埼玉県内企業への円安と原油価格下落の影響調査

・・・・・・・・・・・・・・ ぶぎん地域経済研究所 ・・・・・・・・・・・・・・
●調査レポート
埼玉県内企業への円安と原油価格下落の影響調査
調査対象:県内企業 573 社
調査方法:アンケート方式 (1月下旬
回答企業:183 社(回答率 31.9%)
業種別内訳:製造業 103 社
郵送回収)
非製造業 80 社
要旨
○円安が、埼玉県内企業の経営に与えている影響を見ると、企業経営に何らかの影響を受け
ている企業が7割強に上る。「マイナスの影響を多く受けている」が 38%と最も多く、「プラ
スの影響を多く受けている」の 12%を 26 ㌽と大幅に上回っている。
○原油価格が、2014 年後半以降急速に下落した影響を見ると、「プラスの影響を多く受けて
いる」が 33%と、「マイナスの影響を多く受けている」の 6%を 27 ㌽と大幅に上回っている。
1.円安が経営に与えている影響
(1)全産業
円安が経営に与えている影響を見ると、全産業では、7割強の企業が何らかの円安の影
響を受けている。「マイナスの影響を多く受けている」が 38%と最も多く、「プラスの影響
とマイナスの影響がほぼ同じ」が 22%で 16 ㌽、「プラスの影響を多く受けている」の 12%を
26 ㌽と、それぞれ大幅に上回っている。埼玉県内企業が、プラスの影響よりもマイナスの
影響を多く受けている背景には、海外生産移転の進展等により、円安にも拘わらず従来ほ
ど輸出が増加せず、直接・間接に輸出増加の恩恵を得にくい経営環境のほか、原材料・仕
入れ価格や電気料金の上昇等によるコスト増が企業を直撃しているためと見られる。
図表1.円安が経営に与えている影響(業種別)
12
全産業
38
19
製造業
38
3
非製造業
0%
22
27
39
10%
20%
28
15
30%
40%
50%
16
43
60%
70%
80%
90%
100%
(2)業種別
製造業、非製造業ともに「マイナスの影響を多く受けている」(製造業 38%、非製造業 39%)
が約4割を占める一方、「プラスの影響を多く受けている」は製造業の 19%、非製造業が 3%
とその割合が少なくなっている。輸出動向に左右される製造業の業績は、非製造業よりも
為替相場の影響を受けやすいことが窺われる。(図表1)
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2.円安のプラス・マイナスの具体的影響
(1)円安のプラスの具体的影響
全産業で見ると、海外での売上、売掛債権、受取配当金等収益は、円安進行分が円換算
で嵩上げされ、 「為替差益による収益改善」が 33%と最も多く、「販売価格の上昇による収
益改善」が 20%で3位となっている。また、「取引先の輸出関連企業の業績回復による売
上・受注増」が 25%で2位などの順となっている。円安の進展によって、直接・間接の輸
出取引の改善や販売・受注価格等が上昇し、売上や収益にプラスの効果を及ぼしていると
見られる。
図表2-1.円安のプラスの具体的影響(業種別)
25
24
25
取引先の輸出関連
企業の業績回復に
よる売上・受注増
15
全産業
製造業
非製造業
18
自社の輸出増加
6
国産品の価格競争
力向上に伴う売上・
受注増
15
16
13
20
13
販売価格の上昇
による収益改善
38
33
為替差益による
収益改善
42
6
13
11
取引先の国内回帰
による売上・受注増
19
4
その他
8
19
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50 (%)
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
業種別に見ると、製造業では、「為替差益による収益改善」42%、「取引先の輸出関連企
業の業績回復による売上・受注増」24%、「自社の輸出増加」18%が上位を占めている。
非製造業では、「販売価格の上昇による収益改善」が 38%と最も多く、次いで「取引先の
輸出関連企業の業績回復による売上・受注増」25%、
「取引先の国内回帰による売上・受注
増」19%の順となっている。(図表2-1)
(2)円安のマイナスの具体的影響
全産業で見ると、「原材料・仕入れ価格の上昇」が 77%と最も多く、次いで「電気料金の
上昇」31%、「燃料費の上昇」30%が上位を占め、他の項目を引き離している。これらは、コ
図表2-2.円安のマイナスの具体的影響(業種別)
77
原材料・仕入
価格の上昇
81
70
11
9
輸入品の値上がりに
伴う売上・受注減
15
5
取引先の輸入関連企
業の業績悪化による
売上・受注減
全産業
製造業
非製造業
1
11
9
取引先からの値下げ
要請の強まり
11
4
31
電気料金の上昇
36
21
30
30
30
燃料費の上昇
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100 (%)
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
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スト増による収益圧迫に直結するため、マイナスの影響が大きいと見られる。
業種別に見ると、製造業では、全産業とほぼ同様な結果となっている。非製造業では、
製造業で2位の「電気料金の上昇」と3位「燃料費の上昇」の順位が入れ替わっているが、運
輸・倉庫業と建設業で「燃料費の上昇」を挙げる企業が多くなっている。(図表2-2)
3.原油価格下落が経営に与えている影響
(1)全産業
原油価格が、2014 年後半以降急速に下落した影響を全産業で見ると、「プラスの影響を
多く受けている」が 33%と、「マイナスの影響を多く受けている」の 6%を 27 ㌽と大幅に上
回っている。埼玉県内企業が、マイナスの影響よりもプラスの影響を多く受けている要因
としては、原油価格下落により円安に伴う輸入インフレ圧力を緩和し、原材料やエネルギ
ー価格等の低下によりコストを削減し業績改善の追い風となっているためと見られる。
図表3.原油価格下落が経営に与えている影響(業種別)
33
全産業
6
24
製造業
20
6
25
45
非製造業
0%
10%
20%
45
6
30%
41
40%
50%
13
60%
36
70%
80%
90%
100%
(2)業種別
業種別に見ると、製造業、非製造業ともに、「プラスの影響を多く受けている」(製造業
24%、非製造業 45%)が、「マイナスの影響を多く受けている」(製造業 6%、非製造業 6%)
を上回っている。
非製造業では、運輸・倉庫業、建設業、自動車販売を中心に原油価格下落のメリットを
直接・間接に受けている企業が製造業よりも 21 ㌽多くなっている。
ただし、アンケートで一部が指摘しているように、現時点で原油価格下落の影響を受け
ていないが、今後影響が出てくると見られるとする企業もあり、「原油価格下落は業績に影
響なし」は製造業で 45%、非製造業で 36%に上っている。(図表3)
4.原油価格下落のプラス・マイナスの具体的影響
(1)原油価格下落のプラスの具体的影響
全産業で見ると、「燃料費の低下」が 85%と最も多く、2位が「原材料仕入れ価格の低下」
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と「電気料金の低下」が 21%で並び、4位が「運賃の低下等による物流コストの減少」14%な
どとなっている。これは、生産や輸送等に使用する石油製品や化学製品の下落を通じ事業
コストの低減に直結するためと見られる。
業種別で見ると、製造業、非製造業ともに全産業とほぼ同様な結果となっている。(図
表4-1)
図表4-1.原油価格下落のプラスの具体的影響(業種別)
21
16
原材料・仕入れ価格
の低下
全産業
製造業
非製造業
25
21
電気料金の低下
24
18
85
82
燃料費の低下
88
4
製造・サービスコスト
の減少
5
2
14
運賃の低下等による
物流コストの減少
11
16
9
9
9
その他経費の減少
2
0
販売価格下落に伴う
需要増
4
4
その他
2
0
5
10
20
30
40
50
60
70
80
90
(%)
100
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
(2)原油価格下落のマイナスの具体的影響
全産業で見ると、「円安に伴う値上げ交渉に支障」が 36%と最も多く、次いで「取引先か
らの値下げ要請の強まり」33%、「売上・受注の減少」31%などの順となっている。円安の進
行に伴う値上げ交渉が先行して行われている中で、原油価格下落に伴う原材料・仕入れ価
格の低下等が後から発生するという、事業環境の変化から円安に伴う値上げ交渉に支障を
きたしていることが窺われる。
業種別に見ると、「取引先からの値下げ要請の強まり」(製造業 45%、非製造業 18%)で
は、製造業が非製造業を上回る一方、「販売価格の低下等による売上・収益の減少」(製造業
18%、非製造業 29%)では、非製造業が製造業を上回っている。(図表4-2)
図表4-2.原油価格下落のマイナスの具体的影響(業種別)
31
全産業
製造業
非製造業
32
売上・受注の減少
29
33
取引先からの値下
げ要請の強まり
45
18
36
36
円安に伴う値上げ交
渉に支障
35
23
18
販売価格の低下等
による売上・収益の
減少
29
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
(%)
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
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