施される。廃棄電子製品に対して、複数のルートによる回収と集中処理
制度を実施する。同時に、関連政府部門は《廃棄電器電子製品回収処理リスト》を研究制
59
定し、廃棄電器電子製品処理ファンドを設立し、回収処理費用の補助金とする。電器電子
製品生産者、輸入電器電子製品の受荷主またはその代理人は当規定に基づき義務を履行し
なければならなくなる。
・制定中の
制定中の政策法規
2009 年、工信部は上記公布された政策法規を実行すると同時に、
《情報技術応用促進条
例》並びに《ソフトウェアおよび集積回路産業発展条例》の起草作業に着手し、全国人民
代表大会での《電信法》に関する審議を推進した。また、関連部門と協力して《携帯媒体
サービス管理条例》)を公布、そして《無線通信管理条例》の修正工作を推進した。それに
《情報安全管理条例》の強化、
《電信設備保護条例》の起草準備を行った。
3.1.2 半導体産業関連
半導体産業関連
半導体産業関連の主な法規定及び政策は下記のとおりである。
図表 3-2 中国半導体産業政策
主管部門
国務院
主要政策
発表時期
主な内容
「ソフトウェア産業及び IC
2000-6
ソフトウェア産業及び IC
産業の発展を奨励する若干
産業の発展を奨励する投融
の政策」
資・税制・輸出・收入分配・
調達・人材・知的財産権保
護等の支援政策
財政部
人事部
国家金卡工
「ソフトウェア産業及び IC
2000-7
ソフトウェア産業及び IC
産業の発展を奨励する税制
産業の発展を奨励する税制
政策問題に関する通知」
政策
「ソフトウェア及び IC 技術
2001-6
ソフトウェア及び IC 技術
者の国が支援するソフトウ
者が国の支持するソフトウ
ェアパークでの勤務に関す
ェアパークで勤務すること
る問題についての通知」
を奨励・誘致する
「IC カード登録管理弁法」
2001-9
程(ゴールデ
ン・プロジェ
クト)指導グ
ループ事務
室
60
IC カードの登録管理
国家発展改
「IC カードの応用と料金徴
革委員会
収管理弁法」
国家知的財
「IC 配置図設計保護条例」
2001-9
IC カードの応用と料金徴
収行為の規範化
2001-10
産権局
知 的財産権 の保護を 強化
し、企業の技術革新を奨励
する
情報産業部
「国家電子情報産業拠点及
2003-5
国家の電子情報産業拠点と
び産業パーク建設に関する
産業パークの建設目標、認
意見」
定基準と関連政策について
規定
情報産業部
「IC 設計企業及び製品認定
2003-3
実施細則」
IC 及びソフトウェア産業
の発展強化を提唱し、情報
化設備とシステムインテグ
レーション及び情報サービ
ス能力を向上させる
商務部
「中国 IC 増値税問題に関す
2004-7
る了承備忘録」
財政部
商務部が IC 産業の輸出、
税
制等の問題を調整
「IC 産業研究及び開発専用
2005-3
資金管理の暫定施行弁法」
国が支持する IC 産業研究
開発専用資金の申請、資金
援助基準、経費の使用及び
管理
財政部
情報産業部
「外商投資企業のソフトウ
2005-7
ェア及び IC 企業所得税政策
ア及び IC 企業所得税政策
の実施に関する審査認可手
を実施する際の審査認可手
続についての通知」
続
「電子情報製品汚染防止管
2006-2
理弁法」
情報産業部
外商投資企業がソフトウェ
電子情報製品汚染防止の基
準化
「国家電子情報産業拠点及
2006-8
国家電子情報産業拠点及び
び産業パークの発展を支援
産業パークの発展を支援す
する政策」
る政策措置
国家発展改
「国家奨励集積回路企業リ
革員会、情報
スト第一集」
2007 年
第一集として、半導体企業
8月
94 社を対象に、研究開発基
産業部、税関
金や優遇税制、人材育成、
総署、国家税
融資など多方面にわたる支
務総局
援政策を実施
61
2000 年に公布した《ソフトウェア産業及び集積回路産業発展を励む若干政策》「略称 18
番文」は、中国半導体産業にとって最も重要な政策であり、半導体関連企業に対し税金優
遇政策を実施している。但し、この政策の有効期間は 2010 年年末に満了となる。関連企業
は政府による新しい半導体産業優遇政策の公布を常に推進している。2008 年中国政府機構
の調整が一時ストップし、そして 2009 年政府施策の重点が金融危機への対応に切り替えら
れたことにより、2009 年には新政策は公布されなかった。
2009 年の世界金融危機は脆弱な中国半導体産業に対し大きな影響を与えた。中国半導体
業界協会のデータにより、2009 年上半期、中国半導体産業の売上高は 467.92 億元であり、
前年同期比で 26.9%の下落となった。
しかしながら、新政策公布前において 18 番文に定めた優遇政策を引き続き優先適用し、
また、制定中の新政策は半導体産業に対する支援を強め、優遇政策を享受するインダスト
リアルリンケージも拡大し、半導体産業の材料・設備・計器などを支援範囲に取り入れる
と工信部は表している。新政策では支援措置も更に多様化され、財務税制上の優遇・技術
イノベーションとその産業化、市場促進、投資融資、人材保障などの各方面が含まれてい
る。
3.1.3 ソフトウェア産業
ソフトウェア産業関連
産業関連
ソフトウェア産業関連の主な法規定及び政策は下記のとおり。
図表 3-3 中国のソフトウェア産業に関する主な法規及び政策
主管部門
国務院
主要政策
発表時期
主な内容
「ソフトウェア産業及び IC 産業
2000-6
ソフトウェア及び IC 産業の
の発展を奨励する若干の政策」
発展を奨励するための各方
面の支援政策
財政部
「ソフトウェア産業及び IC 産業
2000-7
ソフトウェア産業及び IC 産
の発展を奨励する税制政策問題に
業の発展を奨励するためお
ついての通知」
税制政策
情報産業
「ソフトウェア製品登記管理弁
部
法」
2000-11
ソフトウェア製品の登記と
届出、生産、販売、監督管理
等の制度について規定
情報産業
「ソフトウェア企業認定基準及び
部
管理弁法(試行)」
2000-11
ソフトウェア企業の認定基
準及び管理規則について規
定
商務部
「ソフトウェア輸出関連の問題に
62
2001-1
ソフトウェア輸出の関連政
ついての通知」
策及び管理制度について規
定
人事部
「ソフトウェア及び IC 技術者の
2001-6
ソフトウェア及び IC 技術者
国が支援するソフトウェアパーク
の国が支持するソフトウェ
での勤務に関する問題についての
アパークでの勤務を奨励・誘
通知」
致する
国家版権
「海賊版ソフトウェアの販売禁止
局
に関する通告」
2001-6
海賊版ソフトウェアの販売
禁止とソフトウェア知的財
産権の保護
国家版権
「政府部門が率先して正規版ソフ
局
トウェアを使用することに関する
使用の強化とソフトウェア
通知」
知的財産権保護の強化
商務部
「ソフトウェア輸出管理及び統計
2001-8
2001-10
弁法」
国務院
政府の正規版ソフトウェア
ソフトウェア輸出における
管理サービス能力の向上
「コンピュータソフトウェア保護
2002-1
条例」
ソフトウェアの開発と応用
の促進
国家版権
「コンピュータソフトウェア著作
局
権登記弁法」
国務院弁
「ソフトウェア産業振興行動綱要
公庁
(2002-2005 年)」
2002-2
コンピュータソフトウェア
著作権管理の強化
2002-7
ソフトウェア業界振興の発
展目標、発展ビジョン、業務
の重点及び保障措置
情報産業
「国家電子情報産業拠点及び産業
部
パークの建設に関する意見」
2003-5
国家電子情報産業拠点及び
産業パークの建設目標、認定
基準、関連政策について規定
教育部
科技部
「ソフトウェア人材育成及び人材
2003-11
ソフトウェア業界の人材育
建設を加速することに関する若干
成と人材建設の加速に関す
の意見」
る政策
「中国ソフトウェア企業の技術革
2004-4
新能力を更に向上させることに関
中国ソフトウェア企業の技
術革新能力の向上
する実施意見」
国家発改
「国家計画内の重点ソフトウェア
委
企業認定管理弁法」
2006-1
国家計画内の重点ソフトウ
ェア企業の認定基準、管理機
構、申請等について規定
情報産業
「コンピュータに正規版 OS ソフ
部
トをプレインストールすることに
63
2006-3
OS ソフトウェアの知的財産
権の保護
関する通知」
情報産業
「国家電子情報産業拠点及び産業
部
パークの発展支援政策」
2006-8
国家電子情報産業拠点及び
産業パークの発展を支援す
るための政策措置
商務部
商務部
「ソフトウェア及び関連情報サー
2006-9
ソフトウェア及び関連サー
ビスの輸出を発展させることに関
ビスの輸出を奨励するため
する指導意見」
の政策サポート
「サービスアウトソーシング“千
2006-10
百十プロジェクト”の実施に関す
ソフトウェアアウトソーシ
ング業務の発展の促進
る通知」
財政部
「組み込み式ソフトウェアの増値
2006-12
税政策に関する通知」
国務院
組み込み式ソフトウェアの
増値税税金還付政策
《サービスアウトソーシング産業
2009-1
サービスアウトソーシング
の発展促進にかかる問題に関する
産業の発展を促す政策、20 サ
回答書》
ービスの確立モデル都市ア
ウトソーシング
財政部、国
《政府・企業の発注による我が国
家発展改
のサービスアウトソーシング産業
2009-9
政府 機関や企業がデータ 处
理など機密事項に関係しな
革委員会、 の発展奨励に関する指導意見》
い業務を専門会社に外注す
科学技術
ることで、中国におけるサー
部など九
ビスアウトソーシング産業
つの部・委
の発展を奨励するものであ
員会
る
中国人民
《金融によるサービスアウトソー
2009-9
銀行、商務
シング産業の発展支援に関する若
ービスアウトソーシング産
部、銀行業
干の意見》
業の発展を促す金融サービ
監督管理
20 のモデル都市を重点に、サ
スを進めている
委員会な
ど六つの
部・委員会
・ソフトウェア産業
ソフトウェア産業に
産業に対する中国政府
する中国政府の
中国政府の支援・
支援・優遇政策
優遇政策
ソフトウェア産業は中国政府が積極的に支援する産業の一つであり、2000 年に国務院が
公布した「ソフトウェア産業と集積回路産業の発展奨励にかかる若干の政策」(略称“18
号文書”)は、ソフトウェア業に対する支援策の柱である。同政策は 2010 年に終了するた
64
め、中国のソフトウェア各社は 18 号文書に続く新政策に強い関心を寄せており、用友など
の一部企業は、支援策継続を求める申し入れを繰り返している。工業情報化部ソフトウェ
アサービス業司の趙小凡司長は 2009 年 12 月、ソフトウェア業への優遇政策を継続する中
国政府の方針を示した上で、新政策の発表までは 18 号文書を継続する方針を、政府の公式
な姿勢として初めて言明した。
20 都市を中国サービスアウトソーシングのモデル都市に
ソフトウェアアウトソーシング産業は労働集約型産業であり、中国政府も特に重視してい
る。金融危機により、世界のソフトウェアアウトソーシング産業は低迷しているが、中国
のソフトウェアアウトソーシング産業の発展を支援するべく、中国政府は 2009 年に一連の
支援政策を打ち出した。2009 年 2 月、国務院は「サービスアウトソーシング産業の発展促
進にかかる問題に関する回答書」で、商務部が関係部・委員会(省庁に相当)と共同で作
成したサービスアウトソーシングの発展促進のための政策措施を承認している。これによ
り、北京、天津など 20 都市15が中国サービスアウトソーシングモデル都市に決定し、国際
サービスアウトソーシング業務の受け皿として一層の事業展開を図り、サービスアウトソ
ーシング産業の発展を促す試験事業を進める。政府は財政、税制、金融、知的財産権保護、
関税などの多方面から、サービスアウトソーシング企業をバックアップする。
国務院のサービスアウトソーシング産業の発展を促す政策誘導の下、2009 年 9 月には財
政部、国家発展改革委員会、科学技術部など 9 つの部・委員会が「政府・企業の発注によ
る我が国のサービスアウトソーシング産業の発展奨励に関する指導意見」を発表した。政
府機関や企業がデータ处理など機密事項に関係しない業務を専門会社に外注することで、
中国におけるサービスアウトソーシング産業の発展を奨励するものである。
2009 年 9 月,中国人民銀行、商務部、銀行業監督管理委員会など六つの部・委員会は再
び共同で「金融によるサービスアウトソーシング産業の発展支援に関する若干の意見」を
発表し、同産業向けの金融サービスやサポートを強化。20 のモデル都市を重点に、サービ
スアウトソーシング産業の発展を促す金融サービスを進めている。
ソフトウェア産業の発展を促すため、工業情報化部は現在「ソフトウェアサービス業の
発展加速にかかる指導意見」(以下、
「指導意見」
)の起草を進め、2010 年の公布を目指し
ている。
「指導意見」は、今後 5 年間について、中国のソフトウェアサービス業の産業規模、
産業構造、応用普及、技術革新、企業発展、人材開発などの七大目標を掲げているほか、
ソフトウェア産業発展の十大重点として、基本ソフト(OS)、情報セキュリティソフト、工
業用ソフト、組込ソフト、業界向けアプリケーションソリューション、システムインテグ
レーション及び支援サービス、ソフトウェアサービスアウトソーシング、イノベーション
15
20 都市の内訳:北京、天津、上海、重慶、広州、深圳、武漢、大連、南京、成都、済南、西安、哈爾
浜、杭州、合肥、長沙、南昌、蘇州、大慶、無錫。
65
型サービス、デジタルコンテンツ加工処理及びサービス、IC 設計サービス――を挙げてい
る。
このほか、2010 年は中国の“第 11 次 5 カ年計画”の最後の一年であり、工業情報化部
はすでにソフトウェアサービス業の“第 12 次 5 カ年計画”起草事業に向けた事前検討作業
に着手している。
3.1.4 インターネット産業
インターネット産業関連
産業関連
インターネット産業関連の主な法規定及び政策は下記のとおりである。
図表 3-4 中国の主なインターネット政策
主管部門
国務院
政策
発表時期
概要
「インターネットセキュリテ
2000-12
中国政府のインター
ィ保護にかかる决定」
ネットセキュリティ
に関する管理規定
国務院
「インターネット情報サービ
2000-9
ス管理方法」
インターネット情報
配信者に関する管理
規定
文化部
「音響・映像製品オンライン営
2000-3
業活動にかかる問題に関する
オンライン電子出版
物に関する管理規定
通知」
公安部
「コンピューターウイルス防
2000-4
止対策管理方法」
コンピューターウイ
ルスの作成・観戦の防
止や撲滅に関する規
定
国務院新聞弁
「インターネットウェブサイ
2000-11
公室、情報産
トのニュース掲載業務管理暫
けるニュース掲載に
業部
時規定」
関する管理規定
情報産業部
「インターネット電子掲示板
2000-10
サービス管理規定」
インターネットにお
インターネット掲示
板(BBS)に関する管
理規定
国家医薬品監
「インターネット医薬品情報
督管理局
サービス管理暫時規定」
2001-1
医薬品のオンライン
販売に関する管理規
定
66
中国人民銀行
「オンラインバンキング業務
2001- 6
管理暫時規定」
オンラインバンキン
グ業務の開始、運営に
関する管理規定
新聞出版署
「インターネット出版管理暫
情報産業部
定施行規定」
国務院
「インターネットアクセスサ
2002-8
ムの開発の奨励
2002-10
ービス営業所管理条例」
文化部
自主知的財産権ゲー
インターネット管理
の強化
「インターネット文化管理暫
2003-7
定施行規定」
国産オリジナルゲー
ムの開発を奨励し、ネ
ットカフェの管理及
びその促進
新聞出版署
「私設サーバー、“外掛(授権
2004-1
を経ずにネットゲームを勝手
自主知的財産権ゲー
ムの開発の奨励
に使用する)”に対する処理に
関する通知」
新聞出版総署
「国務院による電子及びオン
国家版権局
ラインゲーム出版物の一元的
ラインゲーム出版物
審査認可実施についての通知」
に対する管理の強化
国務院
「電子商取引の発展加速に関
2004-7
2005-1
する若干の意見」
輸入版電子及びオン
中国政府の電子商取
引の発展奨励・支持に
関する措置
全国人民代表
「デジタル署名法」
2005-4
デジタル署名の法的
大会常務委員
効力を確定し、その適
会
用範囲を明確にした。
国家版権局
「インターネット著作権行政
情報産業部
保護方法」
文化部、情報
「オンラインゲームの発展及
産業部
び管理に関する若干の意見」
2005-5
ネット著作権保護に
関する規定
2005-7
中国オンラインゲー
ムの制作レベルを向
上させ、インターネッ
ト文化産業の健全な
発展を促進
新聞出版総署
「アンチオンラインゲーム中
2005-8
毒システム」
オンラインゲーム利
用者の健全な使用を
提唱
国務院新聞弁
「インターネットニュースサ
67
2005-9
ネットでのニュース
公室、情報産
ービス管理規定」
配信に関する管理規
業部
国務院
定
「情報ネットワーク配信権保
2006- 9
護条例」
商務部
インターネット配信
権に関する規定
「電子商取引の規範的発展の
2007-12
促進に関する意見」
中国の電子商取引市
場の発展を指導、規範
化するための指針。
国家広播電影
「インターネットにおける番
2007-12
中国のインターネッ
電視総局、情
組視聴サービスにかかる管理
トにおける番組配信
報産業部
規定」
サービスに関する管
理規定。制作、配信、
運営などすべての産
業連鎖をカバーする。
・政府による
政府によるインターネット
によるインターネット産業
インターネット産業に
産業に対する多角度管理
する多角度管理
インターネットは社会生活のさまざまな方面に関わっており、中国政府のインターネッ
ト市場に対する監督管理も殆ど全ての政府部門に関わっている。その内、最も主要なのは
工信部、広電総局、文化部、新聞出版総署の四つの政府部門である。工信部は主にインタ
ーネット業界への管理職責を果し、広電総局は主にインターネット上での音声動画コンテ
ンツに対し管理監督を行い、文化部はインターネットのコンテンツに対し監督管理を行っ
ている。また、新聞出版総署はコンテンツの著作権を監督管理している。インターネット
業界は複数の政府部門による管理が行われており、各政府部門の管理施策が矛盾するとこ
ろがあるため、インターネット業界の全体的管理に非効率性と混乱をもたらしている。2009
年中国政府はインターネットコンテンツに対する監視を強化した。
・インターネット音声動画
インターネット音声動画コンテンツ
音声動画コンテンツ監督管理
コンテンツ監督管理を
監督管理を強化
中国政府による(動画サイトなどの)コンテンツ発信型マーケットに対する監視措置は
比較的厳しい。2007 年 12 月、国家広電総局と元情報産業部は《インターネット視聴番組
サービス管理規定》、
《インターネット等情報ネットワーク視聴番組伝播管理弁法》を共同
公布した。
インターネットにて音声動画コンテンツサービスを提供する組織団体は必ず
《情
報ネットワーク視聴番組伝播許可書》
(略称《許可書》)を取得することが要求されている。
2009 年 3 月、広電総局は《インターネット音声動画番組内容管理に関する通達》を通達
し、番組内容管理制度を完備し、低俗な番組をやめ、内容審査を強化することをインター
ネット放送サービスを行う組織団体に要求した。
金融危機の影響を応対するため、TCL・サンソン・創維・ハイアル・長虹・海信などの中
68
国テレビメーカーは 2009 年に続々とインターネットテレビ16を発売し、多くの消費者の注
目を集めている。この状況に対して、2009 年 8 月、広電総局は特別に《テレビを受信端末
とするインターネット視聴番組サービス管理に関する問題を強化する通達》を通達し、イ
ンターネットを通してテレビと接続し、テレビユーザーに視聴番組サービスを提供する企
業に必ず《許可書》を取得するように要求した。
2009 年 9 月広電総局は《インターネット視聴番組サービス許可証管理に関する通達》を
また通達し、インターネット視聴番組サービス団体は必ず許可証を持って運営することを
再度明言した。なお、許可証をもっていないサイトについて 3 ヵ月間の徹底的な検査を行
った。
その検査において、
中国国内におけるダウンロードサイトのトップ3
「エデンの園」、
「BT 中国聯盟」および「悠悠鳥」がすべて停止され、多くのメジャーな BT ダウンロード
サイトはアクセス制限又はアクセスできないようにされた。その一連措置は中国インター
ネット動画市場に対し重大な影響を与え、幾つの動画サイトは調整を行った。例えば、2009
年 11 月末に、中国で有名な動画サイト「酷 6 网」
(www.ku6.com)は、ゲーム会社「盛大」
に買収された。
現在中国における動画サイトは 1,000 以上あり、大量な個人サイトも視聴内容を提供し
ている。但し、その内インターネット視聴サービス《許可証》を持つサイトは約 400 しか
なく、それらの企業は主に中央新聞サイト、各省級新聞サイト、テレビ放送機構サイト、
または幾つの大規模な動画サイトである。多くの動画サイトは許可証を持たずに、大量な
映画やテレビ内容のダウンロードサービスを提供し、パイレーツ現象が深刻であり、多く
のサイトは成人内容を流しており、政府部門は何度も集中的に整理したが、著しい情況改
善はまだない。
・携帯
携帯インターネット
携帯インターネット産業
インターネット産業に
産業に対する監督管理
する監督管理を
監督管理を強化する
強化する(
する(モバイル・
モバイル・インターネット
インターネット関連
ネット関連)
関連)
2009 年、中国は 3G 営業許可証を発行した。3G はモバイルインターネットを迅速な発展
を推進する。2009 年 9 月末まででは、携帯でインターネットに接続するユーザは 1.92 億
人に達し、2008 年より 62.7%上昇した。携帯インターネットは既にわいせつ情報を伝播す
る重要ルートになり、政府によるコンテンツ監督管理の新しい課題にもなった。2009 年 11
月、文化部は《携帯サイトによるわいせつ情報の製作・伝播活動に対する厳格取締に関す
る緊急通達》を公布し、携帯サイトがわいせつ情報を製作・放送など有害な情報活動に対
し専門に処理を行うことを求められている。世論および政府による管制のプレッシャーに
より、中国移動(チャイナモバイル)などのキャリアは携帯わいせつ情報をクリーンアッ
プするため厳しい措置を講じ、更に WAP 業務パートナーに対し費用計算を一時停止すると
いう極端な措置も講じた。これは中国の携帯インターネット業界に対し重大な打撃を与え
16
インターネットテレビ:インターネットに接続できるモジュールを内蔵したテレビ。ブロード・バンド
インターフェースがあり、LAN 線を繋げ、テレビでインターネットに接続できる。映画やエンターテイメ
ントなどの番組もダウンロードできる。
69
た。
・文化部
文化部による
文化部によるネットゲーム
によるネットゲーム市場
ネットゲーム市場に
市場に対して監督管理
して監督管理
2003 年 7 月、文化部は《インターネット文化管理暫定規定》を公布し、文化部がインタ
ーネット文化に対する政府監督職責を果たすことが確定した。ネットゲーム企業は文化部
に対し必ずネットゲーム製品の運用権を申請する必要がある。文化部はネットゲーム市場
での違法活動に対し定期的に検査を行い、基本的に年 1 回検査結果を公布している。2009
年 11 月《第 7 回目違法ゲーム製品および経営活動の取締りに関する通達》を公布、188 社
の違法の疑いがある運営会社およびゲーム製品が通報された。
2009 年 7 月、文化部から《「ギャング」テーマの違法ネットゲームをただちに取締る通
達》を通達し、直ちに「ギャング」テーマの違法ネットゲームの取締りが要求され、
「ギャ
ング」テーマのネットゲームの運営が禁止された。
2009 年 11 月、文化部は《ネットゲーム内容管理作業の改善および強化に関する通達》
を公布し、ネットゲームの内容に対する管理強化を更に要求した。そして、ネットゲーム
企業に製品構成の調整することを要求し、「打獣昇級」17(ゲームの中で、ボスを倒して、
主人公のレベルをアップすること)がメインとなるゲームモデルを変更することとなった
18
。
2009 年末、文化部は《2010 年元旦、春節期間における文化市場に対する特定取締行動を
行うことに関する通達》を公布し、2009 年 12 月 15 日から 2010 年 3 月 15 日まで、再度文
化市場特定取締行動を行い、未成年によるネットカフェ利用および違法ネットカフェ(経
営免許なし)についての取締能力を上げることを要求した。
・新聞出版総署は
新聞出版総署はネットゲーム市場
ネットゲーム市場に
市場に対する監督管理
する監督管理
2002 年、新聞出版総署および情報産業部(現工信部)は《インターネット出版管理暫定
規定》
を連名公布し、
新聞出版総署はネットゲームの出版発行に対する審査権を確立した。
2009 年 8 月、新聞出版総署は《米国 1930》など 45 の審査を通過していない海外ネットゲ
ームの運営を停止することを命じた。また、
《音楽恋人》などの 26 項低俗内容を含むネッ
トゲームを取締った。そして、27 社のネットゲーム企業に対し違法警告通知書を発行し、
定められた期間内に改善するようにを要求した。10 社のネットゲーム企業責任者は訓戒処
分された。
17
データ出典:
「2009 移動インターネットセミナー」での工信部副部長奚国華の発言による。
「打獣昇級」ゲームとは、主要内容はモンスターを倒すことであるが、ユーザのレベルが上がるにした
がって、モンスターのレベルも高くなるゲームを指す。
18
70
・工信部による
工信部によるインターネットインフラ
によるインターネットインフラ設備
インターネットインフラ設備に
設備に対する監督管理
する監督管理
工信部は主にインターネットインフラ設備業界の管理職責を果たしている。インターネ
ットのセキュリティ管理を強化するため、2009 年 5 月、工信部は《トロイとボットネット
監視および処置》19・
《インターネットセキュリティ情報通報実行弁法》を公布し、トロイ
およびボットネットセキュリティ事件を非常に重大、重大、比較的重大、一般の4つのレ
ベルに分けた。通信キャリアがトロイおよびボットネットに対し監視職責を果たすことを
明確し、トロイおよびボットネット犯罪行為にかかる事件に対しては、公安機関に通報し
て調査処理するものとした。
《インターネットセキュリティ情報通報実行弁法》はネットセ
キュリティ情報の通報に対しタイプ別・レベル別の管理を施行し、各ユニット(企業、機
関)におけるネットセキュリティ通報の通報内容・通報時間・通報先機関をそれぞれに画
定した。
19
トロイは攻撃者が被害者のコンピュータにインストールし情報の盗み見と遠隔コントロールのための
プログラムを指す。ボットネットは攻撃者がサーバを通して、コントロールする被害者のコンピュータ群
を指す。トロイとボットネットは通常コントロール側とコントロールされる側のどちらも含んでいる。プ
ライバシー漏洩、秘密情報漏洩、迷惑メール及び大規模サービス拒否攻撃の主な原因である。
71
3.1.5 通信産業関連
通信産業関連
図表 3-5 中国の電気通信業に関する主な政策
主管部門
国務院
主要政策
発表時期
主な内容
「インターネット情報サービ
2000-9
インターネット情報サービ
ス管理弁法」
国務院
ス活動の規範化
「中華人民共和国電信条例」
2000-9
電信市場、電信サービス、
電信建設及び電信セキュリ
ティに対する管理を強化
情報産業部
「電信ネットワーク間インタ
2001-1
ーネット紛争の処理弁法」
情報産業部
ターネット紛争の解決
「電信設備のネットワーク接
2001-5
続管理弁法」
情報産業部
電信ネットワーク間のイン
電信設備のネットワーク接
続に対する管理の強化
「電信業務ライセンス管理弁
2002-1
法」
電信業務ライセンスの申
請、審査認可、使用、変更
及び取消等に関する国の管
理規定
国務院
「外商投資電信企業管理規定」
2002-1
外商投資電信企業が経営す
る基礎電信業務及び付加価
値電信業務に対する管理規
定
情報産業部
「中国インターネットドメイ
2002-8
ン名管理弁法」
情報産業部
に対する管理を強化
「電信ネットコード資源管理
2003-1
弁法」
情報産業部
インターネットドメイン名
電信ネットコード資源に対
する管理を強化
「電信市場の監督管理活動の
2003-7
さらなる強化に関する意見」
電気通信市場の監督管理・
規範的発展に関する指導意
見
財政部
「無線 LAN 製品の政府調達の
2005-12
実施に関する意見」
MIIT
無線 LAN 国家基準 WAPI を支
援
「外資系電気通信企業管理規
定」改正
2008-9
政府主管部門の変更、登録
資本金の最低基準引き下げ
2009 年 1 月中国は 3G ライセンスを発行し、3G 業務をスタートさせた。2009 年は三大キ
ャリアが全業務運営を行う初年度であり、日に日に飽和状態に近づく電信市場環境におい
72
て、キャリア間の悪性競争が著しく増加したが、その悪性競争への監督管理政策は未だ不
完備であり、罰則規定も限定されている。適切な市場競争のため、2009 年 12 月に工信部
は《電信市場秩序の規範化を更に遂行する文書主旨に関する通達》を公布し、通信設備を
破壊することや、互いの接続を妨害する、また競争相手を中傷することなどの不正競争行
為を取締ることを要求した。
2009 年 3 月、工信部は修正後の《電信業務経営許可管理弁法》を公布し、電信業務経営
許可証の申請・審査・使用・経営行為の規範などを明確に規定した。基本電信業務を申請
する企業の登録資本の最低基準を半分まで下げた。
通信ネットワークのセキュリティに対する脅威は増えつづけており、セキュリティ保護は
通信ネットワークの安全を保障するための重要な一歩である。2010 年1月、工信部は《通
信ネットワーク安全防護管理弁法》を公布し、通信ネットワークの構築および運営安全管
理の詳細を規定した。
中国通信市場の基本法《電信法》は 2009 年にいまだ公布されていない。この原因として
は凄まじいスピードでの電信市場と技術の発展、三つのネットワーク(放送、ネット、電
信)融合へのすばやい動きがあり、立法に必要な検討範囲が広すぎることがあげられる。
ただし、更に大きな原因として《電信法》の内容が多数の政府部門を跨っており、部門間
の利害闘争によって、《電信法》は遅々として脱稿できないことがあげられる。2000 年 9
月に応急的に公布した《中華人民共和国電信条例》が依然として電信市場の基本法規であ
り、現在の市場には対応できていないため、中国の電信領域における多数政策と制度間に
釣り合いがとれておらず、規定制度の監視システムも不完全な状態になっている。
2010 年1月、国務院が電信ネットワーク・放送ネットワーク・インターネットの三つの
ネットワークの融合推進を加速することを決定し、三つのネットワーク間で相互接続,資
源共有、並びにユーザに通話、データおよび放送テレビなど多種なサービスの提供が実現
することとなった。三つのネットワークの融合の推進プロセスとしては、2010 年から 2012
年まではラジオテレビ網と電信網の相互接続試行地点を重点展開し、3 ネットの規律ある
融合を保証する政策システムと体制づくりを研究することとなる。2013 年から 2015 年に
かけては、試行地点での経験を総括、3 ネットの融合発展を全面的に実現し、融合応用サ
ービスの普及を行い、適切な競争を持つネットワーク産業の布陣を基本的に形成する。ま
た、3 ネット融合に順応した体制機構と職責並びに明確かつスムーズに協調可能で科学的
で効率良く管理ができる新しい監督システムを基本的に確立することとなる。
73
3.1.6 テレビ・
テレビ・ラジオ放送産業関連
ラジオ放送産業関連
テレビ・ラジオ放送産業関連の主な法規定及び政策は下記のとおり。
図表 3-6 中国のテレビデジタル放送産業にかかる政策
主管部門
国家広電総局
主要政策
発表時期
主な内容
「有線デジタルテレビサービ
2003-11
有線デジタルテレビサービスプラッ
スプラットフォームと監督管
トフォームと監督管理プラットフォ
理プラットフォーム連結を加
ームの連結を加速
速させることに関する通知」
国家広電総局
国家広電総局
「ラジオ・テレビ有線デジタ
2003-11
ラジオ・テレビ有線デジタル有料チ
ル有料チャンネル業務管理暫
ャンネル業務運営主体及びユーザー
定施行弁法」の試行通知
の合法的権益の保護
「広電総局の有線デジタルテ
2004-9
全国有線デジタルテレビの監督管理
レビ監督管理プラットフォー
プラットフォームを構築し、各サー
ム建設を加速することに関す
ビスプラットフォーム、プログラム
る通知」
プラットフォームと監督管理プラッ
トフォームを連結させる
国家広電総局
「ラジオ・テレビ無線伝送ネ
2004-11
ットワーク管理弁法」
国家広電総局
する管理を強化
「有線デジタルテレビ技術マ
2005-1
ニュアル(第 5 冊)
」
国家発展改革
「デジタルテレビ産業の発展
委員会・国家広
を奨励する若干の政策」
ラジオ・テレビの無線伝送業務に対
有線デジタルテレビ業務に関する政
策及び技術指導
2008-1
一連の政策を通じて、デジタル産業
の発展を支援
電総局
国家広電総局
国家広電総局
《ラジオテレビ有線ネットワ
2009-8
有線ネットワークの向かうべき方向
ーク成長のスピードアップに
を明確化し、有線テレビネットワー
関する若干意見》
クの発達の任務と目標を設定
《ラジオテレビ安全放送管理
2009-12
ラジオテレビ安全放送管理規定
規定》
2009 年 2 月、広電総局は 2004 年 8 月に公布した《中外合資、合作放送テレビ番組制作
経営企業管理暫定規定》を廃止した。この規定は外国企業が独自資本の放送番組制作会社
を設立できないことを規定しており、合資、協業でしか番組制作会社を経営できないこと
となっていた。
、そして、中国側が必ず資本率において支配的立場にある必要があった。但
74
し、現在広電総局は放送テレビ番組の受け入れおよび発行に対し厳しい審査を行っており、
中国では審査後の番組しか発行できないため、番組制作について制限する必要がなくなっ
た。
2009 年 8 月、広電総局は《ラジオテレビ有線ネットワーク成長のスピードアップに関す
る若干意見》を公布した。有線ネットワークの向かうべき方向を明確化し、有線テレビネ
ットワークの発達の任務と目標を設定、有線ネットワークを次世代放送ネットワーク(NGB)
への進化のスピードをあげ、放送有線ネットワークのデジタル化、情報化、大規模化、産
業化への成長を促している。
2009 年 12 月、広電総局は《ラジオテレビ安全放送管理規定》を公布した。いかなる組
織・個人であっても放送電波の妨害また、安全放送行為を阻害してはならない。ラジオテ
レビの安全放送はタイプ別とレベル別の保障制度を実施している。ラジオテレビの安全放
送についての基本保障・日常管理・重要保障期管理・応急管理・監督管理及び規定違反の
責任の具体的な規定が作成された。
3.1.7 情報産業振興政策
中国は工業化に向けた発展段階にあり、情報産業は既に中国経済の基礎産業、
支柱産業、
先導的産業に成長している。中国政府は「情報化で工業化を促し、工業化で情報化を促進」
という発展戦略を打ち出し、工業と情報化の融合を図っている。
今後、情報産業振興政策は工業情報化部を中心に、国家発展改革委員会、科学技術部な
どの部門が管轄し、資金投入、税制優遇、各種発展基金、科学研究特別プロジェクトへの
支援などの振興政策、或いは産業、研究機関、高等教育機関への資金投入を行う。また地
域経済と深く関係する分野では、地方政府も独自の振興政策を取っている。
2006 年、中国は「国家中長期科学・技術発展計画綱要(2006-2020 年)
」を打ち出した。
同綱要に基づき、中国政府は 16 のプロジェクトを国家科学技術重要特別プロジェクトに指
定し、科学技術の発展促進に向けた最重要振興政策の一つと位置づけている。このうち、
情報産業分野の重要特別プロジェクトとしては、
「中核電子デバイス」「
、高品位汎用チップ」
、
「基本ソフト」、
「超大規模集積回路製造技術及びプロセス一式」、
「次世代ブロードバンド
ワイヤレス移動通信」が含まれる。
これら重要プロジェクトのほか、科学技術部は従来からの支援プロジェクトをも引き続
き実施している。これには、「国家ハイテク研究発展計画(863 計画)」
、「国家科学技術支
援計画」、
「国家重点基礎研究発展計画(973 計画)
」が含まれる。工業情報化部(MIIT)は主
にその前身、情報産業部(MII)が管轄していた「電子情報産業発展基金」プロジェクトを継
ぐ。
75
図表 3-7 中国の情報産業発展支援プロジェクト
主管部門
プロジェクト名称
概要
国家発展改
国家重大科学技術
中国は 2006-2020 年に実施する国家重大科学技術特別プロジ
革 委 員 会
特別プロジェクト
ェクトとして、16 プロジェクトを挙げている。このうち情報
科学技術部
産業関連は、①中核電子部品、②ハイエンド汎用チップ、③
MIIT
基本ソフト、④超大規模 LSI 製造プロセス技術、⑤次世代ワ
イヤレス移動通信のプロジェクトがある。
科学技術部
国家ハイテク研究
情報技術分野の主要テーマは、①超大規模集積回路の設計、
発展計画(通称
②高性能コンピュータ及びその中核ソフトなど21
「863 計画」)20
科学技術部
国家科学技術支援
第 11 次五ヵ年計画で重点的に支援される 11 分野のうち、現
計画22
代的な農村部情報化の中核技術研究とモデル、製造業の情報
化プロジェクト、情報産業と現代的サービス業、国家電子政
府に関する中核技術及び応用モデルといった情報化の重要プ
ロジェクトがある23。
科学技術部
国家重点基礎研究
情報分野の主なテーマには、①微細(ナノスケール)電子技
発展計画(通称
術・光電子技術、②高性能コンピューターシステム技術、③
「973 計画」)24
高速情報ネットワークと情報セキュリティ技術、④人間・コ
ンピュータの相互作用テクノロジー、⑤コンピューティング、
⑥制御技術における重要な基礎研究などがある25。
財政部
「電子発展基金」26
ソフトウェア、集積回路、コンピュータ、通信、ネットワー
20
国家ハイテク研究発展計画(863 計画):1986 年中央政府は「ハイテク研究発展計画(863 計画)綱要」
を策定し、ハイテク分野で年間 6-7 程度の重点研究プロジェクトを行ない、先進国との差を縮小し、人材
育成の狙いがある。
21
情報出典:国家 863 ウェブサイト(www.863.org.cn 863 計画および中国ハイテク研究発展)
22
国家科学技術支援計画:経済・社会発展を関わる重要な科学技術課題を解決する国家計画。第 11 次五
カ年計画期間中に 300 億元を投入し、技術開発を支援する。第 1 期として 11 分野、147 プロジェクトが
選ばれ、エネルギー、資源、環境保護、農業、製造、人口および衛星、公共セキュリティなどの分野に及
ぶ。
23
資料出典:国家科学技術支援計画ウェブサイト www.kjzc.jhgl.org
24
国家重点基礎研究発展計画(973 計画)
:
「科学教育による国家振興」や「持続可能な発展戦略」のため、
基礎研究や科学技術活動を強化する。科学技術部は 973 計画を通じ、基礎的研究を重点的に支援する。
25
情報出典:国家重点基礎研究発展計画ネット(973 計画ネット www.973.gov.cn。概要、統計、行政管理
文書、専門家リストなどを掲載)
26
「電子発展基金」
:中央予算から出資され、電子情報産業の中核的技術や製品研究・開発のための特別
プロジェクト資金。電子情報産業の発展を促す重要な財政政策、産業政策となる。情報産業部のデータに
よれば、2005 年末現在、政府の資金投入は 39 億元(約 546 億円)
、資金援助プロジェクトは 1,859 件に
上り、地方政府、金融機関及び企業からの関連投資は合計 2,000 億元(約 2 兆 8,000 億円)に及ぶ。
27
資料出典:電子情報産業発展基金ウェブサイト www.itfund.gov.cn
76
情報産業部
ク、デジタル音声・映像配信、新型部品・パーツなど、電子
情報産業の中核的分野をなす技術や製品の開発、産業化の支
援に充てられる27。
国家発展改
集積回路産業研究
革委員会、
と開発専門資金
集積回路企業の研究開発強化支援
MIIT
商 務 部 、
国際サービスアウ
中国におけるサービスアウトソーシングモデル産業の発展を
MIIT 、 科 学
トソーシング受注
支援。支援範囲は 20 のサービスアウトソーシングモデル都市
技術部
資金支援プロジェ
ならびに商務部重点サービスアウトソーシング企業リスト内
クト
の企業。
77
3.1.7.1
1.7.1 情報産業発展支援プロジェクト
情報産業発展支援プロジェクトの
プロジェクトの概要
(1) 国家重大科学技術分野「中核電子デバイス・高品位汎用チップ・基本ソフト」28
(2) 国家重大科学技術分野「超大規模集積回路製造技術及びプロセス一式」
主管部門
概要
国家発展改革委員会・工業情報化部・科学技術部
中国政府の集積回路分野における中長期研究開発支援重要プロジ
ェクトである。向こう 10-15 年をかけ、この分野における中国の
技術レベル向上を図る。
実施期間
2010-2012 年
「第 11 次五ヵ年計
90 ナノメートル製造プロセス設備の製品化実現に重点を置き、い
画」の実施内容・目標
くつかの重要技術やデバイス・部品の国産化を図る。65 ナノメー
トル製造プロセス設備のサンプル開発を目指す。45 ナノメートル
以下の製造プロセスで、若干の重要技術獲得を目指す。超大規模
集積回路に関するいくつかの中核技術または汎用技術の獲得を図
り、中国における集積回路製造産業の新たなイノベーション体制
を確立する。
2010 年のテーマ29
主として以下の分野に集中
1. 集積回路製造設備
2. キーデバイスとその中核技術
3. プロセス一式
4. 重要材料
5. 未来展望型研究
(3) 国家重大科学技術分野「次世代ブロードバンドワイヤレス移動通信」
主管部門
概要
国家発展改革委員会・工業情報化部・科学技術部
移動通信について、中国政府は中核技術や独自の知
的財産権の獲得を中国通信産業のコア・コンピタン
ス向上への突破口と位置づけ、重要特別プロジェク
トを通じて同分野の技術革新や発展を目指してい
28
29
中核電子デバイスは主に国防科学研究分野に応用され、対外公開されない。
“极大规 模集成电 路制造装备 及成套工艺 ”重大专 专 的实 施周期大多为 3 年,2010 年未发 布新课 课 申报 。
78
る。
実施期間
2010-2011 年
「第 11 次五ヵ年計画」の
大規模な通信容量を有する次世代ブロードバンドセ
実施内容・目標
ルラー移動通信システム、低コスト・広カバーエリ
アのブロードバンドワイヤレス通信接続システム、
近・短距離ワイヤレス相互接続システム・センシン
グネットワークを開発する。重要技術を獲得し、国
際的に主流な技術規格において中国が開発に関与し
た知的財産権の比重を大幅に高め、科学技術の成果
の商業ベースでの応用を図り、生産額 1,000 億元(約
1 兆 4,000 億円)を目指す。
2010 年のテーマ30
1.TD-SCDMA 強化型の開発と産業化
2.LTE31の研究開発と産業化
3.IMT-Advanced32の研究開発と産業化
4.移動通信ネットワーク、応用分野、端末の研究開
発
5.ブロードバンドワイヤレス接続に関する研究開発
と産業化
6.短距離ワイヤレス相互接続・ワイヤレスセンシン
グネットワークの研究開発と産業化
7.ワイヤレス移動通信の汎用重要技術の研究開発及
びプロジェクト管理支援
(4) 2008 年国家ハイテク研究発展計画「863 計画」の情報技術分野
主管部門
概要
科学技術部
「国家ハイテク研究発展計画(863 計画)の第 11 次五ヵ年計画期
(2006-2010 年)における発展綱要」によれば、863 計画のうち情報
技術分野の同期間における研究の重点は、知能型センシング、先進
的コンピューティング技術、仮想技術、情報セキュリティ技術など。
ウェブサイト
http://program.most.gov.cn
30
2009 年 10 月“新一代宽 宽 无线 移动 通信网”国家科技重大专 专 实 施管理办 公室发 布的 2010 年课 课 申报 指
南。
31
Long Term Evolution の略。第 3 世代携帯電話の高速データ通信仕様。3.9 世代(3.9G)とも呼ばれる。
32
国際電気通信連合(ITU)が 2000 年に規格制定した第 3 世代携帯電話(IMT-2000)に対し、次世代の第
4 世代携帯電話を IMT-Advanced という。
79
実施期間
2010-2011 年
2009 年課題
2009 年“863 計画”情報テクノロジー領域で公布された研究課題は
以下のとおり:
情報テクノロジー領域:
「地球システムモデル研究のための高性能計
算サポートソフトウェアシステム」
地球システムモデルでの高性能並列計算法研究と並列カプラー研究
開発
高機能コンピューターとグリッドサービス環境
信頼度の高いソフトウェア開発ツールとインテグレーション環境
(5) 2008 年「国家科学技術支援計画」の情報技術分野
主管部門
概要
科学技術部
「第 11 次五ヵ年計画」、「国家科学技術支援計画」の情報技術分野
における支援プロジェクトは次の通り。①現代型の農村情報化に関
する重要技術の研究とモデル事業、②製造業情報化プロジェクト、
③情報産業・現代型サービス業、国の電子政府に関する重要技術及
び応用モデル、などの情報化プロジェクト。これら分野では、毎年
異なるテーマ事業が立ち上げられている。
ウェブサイト
http://kjzc.jhgl.org/
実施期間
プロジェクト実施期間は通常 2 年
2009 年のテーマ
現代型の通信技術分野:①デジタル視聴覚技術、②薄型ディスプレ
イ技術、③電子タグ(RFID)技術、④応用電子技術、⑤集積回路技術、
⑥新型電子デバイス及びその技術、⑦センシングデバイス―などの
分野で、数十の研究テーマを設定。
コンピュータソフト・ネットワーク技術分野:①電子政府及びその
重要技術、②基本システムソフトの重要技術及びプラットフォーム、
③付加価値サービスソフト及びその技術、④アプリケーションソフ
ト関連の中核技術、製品及びサービス、⑤オンラインゲーム、アニ
メ・漫画技術及び製品―などの分野でプロジェクトを設定。
(6) 2008 年国家重点基礎研究発展計画「973 計画」の情報技術分野
主管部門
概要
科学技術部
「973 計画」は中国政府が農業、エネルギー、情報、資源環境、人口・
80
ヘルスケア、素材などの分野における科学技術レベルの向上を目指し、
これら分野における先進的理論の基礎研究を進める狙いで制定。資質
の高い、イノベーション力の高い科学人才を育て、高水準で、国の重
点科学技術プロジェクトを担当できる科学研究基地の整備を目指すと
ともに、若干の学際的な総合科学研究センタの形成を進める。
ウェブサイト
http://www.973.gov.cn/
実施期間
5年
2009 年の
情報分野の主なテーマ:①ミクロ(ナノ)レベル電子・光電子技術、
主なテーマ
②高性能コンピューティングシステム技術、③高速情報ネットワー
ク・情報セキュリティ技術、④コンピューティング・制御技術の基盤
―などがある。
(7) 2008 年電子発展基金プロジェクトの概要
主管部門
工業情報化部・ 財政部
ウェブサイト
www.itfund.gov.cn
概要
ソフトウェア、集積回路産業、コンピュータ、通信、ネットワーク、デジ
タル音声・映像、新型デバイスなど、電子情報産業の中核分野における技
術・製品の研究開発と産業化を支援する。
実施期間
毎年 1 回
2009 年の
2009 年電子基金の主要支援課題は以下のとおり
主なテーマ
ソフトウェアと情報サービス領域(19 課題)
集積回路領域(8 課題)
情報通信領域(15 課題)
デジタルテレビ領域(9 課題)
電子基礎領域(9 課題)
業界サービスと情報技術アプリケーション領域(6 課題)
(8) 2009 年集積回路産業研究と開発専門資金プロジェクト紹介
主管部門
ウェブサイト
概要
実施期間
国家発展改革委員会・工業情報化部・ 財政部
www.itfund.gov.cn
集積回路産業は中国 IT 産業におけるウィークポイントとなっており、中国
政府は専門に資金援助プロジェクトを設定、中国企業に対して独自のイノベ
ーション開発研究と修正回路技術の開発を奨励している。そして中国集積回
路産業の技術レベルの向上を行う。
毎年 1 回
81
2009 年の
主なテーマ
一、チップ設計
通常、組み込み型 CPU/DSP チップ研究開発
コンピュータとネットワークコアチップ研究開発
通信用のコアチップの研究開発
デジタルミュージック、ビデオ、フラットモニタチップ研究開発
情報セキュリティコアチップ開発
IC カード、電子タグとリーダライタのチップ研究開発
省エネルギーエコロジーチップ、電源管理チップ開発
電子機器設備と自動車専用チップ研究開発
集積回路設計用 EDA ツール研究開発
集積回路 IP コア並びに重要チップ研究開発
二、チップ製造
集積回路製造キーテクノロジー研究開発と実用化
集積回路シリコン技術研究開発と産業化
ガリウム砒素、GeSi 等集積回路のキーとなる新材料の研究開発
三、チップパッケージングとテスト
新型パッケージング技術と製品の研究開発
新型パッケージング材料研究開発
高速テスト技術研究開発
82
(9)2009 年国際サービスアウトソーシング受注支援プロジェクト紹介
主管部門
財政部・商務部
ウェブサイト
www.fwwb.gov.cn
概要
中国サービスアウトソーシング産業発展のスピードアップのための専用支
援資金。サービスアウトソーシング企業、サービスアウトソーシングトレー
ニング機構や公共サービスプラットフォームの設立を主に支援する。またア
ウトソーシング企業の国際市場への参入の支援も行う。
実施期間
毎年1回
2009 年の支援領域と
(一)20 の「中国サービスアウトソーシングモデル都市」のサービスアウト
重点
ソーシング企業、ならびに商務部重点アウトソーシング企業リスト内の企業
への支援
(二)各種国際サービスアウトソーシング人材を提供するトレーニング機構
(短大、大学を含む)への支援
(三)モデル都市による関連公共サービスプラットフォーム設備購入設置並
び運用費用への支援
(四)サービスアウトソーシング企業による国際的に通用する認証資格取得
への支援
3.1.7.2 家電下郷と
家電下郷と家電以旧換新
中国の農村地域は 8 億の人口を擁し、長年農村収入の伸びが都市部の伸びを下回る状況
が続き、農村地域の消費は著しく停滞している。中国の家電生産がだぶつく中、2007 年末
中国政府は「家電下郷」政策を進め、
「家電の農村普及プロジェクト」を開始し、財政補助
の形で農村市場での家電消費のテコ入れを図った。同時に家電産業救済の狙いもある。世
界金融危機の影響下、2009 年の中国情報産業の発展も大きなダメージを受けている。特に
輸出を主とする電子製造業への影響は大きい。そこで、この二年間の「家電下郷」
(家電販
売額の 13%を政府補助)の試行地点を基礎とし、2009 年 2 月には、対象地域が全国に広が
り、実施期間は一律 4 年と暫定的に定められた。
「家電農村普及プロジェクト」により、農
村の消費が促進され、企業の在庫圧縮もでき、市場環境の改善にも貢献している。商務部
の推計によれば、4 年にわたる「家電農村普及プロジェクト」結果、製品販売量は 4 億 8,000
万台に迫り、消費促進効果は累計 9,200 億元(約 12 兆 8,800 億円)に達するとしている。
2009 年後半の中国政府が都市居住者向けに推進した「以旧換新」
(価格の 10%を政府補助)
政策は、初めに9つの試行省市地点において施行され、その後全国にその範囲を広げ、中
国電子製造業の窮地脱出を支援している。商務部統計によると、家電の「以旧換新」が実
83
施された 2009 年 6 月 1 日から 2010 年 2 月 2 日までに、9つの試行省市地点において 577
万台の5つのタイプの家電製品が販売された。そのうち、テレビの販売量がもっとも多く
256.2 万台の販売量であり、以下、洗濯機 89.9 万台、冷蔵庫 78.6 万台、エアコン 84.3 万
台、パソコン 68 万台であった。販売された新家電の大部分は中高級製品であり、平均価格
は 4000 元前後となっている。600 万強の家庭が補助を受け、内需刺激効果はてきめんであ
った。2010 年はその実施範囲の拡大が期待される。
3.1.7.3
7.3 電子情報産業の
電子情報産業の調整と
調整と振興に
振興に関する計画
する計画(
計画(20092009-2011 年)
2008 年金融危機の影響を払拭するために、中国政府は内需刺激、投資拡大による経済の
継続的かつ安定的な発展を目指し、2009 年の経済成長目標を 8%と定めた。そして電子情報
産業を含む 10 大産業振興計画による経済の持続的成長を目指している。
2009 年 2 月、中国政府は「中国電子情報産業の調整と振興に関する計画」を策定し、
2009-2011 年の 3 ヶ年で、コンピュータ、電子デバイス、AV 音響製品、集積回路、新型デ
ィスプレイ、ソフトウェア、通信設備、情報化サービス、情報技術の応用、の 9 分野を重
点的な振興分野と定め、国有資産の投入、税制優遇、政策支援、及び業界内での合併・再
編などの措置で支援することになった。また①集積回路のレベルアップ、②CRT カラーTV
から液晶ディスプレイへの事業転換、③TD-SCDMA 移動通信産業のブレークスルー、④デジ
タル TV の普及、⑤次世代インターネットの利活用、⑥ソフトウェア・情報サービス事業の
育成を 6 大重要プロジェクトと認定し、資金援助していく決定をした。今後 3 年間、電子
情報産業の安定成長を目指し、GDP 成長率への貢献度は 0.7%以上とし、新たに 150 万人の
雇用機会を生み、特に大学新卒生 100 万人を吸収し、ソフトウェアと情報サービス事業の
電子情報産業における比重を 12%-15%まで上げる計画である。
84
3.2 台湾
3.2.1. 情報化政策・
情報化政策・計画及び
計画及び関連制度
2007 年 3 月、行政院台湾 ICT 発展推進グループが、今後 4 年間の ICT 発展計画(2007~
2011 年)を発表し、計画の実行に計 556 億 NT$(約 1,673 億 5,600 万円)を投じる予定で
ある。計画では、ユビキタス・ネットワーク社会の創出をコア概念とし、2011 年までに、
以下の目標達成を目指している。
・ データ通信速度が 30Mbps に達する移動・固定網の世帯カバレッジを 80%にする
・ 50%以上の住民が各種 ICT を応用したサービスを享受し、満足度が 80%に達する
・ 55%の住民が電子化政策サービスを享受し、満足度が 60%に達する
・ ネットワークに接続できる各種機器の利用数を更に 30 億個増やす
・ UNS(Ubiquitous Network Society)関連の新興産業における年間生産額が 1 兆 NT$(約
3 兆 100 億円)とする
3.2.2 ICT 政策における
政策における個別産業
における個別産業の
個別産業の規模及び
規模及び促進施策
産業開発事務局は、台湾 ICT 産業を強化するために投資に伴う各種支援を行う等、第一
級の投資環境を提供する。
2008 年
2015 年目標
産業促進策
テレマティクス関連
生産額: 678 億 NT$(約 2,102 億円)
生産額: 3,000 億 NT$(約 9,300 億円)
1. Technology Development Plan(TDP)を活用して企業がスマートカーや
主要なシステムコンポーネント及びモジュール開発支援
2. グローバル自動車メーカ・供給者を立ち上げるための検査・検定の標
準化
3.国際的なテレマティクス標準、法的要求及び産業発展状況につき、情報
や分析を提供する
4.台湾企業の国際市場開拓を支援するため、国際標準化組織や国際自動車
産業会議に参加する
5.国内自動車メーカとの協力を通じ、テレマティクスのサプライチェーン
への融合を支援する
6.グローバル自動車メーカの認定が取得し、グローバルなサプライチェー
ンに融合できるよう、台湾のテレマティクス企業の製品品質向上を支援す
る
85
通信関連
2008 年
・通信機器及びその構成品の生産額: 3,842 億 NT$(約 1 兆 1,910 億円)
・WiMAX 生産額: 61 億 8,400 万 NT$(約 191 億 7,400 万円)
2015 年目標
・通信機器及びその構成品の生産額: 5,729 億 NT$(約 1 兆 7,760 億円)
・携帯ネットワーク及び通信機器の主要な生産国となる
・ネットワーク・通信 10 製品分野において世界一のシェアを取得する
・広域無線アクセス、IP テレビ及び IP 監視において産業チェーンを築く
産業促進策
1.光ファイバー・WiMAX ネットワークの国内展開の促進、台湾製ネットワ
ーク設備の使用の振興、そして NGN 展開に向けて性能試験の相互運用の
事業機会の創出
2.振興市場での資機材調達機会を探るため、産業協力強化を目的としたグ
ローバル通信設備ベンダとの覚書の締結
3. Cross-strait ブロードバンド及び無線ブロードバンドネットワークの
アプリケーションの確立と共同制作を促進
4. 新規光ファイバーブロードバンドサービスの促進、及び特定地域やグ
ループの人々向けの新しい無線ブロードバンドアプリケーションサー
ビスを開発し、それらの人々がこのサービスを体験できるよう奨励
5. 通信産業の競争力強化のため新しい指標を規定し、継続して産業の健
全な発展を監督し、また、企業が新しい技術を使うために人材を教育す
る仕組みを確立するのを支援する
デジタルコンテンツ関連
2008 年
・生産額: 4,004 億 NT$(約 1 兆 2,412 億円)
・投資額: 151 億 NT$(直接投資・間接投資合計)
(約 468 億円)
2015 年目標
・生産額: 7,200 億 NT$(約 2 兆 2,320 億円)
・投資額: 60 億 NT$(直接投資のみ)(約 186 億円)
産業促進策
1. 産業の革新と向上を支援するため、投資、融資、製品開発助成金及び
助言の提供
2. 産業の需要に合致するデジタルコンテンツ人材の養成
3. 卓越した製品や新しい才能を育てる動機づけとするため、デジタルコ
ンテンツ競技会を開催する
4. SME 製品の開発を支援するため、Digital Content Academy で開かれた
共有サービスを提供する
86
5. 内外の主要な展示会や博覧会に参加し、販売促進活動を組織すること
6. 国際市場を開拓し、中国語の e-learning 製品やサービスを広める
7. 他の産業で e-learning を取り入れるよう後押し、業界横断の協力・協
調関係を促進する
8. デジタルアーカイブ素材の産業化を促進する
情報サービス関連
2008 年
・生産額:3,027 億 NT$(約 9,384 億円)
・CMMI 認定企業:111 社、世界第 7 位
・輸出額:448 億 NT$(約 1,389 億円)
・アジアパシフィック地区における IT サービス Top5 企業:1 社
2015 年目標
・生産額: 4,480 億 NT$(約 1 兆 3,888 億円)
・CMMI 認定企業:200 社、世界第 7 位
・輸出額:665 億 NT$(約 2,62 億円)
・アジアパシフィック地区における IT サービス特定分野 Top3 企業:2 社
産業促進策
1. 優良な台湾の IT サービス企業に対し、輸出実績向上のために指導する
2. 地域産業クラスタのための新規の IT サービス補完産業及び IT サービ
スソリューションの開発促進
3. IT サービス企業の代表団組織化による国際展示会や博覧会参加、主要
なグローバルベンダや各国代理店との協業支援
4. 情報サービス供給者が CMMI 認定を取得するためのガイダンスの提供、
またその取得の具体例の公表
5. CMMI の人材の育成
半導体関連
2008 年
生産額: 1 兆 3,473 億 NT$(約 4 兆 1,766 億円)
12 インチ製造工場:19 工場稼働中、6 工場建設中、16 工場計画中
2015 年目標
生産額: 1 兆 6,575 億 NT$(約 5 兆 1,383 億円)
12 インチ製造工場:27 工場稼働中、4 工場建設中、10 工場計画中
産業促進策
省略
フラットパネル(液晶・プラズマ他)関連
2008 年
生産額: 1 兆 6,370 億 NT$(約 5 兆 747 億円)
2.5~6 世代生産工場:13 工場
7.5 世代生産工場:2 工場
87
2015 年目標
生産額: 2 兆 6,000 億 NT$(約 8 兆 600 億円)
2.5~6 世代生産工場:14 工場
7.5 世代生産工場:2 工場
8.5 世代生産工場:2 工場
産業促進策
1. 産業界が投資に関わる障害を克服することを支援すること。大規模投
資案件を支援、促進すること。主要なコンポーネントを自身で生産できる
よう産業界の能力を向上させる
2.主要な展示会や博覧会への参加を支援し、台湾のフラットパネルのブラ
ンド価値の向上
3.「Flat Panel Display Component Product & Technology Awards」(フ
ラットパネル製品・技術表彰)を毎年開催し、技術開発を支援
4. Green Value Chain及びGreen製品検査・検証を促進するため、フラッ
トパネル
産業界リソースの調整
5. フラットパネルメーカの中核技術開発支援
6. LEDの応用範囲を拡大するため、LED及び照明産業一体化
7. LED産業人材の育成
88
3.3 韓国
3.3.1
.3.1 李明博新政権下の
李明博新政権下の情報化政策の
情報化政策の方向性
2008 年 2 月 25 日に発足した李明博新政権は、情報通信部(MIC)を廃止し、また、産業資
源部(MOCIE)を知識経済部(MKE)に名称変更した。
廃止となった旧情報通信部の主な機能は以下の 4 省庁と委員会に分割された。
i
放送通信委員会:通信サービス政策と規制
ii
知識経済部(旧産業資源部): T 産業政策、郵便事業(将来民営化)
、中小企業
支援(ソフトウェアベンチャ海外進出含む)
iii 行政安全部(旧行政自治部):電子政府、情報保護
iv 文化体育観光部(旧文化観光部)
:デジタルコンテンツ政策
また、知識経済部は旧産業資源部の産業エネルギー政策、IT 産業政策、および、科学技
術部の産業技術 R&D 政策も統合し拡大した IT についても、IT 産業の育成ではなく、IT を
活用して生産性の向上や、雇用促進を目指す方向に転換した。
この一連の動きは、韓国政府が IT 産業を軽視しているわけではない。IT は「ツール」であ
り、「IT はいたるところに偏在している」という捉え方である。実際、その後発表された New
IT 戦略では、IT を活用して、グローバルソフトウェア企業 10 社、売り上げ 500 億ウォン(約
59 億 5 千万円)以上の情報技術企業 1,000 社、輸出は 2,000 億ドル、国内生産 386 兆ウォン(約
45 兆 9 千万円)を達成するという目標を掲げている。
産業全般に関しては、大企業と中小企業に分け、大企業には世界市場での競争や R&D を
円滑にするような規制緩和33などの制度条件の整備、中小企業には、税制面での支援や資
金援助、大企業による中小企業支援などを行う、としている。
2008 年 2 月に発足した新政権により、情報化担当部署として誕生した知識経済部が本格
的に情報化政策を発表したのは 7 月に入ってからであった。
New IT 戦略の 3 大戦略分野は、
1.
全産業と融合する IT 産業
2.
経済社会問題を解決する IT 産業
3.
高度化する IT 産業
と定められている。
「高度化する IT 産業」では、半導体やディスプレィ産業育成、ネットワーク・無線通信、IT
部品とソフトウェア産業を育成する、としている。
33
これまでソウルや京幾道など首都圏では工場建設ができなかったが、規制緩和により、これを可能とし
た。また、これにより雇用創出にもなる。中小企業向けには、税金処理など支援や資金援助も含んだ支援
を行う。
89
戦略分野としては電子情報デバイス、情報通信メディア、次世代通信ネットワーク、ロ
ボット、ソフトウェアコンピューティング、知識サービス、USN、産業技術融合、バイオ医
療機器が選定された。
半導体やディスプレイ、携帯電話端末などに使われる IT 部品やコア技術の国産化のため
には 2008 年だけで 3,204 億ウォン(約 381 億 2760 万円)
を投入する。内訳は半導体が 1,081
億ウォン(約 128 億 6,390 万円)でもっとも多く、IT 部品 802 億ウォン(約 95 億 4,380
万円)
、ネットワーク(次世代ネットワーク)540 億ウォン(約 64 億 2,600 万円)
、移動通
信 524 億ウォン(約 62 億 3,560 万円)、ディスプレィ 320 億ウォン(約 38 億 800 万円)と
なっている。ディスプレィ産業基盤センタ協議会の設立、携帯電話端末の産業成長のため
のモバイルテストフィールド拡大など、中核的な IT 産業の基盤をより確固たるものにする。
知能型ホームネットワーク産業発展戦略と知識情報セキュリティ産業発展戦略も 2008 年
末までに立案し、このための予算として 81 億ウォン(約 9 億 6,390 万円)が補助される。
このほか、New IT 戦略には国内の知的財産権管理を強化して海外企業との特許紛争に対
応できるよう専門性を高めること、IT 研究開発基金として大手通信企業が売上高の 0.1%
ほどを政府に拠出していた制度を 5 年後に廃止し市場競争を高めること、大韓貿易投資振
興公社(KOTRA)と韓国情報通信国際協力振興院(KIICA)に分かれていた韓国企業の海外進出
支援組織を統合し、窓口を大韓貿易投資振興公社に絞るといったことも盛り込まれている。
2009 年 9 月 2 日には、大統領直属の「未来企画委員会」が開催され、IT KOREA 5 大未来
戦略を発表した。これは、5 大コア(核心)戦略からなり、IT の力量の高度化と他の産業
との融合を通じ大企業と中小ベンチャー企業が共に成長する(パートナー成長)する「産
業生態系」を構築するために重要な内容を含んでいる。
(1)10 大 IT 融合戦略産業:造船、エネルギー、自動車など 10 の戦略産業を創出
自動車などの産業融合 IT センターの設置拡大(2009 年 3 箇所 → 2012 年 10 箇所)
国家 SOC に IT 技術を連結させた「知能型インフラ構築マスタープラン」を策定(2009 年
末)
- 融合競争力の源泉であるシステム半導体を世界一流の水準に育成する。
(2)産業経済力の源泉としてのソフトウェア:グローバル水準のソフトウェア企業の育成
ソフトウェア奨学生選抜などを通じ、次世代ソフトウェアリーダを育成し、
「ソフトウェア
工学センター」を設立し、(2009 年 9 月) 品質の競争力を強化する。
- 携帯電話、スマートフォンなどに使用されている「オープンソースモバイル OS 開発」な
ど新しいソフトウェアフラッグシッププロジェクトを民間との共同プロジェクトにて推進
する。
- 不合理な市場構造を解消するために、ソフトウェア分離発注を義務化し、不法複製に対
する強力な取り締まりを実施する。
90
(3)主力 IT の世界的な供給基地:3 大製品(半導体、ディスプレイ、携帯電話)で世界 1
位を達成
- 民間との共同で次世代メモリ R&D を推進し、次世代ディスプレイと移動通信の特許と標
準を取得する。
- 大企業の購買と連携した R&D などを通じ、半導体、ディスプレイ、LED、放送、ネット
ワークなど 5 つの産業で中核企業を育成する。
(4)便利で進んだ放送通信サービス:WiBro/IPTV/3DTV 市場の早期活性化
- WiBro ネットワークの事業性を向上させ効果的に全国ネットワーク構築を推進し、2010
年までに全ての教室と兵営宿舎(生活館)に IPTV を繋ぐ。
- 2012 年までにアナログ放送をデジタル TV 放送に転換し、2011 年大邱(デグ)世界陸上
選手権大会を契機に 3DTV の実験放送を実施する。
(5)さらに早く安全なインターネット:安全な超広帯域ネットワークを構築
2012 年までに今よりも 10 倍(1 Gbps)早い超広帯域ネットワークを構築し、未来のインタ
ーネット開発に本格的に着手する。
世界最高水準のサーバーテロ対応体系を構築し、情報セキュリティ産業を積極的に育成す
る。
韓国政府は、IT KOREA 未来戦略の実行のために、政府と民間で今後 5 年間(2009-2013)
で 189.3 兆ウォン(政府:14.1 兆ウォン、民間:175.2 兆ウォン)を投資し、政府は投資
金額 14.1 兆ウォンのうち、12.6 兆ウォンを中期財政計画に反映させ、情報通信振興基金
と放送通信発展基金拡充を通じ、新しく 1.5 兆ウォンの財源を用意し、IT 融合、ソフトウ
ェア、IT 装備(半導体、ディスプレイ、LED、放送、ネットワーク)、放送通信サービス(デ
ジタル電話等)の分野で中小企業支援に集中投資を行う、という。
政府の投資に対応し、民間も 175.2 兆ウォン(設備:109.7 兆ウォン、R&D:65.5 兆ウォ
ン)を投資し、IT 産業の競争力を強化していく。
図表 3-8 分野別 5 年間民間投資計画
分
野
半導体
合
計
41.7
ディスプ
通信・
レイ
情報機器
57.4
20.3
家
電
10.4
(単位:兆ウォン)
電子部品
7.0
通信
サービス
35.6
その他
2.8
出典:未来企画委員会、知識経済部、放送通信委員会
91
・IT5 大核心(コア)戦略の推進により、製造、ソフトウェア、サービスなど IT 産業の各
部門が均衡な発展を遂げ、未来韓国の経済成長を牽引していくことが期待される。(2013
年潜在成長率 0.5% 上昇を予想)
<核心(コア)戦略部門別 2013 年目標>
○ IT 融合:韓国国内生産 1 兆ウォン以上の IT 融合産業を 10 創出する。
○ ソフトウェア:韓国内の 8 企業(IT サービス 6 社、パッケージソフトウェア 2 社)
「グ
ローバル 100 大企業」として育成する。また、売り上げ 1,000 億ウォン以上の企業を 27
社育成する。
○ 主力 IT:3 大製品(半導体、ディスプレイ、携帯電話)で世界市場のシェア 1 位を達成
する。5大 IT 装備産業(IT 融合、ソフトウェア、主力 IT、放送通信、インターネット)
の国産化・世界市場でのシェア 2 倍を達成
○ 放送通信:世界最高水準の放送サービスの提供
○ インターネット:超広帯域ネットワーク(UBcN)と世界最高の情報セキュリティ対応セン
ターを構築
3.3.7 産業振興政策
3.3.
.3.7.1 ソフトウェア強国
ソフトウェア強国の
強国の建設
4.3.1.で紹介した李新政権の基本方針のうち、IT 関連の 2 番目にある「ソフトウェア強
国の建設」について、2008 年 4 月現在の状況を記述する。
映画、ドラマに代表される「韓流」の勢いはアジア圏ではかなり強い34。この状況を、
2008 年 2 月に新政権発足直後の電子新聞35では、韓国政府がこれまで振興策を講じてきた
半導体の輸出高と、
「韓流」の輸出高を比べて、韓国の半導体の 1997 年から 2006 年までの
半導体輸出額は 231 億ウォン(約 27 億 4,890 万円)であるのに対し、映画、書籍、キャラ
クター配給会社のヘリポート社の輸出額合計は 308 億ウォン(約 27 億 4,890 万円)であっ
たと述べている。
同新聞は、また、同時に大手電機メーカの生産拠点が次々に海外へ移転することに伴う
国内労働市場の空洞化も懸念している。
2007 年の電子新聞の調査によれば、市場最大の 63 兆ウォン(約 7 兆 4,970 億円)の売
り上げを記録した三星電子であるが、2007 年 第 3 四半期を基準にした従業員数は、8 万
34
筆者は台北とシンガポールで旅行代理店の前に韓国の人気ドラマ「大長今(邦題:チャングムの誓い)
」
のテーマパークへのツアーを紹介する大ポスターを見た。
35
電子新聞 2008/02/29 創立 8 周年記念特集記事
92
5296 人であり、2006 年の 8 万 5813 人より 550 人減っている。半導体、LCD などの組み立
て部門の海外移転が継続的に進んだため、雇用創出なき成長が続いている。
それに対し、韓国の代表的なソフトウェア企業である TMAX ソフトウェア社は、昨年の売
り上げは 1,000 億ウォン(約 119 億円)にも満たなかったのに、今年末までには 500 人を
雇用する計画であると、ソフトウェア企業の『高い雇用創出』性を強調している。さらに、
「全世界のソフトウェア市場規模は 7,000 ドルで LCD 市場の 10 倍、半導体の 3 倍となって
いる。ソフトウェア産業が 21 世紀を牽引する成長動力となることは言うまでもない。デジ
タルコンテンツとソフトウェアはどんなに生産量が上がっても、追加費用が生じない付加
価値の高い分野である。その上、他産業に与える影響力も大きい。雇用創出と産業競争力
向上のために無くてはならない産業である。新政権が掲げる経済生き残りの勝敗はソフト
ウェア産業育成にかかっている。
韓国情報産業連合会(FKII:The Federation Korean Information Industries)によれば、
売り上げ 10 億ウォン(約 1 億 1,900 万円)あたりの雇用創出能力はソフトウェア産業が
6.2 人に対して、通信 2.5 人、製造業 0.6 人である。韓国ソウトウェア技術振興協会会長
は、
「ソフトウェア産業が経済成長と雇用創出、国家と他産業経済力の向上に必須な先端産
業であり、
韓国企業のグローバル競争力を高める重要産業である。」
と述べた。
このように、
ソフトウェア産業の重要性について並々ならぬ強調を繰り返している。
韓国のソフトウェア企業が、世界市場でのソフトウェア企業ランキング 100 位に入るに
は売り上げ 2,000 億ウォン(約 238 億円)規模が必要である。2006 年時点で 100 位以内に
入る韓国のソフトウェア企業は皆無であった。最高でも安哲秀研究所が 319 位である。次
が TX ソフト 370 位、ハンディソフト 460 位、ハンソフト 483 位と 500 位圏内にやっと入っ
ている現状である。ランキング 100 位にあるソフトウェア企業は概略で 1000 人から 2000
人の従業員を雇い、平均 9%の利益を出している。李新政権の間に韓国企業 10 社が、100
位内にエントリすれば、2 万人がソフト会社に雇われ、間接的には 10 万人近くの雇用創出
が実現するであろうと予測されている。韓国ソフトウェア振興院院長も「国民所得 3 万ド
ル時代への跳躍に絶対必要な挑戦課題である。」としている。
旧文化部発刊の「2007 年デジタルコンテンツ白書」によれば、2006 年 IT 産業の経済成
長寄与率は 40%台であったが、問題は 2000 年以降の IT バブルである。一方で同時期のデ
ジタルコンテンツの経済成長寄与率は 12.6%であった。ちなみに世界平均は 17.6%である。
文化部のコンテンツ振興チーム長によれば、
「韓国 IT 産業は、日本、米国、中国に挟まれ
てつぶされそうであるが、コンテンツ分野の成長率は世界で 7%、アジア地域で 9%となって
おり、今後急成長がみこまれている。」と述べており、コンテンツ市場規模は 1 兆 7,600
億ドルで、ハードウェア市場の 1 兆 1,600 億ウォン(約 190 億 4 千万円)よりもかなり大
きい。韓国の文化産業の成長率は 10.5%で韓国の経済成長率 4~5% の約 2 倍である。三星
経済研究所からも全世界の映像、ゲーム、公演、デジタルコンテンツなどのコンテンツ産
業は 2006 年 70 兆ウォン(約 8 兆 3,300 億円)に達し、これらの成長動力として浮上して
93
いるという報告書が出ている。
こうした背景の中、文化体育観光部の大臣は、2008 年 4 月 15 日に韓国ゲーム産業振興
院の業務報告の席で「新政府の文化コンテンツ産業の経済的効果をもっとも体現するのは
まさにゲーム産業である。
」36と述べた。ゲーム産業は文化コンテンツ輸出の 45.7%を占め、
貿易黒字だけで 5 億ドルとなっている。同振興院は優秀なゲーム企業を対象に恒常的な支
援を行うとしており、月 1 回、専門家による評価団が支援対象のゲーム企業を審査、選定
している。また、韓国内のゲーム企業のデータベースを作成し、投資者に情報を提供する。
これを 2010 年まで拡大していく方針である。また、北米、中国、日本、北ヨーロッパ、中
東などで輸出商談会を開催し、新市場開拓を促すとのことである。
3.3.7.2
3.7.2 最新(
最新(2009.6 時点)
時点)のソフトウェア振興政策
ソフトウェア振興政策
前述のように新政権発足時から、雇用創出面や他産業との融合で生産力のアップなど、
ソフトウェアへの期待が高かった。その約 1 年半後の 2009 年 6 月 11 日に(社)情報サー
ビス産業協会が主催する日韓 IT 企業セミナープログラムで韓国知識経済部ソフトウェア
政策課長が発表した「ソフトウェア産業発展策」でも同様な方針のもとに施策が推進され
ていた。以下、抜粋する。
(1) ソフトウェア産業の現状
2001 年と 2007 年を比較し、韓国ソフトウェア産業の成長の推移を図表 1-4 で表した。
図表 3-9 2001-2007 韓国ソフトウェア産業の成長推移
2001
2007
増加幅
14 兆ウォン(約 30.4 兆ウォン(約
生産額
1 兆 6,660 億円) 3 兆 6,176 億円)
2.2 倍
(約 100 億ドル)
(約 200 億ドル)
輸出額
2.4 億ドル
54.8 億ドル
22.8 倍
ソフトウェア従事者
10.3 万人
12.8 万人
2.5 万人増
GDP における比率
0.85%
3%
成長寄与率
-2.2%
88%
出典:知識経済部(2009.6)
韓国では、ソフトウェアはハードウェアの付属物という考えが長くあった。しかし、こ
36
電子新聞
2008/04/16
94
の 7 年間で著しく成長を遂げており、新たに 2.5 万人の雇用を創出している。
(2)世界における韓国ソフトウェア企業のランキング
パッケージソフトウェアの場合を見てみると、一番高順位の企業(安哲秀研究所37)でも、
303 位、IT サービスは三星 SDS 社の 55 位が最高である。ちなみに日系企業の場合、パッケ
ージソフトで富士通が 11 位で最高、IT サービスではやはり富士通が 4 位に入っている。
(3)政策ビジョンと目標
ビジョンと目標は、図表 4-10 のとおりとなっている。
図表 3-10 ソフトウェア振興策のビジョンと目標
ビジョン
目標
ソフトウェア産業を国家のコアなインフラ産業として発展させる。
他産業とソフトウェア融合により、
1
新しいサービス創出
2
製造業の競争力向上
・新しいサービス発掘
・コア技術の確保
・サービスモデルの商業化
・組込みソフトウェ
ア成長基盤の構築
・地域産業の競争
力を高めるため、地
域ソフトウェア事業
を拡大
3
ソフトウェア産業強化
・ソフトウェア高級専
門人材の養成
・ソフトウェア技術競
争力の強化
・電子政府の国際協
力
出典:知識経済部(MKE,2009.6)38
(4)目標別具体的アクション
a. 新しいサービスの創出
官民共同でソフトウェア融合サービスモデルを発掘し、事業の妥当性を分析する。他
産業との融合では、
「農畜産、食料品の原産地情報サービス」、
「企業による有害物質の情
報管理サービス」、「交通情報に関する総合サービス」などの商業化を推進中である。
37
38
セキュリティワクチンの会社、英文名は Ahnlab
MKE のプレセン資料より作者が編集。
95
b. コア技術の確保
今後、産業革新、経済への波及効果が大きいと期待される自動車、造船、国防など、
戦略的な分野におけるソフトウェアのコア技術の開発と強化を進める。
また、このため、
R&D の成果を技術移転したり、またこの成果を常時利用するための専門組織の設立を検
討している。
c. 組み込みソフトウェアの成長基盤構築
中小企業製品へのソフトウェア融合を促進するための開発プロジェクト拡大を推進する。
また、中小組み込みソフトウェア企業の開発能力を向上させる。
d. 地域産業の競争力を向上させるため、地域のソフトウェア事業を拡大
地域のソフトウェア支援センタ(18 ヵ所)、IT 特化研究所(5 ヵ所)など現場密着型ソ
フトウェア融合を支援する。また、地域の産業環境にあった特別課題を重点的に推進する。
e.ソフトウェア専門の高級人材の養成
39
グローバルな人材を育成するため「ソフトウェア奨学生プログラム」を導入する。
ソフトウェア専門別人材を育成する産学共同プログラムを拡大する。
既にソフトウェア産業に従事している人の職務能力を高めるための「再教育プログラム」
を拡大。
f.ソフトウェア技術競争力の強化
ソフトウェアを新しい成長動力(=成長産業)に育成するため、ソフトウェア基盤技 術
を開発する。そのため、音声や触覚など、体感型 UI のような未来の戦略的分野を選定し、
集中投資をおこなう。
これまで、ソフトウェア品質向上のための支援には以下のようなものがある。
・パッケージソフトウェア品質認証制度(GS 認証、2001 年)
・ソフトウェア開発のプロセス認証制度(2008 年)
g. 電子政府の国際交流・国際協力
発展途上国の情報化システム構築を支援することで、電子政府の導入を助ける。その一
環として、電子政府など IT サービスシステム構築についてのフィージビリティ調査を行う。
また、電子政府についての政策および構築事例について、招聘研修を行う。この研修には、
韓国での電子政府の成功事例視察も含む。
39
本レポート 5 章で詳しく説明している。
96
3.4 シンガポール
シンガポールの IT 産業政策の基本方針は、IT 産業の技術力を高めイノベーションの創
出を強化するとともに、地場 IT 企業の国際市場への参入を支援することである。また韓国
同様、国内市場規模は限定的であるため、国外展開に焦点が当てられている。
IDA は地場情報通信企業の国外展開を支援するため、中国、インド、米国、中東に海外
事務所を設置している。
上記目的のため、シンガポール政府が進めているプログラムを以下に述べる。
<イノベーションの促進>
① 情報通信企業プログラム(iEP:Infocomm Enterprise Programme)
地場情報通信関連企業の知的財産権創出や業界全般にインパクトを及ぼす大型プロジェ
クトの開発を支援する制度である。シンガポールで設立された情報通信関連企業が革新的
で新規性のある技術を保有し、まだ一部にしか導入されていないが業界全般を変容する可
能性を持つような場合、この制度により最大 200 万 S ドルまでの補助金が支給され、最長
18 カ月に渡って業界全般への普及を促進することができる。この制度が認められた事例に
は、ヘルスケア部門での統合医療管理システム、学校向けコンテンツ管理システムなどが
ある。
② 地 場 情 報 通 信 産 業 向 上 プ ロ グ ラ ム ( iLIUP : Infocomm Local Industry Upgrading
Programme)
シンガポールの地場情報通信関連企業と多国籍企業の連携を強化して、地場情報通信産
業のレベル向上を目指すプログラムで、単なるビジネスマッチングのみならず、相互の強
みを活かしながらシナジー効果を高めて結果を出すことに重点が置かれている。財政的な
支援制度ではないが、プログラム導入以来、地場情報通信企業は本プログラムにより 500
以上の新製品やソリューションを開発してきた。
<海外展開の支援>
① 海外開発プログラム(ODP:Overseas Development Programme)
地場情報通信関連企業の海外市場開拓を支援する制度である。シンガポールの地場情報
通信関連企業のうち海外市場でも成功する潜在性があるが十分なリソースを持たない企業
に対し、主要な多国籍企業や国際的な拠点を持つ大手地場企業との連携を促進することで
海外での市場開拓を目指す制度である。地場情報通信企業にとって重要なプラットフォー
ムとして機能してきている。財政的な支援制度ではないが、プログラム導入以来、シンガ
ポール・コンピュータ・システム社が米オラクル社と連携して統合医療情報システムを中
国で成約した事例などがある。
97
② 国際化プログラム(Internationalisation Programme)
シンガポールの地場情報通信企業が国際市場へ参入するリンクを構築し、国際市場で認
知される企業へと育成する制度である。IDA のシンガポール本部はアセアン、中東、中国、
南アジアなど事業潜在性の高い新興市場の動向をモニターし、地場企業に対してそれら地
域の産業動向、政策など市場情報を提供するほか、特定のプロジェクトやトレードショー
に対してミッション派遣・展示等の企画・案内を行っている。
③ インフォコム・シンガポール・ブランド
シンガポールの地場情報通信企業が開発した製品やサービスが海外市場で容易に認知さ
れるよう、IDA はシンガポール IT 連盟(SiTF)と共同でインフォコム・シンガポール・ブ
ランドロゴの使用を推奨している。SiTF は製品またはサービスの革新性、信頼性などを審
査してロゴ使用の許可を与えている。
インフォコム・シンガポール・ブランドを取得した会社は、Singapore Infocomm Industry
Portal40に会社概要が紹介されている。
図表 3-11 インフォコム・シンガポール・ブランドのロゴ
<人材の育成>
情報通信関連の人材育成のための制度として、重要情報通信技術人材開発プログラム
(CITREP: Critical Infocomm Technology Resource Programme)が実施されている。情報
通信技術のうち人材開発が急務とされる双方向デジタルメディア、情報通信セキュリティ、
IT サービス、ネットワーク・通信、ソフトウエア・アプリケーション、プロジェクト管理、
電気通信の分野で専門性を高めることを希望するシンガポール人もしくは永住権保有者に
対して、認定された専門コースの履修または資格証明取得にあたり、費用の 50%(コース費
用の上限 3,000S ドル、終了試験の上限 500S ドル)を IDA が負担する制度である。企業がス
ポンサーとなってこの制度を利用し、社員に専門コースを受講させることもできる。
<中小企業の IT 化>
中小企業における IT 利活用の向上は、シンガポールにおいても課題となっている。中小
企業を対象とした IT 普及施策である Infocomm@SME プログラムには、利用レベルに応じて
40
http://www.infocommsingapore.sg
98
次のサブプログラムが用意されている。
Infocomm_Usage@SME
Infocomm_for_Growth@SME
Infocomm_Innovation@SME
99
3.5 タイ
3.5.1 情報産業振興政策
タイの情報産業振興政策には、主に二つの機関が携わっている。
その一つが、MICT の傘下にある Software Industry Promotion Agency(SIPA、ソフトウ
ェア産業振興庁)で、政策などのマクロな面での振興を担っている。もう一つが Ministry
of Science and Technology(MOST、科学技術省)の傘下にある Software Park Thailand
で、地場のソフトウェア産業振興に向けた企業家育成支援など、ミクロな面での振興活動
を担っている。また、ハードウェア産業政策は、工業省傘下の Board of Investment (BOI、
投資委員会)が担っており、外資優遇策により外国投資を自国内に呼び込むことがその中心
政策である。
3.5.1.1 産業振興政策
(1) ソフトウェア産業
ソフトウェア産業の
産業の振興政策
SIPA(ソフトウェア産業振興庁)では、2010 年度が始まる 2009 年 10 月に、結果が出
ず進展がないフラッグシッププロジェクトを見直すと発表した。SIPA の 2010 年度の予算
は 3.2 億バーツ(9.6 億円)であり、2009 年度の 3.8 億バーツ(11.4 億円)から 6 千万
バーツ(1.8 億円)の削減となった。このためフラッグシッププロジェクトを見直すこと
を迫られている。SIPA の 2010 年度計画では、ディジタルコンテンツ産業やアニメーショ
ン産業を推進する Digital Media Asia 2010 (DMA 2010)に、これまで以上に注力する方針で
ある。DMA 2010 は、タイ政府による「経済刺激策 2012」のもとで進められる Creative
Thailand 政策の一環として 2 億バーツの予算が付けられている。また、競争力を高めるた
め特に重要な役割を果たす企業向けソフトウェアおよび組込みソフトウェア分野の強化は、
昨年度通り進められる計画である。アニメーションとゲームを合わせたディジタルコンテ
ンツの市場規模は 100 億バーツ(300 億円)であるのに対して、企業向けソフトウェアは
2009 年度は 620 億バーツ(1860 億円)市場で、組込みソフトウェア市場は 40 億バーツ
(120 億円)市場である。さらに SIPA は、現行の ICT に係る多くの褒賞制度(プログラ
ミング、アニメーション、ゲームコンテンツ、ソフトウェアマーケティング、組込み製品
分野について)をひとつの大きなイベント「Thailand Excellence Software Content and
Award (TESCA)」にまとめる計画である。合計で表彰案件は 190 件以上になるが、受賞し
たソフトウェアがイノベーションを起こしビジネスにおける問題解決に寄与し、成功事例
のショーケースとなると期待している。
Creative Thailand とは、タイ政府が Creative Industry(創造的産業)による経済の活性化
を狙ったプロジェクト戦略であり、180 億バーツ(540 億円)を割り当てられている。本
100
予算は、政府の「景気刺激策」パッケージ 2 から捻出される。SIPA と NECTEC(国家電子・
コンピュータ技術センタ)が計画草案を起草することになる。IT の利活用による付加価値創
造によって、GDP の 10%~11%に相当する 8000 億バーツ(2 兆 4000 億円)規模の 15
産業を構成するタイ文化、芸術、演劇、舞踊、エンターティンメント、ファッション・デ
ザイン産業を振興させる計画である。Creative Thailand プロジェクトには、商務省、工業
省、科学技術省、MICT(情報通信技術省)、文化省といった多くの省庁が参画する。デジタ
ルコンテンツやソフトウェアは、それ自身の創造的産業のためだけではなく 15 産業を変
革し活性化するツールとしての役割を果たす。SIPA が、政府政策を創造的経済へと前進さ
せる戦略分野は R&D であり、特に創造的産業を支援するためのクラウドコンピューティ
ングセンタへの投資は数百万バーツとなる見込みである。また、SIPA は、entrepreneurship
性をもった Digital Creative Centre を設立する。同センタの総工費は 6 億バーツ(18 億円)
~8 億バーツ(24 億円)で、コア事業に IT を利用する創造的産業を支援するため必要な
ハードウェアやソフトウェアを提供する one-stop shop となり、そこでは NECTEC、ソフ
トウェアパーク、NSTDA(国家科学技術開発庁)等の政府省庁を含む 30 の国内関連機関間
のネットワークを構築する。
国際協力の観点からは、SIPA は、Association of Asia Creative Industry(アジア創造的
産業協会)を立ち上げる計画である。同協会は、Asia Fund を用意し、ソフトウェアとデ
ジ タ ル コ ン テ ン ツ の 協 同 政 策 に 対 す る 支 援 を 行 う 。 例 え ば 、 日 本 と 韓 国 は story
development と techniques を担当し、タイは production process を担当、シンガポールは
マーケティングを担当するといったスキームとなる。SIPA は、カーネギーメロン大学、IBM
と協力し「Creative Science Engineering Management」と呼ばれる新しい学位を創設する
ことを計画している。Science、Engineering、Art、Management をブレンドした creative
professionals を誕生させるためである。SIPA は、同計画のため 3 ヵ年で 20 億バーツ(60
億円)の予算要求をする。すでに 2010 年度予算 2 億バーツ(6 億円)は確保したとのこ
とである。NECTEC は、Creative Thailand 戦略の下では、R&D を担当するが、ディジタ
ルコンテンツやアニメーションその他創造的産業を促進するため、特にクラウドコンピュ
ーティングに力を入れる。また、タイ文化の進化、歴史のショーケースとして e-museum
や e-library を開発する計画である。
SIPA は、タイ中小ソフトウェア企業に対して資金調達面で間接的な支援を実施している。
2009 年度のタイソフトウェア産業は、近隣諸国からの需要が好影響を及ぼした結果、全体
として 6%の成長率であった。中でもデジタルコンテンツとアニメーション事業の成長が
著しい。しかしながら、他産業と同様に各ソフトウェア企業の資金繰りは厳しい。特にソ
フトウェア企業の主要な資産である知的財産(製品の将来性、担保価値、ソフトウェアの
無形資産価値)の査定は銀行が行なっているが、適切な審査実施に困難が伴っているため
資金提供に悪影響が出ている。より多くの資金を必要としているソフトウェア企業のため、
SIPA は、国営の SME Bank(中小企業銀行)に対して、ソフトウェア企業への保証をする
101
など銀行によるリスク査定につき協力を行なう計画である。SME Bank は今後、他産業に
くらべ低利なローンを用意する計画である。一方、SIPA 自身は、9 月までに 3 千万バーツ
(9 千万円)の資金を将来性のあるソフトウェア企業へ共同出資する予算をもっている。
一方、Software Park Thailand は、Software Park Thailand が連携の中心となり、タイ
ソフトウェア産業に向け、競争力強化のための差異化と IT のイノベーションを進める「IT
DNA」と呼ばれる施策を進めている。Software Park Thailand は、2010 年度は、生き残り
戦略として地場のソフトウェア企業が様々な製品やサービスを開発し市場投入できるよう
支援することにフォーカスする計画である。
「IT DNA」ミッションは、BEST と呼ばれる
コンセプトの下に IT イノベーションを活性化する。BEST とは、Business、Empowering
People and Processing、Social and Knowledge、Technologies Enabling の 4 つのプラット
フォームからなる。
Business プラットフォームとは、Software Park Thailand が、ビジネスマッチング・
海外市場への参入・開発スペースの提供・複数ソフトウェアテナントとのクラスターの構
築といったプロジェクトを立ち上げること。
Empowering People and Processing プラットフォームとは、Software Park Thailand
が持っている PSP(Personal Software Process)というソフトウェア開発ツールを使いソフ
トウェアエンジニアのスキルを高めること。
Social and Knowledge プラットフォームは、知識・情報・コンサルティングのノウハウ
を共有するためのポータルサイトを構築すること。
最後の Technologies Enabling プラットフォームとは、Software Park Thailand がソフト
ウェア産業界へ知識や情報を提供するためのクラウドコンピューティングの環境を提供す
ることであり、2010 年 4 月には Virtual classroom を開設することになる。
さらに、Software Park Thailand は、
「IT DNA」に加え民間投資による新たなソフトウェ
アパークの開設を進めている。バンコクに Cyber World と東北地方のコーラートに
Software City を計画中である。
特に Software Park Thailand の施策で特筆すべきは、タイ中小ソフトウエァ企業
(SME)対する施策であり、SME に対してビジネスプロセスを改善し、生産性と国内外
の取引を拡大するために IT の導入を奨励している。このキャンペーンは、タイのソフトウ
ェア企業に対して SME 向けの Service as a Software(SaaS)の開発を促し、タイソフト
ウェア産業成長への刺激策となることも期待されている。Software Park Thailand は、工
業省中小企業振興室(OSMEP, Office of Small and Medium Enterprise (SME) Promotion)
SME 振興スキーム開発局と協力し、タイ SME のため国際市場への参入戦略を策定したと
のことである。この戦略は「SME Capacity Building Win for International Market」と呼ば
れている。2010 年 2 月には、韓国、日本にタイの IT 企業、ソフトウェア企業から成る代
表団を送り込み、アウトソーシングに係るビジネスマッチングイベントを実施した。この
ビジネスマッチングイベントにおいては、58 回のビジネスマッチング機会が創出され、潜
102
在的取引として約 2,960 万バーツ(約 9 千円)、事業創造として約 6,400 万バーツ(約 2
億円 )の成果 があったとし ている。 また、工業省 産業振興 局( Industrial Promotion
Department)と協力し、ECIT(Enhancing SMEs Competitiveness through IT)プロジェクト
を推進しており、プロジェクトの目的は、IT を使った SME の生産性の改善、新製品・サ
ービスの開発、事業機会の創出とのことである。SME が、タイ産ソフトウェアや IT を使
った Web-based Application により適正なコストでビジネスプロセスを管理することを奨
励するものである。同局は、SME のために e-Marketplace(www.thaitechno.net)も開設
しておりオンラインを通じて製品販売が可能となっている。今年末までに 1,000 社が参加
する予定とのことである。さらに同局では、タイのソフトウェア企業に対して、SaaS や
クラウドコンピューティングのアプリケーションにより SME を支援する Enterprise
Resource Planning (ERP)を開発することを奨励している。現在、SME 向けの ERP ソフト
ウェアを開発しているソフトウェア会社は 9 社あって、昨年は、SME の 90%以上が IT を
使ってビジネスプロセス管理を行い、コスト削減を実施した。ECIT プロジェクトは 3 ヵ
年計画で進められており、2011 年の最終段階では、SME400 社がクラウドコンピューティ
ングや個別ソフトウェアパッケージを使うことになるであろうとのことである。2010 年の
SME の産業規模は、昨年の 279 万社から 285 万社に増加し、売上金額にして 6.21 兆バー
ツ(約 18 兆円)から 6.41 兆バーツ(約 19 兆円)に増加すると見込まれている。
タイのソフトウェア産業規模は 2009 年には、約 643 億 6500 万バーツ(約 1,931 億円)
で、世界不況の中、前年比で 2.3%増に留まった。ソフトウェア販売に占める輸出割合は、
7%程度と見られ、地場ソフトウェア産業の輸出拡大が課題となっている。
(2) ハードウェア産業
ハードウェア産業の
産業の振興政策
HDD や IC 集積回路に代表される電気電子産業は、タイ経済の柱の一つであり、その輸
出の拡大がタイ経済を牽引してきた。電機電子産業の輸出額は、2008 年のタイ輸出の 20%
を占めている。Board of Investment41(BOI、投資委員会)では、タイの電子分野における
優位性を増進させ、東南アジアにおける電子製造ハブとしての基盤強化を目指して、積極
的な外資誘致政策をとっている。
その中でも、HDD は、2007 年には全世界総出荷数 6 億台の 41%をタイから出荷してお
り、世界第 1 位の HDD 生産国となっている。タイの HDD クラスタは、2008 年 4 月地場
の中小企業の技術力強化地場産業の付加価値向上を狙ったロードマップを開発中と発表し
た42。当該クラスタは、国立のロボティックス研究所(FiBO)と共同で開発技術分野の特定
を進めておりロードマップを策定する予定である。
タイは、グローバルストレージ企業の HDD 生産基地であり、HDD 生産高はタイ全体の
41
42
http://www.boi.go.th/
The Nation (2008 年 4 月 3 日)
103
総生産高の 2%に達している。しかし、地場の資材採用率は 9%に過ぎず、5 年間で 15%に
引き上げたいとしている。また、当該クラスタでは、Seagate 社や Western Digital 社と共
同で標準に準拠した開発の研究を進めており、財務省の研究機構と共同で HDD 産業振興
のためのポリシーロードマップも開発を進めている。
3.5.1.2
3.5.1.2 国産品の
国産品の優先購入政策及びその
優先購入政策及びその進捗状況
びその進捗状況
(1) 国産パソコン
国産パソコンの
パソコンの優遇政策
NECTEC では 2001 年 10 月より、国産パソコンの品質保証プログラムとして、“Thai
Computer with NECTEC Quality”プロジェクトをスタートさせている。外国ブランドと比
較して、知名度が低く信頼性も低い国産パソコンを、NECTEC が設定した各種基準で品質
保証することにより、国産品の品質向上と普及を狙ったものである。
また、国民のパソコン所有率を高め、国内のコンピュータ普及の推進を図ることを目的
として 2003 年 4 月に MICT が開始した「ICT PC プロジェクト」も、その目的の一環に国
産パソコンの販売促進があった。
これらの成果により、ローカルブランドの PC 導入が進められ、2005 年にはローカルブ
ランド PC と外資系 PC の導入比率が 80 対 20 となった。しかしながら、外資系の低価格
モバイルノート PC の市場参入もあり、2008 年には 53 対 47 と差を縮められ 2009 年には
50 対 50 となった。
2009 年末、国内外の PC ベンダが予算 40 億バーツの教育省傘下 OBEC (Office of the
Basic Education Commission、基礎教育推進委員会)のコンピュータプロジェクトに応札
した。このプロジェクトは、現政府が 2010 年度から 3 ヵ年で進める「景気刺激策」の一
環で、40 万台以上の PC(第一期納入は 10 万台)サーバとクライアント PC 等から構成さ
れたシステムを国内の 3,000-4,000 ヵ所の小中学校に納入するプロジェクトである。納入
とサービス提供はタイ国内の全地域に広がるため、そのコストはプロジェクトコストの
10%-15%を占め、全国的なサプライチェーンを持っているかどうかが受注への鍵とみら
れている。応札した V Technology 社(DCom グループ)は、国産 PC 製造企業の Atec
Computers 社と組み、同社は、その全国への配送を担当する。SVOA 社は、Dell や Samsung
とパートナーを組んだと見られている。Acer や HP も応札した模様である。
(2) 国産ソフトウェア
国産ソフトウェアの
ソフトウェアの優遇政策
The Association of Software Industry(ATSI、タイ・ソフトウェア産業協会)は、2009
年 6 月から、タイのローカルソフトウェア企業とコンピュータ・ユーザに対し国産ソフト
ウェアの使用を奨励するキャンペーンを始めた。現在、タイ国産ソフトウェアのマーケッ
トシェアは 25%であるが、これを 2010 年までに 35%までに引き上げることを目標として
いる。600 億バーツ(1800 億円)といわれるソフトウェア市場のうち国産ソフトウェアは
104
現在 150 億バーツ(450 億円)を占めている。同協会が推進する11のプロジェクトのう
ち、「Buy Thai First」と呼ばれるプロジェクトにより、国内で開発されたソリューション
を使うことを奨励する。地場のソフトウェア開発産業の推進、地場のソフトウェア製品、
サービスの購入と使用を奨励するキャンペーンである。同協会は、支援策として、ユーザ
に対して品質保証を目的とした「Letter of Comfort」の発行や問題が生じた時の仲介サービ
スを行っている。この他、同協会は、教育省プロジェクトに加わり、ソフトウェア産業の
エンジニアとプログラマを育成する戦略を策定する計画だ。また、来年度には、ユーザが
国産ソフトウェアハウスを選定するためのタイソフトウェア・ディレクトリを完成させる
予定である。さらに、同協会では、資金不足に陥っている開発業者に対して資金提供ソー
スとしての「The Market for Alternative Investment (MAI)」【注】への上場も推進する。ソ
フトウェアハウスでいうと現在 2 社が MAI へ上場しており、今後 5 社が上場を計画してい
る。ソフトウェア市場は、今年度は、10%の成長率を見込んでおり、同協会の会員企業は、
現在 250 社で 3,000 以上の国産プログラムが稼動しているが、2009 年末には 500 社にな
るとの予想である。
【注】MAI:1998 年にタイ証券取引所によって設立され、同取引所の監
督の下、中小ベンチャ企業向けの証券取引を行なっている。
ATSI は、2008 年には国内市場でのタイソフトウェアの需要を喚起するため“Thailand
Software Yes”というキャンペーンを立ち上げた。地場のビジネスプロセスに合ったソフト
ウェアを開発すること、ユーザサイドにも地場ソフトウェアを利用するインセンティブを
高めることにより、地場ソフトウェアシェアを拡大する施策であった。厳しい経済環境の
下、産業界ではエネルギー効率改善やロジスティクスを見直す機運があり、地場ソフトウ
ェア産業にも格好の市場拡大のチャンスとみている。SIPA も融資等によりこのキャンペー
ンを支援する構えである。
IT2010 に続く第二次フレームワーク「IT2020」は、2011 年~2020 年の 10 カ年にわた
る IT 開 発 、 振 興 政 策 の 基 本 枠 組 み で あ り 、 e-government, e-education, e-society,
e-commerce, e-industry という 5 つの指標達成を掲げている。このうちの e-industry 戦略
において、 2009 年 11 月に科学技術情報通信に関する上院常設委員会の E-Industry
Working Group による戦略内容検討が始まった。タイの国家経済の需要要因であるソフト
ウェア産業の競争力を強化し、成長を促すため首相への政策提言を行う計画であるが、政
策のなかには、Buy Thai First 運動も含まれている。Working Group によると年率 30%の
成長結果 3 年で 1,000 億バーツ市場になると見ている。SME を奨励して少なくとも SME
が需要するソフトウェアの 50%は地場ソフトウェア企業からの調達にしたいと考えてい
る。
105
コラム【タイ新政権の景気刺激策】
タイ政府(アピシット政権)によって遂行されている「景気刺激策」は、タイタイのソ
フトウェア市場や産業に積極的な効果をもたらすと思われる。ATSI は、ソフトウェア産業
が 2009 年度と比較して 2010 年度は、8%成長、金額では約 700 億バーツ(約 2,100 億円)
の売上が達成できると見ている。当初、タイのソフトウェア市場は約 5%の成長と予測し
ていたが、政府が景気刺激策を推し進めていることを考慮して見直しを行った結果、8%
成長の予測を今は持っている。
【注 1】景気刺激策:この景気刺激策のことをタイ語では「タ
イ・ケムケン」と呼んでいる。ケムケンとはタイ語で「堅固な、ひるまず、勤勉に」とい
う意味がある。2009/08/19 の Bangkok Post によるとタイ政府は景気刺激策の予算規模を
1.43 兆バーツから 1.06 兆バーツへと縮小させるとの報道があった。
各政府省庁における「景気刺激策」
(2009 年 4 月内閣承認となった第2次経済刺激策)
概要は以下の通りである。
農業灌漑設備:2300 億バーツ(約 6,900 億円)
(Water Management, Agriculture Development)
1)パブリックサービス:11.4 億バーツ(約 34 億円)
(Transportation, Energy, telecom, Education etc.)
2)ツーリズム:66.4 億バーツ(約 199 億円)
(Promotion, Creation, Renovation, Maintenance etc.)
3)新文化振興:201 億バーツ(約 600 億円)
(Cultural Heritage, Software Industry, Hand Craft Industry etc.)
4)教育:601 億バーツ(約 1800 億円)
(Suburb Intelligence Center, Education Sys Renovation etc.)
5)健康:92 億バーツ(約 276 億円)
(Medecine Technolgoy etc.)
6)ローカルコミュニティ:1000 億バーツ(約 3000 億円)
(Carrier/Skill Development in province etc.)
合計:4280 億バーツ (約 1.2 兆円)
106
このうち IT プロジェクトは、以下の通りである。
■教育省 SchoolNet アップグレードプロジェクト:
光ファイバーケーブル網に 51 億バーツ(約 150 億円)を投資し、ハイスピードインタ
ーネット網が築くサイバーワールドを通じて学生の勉学の利便を図る。本プロジェクトの
完成によって学生はインターネットから必要な資料を短時間でダウンロードでき、また教
育省そのものが現在ハイスピードインターネットのリースに対して支払っている高額な料
金の費用削減をおこなうことができる、といった一挙両得のメリットを享受できるとして
いる。このリース料金は、年間 20 億バーツ(約 60 億円)とのことである。
■教育省 PC プロジェクト
10 万台の PC を全国管轄校に配布するプロジェクトを推進し、現在 46 人の学生に 1 台
の割合で設置されている PC を、20 人の学生に 1 台の PC とすべく PC 設置を拡張する計
画である。教育省は、省全体の予算のうちの 160 億バーツ(約 480 億円)が IT プロジェ
クトに使用されることになる。
■情報通信省 e-Government プロジェクト
MICT(情報通信技術省)e-Government Promotion and Development Bureau(電子政府
推進開発室) は、e-Government の骨格となる Government Information Network (GIN)プロ
ジェクトのネットワークインフラと情報セキュリティシステムを完成させるために 97 億
バーツ(約 290 億円)の予算を要求した。このプロジェクトの目的は、政府機関が安全に
GIN と接続することにあり、最終ゴールは安全な政府 e-Service を政府機関や国民へ提供
し、すべての政府サービスが一つのウェブポータルで受けることができるようにすること
である。政府機関には 16 の異なるバックオフィスシステムが稼動しているが、現在シス
テムインテグレーションのための試験段階にある。地方の政府機関は、MICT の支援を受
けつつ、別の予算をもって政府 e-Service を進めている。
■科学技術省オープンソースソフトウェアプロジェクト
残念ながら、本プロジェクトには申請はされたが、景気刺激予算がつかなかった。
科学技術省は、ソフトウェア産業を強化するため、オープンソース(OSS)プロジェクト
を提案した。Developing Software Industry by Open Source プロジェクトと呼ばれ、その
3 年に渡る予算額は、1 億 8 千万バーツ(約 5 億円)である。このプロジェクトは、国産
ブランド PC のための、Linux による「Ecolonux」オペレーティングシステム開発により、
OSS における新しい開発能力と事業機会の創出を図るものであった。今後 3 年の間に 60
社の国内ベンダが参加する見込みで、研修コースも用意されていて、毎年 5 千人の一般ユ
ーザ、 1 千人のネットワーク管理者、2 千人の開発者が参加する予定であった。
107
3.6 インド
3.6.1
.6.1 情報産業優遇政策
情報産業優遇政策
インド政府は半導体および関連産業の誘致のための優遇政策を 2007 年 2 月に発表、その
詳細ガイドラインを同年 9 月に発表した。対象となるのは半導体ウェハーと、
「エコシステ
ムユニット」と呼ばれる周辺産業(その他の半導体、LCD、OLED、プラズマディスプレーパ
ネ ル な ど の デ ィ ス プ レ イ 、 記 憶 装 置 、 太 陽 電 池 セ ル (solar cell) 、 太 陽 光 発 電
(photovoltaics)、その他のマイクロ・ナノテクノロジー製品、及びこれらの製品の組み立
て検査ラインである。さらに、半導体ウェハーの場合は正味現在価値(Net Present Value:
NPV)ベースで 250 億ルピー(約 500 億円)以上、エコシステム製品プロジェクトの場合や
同 100 億ルピー(約 200 億円)以上の投資規模を備えたものに奨励措置が適応される。経
済特区(SEZ)内のプロジェクトについては当初 10 年間の資本支出の 20%、SEZ 外のプロジェ
クトについては同 25%に相当する金額を政府が奨励金として支出する。奨励金は政府によ
る出資(equiry participation)、資本補助(capital subsidy)あるいは金利補助(Interest
subsidy)のいずれかを選ぶことができる。同奨励措置は当該プロジェクトが立地する州の
州政府により提供される奨励措置がある場合、それに上乗せして提供される。
政府補助の対象となる企業数には上限があり、ウェハー製造が 2~3 社、エコシステムは
10 社までである。投資奨励措置の期限は 2010 年 3 月 31 日43である。
申請企業は、情報技術局(DIT)が組織する評価委員会(Appraisal Committee )に申請書を
提出してその評価を受けることになる。2008 年 12 月現在、17 社が申請を提出しており、
申請投資総額 1 兆 5,500 億ルピー(約 3 兆 1,000 億円)に上る44。その多くは太陽電池関
連である。2009 年 6 月に、このうち 12 社が仮認可されたとの報道があった。残りの案件
についても審査中とのことである45。
3.6.
.6.2 特定分野の
特定分野の振興
インドの IT と言った場合、国際競争力のあるソフトウェア産業について語られることが
多いが、真の IT 大国になるには、一般市民への IT 普及が行われなければならない。イン
ドにおける 100 人あたりのコンピュータ保有台数はいまだに 3.2 台程度で世界平均の 12.9
台に比較して大きく劣っている46。
またインドが他のアジア諸国と異なることは、インド国民に共通言語がないことである。
43
44
45
46
情報通信省
2008 年 12 月 27 日付 Business Line (The Hindu)
2009 年 6 月 3 日付 Business Line (The Hindu)
2009 年 5 月 28 日付 Business Line (The Hindu)
108
日本を初めとして中国、韓国、インドネシア、マレーシア、ベトナム、カンボジア、タイ、
ミャンマー、ラオスなどの国々はそれぞれ国名と同じ名前の言語を用いている。インドは
多言語社会であり、憲法で認定された言語が英語や公用語であるヒンズー語を含めて 22
言語もある。インド人は一般的に英語を話すと思われているが、実は英語を話すことがで
きるのは人口の 5%47に過ぎない。農村に住む人々にとって英語に触れる機会は極めて限定
されている。ヒンズー語が約 3 億人に話されており、最も共通語に近いものといえるが、
南部のタミル・ナードゥ州やカルナタカ州ではヒンズー語は通じない。1949 年に独立した
際に政府業務をヒンズー語に置き換えようとしたが、15 年間は暫定的に英語の使用が認め
られた。しかし、タミール語等を話す南部諸州がヒンズー語の使用を強制されることに反
対し、結果的にヒンズー語への移行は実施されなかった。
こうした中、IT 普及の鍵を握るのは、現地語ソフトウェアやインターフェースの開発で、
インド政府が力を入れている分野である。また、1991 年の経済自由化以降、インド経済は
めざましい発展を遂げたが、依然として膨大な貧困層が存在している。コンピュータの低
価格化を推進するためには、高額なソフトウェアを購入しなくても使えるためのオープン
ソースソフトウェアの導入も重要で、政府は大学などとの共同開発などを行っている。さ
らに地方の農村でも IT に触れる場をつくり、IT 教育も行うための施設も設立している。
(1) 現地語処理技術の
現地語処理技術の開発
前述のように一般大衆への IT 普及にはインド国内で使われているさまざまな言語に対
応した IT ソリューションを提供することが不可欠となる。この問題に取り組むために、情
報技術省(現通信情報技術省)は 1991 年度に、インド言語技術開発(Technology Development
for Indian Languages: TDIL)プログラムを発足させた。その主な目的は、
「インドの言語
のフォントおよびソフトウェアツールをさまざまな公共・民間団体から集め、ユーザフレ
ンドリーなツールや製品に組み込んで、CD やウェブからのダウンロードといった形で一般
市民に無料で提供する」48ことである。つまり、このプログラムはインド言語の IT ツール
の推進を目指したものである。情報技術局(Department of Information Technology: DIT)
はさらに、自然言語処理技術ソリューションのユーザおよび開発者に対し、フォント、オ
ープンオフィス、E メールクライアント、インターネットブラウザ、辞書、変換ユーティ
リティなどを無料で提供する奨励策を導入している。この奨励策によってユーザは基本的
な問題を解決し、開発者はより高度なソリューションを開発することができるようになる
49
。
また、DIT は 2005 年から、PC の浸透率を向上させるために、PC 搭載用のインド言語の
ソフトウェアを提供している。ソフトウェアを開発したのは、DIT が開始した TDIL イニ
47
48
49
第 11 次 5 ヵ年計画 IT 作業部会報告書
2006 年 12 月 14 日付 Hindustan Times
DIT アニュアルレポート 2007-2008
109
シアティブの協力パートナである Centre for Development of Advanced Computing(C-DAC、
先進コンピューティング開発センタ50)である51。これまでに、ヒンズー語、タミール語、
テルグ語、パンジャブ語、ウルドゥー語、カンナダ語、マラヤーラム語、マラーティー語、
アッサム語、オリヤー語などのソフトウェアツールの CD が一般に公開されている。また
これらのソフトウェアおよびツールは、http://www.ildc.gov.in のウェブサイトからも
無料でダウンロードできる。2009 年 3 月現在、16 の言語のソフトウェアおよびツールが
ダウンロードできる状態になっている52。
(2) デジタルデバイド解消
デジタルデバイド解消
インターネット接続、およびオンラインでの市民サービスを農村部に提供し、都市部と非都
市部間のデジタルデバイドを縮小するため、DIT は丘陵地、遠隔地の農村部において地域情報
センタ(Community Information Centre: CIC)の開設に着手した。2000 年に北東部の 30 ブロ
ックとシッキム州でパイロットプロジェクトとして開始したこのプロジェクトは、現在、北東
部の州(487 ヵ所に予算総額 24 億 2,000 万ルピー(約 48.4 億円)で設立され、新たに 8,420
万ルピー(1.7 億円)を投じて 68 ヵ所の CIC を設立)を網羅し、ジャンム・カシミール州に
は 135 ヵ所、アンダマン・ニコバル諸島に 41 ヵ所、ラクシャディープ諸島に 30 ヵ所が設置さ
れている。北東部の州およびジャンム・カシミール州における CIC プロジェクトは、国家情報
セ ン タ (NIC : National Informatics Centre) と National Informatics Centre Service
Inc.(NICSI)53によって実施され、アンダマン・ニコバル諸島およびラクシャディープ諸島に
おけるプロジェクトはインド教育研究ネットワーク(ERNET India)によって実施されている54。
北東部の州でのプロジェクトは 2007 年 3 月に終了し、国家電子政府化計画(National
e-Governance Plan、NeGP)で進めている共通サービスセンタ(Common Service Centre、CSC、
後述)への統合が進められている55。
E メール環境、インターネット、CIC ポータルを通じた市民中心のサービス、農業市場情報
の提供、病院の予約、試験結果などのウェブベースサービスに加え、CIC はトレーニングや教
育も提供している56。
北東部、シッキム州、ジャンムー・カシミール州の各センタには、サーバ 1 台、クライアン
トシステム 5 台、レーザープリンタ、ドットマトリックスプリンタ各 1 台、モデム、LAN ハブ、
50
インド情報技術庁(DIT)傘下の C-DAC は、コンピュータ上におけるインド言語の使用の普及に関する開
発活動を先導している機関。C-DAC ウェブサイト http://www.cdac.in/html/mlingual.asp
51
2005 年 11 月 14 日付 Hindustan Times
52
DIT アニュアルレポート 2007-2008
53
National Informatics Centre Services Inc.(NICSI)は、政府機関に IT ソリューションを総合的に提
供するため 1995 年にインド政府通信情報技術省(National Informatics Centre)のもとに設立された。
http://www.nicsi.com/
54
www.eis.ernet.in/citizenscharterfin.rtf
55
DIT アニュアルレポート 2007-2008
56
DIT アニュアルレポート 2007-2008
110
テレビ、ウェブカム、UPS2 台を含むインフラが設置されている。各センタは衛星回線(VSAT)
を経由してネットワークに接続されている57。
(3) オープンソースソフトウェア
PC の普及のためには、ソフトウェアのコストの問題にも対処しなくてはならない。その
ため、政府はオープンソースソフトウェアの普及にも重点的に取り組んでいる。
2005 年に、C-DAC と Anna University(アンナ大学)の KBC Research Centre が共同で
National Resource Centre for Free and Open Source Software(NRCFOSS)をチェンナイに
設立した。このセンタは、研究開発、人材開発、ネットワーク化、事業開発を通じてフリ
ー/オープンソースソフトウェアの発展に寄与し、また国内の FOSS(フリー/オープンソー
スソフトウェア)関連活動すべての中心となるものである。同センタは、e ガバナンス、
学校教育、中小企業に焦点を当て、FOSS 製品および技術の設計、開発を行っている。NRCFOSS
は、インドの国民がフリー/オープンソースソフトウェアプラットフォーム上で、英語以外
にもさまざまな言語を扱うことができるように、インド仕様の GNU/Linux である Bharat
Operating System Solutions(BOSS)を開発した。2008 年 9 月に発表した BOSS Version 3.0
はインドの 18 の言語に対応している58。BOSS Linux の普及に向けて、NRCFOSS は各地の C-DAC
センタに BOSS サポートグループを組織している。サポートグループのメンバーには BOSS
Linux のトレーニングも行っている。また、工科大学の中にはオープンソースソフトウェ
アの選択科目教育を導入するところも出てきており、NRCFOSS は「LINUX 入門」「フリーオ
ープンソースソフトウェアを使ったエンタプライズソリューション」の 2 つのテキストも
開発した。BOSS Linux は、米国 Linux 標準化団体フリー・スタンダード・グループ(The Free
Standards Group)の認定を取得している。
3.6.
.6.3 中央政府・
中央政府・州政府の
州政府の振興政策
(1) ソフトウェア・
ソフトウェア・テクノロジー・
テクノロジー・パーク(
パーク(STP)
STP)スキーム
情報産業政策としては、ソフトウェア輸出を振興するための、ソフトウェア・テクノロ
ジー・パーク(STP)スキームがある。これは、ソフトウェア・テクノロジー・パークという
ソフトウェア工業団地のような施設やハードを提供しているのではなく、一定の条件を満
たした企業を STP 企業として認定し、輸入関税免除、行政手続の簡素化、優遇税制などを
付与する制度である。
この制度の運営を行い、またソフトウェア企業の支援を行う目的で、
ソフトウェア・テクノロジー・パーク・オブ・インディア(STPI)59という組織が 1991 年に
設立された。全国に 48 ヵ所の STPI センタが設立され、各地で STP 企業の認定や、高速デ
57
58
59
CIC ウェブサイト
2008 年 9 月 28 日付 The Hindu
1860 年団体登録法(Societies Registration Act)に基づき設立された団体。
111
ータ通信などのインフラ提供、中小ソフトウェア企業の支援、スタートアップ企業へのイ
ンキュベーション施設の提供などを行っている。
図表 3-12 インド各地の STPI センタ
出典:STPI アニュアルレポート 2006-2007
2007 年 3 月現在の STP 認定企業数は 7,543 社で、そのうち 6,321 社が輸出を行っている。
STP 認定企業、輸出企業とも、順調に伸びている。また、2005 年から 2006 年にかけてのイ
ンドのソフトウェア輸出額は、1 兆 67 億ルピー(約 2.1 兆円)から 1 兆 4,421 億ルピー(約
2.9 兆円)と 43%増加した。このスキームは 2010 年 3 月が期限と定められているが、景気
後退に対応するためには維持する事が不可欠であるとして、通信情報技術省は財務省に
2015 年までの延長を提案しているが、延長はまだ決まっていない60。
60
2009 年 2 月 27 日付
The Economic Times
112
図表 3-13 STP 認可企業・輸出企業数の推移
7,543
8,000
7,000
6,383
5,587
6,000
5,000
4,000
4,279
5,116
4,644
3,429
3,544
2001年度
2002年度
6,321
5,806
4,379
3,910
3,000
2,000
1,000
0
2003年度
STPI 認可企業
2004年度
2005年度
2006年度
輸出企業
出典:STPI アニュアルレポート 2006-2007
インド政府は IT ハードウェアの輸出促進のために、エレクトロニクス・ハードウェア・
テクノロジーパーク(Electronics Hardware Technology Park: EHTP)スキームも導入して
いるが、EHTP スキームの運用も STPI の各センタが行っている。
①
STP/EHTP 制度の概要
STP/EHTP 制度によるインセンティブは主に、輸出利益に対する所得税免除、輸出製品・
サービスのための原材料、資本財(コンピュータを含む)への輸入関税の免除など税金に
関するものである。具体的なインセンティブの内容および条件は、「1992 年外国貿易(開
発・規制)法(Foreign Trade(Development and Regulation) Act)」に基づく外国貿易政策
(Foreign Trade Policy)に盛り込まれている。外国貿易政策の基本方針は 5 年ごとに作成
され、現在の政策のベースとなっているのは外国貿易政策 2004-2009 だが、毎年、年度末
(3 月)に、若干の修正を加えた翌年度の包括的な輸出入政策をカバーする外国貿易政策
(Foreign Trade Policy)が発表されている。現在施行中のものは 2008 年 4 月 1 日付の
Notification No.1 (RE-2008)/2004-2009 である。主なインセンティブのは以下のとおり。
•
輸出製品の製造、輸出サービスの実施のための原材料、資本財の輸入関税、国内か
ら購入する場合の国内税などの税金免除
•
国内外からのリース会社からの機器の導入についても、輸入関税、国内税を免除
•
中央販売税(Central Sales Tax)の還付
•
インド国内で生産された製品を国内から購入する場合の物品税免除
113
•
100%の外国投資が可能61
•
輸出入通関検査の免除
•
外貨所得の 100%外貨建て口座振込みの許可62
さらに、STP/EHTP 企業に対しては、所得税法第 10A 条、10B 条により、2009-2010 年度
まで輸出利益に対する所得税が 100%免除となっている63。
また、STP/EHTP 制度のインセンティブを受けるための主な条件は以下のとおり。
•
輸出による外貨所得が黒字であること
•
原則として製品およびサービスは 100%輸出向けであることが必要だが、次のよう
な条件の下では国内販売が許可される。①ソフトウェア輸出を含むサービス輸出に
ついては、FOB(本船渡し条件)ベースの輸出総額の 50%あるいは外貨所得の 50%
までは国内販売が可能。②製品輸出の場合は、外貨所得が黒字であれば、FOB ベー
スの輸出総額の 50%まで国内販売が可能64。
(2) 外国貿易政策によるその
外国貿易政策によるその他
によるその他のインセンティブ
STP/EHTP の条件を満たさない企業に対しては次のような制度がある。
① インドからのサービス提供スキーム(Served from India Scheme)65
サービス輸出を振興するためのスキームである。外貨収入が 100 万ルピー(約 200 万円)
以上の企業は、前年の外貨収入の 10%を上限として、「税控除券(Duty Credit Scrip)」を
受けることができる。個人事業主の場合は外貨収入 50 万ルピー以上の場合に対象となる。
この Duty Credit Scrip は、輸出サービス事業に使う資本財の輸入関税、あるいは国内か
ら調達する場合は物品税の支払いに充てることができる。
② ハイテク商品輸出促進スキーム(High-Tech Product Export Promotion Scheme)66
ハイテク商品の輸出を振興するためのスキームである。事前に申請した製品の当該年度
と前年度の輸出額を比較した増加分の 5%に相当する金額、あるいは FOB 価格の 1.25%を
上限として、「税控除券(Duty Credit Scrip)」を受けることができる。ただし、年間控除
額は 1 億 5,000 万ルピー(約 3 億円)を限度とする。
61
2007 年 4 月 1 日発効 Foreign Trade Policy
インド中央銀行の規制により、一般には外貨口座の開設が認められていない。
63
ただし、輸出利益に対する免除措置は 2010 年までとなっているため、IT 企業各社が同制度を少なくと
も 10 年は延長するようロビー活動を行っているとの報道もある。(The Economic Times 11 August 2007)
64
2007 年 4 月 1 日発効 Foreign Trade Policy
65
Foreign Trade Policy 第 3.6.4 条
66
Foreign Trade Policy 第 3.11 条
62
114
③ 輸出促進資本財スキーム(Export Promotion Capital Goods (EPCG) Scheme)67
一定期間内に輸出義務を達成することを条件に、資本財輸入に対し一律 5%の軽減税率が
適用される。輸出義務は、同スキームの適用により免税された額の 8 倍の輸出額を 8 年以
内に達成すること定められている。輸入額が CIF 価格で 10 億ルピー以上の場合は、輸出達
成期間は 12 年間に緩和される。
また中古資本財の輸入にも同スキームが適用される。なお、
輸出義務達成期限の半分以内の期間で 75%以上の輸出義務を達成した企業については、残
りの輸出義務分は免除となる。
④ サービス税の免除68
上記に加え、インドは輸出促進のために、STP/EHTP に関わらず国内企業も含め、モノお
よびサービスの輸出に対する、サービス税および輸出に関わる税金が免除される。
(3) 特別経済区
IT 産業に特化した産業振興政策ではないが、インド政府は特別経済区(Special Economic
Zone: SEZ)の設置を推進している。特定のエリアを「外国」とみなし、そこに進出する国
内外の企業は貿易手続き、関税などに優遇措置が付与される制度である。国内一般関税地
域(Domestic Tariff Area: DTA)から SEZ へ物品やサービスが販売される場合は輸出として
扱われ、SEZ から DTA に物品やサービスが販売される場合は輸入として扱われる。
インド政府は 1965 年から 80 年代にかけて SEZ の原型となる輸出加工区(Export
Processing Zone: EPZ)を西部のグジャラート州などに少なくとも 7 つ設置した。しかし、
インフラや企業入居時の許認可手続きの煩雑さなどの問題もあり、輸出産業への波及効果
は期待したほどではなかった。政府は 2000 年から諸問題の改善に乗り出し、EPZ を相次い
で SEZ に転換した。さらに SEZ を全国に拡大することを目指し、2005 年 6 月に SEZ 法と、
2006 年 2 月には関連規則を制定した69。
制度整備が進む中、SEZ 設置の認可申請が相次ぎ、その中には IT 関連産業を対象とした
SEZ も多い。認可取得済み 552 件の SEZ のうち 61%が IT-ITES 産業向けとなっている。
67
Foreign Trade Policy 第 5 章
Foreign Trade Policy 第 2.48.1 条。国内取引の場合はサービス税が課税される。税率はサービスの種
類により異なる。
69
在シンガポール日本商工会議所 2007 年 6 月会報「有望性と不確実性が並存-インドの経済特区」時事
通信社ニューデリー支局長 片山哲也
68
115
図表 3-14 認可済 SEZ の業種別内訳
認可済みSEZ:552件
その他
22%
複数産業向け
4%
繊維
4%
製薬
4%
バイオ
5%
IT/ITES
61%
出典:SEZ India ウェブサイト70
なお、商務庁が発表した「2006 年特別経済区の規則」によると、エレクトロニクス製造、
IT サービス、ソフトウェア専用の SEZ に際しては、開発面積は 10 ヘクタール以上、加工・
作業用スペースは 10 万平方メートル以上でなければならない。
SEZ 入居企業に対する主なインセンティブは次のとおりである。
・ 認可事業を行うために SEZ に輸入あるいはインド国内から調達する物品にかかる関税、
物品税の免除
・ 輸出利益に対して最初の 5 年間は 100%の免税、次の 5 年間は 50%免税、次の 5 年間
は再投資を条件に 50%免税
・ 最低代替税(minimum alternate tax)71の免除
・ 広く認められている銀行から満期に関する制限なしで 5 億ドルまでの借り入れが可能
・ 中央売上税(Central Sales Tax)の免除
・ サービス税の免除
・ 中央政府及び州政府の認可取得手続きの窓口一本化
・ 州売上税の免除及び各州が定める各種課税の免除
IT 産業に関わる前述の制度、EHTP、STP と SEZ 制度の比較は以下のとおりである。
70
2009 年 4 月 2 日時点でのウェブサイトの情報。SEZ India のウェブサイトには同資料がいつ時点のもの
か明記されていない。
71
最低代替税:会計上の利益の 10%が法人税額(控除などを含めた算出額)を上回る場合、最低代替税(MAT)
として、11.33%(10%+10%追徴税+3%教育目的税:10%x 1.10 x 1.03 = 11.3%)を支払う必要がある。
外国法人の場合、同税率は 10.30%となる。
(出典:ジェトロウェブサイト)
116
図表 3-15 EHTP/STP 制度と SEZ 制度の比較
EHTP/STP 企業
外国株の許容範
囲
SEZ の入居企業
100%
100%
免税輸入の許容 資本財、原材料、部品、その他の原材 資本財、原材料、部品、その他の
範囲
料
原材料
入居企業は外貨純獲得(NFE)がプラス
輸出義務
でなければならない。DTA 内の入居企
業が製造した ITA-1 品目の供給は、輸
出義務の履行としてカウントされる。
入居企業は NFE がプラスでなけれ
ばならない。SEZ の入居企業が製造
した ITA-1 品目を DTA に供給する
場合は、輸出義務の履行としてカ
ウントされる。
FOB ベースの輸出総額の 50%に相当す
る範囲であれば、国内(DTA)向けに販
国内(DTA)向け
販売
売する場合には、現行税率の 50%が適
用される。この権利を超える DTA 向け
販売については、税金を支払えば可能
DTA 向け販売については、課税の支
払いが免除される。
である。ただし、入居企業は NFE がプ
ラスでなければならない。
SEZ の入居企業は、5 年間輸出利益
所得税法セクシ
ョン 10A/10B に 2009-2010 年まで、輸出利益 100%が
基づく税制優遇 免税の対象となる。
次の 5 年間は 50%免除。収益を再
投資することを条件に、さらに次
措置
中央売上税
に対する所得税が 100%免除され、
の 5 年間 50%免除。
払戻し可能
免除
出典:DIT ウェブサイト
3.6.
.6.4 州政府の
州政府の振興政策
インドは連邦制をとっていることもあり、それぞれ各州独自に計画の立案、実施が進め
られている。また各州は IT 産業にとって最適な立地であることをアピールし外国企業の誘
致を競い合っており、この各州間での競争がインドの IT 産業の活力を生み出す一つの要因
ともなっている。以下に IT 産業の主要な基地になっているインド南部の 4 州について説明
する。
117
(1) カルナタカ州
カルナタカ州(州都:
州都:バンガロール)
バンガロール)
カルナタカ州はインドのシリコンバレーとも呼ばれる州都バンガロールを擁する州であ
る。バンガロールは以前より国境から離れている利点を活かして軍事産業を中心とする先
端産業の国営企業が設立されていた。高いレベルの研究施設、環境が既にあったことがそ
の後に IT 基地として急激に発展した大きな要因でもあった。
1980 年代後半から、インド政府の誘致もあり Texas Instruments(TI)が開発センタを設
置(1986 年)したのを契機に以後、IBM、Motolora など外資系大手が相次いで開発拠点を
設置した。インド IT 企業大手の Wipro、Infosys の本社もある。また同州は 1997 年にイン
ドで初めて IT 政策を発表した州であり、その後 2000 年 5 月に、21 世紀に向けて Mahithi
と呼ばれる新しい経済環境に即したミレニアム IT 政策を発表している。
この政策では図表 1-6 に示す 6 項の目標が掲げられている。
図表 3-16 カルタナカ州 IT 政策目標
① 貧苦の根絶と女性への権限付与という政府目標に IT を活用する
② IT 産業拡大により若年世代の雇用促進を図る
③ IT においてカンナダ語の使用を促進する
④ e-Governance をツールとして活用し市民サービスの質を向上させる
⑤ カルナタカ州の IT インキュベーションを推進する
⑥ 英語圏以外の国とのビジネスを奨励
出典:カルタナカ州 ICT Policy
同政策では、IT 産業における雇用促進のためのインセンティブを提供している。インセ
ンティブの内容は、土地取得コスト、登録費用、区画規制の緩和などで、バンガロールで
250 名以上雇用する場合、バンガロール以外では 100 人以上雇用する場合にインセンティ
ブの対象となる。また、同政策では IT トレーニングセンタの設立を奨励するためのインセ
ンティブも供与している。
カルナタカ州はさらに、2002 年には IT 産業の中でも BPO セクタの促進に特化したミレ
ニアム BPO 政策も発表した。この政策では、カルナタカ州の競争力を保つこと、新たな雇
用を創造すること、BPO セクタのための良好な投資環境を整備することなどを目標として
いる。
また、
バンガロールへの一極集中を避け、ハブリ(Hubli)、
マンガロール(Mangalore)、
マイソール(Mysore)、グルバージ(Gulbarge)などの第 2 レベル(Tier 2)、第 3 レベル(Tier
3)の都市での産業の振興を推進している72。
なお、2008 年 11 月のバンガロールの IT 展示会で、同省の情報技術省の Katta Subramanya
72
カルナタカ州
Millennium BPO Policy
118
Naidu 大臣は、IT 政策の改訂版を策定していると語っているが73、詳細は発表されていな
い。また、同大臣はこれに先立ち、IT 企業が地方にも進出することを促進するためのイン
センティブを含めた地方 IT 政策を検討しているとも語っているが74、その後政策が策定さ
れたという報道はない。同省は 2009 年 2 月に 2009-2014 年の新産業政策を発表したが、そ
れには IT 産業に関する方針や施策は含まれていない75。
(2) アンドラ・
アンドラ・プラデシュ州
プラデシュ州(州都:
州都:ハイデラバード)
ハイデラバード)
アンドラ・プラデシュ州は貧困州といわれてきたが、1990 年代後半に就任した Naidu 州
知事(当時)の行革宣言「Vision 2020」により急速な近代化への道を歩み始めた。この宣
言の目標は 2020 年までに同州をインド国内で最も豊かで模範的な州にするというものだ。
しかし、IT 産業発展の恩恵をあずかっていない一般大衆、特に農民からの支持を得られず、
2004 年の選挙では Naidu 州知事(当時)の率いる TDP 党は大敗した。インフラが立ち遅れ
ており、IT 普及のためにせっかく学校に PC を導入しても、
「PC を立ち上げるための電気が
きていない」という状況もあったという76。
選挙後、州の政権についた国民会議派は、2005 年に IT 基本政策 2005-2010(ICT Policy
2005-2010)を発表したが、その中で地方の貧困層を含む大衆への IT 普及を政策の目標の第
一に掲げている。また、インフラと人材育成に力をいれ、IT 先進州になることも謳ってい
る。政策は 2 部から構成され e-Governance(IT 技術を利用して生活の質の向上と貧困の撲
滅を進め知識社会を形成する)と投資促進(各種優遇策による海外からの投資促進)をあ
げている。2008 年 9 月、州内の公共交通システムの強化を目的とする覚書を米国運輸相と
の間で締結した。投資の促進につなげる狙いである77。
主な具体的政策として図表 1-7 の項目がある。
図表 3-17 アンドラ・プラデシュ州の基本政策
e-Governance
①
ラジブ計画:州内の全村でブロードバンドを利用可能とする
②
ブロードバンド:10Gbps(県レベル)1Gbps(郡レベル)2-100Mbps
(村、家庭レベル)の実現
③
①、②により農業、教育、医療分野での各種住民サービスを開始
④
電子入札、e ラーニング、無料コールセンタの実施
投資促進
①
2009 年までに全インドの IT 輸出の 30%をアンドラ・プラデシュ州で実現する
②
IT 分野で年間 6 万人の新規雇用創出
73
74
75
76
77
2008 年 11 月 6 日付
2008 年 6 月 20 日付
2009 年 2 月 28 日付
2004 年 5 月 24 日付
2008 年 9 月 27 日付
The Indian
Indo Asian News Service
The Hindu
The Tronto Star
New Indian Express
119
③
④
新規事業提案の競争入札制度の実施
各種税の減免、従業員教育費用の補填など企業誘致施策の実施
出典:アンドラ・プラデシュ州、ICT Policy 2005-2010
同政策では、①印紙税、登録税、土地移転税の払い戻し、②雇用人数 1 人あたり 2 万ル
ピー(約4万円)を土地取得コストに対して払い戻し(①のインセンティブを受けている
企業は対象外)
、人材教育センタに対しては卒業生が著名な IT-ITES 企業に就職した際に生
徒 1 人あたり 2,000 ルピー(約4千円)の補助金を供与、などのインセンティブを供与し
ている。
また、同州政府ではさらに外資系企業を誘致するために、IT パークや IT 経済特区の設
立を進めている。
(3) タミル・
タミル・ナードゥ州
ナードゥ州(州都:
州都:チェンナイ)
チェンナイ)
タミル・ナードゥ州は国内第 3 位の工業生産額を誇り経済的にも人的資源の面でも比較
的豊かな州である。特に州都チェンナイ周辺は自動車産業が発達し、歴史的にも南インド
の表玄関となっている。州のスローガンは「知識立州(Knowledge Based State)」であり、
最初の IT 政策は 1997 年に発表され、カルナタカ州と共に最も早く IT 政策を発表した州と
なった。最新の IT 政策は 2008 年 5 月に発表された。その新 IT 政策では、タミル・ナード
ゥ州の IT 産業生産高78の国内シェアを、2006 年度の 11%(57 億米ドル)から 2010 年度に
は 25%(300 億米ドル)まで引き上げ、新たに IT 産業の直接雇用 80 万人、間接雇用 220
万人を達成することを目指している(2006 年度の雇用人数は約 90 万人)
。そのために、人
材育成、R&D、電子政府化の推進、投資インセンティブの供与、インフラの開発、タミル・
ナードゥ州としてのブランド力の向上などを実施していくことを掲げている。
同州の 2008 年 IT 政策の主な優遇策は以下のとおり。
•
IT 産業に対する財政面での支援
・ Chennai, Tiruvallur, Kancheepuram の 3 つの地区において IT・ITES 企業の新規
進出あるいは既存の企業が拡張する場合は、新規固定資産投資額が 3 年間で 25
億ルピー以上の場合、ケースバイケースで特別の優遇を与える。上記 3 地区以外
の場合は、新規固定資産投資額が 3 年間で 15 億ルピー(約 30 億円)以上の場合
に、ケースバイケースで特別の優遇を与える。
・ Chennai, Tiruvallur, Kancheepuram の 3 つの地区以外は全て Tier 2, Tier 3
の都市とみなし、投資額と雇用人数に応じて次のようなインセンティブを供与す
る。(それぞれ投資金額と雇用人数の両方の条件を満たす必要がある)
78
IT サービス、IT 製品製造の両方を含む。
120
投資金額
雇用人数
補助金額
電気税の免除期間
5,000 万~5 億ルピー
100 人以上
300 万ルピー
2 年間
5 億~10 億ルピー
200 人以上
600 万ルピー
3 年間
10 億~20 億ルピー
300 人以上
1,000 万ルピー
4 年間
20 億ルピー以上
400 人以上
1,500 万ルピー
5 年間
さらに、SEZ 内に立地する場合は、補助金が上記額から 50%上乗せされる。
・ IT 産業のための土地取得やビル建設の場合、印紙税と登録費の 50%を免除する。
•
行政手続きインセンティブ
・ 全てのソフトウェア産業はタミル・ナードゥ州汚染管理法の対象外とする。
・ 各種法令に対して、自己申告のみで法令に準拠したと見なす。
・ 行政手続きのシングルウィンドウ化を進める。
•
設備面での支援
・ 災害復旧及び災害時のビジネス継続保証のため、必要な通信帯域と電力がタミ
ル・ナードゥ州の代替地域で利用できることを保証する。
•
マーケティングサポート
・ ドイツ、フランス、日本といった英語圏以外の市場に進出する為に外国語教育環
境を整備する。
(4) ケララ州
ケララ州(州都:
州都:トリバンドラム)
トリバンドラム)
100%近い識字率を誇るケララ州は、最近 IT 産業でも頭角を現している。
同州では 2001 年の IT 政策を改訂し、
新 IT 政策を 2007 年 10 月に発表したが、
その中で、
IT の普及、IT を利用して透明性のある質の高い公共サービスを効率的に住民に提供するこ
と、IT を使った教育の強化、IT 産業への投資促進などを政策目標として挙げている。投資
誘致については、タミル・ナードゥ州と同様、固定資本財投資への補助金などを供与して
いる。同州の主な優遇策は次のとおり。
・ 150 万ルピー(約 300 万円)を上限とし、固定資本財投資の 30%を補助金として
供与。トリバンドラム、エルナクラム地区以外に立地する場合には、250 万ルピ
ー(約 500 万円)を上限とし、固定資本財投資の 40%を補助金として供与
・ 州政府は技術開発基金を創設し、研究開発プロジェクトに出資
・ 政府が運営する IT パークに入居する企業に対して印紙税、登録費を免除
・ 政府が運営する IT パークのインフラ開発事業者に対して印紙税、登録税、土地移
転税の免除
121
4. 人材育成
アジア域においては各種企業が域内各国に事業展開し、ヒト、モノ、カネ、情報等の移
動・交流が著しく増加している。
情報サービス業では、我が国主導でスキル評価の一手段として ITEE がアジア域に適用
推進されており、より包括的な ITSS の適用推進もはじまっている。一方では、特にスキル
評価の普及は転職・離職を増加させるというネガティブな意見もあるが、これは TOEIC な
どの普及から明らかなとおり、あまりにも視野の狭い意見であろう。
他方、アジア域内においては、IT 発展格差が存在しており、人材及びそのスキルなども
明らかではない。
人材活用のためには、どの地域にどのようなスキルを持つ人材が、どれくらいの人数、
偏在しているのかなどの情報が重要である。
ここでは、アジア各国の IT 関連人材の状況を、中国、韓国、タイおよび新興国である
ラオス、ミャンマー、インドを中心にアジア各国・地域の人材状況を概観する。なお、
「IT
関連人材」の技術レベルや分野は、各国で定義が異なるため、単純に人数を比較すること
はできない。
122
図表 4-1 アジア各国
アジア各国・
各国・地域の
地域の IT 人材状況
項目
IT 関連就業者数(人)
うちソフトウェア産業
従事者(人)
IT 関連新規卒業技術者
数(人)
IT 専門技術コースを有
する高等教育機関数
日本への留学生数
(2007.5)
日本への留学生割合
(%)
Internet-base
TOEFL
d(iBT)
(2008.1
Paper-base
-12)
d(PBT)
日本語能力試験受験者
数(1 級-4 級の受験者
数)
(2007 年度)
79
日本
(参考)
569,823
(2002)
①大学卒業
者:54.9 万
人、内就職
者:30.6 万
人、内理工
学部系:6
万人。
②主要企業
(3,000 社)
の採用数:
10 万人、内
理工系 2.8
万 人 ( 出
典:日経産
業新聞 2005
年 4 月)
中国
台湾
8,330,000
(2008)
150 万
(2008)
34 万79
(2005)
-
389 校(普
通 高 等 大
学)
、550 校
(ソフトウ
ェア専門学
校)
-
韓国
52,000
(2004)
-
11,053
(2004)
モンゴル
カンボジア
1,498,000
(2007)
6,970
288
(主要企業)
130,972
(2007)
2,500
-
1,100
国立大学 2
校及び幾つ
かの私立大
学等(31 施
設)
インドネシア
ラオス
マレーシア
-
3,688
(2006)
100
(推
定)
-
-
約 1,600 人
(2003-4)
-
3,000+α 人
(2009)
大学 25 校
専門学校
164 校
数は不明。IT
教育に定評が
ある大学は、
インドネシア
大学、グナダ
ルマ大学、バ
ンドン工科大
学等
10 大学
(短大も含む)
(2009)
365,000
(2005)
-
4,0005,000/年
大学:44
単科大学:34
高専:27
-
-
72,766
5,082
18,862
1,145
287
1,791
‐
2,271
58.8
4.1
15.2
0.9
0.2
1.4
‐
1.8
66
76
73
78
65
79
‐
88
72
539
552
521
515
-
537
-
565
-
216,434
55,802
82,323
999
721
7,688
-
2007 年高等教育校(大学本科+高専)の情報専攻在校生総数は 316.8 万人で、年間卒業生数は概ね 70 万人まで増加している模様。
123
‐
3,108
項目
ミャンマー
フィリピン
IT 関連就業者数(人)
3,500
(2009)
37 万
(2009.05)
8万
(2009.05)
ソフトウ
ェア開発者
う ち ソ フ ト ウ ェ ア産
業従事者(人)
-
IT 関連新規卒業技術
者数(人)
4,0005,000 人
(2009)
タイ
ベトナム
バングラデシュ
-
139,000
(2008)
21 万
(2007)
-
16,638
(2008)
(試算)
68,224
(2007)
35,000
(2007)
毎年約
10,000
(カレッジを含
めると約
20,000)
インド
ネパール
パキスタン
-
25,000
(推定)
15,000 以上
(2009)
130 万
(2006)
10,000
(推定)
6,000 人
28 万(IT)
50 万
(工学)
(2006)
総合大学 90 校
単科大学 700 校
以上
343 校
( 高等 教育
機関数)
大学 4 校、研修
機関 1,000 校
(2004)
スリランカ
11 万人
50,000
(2009)
15,000
人
19,400
20,000 人
3,200
(2006)
約4万
(CHED
2006)
-
19,000
886 大学、
643 の IT
専門学校、
400 の IT 職
業訓練校
(2005.10)
8校
(3 大学、5
ポリテク
ニック)
83 校
(うち私立
大学 22 校)
‐
527
156
2,203
2,873
1,686
544
1,476
-
1,097
‐
0.4
0.1
1.8
2.3
1.4
0.4
1.2
-
0.9
Internet-b
ased(iBT)
‐
88
100
72
70
82
87
74
87
83
Paper-b
ased(PBT)
‐
562
605
500
539
531
547
515
546
531
‐
2,711
4,994
13,295
11,433
5,932
580
IT 専門技術コースを有
する高等教育機関数
日本への留学生数
(2007.5)
日 本 へ の 留 学 生 割合
(%)
TOEFL
(2008.112)
シンガポール
日 本 語 能 力 試 験 受験
者数(1 級-4 級の受験者
数)
(2007 年度)
24 大学
(2009)
約 204 校(大
学・カレッ
ジ)
-
124
-
国立大学 15 校、
半民半官 1 校、
民間 30 校
大学 110 校
-
1,292
<出典>
1
IT 関連就業者数:各国の出典は以下のとおり。
国名
年
書籍名/ウェブサイト
日本
-(情報なし)
2007
2007 年放送通信部門人材動向報告書
韓国
中国
2007
2007 中国ソフトウェア産業発展研究報告
(情報産業部、中国ソフトウェア産業協会)
台湾
2007
2007 資訊工業年鑑 経済部技術処
シンガポール
2008
IDA Annual survey on Infocom Manpower for 2008
マレーシア
2008
マレーシアコンピュータ・マルチメディア産業協会(PIKOM)
タイ
2007
ICT マスタープラン II(2009-2013)
フィリピン
2009.05 CICT Monchito Ibrahim コミッショナ講演資料
インドネシア
-(情報なし)
ベトナム
2007
VNE 7/10/16(新聞報道)
ミャンマー
-(情報なし)
ラオス
-(情報なし)
カンボジア
2006
IT Committee EIC IT News
モンゴル
2006
Report on Research of IT Human Resources in Mongolia
バングラデシュ
-(情報なし)
インド
2006
NASSCOM
ネパール
2006
アジア情報化レポート 2006 ネパール
Pakistan Software Export Board のウェブページ
パキスタン
2009
スリランカ
2
2009
http://www.pseb.org.pk/item/industry_overview 2009/05/20 アクセス
コロンボにおける IT・BPO 産業の IT 人材は 50,000 人
Sri Lanka Association of Software and Service Companies のウェブペー
ジ http://www.slasscom.lk.srilankaaadvantage 2010/02/16 アクセス
うちソフトウェア産業従事者:各国の出典は以下のとおり。
国名
年
書籍名/ウェブサイト
日本
2002
2004 情報化白書 日本情報処理開発協会
韓国
2007
2007 年放送通信部門人材動向報告書
中国
2006
情報産業部
台湾
-(情報なし)
シンガポール
2008
IDA Annual survey on Infocom Manpower for 2008
マレーシア
2004
-(情報なし)
タイ
2007
ICT マスタープラン II(2009-2013)
フィリピン
2009.05 CICT Monchito Ibrahim コミッショナ講演資料
インドネシア
-(情報なし)
ベトナム
2007
郵電省(MPT)情報
ミャンマー
-(情報なし)
ラオス
2005
Survey Report of IT Schools in Vientiane Lao PDR
カンボジア
2006
IT Committee EIC IT News
モンゴル
2006
"Software Industry in Mongolia"
Mr. Buyantsogtoo, Ts. JMITA (Japan Mongolia IT Association)
バングラデシュ
2009
Bangladesh Association of Software & Information Services, SODEC2009
参加企業カタログ
インド
ネパール
パキスタン
2006
2006
2009
NASSCOM
アジア情報化レポート 2006 ネパール
スリランカ
2010
IT の学位を持つ IT 専門家数、ICTA(8th AFIT プレゼン資料)
Pakistan Software Export Board のウェブページ
http://www.pseb.org.pk/item/industry_overview
125
2009/05/20 アクセス
3
IT 関連新規卒業技術者数:各国の出典は以下のとおり。
国名
年
書籍名/ウェブサイト
日本
-(情報なし)
2007
2007 年放送通信部門人材動向報告書
韓国
中国ソフトウェア産業発展研究報告 2005
中国
2004
(中国のみ、ソフトウェア分野新規技術者数)
台湾
-(情報なし)
シンガポール
-(情報なし)
マレーシア
2004
Knowledge Worker Exchange 社ウェブサイト
タイ
2007
ICT マスタープラン II(2009-2013)
フィリピン
2006
高等教育機構 CHED
インドネシア
-(情報なし)
ベトナム
2005
Vietnam ICT Outlook 2006
ミャンマー
2005
各種調査より CICC 算出
ラオス
-(情報なし)
カンボジア
2004
Ministry of Education, Youth and Sports 資料
"Software Industry in Mongolia"
モンゴル
2006
Mr. Buyantsogtoo, Ts. JMITA (Japan Mongolia IT Association)
Bangladesh Association of Software & Information Services, SODEC2009
参加企業カタログ
バングラデシュ
2009
インド
ネパール
2005
パキスタン
2009
Pakistan Software Export Board のウェブページ
http://www.pseb.org.pk/item/industry_overview
スリランカ
2007
National IT Workforce Survey 2007
NASSCOM
-(情報なし)
126
2009/05/20 アクセス
4
IT 専門技術コースを有する高等教育機関:各国の出典は以下のとおり。
国名
年
書籍名/ウェブサイト
日本
-(情報なし)
韓国
-(情報なし)
中国
2005
専門雑誌(Wireless 専門、Auto 化専門)
香港
-(情報なし)
台湾
-(情報なし)
シンガポール
2009
現地情報
Ministry of Higher Education
マレーシア
2006
(METEOR による IT 人材調査レポート)
タイ
2007
高等教育委員会(NECTEC による IT 人材調査レポート)
2005 年 10 月、情報化協力ミッション時、DTI 次官の講演資料に
フィリピン
2005
による
インドネシア
-(情報なし)
ベトナム
2006
Vietnam ICT Outlook 2007
ミャンマー
2005
各種調査より CICC 算出
Survey Report of IT Schools in Vientiane Lao PDR、2010 年 3
ラオス
2010
月現地調査
カンボジア
2008
National ICT Development Authority、Yellowpages Cambodia
モンゴル
2005
CICC 調査
バングラデシュ
2009
Bangladesh Association of Software & Information Services, SODEC2009
参加企業カタログ
インド
ネパール
2005
2004
NASSCOM
Computer Association of Nepal『Profile 2004』
パキスタン
2009
Pakistan Software Export Board のウェブページ
http://www.pseb.org.pk/item/industry_overview
スリランカ
2010
ICT Agency (8
th
2009/05/20 アクセス
AFIT プレゼン資料)
5 日本への留学生数:独立行政法人 日本学生支援機構『平成 20 年度外国人留学生在籍状
況調査結果』2008 年 12 月
(http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/documents/data08.pdf)
6 日本への留学生割合:独立行政法人 日本学生支援機構『平成 20 年度外国人留学生在籍
状況調査結果』2008 年 12 月
(http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/documents/data08.pdf)
7 TOEFL:ETS. Test and Score Data for Summary for TOELF Computer-Based and
Paper-Based Tests. 2008
(http://www.ets.org/Media/Tests/TOEFL/pdf/test_score_data_summary_2008.pdf)
8 日本語能力試験受験者数:財団法人日本国際教育支援協会/国際交流基金『日本語能力
試験結果の概要 2008(平成 20 年度)
』(http://www.jlpt.jp/j/about/pdf/2008_05.pdf)
127
4.1 中国
4.1.1 .ソフトウェア産業
ソフトウェア産業の
産業の政府政策
ソフトウェア産業は中国政府の重点育成産業であり、2000 年国務院から「ソフトウェア産業と
集積回路産業の発展奨励に関する若干の政策」(略称“18 号文書”)が公布されている。また 2008
年 3 月の国務院機構改革で工業情報化部が設立され、傘下の「ソフトウェア・サービス業司」が
政策遂行の実務を担う事になった。
2009 年 1 月、北京、天津など 20 都市80が「中国サービス・アウトソーシングモデル都市」に決
まり、モデル事業を進めことになった。政府は財政、税制、金融、知的財産権保護、関税など、
多方面で支援する方針である。
2009 年 2 月、中国政府は「電子情報産業の調整・振興計画」を発表し、①ソフトウェアの自主
開発能力を増強し、情報サービスの新事業モデルの育成を加速する、②電子情報産業全体に占め
るソフトウェア・情報サービスの収入比率を、2008 年末の 12%から、2011 年には 15%へ引き上げ
る方針を打ち出した。
2009 年 9 月、財政部、国家発展改革委員会、科学技術部など 9 つの部・委員会が「政府・企業
の発注に際し、わが国サービスアウトソーシング産業の発展に関する指導意見」を発表し、政府
機関や企業の事務処理を専門会社に外注し、中国のサービスアウトソーシング産業の発展を促進
する方針を出した。
工業情報化部は「ソフトウェアサービス業の発展加速に関する指導意見」
(以下、
「指導意見」)
を起草中である。今年中に「指導意見」を公布し、今後 5 年間の中国ソフトウェア・サービス業
の規模、産業構造、応用普及、技術革新、企業発展、人材開発など 7 大目標を掲げている。特に
基本ソフト、情報セキュリティ、プロセス制御ソフト、組込ソフト、業務アプリ、SI 及び技術サ
ポート、サービスアウトソーシング、各種サービス、デジタルコンテンツ処理、IC 設計などの強
化を挙げている。 また工業情報化部は 2011 年より始まる“第 12 次 5 カ年計画”起草に向けた検
討も着手している。
4.1.2 重点発展分野
中国のソフトウェア産業は、川中から川下が主で、しかもアプリケーションソフトの開発が中
心である。オペレーティングシステム(OS)など基本ソフトのコア技術に欠き、開発力も弱い。従
って、中国政府は組込ソフト OS、開発環境ツール、組込アプリなどの基礎分野の研究開発と応用
を重点的に推進している。
ソフトウェア・サービスアウトソーシング事業は労働集約型産業であり、雇用問題の解決、ソ
フト開発レベルの向上に寄与でき、重点発展分野となっている。
プロセス制御ソフトウェアや業種別業務ソリューションの発展も重点となっている。中国は製
造業大国だが、グローバル分業体制での中で、主として中流以下の部分に従事している。情報技
術の利活用によって、研究開発、製品設計、プロセス設計、生産管理、製品検査、物流など、各
80
20 都市の内訳:北京、天津、上海、重慶、広州、深圳、武漢、大連、南京、成都、済南、西安、哈爾浜、杭州、
合肥、長沙、南昌、蘇州、大慶、無錫。
128
段階で改善や改良を進め、生産や経営のインテリジェント化、ネットワーク化をめざしている。
情報化の推進やインターネットの普及に伴い、情報セキュリティの重要性が益々高まっている。
中国政府は国内ソフトウェア企業を柱とする情報セキュリティ市場の発展、及び情報セキュリテ
ィの独自システムの確立をめざしている。
インターネットの発展が、ソフトウェア提供形態にも変化をもたらし、ネットワーク経由のサ
ービス提供へと進みつつある中、SaaS、クラウドコンピューティング、IOT(Internet of Things:
物同士を無線でつなぐ構想)などの新構想が相次いで誕生している。2009 年、ソフトウェア技術
はネットワーク化、知能化、高信頼性への歩みを速めており、SaaS はソフトウェア産業発展の新
たな特徴となっている。
4.1.3 産業規模
工業情報化部のデータによれば、2009 年中国のソフトウェア産業全体の事業収入は 9,513 億元
(約 12.6 兆円)81(前年比 25.6%増)となり、2010 年には 1 兆元(約 13.3 兆円)の大台を突破すると
みられる。同産業の従事者は 180 万人を超える。
図表 4-2 2005-2009 年 中国におけるソフトウェア事業収入の推移 (1 元=13.3 円)
出典:工業情報化部 2010.1
81
本稿では1人民元=13.3 円として計算
(2010 年 3 月 10 日現在の為替レート)
129
図表 4-3 2009 年 中国ソフトウェア分野別の事業収入の内訳
出典:工業情報化部 2010.1
130
4.1.4 ソフトウェア 100 強企業
2009 年 6 月、工業情報化部と国家統計局は共同で「2009 年中国ソフトウェア企業 100 強」82番
付を発表した。華為がソフトウェア関連の事業収入 555.6 億元(約 7,389 億円)で 8 年連続のトッ
プとなり、
中興通訊が 248 億元(約 3,298 億円)で 2 位、神州数碼(Digital China)が 110 億元(1,463
億円)で 3 位につけた。
図表 4-4 2009 年 中国ソフトウェア企業 100 強 上位 20 社
順
(1 元=13.3 円)
ソフトウェア事業収入
位
企業名称
(単位:万元)
1
華為技術有限公司
5,556,467
2
中興通訊股分有限公司
2,480,432
3
神州数碼(中国)有限公司
1,100,385
4
海爾集団公司
671,884
5
上海ベル・アルカテル股分有限公司
651,148
6
熊猫電子集団有限公司
623,554
7
北京北大方正集団公司
403,688
8
浙大網新科技股分有限公司
403,085
9
浪潮集団有限公司
396,952
10
同方股分有限公司
375,413
11
東軟集団股分有限公司
360,462
12
中冶賽迪工程技術股分有限公司
314,913
13
南京聯創科技股分有限公司
259,844
14
瀋陽先峰計算機工程有限公司
231,154
15
中国軟件与技術服務股分有限公司
222,651
16
南京南瑞集団
216,556
17
中国銀聯股分有限公司
197,040
18
上海宝信軟件股分有限公司
185,503
19
福州福大自動化科技有限公司
178,134
20
用友軟件股分有限公司
17,170
2009 年ソフトウェア企業 100 強は、規模が拡大し、上位 100 社の事業収入総金額が 2,039.5 億
元(約 2.7 兆円)(前年比 362.6 億元(約 4,823 億円)増加、同 21.6%増)となり、100 社で業界全体
の 26.3%を占めた。100 強入りのボーダラインは 3.1 億元(約 41 億円)で、前回を 14.8%上回った。
ソフトウェア事業収入が 10 億元(約 133 億円)を超えたのは 32 社、60 億元(約 798 億円)を超え
たのは 6 社、上位 10 社の事業収入は、上位 100 社の 61.9%を占めた。
上位 100 社のうち、70%が CMMI 認証を取得しており、3 級を取得した企業が 43 社、4 級が 12
社、5 級が 11 社となっている。
82
2009 年中国ソフトウェア企業 100 強の番付は、2008 年のソフトウェア関連事業収入を基に作成。事業収入は各
社が格付会社に提供したデータを使用した。
131
100 社の輸出外貨収入は 90.8 億ドル、ソフトウェア輸出高全体の 56.1%を占め、上位 2 社だけ
で輸出高全体の 49.1%(79.6 億ドル)を占めた。
R&D 投資では、100 社で計 420 億元(約 5,586 億円)(前年比 19.8%増)、業界全体の 67%に当たる。
100 社の R&D 投資対事業収入の比率は 8%で、業界平均を 1.4%上回った。
100 社の従業員総数は 34.7 万人。うち研究開発人員は 35%超の 12 万人、4 年生大学(本科)以
上の学歴を持つ従業員は 100 社全体の 63.2%、院卒は 10.1%である。
4.1.5 アウトソーシングと
アウトソーシングと輸出
ソフトウェア・サービスのアウトソーシング事業は中国ソフトウェア産業発展の重要な部分と
なっている。2006 年に商務部は 16 の「中国ソフトウェア・サービスアウトソーシング都市」
、4
つの「ソフトウェア・サービスアウトソーシングモデル地区」を認定した。2009 年 2 月には、国
務院が「サービスアウトソーシング産業の発展促進関連問題に対する回答書」を発表し、北京、
天津、上海などの上記 20 都市を「中国サービスアウトソーシングモデル都市」に指定し、一層の
奨励・支援措施を進めている。
過去数年間、ソフトウェア輸出が急成長を続け、2006-2008 年の輸出成長率は平均 58%に達した。
うちアウトソーシングサービスの比重は、2008 年の 11%から 2009 年第 1~3 四半期(1~9 月)の
13%に拡大し、輸出の重要な構成部分となっている。
金融危機の影響で、2009 年は世界のソフトウェアや情報サービスのアウトソーシング産業は低
調だったが、中国政府の奨励支援政策が奏功し、中国は 2009 年も比較的速い発展を維持した。工
業情報化部によれば、2009 年中国のソフトウェア輸出額は 185 億ドル、うちソフトウェアアウト
ソーシングサービスの輸出額は 24 億ドル83であった。
83
データ出典:工業情報化部 2010 年 2 月発表の「2009 年全国軟件産業統計公報」より。
132
図表 4-5 2004-2009 年 中国ソフトウェア事業収入と輸出総額 (1 元=13.3 円)
年度
ソフトウェア事業収入(億元)
ソフトウェア輸出総額 (億
米ドル)
2004 年
2,780
28
2005 年
3,900
35.9
2006 年
4,800
66.6
2007 年
5,800
102.4
2008 年
7,573
142
2009 年
9,513
185
出典:工業情報化部 2010.2
図表 4-6 中国におけるソフトウェア関連輸出総額の推移 (1 元=13.3 円)
出典:工業情報化部 2010.2
2008 年、
中国のソフトウェア・情報サービスのアウトソーシング企業数は 3,600 社(前年比 20.0%
増)となり、事業の従事者は 41 万人で、前年比で約 36.7%の増加84である。
中国の巨大な内需市場が、ソフトウェア・アウトソーシング事業の急発展を後押ししており、
外需市場も急速に発展している。世界金融危機後の 2009 年上半期、海外から中国へ発注されたサ
ービスアウトソーシングは、契約額で 25.6 億米ドル(前年比 32.5%増)であった。主な発注元は、
日本(32.3%)、米国(24.6%)、香港・マカオ・台湾(12.9%)、及び欧州(7.8%)で、これら 4 地域で海外
受注全体の 77.6%を占めた。85
中国のソフトウェア・サービスアウトソーシングは、主として情報技術業、金融業、電気通信
業、製造業の分野で活用され、2008 年は金融・製造分野でやや減少したが、電気通信業の比重が
急上昇し、政府・公共事業も新たな成長分野になっている。
84
データ出典:工業情報化部ソフトウェア・集積回路促進センター(CSIP)が 2009 年 12 月に発表した「2009 中
国ソフトウェア・情報サービスアウトソーシング産業発展報告」
85
データ出典:同上。
133
世界レベルでソフトウェア・サービスアウトソーシング市場を見ると、インドが 40%以上のシ
ェアが占め、中国のシェアは 5%にも満たない。一方、インド一極集中のリスク分散を図るため、
他国シフトが進んでおり、中国にとっては発展のチャンスである。
4.1.6 ソフトウェア関連人材
ソフトウェア関連人材
中国ソフトウェア産業は、ソフトウェア品質管理者、プロジェクト管理者、システム分析、ソ
フトウェア試験要員、熟練プログラマー、及び国際化人材が不足している。
毎年 60 万人のソフトウェア専攻学生が卒業しているが、人材の構成に問題がある。人材構成の
底辺がソフト開発者で、中間部分がプロジェクトマネージャ、頂上が経営層である。中国の場合、
底辺はしっかりしているが、中間部分は弱く、頂上部分は形になっておらず、歪な状況になって
いる。
グローバル人材も不足している。グローバル企業に適し、開発プロセスやプロジェクトマネジ
メントに詳しく、品質管理やコミュニケーション能力を持った人材である。
海外からの大規模受注や大型プロジェクトの請負には、豊富な人材が必須である。世界的に見
れば、中国はコア・コンピタンスに欠き、常にハイレベル人材に不足している。インド最大手の
従業員数が 10 万人に達するが、中国はトップクラスでも 2 万人に満たない。マイクロソフト関係
者から、中国とインドには 10 年の差があるとの指摘もある。同社の中国へのソフトウェア発注量
は、世界全体発注量の 10%程度である。
2007 年以降、ソフトウェア試験技術者が常に不足している。中国内のソフトウェア試験技術者
と開発人員数の比率は概ね 1:5 だが、海外では約 1:1 である。ソフトウェアへの品質要求が厳
しくなっており、ハイレベル人材の確保は特に難しい。
4.1.7 ソフトウェア著作権保護
ソフトウェア著作権保護
中国版権保護センターの統計によれば、2009 年中国ソフトウェア関連の各種登録・登記の申請
件数は 7 万 965 件(前年比 49.75%増)であった。うちソフトウェア著作権登録は 6 万 7,912 件(同
48.6%増)で、登録・登記全体の 95.7%を占めた。
図表 4-7 2009 年 コンピューターソフト著作権登録 上位 5 地域
2009 年
2008 年
登録数
登録数
順位
省・直轄市
前年比
全登記数比
1
北京
22,055
18,156
21.47%
32.48%
2
広東
9,927
6,172
60.84%
14.62%
3
上海
5,475
4,729
15.78%
8.06%
4
浙江
4,759
4,131
15.20%
7.01%
5
江蘇
4,321
2,935
47.22%
6.36%
134
中国政府は知的財産権保護の推進に力を入れているが、長年の中国ソフト海賊版問題には目立
った改善がなく、海賊版ソフトの使用率は依然として高く、中小企業や個人が、海賊版ソフトの
主な使用者である。
中国のソフトウェア著作権保護は、まず政府部門における正規版ソフトウェアの使用から始ま
った。2001 年から 3 年間で、中央・省・市政府部門における正規版ソフト使用が徹底された。2006
年からは企業での正規版ソフトウェア使用の徹底が図られた。国家版権局、工業情報化部、商務
部など 9 部門が、正規版ソフトウェアの徹底で連携した。政府発表では、2007 年には大企業 1,500
社が、2008 年には新たに 7,600 社が正規版ソフトウェア使用の徹底化目標を達成した。2009 年は
全国 1 万 299 社で正規版ソフトウェアの徹底化を達成した。今後は外資系企業や民営企業に重点
が移る。
中国政府や国有企業は、国産の正規版ソフトウェアの購入により国内ソフトウェア企業の発展
を支援しているが、これら国産ソフトウェアを実際に使用する比率は高くない。正規版国産ソフ
トウェアを購入しながら、依然として国外ソフトウェアの海賊版を使用している。正規版国産ソ
フトウェアの導入はチェックをクリアするためのポーズであり、正規版ソフトウェア購入は政府
のイメージキャンペーンに過ぎない感がある。
4.1.8.
4.1.8. 2009 年の主なトピックス
(1)中国政府
(1)中国政府による
中国政府による国産基本
による国産基本ソフト
国産基本ソフト支援
ソフト支援
中国のソフトウェア産業は、アプリケーションソフト開発やソフトウェア・サービスアウトソー
シング事業が中心である。基本ソフト分野はマイクロソフトなどに代表される国外大手が市場を
独占している。中国政府は国産基本ソフト産業の発展を目指し、2009 年の「中核電子デバイス、
ハイエンド汎用チップ及び基本ソフト」プロジェクト(略称「核高基」)や「電子情報産業の調整・
振興計画」などの政策支援をしている。
2009 年 9 月、「上海基本ソフト産業基地」が設立され、中標軟件、上海達夢、東方通などの国
内系基本ソフトウェア企業が OS、データベース、ミドルウェアを研究開発している。また普及促
進のため、上海で「国産基本ソフト応用推進連盟」も発足した。
中国の基本ソフト開発企業は規模が小さく、2009 年中国政府の主導による M&A 再編、資本投入
などによって、国内資本の基本ソフト開発企業の実力向上を図った。
2009 年 12 月、中国電子情報業界の大型国有企業である中国電子科技集団(略称 CETC)、は、傘
下の「普華基礎軟件有限公司」を通じてソフトウェア事業を統合し、
「国産基本ソフト応用支援研
究開発センター」を設立した。普華基礎軟件有限公司は更に、中国最大手の国産データベースソ
フト開発会社、
「北京人大金倉情報技術公司」を買収し、日本ターボリナックス社の OS 業務の 51%
を買収し、スウェーデンの自動車組込ソフト企業とも提携協議を進めている。
中国電子情報業界のもう 1 社の大型国有企業である中国電子情報産業集団(略称 CEC)傘下の
135
「中軟集団」は、2009 年にデータベース会社「武漢達夢数拠庫公司」を買収した。2009 年 12 月
中軟集団は、中国電子ソフトウェア研究所を設立した。2009 年に、CETC と CEC は上海中標軟件公
司への共同増資も行っている86。
2009 年 10 月、基本ソフト企業の四川普元軟件有限公司は、新開発創投87、天津和光股権基金88の
両ファンドから約 1 億元(約 13.3 億円)の出資を得た。両ファンドはいずれも政府系投資機関であ
る。
このように、中国政府の主導と後押しで、2009 年は国産基本ソフト市場に大きな变化が生じ、
国有企業を主体とする国産基本ソフト市場が初歩的ながら形成された。しかし中国の基本ソフト
企業は事業収入、研究開発能力、企業規模などいずれの面においても、世界レベルとの差が歴然
としており、発展の道程はまだ長いと言える。
(2)M&A による再編
による再編と
再編と企業規模の
企業規模の拡大
中国には 2 万社のソフトウェア企業があり、規模は小さく、分散している。政府の主導により、
大規模化が多少進展し、従業員 1 万人以上の企業も出現し始めている。
2008 年の事業収入が 1 億元(約 13.3 億円)を超えたソフトウェア企業は約 1,000 社に達し、50
億元(約 665 億円)以上は 6 社に上った。またソフトウェアパーク、産業基地、重点都市への集約
も顕著になっている。2008 年は、12 の国家ソフトウェア産業基地やソフトウェア輸出基地におけ
るソフトウェア売上高は、全国の 40%以上を占めた。2009 年 1-9 月、4 直轄市・15 省级都市のソ
フトウェア売上高は、全国のソフトウェア・サービス業売上高の約 90%を占めた。
M&A 再編も速いスピードで進んでいる。2008 年金融危機の結果、M&A 再編が低コストで実現で
きるチャンスが増えてきた。清科研究センターの統計によれば、2009 年上半期、中国のソフトウ
ェア業界で 30 件の M&A が行われ、案件数は前年同期比 79%増、買収金額も 180%増えた。
用友(YFIDA)は 2009 年のわずか数カ月間でソフトウェア企業 5 社を、金蝶(Kingdee)も 4
カ月間で 3 社を買収した。2009 年 12 月には亜信(Asia Info)が 7 億米ドルで南京聯創を買収し、
同年の中国ソフトウェア業界で最高額の買収となった。
また、
2009 年は海外企業への M&A により、
技術研究開発能力の向上や海外市場への展開を目指す動きも出てきた。2009 年 11 月中国最大の
SI 会社の神州数碼(Digital China)が、日本のシステム開発会社 SJI を買収し、同年東軟集団も
フィンランドの 3 社を買収している。
(3)無償
(3)無償ソフト
無償ソフトの
ソフトの登場
Google が無償でインターネットオフィスソフトの提供を始め、これに対抗してマイクロソフト
も無償の Web Office を提供すると発表した。市場シェアの小さい中国オフィスソフト企業も、グ
86
上海中標軟件公司は、国有企業である中国軟件与技術服務有限公司、中国電子科技集团 と、政府系金融機関で
ある華東計算技術研究所の計 3 事業者が共同出資により設立した。主に自前ソフトウェア技術による OS やオフィ
スソフトの研究・開発を手掛けている。
87
新開発創投は、国家開発銀行傘下の投資会社。
88
天津和光股権基金は 2009 年設立の天津市政府主導の投資機関。
136
ローバル企業に追随せざるを得なくなった。国産オフィスソフト「金山 WPS」は個人向けを無償
とし、紅旗 2000 も無償の Web Office を提供している。
瑞星、金山、カスペルスキー、シマンテック、トレンドマイクロなどのウイルス対策ソフトウェ
ア会社は、長年課金方式を貫いてきた。しかし、2009 年に始まった無償ウイルス対策サービスは、
中国のウイルス対策ソフト市場に激震をもたらした。2009 年 10 月、中国のセキュリティソフト
会社「奇虎 360」は無償ウイルス対策サービスを提供し、開始から 1 カ月もしないうちに他を抜
き、中国ウイルス対策ソフトウェア市場の 2 位へ躍り出た。
「360」無償ウイルス対策ソフトウェ
アは、まず無償提供で利用者を引きつけ、ユーザを確保した後、広告宣伝から収入を得るビジネ
スモデルである。
(4)国産
(4)国産の
国産の業務アプリ
業務アプリ
業務アプリ市場では、海外ブランドの SAP、ORACLE と国内の用友、金蝶が激しい競争が展開し
ている。従来、海外ブランドはハイエンド、国内ブランドはミドルクラス以下、と棲み分けを続
けてきた。ここ数年は「用友 NC」「金蝶 EAS」
「浪潮 GS」
「DCMS 易拓」などが、大企業にも採用さ
れるケースが増え、ハイエンド市場における国内企業のシェアが急速に拡大している。
業務アプリは変革期に差し掛かっており、SOA(Service-Oriented Architecture)やクラウド
コンピューティングの技術は、業務アプリの開発、応用、ビジネスモデルに大きな影響を及ぼし
ている。
4.1.9.
4.1.9. 課題と
課題と展望
中国のソフトウェア・サービスアウトソーシング産業は、コア技術の欠如、今後の人民元切上げ
による損益悪化、市場開拓、知的財産権保護、小規模企業間の過当競争などの一連の問題を抱え
ている。これら問題を克服するために、中国政府の主導の下、M&A による企業統合、国産基本ソ
フトの普及、アウトソーシングを通じての技術習得などを行っている。ソフトウェア産業分野に
おいても、PC、薄型 TV、携帯電話などの製品で見せたようなキャッチアップ、低価格による市場
席巻を経て、国際競争力を具えた企業を育成していく戦略を考えている。この戦略がオープン化
された世界で実現するかどうか、現時点では判断が難しい。今後もウォッチしていく必要がある。
137
4.2 韓国
4.1.1
.1.1 人材育成の
人材育成の概要
1997 年から始まった情報通信人材育成事業には 2008 年までの 12 年間で総額 1 兆 7,327 億ウォ
ンが投じられた。
同事業は、底辺拡大期(1997~2000)、基盤拡充期(2001~2003)、実務強化期(2004~)に分類で
きる。底辺拡大期には、初期情報化人材育成に集中し、情報化教育、IT 学科支援を通じ、IT 活用
能力を向上させた。基盤拡充期には、IT 学科の定員増員、教授の質向上、IT 新技術分野短期教育
などを行い、さらに最近の実務強化期は、人材が保持する技術と職場で必要な技術の不一致の解
消と高級人材育成に焦点がおかれ、人材の質的高度化のための産学協力が拡大した。
この 10 年間で韓国内で IT 関連学科を卒業した人のうち、学士 35.3%、修士・博士の 37.4%が同
事業によるものである。また、特許 3,130 件、論文 23,147 件を成果としている。
図表 4-8 年度別情報通信人材育成事業予算
(単位:億ウォン)
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
合
計
1010
830
690
4311
2556
1809
1305
1078
1145
1063
978
17,327
出典:2009 国家情報化白書
輩出する人材においては、毎年韓国内の IT 関連学科の卒業生の約 35%が本事業の特典を受けるな
ど、合計 39 万 4 千余人の IT 人材を育成し、分野別では、再教育(21 万 5,000 人)、大学(13 万
4,000 人)、大学院(4 万 5,0000 人)の順になっている。
図表 4-9
情報通信人材育成事業の人材輩出数
大学
輩出
人材
大学院
再教育
計
出典:2009 国家情報化白書
また、学部生対象の IT メントリング制度(2004 年~)を通じて、企業体の専門家(Mentor)
と学生(Mentee)が一緒にメンターが企画したプロジェクトをオン・オフラインで共同して行う
ことにより、メンティの現場実務力量を持続的に高め、該当企業への就業まで連携している。一
方、修士・博士レベルの人材の場合も、大学 IT 研究センター支援事業(2000 年~、ITRC)を通
じて、これまで 6,400 余人(韓国内の IT 高級人材の 12%)の人材を輩出すると同時に、SCI 論文
6,046 件・国際特許出願 412 件などの優れた R&D の成果を量産している。
138
最近は、国際的な工学教育の品質の等価性を確保するため、2008 年 12 月に韓国が主導し、ア
メリカ、イギリス、日本、カナダ、オーストラリアが参加する情報技術分野の工学教育認証国際
協定である「ソウルアコード」をスタートさせた。また、速やかな情報通信技術の変化に対応す
るための IT 産業体人材に対する短期再教育などで、在職者の技術寿命が 2003 年の 6.9 年から、
2005 年に 8.4 年、2007 年に 9.6 年、2008 年に 11.1 年に漸進的に延長するという成果を収めた(<
表 2-2-2-4>参照)。これと共に、人的資本の蓄積額、付加価値の主導算出誘発額などの投資収益
率(ROI)分析を見ると、投資比約 4.4 倍の収益を出すという結果が出た。
図表 4-10
ソウルアコード(Seoul Accord)参加国
国名
韓国
米国
代表機関名
ABEEK(韓国工学教育認証院:Accreditation Board for
Engineering Education of Korea)
ABET-CAC(米国工学技術認定機構
コンピュータ認定委員会:Accreditation
Board for Engineering and Technology-Computing Accreditation Commission)
英国
BCS(英国コンピュータ学会:British Computer Society)
日本
JABEE(日本技術者認定機構:Japan Accreditation Board for
Engineering Education)
CIPS(カナダ情報処理学会:Canadian Information Processing
Society)
オースト ACS(オーストラリアコンピュータ学会:Australian Computer
Society)
ラリア
カナダ
出典:2009 国家情報化白書
4.1.2
1.2 人材育成事業の
人材育成事業の政策
4.1.2.1
1.2.1 需要者中心の
需要者中心の IT 専門人材育成
(1) 2003 年 SCM(Supply Chain Managemnet)モデル
Managemnet)モデルの
モデルの導入
韓国政府は IT 政策(IT839 戦略)に基づき、様々な対策を講じている。
139
図表 4-11 人材需要基盤の SCM 人材養成モデルの導入拡大
企業が求める人材を輩出できるよう、大学の教科課程に企業の要求を反映させ、最適
SCM(Supply Chain Management)人材養成モデルとして、拡大させる。
要求人材
を把握
・IT839 戦略分野を中心に IT 人材養成需給展望と供給計画を立て
る。
人材供給
・産業協力教科目の開発と補完 ・学生の企業での研修支援
計画
・教授の競争力の強化と大学の専攻レベルを向上させるため、国
際的な工学認定を推進
・産学協力システムによる 産学協同プロジェクトの活性化
・IT 人材の質的・量的な不一致を解消し、社会の損失を最小化する
- 大学から出る人材の就職率を向上させ、企業の人材再教育費用を削減する。
・高級専門人材の体系的な養成により、産業競争力を強化し高付加価値化を促す
出典:情報通信部
a. 創造的核心人材の養成
国家科学技術諮問委員会では国家の技術革新の成否を左右するほど重要であるとして、技術革
新のための「創造的核心人材89」の養成と効果的な活用を強調している。つまり、IT 人材養成は
IT 政策の中でも最重要課題の一つである90。
b. 大学側の試み「需要指向型教科」
「需要指向型教科目」という、直訳するとわかりづらいが、要は、卒業生の技術=企業が望む
人材を輩出するために、企業の要求を反映した教科目という意味である。
大学側は産業界の要求に応じた SCM 人材養成事業を推進している。
これはソフトウェア 5 分野91、
89
創造的人材とは、未来新技術を開拓する研究人材と産業の現場で技術革新を通じ、付加価値を向上させる産業
人材
90
企業が設備投資を 10%増加すると、生産性が 3.6%上昇するが、教育訓練投資を 10%増額すると生産性は 8.4%
増加する。(21st Century skills for 21st Century jobs, 1999)
91
ソフトウェア開発、組み込み型ソフトウェア、マルチメディア、システム統合、ビジネスインフォマティクス
140
ハードウェア 4 分野92の 9 分野で構成された教育課程を提供するものである。
2004 年の教科課程改編支援事業の場合、ソフトウェア分野の教育強化のため、先行研究を土台
に、5 分野別に「需要指向型教科目」選定し、学界と産業界の専門家で議論を重ね、標準化し
た’Derailed Syllabus’を提示した。特に大学で問題となっている専攻忌避傾向に歯止めを掛け
るべく、教科履修に工夫を加え、進路指導なども充実させている。
(2)大学
(2)大学 IT 専攻力強化事業(NEXT:Nurturing
専攻力強化事業(NEXT:Nurturing Excellent engineers in information Technology
Technology)
gy)
2006 年から既存の大学支援事業を統合し、大学が自ら不足部分を補完できるよう、支援する事
業 と し て 、 大 学 IT 専 攻 力 強 化 事 業 (NEXT:Nurturing Excellent engineers in information
Technology)が始まった。大学が自校評価により、今後の運営方向や足りない部分を見つけてもら
うことに基づき、支援を行うもので、これまでの、受動的支援とは異なる。
a. 研究環境の大学 IT 研究センター(ITRC)に指定
IT 産業の持続的な発展のために、コアとなる技術を開発できる優秀な人材の育成がなによりも
必要であるとの元に、政府は優秀と認めた大学を研究環境の大学 IT 研究センター(ITRC)に指定し
ている。2007 年 12 月時点で、約 50 校が指定されている。主に新成長動力技術など、IT 政策に則
した修士・博士級の技術者を毎年 1,000 人程度輩出している。
(3)在職者向
(3)在職者向けの
在職者向けの IT 人材育成
a. 短期再教育
次世代移動通信技術、WIPI(韓国型無線インターネットプラットフォーム標準:Wireless
Internet Platform for Interoperability)、広帯域統合網(BcN:Broadband Convergence Network),
RFID/USN などを中心
b. 中長期プログラム
2006 年から学位の取得できるプログラムを開始。4 分野(移動通信、ネットワーク基盤知能型ロ
ボット、組み込みソフトウェア、IT 技術経営)を対象にしている。各課程では、産学協同による
新しい高級実務課程を開発し、大学が教育課程を運用し、これに企業が参加する方式で構成され
ている。特に組み込みソフトウェア分野では、比較的優位にある海外大学(ジョージア工学)と
協力をしている。
4.1.3 韓国の
韓国の IT 人材の
人材の推移
4.1.3.1 2007 年 IT 人材の
人材の現況
放送通信委員会傘下の韓国情報通信産業協会は、2007 年 11 月 5 日から 11 月 30 日の期間に、
情報通信産業(サービス、機器、ソフトウェア、コンピュータ関連サービス)942 社、放送通信
関連産業(通信工事事業、放送通信関連流通業)497 社、他産業(統計庁の標準産業分類で 20 種
を 6 種に統合した)955 社に、電話、fax、e-mail による調査を行った。
この調査結果は、政府承認統計承認番号第 37,403 号「2007 年放送通信部門人材動向報告書
92
マイクロ電子工学、通信システム、コンピュータ工学、電子システム
141
2008.5」として、同協会の Web 上で公開されている。
ここでは、同報告書から、IT に関連する人材の状況を抜粋した。
(1) 2007 年放送通信人材
93
2007 年の放送通信人材(=放送通信産業従事者)は 149 万 8,000 人であり、2001 年以降年平均
1.2%づつ成長してきた。ちなみに、2007 年の全産業従事者は、1,388 万 6,000 人であり、2001 年
以降年平均 3.0%づつ成長している。
2007 年の放送通信人材が他産業に占める割合は、10.8%であり、2002 年の 11.6%をピークにそ
の後は減少傾向にある。
図表 4-12 年度別放送通信人材(従事者)の推移
(単位:千人、%)
全産業就業者
フルタイム
就業者(A)
放送通信産業
従事者(B)
B/A
年平均
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
21,923
22,326
22,325
22,733
23,025
23,303
23,610
1.2%
11,599
11,884
12,422
12,807
13,106
13,554
13,886
3.0%
1,328
1,376
1,388
1,366
1,426
1,460
1,498(P)
2.0%
11.4%
11.6%
11.2%
10.7%
10.9%
10.8%
10.8%
増加率
注:(P)は暫定値
出典:統計庁 2006 年経済活動調査(4/4 期資料)、2007 年 3/4 期資料
2007 年の放送産業従事者は、対前年比 2.6%(3 万 7,131 人)増加した 149 万 8,164 人であり、
その内、IT 産業(サービス、機器、ソフトウェア、コンピュータ関連サービス)に従事する人は、
対前年比 1.4%増加(1 万 476 人増)した 75 万 5,459 人であった。
図表 4-13 放送通信人材(従事者)の現状
(単位:名、%)
2006 年
2007 年
対前年増加数
対前年増加率
744,983
755,459
10,476
1.4%
放送通信関連産業
171,110
174,197
3,087
1.8%
他産業の電算職
543,940
568,508
24,568
4.5%
合
1,460,033
1,498,164
38,131
2.6%
情 報 通 信 産 業 (IT 人
材)
計
出典:2007 年放送通信部門人材動向報告書
93
放送通信委員会傘下の韓国情報通信産業協会の大枠カテゴリでは「放送通信人材」としており、IT 人材に当たる
のは、この中の情報通信産業従事者である。図表 5-4 参照のこと。韓国語の漢字表記では「人力」
、ここでは労働
者のこと。
142
図表 4-14 1998 年-2007 年までの放送通信人材(従事者)の推移
(単位:人)
産業
放送通信産業
放送通信関連産業
ソフト
放送
放送
通信
通信
サービス 機器
年度
99,270
1999
90,753
2000
98,286
2002
2003
2004
2005
2006
2007
放送
放送
と
通信
通信
関連
関連
工事業
流通業
IT 関連
合計
サービス
他産業の
IT 要員
241,62
112,43
169,02
483,53
1,039,62
1
1
5
3
0
266,81
156,39
511,51
1,080,75
6
0
1
9
360,01
107,22
171,17
546,43
1,265,62
5
7
5
5
7
106,65
170,46
549,98
1,328,35
5
1
4
3
107,79
172,83
563,21
1,375,98
0
9
9
5
106,51
172,49
559,39
1,388,34
0
4
6
5
167,91
539,28
1,365,54
0
0
0
166,93
541,19
1,425,78
0
0
5
171,11
543,94
1,460,03
0
0
3
174,19
568,50
1,498,16
7
8
4
46,171
387,062
56,594
55,289
412,858
60,878
89,716
548,017
63,948
607,908
63,806
639,927
65,049
656,455
65,984
658,350
79,150
88,760
717,665
79,330
87,600
744,983
79,630
91,480
755,459
81,152
93,045
100,61
394,98
112,30
4
5
9
109,40
408,33
122,19
2
3
2
108,19
431,08
117,18
1
3
1
118,17
430,18
109,99
9
1
0
120,34
477,22
120,10
0
3
2
127,65
489,67
127,65
6
3
4
129,82
494,66
130,97
1
6
2
95,512
出典:2007 年放送通信部門人材動向報告書
図表 4-15 2007 年放送通信産業の人材(従事者)の内訳
94
合計
合計
94
1998
2001
ウェア
ソフトウェアとコンピュータ関連サービスのこと
143
(単位:名、%)
年
2006
対前年
2007
増加人数
分野
対前年
増 加 率 構成比
(%)
(%)
放送通信サービス
127,656
129,821
2,165
1.7
17.2
放送通信機器
489,673
494,666
4,993
1.0
65.5
127,654
130,972
3,318
2.5
17.3
744,983
755,459
10,476
1.4
100
ソフトウェアと IT 関連サー
ビス
合計
出典:2007 年放送通信部門人材動向報告書
研究技術職の内訳は、図表 5-16 の通りとなっている。このうち、SI 開発、ソフトウェア開発、
デジタルコンテンツで全体の 44%を占めている。
図表 4-16 2007 年放送通信産業研究技術職内訳
職種
ソフト
SI 開発 ウェア
開発
デジ
タル
コンテ
ンツ
システム
運用
管理
通 信 /
放送
サービ
ス
ハード
ウェア
開発
ハード 放送
放送
ウェア 通信
通信
メンテ 関連
技術
ナンス 教育
経営
合計
分野
放送通信
サービス
放送通信
機器
3,511
9,072
4,097
11,997
26,335
1,170
585
234
1,522
58,523
3,778
18,890
378
4,534
4,193
35,892
6,045
152
1,700
75,562
15,541
36,263
2,790
10,759
797
1,992
7,571
399
3,586
79,698
22,830
64,225
7,265
27,290
31,325
39,054
14,201
785
6,808
213,783
ソフトウェア、
コンピュー
タ関連
サービス
合計
(単位:人)
出典:2007 年放送通信部門人材動向報告書
(2) 放送通信学科と
放送通信学科と放送通信関連学科の
放送通信関連学科の卒業と
卒業と就職状況
就職状況
2007 年の放送通信分野の大学全体の卒業生数は 61,573 人でその内の 62.8%である 39,646 人が
就職した。内訳をみると、放送通信学科は、2007 年度の卒業生 38,679 人の 61.6%の 23,824 人が
就職した。同関連学科の卒業生 22,404 人の 66.2%の 14,822 人が就職した。
就職率が最も高かったのは、Art and Sport Science 系列の 76%であり、最も低かったのは、自
144
然系列の 53.4%であった。
図表 4-17 2007 年大学の放送通信学科と放送通信関連学科の卒業動向
(単位:人)
卒業生対
その他(進学/
就職者
入隊/不明)
23,824
61.6%
14,851
3,279
2,284
69.7%
995
工学系列
4,077
2,809
68.9%
1,268
自然系列
5,219
2,701
51.8%
2,518
9,829
7,028
71.5%
2,801
全体
22,404
14,822
66.2%
7,582
社会系列
3,765
2,284
60.7%
995
工学系列
43,504
26,633
61.2%
13,094
自然系列
5,062
2,701
53.4%
1,060
9,242
7,028
76.0%
780
61,573
38,646
62.8%
22,433
区分
放送通信
学科
放送通信
関連学科
卒業生数
就職者数
工学系列
38,679
社会系列
Art
and
Sport
Science
全体
Art
and
Sport
Science
全体
出典:2007 年放送通信部門人材動向報告書
(3) 放送通信産業における
放送通信産業における採用
における採用・
採用・退職の
退職の現況
2007 年の放送通信産業における採用者と退職者についてみると、採用者は 79,589 人で退職者
は 71,705 人であった。退職率からみると、ソフトウェアとコンピュータ関連サービスが 11.7%と
最も高かった。
図表 4-18 2007 年放送通信産業における採用・退職の現況
2007 年
2007 年 2008 年
退 職 率
従事者
採用者
退職者
(%)
放送通信サービス
129,821
12,361
10,220
7.9
放送通信機器
494,666
46,231
46,205
9.3
130,972
20,997
15,280
11.7
755,459
79,589
71,705
9.5
ソフトウェアとコンピュ
ータ関連サービス
合
計
(注)退職率=(2007 年退職者/2007 年従事者)x 100
出典:2007 年放送通信部門人材動向報告書
145
なお、参考であるが、2007 年 9 月現在の失業者は 756,000 人であり、失業率は 3.1%であった。
図表 4-19 最近の雇用動向と展望
(単位:千人、%)
2002
2003
2004
2005
2006
2007
経済成長率
7.0%
3.1%
4.7%
4.2%
5.0%
4.7%(p)
15 歳以上人口
36,963
37,340
37,717
38,300
38,762
39,232
経済活動人口
22,921
22,957
23,417
23,743
23,978
24,367
経済活動参加率
62.0%
61.5%
62.1%
62.0%
61.9%
62.1%
就業者数
21,169
22,139
22,557
22,856
23,151
23,610
失業者数
752
818
860
887
827
756
失業率
3.3%
3.6%
3.7%
3.7%
3.5%
3.1%
出典:統計庁「経済活動人口調査」
、韓国銀行
(注 1)p は韓国銀行の予測値
(注 2)「2007 年放送通信部門人材動向報告書」の作成時点(2008.5)に他機関の 2007 年年鑑統計
が発表されていなかったため、3/4 期の数値を活用した。
4.1.4
1.4 技術者資格等
韓国ソフトウェア産業協会による技術者等等級説明は、図表 5-20 とおり。
図表 4-20 技術資格基準
技術資格基準
技術者等級
技 術
技能士 1 級
技能士 2 級
技能士補
高級技能者
4 年以上
7 年以上
10 年以上
中級技能者
技能士 1 級
3 年以上
5 年以上
技能士 2 級
技能士補
者
技師 1 級
技師 2 級
技術者
特級技術者
10 年以上 13 年以上
高級技術者
7 年以上
10 年以上
中級技術者
4 年以上
7 年以上
初級技術者
技師 1 級
技師 2 級
初級技能者
出典:韓国ソフトウェア産業協会
146
4.3 タイ
4.3.1 人材育成の
人材育成の概要
2009 年 8 月に内閣承認された ICT マスタープラン II (2009-2013)において、戦略の 1 番に挙げ
られたのが IT 人材育成であり、ソフトウェア開発分野の専門家育成である。ICT マスタープラン
II によると、Ministry of Information and Communication Technology (MICT、情報通信技術省)は、
タイの ICT 人材は約 21 万人(2007 年)と推計している。毎年、高度な技術を持ったソフトウェ
ア人材は約 6,000 人の不足、ハードウェアに係る人材は 20,000 人の不足といわれている。教育機
関からの供給は 1.9 万人程度95と見られており、深刻な人材不足に直面している。このギャップを
埋めるため、SIPA では短期育成コースを実施しており、National Electronics and Computer
Technology Center(NECTEC、国家電子・コンピュータ技術センタ)や Software Park Thailand
でも高度な専門技術のコースを実施している。また、Ministry of Labour(労働省)でも裾野の拡
大を狙った一般的な IT 知識を習得するプログラムを始めるなど、供給不足を克服する取り組みが
多機関で実施されている96。
MICT 政策戦略室は、タイ産業界における ICT 専門技術標準の普及と水準向上を目的として ICT
Professional Institute (情報通信技術職業研究所)を設立するとのことである。ICT に係る国際専門
技術基準の普及により、同研究所は、政府および民間の ICT 産業の人材需要に寄与することにな
るとしており、同研究所設立案は、本年末までに内閣承認を得る計画である。同研究所設立につ
いては、ICT マスタープラン II(2009-2013)に定められており、サスティナブルで安定した経済
の上に知識とイノベーションを有した社会を建設する ICT 人材の育成というマスタープラン戦略
のひとつである。同研究所は、国際専門技術標準が ASEAN 内で相互認証されることにより域内
での ICT 人材の移動を可能にし、地域的競争力強化に貢献をすることになるとみている。計画の
初期段階では、ICT 専門家のスキル標準として 3 つの分野(System Analysis specialists、IT security、
ICT project manager)からはじめることになる。
4.3.2 技術者資格認定制度
2002 年 6 月、日本の経済産業省はタイの Ministry of Science and Technology(MOST、科学技
術省)傘下の National Science and Technology Development Agency(NSTDA、国家科学技術開
発庁)との間で、情報処理技術者試験(基本情報処理技術者、ネットワーク、データベース)の
相互認証について覚書を交わした。NSTDA 傘下の NECTEC が現地での試験実施機関に任命され
ている。これにより、タイにおける技術者の技術資格認定制度が普及することが期待されたが、
2003 年に第一回の公式試験が開催されて以降、一時期活動が停止状態にあった。
これは、転職率が上がることを懸念して産業界が積極的な参加を控えたこと、合格者のインセ
ンティブ(日本での就職機会、日本からのビジネス機会、昇給評価の対象等)がないこと、特に
FE は広範囲な知識を要求されているため専門分野に分かれているタイ技術者には不向きなこと
等が現地関係者から原因として指摘された。
その後、2 年近くのブランクを経て、SIPA の財政的な援助を受けて NECTEC が試験を実施す
95
現地関係者の話によると、国内の大学から輩出されるのが年間 5,000 人程度、これに専門学校からの卒業生を
合わせて、年間 1 万 5,000 人程度がタイ国内における供給規模とみられている。
96
Thailand ICT Indicators 2005, NECTEC
147
る体制が整い、日本の試験制度を移植導入した ASEAN6 ヵ国97が 2006 年 4 月から共通試験を実
施することを契機に、タイでも試験が再開されることとなった。
図表 4-21 情報処理技術者試験の受験者数と合格者数
試験日
試験区分
受験者数
合格者数
2001 年 3 月 18 日
第 1 回 FE トライアル試験
483 人
12 人
2001 年 10 月 21 日
第 2 回 FE トライアル試験
172 人
16 人
2002 年 10 月 27 日
IT Associate
C, Java
500 人
68 人
2003 年 10 月 26 日
IT Professional
Fundamental
83 人
6人
46 人
43 人
31 人
121 人
23 人
129 人
441 人
1,165 人
660 人
222 人
76 人
1人
9人
1人
9人
5人
13 人
189 人
79 人
62 人
24 人
0人
49 人
54 人
48 人
21 人
IT Associate
System Adm
Network
Database
C
C++
Java
2007 年 10 月 28 日
2008 年 4 月 6 日
IT Users
基本情報技術者(FE)
基本情報技術者(FE)
基本情報技術者(FE)
ソフトウェア開発技術者(SW)
トライアル
基本情報技術者(FE)
基本情報技術者(FE)
2008 年 10 月 19 日
2009 年 4 月 26 日
基本情報技術者(FE)
基本情報技術者(FE)
2006 年 4 月 30 日
2006 年 10 月 1 日
2007 年 4 月 1 日
514 人
408 人
40 人
39 人
出典:ITPEC 資料
注:2001 年トライアル試験においては、日本で実施された試験問題の英訳版を使っている。その後の
2003 年第 1 回公式試験においては、NECTEC が独自に問題開発した試験が使用されている。2006
年からはアジア共通試験を採用している。
一方、SIPA では、MICT と Microsoft Thailand 社の 3 者間で覚書を締結し、Thailand Dot Net
プロジェクトの下、マイクロソフト認定アプリケーションデベロッパー(MCAD)の資格取得を推
進するプロジェクトを進めている。Thailand Dot Net プロジェクトとは、タイをウェブサービス
開発の世界拠点にするべく Microsoft 社と共同で取り組んでいるものである。
科学技術省(MOST)の Kalaya Sophonpanich 大臣は、PSP(Personal Software Process)レベ
ル【注1】の開発者を養成することによりタイを世界のトップクラスの BPO センタの一つにす
る計画「PSP イニシャティブ」を本年度から進めると発表している。この計画は Software Park
が実施機関となって推進する。Software Park によると、初年度の予算として 8 百万バーツを取
り全国の 17 大学から 30 人の講師を訓練することから始め、
今後 5 年間に一万人の開発者を PSP
研修プログラムの中に参加させることになる。同研修プログラムに参加する企業・機関は、一人
を研修プログラムに送りこんだ場合は 50%、二人の場合は 70%の補助金が Software Park から拠
97
タイの他は、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、モンゴル。
148
出される。ちなみに、世界的に認定された PSP 開発者の数は 333 人といわれており、タイは初
年度に 100 人の認定 PSP 開発者と 20 人の専門講師の輩出を目指す。尚、タイの CMMI 取得企業
数は 33 社で、東南アジアでは第二番目に多い国である。タイとしては、IT アウトソーシング産
業の成長を経済危機克服へのひとつの対策とする計画である。【注1】米国カーネギーメロン大
学研究機関のソフトウェア工学研究所(SEI)が推奨する個人レベルでの次世代開発プロセス、
今後業界の標準としての拡大が予想される
4.3.3
.3.3 人材市場
(1) IT 関連従事者数
SIPA 及び ATCI の依頼に基づき、NECTEC が National Statistical Office(NSO、国家統計局)
と連携して行った 2005 年のタイ ICT 市場調査(Thailand ICT Market 2005)98によると、2005 年に
おけるタイのソフトウェア技術者数は 34,568 人であった。これに続く 2006 年調査99では、前年
比 4,400 人増の 38,975 人になり、2007 年調査では、約 49,770 人と急増している。2007 年の内
訳は、技術職の従業員が全体の 83.6%を占め、41,620 人である。技術職の従業員で最も多いのが
プログラマ(開発、テスト)の 33.9%で、次いで、システムアナリスト(エンジニアリング、分
析、アーキテクト)の 18.1%、IT コンサルタントの 10.8%の順である。また、上述の従業員の学
歴はその大半が学士卒である。しかしながら現在、ソフトウェア産業は人材不足に直面しており、
事業の成長に大きな影響を及ぼしている。人材不足の内訳は、最も需要が多いのがプログラマで、
全体の需要の 50%を超え、システムアナリストの 22.6%、データベース(DB)管理者の 3.7%が続
いている。MICT や MOST でも高度な専門技術のコースを実施するなど、供給不足を克服する取
り組みが多機関で急ピッチに実施されている。
今後特に注力していく人材育成分野としては、マルチメディアと組込みソフトウェアが挙げら
れる。Thai Embedded Systems Association(TESA、タイ組込みシステム協会)では、日本と連
携して日本語ができる組込みソフトウェアの技術者育成に 2006 年から着手しているほか、SIPA
及び NECTEC と連携し、タイ国内の大学における組込みシステム関連コースの開発を行い、次世
代の技術者育成に取り組む。
98
SIPA によるプレスリリース資料(2006 年 2 月 1 日付け)
SIPA が NECTEC に委託して実施した「2006 年タイにおけるコンピュータ・ソフトウェアの市場調査」
(2006
年 11 月~2007 年 1 月)
(2007 年 3 月 6 日改訂版)
99
149
図表 4-22 タイのソフトウェア技術者の内訳(2005-2007 年)
出典:NECTEC プレスリリースを元に CICC で作成(2008 年 3 月 27 日)
(2) IT 関連人材の
関連人材の給与レベル
給与レベル
タイにおける IT 人材の給与レベルは、初任給が平均 1 万 7,000 バーツ(約 5 万 1,000 円)で、
研修や実務経験を経て 4 年ほどたつと 4 万バーツ(約 12 万円)程度になり、プロジェクト管理
者レベルでは 8 万~12 万バーツ(約 24 万~36 万円)が相場となっている。
Thailand Board of Investment(BOI、タイ投資委員会)資料で引用されている給与標準から一
部抽出した給与標準を図表 5-3 に示す。
図表 4-23 IT 関連従業員の給与水準(1 バーツは約 3 円)
職種
経験年数
給与(バーツ)
Helpdesk Support
3-5
27,000-35,000
Web Application Developer
2-3
25,000-35,000
Network Administrator
5-7+
48,000-60,000
System Engineer/ System
3-5
32,000-40,000
5-7+
38,000-50,000+
Admininstrator
Applications Development Manager
8-10+
70,000-85,000+
CMM/CMMI experience
80,000-100,000+
DBA (Oracle, SQL-Server)
5-7+
55,000-70,000+
System Analyst
5-7+
50,000-60,000
Project Manager
10-12+
90,000-150,000
IT Manager
10-12+
80,000-100,000+
IT Director
15+
160,000-200,000+
出典:Salary Report 2009-2010 抜粋(http://www.ismtech.net)
Copy right 2009,2010 ISM Technology Recruitment Ltd.
150
コラム【泰日工業大学が 2007 年 6 月に開校】
タイの元日本留学生らが運営する公益法人 Technology Promotion Association (TPA、泰日経
済技術振興協会)は、バンコクに Thai-Nichi Institute of Technology(TNI、泰日工業大学)を開
校した。TPA は、元に本留学生および研修生によって設立された公益法人で法人会員数 2,800 社、
専門家会員数 1,300 名を擁している。TNI は、この TPA の専門家ネットワークを活用し、優秀な
産業人材の育成、タイ産業界への供給等を目的に「タイにおける日本型ものづくり実践教育」を
標榜する画期的な大学となった。TNI は、工学部(自動車工学科、生産工学科)、情報技術学部
(情報技術学科、コンピュータ工学科)、経営管理学部(工業管理学科、人材開発管理学科)、
大学院(工業管理修士課程)の 3 学部 1 修士課程を設置し、タイで不足しているエンジニアの育
成、現地に進出した日系企業への人材供給を目指す。2011 年 3 月に、初めて IT 学科より卒業生を
排出するが、すでに求人が 120 ポスト程受け付けつけているとのことである。
授業はタイ語で行われるが、英語や日本語による直接指導も取り入れ、実践的な教育を重視す
る。学生数は初年度 433 人で、3 学年までで 2,213 名の在学生がいる。
151
4.4 ラオスと
ラオスとミャンマー
人口
人口増加率
面積
首都
政治体制
国家元首
議会
政府
日本との時差
民族構成
主要言語
宗教
GDP
一人当たり GDP
GDP 成長率
消費者物価上昇率
通貨
レート
産業
貿易
輸出
輸入
教育制度
識字率*4
平均寿命*5
日本人の入国ビザ要否
当該国の日本人数
日本に滞在している人
数
その他特徴*7
図表 4-24 ラオス・ミャンマーの基本指標
ラオス
ミャンマー
630 万人
5,882 万人
(2008 年 IMF(推定値)
)
(2008 年 10 月)*1
n.a.
n.a.
24 万 k ㎡
68 万 k ㎡
(日本の本州相当)
(日本の約 1.8 倍)
ビエンチャン
ネーピードー
人民民主共和制
軍事体制(暫定政府)
国家主席
上級大将(兼国家平和発展評議会
(人民革命党書記長)
(SPDC)議長)*2
国民議会、一院制
人民議会
首相
首相
-2 時間
-2.5 時間
低地ラオ族(60%)他、計 49 民族 ビルマ族(約 70%)、その他多くの
少数民族
ラオス語
ミャンマー語
仏教
仏教(90%)、キリスト教、回教等
53.74 億ドル
156 億ドル
(2008 年推定値)
(2007 年、IMF 推定)
859 ドル(2008 年推定値)
219 ドル(2006 年、IMF 推定)
7.2%(2008 年推定値)
5.0%(2005 年、世銀資料)
7.4%
43.1% (2007 年、政府公表)
Kip(キープ)
Kyat(チャット)
1 ドル=約 8,500 キープ
1 ドル=5.41 チャット
(2010 年 2 月現在)
(公定レート)
1 ドル=1,010 チャット(2009 年 2
月の実勢レート)*3
農業、工業、林業、鉱業、水力発電 農業
金・鉱物、衣料品、電力、木材製品 天然ガス、チーク、豆類、米、エビ
燃料、工業製品、衣料用原料
機械類、金属/工業製品、原油、電
気機械、紙類
5(義務教育)-3-3-5
5-4-2-(3~6)
68.7%
90%
64.8
61.2
滞在日数 15 日以内は不要
要
530 人
490 人
(2009 年 10 月)
(2008 年 5 月現在)
※日本人会約 300 人*6
2,630 人
5,914 人
(2009 年 8 月)
(2006 年 12 月末)
タイ語とラオス語は類似性が高 い ・小学校から英語教育
・ネット環境がオープンではない
・外資の企業活動にも制約あり
出典:注釈のないものは日本国外務省
*1:ADB、*2:JETRO、*3:JETRO、*4:CIA、*5:国連、*6:CICC ヒアリング、*7:CICC
152
4.4.1 ラオス
4.4.1.1 ラオスの
ラオスの IT 概況
ラオスは 2020 年までに後発開発途上国(LDC, Least Developed Countries)からの脱却を目指
す東南アジアの内陸国100である。大メコン圏(GMS)経済協力に参加しており、また、南北経済回
廊、東西経済回廊において重要な位置を占めることから、同国は「Land Locked」 (内陸)国か
ら「Land Linked」(他国と結ばれた)国に移行中であり、今後の経済発展、社会開発が大いに期
待される。2008 年 8 月には日本-ラオスの投資協定が発効しており、今後、両国間の経済交流が
活発化することが予想される。
タイやベトナム等の周辺国が IT の利活用により発展の加速化を図る中、ラオスは情報化におい
て一歩遅れを取っている。情報インフラの整備は不十分で、IT 市場(2009 年推定で約 64 億円)
も IT 産業(アクティブな IT 企業の数は約 50-60 社程度、IT 機器の販社が中心)も育っていない
状況である。
国としての情報化は、政策立案からインフラ整備まで、国際機関や諸外国からの資金的・技術
的支援を受けて実施されるケースが殆どである。電子政府プロジェクトについては 2006 年 12 月
より中国輸出入銀行の借款を受けて実施されている。
ラオス全土に光ファイバのバックボーン回線が整備されているものの、エンドユーザが利用で
きるアクセス回線の整備は充分ではない。しかしながら、2009 年 12 月の第 25 回 SEA Games(東
南アジアのスポーツ大会)がビエンチャンで開催され、また、ビエンチャン遷都 450 周年イベン
トが 2010 年 10 月に予定されており、これらの国をあげてのイベントを契機に整備は着実に進め
られつつある。
国内の携帯電話の利用は急速に伸びており、2009 年時点の加入者は前年比 15%増の 220 万人
(推定)で、普及率は 34%である。
4.4.1
4.4.1.2 ラオスの
ラオスの IT 担当省庁と
担当省庁と政府の
政府の IT 人材育成計画
IT 担当省としては、National Authority of Post and Telecommunications (NAPT)、National
Authority of Science and Technology (NAST、科学技術省)がある。前者は郵便及び通信を担当し
ており、後者は技術開発や電子政府を担当している。
省庁横断的に IT を議論する組織として Laos National Internet Committee(LANIC、ラオス国家
インターネット委員会)が組織されており、副首相が委員長、NAPT が事務局を務めている。現
在 LANIC の配下に国家のデータセンタ、コンピュータ緊急対応センタ、ドメインネーム管理セン
タ等の機能を置く準備が進められている。
2011 年頃を目処に「ICT 省」の創設が予定されている。
100
ベトナム・中国・ミャンマー・タイ・カンボジアと国境を接している
153
図表 4-25 ラオス IT 担当省庁
Government ICT Organizations in Lao PDR
Lao National Internet
Committee (LANIC)
Policy Makers
Secretary General
Dep. Telecom & Internet,
NAPT
Chairman of LANIC
Vice Prime Minister
Vice Chairman,
Standing
Committee
Minister of NAPT
Member
NAST
Member
Minister of Information &
Culture
Member
Minister of Finance
Member
Minister of Public Security
Vice Chairman,
General Office of
Minister of Defense
Member
Company Representative
Education
National Authority of Posts and
Telecommunications (NAPT)
National Authority of Science and
Technology (NAST)
Inst. of
Posts &
Telecom
General
Office
Inst. of IT
Dep. IT
Dep.
Planning
& Relation
Dep. of
Posts
Dep.
Telecom
& Internet
出典:CICC
2009 年 1 月 26 日、National Authority of Science and Technology (NAST、科学技術省)が起草
した国家 ICT 政策(National ICT Policy)が首相に承認され、公布された。同政策においては人材
育成を優先的に取り組む事項として位置づけている。その内容については、同政策内第 3.1 項「ICT
産業における人材育成の改善」に、以下の通り記されている。
・学校、大学、その他教育機関のレベル向上や組織改善を図り、様々なレベルの学習者に見合っ
た知識を提供する。定期的に制度評価を行う。
・初等、中等、高等教育において ICT を学ぶ機会を増進し、補助する。
・地方に住む者、過疎地に住む者、教育の機会が得られ難い者が ICT にアクセスできる機会を創
出する。日常の労働において ICT を適用し、ICT 開発に参画できるようにする。
・国内において、また海外との知識の移転や交換を促進し、ICT の体験を共有する。
本政策には具体的なアクションプランの記載はなく、また、開発や改善の目安となる具体的な
指標の提示はないものの、ラオス政府の人材育成を重視する姿勢が読み取れる。
4.4.1
4.4.1.3 ラオスの
ラオスの IT 市場規模
地場 IT 業界団体 Lao ICT Commerce Association (LICA)がまとめている"Lao IT Service Market
Survey and Analysis"の 2010 年 2 月の中間報告101によれば、2009 年のラオスの IT 市場は 7,115
億ドル(約 64 億円)である。
101
2010 年 3 月中には最終版が完成する見込みである。
154
図表 4-26 ラオスの IT 市場規模
市場規模の単位:100 ドル
80,000
60%
70,000
50%
60,000
40%
50,000
40,000
30%
30,000
市場規模
年成長率
20%
20,000
10%
10,000
0
2005
2006
2007 2008
2009
0%
市場規模 28,400 42,925 55,250 64,231 71,154
51%
29% 16%
11%
年成長率
出典:LICA "Lao IT Service Market Survey and Analysis(2 月中間報告)"
LICA は今後 2013 年まで毎年 30-40%の成長が見込めると予測している。
4.4.1
4.4.1.4 ラオスの
ラオスの IT 企業の
企業の動向
(1) 企業数・
企業数・事業内容
ここ数年間は IT 企業数に関する調査は行われていないが、2006 年に政府が発表した統計によ
ると、IT に関連した事業を行っている企業は 872 社あり、3,688 人が就労している。1社あたり
の平均従業員数は 4.2 人の計算となる。
但し、872 社という企業数については多すぎる感があり、実際には休眠している企業等もカウ
ントされていると考えられる。
2005 年 7 月に発足した地場 IT 業界団体である Lao ICT Commerce
Association (LICA)に加盟している企業は現在約 30 社あり、これに未加入の企業もあわせ約 50-60
社程度がアクティブに活動しているものと推測される。
100 名以上の従業員を抱えるのは通信企業のみであり、地場 IT 業界団体 Lao ICT Commerce
Association (LICA)企業に加盟している企業については平均約 10-30 名の従業員を抱えている。
地場の IT 企業(通信・ISP は含まない)の多くはハードウェアの販売が売り上げの中心となっ
ている。IT サービス事業自体がまだビジネスとして認知されておらず、ユーザは「運用や保守サ
ービスはハードウェアのおまけ程度」との認識が強い。ラオス国内の大手企業による IT サービス
の地場企業への発注の機会は徐々に増えつつあるが、依然としてベトナム等の海外の企業に積極
的に発注する傾向も見られる。スキルの高いラオス人 IT 技術者は、企業単位ではなく個人として
このような海外の企業のプロジェクトに参画することも多いようである。
ソフトウェア開発企業も存在し、日本に留学経験のあるラオス人が立ち上げた Be Lao 社では日
本からのオフショア開発を受託している。
155
(2) 給与
LICA がまとめている"Lao IT Service Market Survey and Analysis"の 2010 年 2 月の中間報告102
によれば、職種別の給与は以下の通りである。
図表 4-27 IT 部門の職種別給与
単位:米ドル
平均収入(月額) 最低収入(月額) 最高収入(月額)
Graphic Designer
200
83
250
Computer Technician
237
60
833
IT Sales and Marketing Staff
270
60
1,667
Network Engineer
289
60
1,200
Programmer
348
90
1,500
Web Programmer
388
100
1,500
Web Designer
413
100
1,500
Server Administrator
427
83
1,667
IT Trainer
475
100
1,500
Database Programmer / Developer
523
100
1,667
Database Designer
563
200
1,667
Database Administrator
658
150
1,667
System Analyst
662
90
3,333
Telecom Engineer
717
300
1,667
IT Consultant
881
200
3,333
出典:LICA "Lao IT Service Market Survey and Analysis(2 月中間報告)"を編集
ラオスでは金融業界の賃金が最も高く、例えば一部の銀行では大卒の初任給が 300 米ドル月と
なっており、これと比較し IT 業界の給与は高額とは言えない。他方で、ラオスの公務員の月給は
50-80 米ドルであり、これとの比較においては IT 業界の給与は高いと言える。
なお、ラオスの企業では一般的に 3 ヵ月から半年の試用期間を経て本採用が決まる。給与が支
給されるのは本採用以降となる。
4.4.1
4.4.1.5 ラオスの
ラオスの IT 人材育成機関(
人材育成機関(大学、
大学、研修機関)
研修機関)
IT 教育を行っている国立大学としては National University of Laos(NUOL、ラオス国立大学)
があり、私立のカレッジとしては Soutsaka College of Management and Technology、Bouthviset
Collage、KPIT College、Lao American College、 Comcenter College、Ratana College、Sensavanh
College、Quest College がある103。この他、職業技術高等学校でも基礎的な IT スキルを指導して
いる。
ラオス国内の IT 産業を牽引する人材は National University of Laos(NUOL、ラオス国立大学)
より輩出されている。同校はラオス国内唯一の国立大学で、1996 年に既存の学校104を統合する形
102
2010 年 3 月中には最終版が完成する見込みである。
ラオスの教育省は現在のところ私立学校を公式の学位(学士)授与機関としては認定していない。
104
3 つの大学と 8 つの高等教育機関を統合。既存の 3 つの大学とは、国立工科大学、教員養成大学、医科大学、
既存の 8 つの高等教育機関とは、高等法律学校、高等電子専門学校、高等建築学校、高等運輸交通学校、高等
灌漑学校、高等農業学校、高等林業学校、農業センターである。
103
156
で設立され、ビエンチャン市内に複数のキャンパスを有する。メインキャンパスは経済経営学部
工学部はメインキャンパスから離れた Sokpaluang
や文学部等がある Dongdok キャンパスである。
キャンパス105 にある。
NUOL 内に IT に関連する学科は 2 つある。一つは工学部のコンピュータ工学・IT 学科(Faculty
of Engineering, Department of Computer Engineering and Information Technology)、もう一つは理
学部コンピュータサイエンス学科(Faculty of Science, Department of Computer Science)である。
両学科合わせて約 3,000 人の学生が在籍しており、毎年約 450 人が卒業している。
学生数に対しての教職員数は少なく、単純計算すると一人の教員が約 70 人学生を受け持ってい
る状況となっている。
図表 4-28 NUOL の IT 人材
学部名
学科名
Faculty of Engineering
Department
of
学生数
教職員数
卒業生/年
約 1,000 人
14 人
約 150 人
約 2,000 人
約 30 人
約 300 人
Computer Engineering
and
Information
Technology
Faculty of Science
Department
of
Computer Science
出典:ヒアリング(2010 年 3 月)をもとに筆者作成
IT 研修をビジネスとする地場企業も多いが、いずれも小規模で、一般的なアプリケーションソ
フトの使用方法を指導するものがほとんどである。
(1) ラオスの
ラオスの高等教育
ラオスの高等教育は、アジアの中でも低開発の状態にある。その理由は、歴史的・政治的・地
理的・人口的・民族的・文化的・言語的諸要因が複合して関係しており、簡単ではない106。高等
教育の歴史を以下の図表にまとめたが、かつてのフランスの長期間に亘る植民地政策が深く影響
していることは事実である。
図表 4-29 ラオスの高等教育の歴史
1899 以前
一部の指導者教育のためのエリート養成機関が存在
1899 年
フランスの植民地支配
⇒植民地経営にベトナム人を登用することにより、ラオ人を最下層の労働者
として扱う政策
⇒国内に教育制度を確立せず高等教育はベトナムで(反仏運動防止)
1920 年代後半
中等教育機関設立
1949 年
ラオス王国樹立
1954 年
フランスからの独立
⇒エリート教育機関はフランス語による授業を継続
1969 年
国王の命により Sisavang 大学が設立(ラオスの高等教育の始まり)
105
Sokpaluang キャンパスは Friendship Lao-Thai Road 沿い、ドイツ大使館とスェーデン大使館のほぼ中間くら
いに位置する。
106
『ラオスにおける経済・経営関係の高等教育』
(豊田利久)
157
1975 年
ラオス人民民主共和国(社会主義体制)が樹立
⇒5【義務教育】-3-3-(3~6)
⇒初等教育の充実のため教員養成学校が増設(高等教育は後手に)
1984 年
National Polytechnic
Institute(旧ソビエト連邦と旧東ドイツの支援)等が
設立
⇒Sisavang 大学閉校(社会主義化の動き、反王制)
1996 年
⇒既存の学校を統合しラオス国立大学(NUOL)を設立
2001 年
NUOL の第 1 期卒業生
出典:
『ラオスにおける経済・経営関係の高等教育』
(豊田利久)を元に作成
ラオスの IT 分野を含めた優秀な人材の輩出に関し、National University of Laos(NUOL、ラオ
ス国立大学)の担うべき役割は大きい。
(2) ラオス国立大学
ラオス国立大学の
国立大学の入学と
入学と教育課程
National University of Laos(NUOL、ラオス国立大学)には一般入学試験による選考を経た受験
入学と、各県に割り当てられた人数枠に従い、県の推薦に基づき入学をする推薦入学がある。受
験入学と推薦入学の割合は約半々となっている。地場の IT 企業にヒアリングを行ったところ、D
社より「推薦入学制度が同校のレベル向上を阻害している」
「即戦力となる産業人材の育成を考え
て 100%受験入学とすべき」とのコメントがあった。
入学後については、1 年間の基礎教育課程と 4 年間の専門教育を行う形をとっている。ラオス
では教育の地域格差が大きいため、基礎教育課程では学力の水準を一定の程度に引き上げて平準
化することを目的としている。各学部への配属は、1 年間の基礎教育課程を終了したあと、学生
の希望と成績によって振り分けられる。
予算の不足を背景に、教員や教材が質と量の両方の面で不充分107であること、学生の基礎学力
にばらつきがあること等により、卒業後に地場の IT 企業にとって即戦力となり得る人材は非常に
限られている。IT 企業の M 社へのヒアリングによれば「ラオス国内の大学卒の人材が、地場 IT
企業で働くための必要最低限のスキルを身につけるまでに約 2 年はかかる」とのことであった。
(3) ラオス国立大学
ラオス国立大学 IT サービス産業人材育成
サービス産業人材育成プロジェクト
産業人材育成プロジェクト
National University of Laos(NUOL、ラオス国立大学)にて実施している JICA プロジェクト「IT
サービス産業人材育成プロジェクト(2008 年 12 月 1 日~2013 年 11 月 30 日、3.8 億円)」に
おいては、
「研究生コース(ITSC)」「IT 学科内会社(ITBU)」の設置とその適切な運営を通して、
産業界で通用する IT 人材育成を目標としている108。
107
NUOL の Department of Computer Engineering and Information Technology では 1,000 人の学生を 14 名の教
職員が指導している。
(教職員一人当たり 71 名を受け持つ計算)
108
なお、
本プロジェクトが始まる以前の 2003 年 4 月より 5 ヵ年、
短期間で効果的な IT 技術者の育成を図るため、
社会人の高等ディプロマ資格取得者以上を対象とした教育課程として、JICA による技術協力「ラオス国立大学
工学部情報化対応人材育成機能強化プロジェクト(通称「IT ブリッジ・プロジェクト」)
」が実施された。
158
図表 4-30 IT サービス産業人材育成プロジェクト体制図
出典:JICA ウェブサイト
現在、日本人から派遣された講師(JICA の短期専門家)により、研究生コース(ITSC)の担
当教員となる人材に対し、ネットワーク構築、データベース、プログラミング等の実践的スキル
及び指導力強化を目的とした講義が行われている。ベンダ資格である Cisco Certified Network
Associate (CCNA)に対応するコースも開かれている109。
10 名強の受講生のうち 2/3 は ITSC の担当教員、残りは National Authority of Science and
Technology (NAST)や National Authority of Post and Telecommunications (NAPT)の職員である。
ICT/IT 関係庁である両庁は、ラオスの現電子政府計画である「E-government Project Phase 2」の
遂行ため新卒や留学組の人材を大量に採用したものの、実践的なスキルを持つ者が少ないため、
週に数回ペースで指導して欲しいとの要請を受け、受講生を受け入れている。
109
受講者のうち数名がベンダ資格である Cisco Certified Network Associate(CCNA) を受験するためバンコク
に渡った。受験の都度バンコクに渡るのは大変なので、認定試験の運営管理機関の申請を行うことを検討してい
る。
159
写真 講義の様子
2010 年 3 月撮影
教材のほとんどは英語で表記のものを使っており、一部タイ語のものもある110。
本プロジェクトのチーフアドバイザーによれば、日本の IT スキル標準(ITSS)を意識したカリ
キュラム策定や、将来的に講義に情報処理技術者試験(ITEE)に合した内容を取り入れることも
あり得るが、ITSS については職種/専門分野がラオスの IT 産業の現状とマッチしていないこと、
ITEE については現在の学生のレベルを考えると内容が高度過ぎるとのことである。
研究生コース(ITSC)の運営が軌道に乗り、受講生が卒業を迎えた際、IT 産業に従事できるよ
うな仕組みが現在検討されている。ラオスではこれまで信頼性の高い IT 産業の調査が行われてい
なかったこともあり、まずは現状を把握する意味で、JICA から地場 IT 業界団体 Lao ICT
Commerce Association (LICA)に調査が委託された。この最終報告書が 3 月中旬に提出される予定
で、この調査結果をベースに IT 分野における産学連携が関係者間で議論される見込みである。
4.4.1
4.4.1.6 海外との
海外との IT 人材育成連携
「1.5 ラオスの IT 人材育成機関(大学、研修機関)」に記載した IT を教えている私立カレッジ
のうち数校は、海外の教育機関との連携のもとに創設されている。Vientiane College はオースト
ラリアの Monash 大学、Lao American College は米国及びタイの大学、Quest College はフィンラ
ンドの高専との連携において設立された。
この他、中国、韓国、インドが主に IT 関係庁の政府職員を対象とした IT 研修を行っている。
4.4.1
4.4.1.7 ラオスの
ラオスの IT 人材の
人材の就職動向
National University of Laos(NUOL、ラオス国立大学)工学部コンピュータ工学・IT 学科長に
よれば、同学科の就職率そのものは 100%に近いとのことだが、ラオスの IT 産業規模が小さいこ
ともあり、現状では IT に関係する職に就ける者は限られているとのことである。
しかしながら、地場 IT 業界団体 Lao ICT Commerce Association (LICA)が、国内 24 社を対象に
行った調査によれば、2008 年から 2009 年の IT 部門のスタッフは 48%増加しており、今後、IT
市場の増加(LICA の予測では 2013 年まで毎年 30-40%増)に伴い、IT 人材の需要は高まってく
るものと考えられる。
110
ラオス語とタイ語は同一言語の地域変種の関係にあるため、両言語の共通部分を使うことによってかなりの程
度の意志疎通が可能である。
160
図表 4-31 IT 部門のスタッフ数(国内 24 社に調査)
600
60%
512
500
48%
400
40%
345
316
50%
300
30%
200
20%
100
IT部門のスタッフ数
増加率
10%
9%
0
0%
2007
2008
2009
出典:LICA "Lao IT Service Market Survey and Analysis(2 月中間報告)"
前述の通り、ラオス国内の大学卒の IT 人材が地場 IT 企業で働くための必要最低限のスキルを
身につけるまでに約 2 年はかかるといった傾向があることから、地場の IT 企業は海外留学した者
を好んで採用する傾向にある。
地場 IT 企業の D 社によれば、就職後 2-3 年で離職する者も多いが、ラオス国外に出ることは稀
とのことである。
4.4.1
4.4.1.8
求められる IT 人材(
人材(職種や
職種やスキル等
スキル等)
地場 IT 業界団体 Lao ICT Commerce Association (LICA)の調査によれば、ラオスの IT 企業や企
業の IT 部門が考える、今後最も必要となる IT 人材の職種は、ネットワーク技術者であった。そ
の他は以下の図表の通りである。
図表 4-32 職種別 IT 人材ニーズのランキング
1
Network Engineer
2
Computer Technician
3
It Sales Marketing Staff
4
Server Administrator
5
Web Designer
出典:LICA "Lao IT Service Market Survey and Analysis(2 月中間報告)"を編集
地場 IT 企業の C 社によれば、大卒のラオス IT 人材の一般的傾向として「指示されたことはし
っかりやるが応用力に欠ける」とのことで、仕事の中で応用力を身につけるよう指導していると
のことである。
161
4.4.1
4.4.1.9 IT 技術者認定試験/
技術者認定試験/資格
ラオスには IT 技術者を認定する国家資格はない。
(財)国際情報化協力センターが発行した『「カ
ンボジア、ラオスの情報化の取り組みに対する IT 人材育成を中心とした我が国からの技術協力の
可能性に関する調査」報告書(平成 19 年 2 月発行)』によれば、ラオス政府・産業界ともに日本
の情報処理技術者試験に即した国家 IT 技術者認定の導入に概ね賛成している。なお、約 5%ほど
が試験導入に消極的であり、その理由としては、
「IT 未発達のラオスには時期尚早」「合格する自
信がない」
「受験料の支払いが困難」等を挙げている。
ベンダ資格についてはほとんど浸透していないと推測される。
(財)国際情報化協力センターが
発行した『
「カンボジア、ラオスの情報化の取り組みに対する IT 人材育成を中心とした我が国か
』によれば、ラオスの大学生、
らの技術協力の可能性に関する調査」報告書(平成 19 年 2 月発行)
IT 技術者、政府 IT 関係者計 573 名を対象に行ったアンケート調査においてベンダ資格である
Cisco Certified Network Associate (CCNA)の取得者は計 3 名と非常に少なかった。また、2009 年
12 月に行った地場 IT 企業 3 社(D 社、C 社、M 社)に対するヒアリングでも、いずれの社にも
ベンダ資格保有者はいなかった。
現在、National University of Laos(NUOL、ラオス国立大学)の IT サービス産業人材育成プロ
ジェクトにて CCNA の受験指導を行っているものの、受験に必要な知識やノウハウを指導する学
校、教員、教材が不足していること、資格取得にかかる費用(テキスト代、研修代、受験料、渡
航費)に対する資格取得のメリット(就職や昇給)が明確になっていないこと、ラオス国内では
受験ができないこと等が取得者の少なさに繋がっていると考えられる。NUOL では CCNA 受験の
都度バンコクに渡るのは大変なので、認定試験の運営管理機関となるための申請を行うことを検
討中である。
162
4.4.2
4.4.2 ミャンマー
4.4.2
4.4.2.1 ミャンマーの
ミャンマーの IT 概況
特殊な政治事情を抱えるミャンマーでは、インターネットの接続やコンテンツの閲覧が政府に
よって厳しく制限されている。周辺国が IT の利活用により社会経済の発展の加速化を図る中、パ
ソコンの普及率は 100 人当り 0.88 台(ITU 2007 年)、インターネット利用者数は同 0.08 人(ITU
2007 年)に留まる等、後れを取っている。政府の IT 化度合いを示す United Nations(UN、国際
連合)の”E-Government Readiness Index 2008”においても、全 192 ヵ国中 144 位と低いランク
に位置づけられている。
欧米先進諸国から経済制裁を受けている同国では、アジア諸国(中国、インド、タイ、日本等)
との協力関係を重視しながら情報化を推進している。2000 年 11 月に”e-ASEAN Framework
Agreement”に調印して以降は、域内先進国から支援を受けながら情報化を進めてきたが、名実と
もに情報化をトップレベルで牽引してきた Khin Nyunt 首相(当時)が 2004 年 10 月に更迭され
て以降は失速気味である。しかしながら、2010 年中に総選挙(20 年ぶり)が予定されており、
新政権が発足することによって国の情報化や IT ビジネスが加速する可能性があるとして、一部の
地場 IT 企業等は大きな期待を寄せている。
ミャンマー国内で日本、シンガポール、インド、タイ、中国等の海外企業からソフトウェアや
システム開発を請け負い、着実に実績を上げている企業もある。ミャンマーには伝統的に勉強熱
心な風土があり、IT 技術者は新しい技術の習得や資格の取得に意欲的である。
2008 年 10 月、マンダレーから約 43Km の Pyin Oo Lwin 管区に Yadanabon Cyber City が公式
に開所し、今後の発展が期待される。
写真 Yadanabon Cyber City のイメージ
出典:MCF 入手資料
163
4.4.2
.4.2.2 ミャンマーの
ミャンマーの IT 関係機関と
関係機関と政府の
政府の IT 人材育成計画
(1) ミャンマーの
ャンマーの IT 関係機関
ミャンマーの IT 関係機関は以下の図表の通りとなっている。
図表 4-33 ミャンマーの IT 関連機関
<政府機関>
<主要な教育機関>
MCSDC(審議会)
MCPT(省)
UCSY
MoST(省)
コンピュータ
カレッジ
(全24校)
UCSM
MOE(省)
YTU
MTU
e-National Task Force
e-National Task Force作業部会:
Legal Infrastructure/ICT Infrastructure/IT Education/IT Application/ICT Standardization/ICT Liberalization
PTU
UY
<民間部門>
MCPA(協会)
工科カレッジ(17校)
(Dep. of IT)
MCF(連盟)
MCIA(協会)
MCEA(協会)
SPDC:State Peace and Development Council 国家平和発展評議会
MCPT:Ministry of Communications, Posts and Telegraph 通信郵便電信省
MoST:Ministry of Science and Technology 科学技術省
MOE:Ministry of Education 教育省
MCSDC:Myanmar Computer Science Development Council ミャンマーコンピュータ科学開発審議会
UCS(Y/M):University of Computer Studies, (Yangon/Mandalay) ヤンゴン/マンダレーコンピュータ大学
(Y/M/P)TU:(Yangon/Myanmar/Pyay) Technological University ヤンゴン/マンダレー/ピャヤイ工科大学
UY: University of Yangon
MCF:Myanmar Computer Federation ミャンマーコンピュータ連盟
MC(P/I/E)A:Myanmar Computer (Professionals / Industry / Enthusiasts’) Association ミャンマーコンピュータ(専門家/産業/学生)協会
出典:CICC
ミャンマーの情報化に関する最高意思決定機関は Myanmar Computer Science Development
Council (MCSDC、ミャンマーコンピュータ科学開発審議会)である。議長は Thein Sein 第一書記
が務め、関係閣僚、政府機関代表者、産業界代表者等で構成される。
IT 関係庁としては、通信、郵便、電信分野を所管する Ministry of Communications, Posts and
Telegraphs(MCPT、通信郵便電信省)、技術分野及びその教育を所管する Ministry of Science and
Technology(MoST、科学技術省)、教育における IT 活用を推進している Ministry of Education(MoE、
教育省)がある。この他、政府機関として、e-National Task Force(e-NTF)が組織されており、2000
年 11 月に ASEAN 加盟国で署名合意された e-ASEAN Framework Agreement の確実な推進と実行
を目的として活動している。
民間組織(同国では NGO という位置づけ)としては、科学技術庁の所管の Myanmar Computer
Federation(MCF、ミャンマーコンピュータ連盟)がある。MCF はミャンマーコンピュータ科学
開発法に基づき 1998 年 10 月 15 日に設立され、ミャンマーIT マスタープランの起草や実際のイ
ンプリメンテーションを担っている。MCF 傘下には、Myanmar Computer Professional Association
(MCPA、ミャンマーコンピュータ専門家協会)
、Myanmar Computer Industry Association(MCIA、
164
ミャンマーコンピュータ産業協会)、Myanmar Computer Enthusiast Association(MCEA、ミャン
マーコンピュータ支持者協会)がある。
教育機関については、
「2.5
ミャンマーの IT 人材育成機関(大学、研修機関)
」に詳しく記載
する。
(2) 政府の
政府の IT 人材育成計画
ミャンマーにおける公式な IT 人材育成計画はない。2002 年 1 月、2010 年までの情報化開発計
画「Myanmar IT Master Plan」が Myanmar Computer Science Development Council (MCSDC、
ミャンマーコンピュータ科学開発審議会)で承認されたが、より具体的な計画が必要との認識のも
と、e-National Task Force が韓国の Korea Information Society Development Institute (KISDI)
の協力を得て 2006 年から 2010 年をカバーする「Myanmar ICT Development Master Plan」の草
案を完成させた。同マスタープランにおいて、ICT 人材開発を含めた 8 分野について、現状分析
と今後取組むべきアクションプランがまとめられているが、これが MCSDC において未だ承認さ
れていない。
4.4.2
4.4.2.3 ミャンマーの
ミャンマーの IT 産業/
産業/市場規模
ミャンマーの IT 産業や市場規模に関する統計は発表されていない。
4.4.2
4.4.2.4 ミャンマーの
ミャンマーの IT 企業数と
企業数と事業内容
Myanmar Computer Federation(MCF、ミャンマーコンピュータ連盟)傘下の Myanmar
Computer Industry Association(MCIA、ミャンマーコンピュータ産業協会)にはミャンマーの主
要な IT 企業が加盟している。メコン総合研究所(GMI)によれば、2007 年ごろに MCIA の加入企
業の数がかなり減少していたが、2009 年 2 月時点では、幾分盛り返し、420 社が加盟している。
図表 4-34 MCIA 参加の企業数の推移(MCF へのヒアリングの結果)
MCIA 傘下
傘下の企業数の
傘下の企業が採用する
企業数
技術者総数(推定)
年間の大学新卒者数(推定)
2007 年 2 月
300 社以上
4~5,000 人
150~200 人
2007 年 12 月
285 社
3,000 人
約 100 人
2009 年 2 月
420 社
3,500 人
約 100 人
出典:メコン総合研究所(GMI)
大手の IT 企業には 200 名程度の従業員がいるが、多くの企業は 10 名-20 名である。外資系 IT
企業は、シンガポール、インド、タイ、中国等の企業が進出しているが数は少ない。日系 IT 企業
は 1 社ある。
4.4.2
4.4.2.5 ミャンマーの
ミャンマーの IT 人材育成機関(
人材育成機関(大学、
大学、研修機関)
研修機関)
(1) ミャンマーの
ミャンマーの大学進学
ミャンマーの大学進学率は 10%以下と言われている。高校の最終学年(11 年生)に受ける学年
165
末試験が、高校卒業試験であるとともに、各管区・州(日本での都道府県に相当)ごとに統一さ
れた試験問題を使用する大学入学統一試験の機能も兼ね備えている。
ミャンマーの大学進学は「学部選択制」となっており、地域ごとに学部にランク付けがつけら
れており111、優秀な人材から進学できる学部が決まる仕組みになっている。概ねどの地域でも医
学部のランクが高く、男女ともに入学を志望する者が最も多いが、IT 系学部のランクもそれに次
いで高いことが多く、特に女性の人気が高い。
ミャンマーの優秀な頭脳が IT 分野に集まっており、
また、IT 技術者の社会的ステータスは周辺国以上に高いと言えるであろう。
(2) IT 教育機関
ミャンマーには科学技術省傘下の University of Computer Studies, Yangon(UCSY、ヤンゴンコ
ンピュータ大学)、University of Computer Studies, Mandalay(UCSM、マンダレーコンピュータ
大学)を中心に、計 24 のコンピュータ大学がある。また、教育省傘下に Yangon University に IT
学部が存在する。
UCSY と UCSM の学生数はそれぞれ約 4,300 人と約 3,200 人で、両校が実施するディプロマ課
、修士
程は 1 年 4 ヵ月、学士課程は 3 年、優等学士(Bachelor of Honor)課程は 1 年(学士取得後)
課程は 2 年となっている。UCSY では 2001 年 5 月から 3 年の博士課程も開設している。
UCSY/UCSM がソフトウェア技術者を主に育成する高等教育機関であるのに対し、ハードウ
ェア技術者を育成する高等教育機関として、工科大学(Institute of Technology)がヤンゴン、マンダ
レー、ピーの 3 ヵ所にある。各校の IT 学部には 100 人程度が在学している。
さらに全国 17 ヵ所に工科カレッジがあり、各校 30 名程度の学生が就学している。
いずれの教育機関も教員不足やパソコン設置台数不足等の理由から、座学中心の授業となって
おり、実習が少ない傾向がある。
民間訓練センターはヤンゴンだけでも 100 校以上存在しており、一般的なアプリケーションソ
フトの使用方法の学習や資格取得コースが開講されている。Knowledge Management and
Dedication(KMD 社)と Myanmar Computer Co., Ltd.(MCC 社)は 2 大勢力で、両社とも英国
Guildhall University との提携により、同大学の学士号が取得できる。その他独自の Certificate コ
ースや Vendor Certificate 準備コースも指導しており、多くの学生が学んでいる。
MCC 社では 2009 年に Yadanabon Cyber City(マンダレーから約 43Km)内に MCC Training
Institute を立ち上げた。タイの Asian Institute of Technology(AIT)やシンガポールの National
University of Singapore 内の Institute of Systems Science(ISS)等、アジアのメジャーな IT 研究
機関との連携を特色としている。AIT とは Telecommunication の学士号取得に関する提携を結び、
最初の 2 年間は MCC Training Institute、残りの 2 年間は AIT に通うことでこれを取得できるよう
になる。
(1)UCSY-日本「ソフトウェアおよびネットワーク技術者育成プロジェクト」
University of Computer Studies, Yangon(UCSY、ヤンゴンコンピュータ大学)にて実施されて
いる JICA プロジェクト「ソフトウェアおよびネットワーク技術者育成(2006 年 12 月 11 日から
2009 年 12 月 10 日、約 4.8 億円)
」は、同学内に設置された Information and Communication
Technology Training Institute (ICTTI、情報通信技術訓練センター)の組織・機能の確立・強化を
通じ、質の高い修了生の継続輩出を目的としている。本プロジェクトの終了は 2009 年 12 月 10
日であったが、期間延長が決定し、2011 年 10 月 23 日まで継続される。
111
学部の順位は年度途中も含めて適宜見直される
166
写真 ICTTI の外観
2010 年 3 月撮影
写真 実習の様子
2010 年 3 月撮影
(2)UCSY-インドとの Centre for Enhancement of IT Skills (CEITS)プロジェクト
2008 年 10 月より、ミャンマー政府とインド政府による G-G プロジェクトとして、Centre for
Enhancement of IT Skills (CEITS)
112
が UCSY 内に設置された。
「Hi-end Training」
「Telemedicine
Project」の 2 つを活動の柱としている。キャンパス内の建物 1 つが本プロジェクト遂行のために
確保されている。研修実施のため、パソコン等の機材がインドより供与113されている。
112
113
http://www.cdacmohali.in/default.aspx?pid=86&lang=en-us
中古品のミャンマーへの輸出は不可のため、すべて新品である。
167
写真 インドから供与された HP 社の機材
2010 年 3 月撮影
「Hi-end Training」の研修内容はソフトウェア技術主体となっており、研修期間は 6 ヵ月弱で
ある。講師としてインドの Centre for Development of Advanced Computing(C-DAC)から 2 名
のインド人が派遣されている。研修生数は ICTTI よりも多い。
「Telemedicine Project」 については、C-DAC がインド政府の資金援助を受けて開発した遠隔
医療監視システム「Sanjeevani」を導入している。
図表 Sanjeevani のロゴ
出典:C-DAC ウェブサイト
ミャンマーに 10 ヵ所設置された CIC (Community Information System)を衛星通信を使って接続
し、遠隔医療を行っている。
168
写真 学内にある VSAT 地球局(米 COMSAT 社)
2010 年 3 月撮影
4.4.2
4.4.2.6 海外との
海外との IT 人材育成連携
人材育成連携
「2-5. ミャンマーの IT 人材育成機関(大学、研修機関)
」に記載した日本やインドからの G-G
ベースの支援がある他に、財団法人海外技術者研修協会(AOTS)
、日本開発サービス(JDS)
、イ
ン ド の Indian Technical and Economic Cooperation ( ITEC )、 シ ン ガ ポ ー ル の Singapore
Cooperation Programme(SCP)等が招へい研修を行っている。
IT 研修を行う地場の大手(M 社、K 社)は、イギリスの大学と提携を行っている。
4.4.2
4.4.2.7 ミャンマーの
ミャンマーの IT 人材の
人材の就職動向
ミャンマーには小規模企業が多く、また IT 産業全体も小さい。Myanmar Computer Industry
Association(MCIA、ミャンマーコンピュータ産業協会)の会員企業が採用する年間の大学新卒者
数(推定)が年間約 100 人程度であることから、IT を専攻した学生が国内で IT 分野での就職先
を探すのは非常に困難であると言える。
メコン総合研究所(GMI)が 2008 年 12 月から 2009 年 2 月の間に ICT 企業に対して行ったヒ
アリング結果では、比較的恒常的に採用をしている大手企業 2 社の新規雇用者数は年間 10%(新
規 5%、経験者 5%)程度となっている。但し、企業規模が年 10%成長している訳ではなく、退職
者も同程度発生しているのが現状である。
ICT 分野の年間新卒者雇用数を 5%と仮定した場合、上記 MCF 傘下の企業で年間 100 人見当の
新卒者の雇用需要が見込まれるものと想定される。ただしミャンマー国では、学生の卒業時期に
合わせた就職シーズンがある訳ではなく、大学がその卒業生に就職の世話をする形も仕組みとし
てはなく、以下に記す形での就職が一般的となっている。
・新聞・大学や MICT パーク等に公示される企業からの求人広告への応募
・民間トレーニングセンターでの訓練期間中に優秀な学生を企業が採用
・縁故採用
2008 年頃から、ミャンマーの IT 技術者の間にシンガポールに転職するという一つのトレンド
169
が発生し、今もなお継続している。この傾向は入社数年目の若い技術者だけでなく、中堅技術者
の間にも見られる。地場の IT 研修企業の N 社によれば、実際にシンガポールに渡って職に就ける
技術者は半数程度のようであるが、これは技術者のスキルが基準を満たしていないことが背景と
なっているようである。地場の IT 研修企業の M 社によれば、
「不況になればなるほど、比較的安
価な人件費で雇えるミャンマー人技術者需要が高まっており、シンガポール側のニーズは増える
一方」とのことである。
4.4.2
4.4.2.8 求められる IT 人材(
人材(職種や
職種やスキル等
スキル等)
Myanmar Computer Federation(MCF、ミャンマーコンピュータ連盟)にヒアリングを行った
ところ、今後は海外からのオフショア開発受託に力を入れる方針とのことで、プロジェクトマネ
ージャーやブリッジシステムエンジニアのニーズが高い。
他方で、インターネットをビジネスツールとして使用するソフトウェアのオフショア開発のよ
うな仕事は、政府の都合により一方的に接続サービスが中断されてしまうミャンマーでは、当面
の間は拡大が難しいとの見方もある。
4.4.2
4.4.2.9 IT 技術者認定試験/
技術者認定試験/資格
2002 年 11 月、日本の経済産業省はミャンマーの e-National Task Force(e-NTF)との間で、
基本情報技術者の相互認証について覚書を交わした。これに基づき、2003 年 1 月にミャンマーに
て第 1 回 Fundamental Engineer(FE)試験が実施された。以後、原則毎年 2 回、FE 試験が実施
されている。
図表 4-35 FE 試験のミャンマー受験結果(2005 年 5 月まで)
受験者数
合格者数
2003 年 1 月
133
5
2003 年 11 月
168
8
2004 年 5 月
172
11
2004 年 11 月
115
4
2005 年 5 月
55
4
出典:情報処理技術者試験センター(JITEC)
2006 年 4 月より、FE 試験についてフィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、
モンゴルの 6 ヵ国とアジア共通統一試験(IT Professionals Examination)の実施を開始した。こ
の試験は、同じ日の、同じ時間に、同じ問題を使用し実施する共通統一試験である。
図表 4-35 FE 試験のミャンマー受験結果(アジア7ヵ国共通試験)
申込者(人) 受験者(人) 合格者(人) 合格率(%)
2005 年 秋試験(共通試験)
76
74
4
5.4
第 1 回共通試験 2006 年 4 月
110
93
4
4.3
第 2 回共通試験 2006 年 10 月
80
78
3
3.8
第 3 回共通試験 2007 年 4 月
実施なし
第 4 回共通試験 2007 年 11 月
156
130
10
7.7
第 5 回共通試験 2008 年 4 月
235
196
6
3.1
170
第 6 回共通試験 2008 年 10 月
162
127
8
6.3
第 7 回共通試験 2009 年 4 月
88
65
10
15.4
出典:ITPEC ウェブサイト
2009 年 FE 春試験(4 月)の国別の合格率は以下の図表の通りである。
図表 4-36 2009 年 FE 春試験のミャンマー受験結果(アジア7ヵ国共通試験)
国名
申込者(人)
受験者(人) 合格者(人) 合格率(%)
Malaysia
70
31
1
3.2
Mongolia
20
19
3
15.8
Myanmar
88
65
10
15.4
Philippines
586
555
70
12.6
Thailand
521
408
39
9.6
Vietnam
376
334
73
21.9
Total
1661
1412
196
13.9
出典:ITPEC ウェブサイト
ミャンマーは、情報処理技術者試験を参考に、より国内の実情に合致した独自の認定試験とし
て Myanmar Computer Professional Association(MCPA、ミャンマーコンピュータ専門家協会)
認定試験を 2002 年に導入したが、2006 年 12 月の試験を最後に廃止された。この試験には「基
本情報技術者試験(MCPA-FE)」
「ソフトウェア開発技術者試験(MCPA-SD)」
「ネットワーク技術者
試験(MCPA-NE)」の 3 種類があり、いずれの試験においても、合格者は A、B、C の 3 ランクに
分かれており、このうち MCPA-FE 区分では、ランク A の合格者を FE と同等レベルと位置づけ
ていた。
2004 年 4 月、民間企業の Global Technology 社は、米国 Thomson Prometric 社(マイクロソフ
ト、オラクル、シスコ、IBM といった大手 IT 企業の認定試験をコンピュータベーストレーニング
(CBT)で提供している最大手)との間で Authorized Prometric Testing Center(APTC、認定試
験センタ)の運用契約を締結し、ミャンマー初となるオンラインでのベンダ認定試験の実施が認
められた。同年 7 月、同社はヤンゴンに APTC を正式にオープンさせている。
171
4.4.3
4.4.3 まとめ
4.4.3
4.4.3.1 ラオス・
ラオス・ミャンマーの
ミャンマーの IT 人材比較
IT 市場規模
市場規模
企業数と
事業内容
IT 産業従事者数と職種
IT 人材の給与
政府の IT 人材育成計画
IT 人材育成機関
(大学、研修機関)
あり(但し、具体性に欠く)
国内
海外の商
業研修機
関
毎年の IT 人材輩出(卒業)数
IT 産業への就職率
離職の傾向
技術者認定試験/資格
必要な人材
ラオス
711 億ドル
約 872 社(登録ベース)
約 50 社(実際)
日系なし
通信・ISP が大手
1 社平均 5 名
大卒初任給 100USD/月、
2 年目で 150-200USD/月程度
10 大学(短大も含む)
主要機関は
ラオス国立大学工学部
参入なし
ミャンマー
n.a.
約 300 社(実際)
日系 1 社
(通信・ISP は国有)
1 社平均 20 名
大卒初任給
最初の数ヵ月は無給
-60 ドル、その後、能
力に応じてアップ
なし(政府未承認の
計画(案)あり)
24 大学
主要機関はヤンゴン
コンピュータ大、ヤ
ンゴン大学 IT 学科
参入なし
(提携はあり)
3,000+α 人
4,000-5,000 人
10-30%
限定的
・約 3 年で転職
・約 2-3 年で転職
・転職先は国内 IT 企業かその ・転職先は
他の産業
シンガポール
・ITEE 未導入
・ITEE 導入
・ベンダ資格取得者は限定的 ・ITEE の内容を模し
た MCF の独自試験
の実施歴あり
・ベンダ資格が人気
・基礎のしっかりした人材
・即戦力となる人材
・即戦力となる人材
(特にオフショア)
・教職員人材
172
4.3 インド
インド
4.3.1 IT 関連人材育成の
関連人材育成の状況
4.3.1
3.1.1 人材育成の
人材育成の概要
インドの IT 産業発展の大きなきっかけとなったのは、主に米系企業が英語を解する低廉
で豊富なインドの人材に目をつけ、次々と進出したことであった。現在、この「低廉」で
「豊富」な IT エンジニアの存在に関しては疑問を呈する声が多くなりつつある。
「低廉」か否かに関しては、インドにおけるスキルの高い IT エンジニアの給料の上昇率
が高くなっていることから、もはやインドでの雇用が全て低廉であるとは言えない状況と
なっている。NASSCOM によると、インドにおける IT 技術者の給料上昇率は 10-15%/年で、
場合によっては 50%/年となっている。一方ムーディーズの試算によると米国の IT 技術者の
給料上昇率は 3%/年である。インドで雇用する IT 技術者の給料が、米国における同レベル
の技術者の給料の 75%程度にまであがり、時差による作業の遅れや本社スタッフの出張費用
などを考えると、インドはコスト面から見て発注先としての選択肢ではなくなりつつある
という意見もある114。
「豊富」なエンジニア層に関しては、「今インドに何人のエンジニアがいるかではなく、
どれほど雇えるエンジニアがいるか、が問題である」と指摘されている。つまり、エンジ
ニアはいるが、雇えるエンジニアが少ないのである。インドは、毎年約 50 万人の工学系の
高等教育卒業生を輩出するが、経験を積んだスキルの高い技術者は、需要の増大にも関わ
らず絶対数が少なく給料上昇率も高い。一方で、エントリーレベルの技術者は確かに多く
給料も安いが、高度化する技術需要に合わない、という状況が生まれているのである115。
こうした業界に必要とされている人材の不足については、政府も既に認識し、解決のた
めの手段を施そうとしている。2000 年に設立された「IT 人材開発対策本部(Task Force on
Human Resource Development in Information Technology)」は、2003 年 12 月、インドに
おける IT 人材開発に関する長期戦略提言書を提出したが、同提言書作成過程において、問
題は教育機関から輩出されるエンジニアの数ではなく、これら教育機関で教授される内容
の質であると指摘した。これを受け、第 11 次 5 ヵ年計画立案のための IT 作業部会は、IT
人材需給ギャップ解消の鍵となるのは、適切な技術を教授する能力と、明確なスキル基準
の導入である、と指摘した上で、高等教育機関における教育の質の改善と、卒業生に職業
訓練を施す「就職予備校(Finishing School)」など様々な提言を行っている116。こうした中、
後述のとおり大学、州政府や民間企業の中には、いち早く就職予備校の設立に動いている
114
115
116
2007 年 6 月 7 日付 Financial Express および 2007 年 7 月 4 日付 The Wall Street Journal Asia
同上
『Eleventh Five Year Plan 2007-2012 Information Technology Sector』
173
ところもあり、今後インドでは就職予備校の増加が見込まれている。また、産業界からは
必要な人材育成を自ら行おうと大学を設立したり、大学と提携してカリキュラム開発を支
援したりする動きも出てきている。
4.3.1.2 高等教育機関による
高等教育機関による人材育成
による人材育成
インドには 416 の大学、20,677 の専門学校(College)があり、1,161 万人の学生が学んで
いる117。2007 年 9 月にインド工科大学ボンベイ校が発表した調査によれば、工学系高等教
育機関の数は 1,562 校で 2006 年 9 月の入学者数は 55 万 986 人となっている。また、同調
査レポートの試算によれば、工学系学部(B.Tech, B.Engineering)の卒業生はインド全体で
23 万 7,000 人、工学修士(Master of Engineering)課程卒業生は 3 万人程度だという。この
うち、どれくらいが IT 関係かは同調査では言及していないが、2001 年の工学系大学入学者
数 22 万 6,484 人のうちコンピュータ関係は 7 万 3,417 人と全体の 32.4%だったので、同程
度の割合と仮定すると、工学系卒業者数(学士+修士)26 万 7,0000 人のうち約 8 万 2,400
人が IT 系であると推察される。
図表 4-37 工学系学部卒業生の推移
出典:IIT Bombay “Engineering Education in India” September 2007
117
教育省アニュアルレポート 2007-08 年
174
図表 4-38 工学系修士卒業生の推移
出典:IIT Bombay “Engineering Education in India” September 2007
これらの高等教育機関の最高峰として IT 人材を輩出しているのは、インド科学大学院大
学(Indian Institute of Science – IISC)、インド工科大学(Indian Institute of Technology
– IIT)などである。IIT については多くの文献でも紹介されているが、そのレベルは非常に
高いことで知られている。
IIT は IISC をサポートする「国家的重要性を持った研究教育機関」として、MIT をモデ
ルにインド国内に 7 つのキャンパスを 1950 年代以降開校している。IISC の財政上の責任を
担っているのは中央政府である。多くの卒業生は、大手ソフトウェア企業(TCS、WIPRO、
Infosys など)に就職し、企業も奨学金や研究助成金の申し出を大学に積極的に行っている
118
。
これらに加え、1998 年に IT 産業界からの要請や、より実践的な人材育成のためアンドラ・
プラデシュ州政府の積極的な誘致もあり、同州都のハイデラバードに国際情報工科大学
(International Institute of Information Technology –IIIT)が設立された。その後、IIIT
は現在 6 キャンパスまで拡大している。業界団体の NASSCOM が発表した IT 産業の人材育成
への提言では、官民パートナーシップ(PPP)で 2008 年には 5 校を設立し、今後 5 年間で 20
校まで増やすことが掲げられている。これを受け、政府は第 11 次 5 ヵ年計画の中で、20 校
の IIIT の新設に 1 億ルピー(約 2 億円)を投じることを決定している119。20 校のうち 8 校
の設立のために IT 関連企業 8 社が併せて 10 億ルピー(約 20 億円)の出資を表明していた
118
119
「インドにおける IT 産業の実態と課題」福島義和
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~the0350/v5/socio/research/17ronbun/fukushima.pdf
2007 年 12 月 20 日付 The Economic Times
175
が、景気後退により経済的余裕がなくなり、本業に専念すべく手を引く見込みである120。
この他に、インドには 20 校の国立技術大学(National Institute of Technology: NIT)
がある。NIT の前身は、1960 年代から設立された地域工学カレッジ(Regional Engineering
College: REC)である。2002 年に政府は、当時 17 校あった REC を段階的に大学に格上げし、
National Institute of Technology に改組した。その後新たに 3 校が加わり、現在では 20
校となっている。2007 年には国立技術大学法(NIT Act)が成立し、NIT はカリキュラムや活
動内容についてより大きな自治権を持つことになった。
しかし、これらのトップクラスの大学で輩出する学生数はインド全体でみればごくわず
かに過ぎない。IIT、IIIT、NIT を全て併せてせいぜい毎年 2 万人弱といったところであろ
う121。工学系高等教育機関卒業者数全体 26 万 7,000 人の 6~7%でしかない。前述の IIT ボ
ンベイの調査では IIIT については言及していないが、IIT の入学者数は工学系高等教育機
関入学者数の 1%、NIT は同 2%だというので、IIIT を加えても実際の割合は 6~7%よりも
もう少し低いかもしれない。同調査によれば工学系の高等教育機関に入学する学生の 75%
は全国にある約 1,100 校の私立校に入学している。IT 産業の成長とともに、必要となる人
材の数も拡大の一歩をたどっている現在、トップクラスの大学以外の大学や専門学校のレ
ベルアップが IT 産業の競争力維持の鍵である。第 11 次 5 ヵ年計画の IT 作業部会による提
言にあるように、教員のレベルアップ、カリキュラムの改善が、インドの IT 産業の競争力
を保つためには急務である。
4.3.2
.3.2 その他
その他の教育機関による
教育機関による IT 人材育成
(1) NASSCOM
IT人材の供給は業界各社にとっても深刻な問題である。業界団体のNASSCOMは積極的に人
材供給状況の調査などを行い、政府に提言を行っている。NASSCOMは必要人材層を3段階に
分け、それぞれについて政府に提言を行ったり自らのイニシアティブでプログラムを実施
したりしている。
120
2009 年 1 月 31 日付 Indian Business Insite
IIT ボンベイの調査によれば、IIT の卒業生数は工学学士と修士合わせて 2006 年には 5,765 人。1 校あ
たり平均 960 人となる。IIIT も同程度とすると IIT7 校と IIIT6 校で合計 12,480 人。一方同調査によれば
NIT の卒業生数は 200 人~400 人で、平均 300 人と仮定すると NIT20 校で 6,000 人。合計 18,480 人と推定
される。
121
176
図表 4-39 NASSCOM による人材育成のピラミッドアプローチ
Top of the Pyramid
Represents high end technology
skills which are niche today, but will
become main-stream over a 2-3
year horizon
ToP
Middle of the Pyramid
Represents skills which are
mainstream today and represent
majority of the current skill gap in
the industry
MoP
Base of the Pyramid
BoP
Represents relatively simple
technical skills
出典:NASSCOM『NASSCOM’s Education Initiatives』
ハイレベル人材(The Top End of the Pyramid)
博士課程やリサーチサイエンティストの育成。インドでは学部レベルの充実度に比べて、
修士以上の教育が足りないとされている。
これについて、NASSCOMは人材開発省に対し今後5年間にIIITを20校に増やすことを提言
している。NASSCOMはさらに2008年5月に人材資源省に対して、IIIT20校設立の正式な提
言書を提出した。候補地として、Ahmedabad, Nagpur, Indore, Bhubaneswar,
Vishakapatanam, Pune, Bangalore, Mysore, Mangalore, Coimbatore, Chennai,
Thiruvananthapuramが提案されている122。
中間レベル人材(The Middle Level of the Pyramid)
NASSCOMによれば、このレベルの人材が最もITサービス分野で今後不足が見込まれると
いう。これについてNASSCOMは次のようなプログラムを実施している。
NAC-Tech (NASSCOM’s Assessment of Competence – Tech)
NASSCOMではITES産業の人材のスキルを試験・認証するNACを開発しているが、同
様の試験・認証スキームをITサービスセクター向けにも開発した。
IT工学系学校の就職予備校(Finishing School)
インドには大学や専門学校を卒業した学生が就職前の就職準備訓練を行う
Finishing School で社会人スキルを身につける習慣がある。NASSCOMは人材開発
省と共同で、工学系の学生向けに就職準備コースを開設、パイロットプロジェク
トとして2007年5月~6月にかけて、IIT Roorkee校および国立技術大学(National
Institute of Technology – NIT)の7校で実施した。
122
2008 年 5 月 22 日付
The Economic Times
177
IT人材開発プログラム(IT Workforce Development Program)
NASSCOMが中心となって実施している業界と教育界の情報交換及びIT企業から教
育機関への「技術移転」である。この1つに「指導者プログラム(Mentorship Program)
がある。このプログラムではIT企業が、ある一定の教育機関の「Mentor」となり、
産業界の動きや産業界で必要とされるスキルを伝える。教育カリキュラムが産業
界のニーズにあったものにすることが目的。業界と教育機関の情報交換ワークシ
ョップも開催している。
下層レベル人材(The Bottom Level of the Pyramid)
NASSCOM’s Assessnent of Competence
ITES-BPO産業向けで、業界に入ったばかりの人材に対しスキルレベルの試験・認
証を行う制度である。2006年にパイロットプロジェクトを終了し、ラジャスタン
州で本格導入された。2,500人がNACを受験し、試験結果の発表後にはIT産業就職
斡旋会(a job fair)が情報通信省とラジャスタン州政府の共同で開催された。
(2) 就職予備校
第 11 次 5 ヵ年計画の IT 作業部会や NASSCOM も大学卒業生の就職予備校の必要性を提言し
ているが、こうした業界の問題意識の高まりを受けて、2007 年には民間の教育機関、IT 企業
などがこぞって就職予備校の設立を発表している。
民間 IT 教育のラーマン国際情報技術院は(Raman International Institute of Information
Technology: RIIIT)は、マイソール大学と提携して科学専攻の学部卒業生に 1 年、工学専攻
の学部卒業生向けに半年の就職予備教育コースを開設した。2009 年までに 3 万 5,000 人の IT
プロフェッショナルを輩出する計画だ。コース終了時には学生はマイソール大学の Post
Graduate Diploma in Software Programming を取得することができる。この話を聞き、RIIIT
のところには、ハルヤナ州政府やケララ州政府からも関心が寄せられているという123。
インドの IT サービス大手の TCS も、複数の州政府と提携して就職予備校を展開する計画
である。これは同社の将来におけるソフトウェアエンジニア確保戦略の 1 つでもある。ま
ず第一歩として、西ベンガル州に 6 ヵ月のコースを供給する就職予備校を設立した124。
STPI も 2009 年 2 月、チェンナイに就職予備校を設立した125。またタミル・ナードゥ州で
は、州規模で農村に就職予備校を設立するプロジェクトを立ち上げた。BPO 業界での就職希
望者が対象である。各地区に最低1校設立し、その後の 6 ヵ月で 7,000 人を教育する。学
費は無料とする126。
IT サービスとソフトウェアだけではない。タミル・ナードゥ州エレクトロニクス公社
(Electronics Corporation of Tamil Nadu: ELCOT)は米国の半導体検査企業 Tessolve Inc
123
124
125
126
2008 年 3 月 11 日付 The Hindu, 2007 年 11 月 25 日付
2007年 3 月 19 日付 Financial Express
2009 年 2 月 28 日付 The Hindu
2009 年 2 月 27 日付 The Hindu
178
The Hndu, 2007 年 11 月 2 日付 The Hindu
の協力を得て、ハードウェアとエレクトロニクス工学の就職予備校を設立した。Nokia など
の携帯電話工場や電子委託サービス企業の進出が相次ぐタミル・ナードゥ州では、毎年 1
万から 1 万 5 千人のエレクトロニクスハードウェアのエンジニアが必要とされている。し
かし、新卒者は経験が不足していて企業の人材ニーズに応えられない。こうした業界のニ
ーズに着目して設立されたものだ。こうした動きがここしばらくは続くものと思われる。
(3) 民間教育機関
民間教育機関
大学などの教育機関以外にも、NIIT 社や Aptech 社などの民間企業が IT 訓練を提供して
大きな役割を果たしている。下記の 2 社は IT 教育を専門とするインドを代表する企業で、
世界的に展開している。
<NIIT 社>
NIIT 社は IIT デリー出身の二人のインド人によって 1981 年に英国で設立された IT 教育
を事業とするインド企業である。事業対象は個人、学校など教育機関、企業、政府機関な
どで、場合によっては特定のプロジェクト専用にその専門分野の講師を派遣し専門のプロ
ジェクト要員養成を実施するケースもある。企業顧客には Accenture、Deloit Consulting,
Singapore Airlines, Scandinavia Airlines, GE Capital といった世界的な企業も含まれ
ている。同社はインドでの代表的な IT 教育企業であるだけでなく、IDC の調査によるとア
ジアで唯一の世界トップ 15 に入る教育訓練企業となっており、このランキングに 2001 年、
2002 年と 2 年連続して入っている。最近ではデータクエスト社の「Top IT Training Company
Award 2006」を受賞。またカルナタカ、アンドラ・プラデシュなどの州政府とも協力関係
を持ち各州の教育機関において体系化された IT 教育を進めており、全国で約 2,000 の公立
学校で 90 万人以上の生徒に IT 教育を実施している。2008 年 6 月には大手 BPO 企業の Genpact
と合弁で、ビジネスプロセスサービスを教える NIIT Institute of Process Excellence を
設立、第 1 期のキャンパスが同年 9 月にグルガオン、バンガロール、ノイダに開校した127。
<Aptech 社>
Aptech 社は 1986 年インドに設立され、毎年 30 万人以上の人々に IT 教育プログラムを
提供してきた。5 大陸全てに教育センタを開設しており、これまで 500 万人以上の人々に教
育した実績を持つ世界的な IT 教育訓練企業である。1993 年には IT 教育訓練企業として初
の教育サポートサービスに関する ISO9001 の認定を取得している。教材は英語のほかに中
国語、ロシア語、スペイン語などに翻訳され、オーストラリアのサザンクロス大学とイン
ド、シッキムマニプル大学との提携で国際市場においても質の高い教育訓練コースを提供
している。
127
2008 年 6 月 11 日付
Press Trust of India, 2008 年 9 月 25 日付
179
Indian Business Insight
4.3.3 技術者資格認定制度
前述のように、インドでは IT 業界の人材不足が顕在化してきている。特に IT-ITES 産業
では、2010 年には 50 万人の人材が不足にすると予想されている128。一般にインドでは IT
業界に就業可能なレベルの学力を持つのは技術系大学卒業者の 25%、一般教養課程卒業者の
10-15%程度にとどまるといわれている。このため、大学などで学生を教育する過程で能力
評価のために標準的なレベルを定めようとの意図で NASSCOM と人材コンサルティング会社
の Hewitt 社および IT-ITES 業界では、NAC(NASSCOM 能力評価)と呼ばれる評価テストを開
発した。2005 年 8 月の試験的導入の成功後、2006 年 11 月には全国展開を決め、ラジャス
タン州を皮切りに徐々に広げて行く計画である。2006 年にはシッキムマニプル大学の工学
部の学生 450 人にも試験を行った。2008 年にはグルガオン州やタミル・ナードゥ州で試験
が導入された。
NAC は主に ITES-BPO 産業に従事する人を対象にしたもので、会話力、聞き取り、分析力、
文章力、学ぶ力、キーボーボ操作能力の 7 分野の技術レベルを評価するもの。今後、地方
の都市に展開される IT-BPO の動きを加速するものと期待されている。
一方、人材の確保、安定的な供給を目的に半官半民の NSDL 社(National Securities
Depository Limited)のデータベースに人材情報を登録する NSR(国家技術登録-National
Skills Registry ) と 称 さ れ る プ ロ ジ ェ ク ト が 進 行 し て い る 。 こ れ は NSDL Database
Management Limited が NASSCOM の委託を受け開発、運営しているものである。プロフェッ
ショナルが自主的に自分の経歴、資格などをデータベースに登録したものを定期的に雇用
主、あるいは第 3 者の審査機関がチェックするもので採用する企業はこの情報を元に迅速
に的確な人材を確保できるメリットがある。2008 年 9 月までに 58 社、34 万人が登録して
いる129。NAC や NSR を基にインドの IT 人材の技術標準は現実的に進められており、将来は
インドの IT 資格基準として定着する可能性がある。
128
129
NASSCOM マッキンゼー調査 2005 年
2008 年 9 月 15 日付 The Economic Times
180
5. 各国・
各国・地域の
地域の標準化施策
標準化施策の
施策の状況
国家標準の策定や国際標準の提案審議活動は、それぞれの国の産業戦略や戦略の具体的
な実施の先導的な活動として位置づけることができる。このために、各国の標準開発プロ
セスの理解、各国標準化関連機関の活動状況の調査や分析は、それぞれの国の産業政策施
策の実施状況を把握するため、及びそれらに対する我が国の必要な対処のために重要であ
る。
さらに国際標準策定の国際審議の場で、日本の立場を強力に主張し、実現するためには、
目的を共有する諸国との協力や連携が必須である。この連携協力は諸国の標準化機関のプ
ロセスの理解と、友好関係を維持することによって実現される。
これらの理由から、各国、特にいろいろな背景事情を共有する、アジア諸国の標準化機
関についての十分な情報を持つ必要がある。
アジアでは、携帯電話の TD-SCDMA や、セキュリティ機能付き無線通信に関する WAPI な
ど独自標準の制定に積極的な中国や、自国提案による国際標準制定に積極的な韓国など、
積極的な標準化活動を展開する日中韓などの一部の国を除いて、他の多くの国々では、標
準は先進国が開発し、それを利用するだけで十分という風潮があり、低調である。
このために、この章では、中国韓国などの現地調査結果を踏まえた標準化プロセスや、
現時点の活動状況の報告と、多くのアジア諸国に見られる、共通的な一般状況を報告し、
今後の具体的な案件の対応に資したい。
5.1 アジア各国
アジア各国・
各国・地域の
地域の標準化活動について
標準化活動について
アジア各国における標準化活動を理解するために必要な事項を整理すると次の様になる。
これらを下敷きにして各国の情報を分析検討するとが、それぞれの国の状況を正確に理解
する手助けになり、必要であれば適切な対処などを策定できる。
a. 標準化対応レベル
アジア諸国の標準化活動と言っても一様ではなく、おおむね三つに分類される。
すなわち、①発展途上国の多くは、そもそも標準とは先進国が開発したものを利用するの
を旨としており、産業の諸政策も、外国の支援の内容で実体は左右され、さらに進出外資
企業の動向で決まるという状態なので、その国独自の標準化活動はほとんど無に等しい国
である。この種の国にも、IT の進歩・普及にともなって、国際標準に反映すべき各国の文
化や言語から来る要求事項があるが、それらの国際標準への提案や議論は、各国にとって
は困難であった。また、現在の国際標準の開発システムでの意思決定は、一国一票の投票
で決まるので、この種の国の標準化機関との良好な関係の維持は日本の国際標準活動にと
って不可欠のものとなっている。②先進国で開発された標準を国内産業において積極的に
181
利用するために普及啓蒙などの活動が主たる標準活動の国々で、代表的な例としてはマレ
ーシアやシンガポールがある。これらの国の国内活動への積極的な支援もまた我が国の産
業にとっては重要なことである。③最後に、すでに独自に政策があり標準化活動を行って
いる“標準化先進国”で、日中韓台などがこれに当たるが、積極的な標準化活動をしていると
は言え、中韓台は、自国の産業政策や産業界が具体的な関心のある事項にのみ選択的に積
極的であり、全てにグローバルな視点で積極的であるのは、辛うじて日本だけである。
アジア各国の標準化活動を理解するには、まずこの分類を理解し、それを下敷きに実情
を理解する必要があり、日本の状況を基準に相手国の標準化活動を理解することは誤判断
の原因になる場合がある。
b. 標準化機関
標準化機関の政府内の位置づけなども各国まちまちであり、さらに産業振興関連の組織
との関係もいろいろある。標準化を工業活動とか産業振興の手段ととらえて工業省などの
産業関連機関の中においた国、科学技術と認識した対応している国、さらには消費者保護
の一要素として消費者省においている国もある。さらに、多くの国々では、近年の情報通
信技術の重要性の向上や、急速な電子産業の発展を受けて、ICT 省とか、電気電子産業など
を中心とした産業省などを新設しているが、標準化機関は、依然として古典的な標準化を
中心とした、古い組織に属しており、電子工業や ICT 技術に対応できないでいる国が多い。
その上、標準化機関が策定する標準化政策と、たとえば ICT 省が策定する政策との間に乖
離があり、さらに産業関係の省の標準化への無関心も相まって、電子産業や情報通信関連
の標準の“孤児化”が認められる国もある。つまり、標準化を担当する省庁と、電子産業
情報通信を担当する省庁との協力関係(距離感)によって、各国の関連標準化活動の実情
は大いに異なってくる。逆に言えば、特に、電子や情報通信の分野では、その国の公式標
準化機関が電子関連や情報通信に関する標準化について、形はともかく、実質代表してい
ない場合が、アジアでは、多々見られる。
c. 標準開発プロセス
有効に公的標準開発に対応するためには、二つの流れが必要である。国家標準策定のプ
ロセスと国際標準への対応である。国家標準の開発プロセスは(初期の立案段階には色々
あるが)実際の標準開発の原案段階から承認・公布段階へのプロセスは、国ごとの差はほ
とんどなく、それだけを見ると必要十分なプロセスが定められており、国家標準開発上で
指摘すべき大きな問題点は、どこの国にも、見当たらない。一方、国際標準へ対応するプ
ロセスも、国情によっていろいろあるが、それぞれ合理的で、特に指摘すべき問題点は無
い。しかし、国際標準対応プロセスと国家標準開発プロセスの接点という目で両者を同時
に検討すると問題点が認められる。どちらの標準も国としての意思決定が必要であるが、
その二つの流れの国としての相互確認をどの様に行っているかという問題である。両者の
182
間に接点が無いのは言語道断であるが、開発初期の技術的検討レベルで行われると、両者
の整合性の維持が可能であるが、最終段階に近い行政レベルで行われると、これが往々に
して国家標準の国際不整合の原因になり不都合が生じたり、非関税障壁に原因になったり
する。具体的には、韓国は辛うじて技術審査レベルに接点があるが、中国は高いレベルに
接点があるのが問題である。ちなみに、日本も問題のあるレベルに接点が設定されている
が、標準開発技術者が両方に関与することで、実質、有効接点レベルが維持されている。
また、ほとんどの国で開発プロセスがまったく異なる Defacto 標準や業界標準と公的標準と
の区別もついていない状態である。
d. 国際標準化活動への対応
国際標準化活動(ISO, IEC)には、国レベルではミラー委員会(対応委員会)かそれに相
当するものを作って対応するのが普通であるが、その委員会が常設されて、継続的に対応
しているのは日本だけである。それ以外の国は、国際審議の機会に応じて事務局が招集し、
国際会議に出席可能な人が適宜出席しているのが実情である。これも、国際不整合の潜在
的な可能性を内包している。また、往々にして国際対応の首席代表などのチャンネルで国
際連携の折衝をすることも多いが、その相手どの程度国を代表出来ているかについては問
題がある場合がしばしばある。
e. 国際整合
国家標準は国際標準と整合している事が必要である。もし不整合ということであれば、
非関税障壁の原因になる可能性があり、WTO の TBT 協定(Technical Barriers to Trade:貿
易の技術的障害)違反を招く可能性がある。アジアのいずれの国の標準化機関も、国際整合
の重要性を認識し、重点方針の一つに取り上げている。しかし、現実に議論をしてみると、
それぞれの国の標準は、国際整合をしており“我が国の事情に合わせて若干の修正”を加
えてあると説明する。つまり、国際標準を下敷きに、都合の良い改造を加え“国際不整合”
にしたものが、各国の整合化したと称する国家標準である。要注意である。
f.
認証プロセス
国家標準は時に、強制認証のための技術要件として使用されたり、その目的で開発され
る場合がある。このらめの標準も国際整合していることが望ましいことは言うまでもない
し、各国とも国際整合しているものや国際標準そのものを使用していることが多い。した
がって技術的な要件は国際的に問題がないが、その認証申請や審査・認可プロセスは、国
ごとにばらばらで、しかも不透明な場合が多い。この問題は、技術標準の開発者にとって
は、あまり意識されない問題であるが、実務的には大きな課題となることが多いので、各
国の状況の情報には加えておくことが望ましい。
183
g. 標準関連人材
標準の途上国と国内普及啓蒙レベルの国々では、標準開発の出来る人材は少数であり、
かつ、担当者は担当官か学者が多い。普及啓蒙を行っているのもその技術担当を指示され
た担当官や、その標準を勉強した学者であるので、新規開発中の標準を議論するための技
術人材としては力不足であり、どこからか吹き込まれた意見に左右される。逆に、既存の
標準と同じことを、類似ではある異なる方法で実現した技術者は、高度な技術の所持者と
して尊重され、独自技術力を誇示したい各国においては、その技術の標準化を推進したが
るのは自然の流れである。中国なども、この傾向が強い。
h. 標準化と調達規格
標準途上国と中国は、標準と調達仕様との区別がつかない状態であり、多様なものを統
一して、一つの物を選択することが標準化と考えている場合が多い。これも、各国と話が
かみ合わない原因となっている。
5.2 中国、
中国、韓国、
韓国、台湾などの
台湾などの標準先進諸国
などの標準先進諸国・
標準先進諸国・地域の
地域の状況
中国と韓国は、2008 年に行政の組織変更を行っているので、最新の状況有無を報告する。
続いて特別な留意が必要な台湾の事情を述べる。
5.2.1 中国
中国の標準化状況は、2008 年 3 月の第 18 回全人代で省庁の“構造統合”が行われ標準化
施策に関しても影響がある可能性がある。そこで、中国電子技術標準化研究所(CESI)を訪
問し現地調査を行った、
中国の標準化と電子・情報通信に関係する機関の組織の状況は、標準化全体を統括する
国務院直轄の国家標準化管理委員会(SAC)には変更がなく、実質電子・情報通信標準の担当
の CESI の上部組織信息産業部(MII)が、国家発展改革委員会と国防科学技術工業委員会と
統合され、新しく工業・情報化部(MIIT)となっている。特に部長には国防科学技術工業委
員会系の人が就任するという変化があった。
これらの状況を受けて SAC の戦略や内部組織などの変化がないか、電子・情報通信関連の
標準化戦略や方針などにあったかどうか確認した。
CESI によれば、SAC の戦略や組織にも変化は無いとのことであり、CESI への戦略的な指
示にも変化がないが、全体的に CESI の役割は拡大方向にあり、標準開発および試験部門は
拡張され、標準管理部門は全ての工業および IT の技術的サポートが追加されたと言う。こ
のサポートの範囲には IEC の一部も含まれている。しかし、標準化戦略やプロセス等には
184
目下変化はないと言っている。(新組織図をみると、現時点では、旧組織が並列にあるだけ
で、その上に新組織名があるだけなので、大きな変化はないことと一致している。とはい
え、旧組織を引き継いだ組織の長は変わっている模様である。)
したがって、中国の IT 標準化体制や状況は、CESI の上位機関名の変更以外は。情報化レポ
ート-標準との状況とは変わりはないとして今後当分対応を続けることができると考えら
れる。
とは言え、関係の有無は不明ではあるが、このところの中国の政府調達に対する情報公
開要求や、独自技術の採用要求を合わせ考えると、今後の変化の可能性は排除できないの
で、中国の標準化動向には、注目し続ける必要があり、そのためにも、中国の組織の構成
の理解は重要である
中国の国家強制認証はCCC (Chiniese Compulsory Certification) として、これまでの
CCIBとCCEEとを統一する形で2002に公布され前記AQSIQおよび中国国家認証認可監督管理
委員会(CNCA)によって運営されている。対象機種の中には、IT機器、通信端末、医療機器、
情報セキュリティ製品、無線LAN等が含まれている。この品目は当然追加・削除(まずない
が)されるのでAQSIQもしくはCNCAのHPで常に監視する必要がある。
認証のための技術的要求は国家標準(GB)として制定されているものが多いので、内容
を把握することは可能であるが、課題は認証手続きで、外部からはなかなか判りにくいこ
とや、問題点が多いので製品の技術要件以外の注意が必要である。申請手続きの不透明さ
に加えて。製品技術提出、年度工場監査、現地サンプル調査などの油断できない要件とと
もに国家標準(国際整合していると自称していることも多いが)の独自解釈などに注意を
要し、そう言われればそうも考えられるという通常の常識範囲外の要求が出ることがある。
極端な場合オシロスコープの時間軸は測時危機として年次校正の要求などがあったことも
ある。
a. 組織
中国の標準化に関わる担当機関は国務院直轄の国家質量監督検査検疫総局(AQSIQ。総局
長は閣僚級と言われている)の国家標準化管理委員会(SAC)である。SAC は全国専門標準化委
員会(以下、専門委員会)を設置し各技術分野の TC を関連している部(省)と共同で設置
をしている。たとえば情報処理の分野は、工業・情報化部(MIIT)と共同で全国情報技術標
準化技術委員会(NITS)を TC28 として設置しているが、この分野の区分は、
(国際標準機関
とは異なり)中国独自の判断による。
たとえば国際の ISO/IEC JTC1 にほぼ対応するのは NITS
であるが、JTC1 の Security に対応する SC へは全国情報安全標準化委員会(TC280)が別途設
置されている。
色々な標準開発団体(SDO)は、それぞれ適切な専門委員会に国家標準原案を提案し、最終
的には SAC により国家標準として発行される。また、国際標準化機関へも SAC が対応して
185
いる。
専門委員会 TC28 の事務局は、MIIT の中国電子技術標準化研究所(CESI)が勤めており、こ
の度の組織変更で、CESI の役割は増大しており、中国の関連した分野の標準化動向を知る
には、このように専門委員会の事務局担当の組織と連携する必要がある。つまり情報通信
と電子技術の一部の中国における標準化動向は CESI で把握できる。このために CESI との
良好な関係を維持することが重要である。
標準原案を提案する SDO は、それぞれ、特に担当の技術に独占的に特化しているわけで
はなく、各 SDO が競合しながら標準原案を開発しており、しかも、各 SDO 間の関係はあま
り友好的ではなく、それぞれかなり閉鎖的である。また、国策的な標準は、
(主として SAC
ではない産業系の)官庁の系列の SDO が指示を受けて原案開発を行い、産業界その他民間
の利害などを反映した標準原案は民間 SDO が比較的自由に開発している。それぞれの標準
原案は、それぞれ担当の専門委員会に提案され、その時々の流れで国家標準として選択的
に採用される。
つまりここでコンテストのようなことが行われ、時に、技術内容や国際
動向とは別に、国策あるいは政治的な判断で採用される。
採用された標準原案は、この
時点で初めて、パブリックレビューとして公開され、最終的に国家標準として制定されて
いる。この様なプロセスであるために、国家戦略的組織的な開発が行われているように見
える中国の国家標準は、どうやら自然体で開発されているのが実態の様なので、結果的に
中国との折衝を困難にしていると考えられる。
CESI は、前記の事務局の機能の他に、SDO でもあり、国策的な標準開発も行っている。
しかし、それが独占的ではなく、他の政府系研究機関でも、ほぼ同様の目的の、標準原案
が開発されたりしている。
さらに CESI は、上記二つの機能の他に、ISO/IEC JTC1 とその各 SC のミラー委員会の事
務局の役目も持っている。このミラー委員会は形としては常設されてはいるが、実体は流
動的で、国際会議の対応を必要に応じて、半固定的なメンバで行っているだけの模様であ
り、国際会議への出席者やその代表もその時の事情で決定されるらしい(ある国際 SC への
中国首席代表による)ので、代表団の意見が、中国の意見を必ずしも代表しているわけで
はないようだ。代表団が、逐一本国へ訓令を求めている場合もある、特に、海外出張の旅
費や旅券取得の事情から外資系の企業や機関の人が国際会議へ出ることが多いが、中国の
政策を反映していない場合が多い。たとえば ISO/IEC JTC1 SC31 には AIM-China の人が首
席代表であるが、政策を反映した国家標準開発は、AIM-China と無関係の CESI が独自に活
動している。
CESI 内部のミラー委員会事務局と、専門委員会 TC の事務局さらに CESI の SDO 機能機関
の連携や情報共有が、同じ CESI 内部でありながらあまり良好と言えない状態であるのが実
情である。
(ミラー委員会情報と国家標準原案情報とのつきあわせは、事務的な判断が中心
の専門委員会 TC28 で初めて行われているようである)で、現実には、CESI と言いながら、
186
両事務局担当に外部からアクセスするのは困難で、多くの場合 SDO 機能担当部署にアクセ
スすることになり、間接的な情報収集する必要がある。とはいえこれが、一番早期に状況
情報を入手する方法とかんがえられるので、CESI との日常的な交流を通した良好な関係維
持は、中国の電子情報通信関連の標準化状況の情報収集には非常に重要であり、CESI 関連
以外の電子分野でも、同様な機関との関係を維持する必要があると考えられる。
このように、中国の標準化体制は、統一的な動きをしているわけではなく(実際は統一
的戦略があるという認識が一般的であるが)
、かなり流動的かつ自然体で、具体的な結果は
最終段階まで計り知れないという状態と考えた方が現実的である。何時も後手に回る(情
報収集能力は高いのに)米国の対応をみても(日本はその後だが)、情報収集がいかに難し
いかを示していると思われる。有名な WAPI の件などもこのように見ると判りやすい、かな
り多くの SDO が、それぞれ SAC に政治的ロビー活動をした結果が WAPI だったらしい。
b. 戦略
SAC による中国の国家標準化業務の原則は、①標準化計画を早期に立案する、②内外の技
術動向を積極的に調査検討する、③国情に合わせた先進的標準を制定する、④技術の制限
をせず、技術の発展に資する、⑤標準の有効性と権威性の向上である。これらは一般的に
“正しい”ことだけであるが、③⑤と現状を合わせ考えると、独自基準をもうけそれを強
制する現時点の傾向のよりどころになっている可能性がある、
抽象的な原則の他に SAC は、第 11 次 5 カ年計画を 2006 年に発表しており、そろそろ総
括の時期にきており、次の計画の策定が行われていると想定される。この 5 カ年計画に言
われている具体的な重点分野は、
家電標準(安全・性能・性能評価法・省エネ・情報家電など)
工業の情報化と自動化 (プラント設備のデジタル化設計・製造共通化)
独自知的財産権の基づく情報通信・ハイテク標準
電子政府
情報資源
組織機関コード
高速ブロードバンド情報ネットワーク標準
0.25um 以下の集積回路
ソフトウエア製品とソフトウエアエンジニアリング標準
HDTV
ラジオ・テレビなどの衛星中継による放送システム標準
次世代移動通信
無線ネットワークの安全標準
187
電子商取引
情報セキュリティ
製品廃棄と廃棄物回収
が上げられている
これらの重点項目を見ると、電子・情報通信に関係するものがほとんどでるので注目し
ていく必要があるが、中には日本の感覚では標準になじまないものや、中国国内で閉じて
いる課題のものなども含まれている。
とは言え、独自技術によるハイテク標準というのは、中国だけではなくアジア諸国の願
望であり、独自技術と自称する、同類技術の再発明に基づく標準が、政府調達などのため
の強制仕様として制定される可能性が高い。現に、具体的な技術としてはまだ公表されて
いないが、中国の知的財産権を利用していることが政府調達の条件に入りつつある。WAPI
なども、この種のものの先駆けであったのかもしれない。5 カ年計画最終年に向けて、同種
のものの発表の可能性があり、重大な関心をもって動向を見守る必要がある。ただし、そ
の種の標準に準拠する製品が、日本市場に導入される可能性は無いので、もっぱら対中輸
出の課題ととらえてよいと思われる。
各 SDO とその活動状況を話してみると、政府系の SDO は、良く知られている話題性の高
い先端技術導入という視点で標準を開発しており、その技術を利用する目的の応用分野を
聞くと、既に外国で実用化されている例以外にあまり出て来ない。逆に民間系の SDO は、
外資系の場合は、既に世界的に実用化している応用の中国展開を安定的に運営するという
目的で、世界標準の国家標準化を考える傾向があり、中国企業の場合は市場の独占などの
利権狙いが見える、いずれにしても応用中心の標準で、さらに応用を拡大する話は少ない
という傾向がある。いずれにしても、中国発の強力な新規応用が、日本市場に参入してく
る可能性は少なく、日本側が関心を持つべきは、中国市場参入の場合と考えてよい。
c. 人材・研修
SAC によれば、かなり頻繁に標準開発の研修を実施していることになっているが、中国の
SDO と共同作業をすると、ほとんど標準開発プロセスの知識はむろんのこと、実務上のプロ
トコルなどについてはほとんど無知と言ってもよい。したがって、現実には標準開発の“お
作法”は知らないという前提で接触することを勧める。
さらに、SDO の技術メンバは、予算や国外旅行の制約のために、国際折衝の経験はほとん
ど無い。一方、一般に中国の技術者は勉強家が多く、色々な資料を読んで、良く勉強して
いる。
しかし、それは公開された資料の範囲内であり、議論の場ででたいろいろ記録さ
れていない情報は入手できていない。このため、独自の“とんちんかん”な解釈をしてい
188
る場合も多い。標準で言えば、まず色々な標準相互の関係などの研修をする必要がある。
全く関係の無い標準を組み合わせて、非互換の標準を開発したりするが、担当者は善意で
大真面目で開発している。この辺は(他のアジア諸国も同じであるが)、外国から研修する
ことが望ましい。
このような環境であるなか、標準の普及啓蒙のための一般研修は、あまり積極的に実施
されているように見えない。
5.2.2 韓国
韓国も、李大統領以降、大きな組織変更が行われている。韓国の場合は、政府の意思で
の変更と言うよりは、政権交代と産業界の要求による組織改革なので、中国の場合と比べ
て、その活動内容に大きな変化がある可能性がある。
韓国は、国策を受けて、SC29の活動が活発であり、特にアプリケーションを想定した新
規JTC1標準の提案が多く、符号化技術中心の日本側では対応しきれないことが多いので、
日本側の対応を再考する必要がある。
a. 標準化組織
韓国における標準化活動は、知識経済部(MKE)の中の韓国技術標準院(KATS)が担当機関
である。KATS の下に、(日本でいえば JISC に相当する)韓国工業標準評議会(KISC)があ
り、ここに ISO、IEC に対応する委員会 mirror
committee が設置されている。この mirror
committee の事務局は KATS の下の韓国標準協会(KSA)が担当している。
また、通信に関する ITU 標準は MKE ではなく、独立した韓国通信委員会(KCC)が国際的な対
応をしている。
韓国では李政権になった 2008 年に大きな政府組織の変更が行われた。それまで KATS を
管轄していた産業資源部(MOCIE)が、IT と通信を担当していた情報通信部(MIC)を IT 部門を
中心に吸収して MKE が新設され、MIC は解散して、ITU 標準に対応する KCC だけが独立して
残っている。
ここまでは、綺麗な構造であり、MKE を日本の経済産業省、KATS を規準認証ユニット、
KISC を JISC と対応させ、KCC は米国の FCC と似たものと想定すれば判りやすい。しかし、
実際の国際標準に対する場合、KISC/KSA の mirror committee の役割は、韓国にとって重要
な案件と、あまり関心のない案件では対応が異なっている。あまり関心のない案件や分科
会(SC)や作業部会(WG)への対応は、mirror committee の有識者が常識の範囲で対応す
るが、韓国にとって関心があり、重要な案件についての韓国内の技術的対応は、IEC と ISO
に つ い て は 韓 国 標 準 協 会 ( KSA ) が 行 い 、 ITU に つ い て は 韓 国 情 報 通 信 技 術 協 会
(Telecommunication Technology Association:TTA)が担当するが、IT に関する国際標準化
189
(ISO/IEC JTC1)への対応は、(廃止された)MIC の所管の関係で、これまでは TTA が担当
していたし、現在も担当している。
この TTA は、MKE の設置にともなって、MIC の監督下から KSA と同様の MKE の管轄に横滑り
をして現在に至っており、JTC1 関係の標準化は、TTA の担当として残っている。さらに実
際の技術活動は、TTA の管轄で設置された Forum(ほとんど常設)で対応している。この Forum
は JTC1 との mirror 構造ではなく、韓国独自の重要性の応じた構成になっている(たとえ
ば RFID については forum が4っ設置されている)。
つまり、韓国においては、重点案件については、IEC および ISO に対応する KSA と、JTC
1と ITU に対応する TTA が標準開発団体(SDO)として、並列に MKE 下に存在し、しかも、
ITU 案件については、TTA は、KCC の監督下で活動しているという変則的な状況である。
さらに、実質的な、標準開発の技術活動は、前記のように、KSA および TTA が設立監督し
ている各技術 Forum が実施している。 IT 標準に関して言えば TTA およびその管理下の
Forum の活動が韓国の主活動である。さらに KSA、TTA ともに KISC に韓国国家標準(KS)原
案の起案提案を行っている。KS への起案提案の出来る認知された標準開発団体(SDO)は、
KSA や TTA 以外にもあるが、実際には KSA と TTA が主である。
KSA と TTA は国際対応と KS に対する SDO 機能を持っているので、国際・国内の整合がと
れているが、KSA や TTA 以外の SDO の KS 提案も KISC の mirror committee の審査が行われ
るので、国際標準と韓国国家標準との整合性の確保は確保しやすい体制となっている。 こ
こが中国と大きく異なっている。
b. IT 標準化活動の現状
李政権下での韓国の IT 戦略は、これまでのものから変化しており、関係者の話では、こ
れまでよりも産業の直結した活動を求められている。当然のことながらいろいろな組織の
変更も行われている。例えば、旧 KIPA、旧 KIEC 等を統合した NIPA には Knowledge Service
や, IT Convergence Strategy Team などが新設され産業界への貢献戦略の立案実施するこ
とになっているが、実際の担当者の話では、まだ方向性などの模索中で、具体的な立案状
態ではないようである。つまり戦略担当部門などは、新方向に向けて改組が行われ、その
新組織が立ちあがりの時点であると言える。
これに対して、標準化活動は(基本 IT)戦略が固まっていないので当然と言えるが、新
方針には対応しないで、これまでの延長線上で活動している。TTA では、MKE 下に入った改
組の一部として、TTA の活動の一部が教育部、文化部、外交部と関連することになり、さら
に TTA の活動の一つの mobile RFID の trial projects は国土部とも関係している、つまり
TTA には上記4部と MKE、KCC と多数の上部組織が存在しており、各部の要求の違いの調整
190
に現時点の TTA は忙殺されており、配下の Forum も各部の要望により類似のものが増えつ
つあるので、現時点では MIC 解散時点の状態(アジア情報化レポート-標準参照)にまで整
理することに TTA は努力している。つまり、韓国の現実の IT 標準化活動は、従来活動の延
長上の活動が継続されているが、上位組織や、IT 戦略部門は新しい具体的な方向策定が現
在進んでおり、標準化機関はその新しい体制への適応するための変革の途中であると言え
る。新戦略が具体的になり、それに対応した活動を SDO が開始するまでにはまだまだ時間
を要すると思われる。このために、新動向をつかむには、IT 担当の SDO である TTA の活動
を定期的にチェックし続ける必要がある。 TTA と KSA との合併などの可能性も否定できな
い。
c. 標準戦略
韓国の標準戦略の策定は、2008 年から部レベルから KATS に移されている。また KATS は
2006 年に IT 標準化 5 カ年計画が開始され、もう一年で終了するが、前述のように IT 標準
はこれまで KATS が所属する部の外の TTA で行われていたためか、TTA のこの 5 カ年計画に
関する関心は薄く、TTA では計画の存在を知っている人は少ない。またこの5カ年計画の実
施状況や結果のチェックされた節はなく、質問にも回答は無い
また、MKE が大きすぎる組織で、いろいろな産業にかかわっているために、相対的な MKE
の IT に関する関心が低下傾向にあるという指摘もある。このようなことを勘案すると、韓
国が現実的な標準化戦略を策定するまでには、今一つの時間が必要だと思われる。同時に
従来の活動がしばらく続けられる。
今後の韓国の標準化活動で現時点で予想されることとして、引き続き、産業戦略的に重
要な部門に集中した標準化活動を行うこと、さらに、その戦略の中に韓国発の知的財産権
を ベ ー ス に し た 自 国 産 業 界 発 展 へ の 貢 献 を 目 標 と す る こ と ( 現 在 の 韓 国 の JTC1
SC29(audio and video coding)や SC31(automatic identification)活動が好例)が特徴と
して挙げられる。
ちなみに、韓国の国際標準化活動の様子は、韓国(主として産業界)が関心の高い、戦
略部門に対し集中投資が実施され、TTA の forum なども産業界の支援を得て活発に活動し、
国際会議への出席や提案も多い。一方、関心の低い分野では、ほとんど個人の関心での国
際会議参加で、発言はとても韓国を代表した意見とは言えないことが多い。現時点では、
携帯電話と TV の高度化のための技術開発と標準提案を積極的におこなっており、産業界の
強い輸出依存や知財権戦略とあいまって、その活動を無視してはいけない。
この点も、中国の内向き志向と全く逆であるが、国際整合の重要性の認識が(輸出志向な
ので当然であるが)高いので、突然、韓国が閉鎖的になるよりは、製品攻勢への対応とい
うことになるだろう。
191
d. 標準化教育研修
標準化に関する教育研修活動は、KSA と TTA によって実施されていると KSA/TTA は自任し
ている。KSA は IEC および ISO に対応する研修を行っており、TTA は ITU 向けの研修をして
いるとしている。研修内容は、組織や手続きの解説が中心で、TTA では各種研修を年に20
回程度実施している。
この状態では、ISO と若干手続きが異なっている IT(JTC1)に関する研修は実施されて
いるとは考えられない。
現に、JTC1 の各場面で出会った韓国代表は、ほとんど手続きや、会議での“かけひき”
の知識や経験が無い様に見受けられるし、過去に必要に応じて CICC が開催した IT 標準化
研修での反応は、全て初耳と言う感じであった。但し、中国を始めとするアジア各国でし
ばしば見受けられる、標準化そのものに対する誤解は韓国代表にはない。(多くのアジア
諸国では、標準化とは統一購入仕様書的な発想が中心である)
また、標準そのものの普及啓蒙活動は、関心のある標準開発の積極参加の様子からみる
と、官主導での普及啓蒙は行われていない可能性も高い。なお、関心の低い分野の啓蒙活
動は行われていないと想定される。
【コラム】[知識経済部-ISO国際標準協力強化]
知識経済部とISOは経済危機を克服するために国際標準化協力を強化する。
知識経済部副大臣は、2009年6月15日から20日までソウルで開催された世界経済フォー
ラム東アジア会議に出席したISO会長と面談し、国際標準化戦略について協議した。
この席で、ISO会長は韓国の積極的な国際標準化活動に対し、感謝すると共に、「韓国
政府レベルで経済危機を克服する手段として国際標準化を活用し、産業界の積極的参与
を拡大する政策を策定していることは評価できる。」と付け加えた。
なお、「ISO戦略計画2011-2015」にも言及し、この計画への韓国の積極的な参与を要請
した。
ISO理事会は2003年から貿易促進と持続可能発展のため、5年計画を策定している。
知識経済部副大臣は、「ISO戦略計画2011-2015に合ったグリーン成長分野、特に新再生
エネルギー、情報通信など新成長動力(分野?) の国際標準化活動を強化していく予
定である。また標準化教育など発展途上国への支援も大きく拡大する。」と述べた。さ
らに、韓国から専門家がISO理事会や政策委員会に今よりも多数参加できるよう配慮を
お願いした。
ISO会長はこの後2009年6月16日に韓国企業と標準専門家を集めた「国際標準戦略ワー
クショップ」に出席し、基調講演を行う。
(デジタルタイムズ 2009/06/15)
192
5.2.3 台湾
台湾は、外交上の問題で、国際標準化機関 ISO や IEC に加盟していないため、標準化活
動情報には、特別な留意が必要である
a. 体制
台湾の標準化は、経済部(MoEA)の、標準検験局(BSMI)が SDO の協力得て行っている。ち
なみに IT 関連の SDO の主力は財団法人中文数位化技術推廣基金会(CMEX)や台北コンピュー
タ協会(TCA)などで、学術団体・企業・学会などが参加しているコンパクトな形で、国家標
準 CNS を制定している。体制的には、誰もが SDO として CNS を BSMI に提案できるが、実際
は複数の常連で占められている模様である。方策としては、他国が標準原案を提案するの
に対して、台湾では、標準化することを提案し、それが BSMI で採択されると SDO が標準原
案開発を委託するという流れになっている。この委託対価が年々減額の方向にあり III な
どは標準開発を最近降りる傾向にある模様である。
【コラム】標準検験局(BSMI)の体制
標準検験局(BSMI)は、経済部(Ministry of Economic Affaires, MoEA)の下に属する。BSMI
は経済部組織法のもとに 1991 年に設立された。台湾の国家最高の商品検査試験機関であり、
特に IT に特定した標準化機関ではないが、経済計画や工業政策に照らして商品検査を行う
機関で、同局のもとには国家標準技術委員会(National Standards Technology Committee,
NSTC)があり、26 の部門に分かれている(下図参照)
。なお輸出入、海外のマーケットで
の販売に際しては、同局の検査を受け合格することが義務付けられている。
台湾には BSMI が承認する CNS(Chinese National Standards)という国家規格がある。
CNS は電話・航空関係・船舶建造など一部の分野を除き、その採用は強制的なものではな
く、任意である。
出典: http://www.bsmi.gov.tw/
193
b. 標準化戦略
上述の開発体制は、台湾の標準化戦略と関係がある。すなわち、台湾では、(輸出産業や
OEM が主導的なせいか)、基本的に“国際整合性”が標準化の基本戦略で、それも完全翻訳
規格を、早期に発行することが行われている。国際標準発行後 2-6 カ月で現在はこの戦略
が実施されていると言っている。
体制的に言えば、国家標準策定提案と言うのは、翻訳規格の発行提案であって、独自で
はないので、翻訳の必要性を認めた国際標準が CNS として翻訳を委託されることになる。
翻訳は、どうやら技術の専門家によって行われている模様で、しばしば英語本文の誤りや
曖昧さが見つかると言っている(これは日本でも同じ。中国やフランスも完全翻訳好きだ
が、このようなことは経験していない)。このような完全整合が中心であるが、技術開発
の努力は、標準そのものの実現・実装技術などに集中し、OEM としての競争力強化に注力す
るという返事が返ってきた。
課題は、外交上の問題で、国際標準化機関 ISO や IEC に台湾が加盟していないことであ
る。BSMI は、台湾の意思を国際標準に反映したり、提案したいと考えているが、中国との
関係で、それが出来ないことである。
台湾は、それなりの技術力をもち、産業もあるので、何らかの方法で、その意思を実現
すべきだと思われる。
たとえば、少なくともオブザーバメンバになるなどが考えられる
が、実現していない。
BSMI 副局長との今回の調査での話し合いでも、依然重要な課題として残っている模様で
あり、今後、日本として何ができるかが、今後の台湾との協力関係形成のカギとなると考
えられる。但し、案件によっては、(政治的に安定している時は)中国メンバの中に台湾
の代表が参加していることもある。さらに、今回の調査では、個人的なコンサルタントを
通した活動も活発に行っている模様である。
台湾から米国に数 10 年前に帰化し、米国でそれなりの仕事を終え、教鞭を取っていた人
が、台湾に住み、旧知の人々とのパイプ役などを積極的に行っている。このことで何とか
関係を維持している模様である。また、これらの人々の中には中国から米国への留学生と
のチャンネルを積極的に維持活用している向きもある。
なお国際整合という意味では、IT 関連標準の 99%は JTC1 の翻訳規格で、残り 1%は文化文
字に関するものである。その他全体では、77%が翻訳規格で、残りは国際整合以前の旧 JIS
の翻訳規格である。
独自標準として LED 交通信号、LED 街路灯などを検討中であり、国際提案を検討中である。
194
5.3 タイおよび
タイおよびその
およびその他
その他主要国の
主要国の状況
5.3.1
.3.1 タイ
a. 体制
タイの標準化機関は、工業省(MOI)傘下の工業標準研究所(TISI)である。TISI は、国内及
び国際標準化の代表としての標準機関であり、合格品質を達成する国産品の促進、支援や
開発を通じて国家の標準化業務に関して管理責任を持つ。具体的には以下の役割を持つ。
(1) 国の水準化業務の促進、開発のための奨励、ガイドラインや対策を勧告する。
(2) タイの産業規格関連法やその他の関連法令を施行する。
(3) 標準化において、関連する技術共同合意への参加を含む、関連する地域、外国や
国際組織や機関との協力調整を行う。
(4) 関連するシステムの規格認定に関する事項、ラボの資格や適正能力の認定や人材、
トレーニング・コースやトレーニング・コースの提供者の登録を行う。
(5) 国の標準化データや情報に関する業務を行う。
(6) 標準化を通じて、公共・民間両部門における組織、人材開発を促進し、実施する。
(7) その他、法令により義務付けられた、あるいは省や内閣により委任された業務を
行う。
しかし実際は、TISI は色々な専門機関に審議の委員を依頼したり、他省の研究機関と SDO
としての MOU を締結したりしており、それぞれの技術担当省庁の研究所が実質的に標準開
発を行っている(逆に TISI に技術的な機能はほとんどない)
。 IT や電子技術に関しては、
国家電子コンピュータ技術センター
(NECTEC)
が MOU を結んでいる機関の一つである(NECTEC
は 科 学 技 術 環 境 省 傘 下 の 国 立 科 学 技 術 開 発 庁 ( National Science and Technology
Development Agency, NSTDA)の下部組織で、法定政府機関として独立した)。
またタイは省が細分化されているために、TISI への協力機関は多岐にわたり、今回の調
査での、TISI の IT および電子産業担当官も、その全貌を把握しきれないといっているくら
いである。例えば、省エネ関連はエネルギー省で、同期電動機の省エネ基準などは同省が
SDO になっている。
このために、タイの標準化に対応するためには、担当グループをいかに早急正確には把
握するかにかかっている。
IT と Electronics に関しては、これまで国家科学技術開発局(NSTDA)の副長官が TISI
の関連分野の委員会の委員長を務めていたが、彼の昇格(2010-6 予定)後の対応を見守る
必要がある。
タイも、これまでは、先進国の標準を利用するという状態であったが、近年になって、
195
特に国として関心があり、専門家個人も関心を持った場合には、国際標準活動に積極的に
参加するというように変化している。最近では SC7 の新 WG の主査の位置なども獲得するよ
うになっており、今後逐次積極的な分野を拡大すると想定される。
一方、TISI の担当官の話では、この新 WG の主査就任も、国家戦略とは無関係で、個人的
な関心で、国は経済的な支援なども行っていないといっており、関心は薄い。
むろん、TISI 主導の標準化や標準そのものの研修はないが、各 SDO の主催の標準研修など
は、SDO の必要に応じて開催される。今回の NECTEC 主催のタイ語版 QR コードの TIS の対
システム開発業者向け研修もこの一つと言える。
5.3.2
.3.2 インド
インドの標準化活動の動きは、インドの国際標準化活動での活動が低調なこともあって
(例えば、JTC1 の全ての SC のメンバなのに、会議への参加どころか投票もしない場合が多
い)、把握することが困難な状態である。しかし、インドの関連産業の発展にともなって、
新しい動きが期待され、また、組織が産業寄りではないので、特別な状況調査が必要でな
いかと思われる。
インドの標準化機関は、消費・食料・公衆分配省(MoCFPD)の消費者局(DoCA)の下のイ
ンド規格庁(BIS)でありインド国家標準(IS)と国際標準への対応を行っている。他方、イ
ンドの発展産業は、情報技術省(MIT)や商工省(MCI)の担当である。
このため、BIS と MIT などとの連携や調整の状態や、方針・戦略のすり合わせ状況の確認
が、インドの標準化を理解するに必須と考える。インドの IT 産業の成長ぶりなどの情報が
多いが、この種の情報は皆無である。
また、インドの電子・情報通信産業の中心地と BIS のあるニューデリーとの地理的差に
も問題点があるように感じられる。
5.3.3
3.3 マレーシア
マレーシアの標準化は、科学技術革新省(MOSTI)の下のマレーシア標準庁(SM) が担当で、
実務はシリム公社(SIRIM)が実行しており、全ての分野を担当している。
しかし、先進国のような SDO はなく、必要に応じて SIRIM が学識経験者を集めて国家標
準を開発することになるが、それぞれの技術に精通した専門家というよりは、(本当の意味
での)学識経験者で委員会を構成する事が多い。したがって、国家標準と言っても国際標
準に準拠したもの翻訳標準に近い。
また、SIRIM の役割は、どちらかというと既存や新規発行された標準の普及啓蒙が中心で
196
ある。これは、国内産業が、外資系企業が中心であるので、致し方のないところかもしれ
ない。
ただし、マレーシアの関連組織図だけ見ると立派に出来ているので、往々にして積極的な
活動を予想している向きもあるが、実体はそうではない。
5.3.4
.3.4 シンガポール
シンガポールの標準化の担当官庁は、貿易産業省(MTI)傘下のシンガポール標準・生産
性・革新庁(SPRING)であるが、情報通信技術については、情報通信開発庁(IDA)が事務局を
行う IT 標準委員会(ITSC)の担当となっている。
シンガポールは、標準は国の産業が通商に依存し、基本技術を外国に依存しているので、
標準は先進国が開発し利用するものという方針である。国際標準に関しても国際会議の招
致などには熱心であるが、開発への参加は消極的である。SPRING の“標準活動へのお誘い”
のパンフレットでも、国際標準は先進国の購入仕様書と位置付け、また、最も安価な、先
進技術導入手段と謳っていることはシンガポールの特徴をよくあらわしている。
197
6. 各国の
各国の環境・
環境・リサイクル政策
リサイクル政策
環境に関する関心はアジアにおいても高まりを見せており、IT 産業界を含み、製造業な
ど多くの分野で省エネ、リサイクルが推進されている。
IT 産業においても、グリーン IT(IT の省エネ、IT による省エネ)及びリサイクルの動
きが出てきている。
以下に、アジア域における環境・リサイクルに関する主な動きを報告する。
《韓国》
韓国》
2009 年 5 月に韓国政府は、グリーン成長の根幹となる「グリーン IT 国家戦略」を発表し
た。戦略は「IT 部門のグリーン化(Green of IT)」、
「IT 融合によるグリーン化(Green by IT)」
の 2 テーマ、9 つのコア課題で構成されている。政府は 2013 年までに 4 兆 2,000 億ウォン
(約 4,998 億円)を投入する計画で、5 万 2,000 人の新規雇用を見込んでいる。
<目標は「グリーン IT の主導国」>
大統領直属の「グリーン成長委員会」は 2009 年 5 月 13 日に会議を開き、「グリーン IT
国家戦略」、
「重点グリーン技術開発と商用化戦略」など、4 つの議題を論議、その内容を発
表した。
特に、「グリーン IT 国家戦略」は、李明博政権の重点政策の 1 つである「グリーン成長」
の根幹になるもので、「低炭素グリーン成長(2008 年 8 月)
」ビジョン発表以来、各官庁で
推進してきた関連政策を網羅した。政府は、戦略を推進することで、
「IT 強国」から「グリ
ーン IT 主導国」になることを目標としている。また、戦略推進のため、2013 年までに 4 兆
2,000 億ウォン(約 4,998 億円)を投入する計画で、7 兆 5,000 億ウォン(約 8,925 億円)
の生産誘発効果、5 万 2,000 人の新規雇用創出、1,800 万トンの二酸化炭素(CO2)排出低減を
期待している。
同戦略は「IT 部門のグリーン化」と「IT 融合によるグリーン化」の 2 部門に分けられ、
それぞれのコア課題内容は以下のとおり。
(1) IT 部門のグリーン化
a. World Best グリーン IT 製品開発と輸出戦略化
低電力消費・高効率の IT 機器開発・普及を通じ、CO2 を画期的に低減し、世界グリーン
IT 市場をリード。2020 年までにエネルギー消費量の 20%、CO2 排出量を年間 205 万トン以
上低減する。
b. IT サービスのグリーン化促進
IT サービスのグリーン化を通じ、知識サービス産業のグリーン成長基盤を強化する。
198
IDC(Internet Data Center 130 ) の グ リ ー ン 化 、 ク ラ ウ ド コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ (Cloud
Computing131)普及による電力効率の 40%向上、グリーン IDC プラントモデルの発掘と輸出
を実現する(2020 年)。
c. 10 倍速い安全なネットワーク構築
2013 年までに現在より 10 倍速い超広域融合ネットワークを構築する。すなわち、線 100
メガを 1 ギガに、無線 1 メガを 10 メガに引き上げる。実感型映像会議、リモート教育/医
療などのためのインフラを提供する。
(2) IT 融合によるグリーン化
a. IT による低炭素業務環境へ転換
仕事のやり方の転換やエネルギー管理システム普及などにより、低炭素・グリーン業務
環境を構築する。リモート協業構築、紙文書量の最少化などを通じ、CO2 を 315 万トン低減
する(2013 年)。ビルディングエネルギ管理システムの拡散を通じ、エネルギー使用量を
20%削減する(2013 年)
。
b. IT 基盤グリーン生活革命実現
IT 最適活用を通じ、教育・医療・文化・居住管理など、生活全般をグリーン化する。リ
モート教育によって私教育費用の 10%削減、医療機関訪問回数を 30%削減(2020 年)
。生
ゴミ 20%減量、新築住宅のエネルギー効率を 20%向上(2013 年)
。
c. IT 融合製造業グリーン化
産業団地や製造業に IT 技術を適用し、エネルギー効率を 8%向上、CO2 を 685 万 2,000 ト
ン低減する(2013 年)。
d. スマートグリーン交通・物流体系への転換
交通システムのインテリジェント化・物流インフラ先端化を通じ、グリーン交通・物流
体系の基盤を造成する。交通渋滞の最少化により CO2 を 107 万トン、物流処理の効率化に CO2
を 172 万トン低減する(2013 年)。
e. 知能型電力網インフラ構築
知能 型電力網 インフラを構 築し、電 力管理の効率 化とエネ ルギープロシ ューマ ー
130
IDC は、顧客のサーバを預かり、インターネットへの接続回線や保守・運用サービスなどを提供する施
設。
131
クラウドコンピューティングとは、インターネット上にグローバルに拡散したコンピューティングリソ
ースを使って、ユーザーに情報サービスやアプリケーションサービスを提供することをいう。
199
(Prosumer132)を活性化する。世界の次世代電力網スマートグリッド(Smart Grid133)市場を確
保、国家電力エネルギー消費量を 6%低減する(2030 年)。
f. 知能型リアルタイム環境監視と災害早期対応の体制構築
総合的・体系的環境監視を通じ、気候変動に早期対応し、大規模 CO2 発生を誘発する災害
を積極的に予防・対応する体制を構築する。水質汚染の調査期間を 15 日からリアルタイム
に短縮(2013 年)。火災緊急出動時間を 8 分から 5 分に短縮する。(2011 年)
<27 大重点グリーン技術を選定・推進>
「グリーン IT 国家戦略」のほか、
「グリーン成長委員会」会議で論議・発表された内容
は以下のとおりである。
(1) 重点グリーン技術開発と商用化戦略
政府は 2009 年 1 月 13 日、グリーン技術強国に跳躍する基盤を強化するため、
「27 大重点グ
リーン技術」を選定した。選定された 27 技術を「短期集中投資」、
「中期集中投資」、
「長期
集中投資」、「長期純増投資」の群に分類し、投資規模、技術水準、商用化タイミングなど
を設定した。27 技術への投資を 2008 年の約 1 兆ウォン(約 1,190 億円)から 2012 年には
約 2 兆ウォン(約 2,380 億円)に拡大し、現在、先進国比 51%水準のグリーン技術を 2012
年には 80%、2020 年には 90%まで上げることを目標としている。また、27 技術開発を通
じ、2012 年には CO2 を 4,700 万トン、2020 年には 1 億 3,000 万トン低減する効果があると
予測した。
(2) 2009 年グリーン技術研究開発施行計画
2009 年のグリーン技術に対する政府の研究・開発(R&D)投資を前年比 35%増の 1 兆 9,547
億ウォン(約 2,326 億 930 万円)と設定した。
(3) グリーン技術標準化戦略
グリーン技術・産業発展の基盤を強化し、輸出戦略化を支援するため、グリーン産業別
標準化と国際標準化戦略を作成した。同戦略の骨子は、a.「グリーンスタンダード標準特
許支援班」の設立・運営、b.電子製品の環境フレンドリー設計標準の導入、c.スマートグ
リッド、LED 照明、IT 融合システムなどの戦略的国際標準化をリード、などである。
韓国では、昨今の地球温暖化対策についてのグローバルな取り組みに触発されたのか、
132
プロシューマは、消費者(consumer)と生産者(producer)を組み合わせた造語で、消費者が生産に加わる
こと。
133
スマートグリッドは、エネルギーとコストを節約するため、IT 技術を使って供給者と消費者の間の電力
伝送を行う技術。
200
環境・リサイクルの面からも IT 国際協力がなされている。
【コラム】最終ゴールはビジネス?- 韓国のリサイクル政策
韓国では、昨今の地球温暖化対策についてのグローバルな取り組みに触発されたのか、
環境・リサイクルの面からもIT国際協力がなされている。韓国情報文化振興院は1998年か
ら2006年まで海外情報通信機器支援事業としてアジアをはじめ各国へ中古PC1万2,243台を
支援してきた。当然これに伴うIT援助が続く。同期間に、海外戦略国家(地域)のIT政策
立案者2,102人を韓国へ招聘し、韓国のITを体験させ、情報化モデルとして活用できるよう
にさせた。1-2週間の短期研修では短すぎたので、2003年からは3-4週間に延長して追加課
題を履修させた。今後の課題は、国家情報化総括責任者(CIO)育成、モバイル政策の策定な
どの教育をより高度化させ、海外の人的ネットワークを構築した成果を昨年よりも拡大さ
せることである。また、その他の課題として、在外公館によるIT化支援先の推薦、国内企
業との連携強化のための業界協力、国際機構との協力関係樹立、IT高級管理者育成、アフ
リカの情報化促進がある。これらを通じ、68ヵ国、261人に招聘研修を実施した。高位政策
決定者らに韓国での招聘研修を受けさせることにより、各国政府が推進する各種政府主導
の情報化プロジェクトに韓国企業が参加しやすい環境を作る目的である。こうした活動を
通じて、韓国企業がインドネシア政府の発注した600万ドル(約6億9,000万円)相当の地域
情報化システム入札に参加し、警察庁に3,600万ドル(約41億4千万円)の軍儒装備を輸出
した。パキスタン中央銀行には400万ドル(約4億6,000万円)相当の情報システムのメンテ
ナンス事業、アゼルバイジャン電子政府構築事業、カザフスタン郵政最新化事業、バング
ラデッシュ通信網最新化とメンテネンス事業、ベトナム教育部のIT教育製品の設置契約を
成立させた。KADOはこれらの成果を踏まえ、アフリカ9ヵ国より16人を招聘し、3週間の情
報化政策特別課題を受講させている。また、情報通信省大臣が外遊の際や国際会議開催時
に現地の元研修生とのフォーラムを開き、事後のネットワーク維持にも努力している。2007
年はエジプト、アルジェリア、モンゴル、ブルガリア、カザフスタン、ウズベキスタン、
カンボジア、インドネシアの人的ネットワークのフォローアップ管理のために「デジタル
機会フォーラム」を創立した。
出典:「アジア情報化レポート 2009 韓国」 財団法人 国際情報化協力センター
201
《中国》
中国》
一方、中国では、中国移動(China Mobile)が、政府による省エネ・CO2 排出削減の呼びか
けに応え、
「今後 3 年以内に 電気使用量を 2008 年度比 20%削減し、電気を節約する」とい
う目標を打ち出した。工業情報化部と中国移動は 2009 年 11 月 11 日、北京で「自発的省エ
ネに関する覚書」に調印した。中国の通信業界で自発的な省エネに関する覚書に調印した
のは今回が初めてである。この目標を達成のため、中国移動は政府の支援をも受けて「エ
コ行動プラン」を推進する。
今回の覚書は、工業情報化部設立以来、初の自発的な省エネに関する覚書となる。工業情
報化部は今後、業界、地域、企業の状況を見ながら、省エネ・CO2排出削減に向けた新しい
メカニズムや方法を模索し、エネルギー利用効率の良い、資源節約型で、環境にやさしい
エコ産業を発展させていく方針である134。
《マレーシア》
マレーシア》
マレーシアのシマンテック社は、IT 部門の幹部はコスト低減と環境責任の両面から、グ
リーン IT 戦略とソリューションに大きな関心を寄せているとの報告書をまとめた135。シマ
ンテック・マレーシア社長の Suzie Tan 氏は、
「過去 12 ヵ月間にグリーン IT は、単なるエ
ネルギー節約ということだけではなく、組織の環境責任を果すという広がりとして、グリ
ーンイニシアティブを牽引するという実行力を発揮するようになってきた。また、マレー
シアで実施したアンケート調査結果は、アジア太平洋地区や日本での調査と一致しており、
72%がグリーン IT 戦略への取組みを始めていると回答しており、残りの 28%はすでに実施中
と回答している。」と述べた136。
《フィリピン》
フィリピン》
フィリピンでは、携帯電話キャリア大手の Smart Communications 社(Smart 社)が、これ
まで風力発電や太陽光発電による電力を携帯電話基地局の電源として使ってきたが、今後
は燃料電池を活用する計画を準備している。Smart 社は、燃料電池ソリューションを提供す
る企業と共同でマニラ圏外の携帯電話基地局での燃料電池技術試験を既に成功させている。
手はじめに、6 ヶ所の基地局におけるバックアップ電源となる発電機をディーゼル燃料から
燃料電池に切り替える。これは、フィリピンの通信企業としては初の試みである。これに
より、二酸化炭素排出量の削減と騒音公害解消だけでなく、保守費用の大幅な削減も期待
される137。
134
中華工商時報 2009/11/12
報告書「Green IT Regional Data - Global」は以下よりダウンロード可。
http://www.symantec.com/content/en/us/about/media/GreenIT_2009.pdf
136
Bernama 2009/06/27
137
Inquirer 2009/06/19
135
202
《ベトナム》
ベトナム》
ベトナムでは、Nguyen Tan Dung 首相が承認した、環境に優しい産業構造への転換を目的
にした「クリーンな産業生産戦略」の内容が示された。政府発表によると、2020 年までに
大手や中堅を中心に、製造企業の半分を対象に環境技術の導入とエネルギー消費量 8~13%
削減の達成を目指すものである。主として環境に対する企業の認知と能力の向上、環境に
優しいクリーンな生産に関するデータベースとウェブサイトの構築・運営、技術支援の提
供、環境技術助成機関のネットワーク構築、環境産業の生産を支える資金メカニズム改善
―の 5 つの事業計画を推進する。
また、産業開発戦略の中に、環境に優しい製品の基準を新たに設ける。政府はほかに、
地場、外資企業による環境技術開発を後押しするため、環境関連の事業計画に優遇融資を
提供する138。
上記以外の国々でもグリーン IT、省エネ、リサイクル、環境保護の動きはあるものの、
目だった動きとしては捉えられていない。
138
ベトナム政府ウェブサイト
2009/09/11
203
第二部
ここでは 3 月 8 日~11 日に開催されたアジア OSS ワークショップについて報告する。
1.アジア
1.アジア OSS ワークショップの
ワークショップの概要
東南~南アジア各国では、近年、オープンソースソフトウェア(以下「OSS」という。)
の普及が推進され、2007 年以降、公的部門を中心に具体的な導入が開始されている。この
動きは、アジア IT 市場での大きな“うねり”となりつつある。アジアのローカル IT 市場
への参入に苦心している我が国 IT 産業にとっても、この変革は本格的市場参入の有効な梃
子となりうる。
このうねりを確実な流れとし、OSS 導入普及をさらなる拡大するためには、OSS の利用及
び開発の両面において OSS 人材を育成していく必要がある。各国には、OSS の利用・開発に
熱心な指導者集団であるコミュニティが存在しており、これらの活動を更に活性化するこ
とにより、OSS の人材育成及び導入普及を促進していくことが求められる。
従来、アジアにおける OSS の人材育成は我が国の支援を得てなされてきたが、この過程
を通じて各国のコミュニティが育成され、自律的に展開可能な段階にさしかかっている。
このため、各国の OSS コミュニティから専門家を集めて、効率的人材育成及び今後の更な
る普及拡大に向けた方策と体制について検討する必要がある。
上記の趣旨背景に沿って、今回のワークショップは、各国における OSS 分野での影響力の
強い関係者(指導者、ディシジョンメーカ等)のレベルアップと研修テキストの作成を目
的とした「OSS マスタートレーナーズワークショップ」
(以下「ワークショップ」
)と、その
成果を基にして開発者やユーザ等の指導を行う「OSS エッセンシャル研修」
(以下「研修」
)
の事業スキームで構成した。
ワークショップは、アジア OSS ワークショップとしてシンガポールで 3 月 8 日から 3 日間
開催した。アジア 16 ヵ国から 55 名の参加を得て相互研鑚を行い、人的ネットワークを拡
大した。今後はこれらのワークショップを通じて形成されたアジア OSS コミュニティが自
主的に活動を継続していくことが合意された。また、研修については各国で自主的に開催
できる国が多くなっており、今年度も各国で自主的に開催されている。
2.事業内容
2.事業内容
OSS 普及に向けた取り組みが進んでいるシンガポールにおいて、アジアを中心に 16 ヵ国
から関係者を招聘した上でワークショップを開催し、OSS の人材育成及び導入普及促進を図
った。シンガポールからの出席者を含めて 55 名が参加した。
204
アジア OSS ワークショップ実施概要
実施日
2010 年 3 月 8 日(月)-10 日(木)
Rm2.01 and Rm2.02 (Level two of Block 82)
SIM University (Clementi Campus)
461 Clementi Road, Singapore 599491
実施場所
3.プログラム
3.プログラム
主要なプログラム内容(3 日間)は以下のとおりである。
・ソフトウェアツールと関連する開発状況
・OSS の教育と普及
・仮想化技術/ビジネス、クラウドコンピューティング
・プログラミングに関する最新の話題
・OSS アプリケーション(ERP、CRM、e ラーニング、など)
・ビジネスモデルとビジネスケース
・オープンソースの事業戦略と機会
・アジア OSS コミュニティの今後の活動について
プログラム詳細は資料 1.を参照。
4.参加者
4.参加者
アジア 16 ヵ国の産学官より OSS 関連のリーダ、専門家など 55 名
国名
参加者数
Bangladesh
2
Brunei
2
Cambodia
2
India
3
Indonesia
4
Japan
6
Laos
1
Malaysia
5
Myanmar
2
Nepal
2
Pakistan
3
Philippines
2
205
Singapore
13
Sri Lanka
3
Thailand
3
Vietnam
2
Total
55
参加者リストの詳細は資料 2.を参照。
5. ワークショップでの
ワークショップでの検討内容
での検討内容
5.1 OSS の開発、
開発、活用、
活用、導入などについて
導入などについて
16 ヵ国の参加者がそれぞれ自分の国での OSS の開発、活用、導入などの活動を紹介し、
情報共有を行うと共に質疑や討議を通じて理解を深めた。内容的には技術的なものから、
OSS 普及政策、教育、ビジネスモデルやケーススタディなど多岐にわたり最新のアジア各国
の OSS に関する動きを共有できたことは有用であった。アンケート結果からもそのことが
うかがえる。
日本からは、Linux Foundation(日本)、日立情報システムズ、富士通、富士通 SSL、(株)
OCC の方々に講演いただいた。
5.2 OSS の利用、
利用、開発の
開発の促進のためのより
促進のためのより効果的
のためのより効果的な
効果的な人材育成のあり
人材育成のあり方
のあり方
アジアにおける OSS 普及のボトルネックは技術人材の不足であったが、AOSS ワークショ
ップや各国での OSS トレーニングを継続的に実施し、累積 1,500 名以上に達している。こ
のことが一助となり、OSS の活用、普及に対する各国政府や IT 産業界の理解が進み、アジ
アでは OSS 活用が大きなうねりになっている。
今回のワークショップにはアジア各国の政府、教育界、産業界で OSS を推進するキーパー
ソンが参加しており、このワークショップでの討議は各国の OSS 推進に少なからぬ影響を
与えるものになっている。既に各国では人材育成の自律的展開に行ってきており、その影
響力はさらに拡がっている。また、このワークショップでは OSS 教材の開発と継続改版を
行っており、これらの取り組みにおいて、得られた OSS 研修の教材とカリキュラムを一元
管理し、常にアップデートされた形で、OSS コミュニティに Web により提供している。この
活動も自律的活動として継続されることになった。なお、この Web 提供により、OSS の研修
スキーム及び研修に取り入れられた日系 IT 企業のソフトウェア製品に関する自律的な波及
に貢献した。
また、今回のワークショップへの参加者は約半分が初めての参加者であり、従来からの参
加者に加えてさらに新たな人的ネットワークの拡大につながっている。
206
5.3 アジア OSS(AOSS)コミュニティ
OSS(AOSS)コミュニティの
コミュニティの自律的活動について
自律的活動について
5.3.1 背景
CICC では 2005 年以来、METI からの受託事業として東南~南アジア各国の OSS 人材育成に
取り組んできた。ワークショップを開催し OSS 指導者を育成するとともに、これら指導者
と連携して各国で OSS 技術者・エンドユーザへの研修を実施してきた。これらワークショ
ップや研修には日本企業も参加し、我が国産業界の OSS ビジネスの国際展開のための人的
ネットワークの構築や、我が国の製品・サービスについての擦り込みに貢献してきた。
これまでに、ワークショップを 5 回、研修を 19 回実施し、OSS 普及のための人的インフ
ラ(AOSS コミュニティ)の構築に成功した。また、CICC の活動と併せ、商用ソフトのロイ
ヤルティ支払い圧力を背景に、途上国各国で急速に OSS へのシフトの動きが高まり、現実
に OSS 普及の成果が現れてきている。
本活動は、最終的にアジア各国による自律的な人材育成のサイクルに移行させることを目
標としてきた。今回のワークショップを CICC 事業の最終として、今後は AOSS コミュニテ
ィ自身による自律運営体制に移行する。
5.3.2 自律運営移行への
自律運営移行への基本方針
への基本方針
(1)研修
アジア各国で実施する研修については、従来から CICC のみが主催するのではなく各国の
イニシアチブを後押しする形をとり、次第に各国の自律運営の度合いを高めてきた。現在
では、各国それぞれが自前かつ自主的に自国での研修を実施する能力を備えるに至った。
このため、研修については各国コミュニティでの自主運営に委ねることが可能である。
(2)ワークショップ
多くの各国主要メンバーは、AOSS ワークショップでの相互研鑚・意見交換を引き続き重
要視しており、自律運営での継続を希望している。また、ワークショップでは各国の研修
で使用する教材を作成・更新してきているため、各国での研修実施を促進するためにもワ
ークショップの継続が望ましい。このため、ワークショップの運営を AOSS コミュニティに
よる自律運営体制に移行することが今回のワークショップにて決定された。
5.3.3
5.3.3 具体的運営方法
具体的な運営方法については以下のように決定された。
207
(1) 運営チーム
AOSS コミュニティから数名のコアメンバーを選び、ワークショップの運営チームを形成
する。当該チームが毎年のワークショップを企画・運営する。今後 1 年間はシンガポール、
マレーシア、タイ、インド、スリランカ、インドネシア、日本の主要メンバーが担うこと
になった。
(2) 編集チーム
ワークショップで作成・改訂する教材は、これまで CICC が管理し、AOSS コミュニティの
各国のメンバーはウェブ上からダウンロードし利用することができた。今後は、編集チー
ムとしていくつかの技術分野毎に責任者を設け、編集チームに管理を移行する。後発途上
国の関係者は、今後ワークショップに自費で参加できない場合も想定されるが、上記によ
り最新の教材を自国の研修に引き続き活用することが可能である。
(3) 開催場所
各国の持ち回り開催とする。次回はインド、マレーシア、シンガポール等から提案があり、
今後運営チームで詰める。
(4) 日本産業界への連絡体制
ワークショップの開催の際には、CICC が AOSS コミュニティからの開催通知を受け、ソフ
トウェア業界団体を通じて日本企業に案内する。これにより、海外での OSS ビジネスに関
心のある企業に対して、AOSS コミュニティへのアクセスルートを確保している。
(5) ワークショップ開催における費用負担
ホストにより条件は変わることになるが、概ね以下のようになる。
・ホストは開催場所の提供、宿泊施設の紹介、場合によっては昼食等の提供
・参加者は旅費(航空券、滞在費)を自己負担とする。(参加者によっては所属する組織
が負担する場合もある。
)
・ホストが若干名の旅費滞在費を負担することが可能な場合も想定される。
(6) その他の活動
年 1 回のワークショップ以外にも各国でのセミナーなどのイベントに AOSS コミュニティ
の一部のメンバーが参加するなど、自由な交流を行う。
208
6. AOSS ワークショップの
ワークショップの成果と
成果と課題
今回のワークショップ開催によって今後の AOSS コミュニティが自律的運営に移行して継
続することが決まったことは、今までの成果の積み重ねをさらに将来へ引き継ぐものであ
り、アジアにおける OSS 普及にとって大きな成果である。このコミュニティによる活動が
日本の IT 産業界と緊密な連携を継続できるように運営チームのメンバーに期待したい。
7. 参加者による
参加者によるフィードバック
によるフィードバックの
フィードバックの要約
参加者によるフィードバックを、最終日に回収し集計した。下表のようにワークショップ
そのものに対して高い評価を得ることができた。施設等の評価が若干低くなった。これは
今回郊外にあるSIM大学を会場にしたため、ホテルから会場まで専用バスを用意したが、若
干時間がかかることになったためと思われる。なお、評価は1から5までとした。
5 = Excellent、 4 = Good、 3 = Average、 2 = Below Average、 1 = Poor
ワークショップの評価
How well did the workshop meet your expectation?
4.49
How would you rate the workshop contents?
4.33
Industry presentation?
4.02
Hands-on, case studies and discussions?
3.89
How would you rate the group work session?
4.16
Sufficient time for group work?
4.01
参考までに参加者からの個別フィードバックの主な内容を下記に示す。
1)ワークショップの中で最も好ましかった内容は?
・グループワークとケーススタディ
・参加者全員が情報と実践経験の共有に熱心でよかった。
・OSS によるビジネスケースとケーススタディ
・OSS 愛好家たちと会えたこと。雰囲気がよかった。
209
2)ワークショップへの改善提案は?
・OSS コンポーネントの実践的な活動やインストールなど
・PHP、OpenOffice、Linux などの開発グループなどからスピーカーを招待しては
・ホテルとワークショップ会場は近いほうがよい。今回は遠かった。
・ドキュメントも準備して欲しかった。
・e-learning にもっと力を入れて欲しかった。
・ワークショップ開催前にドキュメントをオンラインで共有できればよい。
・プレゼンやディスカッションにもっと時間があればよかった。
・テクニカルな内容とその他の内容のセッションを分けたほうがよい。テクニカルな
内容に充分な時間が取れなかった。
・トピックスと内容に品質の改善が必要なものがあった。
・ワークショップはもっと頻繁に開催した方がよい。
・もっとエキスパートを集めて欲しい。
・もっと先進的な OSS プログラミングに集中して欲しい。
3)興味深かったセッションは?
・グループワーク
・産業界からのプレゼンテーション
・OSS のビジネスモデル
・AOSS コミュニティの将来についてのグループ討議
・ERP、CRM などのセッション
・各国状況のプレゼンテーション
・オンラインラーニング
・セキュリティのセッション
4)その他のコメント
・たくさんのすばらしい OSS 参加者と会うことができて、よい経験になった。
・このワークショップは OSS 関係者にとっては OSS コミュニティを構築する上で大変
役立っており、CICC の今までの活動に感謝する。
・今まで 5 年間続けてくれたことに感謝する。自分たちの国でのイベントには最大限
の支援を惜しまない。
・このコミュニティは是非とも継続したい。
・今後の開催地は生活費が安くて交通の便利なところがよい。
・よいワークショップだった。自分たちの国で仲間たちとフォローする。
210
第三部
ここでは、調査の過程で各国・地域メディアから収集した情報をテーマごとに分類して
出典とともに記載する。
1. IT・
IT・電気電子産業振興施策の
電気電子産業振興施策の動向
【IT 政策】
◆[2010 年情報産業の 3 大発展目標を発表]:中国
工業情報化部の李毅中部長は 21 日、2010 年中国情報産業の 3 大発展目標を明らかにし、
情報産業による経済社会へのサービス貢献を今後も強めていくと述べた。3 大目標は以下の
とおりである。
(1)3G 及び中国版 3G 規格 TD-SCDMA の発展をきっかけとして、通信の事業モデルの発展を
促進する。
特に中国版規格の TD-SCDMA 及び TD-LTE 技術の開発、規格研究、産業化を着実に行う。
付加価値サービスへの政策支援を強化し、融合型技術やサービスの発展を促進し、融合化・
マルチメディア化・集積化された総合情報サービスへのモデルチェンジを促進する。電気
通信網・放送網・インターネット網の「三網融合」を前進させ、通信と放送の相互乗り入
れを推進する。
(2)次世代ネットワークの発展を計画・指導する。
「モノのインターネット」産業を育成し、技術産業発展計画と応用推進計画を制定し、
中核となるセンサー、機器、システム、サービスを発展させる。国家センシング情報セン
タを建設し、モノのインターネットと従来のインターネット、及びモバイルインターネッ
トを融合し発展させる。
(3)集積回路、新型ディスプレイ、電子設備・材料、基礎ソフトウェア分野に対する支援
を強め、中核となる自主技術を獲得する。
電子情報製造業の製品構造を調整し、国内市場の拡大に努める。液晶、プラズマの産業
化と次世代ディスプレイ技術の開発を推進し、カラーテレビ産業の事業転換と高度化を急
ぐ。(中国新聞網 2009/12/22)
◆[国務院、2015 年までに電信網、放送網、インターネットの 3 網を融合]:中国
温家宝総理が 13 日に召集した国務院常務会議において、電信網、放送網、インターネッ
トの 3 網融合を加速させることを決定した。
会議は「電信網、ラジオ・テレビの放送網、インターネットの 3 つの網の融合と発展を
推進し、相互乗入れとリソース共有を実現し、音声・データ・ラジオ・テレビなど各種サ
ービスを利用者に提供することは、情報文化産業の発展を促し、国民経済社会の情報化レ
ベルを高め、日々多様化する国民の生産・生活上の需要を満たし、国内消費を牽引し、新
211
たな経済成長軸を形成する上で、重要な意義を持つ。中国は 3 網の融合を推進するための
技術条件、ネットワークインフラ、そして市場を備えており、既に 3 網の融合を加速させ
る時期に入った」と指摘した。
また、3 網融合の段階的目標として、2010-2012 年は、ラジオ・テレビの放送と電信サー
ビスの双方向乗入れの試行を重点的に行い、3 網融合の秩序を確保するための政策や制度を
模索する。2013-2015 年は、双方向乗入れ試行の経験を総括し、3 網融合を全面的に発展さ
せ、融合アプリの普及、適正競争のある産業構造を形成し、3 網融合に適応した制度と職責
を明確にし、新しい管理監督体制を構築することを挙げている。(人民日報 2010/1/14)
◆[国家情報化予算、3 兆 4,000 憶ウォン]:韓国
1 月 4 日、企画財政部と行政安全部は昨年末に国会を通過した 2010 年度の国家情報化予
算と電子政府支援事業予算を発表した。それによると、国家情報化予算は、国家情報化戦
略委員会が 47 機関 584 件の情報化事業について審議し、当初の政府案より 500 憶ウォン増
額し、3 兆 4,000 憶ウォンとなった。
電子政府支援事業は昨年の 1,052 憶ウォンから 1,599 憶 8,600 万ウォンへ 52.1%も増額し
た。2010 年には事業を本格化する同支援事業には、
「国家気象観測資料の標準化と共同活用
体系の構築」、「国家統計の高度化のための汎用統計調査システム構築」、「デジタル基盤国
定共業体系の構築」、「国家外交情報統合管理体系の構築」、「省庁の福祉情報連携システム
の構築」など 8 事業が新規に加わり、総額 213 憶ウォンの予算で推進され、今年に入り本
格的にシステム構築を行い、普及を図る。また、
「民願サービスの先進化」
【注 1】、
「国土統
合情報体系」、
「企業経済力支援」、
「国家物流・貿易情報ネットワーク統合」など 14 事業に
964 憶ウォンがつく。
特に国家サイバー危機総合対策により情報セキュリティ関連の予算が急増している。昨
年、61 憶ウォンであった「ネットワーク分離事業」には 268 憶ウォンをつけ、
「セキュリテ
ィ管制センタ構築事業」に 80 憶ウォンが新規に投入される。また、
「秘密管理システム普
及事業」は昨年の 25 憶ウォンから 75 憶ウォンに増額された。
なお、政府は景気回復を目標に全体の作業費の 70%を上半期に割り当てる方針であり、昨
年 に 引 き 続 き 、 上 半 期 に 主 要 な 発 注 業 務 を 行 う 予 定 で あ る 。( デ ジ タ ル タ イ ム ズ
2010/01/05)(1 ウォン=約 0.08 円 2010/01/12 現在)
【注 1】
「民願サービス」とは、住民登録票の発行や移転届けなど、対国民サービスを総称
したものである。
◆[政府、IT 人材育成策を改定]:韓国
企業が望むソフトウェア専門の修士・博士級の高級人材育成のため、大学院を中心に「ソ
フトウェア創意研究課程」が設置される。一方、学部中心の「大学 IT 研究センタ(ITRC)」
事業は 46 事業から 2013 年までに 14 事業に縮小される。研究分野も、半導体、携帯電話、
212
ディスプレイなど 7 つのハードウェアに特化される。
これは、知識経済部が、IT 企業の需要とかけ離れた人材育成体系と雇用のミスマッチや
未来の需要に対応していないなどの問題に直面していた「国家 IT 人材養成事業」の方向を
大きく改変するもので、8 日に発表した中で明らかにされた。政府は、2013 年までに総額
4,011 億ウォンを投入し、企業の要請に基づき、基礎人材 3 万 5,000 人、高級人材 4,000 人
を育成していく。これにより、大学院の支援の割合は現在の 49%から 67%へ拡大していく。
学部支援は 2013 年までに 300 億ウォン規模に縮小し、大学院は 567 億ウォン(対前年比 40.3%
の 163 億ウォンの増加)へ拡大する。(電子新聞
2010/02/08)(1 ウォン=約 0.07 円
2010/02/09 現在)
◆[国家情報化の 10 課題を発表]:韓国
韓国政府は、3 月 10 日に国務総理と国家情報化戦略委員会の民間委員長と共同で第 2 回
国家情報化戦略委員会を開催し、国家情報化の 10 課題を発表した。同 10 課題は昨年 11 月
に発足した同委員会が 4 ヵ月の研究期間を経て導き出した、李政権の核心アジェンダであ
る。行政分野のみならず、医療、教育、産業など社会全般に情報化のフレームワークを拡
大したことに特徴がある。
10 課題は、1.統合知識インフラの構築、2.低炭素グリーン成長、3.IT を通じた新産業育
成、4.IT によるサービスの高度化、5.電子政府の高度化、6.次世代情報通信インフラの構
築、7.IT 国際協力の強化、8.デジタル福祉環境の創造、9.安全な情報社会の構築、10.情報
セキュリティ体系の強化である。
細部の実行計画では、u ヘルスケアなど IT を利用した医療体系サービスを構築するため
に法制度の改変に着手した。また、国民が国の知識情報を利用できるデータポータル
(www.data.go.kr)を下半期に公開する。なお、3D 技術を使ったコンテンツと IT の融合・複
合産業も新成長分野とみなす方針だ。
(電子新聞 2010/02/25)
(1 ウォン=約 0.7 ウォン
2010/02/25 現在)
◆[ソフトウェア海外進出支援のため、KOTRA と貿易協会を前面に]:韓国
知識経済部はソフトウェアの輸出拡大を目指し、KOTRA や貿易協会など、産業輸出支援機
関などによるソフトウェア産業への支援を前面に押し出している。これは、省庁別に分散
されていた海外進出支援を、全省庁横断的な「ソフトウェア輸出支援協議会」を設けて推
進するものである。
知識経済部は、先月発表された「ソフトウェア強国への跳躍戦略」の後続として、KOTRA
や貿易協会などの活動に「ソフトウェア海外進出支援政策」を全面改訂して施行すると発
表した。
これまで、情報通信産業振興院(NIPA)やソフトウェア関連協会を中心に展開してきたソ
フトウェア輸出支援の限界を克服するため、豊富な海外ネットワークと輸出支援事業の経
213
験を持つ KOTRA と貿易協会を前面に配置し、ソフトウェア輸出支援機能を強化する。まず、
KOTRA の 64 箇所のコリアビジネスセンタ(KBC)と 3 つの IT 支援センター、2 つのソフトウ
ェア流通センターと貿易協会の 7 つの海外支部がネットワークで接続される。また、目標
達成のため、KOTRA などの海外拠点にソフトウェアの需要発掘の義務を課す。その結果に点
数をつけ、業績評価に反映させるなど、積極的な需要の掘りおこしを奨励する。更に、市
場情報の提供、ソフトウェアのアウトソーシング、ネットワーキグ支援、現地の営業チャ
ネルの斡旋など市場開拓支援も強化する。同時に、国際機構との国際協力の強化、政府省
庁間のソフトウェア海外進出策の連携、企業のレベルに合わせたコンサルティングの提供
など、海外進出の際に必要なインフラを強化する。
(電子新聞 2010/03/23)
◆[国家環境庁、データセンタの省エネ診断プロジェクトを入札]:シンガポール
IT 化の進展に伴いデータセンタの消費電力も増加しているが、国家環境庁(NEA)はエネ
ルギー消費や効率を調査するための入札を発表した。入札書類によると、調査はシンガポ
ールにおけるデータセンタの基準や政策の策定、エネルギー効率の改善プログラムなどの
推進に役立て、データセンタ所有者や運用者の環境へ配慮した行動を支援する、とのこと
である。入札書類は政府調達のウェブサイト GeBIZ で公開され、この調査は約 9 ヵ月をか
けていろいろなタイプや大きさの 20 ヵ所のデータセンタを診断するものである。データセ
ンタからの炭素排出は船舶や航空機などからと比べるとあまり注目されていないが、
McKinsey の調査によると、典型的なデータセンタは 2 万 5 千世帯分のエネルギーを消費す
るとのことである。(The Straits Times 2009/12/18)
◆[シンガポール政府、有料 TV 事業者の独占放映番組の相互利用を指導]:シンガポール
スターハブ社とシンガポールテレコム社によるバークレープレミアリーグの放映権入札
をめぐって政府が介入してきており、独占放映番組は差別化にならないかもしれないとの
評判になっている。これは、メディア開発庁(MDA)が、ある有料 TV 事業者が落札した独
占放映権は他の事業者へも利用させることを決定したことによる。
情報通信芸術省(MICA)の大臣代行 Lui Tuck Yew 氏は、国会にて、例えばシングテル社が
独占チャネルを落札した場合には、そのチャネルはスターハブ社の加入者でも見られるよ
うにすることだ、と説明した。この方法で消費者が独占チャネルをどの有料 TV 事業者から
でも見られるようにできる、と付け加えた。
これにより新規の有料 TV 事業者は参入しやすくなるが、コンテンツプロバイダーにとっ
て は 競 争 が 無 く な り 、 価 格 面 で 不 利 に な る と み ら れ て い る 。 ( The Business Times
2010/3/13-14)
◆[シンガポール政府、有料 TV に関するパネルを設立]:シンガポール
情報通信開発庁(IDA)とメディア開発庁(MDA)は、通信業界及びメディア業界から次
214
世代双方向マルチメディアアプリケーション&サービス(Nims)パネルの 11 名の委員を選定
した。このパネルでは、この種のパネルとして初めて共通有料 TV セットトップボックスの
標準規格を検討する。この政府主導の活動は、もうすぐできるシンガポールの光ファイバ
ーブロードバンド網の有効活用の一環である。Nims パネルには政府機関からも 4 名が参加
しており、共通セットトップボックスとして提案する各種の IPTV 規格について勧告するこ
とになる。シンガポールの超高速インターネット環境を利用したい企業はこれらの規格に
準拠する必要がある。従来のセットトップボックスとは違い、新たに開発されるものは映
像配信のみでなく、セキュリティ監視など、他のインターネットサービスにも活用される
予定である。(The Business Times 2010/3/15)
◆[政府関連の電子決済ルールが近く設定されることに] :フィリピン
e-Commerce 法(共和国法 8792)が 2000 年に成立してから 10 年近くを経て、フィリピン
ではようやく政府による電子決済の実施細則 (Implementing Rules and Regulations)の完
成が間近となった。
細則の草案は、現在貿易産業省(DTI)が取りまとめている。DTI では 12 月 22 日に業界の
利害関係者からの公聴会を実施したところである。草案のとりまとめが完了すると、DTI と
財務省(DoF)の合同省令 (Joint Department Order:JADO)として発行される。
この実施細則の目的は、政府関連取引の決済方法を、より効率的かつ効果的にすること、
また政府への支払いを行う側の者へも決済手段としてのオプションを増やすことである。
フィリピンでは、多くの政府機関がオンラインでのサービス提供を行っているものの、い
まのところ支払いは全てオフラインである。例えば、事業登記をする際、オンラインで申
請は可能だが、支払いを行うためには銀行に行かなければならない。
現在議論されている JADO では、電子決済システムをもつ政府機関は、電子決済を行うこ
とによる利便性に対する料金(Convenience Fee)を課することが認められている。DTI の電
子商取引局 (E-Commerce Office)の supervising director である Maria Lourdes Yaptinchay
氏は、
「細則の発行後は、政府機関がクレジットカード、モバイルウォレットなどを含む電
子決済による入金を受付ける際に従うべき正規の指針ができることになる。
」と話している。
また、完成時期については、当初年内を目指していたが、1 月にずれ込む見込みだという。
公聴会では、ビザやマスターカードなどのクレジットカード大手の代表者の出席がなか
ったが、同氏は「政府を無視するわけにはいかないはず」と、全ての利害関係者が参画し
ていくことへの希望を示した。細則は、政府機関が電子決済による支払いを受付けること
を推奨するものだが、先立つ資金がなければ電子決済のゲートウェイを用意することは難
しいという現実もある。
(Manila Bulletin
2009/12/24)
◆[国家デジタル情報の安全対策に 7,650 億ドン必要]:ベトナム
Nguyen Tan Dung 首相に承認された「2020 年までの国家デジタル情報安全発展計画」に
215
よると、この計画に含まれる 6 件のプロジェクト実施に 7,650 億ドンが必要になる。
プロジェクトには国家ネット安全技術システムセンタの設置、国家情報安全評価・審査
システムの構築、ネット犯罪警告・摘発・防止システムの構築、政府機関の国家情報安全
の専門家育成等があり、 Ministry of Information and Communications(MIC、情報通信
省)、Ministry of Industry and Trade (MOIT、商工省)、Ministry of Public Security(MPS、
公安省)等が実施する。(1,000 ベトナムドン=約 4.86 円
2010/01/22 現在)(Thanh nien
2010/01/18)
◆[Samsung の携帯事業支援のため部品の輸入税免除検討]:ベトナム
Samsung Electronics のベトナムでの携帯電話事業支援の一環として、ベトナム政府が部
品の輸入関税免除を検討していることが明らかになった。
Samsung Electronics が昨年 10 月、北部 Bac Ninh 省イエンフォン工業団地で稼動した携
帯電話工場の国際競争力を確保するため優遇措置を与える方針で、Nguyen Tan Dung 首相が
財務省に対し、関税の見直しを指示した。
Samsung Electronics では、ベトナム国内で調達できる部品が品質基準を満たさないため、
ベトナム工場で組み立てる携帯電話機の部品のほとんどを輸入している。一方で、ベトナ
ムに輸入される中国製携帯電話は輸入税がかからず低価格で販売されており、Samsung
Electronics は競争力強化のため、部品の輸入税撤廃を要求していた。
Dung 首相はまた、Samsung Electronics がスムーズに輸出業務を行えるよう内陸通関基
地を国家予算で建設することに同意した。同社幹部は、通関手続きが早くなることで迅速
な納期が確保できると重要性を強調している。
また政府は同社に、Bac Ninh 省内に製品試験施設を建設することも承認している。
Samsung Electronics が 6 億 7,000 万ドルを投じて Bac Ninh 省に建設した携帯電話工場
の生産能力は年間約 1 億台で、2012 年からフル稼働の予定である。(Vietnam Investment
Review 2010/01/25)
◆[Vision Ahead で更に ICT 化を推進]:スリランカ
2010 年 1 月の大統領選挙で再選を果たしたマヒンダ・ラージャパクサ大統領は、前期の
マニフェスト“Mahinda Vision”に謳っていた ICT ビジョンを更に推し進め、“Mahinda
Vision Ahead”として更に ICT 化を推進する。例えば、数あるプロジェクトのうち、National
e-Literacy Project では、18 ヵ月以内で、農村地域の国民 10 万人が、コンピュータやイ
ンターネットを学び利活用できることを目指す。これは、2017 年までにコンピュータやイ
ンターネットを利活用できる国民の割合を 75%にする、という Instant Global Village 構
想の一環である。(ICTA 2010/03/08)
◆[情報通信技術 5 ヵ年計画の内訳]:パキスタン
216
2010-15 年の情報通信技術(ICT)5 ヵ年計画では、1,250 億ルピーの予算を計上し、様々な
プロジェクトが計画されている。(注:パキスタンの会計年度は 7 月から翌年の 6 月までで
ある。
)そのうち、250 億 7,000 万ルピーは輸出用ソフトウェア産業の育成、274 億ルピー
は IT 教育の向上、304 億 9,000 万ルピーは電子政府、10 億 5,000 万ルピーは電子商取引と
セキュリティ、13 億ルピーは IT におけるウルドゥ語化の促進、30 億ルピーはハードウェ
アへの取組み、375 億ルピーは通信ネットワークインフラの構築に割り当てられている。
(The International News 2010/03/15)(1 ルピー=1.06 円
2010/03/15 現在)
【IT 振興】
◆[NECTEC による「Smart Service」プロジェクト]:タイ
NECTEC(国家電子コンピュータ技術センタ)が中心となり関係機関と Special Interest
Group を構成してサービス産業への価値創造のための research and innovation に乗り出し
た。NECTEC はこれを「Smart Service」プロジェクトと呼んでいるが、4 つの分野があり医
療、農業、観光と教育である。カラヤー科学技術大臣は「タイ経済においてサービス産業
が決定的な役割を果たし、GDP の 47%を占め 3.73 兆バーツに達する。また雇用への貢献も
他の産業よりも高い」としてサービス産業の重要性を訴えている。NECTEC パンサック所長
によると、タイはサービス産業を発展させる潜在的基盤を持っていて、限りあるリソース
を最大限に活用するため 4 分野が選択されたとのことである。また、タイソフトウェアパ
ーク役員会長のマヌー氏は「Smart Service はサービス分野だけに留まらず他分野にも応用
すべきものである。Smart Service は三つの点でテクノロジーに負っている。Digitization,
Connect and Scale である。」とのコメントを寄せている。(Bangkok Post 2009/12/23、為
替レート:1 バーツ=2.79 円 2010/01/12)
◆[True グループによる QR code 採用]:タイ
True グループ(タイ国内第三位の携帯電話オペレータ)は、日本の Mediaseek と協同で QR
code reader サービスを発表した。QR code reader は携帯電話ユーザーがデジタルコンテ
ンツ(テレビショッピング、宣伝広告、電子チケット、ボーディングパス)へアクセスす
るときに使われる。発表に際しては、デモ用として QR code reader が組み込まれた iPhone
が使われた。QR code は、interactive marketing の新時代を開き、同社に digital media ビ
ジネスへの扉を開くと見られている。ポスターや広告、ディスプレイ上の QR code の写真
を撮ることにより携帯電話からインターネット上で目的のサイトにアクセスでき、ニュー
スのアップデイトや音曲のダウンロード、テレビやビデオの視聴が可能となる。また
interactive mobile marketing として SMS(Short Message Service)へも活用されると見
込まれている。
True グループは、3G トライアルサービスに QR code サービスを提供している。QR code
ソフトウェアは無料で同社のサイトからダウンロードできる。現在 10 万台のスマートフォ
217
ンユーザがダウンロードしているとのことである。また True グループでは、QR code をプ
リペイドカードへも応用することを検討中である。
(Bangkok Post 2009/12/23)
◆[Software Park Thailand による 2010 年「IT DNA」ミッション]:タイ
Software Park Thailand は、Software Park Thailand が連携の中心となり、タイソフト
ウェア産業に向け、競争力強化のための差異化と IT のイノベーションを進める「IT DNA」
と呼ばれる施策を発表した。Software Park Thailand の Suvipa 所長によると、今年度は、
生き残り戦略として地場のソフトウェア企業が様々な製品やサービスを開発し市場投入で
きるよう支援することにフォーカスすると語った。
「IT DNA」ミッションは、BEST と呼ばれ
るコンセプトの下に IT イノベーションを活性化する。BEST とは、Business、Empowering
People and Processing、Social and Knowledge、Technologies Enabling の 4 つのプラッ
トフォームからなる。
Business プラットフォームとは、Software Park Thailand が、ビジネスマッチング・海
外市場への参入・開発スペースの提供・他テナントとのクラスターの構築というプロジェ
クトを立ち上げること。
Empowering People and Processing プラットフォームとは、Software Park Thailand が
持っている PSP(Personal Software Process)というソフトウェア開発ツールを使いソフト
ウェアエンジニアのスキルを高めること。
Social and Knowledge プラットフォームは、知識・情報・コンサルティングのノウハウ
を共有するためのポータルサイトを構築すること。
最後の Technologies Enabling プラットフォームとは、Software Park Thailand がソフ
トウェア産業界へ知識や情報を提供するためのクラウドコンピューティングの環境を提供
することであり、この 4 月には Virtual classroom を開設する計画である。
さらに、Software Park Thailand は、「IT DNA」に加え民間投資による新たなソフトウェ
アパークの開設を進めている。
バンコクに Cyber World と東北地方のコーラートに Software
City を計画中である。(Nation 2010/01/14)
◆[科学技術省、工業相、マイクロソフト 3 者協業による WebsiteSpark という施策]:タイ
科学技術省 NSTDA(国家科学技術開発庁)傘下の Software Park Thailand と工業省
OSMEP(Office of Small and Medium Enterprise Promotion)中小企業振興室およびマイク
ロソフトの 3 社の協業で、「WebsiteSpark」と呼ばれる国内中小企業(SMEs)および Web
Professional 支援のための施策が進められている。目的は、Web デザイナー、開発者に開
発ツールを提供し、Web 開発分野の認知度を高め事業機会を拡大し収入を増大させることに
ある。当初の対象は、タイの Web 事業に携わる 600 社である。タイの中小企業各社は自分
たちの Website を持ちたがっており、Web 専門家の需要も高く、各社が質の高い Website を
構築したり、e-Commerce を事業化し新市場開拓や海外進出する期待もかけられている。
218
本施策は、3 年計画で、従業員 10 名以下の Web 事業に係るタイ企業に開かれている。参
加企業は、無償でマイクロソフトの関連ソフトウェアをダウンロードでき、Software Park
Thailand の Incubation Center において研修を受けることができる。また、参加企業は、
工業省から他分野の中小企業とのビジネスマッチングのサービスを受けることができる。
カラヤー科学技術省大臣によると、
「Software Park Thailand は、中小企業のための IT 利
活用施策を幅と深みをもって取り組んでおり、IT を使った中小企業競争力強化支援プログ
ラムをスタートさせ、各産業に最適なプログラムの開発検討を行っている。短期的には、
地域・国内・グローバルなレベルで中小企業に適したツールやソリューションを開発させ、
長期的には、IT Professional が世界市場で通用する国際規格にあったソフトウェアの生産
を支援している」とのことである。
(Nation 2010/01/18)
◆[経済政策:韓国、グジャラート州にテクノロジーパークを開発]:インド
シン首相と韓国の李大統領の共同声明によると、GVIC(Gujarat Vittal Innovation City)
に建設されている韓国工業コンプレックステクノロジーゾーンは、インドと韓国の 2 国間
貿易と投資を加速すると期待されている、とのことである。両国は GVIC プロジェクトにお
いて、2014 年までに 2 国間貿易を 300 億米ドルまで拡大することを目標にしている。
韓国政府が 100%保有する Korea Land Corporation(KLC)は CEPA(経済連携緊密化協定)
を背景に、韓国工業団地を建設するために全国を視察し 2 年間の精査を経て、南グジャラ
ートの GVIC 経済特別区を選定した。KLC は特別区 1,100 ヘクタールの 3 分の 1 を韓国工業
団地として開発する。これは KLC にとって海外で最大のプロジェクトであり、インド向け
のみならず、中東、ヨーロッパやアフリカ向けの製造基地として機能することになる。KLC
は中国に進出した韓国企業を一部インドへ移転させることを計画している。
(newkerala.com 2010/1/28)
◆[内閣、e-Government Policy を承認]:スリランカ
Information and Communication Technology Agency(ICTA)は、「2009 年 12 月上旬に、内
閣で“Policy and Procedures for ICT Usage in Government(e-Government Policy)“が
承認された。」と発表した。最初の草案が 2005 年 2 月に ICTA のワーキンググループ内で提
示され、その後、電子行政を担当する州やプロジェクトの Chief Innovative Officer (CIO)
に提示され、ICTA のウェブサイト上でも広く意見を求めるという経過を経て、承認された。
今後、全ての政府機関で本政策の実施が必須となる。原文は、ICTA のホームページ
(http://www.icta.lk/)に掲載されている。(Sunday Times 2010/01/10)
◆[IT 産業界、e-Government Policy を評価]:スリランカ
Sri Lanka Association of Software and Service Companies(SLASSCOM)、Intel 社、
Microsoft 社など IT 産業界では、「e-Government Policy の実施によって、全ての政府機関
219
の手続きが統一され、スリランカの ICT は大きく発展する。この政策で重要なのは、大統
領が全ての政府機関に対し Chief Innovative Officer(CIO)を任命したことである。これに
より ICT 関連業務が系統立てて実施される。また、政策は、監査、調達、セキュリティに
ついて、明確なガイダンスを示した。」と評価している。(Daily Mirror 2010/01/25)
【法制度】
◆[“Hi-Teck Park Authority Bill 2010”、国会に提出]:バングラデシュ
Ministry of Science and ICT の Yafes Osman 大臣は、“The Bangladesh Hi-Tech Park
Authority Bill 2010”を 2 月 10 日に発表し、2 月 16 日に本法案を国会に提出した。本法
案は、IT 産業、IT を活用したサービス産業、研究開発などのハイテク産業を発展させ、数
百万人の国内外の若者たちの雇用を作り出すことを目的としている。
情報化政策 Digital Bangladesh 実現のため、他の 4 つの法案“National Science and
Technology Museum Bill 2010”、“National Institute of Bio-technology Bill 2010”、
“Bangladesh National Scientific and Technical Documentation Centre Bill 2010”、
“ Bangabandhu Novotheatre Bill 2010” も 国 会 に 提 出 し た 。 (The Bangladesh Today
2010/02/17、The Independent 2010/02/17)
【IT 振興】
◆[MICT(情報通信技術省)ICT Professional Institute 設立計画]:タイ
Ministry of Information and Communication Technology (MICT、情報通信技術省)政策
戦略室 Executive Director の Methini 氏【注】によると、MICT が中心となり、タイ産業界
における ICT 専門技術標準の普及と水準向上を目的として ICT Professional Institute (情
報通信技術職業研究所)を設立するとのことである。ICT に係る国際専門技術基準の普及に
より、同研究所は、政府および民間の ICT 産業の人材需要に寄与することになるとしてお
り、同研究所設立案は、本年末までに内閣承認を得る計画である。
同研究所設立については、ICT マスタープラン II(2009-2013)に定められており、サス
ティナブルで安定した経済の上に知識とイノベーションを有した社会を建設する ICT 人材
の育成というマスタープラン戦略のひとつである。同研究所は、国際専門技術標準が ASEAN
内で相互認証されることにより域内での ICT 人材の移動を可能にし、地域的競争力強化に
貢献をすることになるとみている。計画の初期段階では、ICT 専門家のスキル標準として 3
つの分野(System Analysis specialists、IT security、ICT project manager)からはじ
めることになる。(Nation 2010/02/04)
【注】同氏は、本年 1 月に神戸で開催した第 8 回 AFIT(アジア情報技術フォーラム)に
タイ代表として参加した。
◆[タイ ICT 業界によるタイ ICT 政策に対する意見書]:タイ
220
Association of Thai ICT Industry (ATCI、タイ ICT 産業協会)を中心とする ICT 産業
界の代表は、Ministry of Information and Communication Technology(MICT、情報通信
技術省)傘下の Software Industry Promotion Agency (Sipa、ソフトウェア産業振興庁)
に対して、政府政策に盛り込まれるべきアイデアを述べた意見書(suggestion white paper)
を提出した。Sipa は、同意見書の内容を近々発表される Software Industry Development
Plan を改定して盛り込むとのことである。ATCI Bunrak 会長によると、産業界を方向付け
活気づけるためにも明確な Key performance indices を示したガイドラインを含んだ振興
政策を要請しているとのことである。意見書の概要は、次の通りである。
-重点とすべき各ソフトウェア産業分野のプライオリティ付けとそれへの支援策および
予算配分の根拠を明確にしたアクションプランを策定すること。
-ソフトウェア企業へのインセンティブ付与手続きの簡素化。例えば減税処置等は他の省
庁とのコーディネーションが必要で複雑な手続きとなる。
-サプライサイド支援策として、年間優秀ソフトウェア、年間優秀企業等へ授与する各種
賞の創設すること。政府年次予算の有効利用にもなる。
-民間が実施する優良プロジェクトに対する支援、例えば Human Resources Certification
Program や タイ北部に建設中の ICT 研修施設 IT Training Cluster プロジェクトへの支援。
-最後に、政府および民間における国内 IT 需要の掘り起こし策を要請している。
まずは、国内ビジネスで力を蓄え将来的には海外市場への進出に備える方向である。
(Nation 2010/02/02)
◆[第 10 回 eServices 2010 が開催] :フィリピン
2010 年 2 月 8-9 日、マニラの SMX コンベンションセンタで記念すべき第 10 回目を迎えた
eServices Philippines 2010 ( Center for International Trade Exhibitions and
Missions-CITEM 主催)が開催された。
日本からは、日本アセアンセンターと在日フィリピン大使館率いる投資視察ミッション
が派遣され、ソフトウェア/BPO 企業、証券会社等 8 社が参加した。具体的な事業計画を示
す企業もあり、一定の成果を挙げた。
台湾からも視察団が派遣され、健康保険 IC カード企業や、IT サービス情報セキュリティ
管理企業など 5 社が参加し、フィリピンの IT 及び電子産業への投資に関心を示していた。
今年最終四半期には、フィリピン政府の貿易産業省(DTI)と Manila Economic and Cultural
Office (MECO)は共同で、台湾にフィリピン ICT ミッションを派遣する予定で、エンタープ
ライズアプリケーションソフトウェア、デジタルコンテンツ開発、カスタマーリレーショ
ンズマネジメント、組込システムの設計開発、半導体のテストや組立サービスなどを売り
込みたいと考えている。
また、フィリピンソフトウェア開発協会(PSIA)は、同イベントにあわせて、ソフトウェ
ア開発者が交流し指導し合えるイベント DEVCON(Developer Connect)Luzon を開催した。
221
昨年のビサヤ地方やミンダナオ地方での開催に続いて行われた今回の DEVCON Luzon には、
ソフトウェア開発に携わる若手技術者や IT を学ぶ学生、
ベンチャーキャピタリストなど 150
人が参加し、Accenture, Oracle, Microsoft, G2iX 等の企業が DEVCON Luzon のスポンサー
として名を連ねた。今年 6 月には、セブビジネス月間、フィリピン ICT 月間に合わせ、セ
ブでの DEVCON 開催が予定されている。
なお、同イベントの URL は http://www.e-servicesphils.com/esp2010/。
(フィリピンスター紙、PSIA の発表資料、その他資料 2010/02)
◆[パンジャーブ州と Microsoft 社、契約締結]:パキスタン
パンジャーブ州(州都ラホール)政府は、Microsoft Pakistan 社と戦略的パートナーシ
ップの契約を締結した。Microsoft 社は、IT 研修の実施と現地 IT 産業の開発に全面的な協
力を行なうと約束した。今後 3 年間で、州政府は 30 億ルピー、Microsoft 社は 15 億ルピー
を投資して、様々なプロジェクトを実施する。Microsoft 社は、同州の技術・職業訓練局が
監督する 454 の学校に IT Academy を設立し、フリーソフトウェア提供、IT 研修センターの
設立、医療などの公共システムサービスの着手、IT 産業を促進するための情報センターの
設 立 な ど を 支 援 す る 。 (The International News
2010/01/30) ( 1 ル ピ ー = 1.14 円
2010/01/30 現在)
◆[Hasina 首相、ICT で国民が利用しやすい行政サービスを]:バングラデシュ
Sheikh Hasina 首相は、3 月 4 日から 3 日間にわたり開催される Digital Innovation Fair
2010 の開会挨拶で、
「2021 年までに Digital Bangladesh を実現する。
」という公約を改め
て表明した。「電気、水道、ガスなどの公共料金の支払い、携帯電話による鉄道チケットの
購入、医療サービス、生活に必要な重要な情報などインターネットを通して国民が利用で
きるように、また IT を利用することで、透明性があり信頼できる良いガバナンスを確立し
ていきたい。今回の展示会は、国民が行政サービスを速く、容易に、安く利用できるため
に、様々な政府機関が行なった取組みを紹介することが目的である。」と述べた。(Financial
Express 2010/03/05)
【IT インフラ】
◆[中国、電気通信建設のスピード世界新記録]:中国
工業情報化部がこのほど発表したデータによると、第三世代移動通信(3G)のライセンス
発行から一年が経ち、中国独自技術の 3G 規格 TD-SCDMA の産業化・商業化のペースが目立
って加速した。
2009 年に中国移動、中国電信、中国聯通の 3 大キャリアが行った 3G ネットワーク建設投
資は 1,609 億元に達した。同年 3G 基地局は 32 万 5 千ヵ所建設され、この数字は過去十数
年にわたって建設された基地局総数の約半分に相当する規模で、建設の規模と速度におい
222
て、世界電気通信史における新記録を達成した。
また、昨年 11 月末現在、中国内の 3G 利用者は 1,307 万人に達し、年末時点では 1,500
万人を超えたものと思われる。(人民日報海外版 2010/1/15)(1 元=約 13.22 日本円、
2010/1/23 現在)
◆[中国移動、世界最大の 3G ネットワークを建設]:中国
中国移動の李躍副総裁は 16 日、「第 1 回 TD 産業強国フォーラム」で、同社は中国の 3G
独自規格である TD-SCDMA 基地局を今年 8 万ヵ所以上建設、全国合計で 18 万ヵ所以上に拡
大し、TD が世界最大の 3G ネットワークになることを明らかにした。
2009 年末現在、中国移動の TD ネットワークは既に 10 都市から 238 都市、基地局は 2 万
ヵ所から 10 万ヵ所に拡大した。ネットワーク投資は 800 億元を上回り、全国 70%以上の都
市をカバーしている。
李副総裁は、
「TD-SCDMA は中国が知的所有権を持つ 3G 国際規格であり、中国の 100 年に
わたる通信史の中でも、自主イノベーションにおける重要な一里塚である。党中央、国務
院も TD の発展をとても重視しており、TD-SCDMA をイノベーション型国家戦略建設の重要な
部分としている。また、政策面のサポートで TD 産業は健全で持続的発展を遂げている。
」
と述べた。
李副総裁はまた、
「TD ネットワークの品質は既に、世界レベルに近づき、産業連携の面で
も大きな進歩を遂げた。ネットワークの質の安定と向上を礎に、TD ネットワークが全国中
小都市や東部沿岸都市の近郊もカバーすることをめざす。」と述べた。
(南方日報 2010/1/19)
(1 元=13.33 日本円、2010/2/4 現在)
◆[中国、世界最大のモバイル TV ネットワークを建設]:中国
中国のモバイル TV キャリアである中広伝播(集団)は 28 日、全国 31 省・自治区・直轄市
の 280 都市で同日より CMMB(China Mobile Multimedia Broadcasting)方式のモバイル TV の
運営を開始すると発表した。これは世界最大のモバイル TV ネットワークである。
CMMB 方式とは、中国が 2008 年より全面的に推進してきた中国開発の新技術で、移動中で
も生放送のテレビ番組をはっきりとした画像で視聴できるのが特徴がある。CMMB チップを
組み込めば、7 インチ以下のディスプレイを持つ様々な端末を携帯式テレビにすることがで
きる。
本部を北京に置く中広伝播(集団)は、国の認可を得たモバイル TV キャリアである。同社
は既に全国 280 都市で CMMB モバイル TV ネットワークを設置しており、今年 3 月 31 日まで
に、特殊な気候条件の新疆、チベット、青海などの地域を除く、全地域をカバーするネッ
トワークを完成させる予定である。
(新華網 2010/1/28)
◆[KDDI、Globe Telecom、Google など、4 億ドルで東南アジアー日本間光海底ケーブル共
223
同建設]:フィリピン
KDDI は、12 月 10 日、フィリピン・マニラ市において、Globe Telecom (フィリピン)、
Google (米国)、Network i2i (インド)、Reliance Globalcom (バミューダ)、および Telemedia
Pacific (香港/インドネシア) と、日本とシンガポールの間を接続する光海底ケーブル
「South-East Asia Japan Cable」(SJC) を共同で建設することに合意し、建設保守協定を
締結した。
SJC は、総建設費約 4 億米ドル (約 360 億円)、日本とシンガポールを直接接続し、香港、
フィリピン、インドネシアに分岐する、総延長約 8,300km の光海底ケーブルである。最新
の DWDM(高密度波長分割多重方式)技術を利用し、初期の設計容量は 17Tbps (テラビット
パーセコンド)、最大 23Tbps (電話回線換算で約 2 億 7800 万回線) までの容量拡張が可能
である。運用開始は、2012 年を予定している。
SJC は、日本をハブとして、シンガポール、香港のデータセンターと米国のデータセンタ
ーとの間をシームレスに接続することができるように、シンガポールと香港においてケー
ブル陸揚げ局からデータセンターまでを直接接続する予定である。(KDDI プレスリリース
2009/12/10)
◆[2009 年における通信関連の主だった動き] :インドネシア
2009 年における通信関連の主だったプロジェクトの動きは以下の通り。
(1)Palapa Ring プロジェクト:
海底ファイバーケーブル敷設の国家プロジェクト
・2 月 16 日:ルピア安により、プロジェクト予算が 3,000 万米ドル不足。
・5 月 25 日:Palapa Ring コンソーシアムから、PT Excelcomindo 脱退。
・6 月 27 日:Palapa Ring コンソーシアムから拠出された予算の残額 1 億 5,000 万米ド
ルの範囲内で開発できるよう、Palapa Ring のルートを調整。
・8 月初旬:通信情報省、Palapa Ring コンソーシアムに 2009 年 10 月から着工するよう
要求。
・10 月 11 日:政府内の手続きの遅れにより、着工遅延。
・11 月 30 日:Mataram-Kupang ルートの着工。
(2)USO プログラム:
インドネシア全土の市民に電話およびインターネット接続提供を目指すプログラム
・4 月 24 日:7,773 村を対象としたパッケージ 1 および 2(電話敷設)の入札前審査開始。
・7 月初旬:Icon+社が 7,300 万米ドルでパッケージ 1・2 を落札。
・10 月 21 日:Smart Village プログラム(インターネット接続)に対し、25 の ISP が入
札審査を通過。
・12 月 22 日:Smart Village プログラムの入札開始。
224
(3)国家 WiMAX(高速無線通信モバイル)プロジェクト
・4 月 27 日:2.3GHz 帯の 15 地域を対象とした入札開始。
・7 月 16 日:6 社と 2 コンソーシアムが落札。Berca 社が 15 地域を 30 ブロックに分けた
中で、最も多い 14 ブロックを落札。
・8 月 5 日:Telkomsel 社と Indosat 社は、追加分 1 ライセンスを各々落札。
・11 月 6 日:政府は落札企業に対し、最初の許可を付与。
・11 月 17 日:落札企業 6 社のうち、PT Telkom 社と Indosat 社のみがライセンスフィー
を入金。
・12 月 27 日:落札企業 6 社のうちの 1 社である PT Internux 社がライセンスフィーを支
払わなかったため、当局が契約廃棄。
(Bisnis Indonesia 2009/12/31)
◆[インドネシア通信キャリア各社、インフラとサービスに多額の支出]:インドネシア
通信キャリア各社は、ネットワークインフラの拡大と品質向上、またサービスを拡大す
るべく、多額の支出を行なうと見込まれる。
最大手の Telkomsel 社は 13 兆インドネシアルピアを投資し、モバイルブロードバンドサ
ービスを 24 都市に拡大し、1 億人の加入者獲得を目指す。Indosat 社と XL 社が Telkomsel
社を追う形で、ネットワークの質の向上を図るとともに、積極的なプロモーションも行な
っている。これらキャリア 3 社の営業状況は以下の通り。
-Telkomsel 社:(1)20 億 US ドル、(2)7,977 万人、(3)47%、(4)30,000
-Indosat 社: (1)6-7 億 US ドル、(2)2,870 万人、(3)18%、(4)17,618
-XL 社:
(1)4-4.5 億 US ドル、(2)2,640 万人、(3)15%、(4)18,790
(1)Capex(設備投資に支出する金額)
(2010 年現在)
(2)顧客数(2009 年 9 月現在)
(3)シェア(2009 年 9 月現在)
(4)無線基地局装置(2009 年 9 月現在)
(1 インドネシアルピア=約 0.01 円 2010/02/22 現在)
(Bisnis Indonesia 2010/01/13,
01/25)
◆[ラオスと中国が通信衛星事業で協力]:ラオス/中国
2 月 25 日、National Authority of Science and Technology(NAST)は、中国の China
Aerospace Science and Technology Corporation(CASC)及び China Asia-Pacific Mobile
Communications Satellite Company Limited (China-APMT)と通信衛星事業に関する契約を
締結した。これは、2009 年 9 月 25 日にラオスと中国とで締結された「ラジオ・TV・電話に
おける通信衛星事業の協力に関する覚書」に基づくものであり、覚書締結後に事業化可能
225
性調査が実施され、今回の契約に結びついた。40 ヵ月以内に衛星を軌道に載せることを目
標に掲げている。
本プロジェクトが成功すれば、ラオス国内における初の衛星打ち上げが実現する。
(Vientiane Mai 2010/02/26)
【情報化機関】
◆[情報通信委員会(CICT)の存続が微妙な状況に] :フィリピン
フィリピン上院が、現政権下で最後の会期中に情報通信技術省(DICT)創設法案を通過さ
せることができなかったことにより、フィリピンの情報通信技術委員会(CICT)は廃止の危
機下にある。
CICT は、DICT が創設されるまでの一時的な組織という位置づけになっている。CICT の役
職員の任期も、他の政府機関の役職員と同様に、大統領の任期終了と同時に終了するが、
CICT が省と異なるのは、
2004 年の大統領令によって設立された委員会に過ぎない CICT は、
今年 6 月に政権が変われば簡単に廃止されてしまう可能性もあるという点である。
DICT 法案は、サイバー犯罪法案と同様に、先週まで行われていた上院の主要議題に含ま
れていた。しかし、主要幹線道路(C5)の建設を巡る大統領選の候補者が関わる汚職疑惑に
多くの時間を費やした結果、両法案とも「緊急」という指定がされていたにもかかわらず、
上院通過に至らなかった。
CICT のチュア長官は、フィリピンビジネスプロセシング協会(BPAP)の幹部などととも
に1週間半にわたって上院につめて DICT 法案成立を求めたが、思いは通じなかった。
(Manila Bulletin 2010/02/07)
◆[Gilani 首相、政府機関の IT 化のため委員会を組織]:パキスタン
Yousuf Raza Gilani 首相は、IT を導入することにより、政府機関の機能を改善するため
の委員会を組織することを Emergency Response and Social Administration Information
System Project の会議中に決定した。委員会のメンバーは、Planning Commission の副議
長を委員長として、IT、財務、内務大臣で構成する。委員会では、重複を避けるために各
プロジェクトを精査し、コストが適切かを評価する。(The International News 2010/03/14)
226
2. IT 電気電子産業の
電気電子産業の動向(
動向(デジタル家電含
デジタル家電含む
家電含む)
【市場動向】
◆[2010 年台湾 IT 支出 4.3%増(IDC 予測)]:台湾
IDC によれば、2010 年の台湾企業の IT 支出は、クラウドコンピューティング等の新しい
技術の導入により 4.3%増の 61.4 億米ドルが見込まれ、その内、38.2 億米ドルはハードウ
エア、8.35 億米ドルはソフトウエア、14.8 億米ドルは IT コンサルティングと予想される。
クラウドコンピューティング、
、仮想化及びグリーン IT が注目され、台湾の IT 企業は独自
のクラウドコンピューティング基盤やプラットフォームの構築、関連サービスを展開する
ものと思われる。一方、ブログ等をマーケティングのツールとして活用するインターネッ
ト基盤サービスは、将来の販売手段となると予想している。
ネットブックは引き続き注目され、ノート PC 市場全体の 20~30%を占めるであろう。一
方、コンシューマー向け超低電圧ノート PC の市場は引き続き成長し、同様に 20%の市場を
占める。
また、タッチスクリーン機能は主要な電子機器に広く使われるようになり、スマートホ
ンの 50%以上にこの機能が搭載される。(Taiwan Headline 10/1/18)
◆[韓国、インターネットの平均速度 14.6Mbps で世界 1 位]:韓国
1 月 19 日にアカマイテクノロジ社の 2009 年のインターネット現状調査報告書(State of
the internet)によると、韓国がインターネット平均速度 14.6 Mbps で世界 1 位であった。
2 位は 7.9 Mbps の日本、3 位香港 7.6 Mbps、4 位ルーマニア 6.2 Mbps、5 位スウェーデン
5.7 Mbps であり、米国は 3.9 Mbps で 18 位であった。調査対象国 226 ヵ国の平均速度は 1.7
Mbps であった。
速度の増加率から見ても、韓国は対前年比 16%で 1 位、2 位は日本の 8.2%であった。5 Mbps
以上のブロードバンド普及率でも韓国は 74%、日本 60%であり、100 人当たり 5 Mbps 以上の
ブロードバンド利用者数でも、韓国 23 人で 1 位、スェーデン 18 人、日本 15 人、オランダ
14 人、デンマーク 13 人の順であった。
なお、サイバー攻撃元では、ロシア 13%、ブラジル 8.6%、米国 6.9%、中国 6.5%であり、
韓国は 2.5%で 10 位以内には入っていなかった。
(デジタルタイムズ 2010/01/19)
◆[小規模事業者、NG-NBN の恩恵を受けるには支援が必要]:シンガポール
小規模事業者が次世代国家ブロードバンド網(NG-NBN)に関わる業務を受託しようとし
ても大規模事業者と競争できるだけの支援が無ければ難しい、と Accenture シンガポール
の通信・ハイテック事業のリーダ Ng Kuo Pin 氏が語った。その支援とは技術面及びカスタ
マベース拡大のための支援であり、いずれも小規模事業者にはコストがかかりすぎるもの
である。小規模 RSP(リテールサービスプロバイダ)が何らかのサービスを開始しようとす
る場合には共通のセットトップボックス標準のような技術プラットフォームが必要だ。ま
227
た RSP が新規顧客獲得や顧客サポートを行う上での請求や支払処理は大変な工数がかかり、
それをサポートする顧客管理のためのプラットフォームが必要である。Ng 氏は、そのよう
なプラットフォームの提供には政府の役割が重要である、と語っている。また、同氏は、
情報通信開発庁(IDA)とメディア開発庁(MDA)が合同で取り組んでいる NIMS(次世代双方向
マルチメディア、アプリケーションおよびサービス)プロジェクトに関連して共通セット
トップボックスの仕様検討が行われていることを指摘している。(The Business Times
2010/1/11)
◆[ブロードバンド化率は 2009 年目標を上回り 31.4%]:マレーシア
マレーシアのブロードバンド普及率は 2009 年に全世帯の 31.4%となり、目標としていた
30%を超えたと情報通信・文化芸術省の Datuk Seri Dr Rais Yatim 大臣が通信マルチメデ
ィア委員会(MCMC)の調査結果を報告した。
マレーシアではブロードバンド普及率を 2010 年までに全世帯の 50%にする計画であるが、
同大臣は、目標達成まであと 18.6%であり、2010 年末までには十分にクリアーできるとの
見通しを示した。
しかしながら、都市と地方との格差は依然として大きく、都市の普及率が 85.3%であるの
に対し、地方では 14%に留まっている。特に面積の広いサバ州の普及率は 11%であるが、政
府はこうしたデジタルデバイドの縮小を目的に、来年から 5 年間の全国均質サービス提供
プログラム(UPS)として、3 億 8 千 3 百リンギット(約 104 億円)を投入し、2010 年末ま
でに普及率を 30%に引き上げる予定である。
(Bernama
2009/12/28)
◆[2010 年度の ICT 支出は 8%の増加を期待-PIKOM]:マレーシア
マレーシア・コンピュータ・マルチメディア産業協会(PIKOM)は、2009 年度の景気は良
くなかったがハードウェア支出の増加により、ICT 支出は 2008 年度のマイナス 5%成長から、
若干のプラス成長になったと発表した。また、同協会会長の C.J.Ang 氏は、政府の ICT 支
出増加と新規のアプリケーション開発、および買替え需要により、2010 年度の ICT 支出は
8%の増加を期待できると発表した。
(1)政府の ICT 支出増加:ICT 導入に対するインセンティブをつけること、即ち、税制優
遇措置、政府の ICT 支出増による民間セクターの需要刺激を行なうこと、第 9 次マレーシ
ア計画の ICT 支出で未割当となっている分を年末までに活用すること、ブロードバンド契
約者への税負担軽減措置を取ること、公務員が PC を購入する場合の貸付けを 5 年に 1 度か
ら 3 年に短縮すること、大学生が Netbook を購入し、ブロードバンド接続を行う場合には、
10 万人分を限度に 2 年間にわたり毎月 50 リンギット(約 1,300 円)を政府が支給すること、
イスラム銀行業務の ICT 化を促進すること。
(2)新規のアプリケーション開発:ガソリン補助金制度や将来の消費税(GST)導入のた
めのアプリケーション開発などを進めること。
228
(3)買替え需要:特にハードウェアをそろそろ新しいものに替えたいと考えている人は多
い。これによる需要は産業を潤すだろう。(PIKOM プレスリリース
2010/01/15、Bernama
2010/01/18)
◆[2010 年のハードウェア市場動向予測]:インドネシア
IDC と Bisnis Indonesia 誌の調査によると、2010 年の商用向けのコンピュータハードウ
ェア市場(PC デスクトップ、ノートブック、サーバ全てをあわせた市場)の成長率は、16.5%
増と予測されている。内訳を見ると、従業員 500 人以下の中小企業向け市場が 15.5%増で、
それ以外の大企業向けが 21.3%増と予測されている。
Dell インドネシアのカントリーマネージャ Peter Lydian 氏によると、この成長要因とし
て、健全なマクロ経済構造の維持やインターネットインフラ整備のほか、IT 導入による見
える化やクラウドコンピューティングといった企業向けソリューションの概念が企業に浸
透してきたことが挙げられるという。
特に中小企業向けの市場は高いポテンシャルを有しており、2013 年までの商用全体 260
万台の販売予測のうち、約 1/3 にあたる 86 万台が大企業向けで、残りの約 2/3 が中小企業
向けと予測されている。
なお、2009 年の成長率は、商用市場全体で 1.4%減、中小企業向け 1.3%増、大企業向け
9%減であった。
(Bisnis Indonesia 2009/12/04)
◆[急成長のゲーム産業、政府の支援・法整備が課題]:ベトナム
11 月 26 日、Vietnam Software Association (VINASA、ベトナムソフトウェア協会)と
Vietnam Game and Digital Content Business Club (VGB)はゲーム産業の発展に関するセ
ミナを開催した。
VINASA によると、ベトナムはゲーム愛好者 1,200 万人を擁する東南アジア最大のゲーム
市場である。しかし、ベトナムでプレイされているゲーム 53 種類の大半は韓国製や中国製
で、ベトナムで作られたゲームは現在 1 種類しかない。
オンラインゲームの売上高は、昨年は 1 億 3,000 万米ドル、今年は 1 億 6,000 万米ドル
に達すると予測されているものの、海外産のゲームを利用する場合、海外のゲームメーカ
にその使用料を支払わなければならない。また、ゲームの内容がベトナムの文化や習慣に
そぐわないことも問題となっている。
今後、ゲーム産業は 3G 携帯電話の普及に伴って益々発展するとみられている。セミナに
参加した各企業は、国内ゲーム産業の発展を支える政府の支援、特に法的枠組みの整備が
必要との意見で一致した。(Saigon Times Online 2009/11/26)
◆[ブロードバンド契約数、人口のわずか 3.4%]:ベトナム
Vietnam Internet Network Information Center(VNNIC)によると、2009 年 11 月末時点
229
の国内のブロードバンド契約数は 289 万 4,597 件で前年同期に比べ 31%も増加しているが、
人口比ではわずか 3.4%に過ぎない。韓国・シンガポール・日本・マレーシア等の近隣諸国
では、人口比で 20%を超えており、大きく遅れをとっている。
一方、Ministry of Information and Communications(MIC、情報通信省)の統計による
と、インターネットプロバイダの市場シェアは、ベトナム郵政通信グループ(VNPT)が
63.04%でトップ、次いで FPT Telecom の 14.06%、Viettel の 12.57%、EVN Telecom の 6%、
SPT の 2%が続いている。(Dau tu 2009/12/18)
◆[ニュースサイトVietNamNetが選ぶ2009年ベトナムのICT分野10大ニュース]:ベトナム
(1) 3Gサービスが本格スタート
2009年10月12日に、VinaFoneが13の県・市にて3Gサービスの提供を開始した。これに続
いてMobiPhoneが12月15日にサービスを開始した。Viettelも間もなくサービス開始である。
ベトナムでは3Gサービスが提供されるまで約6年の準備期間があった。
(2) World IT Forum(WITFOR) 2009のベトナムでの開催】
70ヵ国・地域から1,500名が出席したIT会議「WITFOR 2009」がベトナムで開催され、無
事閉会した。テーマは「持続可能な発展のためのIT」であった。
(3) 人気ブログサービスYahoo!360の閉鎖とFacebookの台頭
Yahoo のブログサイトYahoo!360 が7月14日にサービスを終了し、後継サービス
Yahoo!360 Plusに不満を持ったユーザが、Facebook等の別サービスに流れた。
(4) 「通信と無線周波数法」が国会で承認
11月23日、「通信と無線周波数法」が国会で承認された。2010年7月1日に発効となる。
(5) Bach Khoa Internet Security Centre (BKIS)とVietnam Computer Emergency Response
Team (VNCERT)の論争
7月上旬に韓国と米国において政府機関や金融機関等の Web サイトに対する DDoS 攻撃
が発生したことに関し、ハノイ工科大学内のBach Khoa Internet Security Centre (BKIS)
が公表した情報の中に誤解を招きかねない内容があった等として、Vietnam Computer
Emergency Response Team (VNCERT)を通じて、Korean Computer Emergency Response Team
(KRCERT)が抗議を行った。その後、BKISとVNCERT間で激しい論争が行われたが、Ministry of
Information and Communications (MIC、情報通信省)の介入によって事態は沈静化した。
(6) 仮想ネットワークオペレータへの事業ライセンス
8月19日、Indochina Telecom社は、Full Mobile Virtual Network Operator (Full MVNO)
という事業形態で、ベトナムで8番目の携帯電話サービスプロバイダとして承認された。同
社は基地局を設置せず、Viettelと共有する。
(7) 通信ケーブルを電柱にかけることに関する論争
ベトナムでは電柱に通信ケーブルが大量に架線されており、電柱が傾いたり、たるんだ
ケーブルを原因とする人身事故が起きたり等の問題が発生している。安い契約料で電柱に
230
架線したいVietnam Post and Telecommunications Group(VNPT、ベトナム郵政通信グルー
プ)と、架線による電気供給への悪影響を懸念するElectricity of Vietnam Group (EVN) は
議論を重ねてきたが合意に至らず、9月にEVN は通信ケーブルの強制撤去を開始した。
Ministry of Industry and Trade(MIT、商工省)がこれに一時的に介入し、通信ケーブルの
撤去の留保を指示した。2010年1月5日までに両社で決着がつかない場合、MITが正式に介入
し、事態の収拾を図る。
(8) VNPTにベトナム初のデジタル署名の認証サービス事業を認可
9月15日、Ministry of Information and Communications (MIC、情報通信省)はVietnam Post
and Telecommunications Group(VNPT、ベトナム郵政通信グループ)にベトナム初のデジ
タル署名の認証サービス事業を認可した。電子商取引等の発展への寄与が期待される。
(9) 情報通信省主催の第1回ICT表彰式が開催
3月14日、Ministry of Information and Communications (MIC、情報通信省)の主催で、
ICT産業の発展に貢献した企業やビジネスを表彰する式典が開催された。
(10) 初の携帯ニュースサイト
12月18日、ニュースサイトのVietNamNetは、ベトナム初となる携帯電話から閲覧可能な
サイト(www.vietnamnet.vn/mobi)を公開した。(Vietnamnet 2009/12/30)
◆[2009年のIT産業の売上高は62億6,000万ドル]:ベトナム
Ministry of Information and Communications (MIC、情報通信省)の報告によると、2009
年の IT 産業の売上高は 62 億 6,000 万米ドルで、このうちハードウェア産業が 46 億 8,000
万米ドルと約 75%を占める一方、ソフトウェア産業は 14%の 8 億 8,000 万米ドル、デジタ
ルコンテンツ産業は 11%の 7 億米ドルにとどまっている。
同省の担当者は、ハードウェア産業の売上高は前年より 14%以上増加しており IT 産業の
売上増加に貢献しているが、電子部品を製造する裾野産業が発展していないため、付加価
値や利益率の低い組み立て産業に過ぎないと指摘している。また、ソフトウェア産業の発
展速度は比較的早いものの、規模がまだ小さく競争力も高くないとの見方を示した。
(Saigon Times 2010/01/05)
◆[インドの IT ハードウェア 2009 年の動き]:インド
世界的な不況と購買意欲の低下により、インド国内の PC や IT 製品の売上は 2009 年前半
減少した。また、2009 年 7-9 月期の PC の売上は 219 万台で、4-6 月期に比べれば 24%の増
加であるが、前年同期比ではまだ 3%の減少である。インド IT 製造者協会(MAIT)の Vinnie
Mehta 理事によると、2009 年は回復から程遠いが安定に向かいつつある、と評した。また、
ミニノートブック PC については、果敢な発売攻勢にもかかわらず、ノートブック全体から
見れば 7-12%と比較的小さい割合に終わった。(The Hindu Business Line 2009/12/29)
231
◆[BPO セクタ、弱まってきた嵐を乗り切りつつある状況]:インド
2009 年はインドのバックオフィス産業にとって大きな不確実性と挑戦の年として思い出
されるだろう。世界的な不況の影響でビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)企業は 2009
年初頭にはビジネスの量とマージンの低下に火事場のように対応しなければならなかった。
しかし、BPO 企業はソフトウエア企業に比べるとその影響を緩和することができた。これは
BPO が運営費予算であり、投資予算のように簡単に先延ばしすることができないためである。
(The Business Times 2009/12/26)
【市場動向】
◆[2009 年インターネット経済の規模 743 億元に]:中国
市場調査会社 iResearch がまとめた統計報告によると、2009 年の中国インターネット・
サービスの経済規模は 743 億元に達し、2008 年の 569 億元から 30.7%増加した。増加率は
2008 年の 52.6%を下回ったが、GDP 成長率の 8%を大きく上回った。
同報告によると、08 年第 4 四半期(10-12 月)と 09 年第 1 四半期(1-3 月)は、金融危
機の影響により、インターネット経済市場には大きな起伏がみられた。特に企業からの収
入を中心とする分野への影響が大きく、ネット広告、電子商取引(B2B)、ネット求人などの
分野で前期比マイナス成長のところが多かった。また経済危機を受けて、多くの企業で経
営上の欠陥も露呈した。
昨年急速に伸びたのはオンライン決済で、取引額の年増加率は 110.2%に達した。次がネ
ットショッピングで取引高は 93.7%増加した。09 年のインターネット経済では電子商取引
産業が成長を牽引したことがわかる。同社の分析によると、今後数年間、電子商取引はネ
ット関連業界で最も大きな成長潜在力を秘めた分野であるという。
同報告によると、中国のインターネット経済の規模は 2010 年に 1,123 億元、2013 年には
2,734 億元に達する見込みという。(京華時報 2010/1/19) (1 元=13.33 日本円、2010/2/4
現在)
◆[中国移動と中広伝播、2 月からモバイル TV 業務開始]:中国
通信網・テレビ放送網・インターネットの統合を図る「三網融合」はこの程新たな進展
を見せた。国家ラジオ・映画・テレビ総局傘下のモバイル TV 事業者である「中広伝播」の
孫朝暉総経理は 28 日、中広伝播と中国移動が共同で、2 月初めにモバイル TV 放送を開始す
ることを明らかにした。2 月初めにまず全国 24 の省・自治区・直轄市で開始し、残りの省
は 3 月 31 日から開始する予定である。
モバイル TV に対応した端末からは、CCTV1、CCTV5、ニュースなど、6 チャンネルのテレ
ビ番組を受信できる。
中広伝播の劉廷軍副総経理は「中国独自のモバイル TV 規格である CMMB インフラ・ネッ
トワークは現在全国 282 都市をカバーしており、3 月 31 日までに全国 300 都市以上をカバ
232
ーすることになる。
」と述べた。(新京報 2010/1/29)
◆[中国の 3G 設備市場 華為がシェアトップ]:中国
市場調査会社の Frost & Sullivan によると、通信業界は 2009 年、金融危機による世界
経済衰退の影響を受けたものの、中国の 3G 元年となった同年は、中国移動、中国電信、中
国聯通の 3 大キャリアによる 3G ネットワークの建設投資により、中国 3G 設備市場は急激
な発展を遂げ、
特に華為や中興などの国内メーカは中国の 3G 発展に大きな貢献を果たした。
2008 年以降、3 大キャリアは 3G 設備の調達を開始し、調達総額は 480 億元に上った。中
国聯通の WCDMA 設備の調達が 170 億元、中国電信の DCDMA2000 EV-DO 設備の調達が 105 億
元、残りの 205 億元は中国移動の TD-SCDMA の 3 期にわたる設備調達であった。
キャリアの建設投資により、3G 設備メーカは 2009 年に多くの恩恵を受けた。WCDMA 設備
市場では、中国聯通が 2 回に分けて WCDMA 設備の調達を行い、市場シェアは華為がトップ
であった。CDMA2000 EV-DO 設備市場では、中国電信も 2008 年-2009 年にかけて 2 回にわた
る大規模調達を行い、ここでも華為のシェアが 41.6%を占めてトップとなった。TD-SCDMA
設備市場においては、中国移動が 2007 年以降 3 回にわたる大規模調達を行い、中興通訊の
シェアが 34%で最大となった。
華為は 31%で 2 位であった。(人民網 2010/2/2)(1 元=13.15
日本円、2010/2/17 現在)
◆[カラーTV パネル産業で内外企業が激しい競争]:中国
内外の企業が TV パネルへの激しい投資合戦を繰り広げている。長虹、TCL、京東方など
の国内企業が TV パネル生産ラインの建設に力を入れる一方で、シャープ、LG などの外資企
業も、中国大陸への生産ライン移転を加速し、新世代パネルの生産ラインや新型ディスプ
レイの開発にも投資を加速している。
関係者は、「内外のカラーTV 業界は現在、TV パネル産業に関する戦略を展開している。
国内企業が現状を打破し、世界的な競争力を持つ産業になることができるかどうかは注目
に値する。
」と指摘した。
世界の薄型 TV 市場が急速に拡大したため、
国内では TV パネルに対する投資も高まった。
北京、広東、安徽、四川、江蘇などの省・市では、次々とパネル生産ラインの導入や自主
建設が行われている。概算では、投資総額はすでに 2 千億元を突破し、金融危機以降、国
内で投資額が最も大きい産業の一つとなった。(中国網 2010/2/2) (1 元=13.15 日本円、
2010/2/17 現在)
◆[中国、サーチエンジンのユーザ、2 億 8 千万人に]:中国
中国インターネット・ネットワーク情報センター(CNNIC)が 1 日に発表した報告による
と、中国のサーチエンジンユーザは 2 億 8 千万人に達した。年間 7,834 万人の増加となり、
年成長率は 38.6%に達した。昨年末現在で、中国のインターネット利用者は 3 億 8,400 万
233
人に達し、インターネット利用者の 73.3%が検索エンジンのユーザであることがわかった。
CNNIC のアナリストによると、昨年の中国検索エンジン市場規模は約 69 億 8 千万元であ
った。現在、中国では百度が先頭、グーグルが二番手、捜捜、捜狗、ヤフーを第三グルー
プとする、サーチエンジンの市場構造が出来上がっている。(新京報 2010/3/2)
◆[台湾における Android、スマートフォン市場シェア 10%]:台湾
2009 年 12 月に台湾で販売された Android プラットフォームのスマートフォンは、グロー
バル平均の 4-5%より高く、スマートフォン市場全体の 10%を占めた。
台湾での Symbian プラットフォームモデルは、2008 年 12 月の 57%から 2009 年 12 月の 43%
に、Windows Mobile は 19%から 16%に、Motorola 製 Linux モデルは 4%から 0.5%に市場シェ
アを落とした。一方、iPhone OS は 20%から 29%に上昇した。
ソニーエリクソン、LG Electronics、Garmin-Asustek 等のベンダーが 2010 年に Android
携帯電話を台湾に投入しようとしているため、台湾市場のスマートフォンの比率はグロー
バル平均の 15%より高くなることが予想される。(DIGITIMES
2010/2/3)
◆[台湾通信キャリア 3 社、アプリケーションサービスをクラウドコンピューテングで提
供]:台湾
クラウドコンピューティング技術を基盤としたアプリケションサービス市場の明るい兆
しを受けて、台湾の主要通信キャリア 3 社、中華電信、台湾モバイル、遠傳電信(Far Eastone
Telecommunications Co., Ltd.)は、出来るだけ大きなパイを獲得すべく積極的に動き出
した。
台湾最大の通信キャリアである中華電信は、NT$130 億を投資し、今後 3 年間で中国本土
で最大の IDC(Internet Data Center)を建て、4 月に Microsoft と提携し初めてのクラウ
ドコンピューティングを基盤とするアプリケーションサービスを立ち上げることを決めた。
台湾モバイルは、Fubon Financial Group と協力し、両社の子会社のため大規模なクラウ
ドコンピューティングネットワークを構築する。投資関係者によると、建設コストは数十
億 NT$に上る。また、台湾モバイルの子会社である Taiwan Fixed Networks Corp.が、クラ
ウドコンピューティングシステム開発者の連携に向けて HonHai(鴻海)グループ及び
Industrial Technology Research Institute と相談している。
一方、遠傳電信は、HP、IBM、Quanta Computer(広達)社、Data System Consulting Co.
Ltd 及び関連ソフトウエア開発会社と共同連携のフォーメーションにつき相談している。こ
の中で、通信キャリアは、クラウドコンピューティングプラットフォームを構築し、他の
メンバーは運用に必要なソフトウエア、ハードウエアを供給する。(CENS
2010/2/9)
(NT$1.00=US$0.0312)
◆[2009 年、サーバ出荷がアジア・パシフィックで減少、第 4 四半期は増加]:台湾
234
Gartner によれば、アジア・パシフィックのサーバは 2009 年の出荷額で 2008 年比 3.8%
減であった。しかし、2009 年第 4 四半期は、前年同期比出荷額で 9.1%、数量で 19.6%増加
した。第 4 四半期の出荷台数は 417,531 台、出荷額は US$20.7 億に達した。
第 4 四 半 期 の 出 荷 額 が 、 オ ー ス ト ラ リ ア ・ ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド (21.4%) 、 Greater
China(11.2%)、ASEAN(7%)においてプラス成長となった一方、韓国、インドは、それぞれ 4.7%
と 0.8%のマイナス成長であった。
今後、ビジネスが回復するとの期待が強いため、香港と台湾のサーバの成長率が高く、
シンガポールとオーストラリアは、公共部門の積極的な支出のためサーバの出荷が伸びた。
中国では、金融、通信など主要な業界でのサーバの統合が引き続き IT 支出の促進要因とな
る。
x86 サーバは、唯一出荷数量、出荷額とも伸ばした製品区分であり、それぞれ 21.8%、24.0%
であり、2008 年同期比 46.7%伸び、2009 年第 4 四半期のサーバ総出荷額の 53.1%を占めた。
一方、アジア・パシフィックの RISC/Itanium UNIX サーバは、前年に比べ弱い成長となった。
ブレードサーバ(x86 ブレードサーバ及び RISC/IA-64 ブレードサーバを含む)は、2008 年
比、数量で 24%、金額で 44%の成長であり、HP が出荷数量ベースでシェア 44.6%、IBM が 29.5%
であった。
2009 年のアジア・パシフィック向けサーバ総出荷台数 140 万台、US$71 億であった。
2009 年第 4 半期のベンダ別サーバ出荷額
============================================================================
|
IBM
|
HP
|
DELL
|
SUN
| LENOVO
============================================================================
出荷額
| US$839.5M |
US$679.7M |
US$226.4M | US$135.5M | US$34.4M
============================================================================
シェア
|
40.5%
|
32.8%
|
10.9%
|
6.5%
|
1.7%
============================================================================
2009 年第 4 半期のベンダ別サーバ出荷台数
================================================================
|
HP
|
DELL
|
IBM
|
LENOVO
================================================================
台数
| 127,610 台 |
93,271 台
|
82,160 台 |
21,600 台
================================================================
シェア
|
30.6%
|
22.3%
|
19.7%
|
5.2%
================================================================
2010/3/4)
◆[3D TV 世界市場で日韓戦開幕]:韓国
235
(
DIGITIMES,
3D TV 世界市場で本格的な日韓戦が始まる。
三星電子の 3D TV は今週、米国市場へ上陸し、LG 電子はインド市場での製品供給契約を
結ぶ等、韓国勢のグローバル市場攻略が本格化している。一方、日本のソニーも 6 月に 3D TV
の仕様を公開するなど、3D TV 世界市場での日韓戦が予想される。昨年の LED TV では韓国
勢の圧勝に終ったが、今回はさらに熾烈な戦いになりそうだ。
三星電子は先月韓国市場に初めてフル HD 3D LED TV を出荷したが、今月は米国、欧州等
へ順次出荷し、今年は 200 万台以上の 3D LED TV を販売する計画である。特に米国市場で
どのくらいの割引価格で販売できるかが注目されている。同社はまだ希望小売価格を明ら
かにしていない。
LG 電子はインドの総合メディア・エンターティメント企業であるバリュアブルグループ
に昨年 8 月に出資した 47 インチ 3D TV を供給すると発表した。同グループはインド全域に
1700 の劇場スクリーンを保有しており、市場シェア 40%のインド最大のメディア・エンタ
ーティメント企業である。
(デジタルタイムズ 2010/03/09)
◆[シンガポールでのインフラ管理ソフトウェア、今年は堅調]:シンガポール
日本を除くアジア大洋州(APEJ)市場の約 8%を占めるシンガポールの企業は、昨年から
ネットワークとストレージシステムに必要なソフトウェアの支出を削減してきた。しかし、
インフラ管理ソフトウェアと呼ばれるこれらのソフトウェアの販売会社は 2010 年以降 2014
年まで年 8%の成長を見込んでいることがわかった。これは IDC アジアパシフィックの APEJ
市場の最新調査で明らかになった。
インフラ管理ソフトウェアはネットワーク管理ソフトウェアやストレージソフトウェア
を含んでおり、例えば HP の Business Technology Optimisation、IBM の Tivoli、コンピュ
ータアソシエイツの Unicenter や、Symantec や EMC のストレージソフトウェアがこれに該
当する。また、APEJ 市場は 2010 年には 12%の成長が見込まれており、2014 年まで 2 桁成長
が継続するだろう、とのことである。(The Business Times 2010/2/8)
◆[アジア大洋州のコンピュータ売上、今年 16%の成長]:シンガポール
IDC によると、今年の日本を除くアジア大洋州(APEJ)での PC の売上は、2009 年第 4 四半
期の立ち直りに続き、16%の成長になる見込みとのことである。また、2009 年 10-12 月の 3
ヵ月間の PC 売上は、2008 年同期比で 32%増加したとのことである。これはモバイル PC へ
の旺盛な需要によるものである。2009 年の APEJ の PC 売上は全体では前年比 14%増となっ
たが、2007 年に記録した 22%増には及ばなかった。
消費者のモバイル PC への需要は先進国、途上国を問わず貪欲であり、2010 年の成長を促
す見込みである。IDC によると 2010 年の PC 売上は前年比 16%増が見込まれており、2011 年
には 18%増へ拡大する見込みとのことである。
2009 年の APEJ での市場シェアは Lenovo が 20%近くでトップであり、HP が約 17%で続き、
236
Dell は 8.7%で 3 位、Acer は 8.5%で 4 位となっている。(The Business Times 2010/1/21)
◆[オンライン市場動向]:タイ
タイの 2009 年のオンライン市場は、e-Commerce 産業の発展やインターネットの急速な普
及の結果、50%の成長を遂げた。E-Commerce 最大手の TRUE 社によると、e-Commerce のセキ
ュリティの安全性の確保とスマートフォンの市場投入により 2010 年にはオンライン取引件
数は前年度比 50%増、売上は 20%増を見込んでいる。この市場拡大は、2009 年と同様、地方
のインターネットユーザの増加と購買力のある高年齢層へのユーザ人口の推移、スマート
フォンの WiFi 接続の普及によりさらに高まるとみている。TRUE 社のショッピングサイトに
は、2009 年は毎日平均して 16 万回のアクセスがあった。これは 2007 年の 5 万回、2008 年
の 8 万回からの著しい増加である。ショッピングサイトを通じた成約金額も、2008 年 15 億
バーツ、2009 年 25 億バーツと増加した。2009 年 12 月末現在で、198,976 件のショップが
登録掲載されており、これは 2008 年末の 120,000 からの大幅な増加である。婦人服と化粧
品が売上のベスト2で、書籍と電気製品がこれに続いている。支払い方法は様々でクレジ
ットカード、ATM、銀行口座、携帯電話、TRUE 社のオンライン支払いサービスも使える。タ
イ全体の e-Commerce 事業規模は、2008 年には 760 億バーツ、2009 年はそこから 30%増加し、
その成立案件数は 2 百万件に達した模様である。TRUE 社は、今後サービスの改善、オンラ
インショッピングの利点及び電子商取引の認知度をより高めることにフォーカスし、さら
に 12 月末でのアクセス数が一日に 1 万 2 千回であった携帯電話からのオンラインショッピ
ングを強力に推進していくとのことである。
(Bangkok Post 2009/12/28)
(バーツ換算レー
ト
1 バーツ=2.75 円 2010/02/23)
◆[ブロードバンド市場]:タイ
TRUE グループでブロードバンドインターネットを担当する TRUE ONLINE 社は、2009 年の
60 億バーツの売上を 2010 年には 10%成長させ、現在の加入者数の 70 万件を百万件に拡大
するという目標を掲げている。この達成のため、3Mbps で契約した加入者を月額 599 バーツ
のまま追加料金なしに 4Mbps にアップグレードする、4Mbps の加入者は 799 バーツのまま
5Mbips に、5Mbps の加入者は 999 バーツのままに 6Mbps にアップグレードするというプロ
モーション策を打ち出している。また、同社は、25 億バーツを投資して加入者の増加と増
収を図りバンコクから地方へブロードバンドネットワークを拡大する計画である。2009 年
は、プーケット、チェンマイ、チョンブリ、ナコンラーチャシーマ、ハジャイの 5 都市で
加入者ベースを拡大した。同社の加入者は、2008 年末には 50 万件、2009 年末には 70 万件
であった。これらの加入者の 75%は、4-5Mbps の伝送速度を契約している。
一方、Jasmine International 社は、2009 年の 56 万件を 2010 年には百万件に増加させ
る計画である。売上額は 2009 年の 40 億バーツを 2010 年には 50 億バーツへ増加させる。
尚、同社のネットワーク容量を 140 万ポートにするため 10 億バーツの投資を予定している。
237
タイのブロードバンド市場は、2009 年の 2 百万件から 30%の成長を遂げ 260 万件となる。
ブロードバンド加入率はバンコクでは 50%、タイ全体では 10%となる。ここ 3-5 年で 6 百
万件となる見込みである。
(Bangkok Post 2010/01/01 及び 2010/02/11)
(バーツ換算レー
ト
1 バーツ=2.75 円 2010/02/23)
◆[タイ ICT 市場の 2009 年実績と 2010 年動向]:タイ
タイ ICT 市場における 2009 年の実績と 2010 年の動向に関する合同プレスリリースが、
National Electronics and Computer Technology Center (NECTEC、国家電子コンピュータ
技術センタ)と Software Industry Promotion Agency (SIPA、ソフトウェア産業振興庁)に
よって行われた。ICT 市場でみると 2009 年実績である 5,555 億バーツから 5,956 億バーツ
へ成長するとの報告である。2010 年の予想成長率を市場セグメントで分けると、コンピュ
ータサービスが最も高く 18%、次にコンピュータハードウェアが 8.9%、通信が 5.6%、コ
ンピュータソフトウェアが 5.5%の順である。市場規模の割合でいうと、通信は全体の
64.2%を占め、コンピュータハードウェア 14.8%、コンピュータハードウェア 14.8%、コ
ンピュータサービスが 9.6%であった。コンピュータハードウェア特にデスクトップ PC は
昨年のマイナス 1.5%成長から今年は 5.5%のプラス成長へとリバウンドとなる見込みであ
る。
デスクトップの台数では、2008 年が 130 万台、2009 年が 128 万台の実績となり、2010 年
は 135 万台の見込みとなる。2010 年においては輸入ブランド PC とタイ国ブランド PC の割
合が7:3となり輸入ブランドが国内ブランド PC を圧倒することになる。PC の単価は約
16 千バーツとなる見込みである。ノートブックは 12.9%の伸びを示し 2010 年に 158 万台
が売れる見込みである。ネットブックは 15.4%縮小し 11 万台の見込みである。2009 年に
ネットブックは、62.5%の成長をみたが機能的に魅力がないこととノートブックの価格の
下落がネットブックの落ち込みに影響している模様である。
その他の ICT 製品については、LCD モニタが 2009 年の 42 万台から 2010 年は 48 万台と成
長する。レーザプリンタは 17.2%、インクジェットプリンタは、8.6%の成長見込みである。
HDD は 47%の成長の伸びを示し 2009 年の 17 億バーツから 2010 年は 25 億バーツとなる見
込みである。
この報告書によると、2010 年の ICT 市場成長の要因は、グローバルと国内景気の回復、
政府の景気刺激策および Windows 7、Intel Core i、3G、WiMax 技術の登場、インターネッ
トの普及、電子書籍の採用が影響すると見られている。2010 年の注目すべき技術動向は、
グリーンテクノロジー、仮想化、クラウドコンピューティング、ハイスピードブロードバ
ンド(3G、WiMax)、3D ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)としている。
(The Nation
2010/02/18)(バーツ換算レート 1 バーツ=2.77 円
◆[インターネット市場動向]:タイ
238
2010/03/10)
タイの ISP 業界は、本年インターネット市場が年率 20%の成長をすると見ている。ワイ
ヤレス通信技術や携帯電話のインターネットアクセスがインターネット市場を活性化して
いるからである。各 ISP は、新サービスの提供やニッチ市場へのフォーカスを 2010 年のビ
ジネス戦略と考えている。
CAT Telecom Public Company Limited (CAT テレコム株式会社)は、高機能携帯電話の登
場や携帯電話によるインターネットアクセスの増大によりインターネットサービス市場が
引き続き成長すると予測しており、今年、オンライン取引を可能にする Smart e-Solution
Application のような Web サービスを提供する。オンデマンドによる映画配信、ライブ放
送、e ラーニング、エンターテインメントサービスなどのコンテンツを提供する Content
Service Center の設立をビジネスパートナーと進めたいとしている。また、CAT は、長期
的な収入源とするための Fiber-to-the-Home (FTTH)や Fiber-to-the-x (FTTx)と呼ぶ光
ケーブルをユーザサイトまで敷設するサービスを本年から全国に展開する計画である。ま
ず、本年は 60 億バーツをかけてバンコク首都圏に FTTH のインフラを敷設する計画である。
Internet Thailand (INET)社は、インターネットユーザは、スマートフォン等の携帯端
末新製品を通じてインターネットにアクセスするが、3G や WiMAX といったインフラ整備が
その流れを後押しすることになると見ている。2009 年のインターネット市場は、230 億バ
ーツ市場であったが、そのうちインターネットアクセスサービスは 50 億バーツ、ブロード
バンドサービスは 180 億バーツ市場となっているが(ブロードバンドを 512Kbps 以上とし
た場合)、今年度は 20%の成長を見込み 260 億バーツになると見ている。現在タイ国内の
ISP は、107 社のうち 30 社の事業が活発であり、その中でも 17 社が全国の 90%以上をカバ
ーする地域にインターネットサービスを提供している。INET 社は、インターネットリース
ライン、データセンタのようなサービスの需要が見込めるとしており、ISP も、ビジネスア
プリケーションや携帯電話向けアプリケーション、e-Commerce といった upstream サービ
スに乗り出していくべきと考えている。さらに ISP は、インターネット市場の成長を促進
する e-Government、e-payment、e-Commerce、e-business application、entertainment
application を提供することも必要としている。そんな中で、INET 社は、online security
management、network management、Internet Data Center をまとめた顧客企業へのトータ
ルなオンラインサービスの提供にフォーカスする計画である。
Proimage 社は、本年は 3G のようなワイヤレス技術を使ったバンキングビジネス、ネット
上の TV プログラム配信、クラウドコンピューティングのような新サービスを提供する。イ
ンターネットサービスやインターネットデータセンタサービスの提供、あるいはシステム
インテグレータとして企業顧客にフォーカスする計画である。第 2 四半期からは VLL Plus
と呼ばれる Virtual Lease Lines サービスを提供する。Proimage 社の顧客の 80%はバンコ
ク首都圏に所在し、今年の成長を 20%と見込んでおり、その売上は 1.2 億バーツである。
タイには、全国に 250 万のブロードバンドポートがあり、2009 年はタイ人口の 24%、1600
万人のインターネットユーザが存在し、2010 年は、このユーザ数が 20%の伸びを示すとし
239
ている。(The Nation 2010/03/18)(1 バーツ=2.79 円 2010/03/23 現在)
◆[フィリピン国家統計局、情報経済セクタによる ICT 利用状況に関する調査結果発表]:
フィリピン
フィリピン国家統計局は、2009 年 4 月に実施された 2008 年フィリピン・ビジネス&産業
年次調査(ASPBI)の一部として情報通信技術(ICT)に関する調査(SICT)の結果(速報
値)を発表した。調査企業数は全体で 9,711 社、回答率は 93.7%。そのうち、情報経済セク
タ(ICT 産業とコンテンツ&メディア産業、調査企業数 3,333 社)の回答率は 67.1%だった。
情報経済セクタ全体での営業活動におけるコンピュータ利用率は約 90.2%(ICT 部門企業
90.2%、コンテンツ&メディア部門 90.1%)。ICT 部門のうち最もコンピューター利用率の高
かったのは ICT 製造業の 97.8%、次いで ICT 卸売業界の 94.3%、ICT サービス業の 87.9%。
一方、コンテンツ&メディア部門では、出版業界が 93.4%、映画、ビデオ、テレビ番組制作・
音楽業界が 89.0%と上位を占めた。
また、営業活動におけるインターネット利用率は 79.5%(ICT 部門 80.4%、コンテツ&メデ
ィア部門 77.8%)。そのうち上位は ICT 製造業 95.0%、ICT 卸売業 86.0%、出版業 85.4%。ま
た、コンピュータを職場で日常的に利用している従業員は 43.0%(ICT 部門 41.6%、コンテ
ンツ&メディア部門 54.8%)。
情報経済セクタ全体で電子商取引(受注、発注など)を利用している企業は 32.4%、その
うちコンピュータ・プログラミング、コンサルタント、及び関連産業の利用率が最も高く
48.4%。次いで ICT 製造業 44.2%。しかし、コンピュータ、通信機器修理業では最も低い 21.3%
であった。
(フィリピン国家統計局発表をもとにしたフィリピン経済金融情報 2009/12/29)
◆[比 IT 支出、US$25 億(2010 年)から US$40 億(2014 年)に増加予測]:フィリピン
英 国 の 調 査 会 社 Business Monitor International 社 が 発 表 し た ”Philippines
Information Technology Report Q1 2010”によると、フィリピンにおける IT 市場では、
IT 支出額が 2010 年の 25 億ドルから 2014 年には 40 億ドルに増加する(年平均成長率は約
12%)と見込まれている。フィリピンは、他のアジア諸国と比べてまだ PC の浸透率が低い
こと、1 人あたりの IT 支出額が低いこと(2009 年に 26 ドル、2014 年に 41 ドルになる見込
み)から、今後成長の余地がある。
同レポートによる 2009 年の主な動きは、以下の通り。
(1)政府動向
2009 年 7 月、情報通信技術委員会(CICT)は、フィリピン政府の ICT プログラムと深く関
連した新しい低価格デスクトップ PC を発表した。インテルと共同開発された “Nettop ng
Bayan”というこの PC は、ワイドスクリーンの LCD モニターとセットになって 1 万 800 ペ
ソであり、価格に敏感な消費者を惹き付けるだろうと期待されている。(インターネット接
240
続やソフトウェアは含まれない)
2009 年には、経済危機にもかかわらず、多くの政府機関が電子的なサービス提供を実現
するための様々な取り組みを実施した。例えば、関税局(Bureau of Custom)は、2009 年 9
月に輸入取引に関する書類の処理をペーパーレスで実現するための Electronic to Mobile
(e2m)プロジェクトを、フィリピン国内の 9 ヵ所の港で年内に導入すると発表している。フ
ィリピンの税収入の約 25%を扱う同局におけるこのプロジェクトは、同局が取り組んでいる
総額 5 億ペソにのぼるコンピュータ化のごく一部である。
また、政府にとっての大きな課題の一つが IT スキルを備えた人材供給を継続することで
ある。アロヨ大統領は、2009 年の施政方針演説において低価格のデスクトップ PC を公立高
校に提供し、教員や学生が使えるようにして人材育成を図ることがアロヨ政権の 6 つの政
策優先分野の1つであるとした。
(2)企業動向
フィリピンの PC 市場におけるリーディングブランドは HP と Acer である。全体的に、多
国籍 PC ベンダ企業は 2009 年のフィリピン市場に関しては楽観視する傾向が高かった。Acer
は、フィリピン市場においては世界経済危機の影響を免れ、デスクトップ、ノートブック
両方のセグメントにおいて新製品をリリースし、市場でのプレゼンスを高めることができ
たと話している。一方レノボは、2009 年中盤から回復の兆しが見えはじめ、特に中小企業
市場での商機に焦点をしぼっているという。
2009 年、マイクロソフトは新 OS Windows 7 の市場投入の準備を続けていた。同社では、
主要な PC メーカからのサポートがこの新 OS の成功を支えると考えている。
しかしながら、
Windows Vista 投入時に問題があったために市場からの疑念を克服しなければならない状況
にある。マイクロソフトフィリピンは、フィリピンで登録された企業の 9 割以上を占める
中小企業がもっとも成長している市場セグメントだとしている。IBM フィリピンも、大きな
潜在性を持つ中小企業がフィリピンにおける重点市場セグメントの1つであるとしている。
IBM は、IBM Global Financing を通じて中小企業に財政的な支援策を提供する戦略で臨ん
でいる。一方 Oracle でも、プラットフォームからの独立性をうたい文句に、eBusiness ス
イートアプリケーションを中小企業向けに売り出している。
(3)ハードウェア市場
フィリピンにおけるコンピュータ(ハードウェア)への投資額は、2010 年が約 16 億ドル、
2014 年が約 25 億ドルと見込まれる。2009 年、コンピュータに対するフィリピンの一般消
費者の需要は当初予測を上回った。Windows 7 が発表されたことも、ハードウェアのアップ
グレード需要への追い風となると考えられる。2009 年、インテル社はフィリピンの家庭で
使われている PC の約 35%は購入後 3 年以上経過しており、買い替え時期が来ていると推定
している。
241
BPO 産業分野での雇用は 20%から 25%増えることが見込まれているが、これもハードウェ
アへの需要を押し上げる要素である。また、電子政府関連のプロジェクトなどもあり、政
府調達によるハードウェア需要も好条件の一つである。
(4)ソフトウェア市場
フィリピンのソフトウェア市場は、2010 年が 2.78 億ドルで、今後 2014 年にかけて年平
均 12%で成長すると見込まれる。2009 年の IT 支出の約 11%はソフトウェアであった。PC 所
有者増やインターネット浸透率向上などから、ソフトウェアへの需要も増えると見込まれ
る。Salesforce.com 社や、
インテルと PLDT 社の提携による取り組みなどに見られるように、
中小企業市場顧客獲得のために新しいチャネル開拓の試みがなされている。ソフトウェア
の売上高は、不正コピー対策の成否によるところも大きい。BSA 社によると、フィリピンの
ソフトウェア不正コピー率(2008 年)は 69%であった。最近は、PC4ALL プログラムなどの
ように、オープンソースソフトウェアをプレインストールした PC なども提供されている。
(5)IT サービス市場
IT サービス市場の伸びを牽引しているのは、BPO やコールセンタなどの IT 活用サービス
セクタの成長である。フィリピンの IT サービス市場規模は、2009 年の 6.08 億ドルから 2010
年には 6.57 億ドルになると見込まれる。顧客の要求は進化しており、ベンダーは付加価値
の高いサービス(テクニカルサポート、製品の問題解決、基本的な IT コンサルやハードウ
ェアコンサル)に注意を払わなければならない。IT サービスプロバイダーにとっても IT サ
ービスベンダーにとっても、コールセンタが最も大きな顧客セグメントで、市場規模の約
25%はこの分野である。続いて、通信、金融、製造などが重要な顧客セグメントとなってい
る。
(6)E-Readiness
フィリピンのインターネットユーザ数は、過去5年間順調に増加している。市場の競合
による PC の価格やインターネット加入料金の下落などがユーザ数の増加の背景にある。し
かしながら、まだ低い状態にある PC やインターネットの浸透状況や、電話の浸透状況、セ
キュリティ上の不安などから、e-Commerce の発展が妨げられている。
( Business Monitor International ”Philippines Information Technology Report Q1
2010” 2010/01/22)
◆[フィリピンの BPO 産業、2009 年の売上げは 72 億ドル] :フィリピン
フィリピンビジネスプロセッシング協会(BPAP)によると、フィリピンの BPO 産業の 2009
年の売上高は前年比 19%増の 72 億ドルで、世界市場シェアは、約 15%となった。
BPAP のエクゼクティブディレクター兼情報・リサーチ担当のジジ・ヴィラタ氏は、2 月 8
242
日に行われた記者会見で、
「2009 年は、特に下期から回復傾向が顕著になり、全体としてよ
い 1 年だった」とまとめた。フィリピン政府情報通信技術委員会(CICT)のモンチト・イブ
ラヒム コミッショナーは、BPO 産業の成長を今後も維持していくために政府としても可能
な限り支援すると述べている。また同氏は、情報通信技術省の創設とデータプライバシー
法案 の成立は 、フィリピン の BPO 産 業の成長にと って重要 な要素である と述べた 。
(Philippines Star 2010/02/09)
◆[インテルがベトナムパソコン市場 25%成長を予測]:ベトナム
Intel Vietnam の幹部は、ベトナムのパソコン市場は急速に拡大しており、低価格且つ高
性能な製品への需要が高いとの見方を明らかにした。
同社幹部によると、ベトナムが 2009 年に輸入したパソコンは、前年比 35%増の約 160 万
台に上った。ベトナムのパソコン市場は今年、前年比 20-25%で成長すると予測しており、
アジア太平洋域内でインドネシアに次ぐ高い成長率になるという。一方でパソコン価格は
下落傾向にあり、昨年の価格は、前年に比べ約 10%下がり、ノート型、デスクトップ型を含
めた価格帯は 350 ドルから 620 ドルであった。
ノート型パソコンの昨年の売上は、全体の 34%に当たる 6 兆 3,000 億ドンで、前年に比べ
28%増加した。独系市場調査会社 GfK ベトナムによると、ノート型パソコンの売れ筋は、14
-15 インチ液晶(LCD)画面のモデルで、昨年のノート型パソコン販売の 76%を占めた。
デスクトップ型パソコンに接続するディスプレイでは、LCD が人気である。GfK ベトナム
によると、昨年 1 月から 11 月に輸入した LCD ディスプレイは 71 万 6,000 台で、総額 2 兆
4,000 億ドンに上った。このうち 45.7%は画面サイズが 19 インチであった。
パソコンの演算処理を行うマイクロプロセッサ(MPU)の需要動向について同社幹部は、
より高速な処理を実現する製品への需要が強いと述べた。インテルが昨年販売した MPU の
うち 29%は比較的新しいシリーズの「IntelCore」であった。一方、米 AMD 社の MPU 販売の
50%は、デュアルコアの「アスロン 2X2」であった。
MPU のベトナム国内市場シェアは現在、インテルが約 92%で、残りの約 8%が AMD である。
インテルは今年、高性能・低価格を実現した最新の「Core-i3」等で市場シェア拡大を狙う。
(1,000 ベトナムドン= 約 4.86 円 2010/02/05 現在)
(VietNamNet 2010/01/17)
◆[ベトナムのインターネット普及率 26%、タイと同率]:ベトナム
アイルランドの市場調査会社 Research and Markets 社が 2009 年 12 月に発表したレポー
ト「Asian - Internet Market」によると、昨年のベトナムのインターネット普及率は 26%
とタイと同率で、アジア 34 ヵ国/地域で第 12 位だった。
同社は、ベトナムが普及率 10%から 30%の「中間グループ」に位置するとし、ベトナムと
タイはそれぞれ、民間企業と政府が優先課題として普及拡大に取り組んでいると評価した。
普及率の上位 5 位は、韓国(77%)
、香港(75%)
、シンガポール(75%)、日本(74%)
、台
243
湾(68%)の順だった。普及率が 10%未満の最下位グループには、フィリピン(6%)、ラオス
(5%)、カンボジア(0.5%)、ミャンマー(0.2%)が入った。
ブロードバンドの普及率は、韓国(32%)、香港(28%)、日本(24%)、シンガポール(24%)等
で高く、ベトナムはトップ 10 に入らなかった。(Research and Markets
2009/02/01 アク
セス)
◆[市場動向:携帯電話キャリアに関する評価で Mobifone が 1 位]:ベトナム
マーケティングリサーチ会社の TNS 社が 2009 年に実施したベトナムの各携帯電話サービ
ス会社のブランドに関する調査結果によると、Mobifone はブランド知名度、好感度、使用
希望度の 3 つの指標のいずれにおいても、他の携帯キャリア 6 社を抑えて 1 位になった。
知名度では、Mobifone が 100%、Vinaphone と Viettel が 99%、S-fone が 84%と続いて
いる。サービス開始からわずか 6 ヵ月と最後発の Beeline は知名度 76%で、Vietnamobile
(63%)と EVN Telecom(59%)を上回った。
好感度では、Mobifone が 54%で 2 位の Viettel(29%)を大きく引き離している。3 位
は Vinaphone(14%)であった。使用希望度では、Mobifone (56%)、Viettel(44%)、Vinaphone
(25%)の順であった。
(Thoi bao kinh 2010/03/10)
◆[インドの IT ソフトウェア・サービス、来年度に 15%成長の見込み]:インド
インドの IT 及び BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の輸出は来年度(2010 年 4 月
から)には 13-15%成長し、560-570 億米ドルに達する見込みである。この成長率は今年度の
約 3 倍になる。しかしながら、2009 年 2 月時点の予想は 600-620 億米ドルであり、それか
ら見ると後退している。今年度は 5.5%成長で 497 億米ドルが見込まれている。 これは産業
界が 2000 年から切望してきた 500 億米ドルの目標にほぼ近いものである。
国内市場については、今年度 12%成長の 6,620 億ルピーが見込まれている。国内市場は来
年度も好調な見込みであり、NASSCOM(インドソフトウェアサービス協会)によると、急拡
大のステージにあるとのことである。消費者の IT 支出、電子政府、企業の自動化、特に医
療、流通、金融といった業種が成長率を 15-17%へ押し上げ、7,610-7,750 億ルピーになる
だろう。また、IT ソフトウェア・サービス業界は、世界不況にもかかわらず、今年度、雇
用が 9 万人増加し、就業人口は 230 万人に達している。さらに、NASSCOM によると、来年度
には 15 万人の雇用拡大が見込まれているとのことである。 (The Hindu Business Line
2010/2/5)
【企業動向】
◆[IBM 北京工業大学とクラウドを構築へ]:中国
IBM は、北京工業大学とクラウド・コンピューティングの実験プラットフォームを共同で
構築し、学校や企業、政府などに高性能な計算リソースとサービスを提供すると発表した。
これは北京市政府が投資し、学校や政府、更に一般社会にも開放するオープンな計算プ
244
ラットフォームである。ハード設備の仮想化、ソフトの標準化、システム管理の自動化な
どにより、データセンターに代わる、サービス中心のクラウド・コンピューティングの運
営プラットフォームを構築するものである。
IBM 大中華地区クラウド・コンピューティングセンタの朱近之総経理は、
「クラウド・コ
ンピューティングは全く新しい技術の枠組みを提供するもので、全世界で直面しているア
クセス数の増加、品質向上、コスト削減をはじめとする様々な課題に対応するものである。
北京工業大学のクラウド・コンピューティング実験プラットフォームは中国初の高性能な
クラウドで、世界の教育や研究分野で先駆けとなるクラウド事例となろう」と述べた。(新
華網 2009/12/14)
◆[中国アマゾン、 モバイルショッピングをスタート]:中国
中国内のモバイルインターネットのユーザが増加するに従い、オンラインショッピング
の新市場が次々と開けてきている。
先週中国アマゾン(卓越アマゾン)は、
「掌上アマゾン」というモバイルサービスを発表し、
モバイルビジネス分野に進出した。ユーザは携帯電話などを使い、アマゾンにアクセスし、
ユーザ登録、商品選択、価格比較、購入、注文確認、アカウント確認までオンラインショ
ッピングの全プロセスをモバイル端末で行うことができるようになった。
中国アマゾンはこのほか、iPhone ユーザ向けの画像検索ツール「記憶検索」も発表した。
iPhone で撮影した商品の写真をアマゾンのデータバンクにアップロードすれば、その写真
に基づく分析から、その商品の在庫状況も知ることができるのである。
中国アマゾンの王漢華総裁は、
「現在中国の e コマース普及率はわずか 25.5%で、欧米諸
国の普及率 80%と比べると、今後も発展が期待できる。3G サービスの開始、或いは携帯電
話とインターネットの融合により、中国のモバイル e コマースが更なる発展を迎えること
になるだろう」と述べている。(北京商報 2009/12/23)
◆[華為、移動無線基地局の出荷量世界一]:中国
華為(HuaWei)は 7 日、「2009 年移動無線インフラ機器の売上高が 100 億米ドルを突破し、
基地局出荷量が世界一となり、世界最大の移動無線ネットワーク設備のサプライヤになっ
た。更に 5 つの 3.9 世代の商用 LTE(Long Term Evolution)ネットワークと 1 つの実証試験
用 LTE ネットワークの受注契約を獲得し、次世代移動通信技術でも先導している」と発表
した。
市場調査会社の米 Dell'oro 社によると、
2009 年第 3 四半期以降、華為の基地局出荷量は、
無線キャリア数に基づく計算で、既に世界一位となっていた。同社の打ち出した
SingleRAN(Single Radio Access Network)や LTE など、業界の先端を行くソリューション
と製品は、世界中のユーザから歓迎され、市場の閉塞感から脱するための突破口となった
と報じている。
245
華為の SingleRAN ソリューションは、
様々な方式の異なる移動ネットワークを融合させ、
1 つのネットワークで同時に 2G、3G、LTE など、様々なサービスを提供できる。これにより
ネットワーク運営のコスト高やアップグレード時の不便などの難題が一挙に解決できる。
(中国新聞社 2010/1/7)
◆[グーグル、中国市場から全面撤退の可能性]:中国
グーグルは米国時間の 12 日、グーグルの中国サイトを閉鎖して中国市場から全面撤退す
る可能性に言及した。
グーグルの最高法務責任者のデビッド・ドラモンド氏は 12 日午後、グーグルのサイトで
上記コメントを発表した。中国新聞網が電子メールを通じてグーグルに説明を求めたとこ
ろ、グーグル広報部門から電話があり、ドラモンド氏の発言が事実であることが確認され
た。グーグルは今後数週間にわたり、中国側と法律問題について話し合いを行う予定であ
る。
中国市場から撤退のニュースは、グーグル中国の従業員にも大きな衝撃を与え、グーグ
ル中国の劉允副総裁を含む上級幹部でさえ、このニュースを事前に知らされておらず、12
日の出勤後に、グーグル中国のイントラネットが既に切断された事で判明したという。(中
国新聞網 2010/1/13)
◆[中国移動、世界最大の 3G ネットワークを建設](再掲):中国
中国移動の李躍副総裁は 16 日、「第 1 回 TD 産業強国フォーラム」で、同社は中国の 3G
独自規格である TD-SCDMA 基地局を今年 8 万ヵ所以上建設、全国合計で 18 万ヵ所以上に拡
大し、TD が世界最大の 3G ネットワークになることを明らかにした。
2009 年末現在、中国移動の TD ネットワークは既に 10 都市から 238 都市、基地局は 2 万
ヵ所から 10 万ヵ所に拡大した。ネットワーク投資は 800 億元を上回り、全国 70%以上の都
市をカバーしている。
李副総裁は、
「TD-SCDMA は中国が知的所有権を持つ 3G 国際規格であり、中国の 100 年に
わたる通信史の中でも、自主イノベーションにおける重要な一里塚である。党中央、国務
院も TD の発展をとても重視しており、TD-SCDMA をイノベーション型国家戦略建設の重要な
部分としている。また、政策面のサポートで TD 産業は健全で持続的発展を遂げている。
」
と述べた。
李副総裁はまた、
「TD ネットワークの品質は既に、世界レベルに近づき、産業連携の面で
も大きな進歩を遂げた。ネットワークの質の安定と向上を礎に、TD ネットワークが全国中
小都市や東部沿岸都市の近郊もカバーすることをめざす。」と述べた。
(南方日報 2010/1/19)
(1 元=13.33 日本円、2010/2/4 現在)
◆[中国の 3G 設備市場 華為がシェアトップ]:中国(再掲)
246
市場調査会社の Frost & Sullivan によると、通信業界は 2009 年、金融危機による世界
経済衰退の影響を受けたものの、中国の 3G 元年となった同年は、中国移動、中国電信、中
国聯通の 3 大キャリアによる 3G ネットワークの建設投資により、中国 3G 設備市場は急激
な発展を遂げ、
特に華為や中興などの国内メーカは中国の 3G 発展に大きな貢献を果たした。
2008 年以降、3 大キャリアは 3G 設備の調達を開始し、調達総額は 480 億元に上った。中
国聯通の WCDMA 設備の調達が 170 億元、中国電信の DCDMA2000 EV-DO 設備の調達が 105 億
元、残りの 205 億元は中国移動の TD-SCDMA の 3 期にわたる設備調達であった。
キャリアの建設投資により、3G 設備メーカは 2009 年に多くの恩恵を受けた。WCDMA 設備
市場では、中国聯通が 2 回に分けて WCDMA 設備の調達を行い、市場シェアは華為がトップ
であった。CDMA2000 EV-DO 設備市場では、中国電信も 2008 年-2009 年にかけて 2 回にわた
る大規模調達を行い、ここでも華為のシェアが 41.6%を占めてトップとなった。TD-SCDMA
設備市場においては、中国移動が 2007 年以降 3 回にわたる大規模調達を行い、中興通訊の
シェアが 34%で最大となった。
華為は 31%で 2 位であった。(人民網 2010/2/2)(1 元=13.15
日本円、2010/2/17 現在)
◆[中国移動の OPhone、iPhone と BlackBerry に対抗]:中国
中国 3G 規格の TD-SCDMA 技術フォーラムの王静秘書長は 7 日、
「TD の発展は、OPhone の
成功にかかっている。」と述べ、今年 OPhone が TD 産業の目玉になるとの見解を示した。
OPhone とは、中国移動の自社 OS、「OMS」(Open Mobile System)を搭載した TD 携帯のこ
とを指す。中国移動は TD 発展のボトルネックとなっている TD 端末不足を解消する為、昨
年播思通訊社と共同で、グーグル Android をベースとしたプラットフォーム「OMS」を開発
した。
王静氏は、「TD 端末は現在既に 266 種類が入網証を取得したが、これらは iPhone や
BlackBerry など、欧米のスマートフォンに太刀打ちできていない。この状況を打破するた
めの重責が OPhone に課せられた。」と述べた。
播思通訊社の王暾副総裁は、
「今年は、中国移動や端末メーカと連携し、OPhone を 30 機
種開発する。」とコメントした。OPhone はグーグル Android と互換性があるため、Android
のアプリをダウンロードし、直接 OPhone で利用できる。これまで LG、レノボ、海信、dopda、
デル、PHILIPS、モトローラなどの携帯メーカが計 8 機種の OPhone を発表した。(第一財経
日報 2010/2/8)
【注】TD 端末:中国独自 3G 規格 TD-SCDMA 対応端末
入網証:携帯端末を管轄する工業情報化部が発行する端末認証
◆[中国電信が GSM 協会に正式加入]:中国
CDMA 方式の世界最大キャリアである中国電信が、GSM 移動通信業界団体の GSMA(GSM 協
会)に加入したことで、世界の主要キャリアは軒並み次世代ワイヤレス技術 LTE(Long Term
247
Evolution:3.9 世代)陣営に加わったことになる。これでモバイル・インターネットが今後
一層推進されるであろう。
次世代ワイヤレス技術規格に関し、これまでに LTE と WIMAX が激しい戦いを繰り広げて
いたが、LTE の優位が明確になった。
バルセロナで開催された世界最大規模の移動通信総合展示会「モバイル・ワールドコン
グレス」でも、GSM 協会の最高技術責任者(CTO)兼最高戦略責任者(CSO)であるアレックス・
シンクレア氏は 15 日、中国電信と米クアルコムが GSM 協会に加入したと発表した。
クアルコムは CDMA 技術規格を開発し、CDMA 技術の普及にも努めてきた。今回クアルコム
は GSM 協会に準会員として加入し、既存のモバイルブロードバンド技術と LTE 技術の統合
が円滑に遂行できるよう協力していく計画である。
中国電信は世界最大の CDMA 方式の通信キャリアの一つであり、CDMA のユーザ数は 5,600
万人を超える。GSM 協会への加入は、LTE への転向を意味し、将来のワイヤレスブロードバ
ンドを見据えたものである。
中国電信とクアルコムの 2 社の転向により、世界の主要キャリアは軒並み LTE 陣営に入
ったことになる。米国の最大手キャリア Verizon Wireless と 2 位の AT&T、中国電信、中
国移動、中国聯通、ヨーロッパの大手 Telefonica、Teliasonera、Telenor なども既に LTE
支持を表明している。
これで将来のワイヤレスネットワーク発展の流れが見えてきた。LTE は今後 10 年間、通
信業界のキーワードの一つとなるだろうとの論評もある。(通信信息報 2010/2/26)
◆[台湾ノート PC コンポーネントメーカ、サムスンからの受注増に期待]:台湾
サムスンがノート PC 出荷台数を 2009 年の 550 万台から 2010 年には 1000 万台にする目
標とするため、コネクター、冷却モジュール、キーボード、シャーシなどの台湾コンポー
ネント供給メーカは、発注増を期待している。尚、主要コンポーネントである液晶パネル、
DRAM は依然としてサムスン内製となる。
(DIGITIMES
2010/3/3)
◆[ソニー、台湾 Foxconn 社に 2010 年ノート PC200 万台発注]:台湾
ソニーは、エントリーレベルの PC ラインアップを強化するため、台湾 Foxconn(鴻海)社
に 200 万台の OEM 発注をする。2010 年の Foxconn 社のノート PC 総出荷台数 650~700 万台
の内 3 割がソニー向けとなる。
(DIGITIMES 2010/3/16)
◆[台湾 Inventec 社、中国で CDMA10%の市場シェアを目標]:台湾
Inventec Appliances(英業達)社は、中国 CDMA 市場において 2009 年 6%のシェアを獲
得しており、2010 年は 10%を目標とすると語った。同社によれば、Inventec は 2009 年に
CDMA 端末 300 万台を販売した。
また、昨年、Inventec は、中国移動の TD-SCDMA、中国聯通の WCDMA 及び中国電信の CDMA
248
と、3 社のそれぞれなる規格に対応する第 3 世代携帯端末を供給した。中国電信とのビジネ
スは PHS 端末の供給から始まり、2009 年に CDMA に移行した。Inventec の OKWAP ブランド
端末の出荷は、1/3 が PHS モデル、2/3 が CDMA 製品である。OKWAP ブランドは、中国 CDMA
端末市場で 6%のシェアを獲得し、5 位或いは 6 位ベンダーとなった。2010 年は、3 位か 4
位を目標とし、Samsung、LG、華為、ZTE などと競合することとなる。
Inventec は、さらに海外販売を伸ばすため東南アジアやインドでも他のテレコム会社との
関係を積極的に築いている。日本では、イー・モバイル、ウィルコム、シャープと協力関
係を築いている。
現在、携帯電話端末の生産は Inventec の総売上げの 25%(自社ブランド 60%、OEM/ODM40%)
を占めている。テレコム会社への製品販売に加え、Inventec は、モトローラ向け産業用携
帯端末の他、スマートフォンの供給を HP と Palm と契約している。(CENS 2010/3/15)
◆[三星電子、2009 年売り上げで世界最大の IT 企業に]:韓国
1 月 7 日の三星電子の発表によれば、2009 年の売り上げは 1,168 憶ドルであった。これ
は、同時期のドイツのジーメンス社(1,098 憶ドル)、米国の HP 社(1,146 憶ドル)を抜い
て、世界第 1 位である。デジタルタイムズ 2010/01/08)
◆[三星電子、オリンピックを利用したマーケティングに積極的]:韓国
三星電子は、1998 年の長野冬季オリンピック依頼 7 回続けてオリンピックのスポンサー
となっているが、これまでのオリンピックマーケティングの成功体験を生かして、バンク
ーバーオリンピックにおいても、差別化した多様なマーケティング活動を予定している。
特に「環境にやさしい」をキーワードに無線通信機器分野のワールドワイド公式パートナ
ーとして、全世界の人々に無線通信サービスを行なう予定である。
2004 年のアテネオリンピックから実施した WOW(Wireless Olympic Works)サービスの範
囲を拡大し、自社のスマートフォン 5 機種などを提供し、全世界の顧客にオリンピック情
報をリアルタイムで届ける。また、韓国、カナダ、米国、中国、ロシア 5 ヵ国同時に選抜
された 57 人の若者に「Global Anycall report Samsung Mobile Explorer」を初めて導入
し、新鮮なオリンック情報をブログにアップしてもらう。また、各国有名選手を集め「チ
ーム三星」という広告大使になってもらう予定である。
「環境にやさしい」キャンペーンの一環としては、バンクーバーの David Lam Park で
Samsung’s 2010 Winter Games Sustainability Summit の一環として環境にやさしい素材
で建設した三星情報館で世界的に有名な環境写真家による展覧会を開催する。
三星電子は、北米携帯電話市場で 2008 年の第 3 四半期からその後 5 四半期連続でシェア
1 位であり、今回のオリンピックのスポンサーを通じ、さらにシェアの拡大を狙っている。
(韓国 IT 消費者ニュース 2010/02/07)
249
◆[三星電子、米国デジタル TV 市場で日本企業を圧し『天下統一』]:韓国
市場調査機関 NPD の発表によれば、三星電子は 2009 年の米国デジタル TV 市場で金額ベ
ースでは 35.4%、出荷ベースでは 24.7%の市場シェアを確保した。2 位のソニーをとの差は
約 2 倍あり、4 年連続 1 位を記録した。
1978 年に三星電子は米国向けにテレビの輸出を始めたが、2006 年より LCD TV で米国市
場シェア 1 位となった。2009 年米市場のデジタル TV で、出荷量、売り上げ共に 1 位となっ
た。特に LED TV は売上げ 85.8%、出荷量 80.5%のシェアで、米市場で LED TV といえば三星
という地位を確立した。また、同社の TV 市場での好調は、関連の家電市場にも肯定的な影
響を及ぼしている。ブルーレイとホームシアター市場でも、ソニーやパナソニックを抜い
た。2009 年米のブルーレイ市場では売上げシェア 36.7%(対前年比 12.8%増)、出荷量シェ
ア 34.7%(同 10.4%増)で 1 位を獲得した。同年ホームシアター市場でも売上げシェア 28.2%、
出荷量シェア 29.6%で 1 位であった。
三星電子側は、テレビに続き AV 市場も席捲した背景に、コンテンツ企業と協力してイン
ターネットコンテンツサービスを提供してきたことと、WiFi 無線機能を内蔵(Built-in
WiFi)が効を奏したと説明している。同社は勢いに乗じ、2010 年の米市場は 3D LED TV と
ブルーレイとホームシアターを事業の三本柱にするとしている。(デジタルタイムズ
2010/02/18)
◆[韓国放送通信委員会、インドの WiBro 化に全方位外交]:韓国
人口 12 億のインドで WiBro 市場を開拓するため、放送通信委員会委員長が渡印し、WiBro
のための周波数割り当てを早期に実施するよう、インド通信部に要請した。これは 1 月に
李大統領が渡印したときに要請した、韓国-インド間で WiBro 事業協力を受けたものである。
放送通信委員会委員長は、2.3GHz 周波数の割り当てと韓国の WiBro 事業者のインド進出
への支援を依頼している。インドが予定どおり周波数を競売制にすると世界最大規模の
WiBro 市場の可能性が開かれる。
当初、インド通信部は 2009 年末に 2.3GHz 周波数を割り当て、インド全域にブロードバ
ンドモバイルインターネットサービスを提供する予定であったが、今年の 4 月以降に延期
されることとなった。インドの国防省がまだ 2.3GHz 周波数を使用しており、調整がつかな
かったこと、WiBro と競合関係にある LTE の延期攻勢があなどれないことのためである。
韓国 WiBro 事業者へのインド進出支援を政府が行うことについて、
三星電子の常務は、
「政
府の後押しは力になる。WiBro 市場への進出が可能となれば、韓国の中小企業もインド市場
へ一緒に進出することができるようになる。WiBro が次世代通信サービスを牽引していくか
もしれない。」と期待している。インド側も好意的に受け止めている。
「2.3GHz 周波数の割
り当てに向け、省庁間の協議は順調に進んでいる。近く公表できる。
」としている。
また、放送通信委員会委員長は、ニューデリのオベロイホテルで韓-印情報通信融合フォ
ーラムとデモンストレーションを開催し、WiBro、DMB、IPTV、ブロードバンドなど、韓国
250
企業の海外進出技術を公開した。(電子新聞 2010/02/21)
◆[シンガポール企業、データセンタへの支出を拡大]:シンガポール
回復基調の経済によりシンガポール企業は IT の強化へ本腰を入れて取り組もうとしてい
る。Symantec 社の調査によると今後 12 ヵ月のシンガポール企業のデータセンタ予算は
13.5%増加する見込みであり、アジア大洋州地域平均の 10%と比べて高い。より多くの資金
がデータセンタのインフラ、アプリケーション、付帯設備、IT サービス保証、電力コスト
などに注ぎ込まれるであろう。Symantec のシニアマネージャーによると、シンガポールの
経済不況は予想したほどひどくなく回復しているように見える。また、経済不況で多くの
プロジェクトが遅延したがそれらも今年は戻ってくるだろうと見込まれ、データセンタの
容量増加も必要になると予想される。Symantec の年次調査は Applied Research 社によりア
ジア大洋州 10 ヵ国を含む 26 ヵ国のデータセンタ担当役員への電話調査で行われ、従業員 1
千人から 1 万人以上まで約 1,800 社から回答があったとのことである。
(The Business Times
2010/1/14)
◆[NYSE Tech 社、アセアンの e-trading リンクの構築 SI に選定]:シンガポール
シンガポール証券取引所(SGX)はマレーシア、フィリピン及びタイの証券取引所とともに
NYSE Technologies 社(NYSE Tech)とアセアンの e-trade リンク(電子取引リンク)の構築に
ついて基本合意書を締結した。設計検討には 5 ヵ月を要するが、電子取引リンクは年内に
開通する予定であると SGX は発表した。
各国の証券取引所はリンクの費用については言及していないが、NYSE Tech はアセアン域
内の証券取引所パートナとなり、リンクの構築及び少なくとも 5 年間の運用を行うとのこ
とである。構築計画は昨年 2 月に発表されており、上記の 4 ヵ国以外にもベトナム(ホーチ
ミン)とインドネシアがそれぞれの国で承認され次第、追加される予定である。
現在は、投資家が他のアセアン市場で株取引を行う場合には上場された取引所に対して
清算料を支払う必要があるが、新しいリンクを利用した場合には地元の市場で清算が可能
になる。このリンクの目的のひとつには、クロスボーダー取引を容易にすることによって、
より多くの国際ファンドをこの地域に引き付けることである。(The Business Times
2010/2/9)
◆[NEC、RWS の IT マネージドサービスを受注]:シンガポール
NEC アジアはリゾートワールドセントーサ(RWS)から 3 年間の IT マネージドサービスを
受注したと発表した。この契約はカジノを除く 4 万ヵ所以上のネットワークアクセスポイ
ントを含むサービスデスクの常時運用や、技術支援、資産管理、デスクトップセキュリテ
ィ運用などを含んでいるとのことである。NEC によるとこの契約は規模においてこの地域で
も っ と も 大 き な プ ロ ジ ェ ク ト の 一 つ で あ る と の こ と で あ る 。 ( The Business Times
251
2010/3/15)
◆[インドネシア通信キャリア各社、インフラとサービスに多額の支出] :インドネシア(再
掲)
通信キャリア各社は、ネットワークインフラの拡大と品質向上、またサービスを拡大す
るべく、多額の支出を行なうと見込まれる。
最大手の Telkomsel 社は 13 兆インドネシアルピアを投資し、モバイルブロードバンドサ
ービスを 24 都市に拡大し、1 億人の加入者獲得を目指す。Indosat 社と XL 社が Telkomsel
社を追う形で、ネットワークの質の向上を図るとともに、積極的なプロモーションも行な
っている。これらキャリア 3 社の営業状況は以下の通り。
-Telkomsel 社:(1)20 億 US ドル、(2)7,977 万人、(3)47%、(4)30,000
-Indosat 社: (1)6-7 億 US ドル、(2)2,870 万人、(3)18%、(4)17,618
-XL 社:
(1)4-4.5 億 US ドル、(2)2,640 万人、(3)15%、(4)18,790
(1)Capex(設備投資に支出する金額)
(2010 年現在)
(2)顧客数(2009 年 9 月現在)
(3)シェア(2009 年 9 月現在)
(4)無線基地局装置(2009 年 9 月現在)
(1 インドネシアルピア=約 0.01 円 2010/02/22 現在)
(Bisnis Indonesia 2010/01/13,
01/25)
◆[インドネシアローカルの EC ショッピングサイト Kemana.com が開設] :インドネシア
2010 年 1 月末にインドネシアローカルの EC ショッピングサイト Kemana.com が開設され
る(記事には 1 月末に開設となっているが、ウェブサイトを見ると 4 月に開設と書かれて
いる)
。本サイトは本や電子製品、日用品やバリのハンディクラフトにいたるまで、4 万ア
イテムが提供される。
従来のインドネシアローカルの EC ショッピングサイトでの、決済方法は ATM での支払い
のみであったが、Kemana.com は同国で初めてセキュリティが保護されたクレジット決済シ
ステムが盛り込まれたことに特徴がある。(Bisnis Indonesia 2010/01/12)
◆[日立 GST が Axis Global Solution と提携してフィリピンでの販売網を強化] :フィリ
ピン
日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立 GST)は先頃、同社のハードディスクド
ラ イ ブ (HDD) や 外 部 記 憶 装 置 製 品 の フ ィ リ ピ ン 国 内 で の 販 売 に つ い て 、 Axis Global
Solution と提携して強化をはかることを発表した。
日立 GST のアジア太平洋南部販売担当ディレクターの David Chua 氏は、
「消費者、IT 業
界、その他の産業界からも、HDD や外部記憶装置への需要は順調にのびてきている。Axis
252
Global Solution のような経験と実績のあるパートナーを得て、当社製品がフィリピン国内
市場に一層浸透していくことを確信している。」と述べている。
Axis Global Solution は、フィリピンや東南アジア地区において世界のトップブランド
の PC 関連製品の販売事業を展開しており、日立 GST の製品の全ての販売を行う。(Manila
Bulletin 2009/12/16)
◆[IBM がセブにグローバルデリバリーセンタを開設] :フィリピン
IBM は、来週セブにフィリピンで 2 ヵ所目のグローバルデリバリーセンタを開設する。セ
ブのセンタは、アルゼンチン、ブラジル、中国、エジプト、インド、ルーマニア、ベトナ
ム等にもある同社のグローバルネットワークの一部である。フィリピン国内での最初のセ
ンタは、マニラ首都圏ケソン市のイーストウッド地区にある。
IBM グローバルデリバリーセンタは、ビジネスコンサルティング、インフォメーションア
ンドデータマネジメント、アプリケーション開発、テスト、パッケージソフトウェアソリ
ューション、英語以外への翻訳などを行う。
これまでの同社のセブでのオペレーションは、アジアタウン IT パーク内の営業事務所で行
なっていた。(Business World 2010/01/25)
◆[日系 3 社、クラウドサービスの検証ラボを設立]:ベトナム
1 月 15 日、日本情報通信(東京都中央区)、ブレインチャイルド社(東京都千代田区)、
VIJA パワーソース社(ホーチミンシティ)の 3 社は、ベトナムで企業向けビジネス・イン
テリジェンス・クラウドコンピューティング・サービスの検証ラボを設立する。
オープンソースのビジネス・インテリジェンス・ソフトウェア「Pentaho」を活用した SaaS
の検証環境を今年 4 月に立ち上げてサービスの有効性を検証し、今年末には日本国内とベ
トナムに進出している日系企業向けにサービス提供を開始する予定である。(日本情報通
信プレスリリース 2010/01/15)
◆[Samsung の携帯事業支援のため部品の輸入税免除検討](再掲)
:ベトナム
Samsung Electronics のベトナムでの携帯電話事業支援の一環として、ベトナム政府が部
品の輸入関税免除を検討していることが明らかになった。
Samsung Electronics が昨年 10 月、北部 Bac Ninh 省イエンフォン工業団地で稼動した携
帯電話工場の国際競争力を確保するため優遇措置を与える方針で、Nguyen Tan Dung 首相が
財務省に対し、関税の見直しを指示した。
Samsung Electronics では、ベトナム国内で調達できる部品が品質基準を満たさないため、
ベトナム工場で組み立てる携帯電話機の部品のほとんどを輸入している。一方で、ベトナ
ムに輸入される中国製携帯電話は輸入税がかからず低価格で販売されており、Samsung
Electronics は競争力強化のため、部品の輸入税撤廃を要求していた。
253
Dung 首相はまた、Samsung Electronics がスムーズに輸出業務を行えるよう内陸通関基
地を国家予算で建設することに同意した。同社幹部は、通関手続きが早くなることで迅速
な納期が確保できると重要性を強調している。
また政府は同社に、Bac Ninh 省内に製品試験施設を建設することも承認している。
Samsung Electronics が 6 億 7,000 万ドルを投じて Bac Ninh 省に建設した携帯電話工場
の生産能力は年間約 1 億台で、2012 年からフル稼働の予定である。(Vietnam Investment
Review 2010/01/25)
◆[台湾Foxconn Technology、越投資の続行を表明]:ベトナム
台湾の大手電子関連企業の鴻海精密工業(Foxconn Technology Group)のTerry Gou会長
が、あらためてベトナムへの投資意欲を表明した。同会長は先月ベトナムを訪問した際、
関係当局者と面談し、ベトナムへの投資続行を確約した。
同社は2007年、北部Bac Ninh省、Bac Giang省、Vinh Phuc省、Hai Phong市、中南部Binh
Dinh省、ホーチミンシティの6省市のハイテク工業都市開発事業に5年間で50億ドルの投資
を行うことで、Ministry of Planning and Investment(MPI、計画投資省)と合意した。2008
年にはBac Ninh省に8,000万ドルを投じたカメラ、コンピュータ、家電製品の生産工場2ヵ
所を開設したが、その後は具体的な動きはなく、世界的な景気後退もあり、計画は見送ら
れたとの見方が出ていた。
(Intellasia.net 2010/02/01)
◆[FPT や Viettel の海外ビジネスが好調]:ベトナム
地場 IT 最大手の FPT グループや人民軍系通信会社の Viettel の海外ビジネスが好調であ
る。
FPT は 2008 年中頃の経済不況が最も深刻だった頃に本格的に米国に進出したが、Free
Scale 社や Omgeo 社等との契約を取り付け、2009 年には対米の売り上げが 550 万ドルに達
した。FPT の 2009 年の全売り上げのうち日本からの売り上げは 56%、シンガポールからの
売り上げは 21%を占め、海外ビジネスの好調ぶりがうかがえる。
Viettel はカンボジア、ラオスでのビジネスが好調である。同社は 2009 年 9 月にカンボ
ジアに Metfone 社を立ち上げ、カンボジア最大の通信会社となり、ADSL サービスの市場シ
ェア 60%、固定電話サービスの市場シェア 50%を占めている。携帯電話通話サービスでは
200 万人のユーザを抱え、
同国第 2 位
(9 社中)の企業となっている。
一方のラオスでは Unitel
ブランドを展開しており、3G サービスや高速インターネット接続サービスを提供している。
現在、Unitel ではラオスで最多の 900 ヵ所以上(同国内 35%のシェア)の無線基地局(BTS)
を保有している。(Vietnamnet 2010/02/21)
◆[VTC Telecom の通信事業権はく奪]:ベトナム
Ministry of Information and Communications (MIC)は、Vietnam Multimedia Corporation
254
(VTC)子会社の VTC Telecom の通信サービス事業権のはく奪を決定した。同社は事業権を
取得してから 2 年間の期限内に、正当な理由もなく事業を実施しておらず、郵政通信法令
違反と判断された。同社が再度事業権を再取得するには、新規取得と同様の手続きを行う
必要がある。(Thanh Nien 2010/03/04)
◆[サイバーエージェント、ベトナムオンラインゲーム企業に投資]:ベトナム
日本のサイバーエージェント社の連結子会社で投資事業を手掛けるサイバーエージェン
ト・インベストメント(CAI)は 3 月 2 日、ベトナムでオンラインゲーム事業を展開する VIET
GAMES SOFTWARE SERVICE JOINT STOCK COMPANY(VGS)が実施した第三者割当増資を引き受
けたと発表した。これにより CAI は VGS の株式約 33%を取得する。
CAI では、2009 年 2 月にベトナムの首都ハノイに、2010 年 1 月にはホーチミンシティに
それぞれ拠点を設置し、投資を進めている。2009 年 6 月にはベトナムでの初案件として、
電子商取引を手掛ける VIET NAM PRICE JOINT STOCK COMPANY への出資を発表しており、今
回が同国での 2 件目の案件となる。
ベトナム国内のオンラインゲーム利用者数は 2011 年に 1,000 万人を越える見通しで
(Perl Research 社調べ)
、オンラインゲーム市場は 2009 年に約 100 億円、2011 年には 180
億円に達するといわれている。
(サイバーエージェントインベストメント 2010/03/01)
◆[Infosys、今年度計画以上に追加4,000人を雇用]:インド
明るい成長の兆しが見える中、Infosysは今年度(2010年3月まで)に当初予定していた2万
人に加えて4千人を追加雇用すると発表した。 2009年10-12月期にはInfosysと子会社を含
めて8,719人を雇用したとのことである。同社の人事教育部門のヘッドであるT.V.Mohandas
Pai氏によると、今年度は8%の給与アップを行ったが雇用市場は過熱しており、来年度は見
直しが必要になると語った。また、経済が回復し手元資金も増えており、より有能な人を
雇用できるようになっている。現在約9,500人の新入社員が教育中であり、もうすぐプロジ
ェクトに配属される予定だ、とも語った。来年度(2010年4月から)は1万5千人の新人を雇用
する予定であり、その内9千人は内定している。来年度の中途採用については決めていない
とのことだが、総勢で今年度の2万4千人を超えるものと予想され、中途採用は9千人以上と
見られている。(The Hindu Business Line 2010/1/13)
◆[マイクロソフト、統一IDプロジェクトにエキサイト]:インド
マイクロソフト研究所は、インド政府の統一IDプロジェクトに興奮している。注目の領
域はユーザインターフェース、多言語システム、携帯性、安全なデータベースの管理、な
どである。マイクロソフトの研究部門は、インド統一ID庁(UIDAI)のNilekani議長との協議
で選択肢を探しているとのことである。バンガロールで行われたTechVista 2010のシンポ
ジウムにおいて、マイクロソフト研究所インドのAnandan所長は、我々はいかなる社会的な
255
チャレンジにも興味を持っており、UIDAIのプロジェクトはエキサイティングな挑戦であり、
興味深い研究であると述べた。
同研究所は2005年に設立され、40名の研究者が従事している。Nilekani氏はシンポジウ
ムの特別ゲストとして、
「12億人を対象とする統一IDプロジェクトはたくさんの複雑な技術
やロジスティクスの挑戦が隠されたゲームに挑戦するような試みである。重複がないこと
を保証するだけでも大きな挑戦であり、マイクロソフト研究所がインド政府と研究課題に
ついて活動することを歓迎する。」と語った。
(The Hindu Business Line 2010/1/22)
◆[Wipro、中小企業向けのクラウドコンピューティングへ注力]:インド
Wipro Infotech は約 45 億米ドルの市場規模がある中小企業向けのクラウドコンピューテ
ィングに自身の成長を賭けていくとのことである。Wipro Infotech の幹部によるとクラウ
ドコンピューティング事業を担う新部門を立ち上げたとのことである。中小企業には
Pay-per-use のビジネスモデルを提案していく、これは我々にとって大きな試みであり全力
で進める、と幹部は語った。当面は、織物、病院、自動者部品、都市信用組合、宝石宝飾、
玩具の 6 つの業界に集中していくとのことである。新部門は独自のセールスチームと顧客
サービスセンタを持ち、顧客ごとにカストマイズされた Pay-per-use のビジネスモデルを
提案していくとのことである。 (The Hindu Business Line 2010/3/5)
◆[BSNL、3Gモバイルサービスをアンドラプラデーシュ州で開始]:インド
BSNLは3Gモバイルサービスを3月3日にアンドラプラデーシュ州で開始した。前払い、後
払いの両方のサービスを同時に開始したとのことである。3Gサービスはダウンロード速度
が最大2Mbpsとなっており、高度なマルチメディアを体験できる。ビデオフォンコールやビ
デオ会議が可能であり、TVを観ることもできるとのことである。 (The Hindu Business Line
2010/3/4)
[企業動向:TCS、英国政府より年金システムのアウトソーシングを受注]:インド
Tata Consultancy Service(TCS)は英国政府と6億ポンドに及ぶ年金システムのアウトソ
ーシング契約を受注した。英国の個人口座導入機構(PADA)は、2012年に開始される全国勤
労貯蓄信託(NEST)の立ち上げと運用を含む10年間の業務の落札者としてTCSを選定したこ
とを明らかにした。NESTは6百万人近い英国市民に対して現在の雇用者負担スキームを改良
するために設計されたものである。PADAによると、契約は2段階に分かれており、第一段階
は2010年10月までにNEST管理体制の立ち上げを行い、それによって次の段階へ進めるかど
うかが決定される、とのことである。(The Hindu Business Line 2010/3/3)(1ポンド=約
133円 3月3日現在)
◆[パンジャーブ州と Microsoft 社、契約締結]:パキスタン(再掲)
256
パンジャーブ州(州都ラホール)政府は、Microsoft Pakistan 社と戦略的パートナーシ
ップの契約を締結した。Microsoft 社は、IT 研修の実施と現地 IT 産業の開発に全面的な協
力を行なうと約束した。今後 3 年間で、州政府は 30 億ルピー、Microsoft 社は 15 億ルピー
を投資して、様々なプロジェクトを実施する。Microsoft 社は、同州の技術・職業訓練局が
監督する 454 の学校に IT Academy を設立し、フリーソフトウェア提供、IT 研修センターの
設立、医療などの公共システムサービスの着手、IT 産業を促進するための情報センターの
設 立 な ど を 支 援 す る 。 (The International News
2010/01/30 現在)
257
2010/01/30) ( 1 ル ピ ー = 1.14 円
3. IT 電気・
電気・電子産業の
電子産業の人材育成の
人材育成の動向
【IT 人材】
◆[政府、IT 人材育成策を改定](再掲)
:韓国
企業が望むソフトウェア専門の修士・博士級の高級人材育成のため、大学院を中心に「ソ
フトウェア創意研究課程」が設置される。一方、学部中心の「大学 IT 研究センタ(ITRC)」
事業は 46 事業から 2013 年までに 14 事業に縮小される。研究分野も、半導体、携帯電話、
ディスプレイなど 7 つのハードウェアに特化される。
これは、知識経済部が、IT 企業の需要とかけ離れた人材育成体系と雇用のミスマッチや
未来の需要に対応していないなどの問題に直面していた「国家 IT 人材養成事業」の方向を
大きく改変するもので、8 日に発表した中で明らかにされた。政府は、2013 年までに総額
4,011 億ウォンを投入し、企業の要請に基づき、基礎人材 3 万 5,000 人、高級人材 4,000 人
を育成していく。これにより、大学院の支援の割合は現在の 49%から 67%へ拡大していく。
学部支援は 2013 年までに 300 億ウォン規模に縮小し、大学院は 567 億ウォン(対前年比 40.3%
の 163 億ウォンの増加)へ拡大する。(電子新聞 2010/02/08)
(1 ウォン=約 0.07 円
2010/02/09 現在)
◆[UN-APICT、政府職員の ICT 利活用ワークショップを実施]:カンボジア
国 際 連 合 の 地 域 セ ン タ ー の 一 つ で あ る Asian and Pacific Training Centre for
ICT(UN-APCICT)は、3 月 9 日から 4 日間にわたり、カンボジアの National Information
Communications Technology Development Authority (NiDA)と共催で、政府機関、大学、
国際開発機関や NGO などの政策立案者を対象とした ICT 利活用のワークショップを実施し
た。このワークショップは、社会経済の持続可能な発展のために有効である ICT 利活用の
スキルと知識を習得することを目的としている。この機会に、NiDA の Leewook Phu 事務局
長は、クメール語 Unicode を全政府機関で導入したことも報告した。 (The Phnom Pen Post
2010/03/09)
◆[行政サービス担当の政府職員の ICT 研修]:スリランカ
Information and Communication Technology Agency(ICTA) は 、 Ministry of Public
Administration and Home Affairs を中心に行政サービス担当の政府職員 46,000 人を対象
として迅速で適切なサービスを行うための、IT 利用研修を開始した。
また、ICTA は、Lanka Government Network(LGN:政府広域ネットワーク)を含む電子政府
プロジェクトの運用管理者を対象として、13 地区の 350 機関の政府職員 10,000 人に ICT HR
Capacity Building Program を実施している。すでに 325 の機関にはコンピュータ機材を提
供し、上級管理者、プロジェクトマネージャ、IT マネージャ、スタッフなどの職位ごとに
必要な専門の IT スキルを取得する研修を実施した。
(DailyMirror 2010/02/16、Daily News
258
2010/02/25)
◆[e-Government Policy のワークショップを開催]:スリランカ
Information and Communication Technology Agency(ICTA)は、政府機関の幹部や CIO 向
けに e-Government Policy に関するワークショップを開催する。
“Policy and Procedures for
ICT Usage in Government (e-Government Policy)”は、昨年 12 月に内閣で承認され、全
ての政府機関が採用しなくてはならない最低限の要件となっている。また各政府機関はそ
の枠組みの中で、カスタマイズを行い、独自の ICT Policy や Procedure を作成してもよい
こととなっている。実施期間は、2009 年 1 月から 3 ヵ年だが、適宜、政府より延長や修正
が行なわれる。(Daily Mirror 2010/03/17)
◆[有望な IT アウトソーシング産業(KPMG 調査報告)]:バングラデシュ
オランダに本部をおく会計事務所 KPMG 社の調査報告“Asia-Oceania Vision 2020”によ
れば、2020 年までにアジア地域は IT とビジネスプロセスアウトソーシングサービスの一大
供給地域となり、有望な国の一つとしてバングラデシュを挙げている。人口比率で 65 歳以
上が占める割合では、アジア 15 ヵ国のうち、バングラデシュは 5.6%でフィリピンと同率で
低く、インドは 6.5%、タイは 13.8%、日本は 29.5%であった。同報告では、IT サービス輸
出国として、IT への適応が早く熱心な若年層が多いバングラデシュは優位だと述べている。
しかしながら、気候変動、貧困と不平等、インフラストラクチャの未整備が、今後の成長
に足かせとなると警告している。
在バングラデシュ・デンマーク大使は、「すでにデンマークの企業はバングラデシュの企
業 20 社とソフトウェア開発や IT 活用サービスのアウトソーシングで協働している。世界
銀行の報告によれば、過去 2 年間で同国の若いソフトウェア開発者 8,000 人以上が IT 産業
に就職し、そのうち約 1,000 人はデンマークとバングラデシュの IT ジョイントベンチャで
働いている。」と述べている。
Bangladesh Association of Software and Information Services(BAAS)によれば、同国
の IT 産業は日本や他の国々の企業ともビジネス関係を構築してきており、次第に、世界が
同国の IT の可能性を指摘するようになってきた。(New Age Business 2010/02/15)
259
4. 標準及び
標準及び知的財産権関連施策の
知的財産権関連施策の取組状況
【技術動向】
◆[中国電信が GSM 協会に正式加入]:中国(再掲)
CDMA 方式の世界最大キャリアである中国電信が、GSM 移動通信業界団体の GSMA(GSM 協
会)に加入したことで、世界の主要キャリアは軒並み次世代ワイヤレス技術 LTE(Long Term
Evolution:3.9 世代)陣営に加わったことになる。これでモバイル・インターネットが今後
一層推進されるであろう。
次世代ワイヤレス技術規格に関し、これまでに LTE と WIMAX が激しい戦いを繰り広げて
いたが、LTE の優位が明確になった。
バルセロナで開催された世界最大規模の移動通信総合展示会「モバイル・ワールドコン
グレス」でも、GSM 協会の最高技術責任者(CTO)兼最高戦略責任者(CSO)であるアレックス・
シンクレア氏は 15 日、中国電信と米クアルコムが GSM 協会に加入したと発表した。
クアルコムは CDMA 技術規格を開発し、CDMA 技術の普及にも努めてきた。今回クアルコム
は GSM 協会に準会員として加入し、既存のモバイルブロードバンド技術と LTE 技術の統合
が円滑に遂行できるよう協力していく計画である。
中国電信は世界最大の CDMA 方式の通信キャリアの一つであり、CDMA のユーザ数は 5,600
万人を超える。GSM 協会への加入は、LTE への転向を意味し、将来のワイヤレスブロードバ
ンドを見据えたものである。
中国電信とクアルコムの 2 社の転向により、世界の主要キャリアは軒並み LTE 陣営に入
ったことになる。米国の最大手キャリア Verizon Wireless と 2 位の AT&T、中国電信、中
国移動、中国聯通、ヨーロッパの大手 Telefonica、Teliasonera、Telenor なども既に LTE
支持を表明している。
これで将来のワイヤレスネットワーク発展の流れが見えてきた。LTE は今後 10 年間、通
信業界のキーワードの一つとなるだろうとの論評もある。(通信信息報 2010/2/26)
◆[中国の 4G が国際標準の候補入り]:中国
「科技日報」は 3 日、
「中国が提案する『TD-LTE-Advanced』が国際電気通信連合(ITU)の
第 4 世代(4G)移動通信の技術標準の候補に選ばれたことにより、4G 国際規格における中国
の発言権が高まった。」と伝えた。
「次世代ブロードバンド無線移動通信ネットワーク」の技術責任者である鄔賀銓委員は
記者の取材に対し、
「今年 5 月に開催される上海万博で TD-LTE 技術のデモを実施し、携帯
電話による入場や支払い、無線監視カメラなど、ブロードバンドによるマルチメディア・
サービスを提供する。」ことを明らかにした。
「TD-SCDMA は中国企業を中心とした、チップ、端末、システム、計測器、ソフトフェア
からアプリへの応用までが一体となった産業チェーンが確立された。これほど整った産業
260
チェーンは過去中国にはなかった。あらゆる面で中国企業が関わっており、海外企業の参
加も呼びかけている。現在、参加企業は 200 社余りに上っている。」と中国の通信産業の現
状を同委員は説明した。
「TD-SCDMA の利用者数は昨年末現在、530 万人に達した。TD-SCDMA 網 3 期プロジェクト
はすでに完成し、全国 238 都市をカバーしている。TD 端末のラインナップも 266 種類にま
で増えた。TD が家庭や業界の情報化に応用されれば、経済危機対策や内需拡大に重要な役
割を果たすことになる。
」と同委員は TD の可能性について語った。(科技日報 2010/3/3)
◆[モノのインターネット標準化に向けた連合作業グループが成立]:中国
「モノのインターネット」(IOT:Internet of Things)の標準化に向けた連合作業グルー
プの予備会議が 9 日、北京で開かれた。同グループの主旨は、国内の「モノのインターネ
ット」標準化に関連する資源を統合し、技術研究を共同で行い、標準化を積極的に推進し、
中国の発展ニーズにあった「モノのインターネット」技術基準の制定を行うことである。
また政策決定に向け、技術・標準化などに関する提言を行うことである。
同作業グループの張琪グループ長(工業情報化部電子科技委員会副主任)によると、同グ
ループは今後、自主イノベーションを重視しつつ、オープンな標準化戦略を堅持した国家
基準を制定し、国際基準制定にも参加し、主導権を発揮していくとのことである。
国家発展改革委員会、科学技術部、工業情報化部などの関連部門は近年、それぞれ RFID
(電波による個体識別)
、センサーネットワーク、スマートセンサーなどのプロジェクトを
支援してきた。
金カードプロジェクト(国民のクレジットカード普及計画)では、RFID の地方における実
証実験をスタートさせた。しかし、多くは消費者が小売店に支払った電子マネーを、小売
店がそのマネーを発行元に一旦戻さない限り、そのマネーを別の決済には利用できない仕
組みの閉鎖型が中心で、大規模化に向けた応用の初期段階にすぎない。
なお、温家宝総理は昨年 8 月の無錫視察の際、ユビキタス環境などを提唱する「感知中国」
のコンセプトを提起している。このことは、政府による「モノのインターネット」産業へ
の注目と支援が国家戦略レベルに引き上げられたことを意味する。(北京商報 2010/3/10)
【セキュリティ】
◆[シンガポール企業の 66%、サイバー攻撃を経験]:シンガポール
Symantec はグローバル 2010 企業セキュリティレポートを最近発行したが、
それによると、
過去 12 ヵ月にシンガポール企業の 66%がサイバー攻撃を経験し、損失額は 1 社当たり 49 万
5 千米ドルに相当するとのことである。攻撃を受けた企業は何らかのサイバー損失を被って
おり、共通の被害としては知的財産の盗難、企業データの盗難、IT 環境のダウン、などで
あった。
上記損失額は、各社が被害を金額に換算した回答の中央値とのことである。日本を含むア
261
ジア大洋州の年間損失額の 1 社当たりの中央値は 76 万 3 千米ドルであるが、全世界平均は
2 百万米ドルであり、シンガポールもアジア大洋州もかなり低い。
アジア大洋州及び全世界での 3 つの重要なデータに関わる損失は、クレジットカード情報、
顧客個人情報及び知的財産の盗難とのことである。これらは不法に取引されており、
Symantec の地下経済に関するレポートによると 2007 年 7 月から 2008 年 6 月までの 1 年間
では市場規模は 2 億 7,600 万米ドルに達するとのことである。(The Business Times
2010/3/11)
◆[情報セキュリティ強化、専門家 1,000 人育成計画]:ベトナム
政府は情報セキュリティ強化のため、人材育成、機関設立、インフラ整備を 2020 年まで
の重要課題とすることを決定した。
同年までに 7,650 億ドンを投じ、監督機関の設立や技術設備の拡充を図る。また、国際
基準の情報セキュリティ専門家を 1,000 人育成し、政府の情報システム管理者を全員、国
家情報セキュリティ試験の合格者にする意向である。(1,000 ベトナムドン= 約 4.86 円
2010/02/05 現在)(VietNamNet 2010/01/22)
【標準化】
◆[韓国次世代放送規格案、国際標準に採択]:韓国
産学研連携の次世代放送標準フォーラムが開発した次世代放送規格案である
「Stereoscopic Video(3D 映像ビデオ)の保存・再生技術が国際標準として採択された。
次世代放送標準フォーラム 3DTV 分科会は「2008 年 10 月に釜山で開催された第 86 回 MPEG
会議で標準案として提出された同技術が、国際標準として正式に承認された」と 2 月 4 日
に発表した。この標準規格の正式名称は ISO/IEC 23000-11(MPEG-A Part 11) Stereoscopic
Video Application Format であり、3D 映像を多様な端末で共通に録画、編集、管理、再生
する技術である。
次世代放送標準フォーラムには、京畿大学、ETRI、三星、ECT、KETI などが参加している。
(電子新聞 2010/02/05)
◆[標準化:日米韓で 3D ヒューマンファクター標準化作業協力]:韓国
米国、韓国、日本の 3 ヵ国で 3D TV(立体映像)視聴の安全基準に関する「ヒューマンファ
クター」の標準化に乗り出した。
3 月 17 日、米国、韓国、日本の 3D TV 関連の協会団体が協力して、立体映像視聴時に人
体への影響についてのガイドラインを作成する。
「ヒューマンファクター」の国家標準化へ
の作業が本格化する。
この標準化作業には、韓国の韓国情報通信電子産業振興会と米国と日本からそれぞれ 3D
関連の民間企業団体である「3D@Home」、
「3D コンソーシアム」が参加する。特に、
「3D@Home」
262
はハリウッド映画の事業者や放送会社で構成された機構である。2009 年 6 月に同振興会と
は包括的な協力のための覚書(MOU)を締結した。同振興会のチーム長は、「技術標準院の支
援を基礎に、米国と日本とヒューマンファクター標準の初案を作成していく計画である。
産業界にとっても TV 映像の標準案作成は重要である。」と語った。
「ヒューマンファクター」の標準化について、ISO 内でも議論されている。専門家らは、
標準案が出来れば、3D TV 立体映像の視聴に関する留意事項が項目別に整理され、ガイド
ラインでは適切な TV 視聴についてはもちろん、ヒューマンファクターの主要な発生要因と
して考えられている、目の疲れ感を誘発する ‘収斂と調節の不一致’現象を最小化する方
案も盛りこまれるであろうと語った。(電子新聞 2010/03/18)
◆[デジタルテレビの標準決定にはもう少し時間がかかる見込み]:フィリピン
情報通信技術委員会(CICT)の Ray Anthony Roxas-Chua 長官は、デジタルテレビ放送への
移行に関して、フィリピンとしてはどの標準を採用するかの選択がなされておらず、政策
策定にはまだ時間がかかりそうだとの見通しを示した。
Chua 長官は「ヨーロッパ方式と日本方式のどちらを採用すべきか、評価検討段階にある。
テクノロジーとしてどちらが優れているかという面では両方とも大差ない。フィリピンの
システムや標準に照らしてどちらがよいかということが評価のポイントだ。
」と述べている。
当初、デジタル放送は 2006 年に開始を予定していた。フィリピン政府は、ヨーロッパ方
式の採用を一旦決定したものの、その後この決定が取り消され、再考されることになった。
アナログ放送は、2015 年までに終了予定である。放送各社は、デジタルシステム上でのテ
スト放送を開始しているが、デジタルテレビ放送に関する申請は全てが認可された訳では
ない。大手テレビ局 GMA 社の CEO、Felipe Gozon 氏は、同社の機器はデジタル放送への移
行準備ができており、いつでも移行可能であると話している。CICT の Chua 長官は、2010
年 6 月の政権交代前(注)には標準に関する評価と決定を完了させると話している。
(注)フィリピンでは、2010 年 5 月に大統領選挙が予定されており、憲法上現職のアロヨ
大統領の再選は認められないため、政権交代が確実となっている。)
(Business World 2009/12/28)
263
5. 環境・
環境・リサイクル施策
リサイクル施策の
施策の現状及び
現状及び対策の
対策の実態
◆[IT 政策:携帯電話など中古 IT 製品の輸入禁止へ?] :ベトナム
Ministry of Information and Communications(MIC、情報通信省)は現在、輸入禁止とな
る中古 IT 製品リストと、その適用規定に関する通知案について意見聴取を行っている。案
によると、中古携帯電話等の輸入が禁止されることになる。ただし保守・修理、新しい製
品を製造するために輸入する場合、直接的な生産手段とするために賃貸する形で輸入する
場合、設計・研究開発業務で使用するために輸入する場は、中古の IT 製品であっても例外
扱いとなる。(Sai Gon giai phong 2009/09/23)
264
6. 国際連携・
国際連携・政府間協力の
政府間協力の状況
【国際連携】
◆[KOTRA の海外地域本部長らの展望「韓国輸出景気」]:韓国
電子新聞が KOTRA【注】8 ヵ所の海外地域本部長らに韓国の輸出景気と当該国における韓
国ブランドの認知度などを調査した結果、中国と CIS を除いた全ての地域で景気沈滞であ
るにも関わらず、韓国製品の認知度が上がっているとの回答であった。
北米地域本部長(ニューヨーク KBC センタ長)は、「韓国製品の品質と技術力が不景気な
中でも消費者の消費形態にマッチしているため、競争力は衰えていない。大企業の活躍も
韓国製品認知度向上に効果があったが、技術力で米国市場を攻略した中小企業も貢献し
た。」と話した。中東、アフリカ地域担当であるドバイ KBC センタ長は「最近、家電製品売
り場で韓国製品が店の中央に置かれるようになった。輸出も以前の水準に回復するだろ
う。」と語った。
欧州地域本部長(ドイツ・フランクフルト KBC センタ長)は、
「欧州は最悪の景気沈滞期
を抜けたが、回復の速度は遅い。しかし、韓国製品の欧州向け輸出は韓国-EU FTA が実施さ
れたことにより認知度が上がり、昨年よりも 8%ほど増加するであろう。
」と述べた。メキシ
コ KBC センタ長は、
「中南米景気は 3%ほどの小幅成長であると展望できるが、韓国製品輸出
は対前年比 15%増加するであろう。
」と述べた。2010 年に注目される IT 輸出製品について
の設問には、LED(欧州、アジア、中東アフリカ、中国、日本、CIS)、セキュリティ装置(ア
ジア、中南米)、スマートフォン(米国、CIS)、オンラインゲーム(欧州)、電子ブック(北
米)との回答があった。
(電子新聞 2010/01/07)
【注】KOTRA は日本の JETRO に相当する機関。
◆[韓国放送通信委員会、インドの WiBro 化に全方位外交]:韓国/インド(再掲)
人口 12 億のインドで WiBro 市場を開拓するため、放送通信委員会委員長が渡印し、WiBro
のための周波数割り当てを早期に実施するよう、インド通信部に要請した。これは 1 月に
李大統領が渡印したときに要請した、韓国-インド間で WiBro 事業協力を受けたものである。
放送通信委員会委員長は、2.3GHz 周波数の割り当てと韓国の WiBro 事業者のインド進出
への支援を依頼している。インドが予定どおり周波数を競売制にすると世界最大規模の
WiBro 市場の可能性が開かれる。
当初、インド通信部は 2009 年末に 2.3GHz 周波数を割り当て、インド全域にブロードバ
ンドモバイルインターネットサービスを提供する予定であったが、今年の 4 月以降に延期
されることとなった。インドの国防省がまだ 2.3GHz 周波数を使用しており、調整がつかな
かったこと、WiBro と競合関係にある LTE の延期攻勢があなどれないことのためである。
韓国 WiBro 事業者へのインド進出支援を政府が行うことについて、
三星電子の常務は、
「政
府の後押しは力になる。WiBro 市場への進出が可能となれば、韓国の中小企業もインド市場
265
へ一緒に進出することができるようになる。WiBro が次世代通信サービスを牽引していくか
もしれない。」と期待している。インド側も好意的に受け止めている。
「2.3GHz 周波数の割
り当てに向け、省庁間の協議は順調に進んでいる。近く公表できる。
」としている。
また、放送通信委員会委員長は、ニューデリのオベロイホテルで韓-印情報通信融合フォ
ーラムとデモンストレーションを開催し、WiBro、DMB、IPTV、ブロードバンドなど、韓国
企業の海外進出技術を公開した。(電子新聞 2010/02/21)
◆[日韓電子政府、協力を加速]:韓国/日本
韓国と日本が年内に電子政府分野の協力についての覚書(MOU)を締結する。これにより、
日韓 IT 協力委員会が定期的に開催され、電子政府分野の相互協力が強化される。
3 月 22 日に日本の総務省原口大臣が訪韓し、韓国の行政安全部第 2 副大臣と面談した。
韓国が国連の電子政府ランキングで 1 位を維持していることにより、最近、日本で、韓国
の電子政府への関心が高まっている。今回の原口総務相の訪韓には、日本の局長クラスの
公務員約 10 名と NHK、読売新聞などの記者団が同行した。今年 1 月には日本の次世代 IC カ
ードシステムの研究チームが、2 月には総務省の情報化担当の公務員が韓国の行政安全部を
訪問し、電子政府を視察している。3 月はじめにも、総務省の次官級公務員がソウル九路市
庁を訪問した。
今回の面談で、原口大臣は「韓国の電子政府の最高責任者との面談を通じ、電子政府に
ついての大きな青写真を描くことができた。
」と語った。これに対し、行政安全部第 2 副大
臣は、
「韓国の IT サービス企業は、世界最高水準の技術力を持っており、海外で多くの電
子政府構築に協力している。これを契機に日本の電子政府構築事業に韓国の IT サービス企
業が参加できる機会が増えるよう、支援をお願いする。
」と述べた。
原口総務相は面談の後、
「情報化村」や地域開発院、江南区庁、三星 SDS などを訪問し、
韓国の代表的な電子政府システムについて説明を受けた。
韓国側の電子政府専門家は、
「日本では地方自治体を中心に電子政府の導入に積極的であ
る。今回の機会を活用し、日本の電子政府特需となることを期待したい。」と述べた。(デ
ジタルタイムズ 2010/03/22)
◆[FPT や Viettel の海外ビジネスが好調]:ベトナム(再掲)
地場 IT 最大手の FPT グループや人民軍系通信会社の Viettel の海外ビジネスが好調であ
る。
FPT は 2008 年中頃の経済不況が最も深刻だった頃に本格的に米国に進出したが、Free
Scale 社や Omgeo 社等との契約を取り付け、2009 年には対米の売り上げが 550 万ドルに達
した。FPT の 2009 年の全売り上げのうち日本からの売り上げは 56%、シンガポールからの
売り上げは 21%を占め、海外ビジネスの好調ぶりがうかがえる。
Viettel はカンボジア、ラオスでのビジネスが好調である。同社は 2009 年 9 月にカンボ
266
ジアに Metfone 社を立ち上げ、カンボジア最大の通信会社となり、ADSL サービスの市場シ
ェア 60%、固定電話サービスの市場シェア 50%を占めている。携帯電話通話サービスでは
200 万人のユーザを抱え、
同国第 2 位
(9 社中)の企業となっている。
一方のラオスでは Unitel
ブランドを展開しており、3G サービスや高速インターネット接続サービスを提供している。
現在、Unitel ではラオスで最多の 900 ヵ所以上(同国内 35%のシェア)の無線基地局(BTS)
を保有している。(Vietnamnet 2010/02/21)
◆[ラオスと中国が通信衛星事業で協力]:ラオス/中国
2 月 25 日、National Authority of Science and Technology(NAST)は、中国の China
Aerospace Science and Technology Corporation(CASC)及び China Asia-Pacific Mobile
Communications Satellite Company Limited (China-APMT)と通信衛星事業に関する契約を
締結した。これは、2009 年 9 月 25 日にラオスと中国とで締結された「ラジオ・TV・電話に
おける通信衛星事業の協力に関する覚書」に基づくものであり、覚書締結後に事業化可能
性調査が実施され、今回の契約に結びついた。40 ヵ月以内に衛星を軌道に載せることを目
標に掲げている。
本プロジェクトが成功すれば、ラオス国内における初の衛星打ち上げが実現する。
(Vientiane Mai 2010/02/26)
267
7. 情報化の
情報化の動向
【電子政府】
◆[韓国、国連電子政府評価で初めて世界 1 位]:韓国
行政安全部は、2010 年国連電子政府評価で韓国が初めて 1 位となったと 1 月 14 日に発表
した。同評価は、グローバル電子政府協力の促進と国家経済力強化のために、2002 年から
UN 会員国 190 ヵ国を対象に隔年で実施しているものである。電子政府の発展度合は、基盤
分野(電子政府準備指数)と国民の政策への参加水準分野(オンライン参加指数)の 2 つに
分けて評価される。前回実施の 行政安全部は、この結果を政府の国家情報化ビジョンと政
策策定、国家情報化基本法改定など政策的な努力が評価されたものとし、前向きに受け取っ
ている。また、情報化国際協力を強化し、電子政府システムの輸出など実質的な成果に結び
付けていくとしている。
(電子新聞 2010/01/14)
◆[日韓電子政府、協力を加速]:韓国/日本(再掲)
韓国と日本が年内に電子政府分野の協力についての覚書(MOU)を締結する。これにより、
日韓 IT 協力委員会が定期的に開催され、電子政府分野の相互協力が強化される。
3 月 22 日に日本の総務省原口大臣が訪韓し、韓国の行政安全部第 2 副大臣と面談した。
韓国が国連の電子政府ランキングで 1 位を維持していることにより、最近、日本で、韓国の
電子政府への関心が高まっている。今回の原口総務相の訪韓には、日本の局長クラスの公務
員約 10 名と NHK、読売新聞などの記者団が同行した。今年 1 月には日本の次世代 IC カード
システムの研究チームが、2 月には総務省の情報化担当の公務員が韓国の行政安全部を訪問
し、電子政府を視察している。3 月はじめにも、総務省の次官級公務員がソウル九路市庁を
訪問した。
今回の面談で、原口大臣は「韓国の電子政府の最高責任者との面談を通じ、電子政府につ
いての大きな青写真を描くことができた。」と語った。これに対し、行政安全部第 2 副大臣
は、
「韓国の IT サービス企業は、世界最高水準の技術力を持っており、海外で多くの電子政
府構築に協力している。これを契機に日本の電子政府構築事業に韓国の IT サービス企業が
参加できる機会が増えるよう、支援をお願いする。
」と述べた。
原口総務相は面談の後、
「情報化村」や地域開発院、江南区庁、三星 SDS などを訪問し、
韓国の代表的な電子政府システムについて説明を受けた。
韓国側の電子政府専門家は、
「日本では地方自治体を中心に電子政府の導入に積極的であ
る。今回の機会を活用し、日本の電子政府特需となることを期待したい。
」と述べた。
(デジ
タルタイムズ 2010/03/22)
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◆[電子 ID カード 2010 年までに導入へ]:インドネシア
インドネシアでは、2012 年までに個人の指紋データが入った電子 ID カードが導入される
予定である。インドネシア技術応用評価庁(BPPT)の Marzan A. Iskandar 長官によると、
これは 2006 年に施行された法案に基づくプロジェクトで、個人の認証が必要な様々な場面
で活用されるという。
政策面は自治省が担当し、開発は BPPT が行なう。2010 年に開発が開始され、2012 年に完
了する見込みで、6 兆インドネシアルピアが投じられる。17 歳以上のインドネシア国民向け
に発行され、5 年毎に更新される。この電子 ID カードは選挙時の身分証明書としても活用
されることが期待されている。
現在、6 つの地域でパイロットプロジェクトが行なわれている。なお、この電子 ID カー
ドの開発にあたっては、インドネシアや外国の技術が用いられているという。(1 インドネ
シアルピア=約 0.01 円 2009/12/30 現在)(Republika
2009/12/30)
◆[政府、クメール語を収録したユニコード(Unicode)を採用]:カンボジア
政府のスポークスマンは 1 月 8 日に「政府機関がコンピュータで処理をする全てのカンボ
ジア語(クメール語とも呼ばれる)公用文書は、国際標準として認められたクメール語を収
録したユニコードのみを使用する。
」と発表した。2009 年 12 月 24 日、布告に署名がなされ、
60 日以内に多種類ある文字コードからユニコードへの切り替えが実施される。同国では、
統一されたクメール語コードを政府として使用することが、長い間待ち望まれていた。(The
Phnom Penh Post 2010/01/08)
◆[国連電子政府ランキング、ベトナムは 90 位] :ベトナム
United Nations Public Administration(UNPAN) が 発 表 し た 「 The United Nations
e-Government Survey 2010」によると、ベトナムの電子政府のレベルは 192 ヵ国中 90 位で
前年に比べ 1 ランクアップした。東南アジア諸国 10 ヵ国の中では、シンガポール(11 位)、
マレーシア(32 位)
、ブルネイ(68 位)
、タイ(76 位)
、フィリピン(78 位)に次いで 6 番
目であった。ランキング上位は、韓国、米国、カナダ、英国であった。(Thoi bao kinh te
2010/01/18)
◆[政府調達オンラインシステムの試験稼動]:ベトナム
Ministry of Planning and Investment(MPI)は、3 月 1 日から政府調達オンラインシステ
ム(http:/muasamcong.mpi.gov.vn)の試験稼動を開始した。まずはハノイ市人民委員会、
269
VNPT(ベトナム郵政通信グループ)
、EVN(ベトナム電力グループ)の 3 ヵ所で導入される。
これにより政府調達の入札に関する各種手続きがオンライン上で可能となる。このシステム
は Korea International Cooperation Agency (KOICA)の無償援助によって構築された。(Dau
tu online 2010/03/01)
◆[統一 ID プロジェクト、アンドラプラデーシュ州で試行]:インド
インドの意欲的なプロジェクトであるインド市民への統一番号付与は、
アンドラプラデー
シュ州の 2 地域で 3 万人を対象に試行することになった。これはパイロットプロジェクトへ
の前段階といわれており、データ収集の品質と正確性を試すものである。同州がこの試行に
選定されたのは 4,200 万人の市民へ虹彩による生体認証カードを発行した経験があるから
とのことである。当初の統一番号プロジェクトには 2 つの要素があり、ひとつは 4+4+2(両
手の 4 本指と親指 2 本)のディジタルイメージを記録することであり、もうひとつは生体認
証システムの動作を確認すること、とのことである。(The Hindu Business Line 2010/3/13)
◆[e-Government Policy のワークショップを開催]:スリランカ(再掲)
Information and Communication Technology Agency(ICTA)は、政府機関の幹部や CIO 向
けに e-Government Policy に関するワークショップを開催する。
“Policy and Procedures for
ICT Usage in Government (e-Government Policy)”は、昨年 12 月に内閣で承認され、全て
の政府機関が採用しなくてはならない最低限の要件となっている。また各政府機関はその枠
組みの中で、カスタマイズを行い、独自の ICT Policy や Procedure を作成してもよいこと
となっている。実施期間は、2009 年 1 月から 3 ヵ年だが、適宜、政府より延長や修正が行
なわれる。(Daily Mirror 2010/03/17)
◆[Tarin 元財務大臣による電子政府提案]:パキスタン
Shaukat Tarin 元財務大臣は、2 月 28 日の離任に先立ち Gilani 首相の求めに応じて、ガ
バナンスの向上と不正防止のための、National Governance Plan の抜本的な改革案を提案
した。その中で、電子政府の重点分野として、土地収入記録、不動産登記、裁判記録、警察
記録、航空機運行情報記録、医療保険サービス、学校登録、住所証明、出生・死亡証明、建
築許可、資産税、郵便業務、ザカット税(宗教税)
、社会保障の電子化を挙げている。(The
International News 2010/03/03)
【電子商取引】
◆[09 年ネットショッピング取引額規模 2,500 億元に]:中国
270
市場調査会社の易観国際(Analysis International)と iResearch 社の 29 日の発表によると、
中国のネットショッピング業界は 3 年連続の急成長を見せ、2009 年の取引規模は約 2,500
億元に達し、社会全体の消費財小売総額の 1.97%を占めた。
ネットショッピングの利用者数も 1 億人を突破する勢いで、インターネットユーザ全体の
28.2%に上った。
市場別では、C2C 市場では依然寡占状態が続いており、
「淘宝網」が他を圧倒的に引き離し、
トップに位置している。B2C は C2C に比べ市場規模がかなり小さいものの、成長速度は C2C
市場よりも速い。
益々多くの企業がネットショッピング市場に進出するに従い、ネットショッピングの細分化
も起きている。
ネットショップ「西南食品城」オーナの王東氏によると、現在物流倉庫、顧客配送サービ
スなどの企業が次第に頭角を現し、規模も大きくなりつつあるという。王氏は「これら企業
は事業内容のニッチ化を通じて、ネットショッピング大手との正面衝突を避け、地盤を獲得
している。淘宝網も全分野に手を広げることは不可能である」と述べている。(新京報
2009/12/30) (1 元=13.42 円 2009/12/28 現在)
◆[北京市、電子商取引の実名制度の導入へ]:中国
電子商取引ユーザに対する実名制度導入に再び注目が集まっている。電子商取引の健全な
発展に向けた管理法規が望まれている。
北京市では今年、インターネット管理の各種実証試験を行い、同時に実名登録制度も段階
的に運用される予定である。北京市でニュース配信や電子公告サービスを行うウェブサイト
では、サイト管理者の実名登録制度が運用される。電子商取引やソーシャルネットワーク
(SNS)などのサイトのユーザ全員に対しては、身分情報を使った登録が要求されることとな
る。
電子商取引における紛糾を解決するために、監督管理の「空白」を埋める必要がある。一
方、実名制度による個人情報漏洩の心配も解決する必要がある。
現在中国のネットワーク管理は、
「一体誰が管理するのか?何を管理するのか?どのよう
に管理するのか?」という点が曖昧となっており、各種立法が待ち望まれている。ネットワ
ークが急速に発展する中で、立法上の「空白」も数多く浮かび上がっている。電子商取引に
関する法規が完備しておらず、店舗評価などの信用評価にも多くの問題を抱えている。
消費者にとって最も気になるのは、インターネット上での取引が実体経済と同じように保
障されるのか?紛糾が起こったとき誰が仲裁決定権を持つのか?誰が管轄するのか?とい
った点である。
「ネットワーク工商管理局」のような機構が誕生し、電子商取引法の早期施
271
行は多くの人が望むところであろう。(通信信息報 2010/1/29)
◆[フィリピン Yehey 社の CEO、同国での E-Commerce の拡大に期待] :フィリピン
9,000 万人を超えるフィリピンの総人口のうち、クレジットカードを所有するフィリピン
人はわずか 500 万から 600 万人にすぎず、
フィリピンにおける EC 普及の課題となっている。
また、現在殆どの E-Commerce(EC)サイトはクレジットカードによる決済が主流であるが、
安全な決済ポータルが不足していることも課題となっている。
フィリピン発祥の最大の検索エンジン、インターネットポータル企業である Yehey の
Donald Patrick Lim CEO によれば、今後より多くの消費者が携帯電話によるモバイルマネ
ーを使うようになってくれば、フィリピンの EC は大きく進展するだろうと話している。同
国では PC 普及率は低い(約 2,400 万人)が、携帯電話加入者は 7,000 万人を越えている状況
にある
(なお、インターネットへもアクセスができるのは現在 200 万台程度である)(
。Manila
Bulletin 2009/12/02)
◆[ネットショッピング普及率、11%と低い水準]:ベトナム
ホーチミンシティでネットショッピングの経験のある世帯は全体の 11%と世界的に低い
水準にあることが明らかになった。
同市商工局のまとめでは、ベトナムの昨年通年の電子商取引額は 9,650 万ドルであった。
これに対し中国では、大手アリババが運営するネットオークションサイトの淘宝網
(Taobao)
で 1 日の取引額 5,250 万ドル、オンライン決済サービスの支付宝(Alipay)は同 1 億ドルに
達している。
ベトナムの消費者はインターネットで必要な商品やサービスを探すが、
支払いは供給業者
に連絡した後に現金で行っている。ネットで買い物をしたベトナム人消費者のうち、現金決
済が 77.9%に対し、オンライン決済はわずか 16.6%とのデータもある。
ベトナムの消費者の間で電子商取引が進まない理由については、ネットで売られている商
品やサービスの質、オンライン決済に対する信用の低さなど、サービスに関する懐疑的な見
方があると指摘されている。(VietNamNet
2010/01/25)
272
参考資料
参考資料 1 アジア各国地域
アジア各国地域における
各国地域における IT・
IT・電気電子関連政策・
電気電子関連政策・法制度
項目
日本
基本政策・計画
発表時期
実施期間
概要
電子政府計画
発表時期
実施期間
推進組織
概要
電子商取引法
(括弧内は策定年)
電子署名法
コンピュータ犯罪法
著作権・
知的所有権法
その他政策
(含優遇政策)
中国
■「i-Japan 戦略 2015~国民主役の「デジタル安心・活力
社会」の実現を目指して~」
(1)「第 11 次五ヵ年計画」
(2)2006-2020 年国家情報化発展戦略
(3)2009-2011 年電信情報産業の調整と振興計画
2009. 7.6
(1) 2006.3 (2) 2006
2009~2015
(1) 2006-2010 (2) 2006-2020 (3) 2009-2011
医療・健康分野、教育・人材分野、さらに産業・地域の活
性化と新産業の育成、デジタル基盤の整備
「三ヵ年緊急プラン」において産業・地域の活性化及び新
産業の育成、あらゆる分野の発展を支えるデジタル基盤の
整備推進)を推進。
台湾
■ユビキタスネットワーク社会発展計画
2007.3
(3) 2009
2007-2011
予算:556 億台湾元(約 1,673 億 5,600 万円)
ユビキタス・ネットワーク社会の創出をコア概念とし、2011
年までに以下を達成する。
・データ通信速度が 30Mbps に達する移動・固定網の世帯普及
率を 80%にする。
・50%以上の住民が各種 ICT を応用したサービスを享受し、満
足度を 80%に
・55%の住民が電子政府サービスを享受し、満足度 60%に
・ネットワークに接続できる各種機器の利用を 30 億個増やす
・ユビキタス・ネットワーク社会(UNS)関連の新興産業におけ
る年間生産額が 1 兆台湾元(約 3 兆 100 億円)に達する。
(1) マクロな政策的誘導や全体的枠組みのほか、各業界、各分野の具体的な発展
計画や原則が定められている。情報産業の関連計画は次の分野において、5
年間の計画が定められている。
「知的財産権の情報化」、
「情報産業」
、
「電子商
取引」、
「全国の農業及び農村部の情報化」、
「集積回路産業」、「ソフトウェア
産業」、
「電子基礎材料及びキーデバイス」、
「電子専用設備及び計器」、
「情報
技術による従来産業の改善・向上」
。
(2)中国情報化発展のガイドラインと戦略目標、戦略重点と戦略プランを提起、
さらに、情報化実現の保障措置を明記。
(3) 金融危機後の内需刺激策、IC、液晶、TD-SCDMA ソフトウェアなど 6 プロ
ジェクトへの追加投資
韓国
(1) ニューIT 戦略(2008-2012)
(2) 国家情報化基本政策
(1) 2008.7
(2)2008.12
2008-2012
(1)
予算:3 兆 8,800 億ウォン(約 4,617 億 2,000 万円)
目標:グローバルソフトウェア企業 10 社
売り上げ 500 億ウォン(約 60 億円)以上の情報技術企業
1,000 社
輸出は 2,000 億ドル
国内生産 386 兆ウォン(約 46 億円)を達成
(2)
a.創造的ソフトウェア
b.先端デジタル融合インフラ
c.信頼できるの情報化社会の実現
d.仕事をたくさんする政府
e.デジタルで豊かになる国民
「i-Japan 戦略 2015」に含む
(1)国家情報化指導グループの「わが国の電子政府指導に関する意見」
(2)2006-2020 年国家情報化発展戦略の中、電子政府の推進と電子政府行動プラン
を提起
電子政府プロジェクト
次世代電子政府計画(2008-2012)
2009.7
(1) 2002.8.5 (2) 2006
2002.5
2008
2009-2015
(1) 2002-2005 (2) 2006-2020
2002-2008
2008-2012
IT 戦略本部、各関連省庁
国家情報化指導グループ、工業情報化部(情報化推進司、元は国務院情報化工作グ
ループ)
行政院
行政安全部他
2015 年までに、デジタル技術による「新たな行政改革」
を進め、国民利便性の飛躍的向上、行政事務の簡素効率
化・標準化、行政の見える化を実現する。そのため、電子
政府推進体制の整備、過去の計画のフォローアップと PDCA
体制の確立を行うとともに、国民が自らに係る行政情報を
安心して連携させることができる基盤となる「国民電子私
書箱(仮称。以下同じ。)」を、広く国民・企業等の間に普
及、定着させることなどにより、顧客である国民に対し、
以下に掲げる行政サービスを提供する。
第 11 次 5 カ年計画期間中の主要目標は、標準統一、機能完全、安全で信頼でき
る政府業務情報ネットワークプラットフォームがサポートの役割を果たすこと、
重点業務システムのシステムが成果を収めること、基礎性と戦略性を持つ政府業
務情報データベースの建設で大きな進展を達成し、情報資源の共有度を顕著に高
めること、電子政府ネットワークおよび情報安全保障体系がなりつつ、規範と研
修制度を設け、電子政府に関係する法規や標準を徐々に整備することなどだ。こ
れらの仕事が完成した後、中央と地方各級党委員会、政府部門の管理能力、政策
決定能力、応急対応能力、公共サービス能力は大きく強化、改善され、電子政府
体系の枠組みが基本的に形成されることになる。これにより、次期 5 ヵ年計画の
電子政府発展に向けた堅固な基礎を築く。また、電子政府の応用とサービス体系
が日々完備されるようにする。
2007 年までに世界の 5 指に入る電子政府の実現を目指す。政
府機関・企業・市民がいつでも多様な手段を用い、便利に政府
のサービスを受けられるようにする。ペーパレス申請、窓口の
一本化、24 時間サービス、在宅サービスなど。
新規政策課題 BPR/ISP(7 課題)
①全政府への EA と知識インフラ構築
②予防中心の家畜衛生管理体系構築
③企業競争力支援体系構築
④国家代表ポータル構築
⑤次世代統合認定体系構築
⑥利用者中心の行政情報流通
⑦国家統合貿易・物流情報ネットワーク構築
・電子商取引全体を網羅する法はない。
・特定商取引に関する法律施行規則(2006)
・電子商取引の発展加速に関する若干の意見(2005)
・オンライン取引に関する指導的意見(2007)
・電子商取引の規範的発展の促進に関する意見(2007)
Star Project (2004)(
(財)資訊工業策進會傘下の電子商取引資源セ
ンター(EREC)が発表)
電子商取引基本法(1999)
電子商取引推進計画(2003)
電子署名法(2005)
-
電子署名法施行規則の改定(2002)
・インターネットセキュリティ保護の決定(2000)
・コンピュータソフトウェア保護法(2001)
-
・著作権法(1970、随時改定)
・コンピュータソフトウェア著作権登録弁法(2002)
・「国家知的所有権戦略綱要」(2008)
-
・書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関
係法律の整備に関する法律(IT 書面一括法)(2000)
・特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(2002)
・電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に
関する法律(2001)
・個人情報の保護に関する法律(2003)
・政府調達法(2002)
・ソフトウェア産業振興アクションプラン(47 号文献)(2002-2005)
・国家奨励集積回路企業リスト(2007)
・電子廃棄物による環境汚染の防止・対策にかかる管理方法
・デジタルテレビ産業の発展奨励に関する若干の政策(2008)
・ネット等の有害情報を撲滅、対策するための特別行動(2008)
・外資系電信企業管理規定の改正(2008)
・電子署名及び認証業務に関する法律(2001)
・電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律
(2002)
・刑法のコンピュータ犯罪法に該当する部分第 161 条の 2、第
234 条の 2、第 246 条の 2
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律(1999)
273
情報通信網利用促進と情報保護等に関する法律(2001)
・電送権(2000)
・著作権改定(2004)
・コンピュータプログラム保護法改定(2005)
モバイル台湾計画(2003.11)
目標:携帯電話ネットワークとワイヤレス LAN の 2 分野にお
いて世界最高のサービス環境を構築し、通信サービス産業を 3
番目の 1 兆元産業へと発展させる。
e ラーニング産業発展法(2004)
モンゴル
ブルネイ
カンボジア
インドネシア
ラオス
■国家 IT 戦略計画“IT 2000 and Beyond”
■National Strategic Development Plan (NSDP), 2006-2010
■「ICT Policy」(2004 年に草稿完了、現在、未承認)
■「Indonesia’s Knowledge Based Society 2025」
■ 「 National Policy on Information
Communication Technology (ICT)」
2005.10
2000.10
2006.1
2005
2006 年 8 月
2005-2012
特に定めはない
2006-2010
2005-2025
2006 年-2010 年
■「e-Mongolia」
・ビジョン:「ブルネイ・ダルサラーム国の繁栄の可能
2012 年までに ICT 分野においてアジアのトッ
性を最大にするために IT を有効に利用する。
」
プ 10 入りを実現させる。
・ミッション:
「国家 IT 協議会は、IT 戦略的開発の牽引
電子政府の実現、インターネット料金の引き下
や全国に最先端の IT 普及を行う。
」
げ、一家に一台のパソコンを普及、海外からの
・ゴール:
「IT 人材開発、IT 研究開発など」10 の目標が
アウトソーシング業務受託の拡大等。
ある。
and
国家情報インフラの整備、関係法の整備、人材開発を基礎
NSDP4.69 項 : ”Promoting extensive use of Informtaion
とし、2015 年までに”Information Society”へ、2025 年まで
Technology in all aspects of governance and government”
に“Knowledge Based Society”を実現することを目標に掲
げ、段階的な目標を掲げている。2015
年までの政策は
IT Policy の草稿は、政府のリーダシップと責務、法制度、人材
「
Towards
Indonesian
Information
Society 2015
育成、コンテンツ整備、インフラ整備、企業の 6 分野で構成さ
(MII2015)」。
れている。
2020 年までに後発開発途上国からの脱却をはかる
政府計画に沿って、社会経済発展のために ICT を道
具として活用する。
貧困軽減のため ICT の活用、法令・インセンティブ
の制定、ICT 産業の育成、トップダウンアプローチ
による ICT 識字率の向上、を目指す。
策定中
※プロジェクトベースの計画はあり。
e-Government Master Plan
電子政府戦略計画 2009-2014
The Study Report on e-Government Service Deployment Plan
National Policy on e- Gov Development
for Royal Govenment of Cambodia
2005.4
2009.5
2008.10
2003.6(大統領令 3/2003)
-
2005-2010
2009-2014
2008-2020
2003-2015
-
ICTPA (ICTP 庁)
電子政府リーダシップフォーラム
(EGLF)、
首相府電子政府国家センタ(EGNC)、
通信省・情報通信技術産業機構・電子政府技術部門
(EGTAB)
NiDA
KOMINFO
NAST(旧称:STEA)
行政の ICT 活用能力向上、ガバナンスの向上、ICT セ
キュリティと信頼性の強化、複数の政府機関で実施され
ているプロジェクトの統合、および市民が利用しやすい
電子政府プロジェクトの推進
2001-2004 年に韓国から 22 億円の借款を受け、電子政府プロジ
ェクト GAIS(Government Administration and Information System)に
より、プノンペンの 27 省庁、7 地区役所、76 町村役場にネットワ <戦略>
ークを構築し、住民・土地・車両の登録システムサービスを稼動さ ・安定して、信頼性があり、経済的に見合う公共サービス
の開発
せた。
2006-2009 年は、さらに韓国から 36 億円の借款を受け、GAIS ・組織、管理システム、ビジネスプロセスの改革
を光ファイバー網で全国 10 州、市へ展開する PAIS/NII(Provincial ・情報化技術の最適利用
Administration
Information
System/
National Information ・官民パートナーシップの推進
Infrastructure)プロジェクトを実施した。2010 年から PAIS2 として、 ・人材育成と IT リテラシの向上
残り 14 州に展開していく。
・現実的で測定可能な実行計画の策定
2007-08 年に JICA の技術指導により調査分析が行なわれた これを実施するため、ハイレベル CIO 組織の設立、法律整
The Study Report on e-Government Service Deployment Plan は、 備、IT インフラ整備、パイロップロジェクトの策定等が盛
2009 年 8 月に電子政府ガイドラインとして発表され、公共サービ
り込まれたロードマップが策定された。
ス向上のために電子化が可能な分野を特定し、行政サービス拡大計
画を立てている。
-
-
商務省が作成中
-
-
-
Electronic Transaction Law (2008)
作成中。National Policy on ICT で一部述べられてい
る。商工省/ NAST(旧称:STEA)
-
-
-
-
-
先進ICTの利用を通じて、市民を中心とした
政府(G2C)、透明化された政府(G2B)、ノリッ
ジをベースとした政府(G2G)を構築すること
により、国家競争力の強化、行政サービスの質
の高度化を目指す。(高優先順位のプロジェク
トは、政府ポータル構築プロジェクト、国民ID
プロジェクト、パイロットデータセンターであ
る。)
・ICT Vision 2010 (2000.2)
・
Mid-term
Strategy
to
develop
Telecommunications (2001.10)
・Master Plan to develop ICT in education sector by
the year 2010
・Master Plan to dvelop education in 2006-2015
・ Master Plan of development of external IT
outsourcing by the year 2015 (2007)
Copyright Related Right Law, Act.30
-
・Law on Telecommunications
・Master Plan for Deployment of Free and Open Source Software in
Cambodia
知的財産権法(2003 年公布、施行)
・Free/Open Source Software Deployment Action Plan
(全て承認待ち)
274
2006 年 11 月、中国輸出入銀行と約 68 百万米ドル
の電子政府プロジェクトに関連する MoU を結ん
だ。このプロジェクトを核として、電子政府が進め
られている。
(1)電子政府サービスのインフラ整備
(GII, Government Info-communications
Infrastructure)
(2)電子政府アプリケーションの整備
(3)IT 人材育成
作成中
情報文化省/NAST(旧称:STEA)
マレーシア
ミャンマー
■「マルチメディア・スーパー ・コリドー計画(MSC
Malaysia)
」
1996.6
■ 「 Myanmar ICT Development Master
Plan」
2006 年予定→現在まで未発表
フィリピン
シンガポール
タイ
1996-2020
2006-2010→現在まで未実施
2000-2010
2020 年 ま で に 先 進 国 入 り を 目 指 す 国 家 ビ ジ ョ ン
「VISION2020」達成のための、IT 分野に特化した計画。産
業構造を製造業中心から知識基盤型社会・経済への転換を目
指す。その推進のため、政府主導で 7 つのフラグシッププロ
ジェクトや国際的 IT 企業の誘致などが進められている。
2010 年までの情報化開発計画。①ICT インフラ
ストラクチャ、②ICT 産業、③ICT 人材開発、④
電子政府、⑤情報化と電子商取引、⑥e 教育と認
知度向上、⑦ICT 標準化、⑧ICT 法的枠組みの 8
分野について、現状分析と今後取組むべきアク
ションプランを策定。
21 世紀にフィリピンを”アジアの中の知識センタ”
とすべく、2010 年までに徐々に IT 化を進める目標。
実施は 3 フェーズに分かれ、①フェーズ 1(2000 年ま
で)-フィリピン国内の全産業、政府機関、学校、家庭
から IT にアクセスするためのインフラを整備する。 iGov2010
②フェーズ 2(2005 年まで)-IT 利用を日常生活に普
及させ、フィリピン企業が競争力のある IT 製品を世
界市場に提供できるようにする。③フェーズ 3(2010
年まで)-「アジアの知識センタ」となる。
e-Government Roadmap
(電子政府推進計画)
e-Governemnt プロジェクト
特になし。上記マスタプランの一環として取り
組まれている。
GISP 政府情報システム計画
2006.5
2009.4
1996
-
2000.7
2006-2010
2010-2014
1996-
-
2000-2005
IDA
MICT
市民中心のサービスを開発することがコンセプ
トになっている。GtoC, G2B, GtoE, GtoG のサ
ービスを 5 ヵ年に分けて開発する。第一段階:
c-Government (all governments collaboration),
第二段階:m-Government (e-service via mobile),
第三段階:u-Government (ubiquitus e-service),
■「国家 ICT 基本計画」
■「Intelligent Nation 2015 (iN2015)」
IT2010: 2001-2010 現行*
IT2020:
2010 年策定中
2006.6
**2009.8
*2002.32011-2020
2006-2015
**2009-2013
。
①超高速で信頼性の高い知的情報通信インフラを整備す マスタープランのテーマは「Smart Thailand」
目標は、国民の
50%が
ICT
に親しみ仕事や生活
る。
に使いこなし、Network Readines Ranking で上
②国際競争力のある情報通信産業を育成する。
位国
25%に名を連ね、ICT 産業の GDP 貢献度を
③情報通信に精通した労働力と国際競争力のある IT 人
15%までに引き上げる。そのための 6 戦略は告
材を育成する
ぎの通り:人材育成、政府ガバナンスの強化、ICT
④情報通信の革新的利用を通じて主要経済分野、政府、
インフラの整備、e-Government の推進、ICT 産
社会の変革を先導する。
業の主要産業化、ICT 産業の競争力強化
■「IT21」
1998.2
①電子サービスの内容(質・利便性)の充実
②国民の電子的手段による政策への関与の促進
③政府機関の能力の向上
④国家の競争力強化
-
CICT(NCC)
7 つのフラグシップ
①電子政府 ②多目的カード ③スマートスクール ④テレ
ヘルス(遠隔医療) ⑤研究・開発クラスター ⑥e ビジネ
ス ⑦テクノプレナー(技術起業家)育成
上記の内の電子政府
①電子公共サービス ②電子調達
③汎用事務所環境 ④人材管理情報システム
⑤プロジェクトモニタリングシステム ⑥電子職業安定所
⑦電子法廷 ⑧電子イスラム法廷 ⑨公共サービスポータル
⑩電子土地 ⑪土地登記・管理システム
-
政府手続きの効率化と国民への行政サービスの提
供。2005 年までに全ての国民、機関、外国投資家の ・電子商取引法(1998)
政府サービス情報へのオンラインアクセス、省庁間及び地方政 ・電子商取引規制(1999)
府の DB・ネットワークの共有化。
Electronic Transaction Act (2007)
Electronic Transactipon Law(2004.4)
E-commerce Bill (2000.6)
上記の電子商取引法(1998)において規定
The Digital Signature Act (1997)
-
*上記 E-commerce Bill の中に組み込まれている
・コンピュータ不正使用法(1998 年及び 2004 年改正) コンピュータ犯罪法 (2007 年 7 月施行)
The Computer Crimes Act (1997)
-
*上記 E-commerce Bill の中に組み込まれている
・著作権法(2005 年改正)
知的財産権保護に関連する法律は、
「ミャンマー
著作権法」(1914 年)のみ
Intellectual Property Code (1998)
・標準 ICT 事業環境プログラム(政府調達の一括管理)
(2004)
・技術ロードマップ ITR5(2005)
国会審議待ち:データ保護法、電子送金法、国
・次世代国家ブロードバンド計画(2006)
家情報基盤法
・第二次国家情報セキュリティ基本計画(2008)
・教育分野における IT マスタープランⅢ(2008)
広域ネットワーク規定(2002)
通信法案(策定中)
-
MAMPU
・Copyright Act 1987
・Amendments to the Copyright Act
2003 年)
(1997)(最新の改定は
・The Communications and
Multimedia Act(1998)
・Telemedicine Act (1997)
・Electronic Government Activitey Act (2007)
・Personal Data Protection Bill (2007 年にドラフトが作成さ
れたが、2008 年 6 月現在未発効)
275
電子取引法 (2002 年 4 月施行, 2008 年 2 月改訂)
上記電子取引法の中に組み込まれている
著作権法(1994)
ベトナム
バングラデシュ
インド
ネパール
パキスタン
スリランカ
■「2010 年までの情報通信技術と
2020 年までの方針」
■「National ICT Policy 2009」
■「第 11 次 5 ヵ計画(2007-2011)
」
■「IT Policy 2004」
(案)
2005.1
2005-2010(2020)
2009
2009-2021
2008
2007-2011
(2004 に案決定、内閣の承認待ち) 2000
現在まで内閣の承認待ち
半年ごとに見直し
2002.11
2003-2009
IT Policy 2000 の改定版(案)。ICT の最
大限の活用、また、ICT を利用した優れ
た統治、貧困削減、社会経済発展の目標
を達成することにより、2015 年までに
ネパールが知識基盤型社会に転換する
ことをビジョンとする。
①戦略的焦点、法律、規定の枠組み、②
インフラ、③コンテンツとアプリケーシ
ョン、④民間企業の参入、⑤人材育成の
5 分野において可能な環境を創出するこ
とにより IT Policy 2000 で定められた目
標を達成する計画
持続的な発展の基盤技術として IT
化を推進するにあたり、人材育成、
インフラ整備、ソフトウェア産業育
成、ハードウェア産業の発展、イン
ターネットへのアクセス、IT 普及
啓蒙、IT 活用、法整備などの分野
ごとにアクションプランを短期、長
期的に視点に分けて策定し、半年ご
とに見直す。
2009 年 11 月 IT Policy(2010-2015)
の最終案を Planning Committee に
提出済。
次の 5 つの柱を戦略として挙げている。①実行能力
の向上、②国家情報基盤および実現環境の構築、③
ICT 人的資源開発、④電子政府、電子社会の実現、⑤
ソフトウェアおよび ICT 産業の促進
E-Government Strategy & 5 Year’
Plan
Policy and Procedures for ICT
Government(e-Government Policy)
■「ICT Policy」(2000)
■「e-Sri Lanka」
・2010 年まで情報化の目標:ICT 利活用
における ASEAN の平均水準への到達、
ICT 産業を年成長率 20-25%のトップ産
業に育成、インフラ整備、ASEAN の中
でもハイレベルな IT 人材の育成を実施。
・2010 年以降の 2015 年までの情報化の
目標と 2020 年までの展望
2008 年草案が 2009 年に承認。
全国民が情報にアクセスできるようインフラを整備
し、人材開発、行政、商取引、金融、公共サービス
などに ICT インフラを活用して民主化、経済発展を
推進する。
階層的にビジョン、10 の対象分野、56 の戦略的なテ
ーマ、306 のアクションタイムより推進している。
インド企業による海外で実績の顕著な IT サービ
ス、ノウハウを国内でも積極的に活用し貧困の
撲滅、教育の底上げ、雇用の促進、女性の社会
進出などの実効的な政策を実現する手段にする
ことを主たる目標とし、また一層の情報通信産
業の競争力強化のためハードウェア製造分野の
重点的育成、国内におけるソフトウェア産業の
振興などを目指す。
「Decree No. 64/2007/Nð-CP」
National ICTPolicy に含まれる。
IT 行動計画-Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、IT 振興共通行動計画、
e-Government Master Plan
国家 e-ガバナンス計画、その他
2007.4
2009
1998.7
(内閣の承認待ち)
2005
2009. 12 内閣より承認
2007.4-
2009-2021
1998 以降
2007-2011 予定
2005-2009
2009.1 から 3 年間(随時更新)
MIC
Ministry of Science and ICT
DIT
HLCIT
Electronic Government Directorate
(EGD),
Minist of Information Technology
ICTA
国家機関の活動における情報通信の適用
を推進。なお、2008 年 3 月に「Decision
No. 43/2008/ Qð -TT」が公布、2008 年
1 年間の政府における IT の利活用に関す
る具体的計画が発表された。
Action Plan には、国民への行政サービスの改善を目
的として、行政の電子化、政府のネットワーク化な
どがあげられている。
”基本的サービスを全国民に”をスローガンに
広範に展開。中央政府システム、州政府システ
ム、地域システムと段階に分け着実に実施。通
信インフラ整備、廉価版 PC の普及促進、僻地
でのリテラシ-向上など底上げを図ると同時に
納税システム、入出国管理、住民台帳、年金、
土地登記、職業案内など多数の具体的プロジェ
クト推進、実施。
国民中心のサービス、透明性のあるサー
ビス、ネットワーク化された政府、知識
基盤社会をとおして"Value Networking
Nepal"を実現する。
連邦政府レベルで、行政の効率化、
透明性を達成するために、政府にお
けるインフラの整備、共通アプリケ
ーションの適応、国民への
e-service、人材育成などを実現す
る。
ICT によって行政を効率化させることを目的とし、政
府における ICT の運用管理、調達と契約、共通ポー
タルサイトと各機関のウェブサイト、e メールとイン
ターネットアクセス、ネットワークの接続性、公務
員研修について方針を示している。
・電子商取引発展計画 2006-2010 年
(2005.9 発表)
(Electronic Transaction Law(2006.3 発効))
-
IT ACT2000(2000)
-
-
10 項目の行動目標(2004)に含まれる
Electronic Transaction and Digital
Signature Act-Ordinance 2061(2004)
(施行の承認待ち)
-
-
-
2006.7 発効
2000 年に著作権法改定
・新規発明・知的財産権確保に関する促進
プログラム(2005 年修正)
・情報技術法(2007.1 施行)
・通信とインターネットの発展計画
(-2010)
・オープンソースソフトウェアの活用と
開発に関するマスタプラン(2004-2008)
・ソフトウェア産業発展プログラム
(-2010)
・デジタルコンテンツ産業発展プログラ
ム(-2010)
・電子産業発展プログラム(-2010)他
・Telecommunication Act 2001(2009 年改正法案最終
決定)
・ Information Communication Technology (ICT)
amendement Act 2009.4 承認
・Digital Bangladesh、Vision21 にて 2008 年総選挙
で圧勝したアワミ連盟のマニフェストで「社会の課
題を ICT の活用により解決する」と謳い、2021 年ま
でに全国でインターネットを安価で簡単に活用でき
るようにするなど通信サービスの拡大ビジョン。
・IT 行動計画-I(ソフトウェア対象)(1998)
・IT 行動計画-II (ハードウェア対象)(1998)
・IT 行動計画-III(長期的、より広範囲対象)
(1999)
・Freedom of Information Act 2002(2002)
276
Usage
in
Electronic Transactions
(2007.10.1 発効)
Act
No.19
of
2006
-
Electronic Transactions
(2007.10.1 発効)
Act
No.19
of
2006
同上
Digital Signature Act 協議中
Evidence (Special Provisions) Act No 14 of 1995
(1995 制定)
Computer Crime Act No.24 of 2007(2007.5 制定)
-
Prevention
of
Electronic
Crimes Ordinance 2008
Intellectual Property Act No.36 of 2003(2003.11 制
定)
Copyright (Amendment) Act,
1992
・Information and Communication Technology Act
No. 27 of 2003 (as amended by Act No.33 of 2008)
(2003.9 策 定 、 2008 年 改 定 案 を Inter-Ministerial
Committee で審議中、ICT 政策開発)
・Telecommunicatsions Act (1991 年策定、96 年改定)
・Copyright Act (2002)
・Copyright Rules (2004)
参考資料
参考資料 2 アジア OSS ワークショッププログラム
ワークショッププログラム詳細
プログラム詳細
Time
Session
Speakers
Monday, 8 March
0830 – 0900
Registration
0900 - 0915
Opening Ceremony & Welcome Address
0915 – 1000
Briefing on Workshop Schedule, AOSS History &
CICC & UniSIM
Nara
Lessons Learnt
1000 – 1015
Coffee / Tea Break
1015 – 1100
Collaborative Project on Online Learning of OSS
1115 – 1200
The Linux Foundation:
A driver of communities
Lim Kin Chew
Fukuyasu
and open source innovations
1200 - 1300
1300 – 1330
Lunch
Community Building - lessons from the Fedora
Harish Pillay
Community
1330 – 1515
Software Tools and related developments
Alfredo R. Dimaunahan
•
Groovy on Grails
Aldrich Colin K Co-Cotaoco
•
Drupal administration, module development,
Ruchira Pramod Ariyaratne
and theming
Sawangpong
Muadphet
Andrew Hadinyoto
•
UNIX scripting (Tutorial type)
•
Kernel development & Embedded system
Benedict Jayaprakash
(Tutorial type)
•
Virtualization Tutorials
1515 – 1530
1530 – 1600
1600 – 1700
Coffee / Tea Break
•
Open source Cloud computing Framework
Rosyzie Anna Binti Awg Haji
Learning & Spreading OSS
•
What OSS is available in Brunei.
•
Encouraging The OSS Adaptation for The
Mass, The Challenge and The Opportunity
•
Rajagopalan.M.R
Localization and FOSS adoption
Mohd Apong Daphne Lai Teck
Ching
Kristoko
Dwi
Hartomo
Irya Wisnubhadra
Wira Munggana
Lonh Samdy
Oudam Touch
1700 – 1715
Proposal for Future AOSS Planning
1715 – 1730
Future Management Teams
Yamamoto
Nara
1730
Closing
277
Time
Session
Speakers
Tuesday, 9 March
0900 - 0945
OSS Business in Fujitsu SSL & Business Cases
0945 - 1030
OSS Applications for Cloud Computing in Hitachi
1030 - 1045
1045 – 1215
Chieko HIRAMATSU
Ken Iikura
Coffee / Tea Break
Programming Languages & Security
Kasun C. Hewage
•
Forensics Open source tools
Kasun De Zoysa
•
Nirvikalpa
•
Application of Software Design Patterns.
•
JQuery
•
Advance Python programming, PHP and MySQL
•
Open Standards
Suraj Sapkota
Akash Deep Shakya
Prosunjit Biswas
Arup Ratan Barua
Nay Linn Than
Muniratnam Manivannan
1215 – 1330
Lunch
1330 – 1530
Open Source ERP & CRM (Half-day Tutorial)
Sufyan Kakakhel
OR
Online Learning of OSS (Concurrent Session)
1530 - 1545
1545 - 1730
Redhuan Oon
Lim Kin Chew & team
Coffee / Tea Break
Redhuan Oon
Open Source ERP & CRM (Half-day Tutorial)
Sufyan Kakakhel
OR
Online Learning of OSS (Concurrent Session)
Lim Kin Chew & team
1730
Leave for Hotel
1900 - 2100
Reception Dinner at Santa Grand Hotel
Wednesday, 10 March
0900 - 0945
Business Models & Business Cases using OSS in
Tomohide Yabiku
OCC
0945 - 1030
1030 - 1045
Masatoshi Yoshida
Open Source Application
Coffee / Tea Break
278
Time
1045 – 1130
Session
Speakers
Surahyo Sumarsono
Open Source Business
•
Open Source Business Strategies and
Sufyan Kakakhel
Opportunities
1130 - 1215
•
Business models and Business cases using OSS
•
Open source Commercial Business Model
•
OSS business in Myanmar and Indonesia
AOSS Future Planning (Group work)
1215 – 1330
1330 – 1400
1400 - 1500
1500 - 1515
Ye Yint Win
Lunch
Chittaphone Chansylilath
Country presentations
•
Localization in Laos
Krich Nasingkun
•
OSS penetration in Thailand
Nguyen Duy Kien
•
FOSS for Vietnam (includes idragon)
Bui Thi Lien Huon
Planning for Next Workshop
Coffee / Tea Break
1515 - 1545
Presentation of Workshop Certificates
1545 - 1600
Vote of thanks & Closing remarks by CICC
1600
Closing
279
参考資料
参考資料 3 アジア OSS ワークショップ参加者一覧
ワークショップ参加者一覧
1)
2)
3)
4)
Country
Bangladesh
Bangladesh
Brunei
Brunei
Name
Mr. Arup Ratan Barua
Mr. Prosunjit Biswas
Ms. Daphne Lai Teck Ching
Ms. Rosyzie Anna Binti Awg
Haji Mohd Apong
Mr. Lonh Samdy
Mr. Oudam Touch
5)
6)
Cambodia
Cambodia
7)
India
8)
9)
India
India
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
17)
18)
19)
20)
Indonesia
Indonesia
Indonesia
Indonesia
Japan
Japan
Japan
Japan
Japan
Japan
Laos
Mr. Mudumbai Raman
Rajagopalan
Mr. Muniratnam Manivannan
Mr. Nicholas Benedict
Jayaprakash
Mr. Irya Wisnubhadra
Mr. Kristoko Dwi Hartomo
Mr. Surahyo Sumarsono
Mr. Wira Munggana
Ms. Chieko Hiramatsu
Mr. Kazuhiro Ooki
Mr. Ken Iikura
Mr. Masatoshi Yoshida
Mr. Noriaki Fukuyasu
Mr. Tomohide Yabiku
Ms. Chittaphone Chansylilath
21)
22)
23)
24)
25)
26)
Malaysia
Malaysia
Malaysia
Malaysia
Malaysia
Myanmar
Ms. Kasturi Dewi Varathan
Mr. Redhuan Oon
Mr. Reduan Samad
Mr. Yahaya Bin Abd Rahim
Mr. Tan Kean Siong
Mr. Nay Linn Than
27)
Myanmar
Mr. Ye Yint Win
28)
29)
30)
Nepal
Nepal
Pakistan
31)
32)
Pakistan
Pakistan
Mr. Akash Deep Shakya
Mr. Suraj Sapkota
Mr. Chaudhry Muhammad
Faisal Iqbal
Mr. Muhammad Nadeem
Mr. Sufyan Kakakhel
280
Organization
Cention AB Bangladesh
Cention AB Bangladesh
Universiti Brunei Darussalam
Universiti Brunei Darussalam
Resolvo, Cambodia
National ICT Development Authority
(NiDA)
CDAC, Chennai
National Informatics Centre (NIC)
Rajalakshmi Engineering College
Atma Jaya Yogyakarta University
Satya Wacana Christian University
Inixindo Jogja
Universitas Multimedia Nusantara
Fujitsu SSL
CICC
Hitachi Information Systems, Ltd
Fujitsu
Linux Foundation
OCC Corporation
National Authority for Science and
Technology
University of Malaya
Adempiere
Asia e University
Uni.Teknikal Malaysia Melaka
Uni.Teknikal Malaysia
Myanmar Computer Professionals
Association
Myanmar Computer Professionals
Association
D2HawkeyeServices (P) Ltd.
Crossover Nepal
OSRC, Pakistan Software Export Board
OSRC, Pakistan Software Export Board
OSRC, Pakistan Software Export Board
33)
Philippines
Mr. Aldrich Colin K Co-Cotaoco
34)
35)
36)
37)
38)
39)
40)
41)
42)
43)
44)
45)
46)
47)
48)
Philippines
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Singapore
Sri Lanka
Mr. Alfredo R. Dimaunahan
Mr. Andrew Hadinyoto
Ms. Babu Deepthy
Mr. Harish Pillay
Mr. Lim Kin Chew
Ms. Lum Mei Fen
Mr. Martyn Yap Bao Yu
Mr. Masaaki Yamamoto
Ms. Nami Imanishi
Mr. P. Saravanan
Mr. Sanjeev Gupta
Mr. Tan Guan San
Mr. Venkataraman Narayanan
Mr. Yasuyoshi GANDO
Mr. Ruchira Pramod Ariyaratne
49)
Sri Lanka
Mr. Kasun C. Hewage
50)
Sri Lanka
Mr. Kasun De Zoysa
51)
52)
53)
54)
55)
Thailand
Thailand
Thailand
Vietnam
Vietnam
Mr. Krich Nasingkun
Mr. Sawangpong Muadphet
Ms. Wirun Tharmmaparnphilas
Ms. Bui Thi Lien Huong
Mr. Nguyen Duy Kien
281
OSS community developer and
consultant to FBM eService, Inc.
FBM eService, Inc.
Republic Polytechnic
UNISIM
LINUX user Group, Singapore
UNISIM
CICC, Singapore
UNISIM
CICC, Singapore
Tamasek Poly
UNISIM
LINUX User Group, Singapore
UNISIM
CICC, Singapore
CICC, Singapore
Sampath Bank (OSS community
developer)
University of Colombo School of
Computing
University of Colombo School of
Computing
NECTEC
ITBakery co., LTD
ITBakery co., LTD
Ministry of Science and Technology
Institute of Software and Digital Content
Industry
参考資料
参考資料 4 アジア OSS ワークショップ写真集
ワークショップ写真集
ワークショップ風景(Dr. Chong Chee Leong, SIM University)
282
プレゼンテーション(Mr. Rajagopalan, India)
プレゼンテーション(Mr. Surahyo, Indonesia)
ワークショップ会場の外側(SIM 大学)
283
参考文献
Display Search『Global TV Shipment Data_Q1'07-Q4'09』
(2010/3)
IDC『Worldwide Mobile Phone data 2010』
『Worldwide PC data 2010』
(2010/3)
ROA Group, INC『2008 年版サムスン電子と LG 電子の競争力分析 ~財務・組織分析、
マーケティング戦略を中心に~』
Global Business Research Center『赤門マネジメント・レビュー7 巻 1 号「韓国液晶産業
における製造技術戦略」』
(2008/1)
光文社新書『韓国企業モノづくりの衝撃 ヒュンダイ、サムスン、LG、SK テレコムの現
場から』(2002/10/20)
(財)国際情報化協力センター『アジア情報化レポート 2009 シリーズ(中国、韓国、イ
ンドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インド、アジア
の IT 動向比較、IT 標準化動向)』
(2009)
ダイヤモンド社 『週間ダイヤモンド「特集
(P30-69)」』
(2010/2/27)
ソニー・パナソニック VS サムソン
東レ経営研究所『TBR 産業経済の論点』
(2008/5/27)
日経 BP 社 『日経エレクトロニクス
「ノート PC 首位目前 Acer 社はなぜ強い P83-97)」』
(2009/12/28)
日経 BP 社 『日経ビジネス「韓国 4 強躍進の秘密(P22-37)」
』(2010/1/25)
日本貿易振興機構(ジェトロ)
『日刊通商弘報』(2009-2010)
(株)富士キメラ総研『2010 ワールドワイド エレクトロニクス市場総調査 -注目エレ
クトロニクス製品の生産状況を一望できる完全データブック-』
(2010)
(株)富士キメラ総研『指定製品の市場トレンド調査(2005 年~2008 年)
』(2010/3/11)
(株)富士経済『グローバル家電市場総調査 2009』(2009)
284