パンフレットPDF

山口大学理学部サイエンスワールド2007 プログラム
会場:大ホール
10:00〜17:00
・科学展示と実演・観察
・科学なんでも質問コーナー
・理学部紹介
・クイズラリー
サイエンスの魅力に触れよう
科学に関する疑問や質問に専門家が答えます。
山口大学理学部について詳しく説明します。
ブースを全部回ってクイズに答えよう!
会場:第一研修室
13:10〜
はじめに
山口大学理学部長
13:15〜14:15
サイエンスセッションU18 in SW2007 第1部
14:15〜14:45
特別講演
講演題目 ミクロ生物 ‑縁の下の小さな力持ち‑
増山 博行
講演者
堀 学(山口大学大学院 理工学研究科准教授 環境共生系学域
環境共生生物学分野)
15:00〜16:00
サイエンスセッションU18 in SW2007 第2部
16:00〜16:30
特別講演
講演題目 サイエンスコミュニケーションについて
講演者
松本 浩(防府市青少年科学館 ソラール 普及係 係長 学芸員)
16:40〜16:50
サイエンスセッションU18 in SW2007 表彰式
16:50〜
終わりに
サイエンスワールド2007実行委員長 藤井 寛之
目
次
ヤングが拓くサイエンスのフロント 理学部長 増山 博行
・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
特別講演
講演概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
・「ミクロ生物‑縁の下の小さな力持ち‑」
堀 学(山口大学大学院 理工学研究科准教授 環境共生系学域
環境共生生物学分野)
・「サイエンスコミュニケーションについて」
松本 浩(防府市青少年科学館 ソラール 普及係 係長 学芸員)
科学展示と実演・観察
展示内容
サイエンスセッションU18 in SW2007
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
講演概要
−1−
・・・・・・・・・・・・・・・・・10
ヤングが拓くサイエンスのフロント
山口大学理学部が主催する「サイエン
スワールド 2007」は今年第 9 回目となり
ました。本企画を共催するソラールの学
芸員によるアメリカの博物館のお話,科
学の最前線で活躍する若手研究者の学
術講演,小学生からシニア世代まで楽し
める,科学に関する実演・観察,理学部
を紹介する展示,高校生などの研究発表
コンテストなど,若手の教員で組織され
た実行委員会は例年以上に張り切って
理学部長(中央)とSW2007 委員
企画しております。
今年の一番の特色は,大学院で学んでいる大学院生による展示実験・観察が数多く出展
されることです。また,高校の科学部の成果発表を行う「サイエンスセッション U18」に
も多くのエントリーがあります。
科学の歴史を紐解くと,ガリレオ・ガリレイが振り子の等時性を発見したのが 18 歳の時
であるとか,アイザック・ニュートンが運動の法則と万有引力の法則を見出したのは 24 歳
の時とか伝えられています。現代でも,5 年前にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さん
の発明は 26 歳の時に特許申請されています。
このように,独創的・創造的科学の発明・発見はしばしば若い研究者の自由な発想から
生まれています。山口大学理学部でも 200 名を超える若い研究者の卵・大学院生が学び,
研究を行っています。彼らの創造性・企画力を発揮する場となることを期待しています。
また,科学部などの場で課題を取り組んでいる高校生が互いに交流し,切磋琢磨するサ
イエンスセッション U18 であることを期待します。高校生だけでなく,大学生,一般市民
の方もこのセッションにぜひお越しください。
最後に,今年度のサイエンスワールドは独立行政法人科学技術振興機構(JST)の地域科学
技術理解増進活動推進事業の機関活動支援事業に採択され,その財政的支援を得て行われ
ます。本学部の過去 8 回のサイエンスワールドの実績が評価されたことを喜ぶとともに,
JST への謝意を表するものです。
2007 年 11 月
山口大学理学部長
−2−
増山 博行
特別講演
(会場:第一研修室)
講演概要
14:15〜14:45
「ミクロ生物‑縁の下の小さな力持ち‑」
堀 学(山口大学大学院 理工学研究科准教授 環境共生系学域
環境共生生物学分野)
ちっちゃくてもすごいぞミクロ生物!
地球上には,我々の目に見えないような
「ミクロな生物」が,たくさん生息していま
す。これらの生物の多くは,単細胞で構成さ
れているため,一見単純で下等な生き物のよ
うに思われています。しかし,これらの生物
をよく観察してみると,多種多様な形態や生
活様式をもっており,他の生物群とも複雑に
関係しあっています。
私達は,下等と考えている生物が,人間と
同じ機能を持っていると,「こんなに単純な
生物も人間と同じなんて!」と驚くことがあ
ります。しかし,視点を変えて見てみると,
人間の持つ機能のほとんど全てが,他の生物(特に,ミクロ生物)から受け継いだにすぎ
ないということがわかります。又,日常あまり耳にすることがありませんが,ミクロ生物
は,ノーベル賞受賞の立役者になったり,環境保全に役立ったりと,人類に多くの貢献を
していることも事実です。この講演では,ミクロ生物の中でも多様性にとんだ原生生物を
中心に,生物の進化や人類への貢献について紹介します。
16:00〜16:30
「サイエンスコミュニケーションについて」
松本 浩(防府市青少年科学館 ソラール 普及係 係長 学芸員)
アメリカの博物館展示は面白い!
アメリカの科学館におけるサイエンスコミュニケーションへの取組みについて,サンフラ
ンシスコの「エクスプロラトリアム」やサンノゼの「テックミュージアム」,ハワイの「キ
ラウエア・ボルケーノ・ビジターセンター」での視察と聞き取り調査の結果を紹介する。
−3−
科学展示と実演・観察
(会場:第一研修室)
10:00〜17:00
出展内容
1. リフレッシュルーム−−−パズルの広場
2.「高圧力を体験しよう!」−高圧卵の作成−
3. 「偏光板で作るステンドグラス」
4. 「不思議な光」
5. 「レーザー光とホログラム」
6. 「キッチン火山学で火山噴火のしくみを学ぶ」
7. 「山口県の活断層 〜大地は動く〜」
8. 「酵母の世界」
9. ショウジョウバエの突然変異体「ミューテーション」
10. ソラールのサイエンスショー「不思議な液体」「どきどき真空の世界」
−4−
1. リフレッシュルーム−−−パズルの広場
大城 盛浩・川原 征敏・白銀 聖子・西村 侑子・丸本 宏也・山崎 功太郎
【理学部数理科学科3年】
マッチ棒パズルから大学の数学までを題材にとり,具
体的な例や実物を紙や棒を使って工作したり,試行錯誤
を体験してもらい,考える楽しみを味わってもらいま
す。「メビウスの環」,「ケーニヒスベルクの橋」,「ハノ
イの塔」,「マッチ棒パズル」,「不等式ナンバープレー
ス」,
「コーヒーカップとドーナツは同じ?」等の体験場
を予定しています。
2.「高圧力を体験しよう!」−高圧卵の作成−
柴崎 洋志(山口大学大学院 理工学研究科 物理・情報科学専攻)
【博士前期課程1年】
指導教員:繁岡 透(山口大学大学院 理工学研究科教授 自然科学基盤系学域
物理科学分野)
我々が日常生活を営んでいる環境は圧力が 1 気圧の世界である。しかし,圧力が変わる
だけで物質の形態は様々に変化する。生卵は茹でるとたんぱく質が変成してゆで卵になる
事は一般に周知の事実であるが,生卵が 1 万気圧程度(正確には 7000 気圧)の高圧力下で
は,たんぱく質が変成してゆで卵状態になることは一般にはあまり知られていない。我々
の身近な現状において高圧力を体験してもらうために,本ブースでは圧力卵の作成を実演
する。
−5−
3. 「偏光板で作るステンドグラス」
野崎 浩二(山口大学大学院 理工学研究科准教授 自然科学基盤系学域 物理科学分野)
偏光板というちょっと不思議なフィルムとセロハ
ンテープを使ってステンドグラスを作ります。
透明なペットフィルムの上にセロハンテープでい
ろいろな模様を作ります。そして,2枚の偏光板の
間にはさんだら,不思議なことにセロハンテープを
貼った部分にいろいろな色がついてステンドグラス
のできあがり。
さあ,あなただけのステンドグラスを作ってみま
しょう。そして,透明なセロハンテープに,色がつ
くのはなぜかを勉強してみよう。
4. 「不思議な光」
小泉 和也(山口大学大学院 医学系研究科 応用分子生命科学系学域 生命物質化学分野)
【博士後期課程 2 年】
指導教員:藤井 寛之(山口大学総合科学実験センター機器分析実験施設 准教授)
初夏に山口県内でホタルの
?
幻想的な光の乱舞を見た人は
多いと思います。その美しい
光を化学の力で真似たものが
ケミカルライトと呼ばれるも
のです。お祭りやコンサート
2種類の液を混ぜるだけで、 ある生物 のように幻想的な光のイリュージョンが始まる・・・。
などで見られる光るブレスレットやペンライトなどがそうです。これらの光は化学反応を
起こすことで発生しています。みなさんの家庭にもある蛍光灯などとは違って,これらは
発光の時にほとんど熱を発生しませんし,電気も必要ありません。試験管の中でケミカル
ライトを再現し,不思議な世界を体験してみませんか?
−6−
5. 「レーザー光とホログラム」
西 宏明(山口大学大学院 理工学研究科 物理・情報科学専攻 情報科学専攻)
【博士前期課程1年】
指導教員:吉川 学(山口大学大学院 理工学研究科教授 自然科学基盤系学域
情報科学分野)
レーザー光を知っていますか?どこに使われているでしょう。スーパーやコンビニのレ
ジで見たことがあるでしょう。ホログラムという言葉を聞いたことはありますか?ホログ
ラムの縞模様には像の情報が入っています。レーザー光をホログラムに当てると,像が現
れます。
6. 「キッチン火山学で火山噴火のしくみを学ぶ」
永尾 隆志(山口大学大学院 理工学研究科准教授 自然科学基盤系学域 地球科学分野)
火山はなぜ噴火するのか,キッチンにあ
る材料を使って実験し,そのしくみを学び
ます。また,弁当パックのふたやペーパー
クラフトで火山の模型を作ります。ところ
で,山口県には阿武火山群という活火山が
ありますが,最近,いろいろな形の火山弾
がたくさん見つかりました。阿武火山群の
説明とあわせてそれらの火山弾を展示し
ます。
−7−
7. 「山口県の活断層 〜大地は動く〜」
相山 光太郎(山口大学大学院 理工学研究科 地球科学専攻 地球科学分野)
【博士前期課程1年】
指導教官:金折 裕司(山口大学大学院 理工学研究科教授 自然科学基盤系学域
地球科学分野)
内陸地震を起こす原因として,活断層が注目
されてきています。活断層は山口県内にも数多
く存在しており,各地で調査が行われています。
まず,地形を判読することによって,リニアメ
ント(線状模様)を抽出し,その中から活断層
を探します。活断層が発見されれば,トレンチ
調査を行うことがあります。トレンチ調査では
規模は異なりますが,地面にトレンチ(溝)を
掘り,活断層の断面を直接観察し,最新活動時期(一番新しい地震の発生時期)や活動間
隔を知り,次の地震発生を予測します。
8. 「酵母の世界」
宮川 勇(山口大学大学院 理工学研究科教授 環境共生系学域 環境共生生物学分野)
酵母(イースト)はパン作り,ワイン,ビールの醸
造など私たちの身近で大変役に立っている微生物で
す。この展示では,様々な種類の酵母の形態や大きさ,
分裂の様子について,顕微鏡を使って観察します。そ
して,酵母の生活や性質についても分かり易く説明し
ます。また,酵母によるアルコール発酵を小学生にも
理解できるように,アルギン酸ナトリウムを使用した
固定化酵母ビーズの作成を行い,酵母ビーズの浮上を
観察する体験コーナーを設けます。
−8−
出芽で増殖する酵母
9. ショウジョウバエの突然変異体「ミューテーション」
村上 柳太郎(山口大学大学院 医学系研究科教授 応用分子生命科学系学域
分子機能生物学分野)
突然変異体(ミュータント)とは,遺伝子の本体である DNA が変化することで生じま
す。突然変異体の性質を調べることで,遺伝子の働きを調べることができます。ショウジ
ョウバエは 1933 年にノーベル生理学・医学賞を受賞したトーマス・モーガンによって,遺
伝学の代表的なモデル生物となり,その後も多細胞動物の遺伝子研究に役立っています。
この展示ではショウジョウバエの突然変異体をいくつか紹介します。
10. ソラールのサイエンスショー「不思議な液体」「どきどき真空の世界」
松本 浩・岩下 貴文(防府市青少年科学館 ソラール)
液体窒素を使い,気体を液体並びに凝固させたり,ゴムボールを凍らせたりと,物質が
気体・液体・固体に変化するようすをサイエンスショー形式で公開実験する。どきどき真
空の世界では,風船やマシュマロ,ビーカーに入れた水を真空状態にして,どのように変
化してゆくかを実験し,大気のある状態と比較しながら公開実験する。
−9−
サイエンスセッションU18 in SW2007
(会場:第一研修室)
講演概要
第1部 13:15〜14:15
1. 謎の湖 蟠竜湖の成因を解明する
2. 流体中での物体の落下運動計測装置の製作および物理学的考察
3. 銀河宇宙電波の観測
4. カイワレダイコンの成長に影響した紫外線の秘密について
第 2 部 15:00〜16:00
5. メダカの遺伝子汚染
6. 宇佐川堰堤に生息するオオサンショウウオ
7. 富栄養化がメダカとカダヤシの種間関係に与える影響
8. ネオテニー現象で生き残る高地型カスミサンショウウオ
−10−
1. 謎の湖 蟠竜湖の成因を解明する
島根県立益田高等学校 蟠竜湖研究班
島根県益田市の蟠竜湖は周囲約6㎞,面積13hの小さな湖である。蟠竜湖はため池の
ようにも見えるが,周囲は砂丘,流入する川がほとんどなく雨水の集まる集水域もわずか
である。1m程度の水面の変動はあるが,水が涸れたことは一度もない。 蟠竜湖の成因に
関する文献や聞き取り調査では「津波説」「堰き止め説」「地下水説」がある。これらの説
に基づいて,魚群探知機による湖底調査,GISによる津波シミュレーション,ジオスラ
イサーによる地質調査を行い,成因の解明を行う。
2. 流体中での物体の落下運動計測装置の製作および物理学的考察
山口県立岩国高等学校 天文気象部
大粒の雨から霧雨まで,大きさが異なる雨滴の落下運動を調べるモデルとして,流体と
して油や流動パラフィン,物体としてインクや色水を用いた簡易な実験装置をペットボト
ルとストローを使用し,実験装置を製作した。計測方法等を工夫し,雨滴のようにサイズ
が大きくなると質量が大きくなる物体の落下運動についてこのモデルで実験し,物理学的
考察を行った。
−11−
3. 銀河宇宙電波の観測
山口県立宇部高等学校 科学部
銀河の高銀緯にある,ガス分子雲(MBM53,54,55)の分布を,ガスから放出される HI
輝線を観測することにより調べた。分子雲の形状や分布から,星の生成のプロセスである
ガスの収縮の様子や,この分子雲の誕生プロセスを調べる手がかりが得られる可能性があ
る。HI 輝線の受信のため,なるべくおおきなパラボラアンテナと高感度の受信機,ノイズ
除去が必要となる。この観測システム(2m電波望遠鏡)を既存のアンテナを参考に約1
年3ヶ月かけて構築し,目的の分布を調べてマッピングを行った。また,観測精度を上げ
るため,みさと天文台の8m電波望遠鏡を用いて同様の観測を行い,データの解析をした。
4. カイワレダイコンの成長に影響した紫外線の秘密について
高川学園中学・高等学校 科学部
テレビからながれる気象庁の予報では,紫外線指数やオゾン層について注意をうながす
ことが多い。紫外線が多くなると皮膚ガンになりやすいとか,オゾン層が破壊されて,大
量の紫外線が降り注いでくる…といった内容である。そんな身近な話題で,しかも人間が
死ぬかもしれないという内容なのに,
「紫外線って何?」か,知らなかった。そこで,カイ
ワレダイコンを使って,紫外線が生物にどのような影響を与えるか実験を行った。すると
予想に反して,紫外線よりも,オゾンの悪影響の方が大きいことが分かった。また,偶然
に発生したカビに対しては,紫外線の抑制力が大きかったことから,細胞の種類や成長時
期によって異なることも分かった。
「地球を守れ!」
,「オゾン層を破壊するな!」と,地球環境に関する話題は多いけど,
その理由については意外に知られていない。今回の実験を通して,正しい知識や,科学の
大切さについて学ぶことができた。
−12−
5. メダカの遺伝子汚染
山口県立厚狭高等学校 生物部
2006 年に山口県でメダカの分布状況を調査したところ,クロメダカの生息が確認された
68 地点のうち,3 地点でヒメダカが混泳していた。野外に生息するクロメダカに対してヒ
メダカを交配させる検定交雑を行ったところ,クロメダカにヒメダカ遺伝子が入っている
個体が検出された。放流されたヒメダカによる遺伝子汚染について,生態学的な研究に取
り組んだ。
6. 宇佐川堰堤に生息するオオサンショウウオ
高川学園中学・高等学校 科学部
2007 年 8 月 17 日,オオサンショウウオ Megalobatrachus japonicus TEMMINCK の成体7
頭の生息を確認した。本種は,国指定の特別天然記念物に指定を受けているが,個体数が
少なく,河川工事などで偶然に見つかることはあっても,その生態は明らかにされていな
い。そのため,環境省レッドデータブックでは「準絶滅危惧」,山口県カテゴリーでは「絶
滅危惧IA類」とされている。特別天然記念物であるため採集等の捕獲による調査はでき
ないが,潜水センサスによる目視観察と河川の環境調査によって,わずかではあるが生活
の一端を知ることができた。文献では9月中旬頃が産卵期と言われている。この研究は,
今夏の発見によって始まったばかりであるが,貴重な野生動物の近況について紹介し,種
の保全とこれからの研究に対し適切な助言を頂くことを目的に発表する。
−13−
7. 富栄養化がメダカとカダヤシの種間関係に与える影響
山口県立厚狭高等学校 生物部
メダカとカダヤシが生息する水域調査を行い,カダヤシの生息地点は富栄養化が進んで
いる事が明らかになった。また,カダヤシの方がアンモニアと亜硝酸に対する耐性が強い
傾向が確認された。これらのことから,両種の力関係について,富栄養化が進んだ水域で
はカダヤシの方が優位になると考えられた。
8. ネオテニー現象で生き残る高地型カスミサンショウウオ
高川学園中学・高等学校 科学部
ネオテニー現象は,アホロートル(メキシコサラマンダ・ウーパールーパ)の幼体成熟
で知られているが,我が国に生息する野生動物ではエゾサンショウウオの一部で確認され
ている珍しい現象である。科学部では継続的に「山口県に生息するカスミサンショウウオ
の分布と生態」について研究しているが,これまでに本種の2型(低地型・高地型)のう
ち,十種ヶ峰の山頂周辺に生息する個体群が高地型であり,産卵から変体まで「あしかけ
3年」を要している事実をつきとめている。しかし,その要因については推測の域を脱し
ていなかったが,実験(水質・溶存酸素,水温・気象,栄養価…)により「低温条件」が
有力であることが分かった。つまり,標高千m級の独立峰でしかも冬季の季節風をまとも
に受ける気象条件に適応するためには,幼生期の長期化が有益であり,生存率の向上につ
ながっていることが分かったので報告する。
−14−