先進診断機器開発室

先進診断機器開発室
(研究活動の概要)
研究所 先進医工学センター 先進診断機器開発室では、診断のための先進的な
機器開発という目的を達成するため、学会やシンポジウムなどを通じて診断法や放
射線機器開発の最新情報を分析して効率的に研究、開発にあたっています。近年の
傾向としては、生体内の細胞、たんぱく、酵素や遺伝子などの分子的な活動を可視
化し、診断、治療、創薬に役立てる試みが注目されています。生化学、薬学、物理
化学などの異分野の技術を集大成するこの方法論は、分子イメージングとして定着
しつつあり、これからの医療にかかせない技術となっていくと考えられています。
先進診断機器開発室ではこの分子イメージングを臨床の場で実現させていくために、
主に MRI と PET を応用して、ハードウエアに限らずソフトウエアや診断の方法論を
含めて具現化すべく、応用機器開発に取り組んでいます。PET はわずかな放射線標
識薬剤をトレースできる高い検出能を持っていますが、原理的な低い空間分解能と
解剖学的情報の欠如が診断における大きな欠点となっています。一方 MRI は高い空
間分解能と軟部組織分解能を持ち、PET の情報と MRI の有機的な融合情報は高い診
断付加価値を持つことが予想されています。さらに MRI においては、O-17、 Xe-127
など MRI 感度を持つ同位体標識薬剤による動態解析、脳白質組織や心筋に代表され
る繊維性細胞のトラクトグラフィ、fMRI における BOLD 効果、微小鉄剤や塩化マン
ガン、Gd 製剤などの薬剤使用など、単独での分子イメージングも展望が開けてきて
います。また小動物による基礎的定量的検討から霊長類による安全性評価、健常人
ボランティアから病態評価にいたるまでを同一の機種、方法で評価を可能にする方
法論を構築中で、トランスレーショナルリサーチへの貢献が期待できます。放射線
医学部をはじめとして、センター内の他部署との連携を構築し、広く他の研究機関、
企業とも共同研究を行っており、臨床的意義の高いものを優先的にテーマとして取
り上げています。
具体的には以下のテーマの研究を行っています。
1)MRI を用いた分子イメージングに関する研究
2)MRI と PET の情報融合に関する研究
3)拡散テンソル画像、fMRI を応用した研究
4)心臓のバイアビリティなど機能画像に関する研究
5)MR における物理パラメータの定量化、および灌流などの生理情報との相関に関
する研究
(2007年の主な研究成果)
○ステレオ赤外線カメラによる PET 画像と MRI 画像を重ね合わせる技術のまとめを
行った。PET 単独では不明であった軟部組織における腫瘍の位置同定を行いえる
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システムを開発した。MRI において新規コイルとシーケンスの開発により 0.3mm
の分解能解剖画像が可能となり、食道部粘膜層と筋層の分離が可能となった。放
射線医学部において開発された 11C 標識 Poly(ADP-ribose) Polymerase (PARP)
拮抗阻害薬を使用し、健常ラット、腫瘍モデルラットにおいて PET-MRI の重ね合
わせが有効であることを示した。カメラと非検体の距離が 2m 以上となる MRI の場
合において、2mm 以上の誤差が生じることを確認した。また高速 EPI 撮像による
MRI 機能画像は解剖画像と比べて空間歪が大きく、PET との重ね合わせにおいても
問題であり、位相情報を使用した補正プログラムを開発した。視覚的に大幅な改
善が観察された。また高磁場 MRI(3T)中において使用可能な半導体検出器(CdTe)
の評価を行い、強磁場内でもγ線の検出が十分に行えることを示した。
○GE 横河メディカルシステムと共同で開発した 8chPhased Array RF Coil を頚部プ
ラークの評価に応用し、健常者において良好な血管壁の描出が可能となった。本
結果を頭蓋内プラークに応用し、動脈解離や Branch Atheromathus Disease が疑
われる患者への臨床応用研究を病院脳内科のグループと共同で開始した。さらに
この初期検討結果を用いて、FDG-PET 等も含めたマルチモダリティのプロジェク
トの開始に貢献した。
○同位体水 H217O の濃度がプロトンの横緩和時間、ローティングフレームにおける縦
緩和時間に大きく影響を与えることに注目し、これを使用した脳灌流計測法の開
発に着手した。ファントムを作成して、磁場強度 3T において緩和時間を定量化し、
特に濃度が低い場合における問題点を洗い出した。
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研究業績(和文)
【原著】
1)佐藤博司, 稲垣正司, 林 拓也, 飯田秀博. diffusion MRI, Cardiac Practice,
18: 201-204, 2007
【総説】
1)佐藤博司: NMR 信号の起源-古典的な記述と量子論的な記述から. 日本磁気共
鳴医学会雑誌, 27: 53-59, 2007.
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