第3講 西洋中世の経済思想

第3講 西洋中世の経済思想
ー宗教を背景にした経済思想ー
「公正価格」と「徴利禁止(利子をとることno
禁止)」の思想は中世のキリスト教からきている。
現在でも、イスラム教世界では利子をとることは
許されない。
1
古代ギリシアの思想からの継承
アリストテレスは、必要を充足する経
済活動(オイコノミケー)と金儲けの
術(クレマスティケー)を区別した。
⇒利子をとる金銭貸借=高利貸への反
感⇒徴利禁止
 交換比率(価格)は、何らかの価値に
比例しなければ正義に反すると考えた
。⇒「公正価格」(正義に反しない価
格)の思想

2
金銭的な市場経済への
倫理的・宗教的反感
「金持ちが神の国に入るよりも、らく
だが針の穴を通る方がまだ易しい」
 「金銭欲はすべての悪の根源」
 市場が共同体を掘り崩すことへの反感
 同じものを安く買って高く売りつける
ことによって得られる商業利潤への反
感(商業は盗み・詐欺と同類とみなさ
れた)
 「高利貸し」のような金融業への批判

3
高利貸(usury)とは?
消費者を相手にした金融
 高い利子率
 返せない場合、借り手の財産を差し押
さえるか、身体を拘束する
 貧窮した人に貸し付けて債務奴隷にす
る!
 貧窮した農民に貸し付けて土地を奪う!
 Q:現代のサラ金は高利貸しか?

4
ビジネスの金融との違い
ビジネスは借りたお金を資本として用い
て事業を営み、利潤をあげる。
 返せる見込みがあるから借りる
 返してもらえる見込みがあるから貸す
 事業の利潤>利子

5
極端な宗教の例
原始キリスト教、修道院(財産をすべて
教団に寄進して共同生活に入る):仏教
における出家、オウムの寄進と同じ
 教会(聖)と世俗国家との共存が中世キ
リスト教(カトリック)の回答(シーザ
ーのものはシーザーへ)
 中世の異端キリスト教は宗教を優先し、
私有財産・結婚を否定した!:アルビ派
、カタリ派
(熱狂的だったが滅ぼされた!)

6
7
「公正な価格」?
詐欺・威嚇による取引はだめ
 飢饉のときの穀物価格の高騰は?
 商人の投機は?
 「本来の値段」からの価格つり上げは
だめ?
 それでは、「本来の値段」とは何か?

8
商品の価値の規準
生産者=供給者の側
から
 費用に応じた価格


生産者によって費用
には違いがある
消費者=需要者の側
から
 ニーズ(必要に応じ
た価格)


需要者によってニー
ズの切実さが違う
9
商人の利潤、貸付の利子はどこ
から生まれるのか
商業利潤は本来の価格をつりあげたも
のか?
 利子は搾取か?


近代の経済(資本主義)に対する理解
が必要
10
設問
Q1:現代のサラ金(消費者金融)は
「高利貸し」か?
それに対する規制の理由を考えよ。
 Q2:飢饉に際して、米価をつりあげ
る米商人はしばしば庶民に恨まれて、
うちこわしの対象になった?
米商人はすべて悪玉だろうか?

11