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ISSN 0288-8793
第
テクニカルレポート
Hitachi Chemical Technical Report
号
■ Cuダマシン法による配線形成
ULSIデバイスの高速化を目的に,0.15µm node以降,多
層配線部分へCuダマシン法によるCu配線の導入が本格化
している。Cuダマシン法による配線形成は,層間絶縁膜
に配線形成用溝を加工し,ここにバリア層とCuを堆積し
た後,配線溝以外のCuおよびバリア層をCMPによって除
去することで完成する。
表紙の光学顕微鏡写真は,配線抵抗値の算出に用いられ
るケルビン配線パターンの俯瞰であり,層間絶縁膜にCu
ダマシン法で形成した100µm/Cuパッドと各種幅のCu配線
で構成されている。
テクニカルレポート
第
39
号
2002年7月
巻頭言
5
熱硬化性樹脂への新しい風
越智光一
総
説
7
半導体用液状封止材の技術動向
尾形正次
論
文
ダマシン法におけるCMP処理結果の電気的評価
野村
13
豊・太田文彦・栗野浩之・小柳光正
17
QFN用アセンブリテープ
河合紀安・名児耶友宏
入力用低温接続異方導電 フィルム アニソルム AC-9000
藤縄
21
貢・小林宏治・有福征宏・福嶋直樹
25
高多層用高Tg FR-4材料
石上富美男・酒井広志・中村幸雄
高接着性耐熱材料シロキサン変性ポリアミドイミド
竹内一雅・田中裕子・伊藤俊彦・田中
勝・七海
無電解Ni/Au部分めっき用感光性フィルムH-8050
沢辺
33
賢・赤堀聡彦・青木知明・梶原卓哉
37
ポリマ光導波路設計技術
増田
29
憲
宏・柴田智章・井戸立身・高橋
誠
製品紹介
41
ビルドアップ用層間絶縁シートAS-5000GP
ライセンス供与 ─────────────────────────────────────────────────── 50
多目的高機能DCPD樹脂技術 Metathene<ライセンス供与事業>
3
Contents
Commentary
Mitsukazu Oti
5
Technical Trends in Liquid Encapsulant for Semiconductor Devices
Masatsugu Ogata
7
Electrical Evaluation of the CMP Processing Result in Damascene Method
Yutaka Nomura・Fumihiko Oota・Hiroyuki Kurino・Mitsumasa Koyanagi
13
New Tape for QFN Assembly
Toshiyasu Kawai・Tomohiro Nagoya
17
Low-Temperature-Curable Anisotropic Conductive Film ANISOLM AC-9000 for Input Lead Bonding
Tohru Fujinawa・Kouji Kobayashi・Motohiro Arifuku・Naoki Fukushima
21
High-Tg FR-4 Material for Advanced Multilayer PWB
Fumio Ishigami・Hiroshi Sakai・Yukio Nakamura
25
Siloxane-Modified Polyamideimide with Excellent Adhesion and Heat-Performance
Kazumasa Takeuchi・Yuko Tanaka・Toshihiko Itou・Masaru Tanaka・Ken Nanaumi
29
Photosensitive Film H-8050 for Selective Electroless Ni/Au Plating
Ken Sawabe・Toshihiko Akahori・Tomoaki Aoki・Takuya Kajiwara
33
Polymer Optical Waveguide Design Technology
Hiroshi Masuda・Tomoaki Shibata・Tatemi Ido・Makoto Takahashi
37
Products Guide
41
Licensing Business ──────────────────────────────────────────────── 50
4
巻 頭 言
熱硬化性樹脂への
新しい風
「熱硬化性樹脂」という言葉が,若手の研究者にとって魅力を失って
工学博士,関西大学工学部教授
からかなり経つように思う。学会や研究会への発表でも,熱硬化性樹脂
という分野が見あたらず,どのセッションに申し込んだらよいのか迷う
ことも多い。それだけ時代が変わったのかと思うが,これまで約30年間
熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)ばかり取り扱ってきた中年の研究者とし
ては寂しい限りである。熱硬化性樹脂は, リサイクルが困難で,環境へ
越智光一(おち みつかず)Mitsukazu Oti
最終学歴:関西大学大学院工学研究科修了
学位:工学博士(関西大学)
職歴:
1972年 関西大学工学部助手「エポキシ
樹脂の硬化過程における力学特
性の発現機構に関する研究」
1982年 米国コネチカット州立大学派遣
研究員
1985年 関西大学工学部専任講師「エポ
キシ樹脂硬化物の低温力学およ
び誘電緩和の緩和機構に関する
研究」
1988年 関西大学工学部助教授
1995年 関西大学工学部教授「エポキシ
樹脂をマトリックスとするポリ
マーアロイあるいは遷移金属酸
化物ハイブリッド体の創製と特
性評価に関する研究」「メソゲン
基を骨格とする液晶性エポキシ
樹脂の合成と特性評価に関する
研究」
1997年 ベルギールーバン大学交換教授
専門:高分子材料化学
著書(分担執筆)
:
「接着ハンドブック」,日本接着学会編
(1996)
。
「高分子とセラミックスのハイブリッ
ド材料」
,技術情報協会(1999)。
「ポリマーABCハンドブック」,エヌ・
ティー・エス(2000)。
「接着剤の分子設計,先端接着接合技
術」
(2000)
。
「高分子科学と無機化学のキャッチボ
ール(ポリマーフロンティア21)」,高
分子学会編(2001)
。
の適合性が低い
とか, 分析手段がなく構造すら明らかにできない
と
か, 三次元網目の構造コントロールが難しく,分子設計のおもしろさが
ない
とか, ニーズ主導型でシーズ側からの発信が困難
とか,いろい
ろとそれらしい原因を聞かされることもある。あるいはもっと単純に,
高分子材料としての歴史が長く新鮮さに欠ける
というだけのことであ
るのかもしれない。
しかしその一方で,熱硬化性樹脂の工業的あるいは産業的な重要性は
全く衰えていない。IT産業などの新しい技術分野でも先端機能性材料と
して広く用いられ,むしろ,その重要性はこれまで以上に増加している。
例えば,半導体チップの固形あるいは液状封止材,アンダーフィル,フ
ォトレジスト,積層板やパッケージ材など,IT産業分野で製造あるいは
利用される部分やデバイスのすべては,熱硬化性樹脂のかたまりで構成
されていると言っても過言ではない。言い換えれば,現代の若者の日常
生活に欠かすことのできない携帯電話やICカード,パーソナルコンピュ
ータも,デジタルビデオやカメラも,その中で使われている高分子材料
のほとんどすべてが熱硬化性樹脂であるということになる。熱硬化性樹
脂はこれらの機器や装置の小型・軽量化,高性能・高機能化を通して,
現代に生きるすべての人々の生活の中に深く浸透し,その生活様式を良
くも悪くも改変しつつあるということができる。
熱硬化性樹脂がこのように先端機能性材料としての重要性を増しつつ
あるのは,企業に籍を置く多くの研究者のニーズ主導型の研究に基づく
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
5
ものと言えるであろう。しかしここ数年,熱硬化性樹脂の高機能化・高
性能化の研究に再び新しい風が吹き始めたように感じている。さまざま
な意味での熱硬化性樹脂のネットワーク構造あるいは分子集合体として
の相構造制御による高機能化・高性能化の研究が多くの研究者によって
発表され,実用化に向かって実を結びつつあると思う。熱硬化性樹脂の
分野では,まだ,ニーズ主導型の研究が中心ではあるが,シーズ発信型
の研究も再び活性化しつつあると思う。重合と解重合が任意にコントロ
ールできるポリマーの開発を目指した研究などは熱硬化性樹脂のリサイ
クル化についての解答であろうし,メソゲン基の導入による高熱伝導率
の達成や遷移金属酸化物ネットワークとのハイブリッド化によるガラス
転移の消失や低熱膨張化などはネットワークおよびその集合体の構造制
御による高性能化・高機能化についての新しいシーズといえるであろう。
いずれにせよ,熱硬化性樹脂は三次元ネットワーク構造を持ち,耐熱
性や環境安定性,力学あるいは電気的性質などにほかの材料で代替不可
能な優れた性能を持つ古くて新しい高分子材料である。その工業的需要
はますます増加していくと予想される。ニーズ主導型の研究だけでなく
シーズ発信型の研究を実用化に結びつけてインパクトの高い研究成果を
達成することが熱硬化性樹脂の新しい魅力の開拓に結びつくことは間違
いないであろう。
6
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
621.792.8.053-404:678.061:621.3.049.774-758.3
総 説
半導体用液状封止材の技術動向
Technical Trends in Liquid Encapsulant for
Semiconductor Devices
元当社 半導体材料事業部門
尾形正次
Masatsugu Ogata
半導体の樹脂封止法には,固形のエポキシ樹脂封止材を用いる低圧トランスファ成
形法と液状のエポキシ樹脂封止材を用いるディスペンス,印刷法などがある。最近は,
素子の高集積度化,高性能化,高機能化に加え,複数の素子を単一パッケージに搭載
するSIP(System in Package)やモジュールの普及に伴い実装形態が多様化し,封止
材に対する要求特性が高度化している。液状封止材は小形・薄形化,多ピン化,実装
形態の多様化などへの対応が容易で,少量多品種生産に向くためCOB(Chip on
Board)
,TCP(Tape Carrier Package)などに古くから採用されてきたが,最近は新
規パッケージにも適用範囲が拡大している。当社は,応力解析および各種材料を組み
合わせたモデル評価に基づき,半導体用各種新規実装材料の開発を行っている。本稿
では液状封止材の技術動向について述べる。
Methods of plastic sealing of semiconductor devices include low-pressure transfer
molding using solid epoxy resin encapsulant, and dispensing, or printing, using liquid
epoxy resin encapsulant. To improve integration, increase the number of functions, and
provide advanced performance of elements, various mounting devices have recently
been developed based on system-in-package (SIP) technology that enables storing
multiple elements in a single package. The performance required of the encapsulant is
becoming more and more sophisticated. Liquid encapsulant enables thinner profiles, the
use of a larger pins, and more diverse mounting devices. It is also suitable for smallbatch production of a variety of products, so it has long been used for chip-on-boards
(COB) and tape carrier packages (TCP). Recently, it has been used for new packages as
well. Hitachi Chemical developed several types of mounting-device materials for
semiconductors through the evaluation of various material combinations and stress
distribution analysis. This paper describes some technical trends in liquid encapsulant.
〔1〕 緒
階でパッケージングを行うウェハレベルCSPが開発されてい
言
る3),4)。
半導体は素子を外部環境から保護して各種信頼性を確保し,
ところで,液状封止材による樹脂封止はトランスファ成形
基板実装を容易にするためパッケージが必要である。当初は
法に比べると生産性が劣るが,比較的安価な設備で基板上の
金属,セラミックス,ガラスなどによる気密封止が行われた
任意の場所を部分的に封止したり,種々の実装および封止形
が,1960年代後半に固形の封止材を用いる低圧トランスファ
態に対応できるため,ベアチップが混載されるCOBやTAB
成形によるICの封止法が開発され,これが今日の半導体封止
(Tape Automated Bonding)技術を用いたTCPのコート材,
アンダーフィル材として採用されてきた(図2)5)。最近はパ
技術の主流になっている1)。
半導体はその後高集積度化,高性能化,多機能化,多ピン
ッケージ形態が多様化し,液状封止材の方が対応しやすい場
化の一途をたどった。一方,パッケージは封止材の高性能化
合があり,新規パッケージ分野で液状封止材の需要が増大し
によって小形・薄形化や表面実装形化が行われ2),高密度実装
ている。
による電子機器の小形,高性能化に大きく貢献してきた(図
1)。最近は実装の高密度化に加え,高速化,システム化,
〔2〕 液状封止材の概要
低コスト化などに対応するため各種CSP(Chip Size/Scale
液状封止材には溶剤/無溶剤,熱硬化/熱可塑,一液/二液な
Package)
,複数のチップを一つのパッケージに平面的あるい
ど種々のタイプがある。熱硬化タイプはエポキシ樹脂系が主
は立体的に収納したマルチチップパッケージ,薄形パッケー
流であるが,フェノール樹脂,シリコーン樹脂,ポリイミド
ジを積み重ねた積層パッケージなどが開発されている。また,
樹脂などを用いたものもある。当社は,エポキシ樹脂系の溶
究極の小形・薄形,低コスト対応パッケージとしてウェハ段
剤および無溶剤(いずれも一液)タイプおよび耐熱性の熱可
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
7
総 説
表面実装/小形/薄形/軽量化
DIP
SOJ
SOP
[略号の説明]
TSOP
DIP:Dual In-Line Package
SOJ:Small Out-Line J-Leaded Package
高 速 化
システム化
多ピン化
SOP:Small Out-Line Package
メモリ
QFP
TQFP
TCP
ロジック
マイコン
TSOP:Thin Small Out-Line Package
QFP:Quad Flat Package
図1
TQFP:Thin Quad Flat Package
TCP:Tape Carrier Package
実装から高速化実装,システム化
PGA:Pin Grid Array
PGA
へと移りつつある。
BGA:Ball Grid Array
BGA
CSP
SIP
ベアチップ
Fig. 1 Changes in IC packages
There has been a shift in
mounting technology from the use
of high-density packages to highspeed ones and systematized
mounting.
CSP:Chip Size/Scale Package
SIP:System in Package
高 速 化
システム化
封
止
法
ICパッケージの変遷
パッケージ(実装技術)は高密度
低圧トランスファ成形法
ディスペンス法,印刷法
固形封止材
液(含むペースト)状封止材
使用する封止材
金ワイヤ
チップ
COB(Chip on Board)
封止材
ダイボンディング材
ダイボンディング材
封止材
金ワイヤ
チップ
基板
リードフレーム
(Cu,42 アロイなど)
FCB(Flip Chip Bonding)
チップ
実装および
バンプ
パッケージ
形
封止材
(アンダーフィル材)
態
金ワイヤ
封止材
基板
接着テープ
TCP(Tape Carrier Package)
封止材
バンプ
ポリイミド
テープ
チップ
チップ
リードフレーム
(Cu,42 アロイなど)
DIP,SOJ,SOP,TSOP,QFP,TQFP,BGAなど
用
図2
途
基板
TCP,モジュール,カード,ハイブリッドICなど
最近のCSP,SIP,MCMはその構造,基板材質,混載部品の種類,生産物量などによって,低圧トランスファ成形,ディスペンス,
印刷法が使い分けられている。
半導体の実装およびパッケージ形態と一般的な樹脂封止法
Fig. 2 Encapsulation of semiconductor devices
塑性芳香族ポリアミド樹脂をベース樹脂として用いた溶剤
(一液)タイプを上市している。封止材には素子の各種信頼
性を確保するため,接着性,低熱膨張,低弾性率のほか,耐
湿性,耐熱性などが要求される。最近は実装およびパッケー
フリップチップ実装用アンダーフィル材およびCSP用に分け
て最近の技術動向を述べる。
〔3〕 TCP用液状封止材
ジ形態が多様化し,その最適物性はパッケージ構造や使用す
TCPは時計,電卓,カメラなどに使用するICの実装技術と
る部材の組み合わせによって異なる。そのため,応力解析や
して長い歴史がある 6)。その後,サーマルヘッドや液晶表示
各種材料を組み合わせたモデル評価を行い開発のスピードア
パネルのドライバICの実装技術として発展し,最近は最先端
ップが図られている。また,封止材に対する要求特性は厳し
のメモリ,ロジック,マイコン,ASICなどの薄形,多ピン,
くなる一方であり,新しい発想に基づいた材料開発が重要に
高密度実装対応技術としても利用されている。初期のTCPは
なっている。
無溶剤タイプの無水酸硬化形エポキシ樹脂系液状封止材をデ
ここでは,液状封止材をTCP,COB用オーバーコート材,
8
ィスペンス法で分厚く塗布していたが,最近はパッケージを
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
総 説
薄形化するために溶剤タイプのフェノールノボラック硬化形
〔4〕 COB用オーバーコート材
エポキシ樹脂系封止材で100µm前後の厚さに塗布することが
多い。液晶表示パネル用ドライバICは,パネルの額縁面積を
COBはボードレベルのベアチップ実装技術であるが,最近
小さくするためチップが極端にスリム化され,多ピン化に伴
は金属製リードフレームの代わりにガラス/エポキシ,ポリイ
ってリードの狭ピッチ化が進み,実装時にパッケージは折り
ミド基板などを用いたBGA/CSPなどでも同様な実装が行われ
曲げて装置に組み込まれる。メモリ,ロジック,マイコン,
ている。このようなパッケージではチップの多ピン化,大形
ASIC系デバイスは一般にチップサイズが大きく,通常トラン
化が進み,複数のチップを一括封止するため封止面積が広く
スファ成形による封止が行われているため信頼性の要求レベ
なる傾向がある。また,環境対応の一環として鉛フリーはん
ルが高い。そのため,TCP用液状封止材には成膜性,含浸性,
だが採用されるようになり,リフロー温度が高くなっている。
形状保持性などの成形性,速乾速硬化性,折り曲げ実装性
そのため,COB用オーバーコート材には,封止作業性,形状
(接着性,強靭性)
,信頼性などが厳しく要求される。表1に
保持性,ワイヤ下/ワイヤ間への充填(てん)性,接着性,低
当社の代表的なTCP用液状封止材の一般特性を示す。CEL-C-
反り,高温耐リフロー性や耐湿性,耐熱衝撃性などの信頼性
5000シリーズは,液晶表示パネルやPDP(Plasma Display
が要求される。従来COB用オーバーコート材には無水酸硬化
Panel)のドライバIC用TCPのほか,積層TCP形メモリモジュ
形エポキシ樹脂に球形フィラを高充填した低熱膨張材や多官
ールやロジック,マイコンを搭載したTAB-BGAにも採用され
能エポキシ樹脂を用いた高Tg材が用いられてきたが 5),高温
ている。特に,CEL-C-5020はTCP特有の要求特性である耐折
耐リフロー性が不十分なため,当社は応力解析およびモデル
り曲げ性に優れる材料として好評を得ている。
評価に基づき高接着・低弾性率材を開発した(表2)
。これら
表1 TCP/TAB-BGA用液状封止
材の一般特性 CEL-C-5020シリー
項
単位
CEL-C-5020
CEL-C-5400
CEL-C-5800
特長
−
高PKG強度
高接着/難燃性
速硬化性
−
準材として広く用いられている。
粘度,25℃
Pa・s
3.0
2.5
3.1
E形粘度計
CEL-C-5400は接着性,難燃性,CEL-
揺変指数
−
1.15
1.02
1.14
2rpm/20rpm粘度比
C-5800は硬化性に優れている。
不揮発分
wt%
79
62
85
−
ズは成膜性,折り曲げ実装性が優れ標
Table 1 General properties of liquid
encapsulants for TCP/TAB-BGA
Encapsulants of the CEL-C-5020
Series are widely used as standard
materials because of their excellent
film-forming and bent-mounting
properties. CEL-C-5400 features
excellent adhesion and flame
resistance, and CEL-C-5800 excellent
curing properties.
目
予備加熱
℃/min
60/30
−
本 硬 化
℃/h
120/4 or150/2
125/6 or 150/2
120/0.5
−
ガラス転移温度
℃
104
102
92
線膨張係数(α1)
ppm/℃
19
21
24
硬
曲げ弾性率
GPa
12
化
体積抵抗率
Ω・cm
>1×10
物
接着力(対ポリイミド)
N/m
140
550
140
90°
ピール試験
物
難燃性
UL-94
硬
条
性
化
件
HB相当
V−0
HB相当
1.0
0.1
1.2
pH
−
6.3
4.8
3.8
電気伝導度
µS/cm
40
40
40
目
単位
硬
物
CEL-C-7400
(印刷用)
低弾性/高接着/高耐湿
純水による100℃/
20h抽出液の特性
試
験
法
特長
−
Pa・s
30
100
EまたはB形粘度計
揺変指数
−
0.9
1.3
2.5rpm/10rpm粘度比
−
予備加熱
℃/min
100/60
−
−
本硬化
℃/h
160/2.5
150/4
−
ガラス転移温度
℃
22
28
線膨張係数(α1)
ppm/℃
21
16
5,500
9,270
48
97
化
件
25℃
弾性率
260℃
化
物
CEL-C-7260
(ディスペンス用)
JIS K 6911
粘度,25℃
たEBGA,モジュールなどに適用した
硬
条
>1×10
JIS K 6911
15
−
ミック基板,有機/金属複合基板を用い
Table 2 General properties of liquid
encapsulants for COB
Because of their low elastic modulus
and high adhesion, they feature
excellent re-flow resistance at high
temperatures when used for modules,
EBGAs using ceramic or organic/metal
hybrid substrates, and so on.
>1×10
12
15
ppm
項
場合高温耐リフロー性が優れている。
10
15
TMA
Cl−
抽出液
特 性
表2 COB用液状封止材の一般特
性 低弾性率,高接着性のため,セラ
90-110/15-30
試験法
25℃
730
780
155
160
Ω・cm
> 1×1015
> 1×1015
Cl−
ppm
3.6
3.9
pH
−
4.3
4.2
電気伝導度
µS/cm
49
51
接着力
(対Al箔)
260℃
体積抵抗率
性
抽出液
特 性
MPa
N/m
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
TMA
DMAの貯蔵弾性率
90°
ピール試験
JIS K 6911
純水による121℃/20h
抽出液の特性
9
総 説
表3 ハイマルHIRシリーズの一
般特性 ガラス転移温度が高く,低熱
項
膨張,低弾性率のため熱応力の発生が
目
単位
特長
−
少なく,COG,プリンタ用サーマルヘ
ッドなどの封止に適している。
Table 3
General properties of
encapsulants of the HIMAL HIR Series
They are suitable for thermal heads
of printers and similar devices, because
of their higher glass transition
temperature and lower thermal stress
resulting from their low coefficient of
thermal expansion and low elastic
modulus.
HIR-2500
HIR-3000
熱可塑性
熱硬化性
低反り性
高信頼性
試験法
−
不揮発分
wt%
75
76
−
粘度,25℃
Pa・s
40
28
E形粘度計
ガラス転移温度
℃
190
150
TMA
線膨張係数(α1)
ppm/℃
8
14
TMA
熱分解温度
℃
400
315
TG/DTA
化
弾性率
GPa
3.8
3.0
DMAの貯蔵弾性率
物
誘電率(1kHz)
−
3.8
3.2
JIS K 6911
物
吸水率
wt%
0.7
0.7
PCT(121℃/100%RH)/3h
<0.1
<0.1
<0.1
0.2
1.0
1.0
硬
性
Na+
抽
出
不 純 物
ppm
K+
Cl
−
純水による121℃/24h
抽出液の特性
硬化(乾燥)条件:70℃/1h+120℃/1h+160℃/1h
の材料は260℃リフロー対応EBGA,モジュール用液状封止材
性を確保するため通常チップと基板の隙間に補強用の樹脂
(アンダーフィル材)を充填(てん)する7)。このようなアン
として良好な評価を得ている。
耐熱性の熱可塑性芳香族ポリアミド樹脂をベース樹脂とし
ダーフィル材には狭い隙間に短時間で含浸し,ボイドやフィ
て用いた「ハイマル」HIRシリーズは,表3に示すように熱
ラ沈降がなく,各種基材との接着性が優れ,素子および接合
膨張係数,弾性率が小さく,熱応力の発生が少ないことが特
部の信頼性を十分に確保できることが求められる。フリップ
長である。また,各種基材との密着性,耐湿性,耐熱性など
チップ実装は高密度実装技術として,モジュール,カードな
にも優れている。溶剤タイプのため周辺部材との適合性を確
どのほか,最近はパッケージレベルでも採用されており,使
認する必要があるが,COG(Chip on Glass)
,サーマルヘッ
用する基板はセラミックス,ガラス/エポキシ,ポリイミドフ
ド用COB,パワーICなど熱応力起因の反りや耐熱衝撃性が問
ィルムなどさまざまである。そのため,上記要求特性のうち,
題になる分野でオーバーコート材として採用されている。
特に接合部の耐温度サイクル寿命を確保するためのアンダー
フィル材物性の最適化が重要である。液晶表示パネルやPDP
〔5〕 フリップチップ実装用アンダーフィル材
用ドライバICの実装方式として最近需要が増えているCOF
フリップチップ実装した素子は,素子および接合部の信頼
400
(Chip on Film)について解析した結果を図3に示す。基板表
CTE=20ppm/℃
CTE=50ppm/℃
CTE=70ppm/℃
600
CTE=20ppm/℃
CTE=50ppm/℃
CTE=70ppm/℃
アンダーフィル材なし
相当応力(MPa)
相当応力(MPa)
350
300
現実の材料物性
250
アンダーフィル材なし
200
150
100
★
★
1,000
現実の材料物性
400
★
★
★
10,000
弾性率(MPa)
100,000
(a)基板表面が全面ポリイミド樹脂と仮定した場合
図3
500
★
300
100
1,000
10,000
弾性率(MPa)
100,000
(b)基板表面が全面銅箔と仮定した場合
COFのバンプ部発生応力に及ぼすアンダーフィル材物性の影響(シミュレーション結果)
基板表面に占めるポリイミド樹脂の比率が大きい
場合,バンプ部に発生する応力に及ぼすアンダーフィル材物性の影響は小さい。銅箔の比率が大きい場合はアンダーフィル材の熱膨張係数が小さい(弾性率が高い)
ほどバンプ部に発生する応力は小さい。
Fig. 3 Effects of under-filling materials on mechanical stress generated at the bump of COF (simulation results)
This effect is minimal when the ratio of polyimide resin area to the total substrate surface area is large. When the ratio of copper foil area to the total area is large, a
smaller coefficient of thermal expansion (and higher modulus) of the under-filling material results in lower stress.
10
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
総 説
表4
特性
アンダーフィル材の一般
項
CEL-C-3807はフレキシブル基
板用のノンフィラタイプで含浸性が良
好。CEL-C-3720および3800はリジッ
目
単位
CEL-C-3807
用途
−
COF
特長
−
含浸性
CEL-C-3720
COB,FC-BGA,CSP,SIPなど
高接着/高耐湿
ド基板用のフィラ配合タイプ。CELC-3720はフィラ粒径が細かいため狭
(µm)
なし
粘度,25℃
Pa・s
0.6
6
0.5
が優れている。
揺変指数
Table 4 General properties of underfilling materials
CEL-C-3807 is a non-filler type of
the material for flexible substrates and
it has excellent permeability; CEL-C3720 and 3800 contain filler and are
used for rigid substrates. CEL-C-3720
has excellent moisture-resistant
adhesion and good permeability into
narrow gaps resulting from its small
filler diameter.
硬
条
硬
化
物
物
性
化
件
高Tg
あり
フィラ(平均/最大粒径)
い隙間への含浸性が良く,耐湿接着性
CEL-C-3800
(1/10以下) (2.3/24以下)
試験法
−
−
−
12
E形粘度計
1.0
2rpm/20 rpm粘度比
−
1.1
予備加熱
℃/min
130/5-10
70-90/10-30
−
本硬化
℃/h
150/2
150/3
−
ガラス転移温度
℃
118
120
150
線膨張係数(α1)
ppm/℃
82
28
27
曲げ弾性率
GPa
3.4
11
13
JIS K 6911
TMA
接着力(対Al箔)
N/m
175
750
150
90°ピール試験
体積抵抗率
Ω・cm
> 1.0×1015
> 1.0×1015
> 1.0×1015
JIS K 6911
Cl−
ppm
3.8
1.2
1.0
pH
−
4.5
3.6
3.4
電気伝導度
µS/cm
50
98
65
抽出液
特 性
純水による121℃/
20h抽出液の特性
面に占めるポリイミド樹脂の比率が大きい場合,バンプ部に
発生する応力に対するアンダーフィル材物性の影響は小さ
い。全面が銅箔(はく)の場合は,アンダーフィル材の熱膨
S形リード
る応力は小さい。当社はこのような応力解析およびモデルパ
ッケージによる含浸性,ボイド,フィラ沈降,信頼性などの
封止材
チップ
張係数が影響し,熱膨張係数が小さいほどバンプ部に発生す
〔周辺パッド形〕
インターポーザ
接着フィルム
はんだボール
評価結果をもとにアンダーフィル材の開発を行っており,表
4に示す各種エポキシ樹脂系のアンダーフィル材を上市して
いる。
〔センターパッド形〕
〔6〕 CSP用液状封止材
図4
近年盛んに開発が行われているCSPのチップ/インターポー
µ -BGAの断面構造
接着フィルムおよび封止材に低弾性率材料を用
い,チップと実装基板の熱膨張のミスマッチによって発生する熱応力を緩和す
ザ間の電気的接続にはWB(Wire Bonding)
,ILB(Inner Lead
る。
Bonding)
,FCB(Flip Chip Bonding)などが用いられている。
Fig. 4 Cross-sectional structure of µ-BGA
Using lower-elastic-modulus materials for the adhesive film and encapsulant
minimizes thermal stress generated from the mismatch in thermal expansion
between the chip and the mounting substrate.
基本構造は従来のCOB,TCPと類似しており,封止材も同じ
ような材料を使う場合が多い。ここでは,新規封止材の開発
汎用エポキシ樹脂
(ゴム変性)
封止材の弾性率(MPa)
10,000
1,000
海島構造樹脂
(エポキシ樹脂過剰)
エポキシ樹脂
可とう性エポキシ樹脂
+
汎用エポキシ樹脂
(相溶系)
100
図5
ゴム
エポキシ樹脂の低弾性率化手法
エ
ポキシ樹脂の変性方法によって樹脂硬化物およ
び封止材の弾性率を広範囲で制御することがで
きる。
10
Fig. 5 Lowering the elastic modulus of epoxy
resin
The elastic modulus of a cured resin and
encapsulant can be controlled in a wide range by
modification.
逆海島構造樹脂
(ゴム成分過剰)
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
11
総 説
表5
特性
低弾性率液状封止材の一般
項
逆海島構造樹脂を用いることに
目
単位
より弾性率を大幅に低減した。低粘度
CEL-C-4100
CEL-C-4105
(ディスペンス用)
(印刷用)
でフィラを充填することができるため,
特長
−
線膨張係数はシリコーンゴムの1/2以下
粘度,25℃
Pa・s
22
揺変指数
−
1.1
である。
Table 5 General properties of liquid
encapsulants with a low elastic
modulus
The elastic modulus has been
reduced substantially due to the use of
resin with a reversed sea-island
structure. Because large quantities of
filler can be added, the coefficient of
thermal expansion is less than one-half
that of silicone rubber.
予備加熱
硬 化
条 件
本硬化
超低弾性率
物
℃/h
B形粘度計
1.5
5rpm/20rpm粘度比
−
150/3
ガラス転移温度
℃
平均線膨張係数
ppm/℃
-68/64
弾性率
−
-50/75
130〜160
90〜110
(−55〜175℃)
(−55〜175℃)
MPa
10
90
接着力(対Al箔)
N/m
500
625
90°ピール試験
吸湿率
wt%
0.5
0.4
85℃/85%RH/168h
4.3
4.0
物
性
−
193
120/1
硬
化
試験法
Cl−
抽出液
Na+
特 性
pH
電気伝導度
ppm
TMA
DMAの貯蔵弾性率
1.5
1.2
純水による121℃/
−
5.7
5.6
20h抽出液の特性
µS/cm
134
130
が必要になったCSPのうちから,µ-BGA(米国TESSERA社商
反りである。反りを小さくするためには低熱膨張化および低
標)8)およびウェハレベルCSP4)を取り上げ,液状封止材の開
硬化収縮率化または低弾性率化が必要である。現在,フィラ
発動向を述べる。
高充填による低熱膨張化とゴム変性による低弾性率化を組み
6.1 µ-BGA用液状封止材
合わせた低応力エポキシ樹脂系封止材が一部で採用されてい
µ-BGA(図4)は,チップとインターポーザの接着および
インナーリードの封止に低弾性率のシリコーン系材料を用
い,それによってチップと実装基板の熱膨張係数のミスマッ
チによって発生する応力を緩和し,接合部の温度サイクル寿
命を高めようとする高速デバイス対応のパッケージである。
このµ-BGAは,チップが大形化し,パッドが周辺配置から
るが,ウェハの大口径化に対応するためさらに反りを小さく
する材料の開発が進められている。
〔7〕 結
言
携帯電話,PDA,デジカメなどの電子情報機器分野では,
素子の性能を最大限に生かし,かつ,高集積化,システム化,
センター配置になるとリードの温度サイクル寿命に問題が生
高密度実装化に対応するため新規パッケージや実装方式の開
じる。応力解析の結果,シリコーン系封止材の熱膨張係数が
発が重要になっている。それに伴って実装技術を支える高分
大きい(270ppm/℃)ことが原因であり,接着剤および封止
子材料に対する要求がますます高度化しており,当社はマテ
材の最適物性は弾性率が1GPa以下,熱膨張係数が200ppm/℃
リアルシステムソリューション(Material System Solution)
以下と推定された 9)。従来このような低弾性率エポキシ樹脂
の提案によって今後とも半導体産業の発展に貢献していく所
系封止材は存在しなかった。そこで,当社は逆海島構造,つ
存である。
まりゴム成分が形成する海層にエポキシ樹脂を島状に分散さ
せた構造(図5)の樹脂およびこれをベース樹脂として用い
た低弾性率液状封止材を開発した(表5)
。開発材はシリコ
参考文献
ーン系封止材と比べると低温領域の弾性率は若干大きいが,
1)N. Kinjo et al:Advances in Polymer Science, Vol.88, p.1, Springer-
通常のエポキシ樹脂系封止材に比べると極めて小さく,熱膨
張係数はシリコーン系封止材の1/2以下である。同時に開発し
た非シリコーン系接着剤と組合せてµ-BGAの耐温度サイクル
性を評価した結果,シリコーン系材料を組み合わせた場合に
比べて温度サイクル寿命が大幅に改善され,耐はんだリフロ
ー性や耐湿信頼性も良好なことを確認している。
6.2 ウェハレベルCSP
Verlag(1989)
2)
(株)日立製作所半導体事業部編,表面実装型LSIパッケージの実
装技術とその信頼性向上,応用技術出版(1988)
3)春日:CSP/BGA技術,日刊工業新聞社(1998)
4)日経マイクロデバイス,p.44(1998年8月号)
,同,p.40(1999年
2月号)
,など
5)ハイブリッドマイクロエレクトロニクス協会編,エレクトロニク
ス実装技術基礎講座,工業調査会(1994)
ウェハレベルCSPは樹脂封止形,再配線形,インターポー
ザ形,スプリングリード形など数十種類が発表されている4)。
樹脂封止形およびスプリングリード形の一部はウェハ全面が
6)TAB-IC(TCP)マーケット現状とアプリケーション将来展望 ’93,
(株)ネットブレイン(1993)
7)半導体封止用材料の開発と信頼性技術,技術情報協会(2001)
樹脂封止され,インターポーザ形はボンデイングワイヤ周辺
8)Dr. Di Stefano et al:Electro. Prod., 2, p.327(1996)
が樹脂封止される。封止方法および使用する封止材は各社各
9)富山,外:ネットワークポリマー,21(3)
,p.136(2000)
様であるが,液状封止材による封止も検討されている。ウェ
ハレベルCSP用封止材の最大の課題はウェハを封止した際の
12
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
[62-408.62.001.53:621.37.33]:[621.315.592-416:739.52]:621.794.44
ダマシン法におけるCMP処理結果の電気的評価
Electrical Evaluation of the CMP Processing Result in Damascene Method
野村 豊* Yutaka Nomura
太田文彦* Fumihiko Oota
栗野浩之** Hiroyuki Kurino
小柳光正*** Mitsumasa Koyanagi
ULSIデバイスの高速化を目的に,多層配線部へCMP(Chemical Mechanical
Polishing)技術を用いたCu配線の導入が進められており,このプロセス加工性の評
価に適する新しい方法を調べた。
Cuダマシン法で形成したケルビンパターンの配線抵抗値から算出した配線高さは,
SEM法で得た結果とほぼ同様の値を示した。また,ケルビンパターンに近接して幅広
配線を配置し意図的にエロージョンを発生させた結果,正常研磨に比べて配線間の絶
縁耐圧が低下し,リーク電流が増大した。以上から本評価法によれば,CMP処理後の
平坦性の定量と配線間の絶縁特性の評価ができることがわかった。
Multi-level Cu wiring technology using CMP (Chemical Mechanical Polishing) is
indispensable in developing high-speed ULSI devices. We examined a new method for
evaluating this process.
It was proved that wiring height calculated from the wiring resistance of Kelvin
pattern formed using Cu-Damascene and obtained from the cross-sectional SEM
observation are identical. A wide copper pattern was placed next to Kelvin circuit to
induce erosion intentionally. As a result, compared with a normally polished pattern, an
intentionally eroded pattern showed clear difference in the dielectric breakdown voltage
and the leakage current between wirings. It was demonstrated that this method is
applicable to evaluate the flatness and the insulating property of Cu-Damascene
structure after CMP.
〔1〕 緒
下させる。また,ウェハの大口径化によって,局所的な平坦
言
性に加え,ウェハ面内でのばらつきが問題となっている。
これまでULSIデバイスの高速化および高集積化は加工寸法
従来,CMPの研磨特性評価は,段差計で研磨面を走査して
の微細化により進展してきた。しかし近年,配線の微細化に
得た相対的な高低差から平坦性(ディッシングやエロージョ
よる多層配線部分での信号遅延が高速化の障害となりつつあ
ン)を判断してきた。特別な装置も必要なく簡便な評価が可
1)
る 。信号遅延は配線抵抗値と配線間容量に依存することか
能であり,実際の形状を反映した直接的な結果が得られる。
ら,より低抵抗な配線材料と低誘電率な層間絶縁膜材料の導
反面,ほかの研磨面との相対的な値であるために,ディッシ
入が進められている。配線材料では従来のAlに代わり,より
ング量やエロージョン量の定量評価は困難である。また配線
低抵抗なCuの導入が本格化しており,配線プロセスも従来の
Alギャップフィル法からCuダマシン法へと大きな変革が起き
ている 2)。一方,層間絶縁膜材料は従来のCVD-SiO 2膜から,
より誘電率の低い有機,無機材料が盛んに提案,検討されて
ディッシング
エロージョン
いるものの,Cuダマシン法との組み合わせには課題が多く,
期待される割には実用化が遅れているのが現状である3)。
Cuダマシン法はあらかじめ層間絶縁膜に配線形成用溝を加
工し,ここにバリア層(主にTa系金属が用いられる)とCuを
堆積した後,配線溝以外のCuおよびバリア層をCMPによって
除去する方法である 4)。しかしながら,用いる研磨剤や研磨
装置,また組み合わせる層間絶縁膜の膜特性などによって平
坦性の低下を生じる。ここで,平坦性の低下にはディッシン
グと呼ばれる主に幅広配線パターンで配線断面が皿状にくぼ
む現象と,エロージョンと呼ばれる主に微細配線部でCuと共
に絶縁膜も削れてしまう現象がある(図1)
。平坦性の低下
はCu配線の抵抗値の増加につながり,デバイスの信頼性を低
*
当社 総合研究所
**
東北大学大学院工学研究科助教授 理学博士
***
図1 CMP処理後に見られる代表的な平坦性低下の模式図;ディッシ
ングとエロージョン 共にデバイスの信頼性低下につながる。
Fig. 1 Schematic diagram of typical defects in flatness after CMP; Dishing and
erosion
These defects reduce LSI device reliability.
東北大学大学院工学研究科教授 工学博士
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
13
断面のSEM観察(SEM法)から平坦性を評価する手法はディ
HS-C430スラリ,バリアメタルであるTaの研磨にはHS-T605
ッシング量やエロージョン量の定量評価が可能であるが,
スラリ(共に日立化成製)を用いた6)。CVD-SiO 2膜でキャッ
FIBによって観察断面を露出させる必要があり,ウェハ面内
プ層を形成した。全12工程をへて試作した評価サンプルの断
のばらつきを評価するには向かない。
面SEM写真を図3に示す。Cu配線には埋め込み不良によるボ
このため,CMP処理による平坦性の低下を定量化でき,か
イドの発生はなく形状は良好な矩形を有しているのがわか
つウェハ面内の平坦性を統計的に処理できる評価法が求めら
る。また,プロセスに起因するSiLK絶縁膜の誘電特性劣化は
れている。そこで,これらの要求を満たす新規なCMP特性評
認められなかった。
価法を提案した。本評価法は配線抵抗値から配線高さが算出
できることを利用したものであり,ディッシング量およびエ
〔3〕 配線抵抗値を用いた平坦性定量評価法の検討
ロージョン量が定量できる。加えて隣接する配線間の絶縁特
評価に用いた配線パターンの模式図を図4に示す。これは
性を調べられるように対処した。また,非破壊であるためウ
ケルビンパターンと呼ばれるもので,測定プローブなどの外
ェハ面内の統計的処理への応用も期待できる。
部抵抗成分を除外でき,配線長Lに対応する配線抵抗値を測
以下,試作したケルビンパターンから算出したディッシン
定することができる。すなわち配線幅と配線金属の比抵抗が
グ量を,SEM法との比較で検証した結果を報告する。また,
既知であれば,式(1)から配線長Lに対応する配線部分の配
配線間のリーク電流からエロージョンサンプルの絶縁特性を
線高さを算出することが可能である。
議論した結果を報告する。
H=(ρ×L)/(W×R)………………………………
(1)
H:配線高さ
〔2〕 評価サンプルの試作
W:配線幅
低誘電率絶縁膜材料として熱架橋型有機芳香族ポリマ
SiLK*樹脂(比誘電率=2.6,*The Dow Chemical Company商
ρ:配線金属の比抵抗
L:配線長
R:配線抵抗値
図5に単配線パターンの配線幅と配線高さの関係を示す。
(●)はケルビン配線から得た配線抵抗値で算出した配線高
標)を層間膜に用いて研磨特性評価用サンプルを試作した5)。
試作プロセスは最小加工寸法0.35µmのCuシングルダマシン法
で行った。工程を図2に示す。なお,試作には2cm×2cmの
角ウェハを用いた。
スピンコート法でSiLK絶縁膜を塗布し硬化後,ハードマス
クとなるCVD-SiO2膜を積層した。膜厚はそれぞれ約400nmと
100nmであった。絶縁膜をドライエッチングして配線溝を形
成し,バリア層のTaと配線金属であるCuを埋め込んだ。CMP
で余剰のCuとTaを除去し,配線を形成した。Cuの研磨には
Cu
CVD-SiO2膜
SiLK絶縁膜
図3 試作した評価用サンプルの断面SEM写真
ボイドのない良好なCu
配線が形成されているのがわかる。
積層
配線Cu埋め込み
Fig. 3 Cross-sectional SEM image of the sample fabricated for evaluation of
Cu wiring is successfully formed without any voids.
配線幅(W)
CVD-SiO2膜
SiLK絶縁膜
配線溝形成
CMP処理
Ta
CVD-SiO2膜
配線長
(L)
配線高さ
(H)
測定用パッド
CVD-SiO2膜
バリア層(Ta)形成
キャップ層成膜
俯瞰図
断面図
を埋め込み,余剰の配線金属をCMPで除去し,配線を形成する。
図4 平坦性評価用テストパターンおよび各種配線パラメータと配
線抵抗値の関係 配線抵抗値から配線高さが算出できる。
Fig. 2 Process flow of Cu single Damascene
After the formation of trench for wiring, wiring metal is embedded. Next, the
excess wiring metal is removed and wiring is formed.
Fig. 4 Test pattern for evaluating flatness and relationship between wiring
parameters and wiring resistance
Wiring height can be derived from the wiring resistance.
図2
14
Cuシングルダマシン法の工程図
配線溝を形成した後,配線金属
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
さを,
(□)は断面SEM観察で得た配線高さを示す。SEM法
では配線高さが配線幅の増加とともに減少していることがわ
かった。ここで,配線高さの減少はディッシングによること
〔4〕 配線間絶縁特性評価法の検討
配線抵抗値を利用したエロージョンの定量化に加え,配線
を確認した。次に配線抵抗値から算出した配線高さが配線幅
間の絶縁特性を調べた。評価に用いた配線パターンを図7に
の増加に伴って減少することがわかった。配線抵抗値から算
示す。
出した配線高さとSEM法で得た配線高さがほぼ対応したこと
0.5µm幅のケルビン配線(A)の両側に幅広配線(B)を
から,本評価法によればSEM法でも得られるディッシング量
0.35µmの配線間隔で配置して,意図的にエロージョンが発生
の定量が非破壊的にできるといえる。
するように工夫した。配線抵抗値から算出したケルビン配線
次にケルビンパターンに任意のダミー配線を配置して,配
(A)の配線高さは初期積層膜厚から約40%減少していること
線本数依存性,配線密度依存性の評価を行った。例としてラ
がわかった。すなわちエロージョンが発生していることがわ
イン・アンド・スペース(L/S)=4.5/0.5µm配線パターンの,
かった。また,ハードマスクに用いているCVD-SiO2膜の膜厚
配線本数依存性評価結果を図6に示す。
は積層膜全体の20%であり,配線間(A)−(B)の研磨面は
ダミー配線の本数増加とともに配線高さが減少することが
わかった。これは単配線では見られなかったエロージョンが
SiLK絶縁膜が露出していることを示している。
図8に配線(A)−(B)間の電界強度に対するリーク電流
配線本数の増加によって生じたことを示している。
ライン幅:0.5µm
ケルビン配線(A)
0.49
配線高さ(µm)
0.47
幅広配線(B)
0.45
0.43
0.41
0.39
0.35
スペース幅:0.35µm
:配線抵抗値から算出
:断面SEM観察
0.37
0
20
40
60
配線幅(µm)
図5
高さ
図7
エロージョン評価用テストパターン
ケルビン配線(A)に近接
して幅広配線(B)を配置することでケルビン回路に意図的にエロージョンを
発生させる。
配線抵抗値から求めた配線高さと,断面SEM観察で得た配線
配線高さがほぼ一致していることがわかる。
Fig. 7 Test pattern for evaluating erosion
Wide copper pattern (B) is placed next to Kelvin circuit to induce erosion
intentionally.
Fig. 5 Wiring height calculated from wiring resistance and obtained from
cross-sectional SEM observation
The heights are identical.
1.E+04
エロージョンパターン
リーク電流(A/cm2)
1.E+02
0.49
配線高さ(µm)
0.47
0.45
0.43
0.41
1.E−02
絶縁破壊
1.E−04
正常研磨パターン
1.E−06
1.E−08
0.39
1.E−10
ダミー配線
0.37
0.35
1.E+00
0
10
20
0
2
4
電界強度(MV/cm)
6
30
配線本数
図8
正常研磨パターンとエロージョンパターンの絶縁特性
エロー
ジョンパターンは正常研磨パターンに比べて絶縁耐圧が約1/4,リーク電流が
図6
配線本数と配線高さ
ケルビン配線に隣接した配線の本数が増加す
るとともに配線高さが減少している。
Fig. 6 Wiring height vs. the number of wirings
Wiring height decreases with increasing in the number of Cu wirings.
約 8 桁(1MV/cm時)増大している。
Fig. 8 Insulating properties of normal polishing pattern and eroded pattern
Compared with a normal polishing pattern, dielectric breakdown voltage
between wirings lowered to 1/4 and the leakage current between them
increased by about 8 orders of magnitude in an eroded pattern.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
15
を示す。参照として正常研磨パターンの電界強度に対するリ
ーク電流を示す。なお正常研磨サンプルは幅広配線の代わり
に等幅の配線を配置したパターンを用いた。
〔5〕 結
言
配線抵抗値から配線高さが算出できることに着目し,新規
正常研磨パターンは高い絶縁耐圧と低いリーク電流値,す
なCMP処理結果の評価法を提案した。各種のケルビンパター
なわち良好な絶縁特性を示した。対して意図的にエロージョ
ンを用いて平坦性と配線間の絶縁信頼性を調べ,以下の点が
ンを発生させたパターンは,正常研磨パターンと比較して絶
明らかになった。
縁耐圧が約
1
4
に減少し,1MV/cm時のリーク電流が約 8 桁増
1)配線抵抗値から求めた配線高さはSEM法とほぼ対応がと
大している。すなわち絶縁特性が低下したことがわかる。ま
れ,平坦性の低下(ディッシング,エロージョン)を非
た,いったん絶縁破壊をおこした後,特異的なリーク電流値
の振れを示した。
破壊的に定量できる。
2)ケルビンパターンの両側に幅広配線を近接して配置し意
エロージョンを生じた配線間の研磨面の例を図9に示す。
写真中央部はCu配線に囲まれた絶縁層部分である。絶縁層部
図的にエロージョンを発生させた結果,正常研磨と比べ
て絶縁耐圧の低下と,リーク電流の増加が生じた。配線
分のうち,写真中央上部の灰色の領域はハードマスクである
間のリーク電流から,CMP処理後の配線間の絶縁特性が
CVD-SiO2膜が残存している領域であり,下部に進むにしたが
評価できる。
って,CVD-SiO2膜がエロージョンで削られSiLK絶縁膜が露出
今後,同一評価で平坦性の低下と配線間の絶縁特性が評価
している。SiLK絶縁膜が露出している個所では,数nmサイ
できる利便性から,CMP処理結果の評価へ適用が期待される。
ズのフレークが多数認められる。このフレークは配線金属で
また電気特性を利用する本評価法の特長から,非破壊的に同
あるCu,もしくはバリア層であるTaと考える。フレークはハ
時多数の結果を把握できる点が有用である。
ードマスクであるCVD-SiO2膜が残存している領域では見られ
終わりに,本研究は東北大学ベンチャー・ビジネスラボラ
ず,SiLK絶縁膜上にのみ認められる。エロージョンサンプル
トリー(VBL)の施設を利用して行われたものであり,VBL
の絶縁特性の低下と,振幅を伴う特異なリーク電流値の振れ
スタッフおよび,東北大学小柳研究室の職員,学生ならびに
が生じた機構として,このフレークがリークパスとして働い
関係者の方々に深く感謝いたします。
たと考える。すなわち特異なリーク電流値の振れは,点在す
るフレークの間隔が近い場所に電界が集中してリーク電流が
増大し,その経路は焼き切れていったんは配線間の絶縁が回
参考文献
復した結果と考えた。
1)M. T. Bohr:Proc. 1995 IEEE Int. Electron. Device Mtg., 241-242
以上の結果より,ケルビンパターンによる配線抵抗値から
(1995)
求めたCMP処理後の配線高さは,断面SEM観察の結果とほぼ
2)D. Edlstein et al.:Tech Dig. IEDM, 773(1997)
一致しCuダマシンの平坦性評価法として適用できることがわ
3)Q. Han et al.:MICRO, 10, 51-63(1999)
かった。また,ケルビンパターンに配線を近接配置すること
によって意図的にエロージョンを発生させたCuダマシン配線
構造ではその絶縁特性に不具合があることを,その配線間の
4)粟屋:月刊Semiconductor World,2,91(1998)
5)P.H. Townsend et al.:Mater. Res. Soc. Symp. Proc., 476, 9(1997)
6)上方,外:日立化成テクニカルレポート.37,43-46(2001)
リーク電流値から評価できることがわかった。
ハードマスク
(CVD-SiO2膜)
Cu配線
Cu配線
フレーク
SiLK絶縁膜
図9 エロージョンサンプルの研磨表面のSEM写真
CVD-SiO2膜がエ
ロージョンで削られSiLK絶縁膜が露出している。SiLK絶縁膜上には,数nmサ
イズのフレークが多数認められる。
Fig. 9 SEM image of an eroded sample
As a removal of CVD-SiO2 film by erosion, SiLK insulation film is exposed.
Many flakes with several nm in size are observed on the SiLK insulation film.
16
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
678.073-418.5:621.792.8.053:621.3.049.974-758.3
QFN用アセンブリテープ
New Tape for QFN Assembly
河合紀安*
Toshiyasu Kawai
名児耶友宏*
Tomohiro Nagoya
半導体パッケージの小形化に伴い,リードフレームを用いたCSP,すなわちQFN
(Quad Flat Non-Leaded Package)の需要が高まっている。QFNの組立においては複
数のチップを一括封止するMAP(Molded Array Packaging)方式によって生産性を飛
躍的に高めることができる。その組立工程に欠かせないキーマテリアルにQFN用アセ
ンブリテープがある。これはリードフレームの裏面に貼って,封止時の封止材の漏れ
を防いだ後に,封止材とリードフレームから引きはがすテープであるが,当社は特殊
な耐熱熱可塑(そ)性接着剤を用いて,新規なQFN用アセンブリテープ
ズ
RTシリー
を開発した。RTシリーズはQFNの組立工程において,優れたワイヤボンド性,
封止時の漏れ防止性,テープ剥(はく)離時の低汚染性を示した。RTシリーズは従
来にない新しいタイプの再剥離(接着後に引きはがす)テープであり,高耐熱性,テ
ープ剥離時の低汚染性などの特長を生かして,さらに新しい用途を見いだしていける
ものと期待している。
The demand for quad flat non-leaded package (QFN), which is chip scale package
(CSP) with lead frames, is increasing now with the miniaturization of IC packages. The
productivity of QFN assembly processes will be enhanced by using molded array
packaging (MAP) technology, which enables molding many chips integrally at the same
time. The tape used in QFN assembly is a key material to back lead frames and to
eliminate flash and burrs in the transfer-molding process. After the process the tape is
removed from lead frames and encapsulants. Using a specially designed heat resistant
thermoplastic adhesive, we developed a new tape for QFN assembly, the RT-Series tape.
The RT Series tape has an excellent wire-bonding capability, no flash or burrs in the
molding process, and leaves no residue after its removal. This new type of removable
tape with excellent heat resistance and no residue after removal can be used in a variety
of new applications.
〔1〕 緒
言
近年,携帯電子機器の需要急増に伴い,半導体パッケージ
ワイヤ
チップ
封止材
の小形化が急速に進行している。特に最近では,小形化と低
コスト化の両方の観点から,リードフレームを用いたCSP,
すなわちQFNの需要が伸びている1)〜3)。
図1にQFNの構造を示すが,QFNはQFPのアウターリード
リードフレーム
を除いた形状で,下部に露出したリードフレームがそのまま
実装端子として用いられる。アウターリードがないために
断面図
QFPに比べて実装面積を大幅に低減できる。また組立工程や
検査工程が従来のパッケージと共通する部分が多いために,
従来装置を活用でき,低コストで生産できる。さらには薄型
図1 QFNの構造の一
例 QFNはリードフレー
化可能,放熱性良好など,従来のパッケージにない特長もあ
ムを用いたCSPで,QFPの
り,携帯電話用途を中心に伸長が著しい。
アウターリードを除いた形
状である。
QFNは従来,個々のチップを別個に封止する個別封止法に
より製造されていたが,最近になって,複数のチップを一括
封止した後に分割する一括封止法が開発されている。図2に
は個別封止法および一括封止法で得られた,封止後のリード
フレームを示す。個別封止法では,おのおののパッケージが
底面図
個別に封止される 4),5)。一方,一括封止法では複数のパッケ
Fig. 1 Typical structure
of QFN
QFN is a lead frame
type of CSP which has a
structure eliminating the
outer leads from Quad
Flat Package (QFP).
*
当社 電子材料事業グループ 半導体材料事業部門
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
17
アセンブリテープ
封止部分
テープ貼り付け
リードフレーム
個別封止法
リードフレーム
断面図
封止部分
アセンブリテープ
チップ
一括封止法
封止材
図2
各封止法で得られた封止後のリードフレーム
チップマウント
ワイヤボンド
一括封止
一括封止法では
複数のパッケージが一括封止され,生産性が大きく向上する。
テープ剥離
Fig. 2 Lead frames processed by different molding methods
The MAP process enhances productivity by integrally molding a number of
packages.
ダイシング
ージを一括封止するが,個別封止法に比べて同一面積のリー
ドフレームでより多くのパッケージが得られることから,生
図3 一括封止法によるQFN組立工程
産性が大きく向上する。また封止金型を換えずに,ダイシン
イヤボンド時のインナーリードの固定と封止時の封止材の漏れ防止であるが,
グ時の寸法調整によって異なる大きさのパッケージを製造で
きる。このため封止金型の共通化と短納期対応が可能である。
これらの理由から,国内外のメーカーが一括封止法による
QFNの開発に取り組んでいる 6)〜8)。さらには類似構造のパッ
アセンブリテープの役割は,ワ
剥離時の低汚染性も要求される。
Fig. 3 Typical MAP process for QFNs
The functions of the tape are to fix the inner leads in wirebonding and
prevent leakage of encapsulants during molding, which causes flash and burrs.
The tape must leave with no residue after its removal.
ケージとしてSON(Small Outline Non-Leaded Package)や
LGA(Land Grid Array)などがあり,これらも一括封止法に
(6)最後にダイシングして個々のパッケージに分割する。
よる開発が盛んに行われている。
この一括封止法に用いるキーマテリアルの一つとして,
QFN用アセンブリテープがある。本テープは,リードフレー
ムの裏面に貼って封止時の封止材の漏れを防いだ後に,封止
材とリードフレームから引きはがすテープである。従来,こ
この際のQFN用アセンブリテープの主な役割は,次の 2 点
である。
①ワイヤボンド時にインナーリードを固定する。
②封止時に封止材の漏れを防ぎ,バリを生じさせない。
のような再剥離が必要な用途には,粘着テープが用いられて
そしてテープには,封止後に封止材とリードフレームから,
きた。しかしQFN用アセンブリテープには,高耐熱性,テー
糊残りなしに引きはがせることが要求されている。
プ剥離時の低汚染性など,これまでにない特性が要求される。
2.2 ワイヤボンディング性の検討
このため従来の粘着テープでは対応が難しかった。
ワイヤボンドは一般に超音波と熱の併用で行われるが,そ
当社は,これまで培ってきた耐熱熱可塑性接着テープの技
の際,アセンブリテープはインナーリードを固定する役目を
術を生かし,QFN用アセンブリテープとして好適な熱可塑性
果たす。そこで,接着剤層の弾性率がワイヤボンド時の超音
の再剥離テープ
波エネルギーに与える影響について考察した。一般に高分子
RTシリーズ
を開発した。本報では,この
をはじめとする粘弾性体に角周波数ωの正弦振動を加えた場
RTシリーズの特性について報告する。
合,粘弾性体の弾性率は式(1)のように複素数として表さ
〔2〕 RTシリーズの開発
れる。
2.1 QFN用アセンブリテープの役割
E*(ω)=E (ω)+iE (ω) ……………………
(1)
図3にアセンブリテープを用いたQFNの一括封止工程を示
式(1)においてE は貯蔵弾性率であり,与えたひずみに
よって貯えられるエネルギーの尺度となる。一方,E は損失
す。
(1)はじめにアセンブリテープをリードフレームの裏面に貼
弾性率であり,エネルギー散逸の尺度となる。したがってE
が高いほど,あるいはE が低いほど超音波のエネルギーが散
る。
(2)次に銀ペーストなどを用いてチップマウントを行い,そ
逸しにくくワイヤボンド性が向上すると考えられる。
そこで従来型パッケージを用いて,ワイヤボンド温度での
の後,銀ペーストを加熱硬化する。
(3)超音波と熱の併用でワイヤボンドを行う。
接着剤層の弾性率とワイヤプル強度の関係を調べたのが,図
(4)複数のチップを一括封止する。
4である。接着剤層の損失弾性率が同等の場合,貯蔵弾性率
(5)アセンブリテープを引きはがす。
が高いほどワイヤプル強度が高かった。これは上記の考察を
18
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
裏付けている。
2.4 テープ剥離時の低汚染性の検討
さらにワイヤボンド工程でアウトガスが生じた場合には,
QFNではアセンブリテープをはがした後の下部フレーム
インナーリードを汚染し,ワイヤの接合不良が生じやすいと
が,そのまま実装端子として利用される。そこでリードフレ
予想される。したがって接着剤層の熱分解温度は高い方が好
ームまたは封止材表面に接着剤残りがあると,基板に実装し
ましい。そして従来の粘着剤を用いたのでは,Tgや熱分解温
た際に導通不良を起こす恐れがある。したがってアセンブリ
度が低いため,上記の要求特性を満たすのは難しい。そこで
テープをはがした後に,封止材とリードフレーム表面に接着
今回,Tgが220℃と高い特殊な耐熱熱可塑性接着剤を開発し
剤が残らないことが重要である。表2は接着テープを封止材
た(表1)
。開発品はワイヤボンド温度で高い貯蔵弾性率と
およびリードフレームから剥離した際の表面観察結果である
低い損失弾性率を示した(図5)
。さらに熱分解温度が440℃
が,低凝集力の接着剤を用いた従来品の場合には,接着剤残
と高いため,300℃以下ではほとんどアウトガスを発生しな
りが生じていた。
い。開発品はTgが高いため,室温でリードフレームに接着す
そこでこの改良に取り組んだ。図6に接着剤層の接着力と
るのは難しいが,240〜260℃で加熱することにより接着する
凝集力の関係を示すが,被着材(封止材またはリードフレー
ことができた。本開発品を用いてQFNパッケージの組立工程
ム)と接着剤層との接着力が,接着剤層の凝集力を上回った
を行ったところ,ワイヤボンド性は良好であった。
ときに,接着剤残りが生じると考えられる。したがって接着
2.3 封止材の漏れ防止性の検討
剤残りを防ぐには接着力を低下させることも考えられるが,
アセンブリテープには封止時に封止材の漏れを防ぐことが
しかしこの場合には,搬送工程でのはがれや封止時の封止材
期待されている。封止材の充填(てん)は170〜200℃程度で
の漏れが生じやすくなる。そこで接着剤層を特殊なIPN
行われるが,この際に接着剤層の弾性率が低下すると,封止
(Interpenetrating Polymer Network)構造とすることにより,
材充填の勢いにテープが押されて封止材の漏れが生じやす
接着剤層の凝集力を高めることを試みた。その結果,表2
い。しかし上記開発品はTgが220℃と高いので,封止時に封
止材の漏れは生じなかった。
60
貯蔵弾性率
a MPaの接着剤
損失弾性率(相対値)
貯蔵弾性率
2a MPaの接着剤
80
貯蔵弾性率(相対値)
ワイヤプル強度(相対値)
100
40
ワイヤボンド温度(例)
損失弾性率が同等の
接着剤を用いた
20
温度(相対値)
0
0
50
100
超音波の周波数(kHz)
150
200
図5
開発品の弾性率
ワイヤボンド温度で高い貯蔵弾性率と低い損失弾
性率を示す。
図4
各接着剤の貯蔵弾性率とワイヤプル強度の関係
貯蔵弾性率が
高い接着剤は高いワイヤプル強度を示す。
Fig. 4 Relationship between storage modulus and wire-pull strength of
adheseves
Adhesive with the higher storage modulus shows higher wire-pull strength.
Fig. 5 Elastic modulus of the newly developed adhesive
New adhesive has a high storage modulus and low loss modulus at
wirebonding temperatures.
接着剤層
表1
熱的特性の比較
開発品は高Tgの耐熱熱可塑性接着剤を用いてお
接着剤層の
凝集力
り,高弾性率,高熱分解温度である。
Table 1 Comparison of the thermal performance
The new product has a superior high-Tg thermoplastic adhesive layer, which
results in a higher elastic modulus (Fig.5) and higher decomposition
temperature.
項目
開発品
比較材
基材
基材
+耐熱熱可塑性接着剤
+粘着剤
Tg(℃)
220
<50
貼付温度(℃)
240〜260
室温
熱分解温度(℃)
440
<400
構成
封止材またはリードフレーム
接着力
図6
接着剤層の接着力と凝集力のイメージ図
封止材またはリードフ
レームと接着剤の接着力が,接着剤層の凝集力を上回ったときに,接着剤残り
が生じると考えられる。
Fig. 6 Image diagram of the strength of adhesion to encapsulants and lead
frames and cohesion strength of adhesive layer
We assume that adhesive residue will remain when the strength of adhesion
to encapsulants or lead frames is higher than the cohesion strength of the
adhesive layer itself.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
19
表2
封止材とリードフレームに対する接着剤残りの比較
従来品で
は剥離時に接着剤残りが生じたが,高凝集力の接着剤を用いた開発品では生じ
表3
RTシリーズを用いたQFN組立工程の評価結果
RTシリーズは
ワイヤボンド性,封止材の漏れ防止性,テープ剥離時の低汚染性のいずれも優
なかった。
れていた。
Table 2 Comparison of the adhesive residue on encapsulants and lead
frames
Residue was observed with conventional tape after its removal, and it was
not observed with the newly developed tape with highly cohesive adhesive.
Table 3 Evaluation of the assembly process with the RT-Series tape
Our RT-Series tape has excellent wirebondability, no flash or burrs in the
molding process, and leaves no residue after removal.
項
剥離時の
接着剤残り*1
被
目
封止材
着
材
工程*1
不良率
ワイヤボンド
0/100
封止
0/10
リードフレーム
従来品
わずかにあり
(低凝集力の接着剤)
あり
開発品
(高凝集力の接着剤)
なし
テープ剥離後の接着剤残り
注)*1 封止タイプ:一括封止
なし
0/10
テープ接着条件:250℃/6MPa/10s
注)*1 接着剤残り;SEM/XMAの5,000倍で観察
に 示 す よ う に 本 開 発 品 で は , SEM( Scanning Electron
参考文献
Microscope)とXMA(X-ray Microanalysis)で5,000倍に拡大
1)春日:採用進むCSP/BGAと回路・実装設計技術,電子技術,
観察しても,リードフレームと封止材表面に接着剤残りは観
2-7(1998)
2)田口:最新のパッケージ開発動向と東芝のCSPの取り組み,電
察されなかった。
2.5 RTシリーズを用いたQFN組立工程の評価結果
以上に結果を示したように,高Tgの耐熱熱可塑性接着剤に
特殊なIPN構造を持たせて凝集力を高めることにより,新規
なQFN用アセンブリテープ
RTシリーズ
を開発した。表3
にQFN組立工程におけるRTシリーズの評価結果をまとめる。
RTシリーズを用いた場合,ワイヤボンド工程のワイヤ接合不
良,封止工程の封止材漏れ,テープ剥離工程の接着剤残りの,
いずれの不具合も生じず,良好な作業性が得られた。
子技術,39-43(1998)
3)A.C.W.Lu et al:Electrical and Thermal Modeling of QFN Packages,
3rd Electronics Packaging Technology Conference, 352-356
(2000)
4)S. Konishi et al:Development of QFN (Quad Flat Non-Leaded
Package), 4th Symposium on Microjoining and Assembly
Technology in Electronics, 149-152(1998)
5)S.Oida et al:QFN (Quad Flat Non-Leaded Package), Matsushita
Technical Journal, 45(No.4)
,21-25(1999)
半導体パッケージの組立工程においては,歩留まりが少し
6)Gerd Kühnlein et al:A design and manufacturing solution for high
でも下がると高価なチップをむだにすることになり,大幅な
reliable non-leaded CSP’s like QFN, 3rd Electronics Packaging
コストアップにつながる。RTシリーズを用いた場合には,各
組立工程で安定した作業性が得られるので,量産時の歩留ま
Technology Conference, 169-175(2000)
7)藤井,外:リードフレームからメタルサブストレートへ,エレク
トロニクス実装技術,18(No.1)
,32-36(2002)
りを大きく向上できる。
8)河合,外:QFN用成形テープ,エレクトロニクス実装技術,18
〔3〕 結
言
(No.1)
,20-24(2002)
特殊な耐熱熱可塑性接着剤を用いた新規なQFN用アセンブ
リテープ
RTシリーズ
を開発した。RTシリーズは,高温
での弾性率,熱分解温度,接着剤層の凝集力に優れる。その
結果,QFNの組立工程において,ワイヤボンド性,封止時の
封止材の漏れ防止性,テープ剥離時の低汚染性のいずれの点
でも,良好な特性を示した。
RTシリーズは現在,QFNのほか,SON,LGAなどの量産に
適用されている。今後はこれら以外のさまざまなパッケージ
にも適用を図っていきたい。また低温接着性や易剥離性など,
要求特性は今後ますます厳しくなってくることが予想され
る。このようなさまざまな要求にも対応できるよう,引き続
き改良を進めていきたい。
20
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
621.315.57-418.5:621.792.4.053:678.6.072
入力用低温接続異方導電フィルムアニソルム AC-9000
Low-Temperature-Curable Anisotropic Conductive Film ANISOLM AC-9000 for Input Lead Bonding
藤縄 貢* Tohru Fujinawa
有福征宏* Motohiro Arifuku
小林宏治* Kouji Kobayashi
福嶋直樹* Naoki Fukushima
異方導電フィルムはLCD(Liquid Crystal Display)モジュールの実装材料として,
TCP(Tape Carrier Package)によるLCDパネルとプリント基板(Printed Wiring
Boards)の電極の接続などに広く用いられている。近年のLCDモジュールは大型化の
傾向にあり,接続時のプリント基板の反りの増大や,接続時間の短縮化に伴う接続温
度の上昇によるLCDパネルへの熱的影響の増大が問題化している。この対応策として,
異方導電フィルムの低温接続化が要求されている。そこで当社では,低温硬化で良好
な接着力および接続信頼性を得るために,新たに硬化触媒を設計するとともに,接着
剤の弾性率の最適化を行った。その結果,従来品よりも約40℃低温(150℃/10s)で
の接続が可能な,入力用低温接続異方導電フィルムAC-9000を開発し,上市した。
Anisotropic conductive film (ACF) has been widely used as interconnect material in
liquid crystal display (LCD) module packages , that is ,to connect the electrodes of LCD
panels to those of printed wiring boards (PWBs) via tape carrier packages (TCPs).
LCD modules will tend toward larger panel area and narrower frame width, requiring
the reduction of the warpage of PWBs and the thermal influence on LCD panels. In
order to solve these problems, the development of a low-temperature-curable ACF has
been strongly required. To cope with the requirement, we designed a novel curing
agent which will afford lower temperature curing of ACF without shortening the pot life
at room temperature. In addition, we optimized the elastic modulus of the ACF to
improve the adhesion strength and the resulting reliability of the interconnection using
the ACF. As a result, we have developed a new low-temperature-curable ACF, the
Anisolm AC-9000, for input leads. The new ACF can connect the electrodes of TCPs to
those of PWBs at about 40℃ lower temperature (for example ,150℃/10sec) than the
conventional ACF.
〔1〕 緒
言
〔2〕 低温硬化性とポットライフの両立化
異方導電フィルム(アニソルム)は,熱硬化性樹脂をベー
入力用アニソルムは図1に示すように,TCPとプリント基
スとした接着剤に金めっきした樹脂粒子やNi粒子を均一に分
板の接続部に用いられる。従来品は23℃で30日以上のポット
散させた接着フィルムである 1)。これはLCDモジュールにお
ライフ(製品可使時間)を有し,190℃/10sの加熱条件で良好
いて,LCDパネルとプリント基板とをTCPを介して接続する
ための構成材料として広く使用されている 2)。当社では入力
用(TCPとプリント基板の接続用)と出力用(TCPとLCDパ
出力用異方導電フィルム
ネルの接続用)
,ならびにドライバICとLCDパネル接続用のア
ニソルムを上市している
3)〜5)
。最近ではLCDモジュールの主
LCDパネル
需要がノートPC用からモニター用へと移行しており,15イン
チ以上の大型モジュールの生産比率が高くなっている 6)。大
型モジュールでは,接続時におけるプリント基板の反りの増
入力用異方導電フィルム
大や,接続時間の短縮化に伴う接続温度の上昇がLCDパネル
TCP
へ及ぼす熱的影響の増大,といった問題への対応が必須とな
ドライバIC
っている。プリント基板の反りは,プリント基板を汎用品の
FR-4(Tg:約120℃)から,高Tgで熱膨張係数が小さいFR-5
PWB
(Tg:約170℃)に変更することで低減が可能であるが,コス
トアップを伴う。一方,低価格なFR-4の使用を可能にするた
めには,アニソルムの接続温度の低温化を図る必要がある。
本報では,接着剤の硬化触媒の設計および弾性率の最適化
を図ることによって,新たに開発した入力用低温接続異方導
電フィルムAC-9000の特性について述べる。
図1
異方導電フィルム実装によるLCDモジュール
異方導電フィル
ムはTCPを介してLCDパネルとプリント基板を接続するのに用いられる。
Fig. 1 LCD module using ACF for input and output interconnection
ACF is used as interconnect material in LCD module packages ,for example,
to connect via TCPs the electrodes of LCD panels to those of PWBs.
*
当社 電子材料事業グループ 表示材料事業部門 ACF開発グループ
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
21
な接続特性が得られる。低温接続性は接着剤を低温硬化形に
2.2 ポットライフ
することで可能となるが,室温で 1 ヵ月以上のポットライフ
図3には前項で作製した各接着剤の反応開始温度とポット
を兼備するためには,最適な硬化触媒の設計が必要である。
ライフの関係を示す。ポットライフは23℃で,150℃
2.1 低温硬化性
/10s/2MPaの加熱加圧条件で接続した接続部の初期接続抵抗
接 着 剤 の 硬 化 挙 動 に は DSC( Differential Scanning
が0.5Ω以上に上昇するか,または初期接着力が600N/m以下
Calorimeter;示差走査熱量計)による解析が有効であること
に低下するまでの日数とした。図3から,ポットライフは反
が知られている 7)。DSCで測定した硬化反応の開始温度,ピ
応開始温度が高いほど長くなることがわかる。従来品と同等
ーク温度が低いほど,低温硬化性に優れる接着剤といえる。
の23℃で30日以上のポットライフを得るためには,反応開始
図2には種々の硬化触媒を用いて作製した接着剤を昇温速
温度を80℃以上に設計する必要があるといえる。
度10℃/minで測定したDSCのピーク温度と,各接着剤につい
以上のことから,低温硬化性とポットライフを両立するた
て150℃/10sの加熱処理条件で処理した場合の反応率の関係を
めに,DSCのピーク温度が100℃以下で反応開始温度が80℃
示す。ここで加熱処理条件は,現行品の190℃/10sから温度で
以上になる硬化触媒を設計した。図4には新たに設計した硬
40℃低温化した条件を用いた。反応率は初期と加熱処理後の
化触媒を用いて作製した低温硬化接着剤と従来接着剤につい
DSC発熱量の差より算出した。また,従来品は190℃/10sで
て,加熱温度と加熱時間(10sと5s)を変えて処理した場合
80%の反応率を示すが,これを反応率の指標とした。
の反応率を示す。80%以上の反応率が得られる温度は,いず
図2からわかるように,接着剤のピーク温度と反応率は反
れの場合も,低温硬化接着剤は従来接着剤よりも約40℃低温
比例の関係にあり,100℃以下の場合に80%以上の反応率を
化している。また,この低温硬化接着剤の反応開始温度は
示した。そこで,目的の低温硬化性を得るためには,ピーク
82℃であり,従来品と同様に23℃で少なくとも30日以上のポ
温度を100℃以下に設計する必要があるといえる。
ットライフを示すことを確認した。
80
30
ポットライフ(日)
100
反応率(%)
100
60
40
10
1
20
0
60
図2
70
80
90
100 110 120
ピーク温度(℃)
DSCピーク温度と反応率
130
0.1
30
140
図3
ピーク温度が100℃以下のフィルムで
40
50
60
70
80
反応開始温度(℃)
DSC開始温度とポットライフ
90
100
反応開始温度が80℃以上のフィル
は,150℃/10sの加熱処理条件で80%以上の反応率が得られる。
ムでは,23℃/30日以上のポットライフが得られる。
Fig. 2 DSC peak temperature v.s. reaction rate of ACFs
The reaction rate of the ACF becomes higher than 80% when its DSC peak
temperature is below 100℃.
Fig. 3 Onset temperature of the curing reaction v.s. pot life of ACFs
The pot life at 23℃ of ACFs becomes over 30 days when its onset
temperature of the curing reaction is above 80℃.
低温硬化接着剤
100
従来接着剤
100
10s
反応率(%)
反応率(%)
80
60
40
20
0
120
22
5s
80
図4 低温硬化接着剤の反応
率 低温硬化接着剤では従来接着
60
剤よりも約40℃低い温度で同等の
反応率が得られる。
40
20
140
160
温度(℃)
180
200
0
120
140
160
温度(℃)
180
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
200
Fig. 4 Reaction rate v.s. curing
time and temperature for both
types of adhesives
The new low-temperaturecurable adhesive shows equally
high reaction rates at about 40℃
lower curing temperatures than the
conventional adhesive.
性率の最適化を行った。また,導電粒子については電極表面
〔3〕 接着剤の低弾性率化と接着力の向上
に酸化膜などが形成されている場合でも良好な接続が得られ
低温硬化性とともに重要なアニソルムの特性としては接着
るように,従来品と同じく突起形状を有するNi粒子3)を使用
力が挙げられる。図5にはアニソルムによる接続の概念図を
した。これらの技術を組み合わせて,入力用低温接続異方導
示す。アニソルムの電気的接続は導電粒子を介しての電極の
電フィルムAC-9000を開発した。
接触接続であり,この接触は接続部に働くTCPや基板の変形
〔4〕 接続信頼性
回復力,熱応力,接着剤の接着力および界面の収縮力の総和
4.1 温度サイクル試験および高温高湿試験での接続信頼性
から成る電極間の収縮力によって保持される。熱硬化性接着
剤の接着力向上には低弾性率化が有効であるが 8),接着剤の
図7にはAC-9000および従来品を用いて,Cu電極の上にSn
過度の低弾性率化は,収縮力の低下を伴うため,温度サイク
めっきしたTCP電極とNi/Auめっきしたプリント基板の電極
ルなどの接続信頼性試験で接触接続の確保ができず,接続抵
を,接続条件①150℃/10s/3MPa,②190℃/10s/3MPaで接続し
抗の上昇が発生する恐れがある。このため,接着剤の弾性率
た接続体の,温度サイクル試験での接続信頼性を接続抵抗の
の最適化が必要である。
変化によって示す。従来品は,これまでの接続条件②では良
図6には低弾性率化した低温硬化性接着剤の,23℃での弾
好な接続信頼性を示すが,低温接続条件①では反応不足のた
性率と接着力,および−40℃(30min)⇔23℃(5min)⇔
めに接続抵抗が上昇する。一方,AC-9000は低温条件①で接
100℃(30min)の温度サイクルを100サイクル加えた後の接
続した場合でも,1,000サイクル試験後に1Ω以下の低接続抵
続抵抗を示す。接着力は接着剤の低弾性率化によって向上す
抗を維持している。また,85℃/85%RHの高温・高湿信頼性
る傾向にある。一方,接続抵抗は弾性率が900MPa以下では
試験(1,000h)においても,温度サイクル試験と同様の好結
急上昇する。そこで,800N/m以上の高い接着力と低接続抵抗
果を確認した。
を両立するために,接着剤の弾性率を1,000〜1,500MPaの範
囲とした。
以上の検討結果にしたがって,接着剤としては新規硬化触
3
1,200
2.5
1,000
TCPの変形回復力
TCP
熱応力
2
800
1.5
600
1
400
0.5
200
0
500
1,000
1,500
2,000
接着力(N/m)
接続抵抗(Ω)
媒の設計による低温硬化性とポットライフの両立,および弾
0
硬化物の弾性率(MPa)
プリント基板
基板の変形回復力
接着剤の接着力
図6 接着剤(硬化物)の弾性率と接着力および信頼性試験後の接
続抵抗 接着剤の低弾性率化で接着力は向上するが,弾性率が900MPa以下
接着剤と界面の収縮力
では温度サイクル試験後の接続抵抗が急激に上昇する。
図5
ACFによる接続概念図
接続は接着剤の接着力および収縮力により
Fig. 6 Influence of the elastic modulus of ACF on the adhesion strength and
the electrical contact resistance after thermal cycle test
Adhesion strength increases with decreasing elastic modulus of ACF, but the
contact resistance through the ACF interconnects steeply increases when the
elastic modulus is below 900MPa.
保持される。
5
従来品
4
150℃/10s
AC-9000
接続抵抗(Ω)
接続抵抗(Ω)
Fig. 5 Mechanism of connection through ACF
The connection between the electrodes is retained by the strong adhesion the
contraction strength and compressive force of ACF.
3
2
1
0
5
従来品
4
190℃/10s
AC-9000
3
図7 AC-9000の温度サイクル試
験(−40℃⇔100℃)での接続信
頼性 AC-9000は各接続条件で良好な
2
接続信頼性を示す。
1
0
250
500
サイクル
750
1,000
0
0
250
500
サイクル
750
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
1,000
Fig. 7 Reliability of connection with
ACFs in thermal cycle test
The newly developed AC-9000
demonstrates excellent connection
reliability in the thermal cycle test even
cured at lower temperature of 150℃
/10s.
23
表1
AC-9000の接続仕様
AC-9000
項
は低温の接続条件で従来品と同等の特性が
仕
目
得られる。
最少接続
電極
Table 1 Specifications for the interconnection
with the AC-9000
Newly developed low-temperaturecurable ACF, the AC-9000,will satisfy the
specifications for the conventional ACF,
even by lower-temperature/shorter-time
curing.
様
従来品
AC-9000
ライン
100µm
スペース
100µm
接続抵抗
1Ω以下
絶縁抵抗
1.0E+9以上
接着力(20℃)
600N/m以上
*
仮固定力(20℃)
4N/m以上
リペア性(使用溶剤)
可(アセトン,トルエン)
接続条件
温度(℃)
170
190
210
150
165
180
時間(s)
20
10
5
10
7
5
ポットライフ(23℃)
30日
30日
注)* 配線抵抗を含む。
4.2 高温高湿試験での接着力変化
1.E+13
図8には前項①と同じ条件で作製した接続体の,高温・高
1.E+12
湿信頼性試験での接着力変化を示す。従来品は反応不足によ
85℃/85%RH
1.E+11
り初期から接着力が低いが,AC-9000は高い初期接着力を有
1.E+10
絶縁抵抗(Ω)
し,500h後も800N/m以上の高い接着力を維持している。
4.3 絶縁抵抗
図9にはAC-9000を用いて所定条件で,櫛型に形成した電
極を接続した接続体の,隣接する電極間の絶縁抵抗の高温・
高湿信頼性試験結果を示す。絶縁抵抗は,接続体を所定時間
1.E+09
1.E+08
1.E+07
1.E+06
1.E+05
処理後に高温・高湿槽より取り出し,隣接する電極間に電圧
1.E+04
50Vを印加して30s後に測定した。信頼性試験の経時につれて
1.E+03
絶縁抵抗は低下するが,1,000h後も109Ω以上の高い絶縁抵抗
1.E+02
を示している。
0
250
500
750
時間(h)
1,000
4.4 AC-9000の仕様
表1にAC-9000の仕様を示す。入力用低温接続異方導電フ
図9
AC-9000の絶縁信頼性
AC-9000は信頼性試験の1,000h後も十分に
ィルムとして150℃/10s接続または180℃/5s接続が可能であ
高い絶縁抵抗を維持している。
り,低温短時間接続の要求に対応している。
Fig. 9 Reliability of the insulation in the planer direction of ACF
The AC-9000 shows satisfactory insulation resistance in the planer direction
even after the high-temperature/humidity test (85℃/85%RH).
〔5〕 結
言
入力用低温接続異方導電フィルムとして150℃/10s接続が可
能なAC-9000の特性について報告した。LCDモジュールの市
薄型化を実現するために,異方導電フィルムの実装における
場が引き続き拡大するなかで,LCDモジュールの狭額縁化や
低温および短時間接続はますます重要になっている。当社で
は,ここに報告した入力用のみならず出力用,COG(Chip on
Glass)接続用に対しても,アニソルムの接続温度の低温化を
1,400
AC-9000
85℃/85%RH
1,200
参考文献
1,000
接着力(N/m)
図るため,本技術の展開を図っている。
従来品
目標値
1)山口,外:異方導電フィルム,日立化成テクニカルレポート,
800
No. 6(1987-7)
600
2)I.Watanabe et al.:Anisotropic Conductive Films For Flat Panel
400
3)塚越,外:高精細回路接続用アニソルムAC-7144の開発,日立化
Displays,369,vol. 2 , IDW ’96(1996)
成テクニカルレポート,No. 16(1991-1)
200
0
図8
4)塩沢,外:金属電極用異方導電フィルム,アニソルムAC-2052,
日立化成テクニカルレポート
0
100
AC-9000の耐湿接着強度
250
時間(h)
500
ルレポート,No. 26(1996-1)
AC-9000は高温高湿試験(85℃/85%RH,
500h)後も800N/m以上の高い接着力を示す。
Fig. 8 Adhesion strength of ACFs after high-temperature/humidity test.
The AC-9000 sustains adhesion strengths higher than 800N/m even after the
high-temperature/humidity test (85℃85%RH, 500h).
24
No. 23(1994-7)
5)渡辺,外:二層構成異方導電フィルムの開発,日立化成テクニカ
6)松野:TFTパネル価格は若干上昇,フラットパネルディスプレイ
2002(戦略編)
,74(2002)
7)K.Horie et al:J.Polm.Sci.A-1,vol. 8,1357(1970)
8)竹村,外:フリップチップ接続用異方導電材
フリップタック
の開発,日立化成テクニカルレポート,No. 30(1998-1)
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
621.315.619.3.049.75:678.067.5
高多層用高Tg FR-4材料
High-Tg FR-4 Material for Advanced Multilayer PWB
石上富美男*
Fumio Ishigami
*
中村幸雄
酒井広志*
Hiroshi Sakai
Yukio Nakamura
近年情報通信分野の発達に伴い,サーバーやルーターなどの機器では情報伝達の大
容量化と高速化が進んでいる。これらの機器に用いられている高多層配線板は,より
高多層化と高密度化が進み,要求される耐熱性や耐電食性がますます厳しくなる傾向
にある。本研究では耐熱性と耐電食性を解析し要素技術を確立した。これらの知見に
基づいて,独自の樹脂配合技術,ガラスクロス,銅箔(はく)の選定を行うことによ
り,高いガラス転移温度(Tg)と高耐熱性および高耐電食性を達成した。
この高TgのFR-4材料は,今後さらなる市場の伸長が予測されるサーバーやルータ
ーなどの高多層分野への展開が期待される。
Owing to the development of the information and the communications industry, the
improvement in the communication speed and capacity is progressing in such
equipment as servers and routers. The multilayer printed wiring boards (PWBs) used in
such equipment are required to have more layers of denser wiring, with higher thermal
and conductive anodic filament (CAF) resistance. In this study we analyzed the
influence of each component of the PWBs on the above two resistance properties, and
succeeded in optimizing the resin system, glass-cloth, and copper foil to achieve high
glass transition temperature (Tg) and excellent thermal and CAF resistance at the same
time.
The newly developed high-Tg FR-4 material is expected to be used in the still
progressing fields of advanced PWBs for such equipment as servers and routers.
〔1〕 緒
言
近年,インターネットに代表される情報通信分野の発達に
伴い,サーバーやルーターなどの大量の情報を高速に扱うた
めの機器の需要が高まっている(図1)
。これらの機器に用
1,038
Router
いられている配線板は,情報の大容量伝送化と高速化に伴っ
1,000
Server
890
て,より高多層化および高密度化する傾向にある。高多層板
では,従来より耐熱性や耐電食性などの信頼性を求められて
751
800
572
(k unit/月)
いるが,さらなる高多層・高密度化が進むに従い,配線板の
これらの信頼性に対する顧客の要求もより厳しくなる傾向に
ある(表1)
。
これらの厳しい要求に対応するため,高多層化に適した,
618
600
477
397
318
400
より高性能な多層材の必要性が高まっている。そこで,高多
499
244
層化での信頼性向上を目的に材料の検討を実施した。本報で
200
は高多層プリント配線板に適した多層材料の特性について報
告する。
0
〔2〕 高多層板における課題
255
300
1999
2000
高多層板の耐熱試験時における問題点を図2に示す。これ
354
2001
413
2002
466
2003
(From Data Quest company s data in1999)
らの問題点は,材料の低Tg,熱膨張,基材の吸水などの影響
で生じていると考えられる。耐熱性向上策としては,樹脂の
図1
高架橋化による機械強度の向上と低応力化および樹脂の接着
及によりルーター,サーバーの市場は成長を続けている。
性の向上が有効であると考えられ,これらの特性を満足する
Fig. 1 Market trend of the router/server
The market of is continuing grow due to the popularization of the Internet and
others.
ことが重要な課題である。そこで,樹脂系の検討を行い,よ
り耐熱性に優れた材料の検討を実施した。
成長が著しいルーター,サーバー市場
インターネットなどの普
*
当社 配線板材料事業グループ 電子基材事業部門
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
25
表1
高多層プリント配線板における要求特性
高多層板では,より厳
しい信頼性を要求されている。
Table 1 Requirements for materials used in advanced MLBs
Advanced multilayer boards require severer reliability.
熱
性
電
食
性
特性インピーダンス
示す。温度変化に対応して多層板は面方向および厚さ方向に
膨張収縮を繰り返し,このことがスルーホールめっきおよび
288℃,10sはんだフロート
内層接続と基材との間にひずみを生じさせる。このひずみが
6サイクル異常なし
スルーホールクラックまたは,内層フォイルクラックを生じ
170℃以上
させ信頼性を低下する要因となる。スルーホールの信頼性を
85℃/85%RH処理2,000h以上
確保するためには,特に厚さ方向の熱膨張量が小さいことが
ガラス転移温度
耐
図4にはヒートサイクル試験時の多層板の挙動を模式的に
目標値
要求特性
耐
〔4〕 スルーホール信頼性の向上検討
ばらつき±10%以下
求められる。この樹脂系を用いた多層材による配線板のTgは,
TMAの測定結果(図5)に示すように170℃以上であり,厚
さ方向の熱膨張量が小さく,その結果良好なスルーホール信
頼性が期待できる。
さらに表2には,各種銅箔の高温での破断伸びとフォイル
高多層板の耐熱試験時
における課題
クラックの評価結果を示す。高温時の破断伸びが大きい銅箔
1. ブリスター,
レジンクラック
2. 内層回路の
1.E+00
フォイルクラック,
スルーホールクラック
3. レジンリセッション
tan δ
樹脂系A
図2
多層板における課題
1.E−01
高多層板における耐熱性には,樹脂系に起因
する問題がある。
樹脂系B
Fig. 2 Problems in multilayer boards
Thermal problems mainly result from resin systems used.
1.E−02
100
150
200
250
(℃)
温度
項目
樹脂の曲げ
破断伸び
〔3〕 樹脂系の検討
樹脂系としては,フェノール硬化系が一般FR-4材のジシア
単位
樹脂系A
樹脂系B
%
4.9
3.3
ン硬化系に比較して,Tgが高く吸水率が低いため,この硬化
系を採用した。しかしながら,この系は内層処理との接着強
度が低く,吸湿時の耐熱性に劣ることが知られている。これ
は,耐熱性の向上に必要とされる高架橋化により機械強度の
向上は実現したが,樹脂の靭(じん)性(樹脂の伸び)が低
いことによるものと考えられる。そこで,架橋密度を維持し
図3 樹脂系のDMA分析と樹脂の破断伸び
樹脂系Aはtanδのピークが
2 ヵ所にあり,樹脂系Bに比較して樹脂の破断伸びが大きい。
Fig. 3 DMA data and breaking elongation of the resin
New resin system A with two peaks of tanδ. has larger breaking elongation
than the conventional resin system B.
つつ靭性を向上させる手法として,可とう性成分の導入を検
討し,新規樹脂系の開発に成功した。
この新規樹脂系Aと現行樹脂系Bを用いた積層板をDMA(動
的熱機械分析装置)で分析した結果から応力緩和の大きさ,す
なわち靭性の指標となるtanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)の
室温時
温度特性を図3に示す。ここで一般的にtanδの最大値(tanδ
max)は弾性の変化の大きさを示している。この値が小さいも
のは高架橋であることを示し,大きいものは低架橋であるこ
図4
と,つまり樹脂系がよりフレキシブルであることを示
熱サイクル試験時には熱膨張収
繰り返し
す1)〜5)。また,tanδの転移幅が大きいほど,より広い温度範
縮により内層回路などにひずみ
を生じる。
囲で応力を緩和しやすいと考えられる。この新規な樹脂系Aは,
図からわかるとおりtanδmax値が従来の樹脂系Bよりも大き
膨張収縮
く,また副転移が見られるように,転移幅が広がっている。す
なわち,高架橋である従来の樹脂系のTgを維持しつつ,可と
う性成分の導入により樹脂の靭性が高くなり,応力を緩和し
やすい樹脂骨格になっていると考えられる。この樹脂系は機
械強度が高く,かつ低応力化を実現していることから,耐熱
性の向上が期待できるといえる。
26
熱サイクル時の挙動
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
高温時
Fig. 4 Diagram exhibiting the
behavior during heat-cycle
Temperature change is
accompanied by expansion and
contraction in both the flatwise
and edgewise directions, which
generate mechanical strain and
stress around inner layer
circuits.
は,熱膨張収縮時のひずみを緩和することにより信頼性を高
ガラス繊維と樹脂との接着性に優れドリル加工性が良好であ
る。以上の点からも,高Tg FR-4材料は良好な耐CAF性を持
めることが期待できる。
つことが確認された。
〔5〕 耐電食性の向上検討
高多層板においても高密度化が進み,CSP(Chip Size
〔6〕 多層板特性
Package)のパッドピッチは0.5mmから0.4mmへと,スルー
表3には高Tg FR-4材料を用いた16および22層板の特性を
ホールの穴壁間は0.3mmから0.2mmへと狭小化する傾向にあ
示す。高Tg FR-4材料は吸湿後の288℃30分の加熱試験でも異
る。したがって,より短い距離で絶縁性を確保する必要があ
常がなく,また,288℃10秒はんだフロートの10サイクル後
る。ガラス布エポキシ積層板の場合,ガラス繊維/樹脂界面に
導体性フィラメントが生成するCAF(Conductive Anodic
Filament)による絶縁劣化を抑制することが重要である。図
−
6に一般的なCAF発生の模式図を示す。CAFの発生は①陽極
+
PWB
の樹脂/めっき銅界面から溶出した銅イオンが,②ガラス繊維
/樹脂界面を陰極方向へ移行し,③その過程で金属銅が還元析
出する現象である 6)〜8)。したがって,優れた耐CAF性を得る
ためには,樹脂/めっき銅界面からの銅の溶出を抑制するか,
ガラス繊維/樹脂界面で銅イオンを捕捉して移行を抑制するこ
とが必要と考えられる。さらには,基板の吸湿やドリルなど
ガラス繊維/樹脂界面における
銅イオンの移行および析出
H2O+e−→1/2H2↑+OH−
Cu2++2e−→Cu
による機械加工性の低下も耐CAF性の劣る原因になることか
ら,樹脂系自体が低吸水であり,機械加工性に優れることも
陽極からの
銅イオンの溶出
H2O→1/2O2↑+2H++2e−
Cu→Cu2++2e−
必要である。
銅マイグレーション
高Tg FR-4材料はフェノール硬化系であることから,一般
のFR-4と比較して低吸水であることはもとより,独自の配合
技術によりめっき銅の溶出量を低減し,さらには優れた銅捕
捉能を備えた材料である。また,図7にはアコースティッ
ク・エミッション解析(以下,AEと略す)による,界面接着
指数とドリルクラックとの関係を示す9)〜11)。高Tg FR-4材料は
図6
CAF発生の模式図
陽極で溶出した銅イオンは,ガラス繊維/樹脂界
面を陰極方向へ移行する過程で還元析出する。
Fig. 6 Mechanism of copper ionic migration
The copper ions eluted from the anode shift through or along glass-fiber/resin
interfaces, and metal copper deposits toward the cathode.
60
1.0
ドリルクラック(mm)
変位量(厚さ方向)
( m)
50
40
30
高Tg FR-4材
20
一般FR-4
10
0
−10
−100
図5
−50
TMA測定結果
0
50
100
温度(℃)
150
200
厚さ方向の熱膨張量が小さいため,スルーホール信
0.4
図7
高Tg FR-4材
0.2
40
50
60
70
低←界面接着指数→高
TMA data
Fig. 7 Relation between the interfacial adhesion index and the drill cracking
(from AE analysis data)
Drill cracking length decreases with increasing interfacial adhesion.
項
目
条
件
単位
イルクラック性を示した。
Table 2 Influence of copper foil elongation on foil
crack resistance
Copper foil C with 12% breaking elongation
affords excellent resistance to foil cracking.
90
界面接着性とドリルクラックの関係(AEによる測定結果)
銅箔の破断伸びとフォイルクラック
破断伸び12%以上の銅箔を用いると良好な耐フォ
80
界面接着性が高いほどドリルクラックは小さくなる。
The thermal expansion is low in the direction of thickness, high-Tg FR-4
material excels the conventional in through-hole reliability.
表2
0.6
0.0
30
250
頼性に優れる。
Fig. 5
0.8
結
果
銅箔A
銅箔B
銅箔C
銅箔の破断伸び
180℃
%
2
8.9
12
外観
A
−
OK
OK
OK
はんだ耐熱性
A
−
OK
OK
OK
フォイルクラック
288℃10s6サイクル
−
NG
NG
OK
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
27
表3
配線板特性
高
TgFR-4材料は耐熱性,スルー
ホール信頼性などに優れた特
性を示す。
Table 3 General Properties
of MLBs
Our high Tg FR-4 material
shows excellent characteristics
in heat resistance, throughhole reliability, and others.
項目
単位
条件
高Tg FR-4材
Tg
℃
TMA
173〜183
140〜170
熱分解温度
℃
TGA
340〜360
290〜300
吸水率
%
PCT6h
0.6〜0.7
0.9〜1.3
熱膨張係数(TMA)
ppm/℃
(22層配線板)
熱膨張量
%
耐熱性
はんだ耐熱性
−
(16層配線板)
スルーホール信頼性
耐電食性
75.5
65〜75
309
310〜350
30→260℃
3.94
4〜5
異常なし
ふくれ発生
+E-0.5/288℃
288℃10sフロート
−
(16層配線板)
50〜120℃
200〜250℃
E-2/105
−
(22層配線板)
−
一般高Tg材
異常なし
ふくれ発生,
(10サイクル)
フォイルクラック(3サイクル)
−65℃/30min
異常なし
オープン
⇔125℃/30min
(2,000サイクル)
(700サイクル)
85℃85%100V
異常なし
短絡
TH-TH=0.3mm
(500h)
(100h)
でも異常がないなど,優れた耐熱性を示した。また,MILの
参考文献
サイクル試験において2,000サイクル後にも異常なしであり,
1)S.S. Labara:Journal of Polymer Science, 10(1972)
優れたスルーホール信頼性を保有している。耐CAF性におい
2)加門:色材,47(1974)
ては,85℃85%RHの高温多湿条件下で500時間100V印加して
3)加門:日本接着協会誌,Vol.15,103(1979)
も異常がなく,優れた絶縁特性を備えている。
4)L.E. Nielsen:高分子の複合材料の力学的性質,化学同人(1978)
これらのことから,高Tg FR-4材料は厳しい信頼性の要求
される高多層板用途に適しているといえる。さらに,高い耐
熱性の要求される製造工程,特に,高温が予想される鉛フリ
ーはんだの使用にも対応が可能な材料である。
〔7〕 結
5)村井:塑性加工シンポジウム会報(平1)
6)D.J. Lando et al:CONDUCTIVE ANODIC FILAMENTS IN
REINFORCED POLYMERIC DIELECTRICS:FORMATION AND
PREVENTION, 17th Ann. Proc. Rel. Phys., 51-63(1979)
7)高野,外:プリント配線板の耐電食性に及ぼす樹脂の影響,サー
キットテクノロジ,5,5,337-344(1990)
言
8)社団法人エレクトロニクス実装学会編:エレクトロニクス実装大
高多層プリント配線板用途としてのFR-4材料の耐熱性と耐
電食性を解析し,独自の樹脂配合技術や材料選択の最適化な
どの要素技術を確立した。高Tg FR-4材料は優れた耐熱性や,
スルーホール信頼性,耐CAF性などを持っているため,高い
信頼性が要求される高多層プリント配線板用材料として,今
後ますます成長が見込まれる,ルーターやサーバー用高多層
基板への展開が期待される。さらに,今後の高速化に対して
辞典(2000)
9)大塚:複合材料の非破壊検査,日本複合材料学会誌,10,3,
103-106(1984)
10)高野,外:多層プリント配線板のドリル加工性,サーキットテ
クノロジ,3,5,268-277(1988)
11) T.Watanabe et al: Fracture behavior of sheet moulding
compounds, COMPOSITES, JANUARY, 59-65(1982)
は,これらの技術をベースに開発した低誘電率低誘電正接・
高Tg材料を上市しており,今後の市場の拡大が期待される。
28
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
[678.675’74’5:678.842]:621.792.3.053
高接着性耐熱材料シロキサン変性ポリアミドイミド
Siloxane-Modified Polyamideimide with Excellent Adhesion and Heat-Performance
竹内一雅*
Kazumasa Takeuchi
田中
**
勝
田中裕子*
Masaru Tanaka
Yuko Tanaka
伊藤俊彦**
***
Ken Nanaumi
七海
憲
Toshihiko Itou
電子機器の小形化,高性能化の進展に伴い,配線板における配線の微細化と信号の
高周波数化が急速に進んでいる。配線の微細加工や高周波信号での表皮効果を考える
と,表面が平滑な導体金属を使用することが有利であり,アンカー効果に頼らずに高
接着性を示す材料が要求されている。また環境に対する意識の高まりから,鉛フリー
はんだの適用が広がり,従来プロセスの高温化が進む中で,材料に対してもより高い
レベルの耐熱性が要求される。
新たに開発したシロキサン変性ポリアミドイミド(SPAI)は,シロキサン鎖長や
変性量を変えることで,弾性率,誘電率,透湿性を調整することができる。また
SPAI中のアミド基と多官能エポキシ樹脂の反応を利用し,熱硬化性樹脂にもできる。
本系は耐熱性が高く,シロキサン変性を最適化することで,ポリイミドなどの有機材
料や平滑な金属とも高接着性を示すことがわかった。
In recent years, the circuits of printed wiring boards (PWB) have become finer and
the frequency of signal currents higher, as electronic devices are required to be smaller
and more multifunctional. Because of the fine wiring of PWBs and the skin effect related
to high frequency, copper foil with a smoother surface will be used, which requires the
use of new materials with excellent adhesion to copper foil without resorting to
anchoring. Moreover, insulating materials are required to have higher heat resistance to
cope with the lead-free solder process prevailing from an environment-conscious
aspect.
We have developed a new siloxane-modified polyamideimide (SPAI) material, whose
characteristics including the elastic modulus, dielectric constant, and moisture
permeability can be optimized in a wide range by controlling the amount of siloxane.
The SPAI varnish can be easily processed by casting into sturdy films resistant to heat
at temperatures above 380℃.
The reaction of the amide group in the main chain of SPAI with the epoxy group in
the multi-functional epoxy resin forms a cross-linked structure, resulting in excellent
adhesion even to such smooth surfaces as the shiny side of copper foil, polyimide film,
and so on.
〔1〕 緒
言
〔2〕 シロキサン変性ポリアミドイミドの概要
電子機器の小形化,高性能化が急速に進んでいる。これに
2.1
基本構造
伴い配線板における配線の微細化と信号の高周波数化は,使
図1にシロキサン変性ポリアミドイミド(SPAI)の基本構
用される材料に大きな課題を与える。導体/絶縁材間の接着力
造を示した。SPAIは芳香族イミドからなるハードセグメント
をアンカー効果に頼る従来材では,導体表面の粗さが,配線
と,シロキサンイミドからなるソフトセグメントを持ってい
の微細化の障害となるだけでなく,信号の高周波数化に伴う
る。ハードセグメントは高弾性,高耐熱を特長とする構造で
1)
表皮効果の点からも危惧(ぐ)される 。また環境に対する
あり,ソフトセグメントは低弾性,可とう性を付与する構造
意識が高まり,はんだの鉛フリー化に伴うプロセスの高温化
である。我々は,シロキサンの変性量を広範囲に変えること
などの要求から,材料にはより高いレベルの耐熱性が必要に
で,フィルム性に優れる樹脂の合成技術を確立した。
表1にシロキサン鎖長の異なるSPAIの特長をまとめた。シ
なる。
新たに開発したシロキサン変性ポリアミドイミド(SPAI)
ロキサンの鎖長が短いもの,中程度のものおよび長いものの
は,シロキサン鎖長や変性量を制御することで,弾性率,誘
3タイプの樹脂を得ており,それぞれ全ハードセグメント型
電率,透湿性を調整することができる。また樹脂中のアミド
の樹脂(シロキサン0%)から全ソフトセグメント型の樹脂
基をエポキシ樹脂と反応させることで,熱硬化性のフィルム
まで合成可能である。いずれのSPAIも分子量(Mw)が
とすることができ,耐熱性も高い。さらにポリイミドや平滑
50,000〜120,000の可溶性ポリマが得られ,キャスト法により
な金属とも高接着性を示すなどの特長を有することがわかっ
単独でフィルム化できる。
シロキサン鎖長の短いSPAIは透明,中程度および長鎖の
た。
*
当社 総合研究所
**
当社 化学製品事業部門
***
日立化成コーテッドサンド開発部
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
29
表1
SPAIの種類
シロキサンの鎖長により
モルホロジの異なる樹脂
シロキサン鎖長
短
中
長
シロキサン変性量
0〜55%
0〜70%
0〜80%
が得られる。
Table 1
SPAI
分子量(Mw)
50,000〜120,000
Mw/Mn
1.6〜2.1
Diversity of
相溶系
SPAI varnish and films
demonstrate diverse
morphology according to
the length of the siloxane
chain.
相分離系
相分離系
樹脂のモルホロジ
5µm
2.2
O
HNOC R
O
N
Ar
O
N
R
CONH Ar
ハードセグメント
高弾性,高耐熱
O
ソフトセグメント
低弾性,低誘電率
可とう性
図1
図2にSPAIのシロキサン量と弾性率,ガラス転移温度(Tg)
および1%熱重量減少温度の関係を示した。シロキサン量の
n
O
増加に伴い弾性率は低下し,3.0GPaから0.1GPaになる。これ
O
N Siloxane N
HNOC R
O
シロキサン変性量とフィルムの物性
(1)機械特性
R
CONH Ar
温度は380℃以上のままであり,耐熱性は保持されることが
m
O
シロキサン変性ポリアミドイミド(SPAI)の基本構造
に伴いTgも250℃から100℃まで低下するが,1%熱重量減少
わかった。これはソフトセグメントに耐熱性のシロキサンを
広範囲
にシロキサン変性量を制御し,フィルム性に優れるポリマを合成する技術を確立
した。
使用したことによると考えられる。
(2)電気特性
図3にSPAIのシロキサン変性量と1MHzでの誘電率,誘電
Fig. 1 Structure of siloxane-modified polyamideimide (SPAI)
The amount of siloxane in the polymer can be controlled over a wide range;
the amount can be optimized to obtain sturdy films.
正接の関係を示した。全ハードセグメント型樹脂はε=3.6,
tanδ=0.02であるが,シロキサン量とともに減少し,ε=
2.8,tanδ=0.01にまでなることがわかった。
(3)乾燥性
SPAIは不透明なワニスおよびフィルムを与える。前者を相溶
図4にはSPAIワニスをフィルム化する際の,乾燥時間と残
系SPAI,後者を相分離系SPAIと呼ぶ。樹脂フィルムを液体窒
存揮発分の関係(乾燥膜厚80µm,温度150℃)を示した。シ
素中で割り,その破断面を走査型電子顕微鏡で観察すると,
ロキサン0%の樹脂では10%以下の残存揮発分とすることが
相溶系ではサブミクロンレベルで均一な面が見られたが,相
困難であるが,シロキサン量の多いSPAIでは同じ条件でも時
分離系では特徴的なモルホロジーを呈していた。一般にシロ
間とともに残存揮発分が下がり,2%以下の残存揮発分とす
キサンはほかの有機高分子と相溶性が低く,鎖長が長い方が
ることができた。この効果はシロキサンの変性量が多いもの
相溶性はより低くなる。相分離系SPAIでは,シロキサン同士
で顕著であった。N-メチルピロリジノンのような高沸点溶剤
が凝集することでハードセグメントとソフトセグメントが相
を使用した場合でも,溶媒の沸点より十分低い乾燥温度でフ
分離していると考えられる。
ィルム化できる点は,工業的に有効である。
4.0
弾性率(GPa)
3.0
2.5
300
2.0
Tg; tan δ max
1.5
200
1.0
100
弾性率,30℃
ε
400
Tg,1%熱重量減少温度(℃)
1%熱重量減少温度
3.5
0.5
0.0
シロキサン量(a. u.)
high
4.0
0.04
3.5
0.03
3.0
0.02
2.5
0.01
0
測定:間隙変化法(1MHz)
2.0
シロキサン量(a. u.)
図2
high
0.00
SPAIのシロキサン変性量と弾性率,Tg(DVE)および耐熱性
シロキサン変性により弾性率,Tgは低下するが,耐熱性は保持できる。
Fig. 2 Effect of the siloxane content on elastic modulus, Tg, and heatresistance
Elastic modulus and Tg decrease with increasing siloxane modification, but
heat-resistance remains constant.
30
tan δ
500
図3
SPAIのシロキサン変性量と電気特性
シロキサン変性によりε,
tanδを下げられる。
Fig. 3 Electrical properties of SPAI film with varying siloxane contents
Dielectric constant and dissipation factor decrease with increasing siloxane
modification.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
ポキシ樹脂を反応させることで,架橋構造を形成する熱硬化
(4)透湿性
図5にシロキサン量と透湿量の関係を示した。透湿量はJIS
性樹脂とすることができる。
Z 5250(カップ法)で測定した。フィルムの透湿量は,水蒸気
図7にSPAIとノボラック型エポキシ樹脂の混合物(当量比
が固相中を拡散するたやすさを反映しているが,SPAIフィル
3/1)を所定温度で加熱した樹脂の粘弾性特性を示した。硬化
ムの透湿量はシロキサン量とともに増加することがわかった。
温度180℃で処理しても,Tg(tanδmax値)はより高い
これはシロキサンが主鎖を内側に向けたらせん構造をとるた
200℃を示した。SPAIのアミド当量は非常に大きいので硬化
めに,シロキサン部分の分子間相互作用が小さくなり,SPAI
剤として配合するエポキシ樹脂は実際は少量となるため,図
のモル体積が増加して水などの低分子が膜内を拡散しやすく
7は主にSPAI自体の粘弾性変化(Tg:255℃)を反映してい
なるためと考えられている 2)。図4でフィルム形成時に低温
ると考えられる。硬化後の樹脂をNメチルピロリジノンに漬
でフィルムの低揮発分化が図れたのも,この作用が働いてフ
浸しても溶解しないので,架橋が起きていると考えられる。
ィルム内部からの溶剤の揮発が持続するためと考えられる。
また,硬化温度を高くするとTgは上昇し,255℃の硬化温度
で使用したベース樹脂のSPAI単独とほぼ同じTgを示した。
〔3〕 熱硬化系の導入
(2)接着性
図8にシロキサン量を変えたSPAI/エポキシ樹脂系の接着
(1)アミド基とグリシジル基の反応
図6にSPAIの熱硬化系形成モデルを示した。一般にアミド
性を示した。表面粗さの異なる銅箔(はく)に対する接着性
基とエポキシ基は熱により挿入反応または付加反応を起こす
を比較すると,一般的な銅箔粗化面(Rz=8.0)や低粗度銅箔
ことが知られている3),4)。SPAI主鎖中のアミド基と多官能エ
アミド基とエポキシ基の反応
80
60
VC(%)
C N
溶剤:N-メチルピロリジノン
厚み:80µm
乾燥温度:150℃
O H
+
C N
H2C CH
O
O CH2
付加反応
HO CH
H
C O C CH2 N
シロキサン量
O
挿入反応
H
SPAI
SPAI主鎖中のアミド基
40
加熱
high
Ep
多官能エポキシ樹脂
20
架橋構造形成
0
0
20
40
乾燥時間(m)
図6
60
熱硬化系の形成
アミド基とエポキシ基は加熱により挿入反応また
は付加反応を起こす。SPAIと多官能エポキシ樹脂を組み合わせて熱硬化系を
構築できる。
図4 シロキサン変性量の異なる樹脂フィルムの乾燥時間と残存揮
発分(VC) 高沸点溶剤でも乾燥性に優れる。シロキサン量の多い樹脂の
方が乾燥性が高い。
Fig. 4 Volatile content versus drying time for films with various siloxane
contents
Low-volatile-content films can be obtained even from the varnish containing
high-boiling-point solvent such as N-methylpyrolidinone. The rate of drying
increases with increasing siloxane content.
Fig. 6 Formation of the thermosetting system
Amide group reacts with epoxy group by insertion or addition under heating.
The mixture of multifunctional epoxy resin and SPAI forms a thermosetting
system.
104
103
103
102
3.0
透湿量(g)
2.5
2.0
シロキサン量
1.5
102
101
180℃
101
255℃
100
100
10−1
硬化時間:60min(1h)
1.0
10−1
0
100
0.5
図7
0.0
0
図5
230℃
tan δ
弾性率(MPa)
ベース樹脂
high
20
40
試験時間(h)
SPAIフィルムの透湿量
60
80
200
温度(℃)
300
SPAI/エポキシ樹脂系の硬化温度と弾性率
10−2
400
SPAI/エポキシ樹脂
系は180℃の硬化でTg:200℃を示す。また255℃/1hr硬化で,使用したSPAI単
独と同程度のTgを示す。
シロキサン量の多いフィルムほど透湿量
は大きくなる。
Fig. 5 Moisture permeability of SPAI films
Higher siloxane content affords higher moisture permeability.
Fig. 7 DVE charts of SPAI/epoxy resin mixture at various curing temperatures
The cured resin will offer a Tg of 200℃ after heat treatment at 180℃. It can
attain nearly the same Tg as that of the pure base SPAI, by treating at 255℃ for
1 hour.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
31
表2 SPAIを使用した接着
剤の特性 SPAIを使用した接
着剤は優れた耐熱性と接着性を
フィルム特性
有する。
Table 2 Properties of SPAI
adhesives
SPAI adhesives have
excellent adhesion and heat
resistance.
項目
単位
弾性率
MPa
Tg
(90度ピール)
kN/m
はんだ耐熱性
1%熱重量減少温度
耐熱性
DVE
℃
接着強度
接着性
条件
絶縁抵抗
常態
吸湿
光沢面
0.9
1.5
1.1
1.3
ポリイミドフィルム
1.2
1.5
所定温度で60sec浸漬
300≧
300≧
380
380
420
410
TG-DTA
23℃/24h浸漬
0.8
0.8
−
1×1013
4×1011
40℃/90%/1h
1×1012
3×1010
Ω
−
誘電正接
1MHz
3.4
3.2
1GHz
3.1
2.9
1MHz
0.020
0.015
1GHz
0.010
0.008
減量なし
減量なし
10%HCI
耐薬品性
10%NaOH
−
125
粗化面
誘電率
電気特性
800
200
電解銅箔
℃
%
低弾性タイプ
1,600
電解銅箔
5%熱重量減少温度
吸水率
高弾性タイプ
23℃/24h浸漬
メチルエチルケトン
減量なし
減量なし
減量なし
減量なし
の粗化面(Rz=5.5)では1.5kN/m以上の接着強度を示し,シロ
基を備えており,これらの基が低粗度の被着体に対する接着
キサン量による差も小さかった。またイミド系プリプレグや
性に関与していると考えている 5)。このような接着機構に関
エポキシ系プリプレグでは0.1〜0.2kN/mの接着強度しか得ら
しても現在,表面の官能基の濃度や分布,樹脂のモルホロジ
れなかった,銅箔の光沢面(Rz=2.0)や極低粗化箔面(Rz=1.8)
ーなどの点から解析を進めているところである。
に対しても,0.8〜1.0kN/mの接着強度を得られることがわか
本接着剤(SPAI/エポキシ樹脂系)の特性をまとめて表2
った。これらの接着面に対しては,接着強度のシロキサン量
に示した。ポリイミドフィルムと銅箔の本接着剤による積層
依存性が顕著に見られることから,シロキサン量に最適値が
品のはんだ耐熱性は,300℃/60秒まで問題なかった。樹脂硬
あるものと考えている。従来,銅箔と樹脂の接着においては,
化物の耐薬品性については,24時間のフィルム浸漬試験を行
銅表面の粗化形状に起因するアンカー効果の寄与が大きいと
い,10%HCl,10%NaOHなどの酸,アルカリやメチルエチル
いわれてきた。最近,銅箔メーカーでは配線の微細化に対応
ケトンで質量減少を示さず耐性があることがわかった。
するため,低粗度の銅箔が開発されているが,従来材との組
み合わせで強固な接着力を得ているものは少ない。
ここに紹介したシロキサン変性ポリアミドイミドは,高接
着性,高耐熱性を特長とする,半導体,配線板分野向けの新材
このほか,SPAI/エポキシ樹脂系は硬化物にスパッタした
金属や,ポリイミドの未処理面のような有機材料に対しても
接着性を示すことがわかった。SPAI/エポキシ樹脂系は化学
接着に関与するといわれているアミド基や水酸基などの官能
料として,KS6000,9000シリーズの名称で上市の予定である。
〔4〕 結
言
芳香族ポリアミドイミドに可とう性を付与するソフトセグ
メントとして,シロキサンを広範囲に変性できる合成技術を
確立した。シロキサン量を変えることにより,弾性率,誘電
2.5
率,透湿性を制御できる。また主鎖中のアミド基と多官能エ
ポキシ樹脂の反応を利用し,熱硬化性樹脂とすることができ
銅箔粗化面Rz=8.0
る。接着剤としては,平滑な被着体とも高い接着性を示すこ
2.0
接着強度(kN/m)
とがわかった。
1.5
開発したシロキサン変性ポリアミドイミドは,配線板分野,
銅箔粗化面Rz=5.5
半導体分野で広く利用可能な,接着性,耐熱性に優れる次世
代の樹脂と考えている。接着機構の解明,硬化反応の解析な
銅箔光沢面Rz=2.0
どの基礎技術と並行して,幅広い用途展開を進めている。
1.0
cf:Rz≦2.0では
従来エポキシ系プリプレグ
従来イミド系プリプレグとも
0.1〜0.2kN/m
0.5
銅箔Rz=1.8
0.0
high
参考文献
1)T.Juhola, B.Kerzar, M.Mokhtari, and L.F.Eastman: High
Performance Chip to Substrate Interconnections Utilizing
Embedded Structure, Proceedings of ECTC, 167(1999)
シロキサン量(a. u.)
2)シリコーン材料ハンドブック,東レ・ダウコーニング株式会社
図8
SPAI/エポキシ樹脂系の接着性
SPAI/エポキシ樹脂系は表面粗さ
(Rz)の小さい銅箔に対しても高い接着性を示す。
Fig. 8 Peel strength between SPAI/epoxy resin adhesives and copper foils
SPAI/epoxy resin adhesives have excellent peel strength even for such
smooth surfaces as that of smooth-finish copper foil or the shiny side of copper
foil.
32
(1993)
3)西久保忠臣:有機合成化学協会誌,49,218(1991)
4)堀内猛,野本雅弘,七海憲:熱硬化性樹脂,16,199(1995)
5)S.Maeda : Role of Acid Base Interaction in Adhesion, Journal of the
Japan Society of Colour Material, 70, 526(1997)
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
771.531.32:[621.315.619.3.049.75:621.793.3]
無電解Ni/Au部分めっき用感光性フィルムH-8050
Photosensitive Film H-8050 for Selective Electroless Ni/Au Plating
沢辺 賢* Ken Sawabe
青木知明** Tomoaki Aoki
赤堀聡彦* Toshihiko Akahori
梶原卓哉** Takuya Kajiwara
高密度と耐落下衝撃性の双方が求められる携帯電話用基板の製造において,無電解
Ni/Auめっきを部分的に保護する工法が提案されている。この工法に必要となるめっ
き耐性とソルダーレジスト上剥(はく)離性などを満足させる感光性フィルムの開発
を行った。まず,フィルム配合成分について詳しく調べ,汚染性や他特性をよく吟味
して配合設計することによって低汚染性を達成した。さらに,動的粘弾性解析
(DMA)によって硬化フィルムの架橋密度を求め,めっき耐性や剥離性との関係を調
べた結果,双方の両立が可能なことを見いだした。以上に基づき組成を最適化し,架
橋密度を精密に調整することで,この工法に専用の感光性フィルムH-8050を開発し
た。
A new process has been proposed in manufacturing PWBs which require both high
density wiring and excellent drop-impact resistance to be used for such portable
electronic devices as cellular phones. The process is called ‘selective plating,’ which
means that a portion of the circuits is protected from electroless Ni/Au plating and the
rest is plated selectively. We have developed a new photosensitive film, which meets the
requirements of plating performance and perfect stripping from the solder resist.
Through the detailed examination of the film conformation, minimal contamination to
the plating was achieved, taking overall properties into consideration. In addition, the
cross-link density of the exposed film was calculated from dynamic viscoelasticity
measurement. It was proved that the optimized cross-link density can realize high
plating resistance and superior readily-stripping features at the same time. Through the
optimization of the film conformation and cross-link density, we succeeded in
developing a new masking film, H-8050, just suitable for applying to the selective plating
process.
〔1〕 緒
言
プリント配線板の小型化・高密度化,さらには電子部品の
表面実装への適用に伴って,電解めっきから無電解めっきへ
回路形成
の移行が,特に携帯電子機器用基板において急速に進行して
いる。無電解めっきは電極用リード線が不要で,均一なめっ
き膜厚および平滑な表面が得られるなどの特長を備えてい
ソルダーレジスト形成
る。しかしながら,最近携帯電子機器用基板で,落下衝撃や
入力キーを押す力による曲げによって,CSPやBGAなどの実
レジスト形成
装部品が基板表面から脱落しやすいなどの問題が発生してい
る。すなわち,無電解めっき法によるプリント配線板は,従
来の電解めっき法による配線板と比較すると,はんだボール
接続信頼性が低いという問題があった。
無電解Niめっき
図1 部分めっきの工程
概略図 部分めっき工法によ
そこで,以下のプロセスが考えられた。プリント配線板上
ってはんだ接続信頼性に優れ
の回路導体のうち,まず部品搭載やめっき加工を行う領域を
除いた配線板の全面に,ソルダーレジストを形成する。その
置換Auめっき
造することができる。
後,感光性フィルムを積層し,パッドの部分などのめっきに
よる金属の付着が望ましくない領域を被覆するようにパター
ン露光し,未露光部を現像する。現像後の処理として,必要
に応じて後硬化を行う。次いで,得られたレジストパターン
をマスクとして,必要な部分にのみ金属めっき加工を行う。
*
当社 総合研究所
**
た高密度プリント配線板を製
レジスト剥離
Fig. 1 Conceptual diagram
of selective plating
Selective plating will realize
finer and denser printed
wiring boards with good
solder joint reliability.
当社 配線板材料事業グループ 感光性フィルム事業部門
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
33
そうすることによって,実装部品の接続信頼性に優れたプリ
を90℃で 5 時間抽出した結果,従来品Aはブランクと比較し
ント配線板を製造することができる 1)。このプロセスは一般
てめっき液の着色が大きいことがわかった。このめっき液を
に部分めっき工法と呼ばれ,携帯電話基板への適用検討が急
用いてテスト基板にNiめっきまで行ったところ,図2に示し
増している。図1に部分めっきの工程概略図を示した。ここ
たようにブランクでは正常にめっきされているのに対し,着
で,ビアをマスクしたレジストをテンティングの形で例示し
色が大きいめっき浴からはめっきが全く析出せず,従来品A
たが,高流動のフィルムの使用やフィルム積層方法によって
はめっき浴を汚染しやすいことがわかった。
は,ビアを埋め込む場合もある。
そこで次に,フィルム材料をそれぞれ添加しためっき浴に
この工法で必要とされるレジスト特性は,①めっきの析出
ついて,めっきへの影響(析出するNiめっきの膜厚およびめ
に悪影響を与えないこと,②高温めっき条件で十分な耐性を
っき外観)を調べた。測定値の一例を表1に示した。その結
持っていること,③ソルダーレジスト上からの剥離が良好な
果,①フィルムの主成分であるバインダーポリマおよび架橋
こと,などである。また,工程簡略化のため現像後の後露光
剤はめっき浴に対する影響が少ないこと,②一部の光重合開
や後加熱が必要ないことも強く望まれている。本研究では上
始剤やいくつかの添加剤はめっき浴を汚染しやすいこと,な
記工法専用に設計を行い,現像後の後露光や後加熱がなしで
どがわかった。この結果を基に汚染性や他特性をよく吟味し
も,めっき浴を汚染しにくく,めっき耐性およびソルダーレ
て配合設計を行い,低汚染性を達成した(図2,試作A)
。
ジスト上での剥離性においても優れた,専用マスクフィルム
を開発したので報告する。
表1
〔2〕 めっき浴に対する影響
フィルム配合材料の影響(測定値の一例)
一部の光重合開始
剤やいくつかの添加剤はめっき浴を汚染しやすい。
無電解めっきは,浴中の金属イオンを還元剤の作用によっ
て基材上に析出させる化学反応なので,浴中に混入した化合
Table 1 Influence of film ingredients on the plating performance (an example)
A photoinitiator and several additives exert adverse influence on the plating.
物の影響をかなり受けやすいと考える。したがって,光化学
材
料
Ni膜厚(µm)
めっき外観*
的に活性な成分を含むレジストにとってめっき浴への影響は
バインダーポリマA
5.3±0.6
○
避けて通れない課題である。
バインダーポリマB
5.3±0.5
○
架橋剤A
4.9±0.4
○
回路形成用フィルムの従来品についてめっき浴に対する影
響を把握するために,露光したフィルム(0.5m2/L)から成分
抽出浴
めっき外観
従
来
品
A
架橋剤B
4.7±0.4
○
光重合開始剤A
5.0±0.6
○
光重合開始剤B
3.9±0.1
×
光重合開始剤C
5.2±0.5
○
添加剤A
5.1±0.5
○
添加剤B
5.6±0.5
○
添加剤C
3.9±0.6
×
添加剤D
不析出
×
添加剤E
4.8±0.3
○
ブランク
5.2±0.5
○
注) :めっき外観良好…○,めっき外観不良…×
*
めっき液の着色:大
Niめっき不析出
めっき液の着色:小
ブランクと同等
試
作
A
(ラミネート方向→)
ブ
ラ
ン
ク
レジスト
ふくれ発生
→
破れ
液しみ込み
ソルダーレジスト
0.5mmφビア
(a)現像後
−
基材
(b)めっき後
−
図3 (a)現像後と(b)めっき後のレジスト観察
めっき後にレジス
トはビア上で大きくふくれ,その後,レジストの破れやめっき液のしみ込みを
図2
汚染性評価結果
汚染性や他特性をよく吟味して配合設計を行い,
低汚染性を達成した。
Fig. 2 Results of evaluation of the contamination
Low contamination was achieved by taking overall properties into
consideration in designing the film conformation.
34
引き起こす。
Fig. 3 Observation of the resist layers (a) after development, and (b) after
successive plating
The resist layer bulges over the via hole after plating, followed by the
cracking of the layer and the invasion of the plating solution.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
さらに,架橋剤組成を最適化することで同じ露光量での架橋
〔3〕 めっき耐性の向上
密度を大きくでき,めっき耐性を良好にできることがわかっ
図3に典型的な不具合の例を示した。耐性が不十分なレジ
ストはめっき工程後にビア上で大きくふくれ,その後,レジ
ストの破れやめっき液のしみ込みを引き起こすことがわかっ
た(図5,試作CおよびD)
。
〔4〕 ソルダーレジスト上剥離性の向上
架橋密度の増大とともに,無電解めっき条件下でのレジス
た。
まず,ビアに対する埋め込み性とめっき耐性との関係を調
ト耐性は良好になる一方で,ソルダーレジスト上からの剥離
べたところ,真空ラミネータを用いてビア部の空隙をなくし,
時間は長くなり,レジスト剥離性は低下することがわかった。
埋め込み性を改善すると,レジストのふくれがなくなりめっ
そこで,架橋剤成分を精密に調整し,図6に示したように光
き耐性が向上することがわかった。ビアに対する埋め込み性
硬化後の架橋密度を330mol/m 3程度に制御することで,無電
を比較した断面写真を図4に示した。
解めっきに耐え,かつソルダーレジスト上から剥離しやすい
次に,レジスト組成中の架橋剤成分がめっき耐性に与える
影響を調べた。結果を表2に示した。特に脂肪族系架橋剤B
ように組成設計した。なお,ソルダーレジストとして液状タ
イプのフォトレジスト(乾燥後膜厚25µm)を用いた。
はめっき後にレジスト表面の光沢がなくなり,著しく耐性が
また,配合成分によってはソルダーレジスト上から完全に
低下したが,芳香族系架橋剤などはめっき耐性が良好である
剥離できずに剥離残りが発生しやすい傾向があった。この原
ことがわかった。
因はフィルムレジストとソルダーレジストが類似した組成物
また,動的粘弾性解析(DMA)によって硬化フィルムの架
橋密度を求め,めっき耐性との関係を調べてみた。ここで架
橋密度はDMA測定チャートから得られたゴム領域における貯
蔵弾性率を用いて求めた2),3)。
試作B
試作C
試作D
従来B
露光量と架橋密度の関係を調べてみると,図5に示したよ
うに架橋密度は露光量の増加とともに大きくなるが,架橋密
度を大きくすればめっき耐性が良好になることがわかった。
500
通常ラミネータ使用
架橋密度(mol/m3)
めっき耐性良好
真空ラミネータ使用
400
300
200
めっき耐性不良
100
0
空隙あり
空隙なし
めっき耐性不良
めっき耐性良好
図5
0
100
露光量と架橋密度
200
露光量(mJ/cm2)
300
架橋密度を大きくすることでめっき耐性が良好
になる。
図4
埋め込み性(0.5mmφビア)
埋め込み性を向上させることでめ
っき耐性を向上できる。
Fig. 5 Exposure dose vs. cross-link density
Higher cross-link density results in higher plating performance.
Fig. 4 Conformability to the shape of the 0.5mmφ via hole
Good conformability results in high plating performance.
140
架橋剤組成の検討結果
めっき耐性
備えている。
Table 2 Results of evaluation of the cross-linkers
Aromatic cross-linkers yield good plating performance.
架
橋
120
芳香族系架橋剤などは良好なめっき耐性を
剤
100
4
80
3
60
めっき耐性*
2
40
1
20
芳
香
族
系
架
橋
剤
A
4〜5
芳
香
族
系
架
橋
剤
B
4〜5
脂
肪
族
系
架
橋
剤
A
3〜4
脂
肪
族
系
架
橋
剤
B
3
ウ レ タ ン 系 架 橋 剤 A
4〜5
ウ レ タ ン 系 架 橋 剤 B
3〜4
エポキシアクリレート系架橋剤A
4〜5
エポキシアクリレート系架橋剤B
4〜5
注)*: 5 段階評価で数値が大きいほど良好
5
0
200
図6
300
架橋密度(mol/m3)
架橋密度とめっき耐性および剥離性
400
剥離時間(s)
表2
0
架橋密度を最適化すること
でめっき耐性と剥離性が両立可能となった。
Fig. 6 Cross-link density vs. plating performance and stripping property
Optimized cross-link density can realize both high plating performance and
readily-stripping feature at the same time.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
35
表3
剥離残りなし
剥離時間(s)
160
H-8050の特性(測定値の一例)
剥離残りあり
Table 3 Properties of the H-8050 film (an example)
The H-8050 film has both minimal contamination effect to the plating and
superior readily-stripping features.
120
項
H-8050
従来C
感光層膜厚(µm)
49
47
感度(mJ/cm2)*1
70
95
最小現像時間(s)*2
40
33
95
90
80
40
剥離終了
剥離開始
目
めっき汚染性(Ni膜厚比;%)
*3
めっき耐性*4
0
0.4
0.5
0.6
0.7
架橋剤C量/架橋剤総量(質量比)
0.8
配合組成と剥離性の検討例
配合組成を最適化することで,剥離
残りがなくなる。
Fig. 7 Influence of film composition on the stripping readiness (an example)
Optimizing the film composition leads to no residue after stripping.
○
○
ソルダーレジスト上
時間(s)
117
125
剥離性*5
剥離残り
なし
僅少あり
なし
あり
後硬化の必要
図7
H-8050は低めっき汚染で,ソル
ダーレジスト上剥離性に優れる。
注) :ST=23/41を示す露光量
*2
:1wt% Na2CO3水溶液(30℃)使用
*3
:Ni膜厚のブランクに対する比率
*4
:○;レジスト破れなし
*5
:3wt% NaOH水溶液(50℃)使用
*1
で構成されているので,フィルム中の成分がソルダーレジス
参考文献
トの方へ移行しやすいためと考える。例えば,図7に示した
1)Y. Watanabe:PWB Surface Finish Process Development to
ように架橋剤総量に占める架橋剤Cの量が多くなると剥離残
Enhance the Reliability of the Solder Joint Strength, 2001
りが発生し,架橋剤Cはソルダーレジストの方へ移行しやす
International Symposium on Advanced Packaging Materials, 165-
いと考える。このようにソルダーレジスト上の剥離残りには
フィルム配合成分が大きく影響していることがわかり,配合
組成を調整することで,ソルダーレジスト上剥離性を向上さ
せた。
〔5〕 結
170(2001)
2)M. Ogata et al:Effects of Crosslinking on Physical Properties of
Phenol-Formaldehyde Novolac Cured Epoxy Resins, J. Appl.
Polym. Sci., 48, 583-601(1993)
3)名取,外:DMAを用いたフォトレジストの光橋架け度解析,第50
回ネットワークポリマー講演討論会要旨,205-208(2000)
言
フィルム配合成分について詳しく調べ,汚染性や他特性を
よく吟味して配合設計することで,低汚染性を達成した。さ
らに,硬化フィルムの架橋密度を求め,めっき耐性や剥離性
との関係を調べた結果,双方の両立が可能なことを見いだし
た。以上に基づき組成を最適化し,架橋密度を精密に調整す
ることによって,低めっき浴汚染性を備え,めっき耐性およ
びソルダーレジスト上での剥離性にも優れた,部分めっき専
用フィルムH-8050を開発した。開発品の特性を表3に示した。
開発品は現像後の後硬化が不要の設計であるので,作業性・
生産性に優れる。
36
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
U.D.C.
[621.372.82/.83.029.72:681.7.037].001.2
ポリマ光導波路設計技術
Polymer Optical Waveguide Design Technology
増田 宏* Hiroshi Masuda
柴田智章* Tomoaki Shibata
井戸立身** Tatemi Ido
高橋 誠** Makoto Takahashi
近年,インターネットのブロードバンド化が進み,一部ではFTTH(Fiber To The
Home)サービスが2001年から開始された。現在,ブロードバンドの中心はADSL
(Asymmetric Digital Scriber Line)であるが,ブロードバンド化が進みコンテンツの
拡充に合わせて,さらなるアクセス系の高速化,その中でもFTTH化による高速化が
進むと考えられる。そのような市場環境の中,来る市場拡大期に柔軟にかつすばやく
対応すべくポリマ光導波路の設計力の向上を図ってきた。本報告では,設計力向上の
ための具体的な対象例として,ATM-PON(Asynchronous Transfer Mode based
Passive Optical Network)用波長分波器を取り上げ,設計・試作・評価を行った結果
について述べる。
The Internet has been becoming broadband in recent years. In addition, FTTH (Fiber
To The Home) services have been provided in some areas since 2001. Although
currently services are provided through ADSL (Asymmetric Digital Scriber Line), faster
lines are needed such as FTTH to provide broadband services. We are developing an
ability of polymer waveguide desigh to provide broadband services in near future. In this
report, we describe the results of designing, fabricating and evaluating a wavelength
division multiplexer/demultiplexer for ATM-PON (Asynchronous Transfer Mode based
Passive Optical Network), as a sample.
〔1〕 緒
言
〔2〕 波長合分波器の基本設計
電話回線などの情報通信インフラでは,これまで幹線系と
ATM-PONは,上りに波長1.3µm帯の光を下りに1.5µm帯の
呼ばれる長距離の伝送において伝送容量の増大に対応するた
光を用いた加入者系の波長多重光通信システムであり,その
め光化が進められてきた。特に近年では,インターネットの
仕様はITUにおいて標準化されている4)。これまでに加入者側
爆発的な普及に伴う情報の急激な伸びに対応するため,波長
に設置されるATM-POM向け波長合分波モジュールとしてハ
多重方式による伝送容量の拡大が,主に米国の幹線系や海底
イブリッド光導波路基板を用い,送信用LD(Laser Diode)
通信を中心に進められてきた。一方,各家庭やオフィスにつ
と受信用PD(Photo Diode)を 1 チップ上に集積化したモジ
ながるアクセス系と呼ばれる中短距離の伝送系では電話モデ
ュールが報告されている5)〜10)。図1にその 1 例を示す。この
ムを中心とした低速の伝送方式であった。しかし,近年,ブ
ようなモジュールではLDおよびPDをパッシブアライメント
ロードバンド化の波が押し寄せて日本でもADSLサービスを
により搭載することで実装コストを低減できる反面,一般に
開始し,急激に利用者が増えている 1)。また,さらなる高速
は入手が容易でないスポットサイズ変換器付きLDおよび導波
化の要望に対応可能なFTTHサービスも2001年から一部で開
路型PDが必要であり5)〜7),組立可能な顧客が限定されるとい
2)
始されており ,光化の波は幹線系からメトロ系,さらには
う課題があった。先に述べた市場規模を考えると,数百万個/
アクセス系へと進み始めた。現在のブロードバンドの中心は
年の需要があり,特殊な光素子を用いたのではニーズに対応
低価格が魅力のADSLであるが,ブロードバンド化が進み動
しきれないと考えられる。また,従来の方式では,LDとPD
画などのコンテンツの拡充に合わせて,さらなるアクセス系
を同一基板上に対向して搭載するため,LDからの出射光が
の高速化,その中でもFTTH化が急激に進むと考えられる。
PDに入射することで生じる光クロストークの低減が難しく,
日本政府が発表しているE-Japan計画3)では,2005年までにそ
課題となっていた5)。
のような市場環境が顕在化して立ち上がると予想されてい
そこでこれらの課題を解決するため,図2に示すような,
る。この市場拡大期に,ポリマ光導波路が顧客ニーズにすば
光ファイバを介してPDおよびLDをポリマ光導波路基板に接
やく対応できるようにするため,ポリマ光導波路の設計力の
続する構造としたファイバ入出力型波長合分波器を提案し,
向上を図ってきた。本報告では,設計力向上のための具体的
その設計・試作・評価を行った。本構造で用いられるLDや
な対象例として,ATM-PON用波長合分波器を取り上げ,設
PDはすでに大量に出回っている安価な 2 芯(しん)型のトラ
計・試作を行った結果について述べる。なお,この波長合分
ンシーバを流用することを考えている。本構造ではLDおよび
波器は,将来の市場拡大期に多くのメーカーが光トランシー
PDを導波路と結合するときにシングルモードファイバを用い
バ事業に参入すると予想し,従来報告されているような特殊
るため,入力時のもれ光(導波路コアに結合しない光)が少な
な光素子を用いないことを特長に設計したものである。
く,さらにPDにもれ光が入りにくいため,光クロストーク低
*
当社 総合研究所
**
株式会社日立製作所 中央研究所
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
37
1.3µm
スポットサイズ
変換器付きLD
(a)
1.3µm
1.55µm
波長選択フィルタ
モニタPD
(1)
Si基板
1.55µm
導波路型PD
SiO2
波長選択フィルタ
(1)
モニタPD
(3)
1.55µm
導波路型PD
1.3µm
(2)
1.55µm
図1
形態
(2)
(a)LPF(1.3µm光反射/1.55µm光透過)
1.3µm
スポットサイズ
変換器付きLD
(b)
(3)
従来型のATM-PON向けモジュール (a)外観図と(b)使用
(b)SPF(1.3µm光透過/1.55µm光反射)
光導波路基板上にPDとLDがパッシブ実装されている。光ファイバを通
ってきた波長1.55µmの光信号は波長選択フィルタを透過してPDで受光され
図3 (a)LPF使用時および(b)SPF使用時の光路
る。一方,LDからは波長1.3µmの光信号が出射され,波長選択フィルタで反射
ィルタにより光ファイバの両端で入射および出射する光の波長が反対になる。
されて光ファイバに入る。従来のモジュールではPD,LDとして導波路型PDや
光ファイバから入射および光ファイバに出射する光の波長に合わせてフィルタ
スポットサイズ変換器付きLDという特殊なものが用いられている。
にLPFおよびSPFを使い分ける。
Fig. 1 Conventional module for ATM-PON systems; (a) schematic structure
and (b) application
The PDs and LD are mounted on the waveguide by passive alignment.
Optical signals with a 1.55-µm wavelength transmitted through optical fiber
pass through the wavelength division multiplexing filter and are detected by a
PD. 1.3-µm optical signals from LD are reflected by the filter, and guided to the
optical fiber. In this case, special PD and LD are used, called waveguide-type
PD and spot-size converted LD.
Fig. 3 Schematic of optical pass when (a) LPF is used and (b) SPF is used
The input and output wavelengths of optical signals at both ends of optical
fiber are reversed by using different filters. Either an LPF or an SPF filter can
be used depending on the wavelength of optical signals.
使用する波長フ
を反射し,1.55µm光を透過するLPF(Long Pass Filter)と逆
に1.55µm光を反射し,1.3µm光を透過するSPF(Short Pass
Filter)の 2 種類を用いた。なお,フィルタはポリイミドフィ
(a)
ルム上に 2 種類の誘電膜を多層化したもので,全体の厚さは
波長選択フィルタ
V溝
14〜16µmである。図3に各フィルタを使用したときの光路
V溝
を示す。なお,設計上の注意点として分岐位置にはフィルタ
の屈折率を考慮し,光路にオフセットを設けた。ポリマ光導
波路は熱酸化膜付きシリコン基板上に屈折率の異なるフッ素
Si基板
SiO2
(b)
1.3µm
LD
化ポリイミドをスピンコート塗布し作製した11)。コアサイズ
は6.5µm×6.5µm,コアとクラッドの比屈折率差は0.4%,曲
1.55µm
PD
がり導波路はraised sine曲線とし,曲がりによる光の放射損
失が0.1dB以下になるように設計を行った。
光ファイバ
光ファイバ
表1にLPF使用時の挿入損失計算値を示す。反射ポート間
(1.3µm光の光路)の挿入損失は1.5〜1.9dB,透過ポート間
1.3µm
V溝にてファイバを
アライメント・固定
1.55µm
波長選択フィルタ
(1.55µm光の光路)の挿入損失は1.3〜1.5dBと算出した。ま
た波長選択フィルタをSPFとしたときの挿入損失については,
1.3µm光および1.55µm光の光路がLPF使用時と異なることを
図2 今回試作したATM-PON向け波長合分波器 (a)外観図と(b)
使用形態 光ファイバを介してPDおよびLDを波長合分波器に接続し,光フ
ァイバは光導波路基板に形成されたV溝をガイドとして固定される。この場合
には,PDおよびLDとして汎用品を用いることができる。
考慮し,反射ポート間(1.55µm光の光路)の挿入損失を1.6
〜2.0dB,透過ポート間(1.3µm光の光路)の挿入損失を1.2
〜1.4dBと見積もった。
本ポリマ光導波路基板はATM-PON向けであるが, 1 芯双
Fig. 2 Fabricated wavelength multiplexer/demultiplexer for ATM-PON
systems; (a) schematic structure and (b) application
LD and PD are connected to the multiplexer/demultiplexer by optical fiber.
The optical fiber is mounted on the V-grooves. In this case, conventional PD
and LD can be used.
方向の通信システムを使用している他の用途,例えば近年
FTTH(Fiber To The Home)に使用され始め普及が見込まれ
ているメディアコンバータ12)や,IEEE 802.3 EFM(Ethernet
in the First Mile)Study Groupにより現在標準化が進められて
いるEPON(Ethernet Passive Optical Network)の1.3/1.55µm
減が狙える。目標とした光クロストーク値は−45dB以下であ
る。ここで,光ファイバをアライメント・固定するための方法
としてシリコンの異方性エッチングで形成したV溝を用いた。
本構造において1.3µm光と1.55µm光の分波は,図2におい
て分岐位置に溝加工を行い,波長選択フィルタを挿入するこ
とで行う。波長選択フィルタは誘電体多層膜型で,1.3µm光
38
波長合分波用基板としての使用が可能であると考えられる。
〔3〕 波長合分波器の作製プロセス
ポリマ光導波路基板を用いた波長合分波器の作製プロセス
を図4に示す。
(1)−(2) 熱酸化膜およびV溝が形成されたシリコン基板
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
表1 LPF使用時の挿入損失
計算値(単位:dB) 損失要
光路
LPF使用時
因ごとに値を見積り,それらの和
である挿入損失を求めた。
項目
Table 1 Calculated Insertion
loss (dB) with LPF
Optical losses in each factor
were estimated. Then, the
insertion loss was calculated as a
sum of them.
SPF使用時
反射ポート間
透過ポート間
反射ポート間
透過ポート間
(1)→(2)
(2)→(3)
(1)→(2)
(2)→(3)
条件
(λ=1.3µm) (λ=1.55µm) (λ=1.55µm) (λ=1.3µm)
設計値
設計値
設計値
設計値
導波路伝搬損失
0.3
0.4
0.4
0.3
0.4dB/cm(1.3µm),
0.5dB/cm(1.55µm)
曲げ損失含む
導波路−ファイバ
結合損失
0.5〜0.7
0.5〜0.7
0.5〜0.7
0.5〜0.7
2ポート分
フ ィ ル タ 部
損
失
0.7〜0.9
0.4
0.7〜0.9
0.4
フィルタ溝位置ずれ
±4µm
1.5〜1.9
1.3〜1.5
1.6〜2.0
1.2〜1.4
合
計
上に下部クラッド層を塗布・ベークし,続いてコア層を
えることを目標とした。これは,図5から±4µm以内の加工
塗布・ベークする。
精度に対応する。
(3) ホトレジストのコアマスクを形成し,RIE装置を用
いてコアパターンをエッチングする。
(4)−(5) 上部クラッド層によりコアを埋め込む。その
後V溝領域部分を露出させる。
〔4〕 波長合分波器の評価
波長合分波器の特性に大きな影響を与えるフィルタ挿入溝
の加工位置精度および波長合分波器の損失特性を評価した。
(6) 波長選択フィルタ挿入用の溝を形成した後,各個片
にダイシングにより切り出す。最後に波長選択フィルタ
をフィルタ溝内に挿入する。
それらの方法について以下に示す。
4.1 フィルタ挿入溝加工位置精度の評価
ダイシングにより形成したフィルタ挿入溝の加工位置精度
本作製プロセスにおいて,波長合分波器の特性を大きく左
を調べるために,ポリマ光導波路基板作製後,フィルタ溝加
右する要因の一つが上記フィルタ挿入溝の加工位置精度であ
工位置の合わせマーク間中心からのずれを測定した。
る。図5にフィルタ挿入溝の位置ずれによる損失増加をシミ
4.2 波長合分波器の損失およびクロストーク特性評価
ュレーションで求めた結果を示す。フィルタ挿入溝の加工位
置がずれた場合,フィルタ部での反射損失が増加することか
自動調芯機を使用し,作製した波長合分波器の挿入損失,
PDL(Polarization Dependent Loss,偏波依存損失)および光
ら,高い位置精度が要求される。本波長合分波器においては
クロストーク特性を評価した。評価はV溝へのファイバ実装に
フィルタ挿入溝の位置ずれによる損失増加を0.2dB以下に抑
よって生じる損失増加を除外し,分波特性についてのみ評価す
るため,V溝領域を切り落とし,導波路領域のみの試料を用いた。
測定手順は以下のとおりである。
(1)
(1) 2 つのガラスブロック付きファイバを突き合わせ,光強
(4)
SiO2
上部クラッド層
V溝
度が最大(損失が最小)になるように自動調芯を行い,この
Si基板
1.8
(5)
コア層
(3)
1.6
下部クラッド層
(6)
反射損失(dB)
(2)
波長選択フィルタ
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.2dBの増加
0.4
0.2
0
−10
図4
ポリマ導波路基板を用いた波長合分波器の作製プロセス
−8
−6
−4 −2
0
2
4
ダイシング位置ずれ(µm)
6
8
10
光フ
ンコート・フォトリソグラフィ・RIE工程を中心としたプロセスにより光導波
図5 BPMシミュレーションによるダイシング位置ずれと損失の関
係 フィルタ挿入溝の加工位置がずれた場合,フィルタ部での反射損失が増
路を形成する。光ファイバ固定用のV溝は光導波路作製前に形成される。
加する。フィルタ挿入溝の位置ずれによる損失増加を0.2 dB以下に抑えること
Fig. 4 Fabrication of wavelength multiplexer/demultiplexer using a polymer
waveguide
Good conformability results in good plating resistance.
An optical waveguide is fabricated on a Si wafer by spin coating,
photolithography and RIE using fluorinated polyimide. V-grooves for optical fiber
mounting are formed on the Si wafer before waveguide fabrication.
を目標とした。これは、位置ずれが±4µm以内の加工精度に対応する。
ァイバのガイド用溝を形成したSi基板上にフッ素化ポリイミドを用いて,スピ
Fig. 5 BPM simulation results of the relationship between the dicing position
accuracy of the grooves for WDM filter and optical loss. When the shift from the
ideal position is large, the reflection loss increases. Our goal is to keep this
increase in optical loss within 0.2 dB. This means that the groove positioning
accuracy must be within 4 µm.
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
39
表2
評価結果のまとめ
光
挿入損失(dB)
の損失は計算値の範囲内にあり、
また、クロストークに関しては
フィルタ
信号光波長
目標値を上回る値が得られた。
Table 2 Optical characteristics
of fabricated maltiplexer/demultiplexer.
The measured insertion loss
was within the estimated value,
and the cross talk was much
better than we have expected.
計算値
(µm)
(
1.3
1.5〜1.9
1.55
1.3〜1.5
1.55
1.6〜2.0
1.3
1.2〜1.4
LPF
SPF
1.5
((1)→(2))
1.4
((2)→(3)
)
1.6
((1)→(2))
1.2
((2)→(3))
)内は非信号光の
光路および波長
0.40
−29(
(2)→(1)),1.55µm)
0.12
−76((1)→(3)),1.3µm)
0.16
−30((2)→(1)),1.3µm)
0.25
−68((1)→(3)),1.55µm)
透過ポート間では挿入損失の平均が1.2dB,PDLの平均が
6
個数(個)
(
)内は信号
光の光路
は挿入損失が平均1.6dB,PDLが平均0.2dBであった。一方,
7
0.3dBであった。また,1.3µm光を受光するポートへの1.55µm
5
光のクロストークは−68dBと十分なクロストーク特性が得ら
4
れている。LPF,SPFどちらを用いたものでも挿入損失は計
3
算値の範囲内にあり,設計どおりの波長合分波器が作製でき
2
た。またクロストークにおいても目標値を上回る十分なアイ
1
図6
PDL(dB)
また,SPFを用いた場合,反射ポート間(λ=1.55µm)で
8
0
クロストーク(dB)
実験値
ソレーションが得られることがわかった。
−1.9〜−1.0
−0.9〜0.0
0.1〜1.0
ダイシング位置ずれ(µm)
ダイシング位置ずれ測定結果
1.1〜2.0
〔6〕 結
試作した合分波器におけるダイシ
言
ATM-PON向け波長合分波器を具体的な対象例として導波
ング位置ずれは±2µmの範囲に抑えることができた。
路の設計,試作,評価という一連の作業を行い,設計力の向
Fig. 6 Experimental results of the position of the dicing grooves.
The positioning accuracy fabricated multiplexer/demultiplexer was within 2 µm.
上を図ってきた。試作した波長合分波器は特性として十分な
挿入損失およびアイソレーションが得られており,実用可能
なレベルであった。今後は,このような波長合分波器以外に,
1×4チャネル波長合波器や10Gbps× 4 チャネルのピッチ変換
ときの光出力パワーを基準(0dB)とする。
(2)導波路両端に上述のガラスブロック付きファイバを突き合
わせ,光強度が最大となるよう自動調芯を行う。なお,フィル
器なども設計・試作し,ポリマ光導波路の設計力の向上を図
っていきたい。
タからの反射光を測定する場合には,自動反射調芯を行った。
(3)光ロスアナライザを用いて1.3µmおよび1.55µmにおける
参考文献
挿入損失およびPDLを測定する。
1)マーケットシェアマンスリー,矢野経済研究所,1,pp. 24-28
〔5〕 結果と考察
(2002)
2)オプトロニクス,8,pp. 131-133(2001)
5.1 フィルタ挿入溝加工位置精度の評価結果
図6にフィルタ挿入溝のダイシング位置加工精度の測定結
果を示す。ずれは±2µmの範囲内であり目標の±4µm以内に
抑えることができた。
3)首相官邸ホームページ
4)ITU-T Recommendation G.983
5)樋口,外:
PLCを用いた1.3/1.55µmWDM光モジュール
電子情報通信学会総合大会
5.2 波長合分波器の損失およびクロストーク特性評価結果
表2に評価結果をまとめた。LPFを用いた場合,反射ポー
1999年
C-3-68
6)Kinoshita, et al.,:1.3/1.55-µm bi-directional WDM polymer PLC
module, Techn. Digest of OECC 2000, pp. 500-501(2000)
ト間(λ=1.3µm)では挿入損失が平均1.5dB,PDLが平均
7)N. Uchida, et al.,:Low-Cost Hybrid WDM Module Consisting of a
0.4dBであった。一方,透過ポート間では挿入損失の平均が
Spot-Size Converter Integrated Laser Diode and a Waveguide
1.4dB,PDLの平均が0.1 dBであった。また,1.55µm光を受光
Photodiode on a PLC Platform for Access Network Systems, IEICE
するポートへの1.3µm光のクロストークは−76dBであり,目
標値−45dBを超える十分なクロストーク特性が得られた。こ
れは,波長合分波器の構造をファイバ入出力型としたことに
より,1.3µm光が導波路へ結合するときのもれ光の発生およ
び,生じたもれ光のPDへの入射を抑えることができたため,
光クロストークが低減したと考えられる。一方1.3µm光ポー
Trans. Electron., vol. E80-C, No. 1, pp. 88-97(1997)
8)中西,外: 2 層フィルタPDを用いた低クロストーク高感度
1.3/1.55µm送受信モジュール,2000年電子情報通信学会総合大会,
C-3-131
9)柴田,外:ATM-PON下り622Mbps向けPLCモジュール,2000年電
子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会,SC-3-6
10)仙田,外:622Mbps ATM-PON ONU光モジュールの電気クロス
トへの1.55µm光のクロストークは−29dBであった。1.3µm光
トーク評価,2001年電子情報通信学会総合大会,C-3-95
ポートへのクロストークは1.55µmの受信光がLDに入る光強
11)宮寺:日立化成テクニカルレポート,37,pp. 7-16(2001)
度比を示すものであり,10 dB以上のアイソレーションがと
12)光メディア・コンバータ製品・市場トレンド,ケーブルコム,
れていれば,LDの動作には影響を及ぼさない。
40
2001年 1 月号
日立化成テクニカルレポート No.39(2002-7)
ビルドアップ用層間絶縁シート
AS-5000GP
製品
紹介
携帯電話などの情報端末では,製
ガラスクロス系の補強材を使用して
機補強材と樹脂を組み合わせたビル
品の小型化,高機能化に対応するた
いないため,機械的強度が劣ってい
ドアップ配線板用の層間絶縁材料で
め,高密度配線化に有利なビルドア
ます。またこの層にプリプレグを用
す。この材料は,樹脂付き銅箔と同
ップ配線板が用いられています。
いた場合には,ガラスクロスのレー
様のレーザ加工性を維持したまま,
ザ加工性が悪く,加工時間も長いな
高弾性率化ができており,ビルドア
どの問題が発生します。
ップ配線板の強度向上に有効です。
ビルドアップ配線板には主に樹脂
付き銅箔(はく)が使用され,レー
ザ加工によってマイクロビアを形成
AS-5000GPは,これらの点を改良
また,鉛フリー,ハロゲンフリー
しています。しかし,絶縁樹脂層に
するため,レーザ加工性に優れた無
に対応した環境対策材として,幅広
表1
い用途に利用できます。
特性比較表
項
特性
ガラス転移点
目
絶縁シート
条件
単位
AS-5000GP
TMA
℃
プリプレグ
GEA-67BE
(#1080)
−
143
145
110〜120
25℃
4.3
22
2.2
貯蔵弾性率
100℃
3.7
20
1.7
(DVE)
150℃
2.6
28
0.05
1.3
12
0.01
70
150
50
○
△
○
1.6
1.8〜1.9
1.4〜1.5
GPa
200℃
落球試験(白化,
クラック)
50g
レーザ加工性
比重
cm
−
−
−
(電子基材事業部門)
一般RCF材
取り扱い性(積層構成時)
○
○
△
ハロゲン系元素の含有
なし
なし
10〜20%
注)○:良好 △:難あり
日立化成テクニカルレポート No.37(2001-7)
図1
SEM写真
(L1−L3スキップIVH断面)
41
化学製品事業部門
複合材料事業部門
医薬品事業部門
半導体材料事業部門
表示材料事業部門
電子基材事業部門
感光性フィルム事業部門
自動車部品事業部門
配線板事業部門
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9110 FAX
(03)
5446-9469
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9210 FAX
(03)
5446-9450
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9220 FAX
(03)
5446-9467
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9250 FAX
(03)
5446-9465
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9260 FAX
(03)
5446-9465
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9300 FAX
(03)
5446-9463
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9272 FAX
(03)
5446-9112
〒108-0023 東京都港区芝浦4-9-25
(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9360 FAX
(03)
5446-9461
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(芝浦スクエアビル)
1(03)
5446-9335 FAX
(03)
5446-9464
編集委員
岡 村 昌 彦
義
之
中 山 忠 光
最 上 和 親
大 森 英 二
中 山 憲 一
前 川
麦
堀 部
藤 岡
金 久
吉 田
健
治
厚
修
横 澤 舜 哉
中 村 吉 宏
南
川 口 邦 雄
田 井 誠 司
小 泉 泰 伸
日立化成テクニカルレポート
発
発
行
行
元
好 隆
本 源 一
戸 部 豊 男
村 形
哲
第39号
2002年7月
日立化成工業株式会社
〒163-0449 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号(新宿三井ビル)
電話 (03)3346−3111
(大代表)
事務局 研究開発推進室 電話(03)
5381-2401
編集・発行人
印
刷
所
景山
晃
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〒101-0054 東京都千代田区神田錦町二丁目 1 番地 5 号
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