23回演奏会 曲目解説 1 マーチ・ユーモレスク ( Carl Fischer) 曲想がブリスク・マーチ・テンポ(きびきびした行進曲の速度で)と指示されたこの曲は、単純な分散和音風の 主題を楽器の組合せを変えながらユーモラスに反復させてゆき、楽器本来が持つリズムに旋律的な要素を加えた音 楽となっています。各奏者が異なった楽器をきびきびとした動作で持ち替えする様も楽しめます。 2 パーカッション・ミュージック ( Music for Percussion) 作曲者コルグラスは 1932 年米国シカゴ生まれで、ダリウス・ミヨーやルーカス・フォスらに音楽を師事し、10 指に及ぶ打楽器作品あるいは打楽器とオーケストラの作品を発表しています。1952 年に作曲されたこの作品は、 当時の作曲界の雰囲気であったシンプルな楽器編成で書かれており、木魚、オモチャの太鼓(ボンゴを使用)、ト ムトム(高音と低音)からなる四重奏です。それぞれ4つずつ音を使うことにより音程感を持たせ、それが躍動感 もありながらおどけた表情も見せています。4曲からなる組曲ですが、2曲目と3曲目で「かもめの水兵さん」ら しき旋律が聞こえるのが愛敬です。 3 3台のマリンバのための《ディヴェルティメント》 (未出版) 作曲者吉岡孝悦は 1955 年東京に生まれ、桐朋学園大学に進み、マリンバを安倍圭子、作曲を別宮貞雄、三善晃、 平吉毅州に学んでいます。マリンバを中心とする演奏活動でも名を馳せていますが、近年作曲家としてもめざまし い活躍をしています。この曲はマーチ、ワルツ、サンバの3曲からなっていますが、それぞれのタイトルからも察 することが出来るように、わかりやすい内容となっています。しかしマーチ風、ワルツ風などのように捉えた方が よく、斬新な和音と相まって「典型的な」曲を予想される向きには肩すかしを食らわすことでしょう。独立させて 演奏することが出来るということです。 4 主題とインヴェンション ( Music for Percussion) 1955 年の作品で、インベンションとは音楽用語で「幻想的な小即興曲」の意味です。これもシンプルな楽器編 成となっていますが、パーカッション・ミュージックと同様、鍵盤楽器は使わないものの、チューニングさせたド ラムやティンパニを使ったりと音程感を増やしています。曲は比較的短めの8曲(主題、6つのインベンション、 フィナーレ)からなり、マレット(ばち)をいろいろ細かく指定したり、ブラシを使ったり、指や爪で音を出させ たりと表現方法をいろいろ変えており、また曲想もきびきびした動きの後にゆったりとした旋律線の豊かな曲を置 くなど、飽きさせない、しかも意表をつく構成となっています。 5 打楽器四重奏曲第1番 (全音楽譜出版社:レンタル) 2002 年の作品で広島の打楽器グループのために書かれました。ちょっとした吹奏楽団なら持っている打楽器を 使って楽しさ一杯の作品になっています。4楽章からなり、それぞれプレスト、アンダンテ、スケルツォ、アレグ ロの速度記号が付けられています。健康的でのびのびしたところがとても魅力的ですが、作曲者ならではの和声感 が新しい感覚をプラスしています。 6 オグン・バダグリス (Helicon Music Corporation) ローズは 1949 年米国バルチモア生まれで、G.クラム,K.フーサなどに師事しています。1979 年の作品であ るこの曲は、作曲者が中米ハイチのジューバ・ダンスに特徴があるドラミング・パターンに触発されて作りました。 タイトルはブードゥー教の神々の中でも血を生け贄に捧げるもっとも恐ろしく暴力的な神の名です。曲は一続きで すが、優雅な振る舞い、Grouillere(セクシュアルで宗教的なダンス)、ブードゥの踊りの3つの場面からなり、曲 の最後に"reler"という声が入りますが、キリスト教の「アーメン」に当たる言葉です。 (記:小林秀樹)
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