2016年9月29日 専門演習資料 和田 浩一 卒論の構成と表現技術 I

2016年 9月 29日
専門演習資料
和田 浩一
卒論の構成と表現技術
I.卒論とは
1.レポートと卒論の違い
目 的
問 い
オリジナリティ
レポート
理解を報告
与えられる
必須ではない
卒 論
発見を論証
自分で立てる
必 須
2.卒論とは
大学教員を【説得】する作業
・評価基準: 作成プロセス(※)>> 論文の中身(学術的意味)
※.問題を切り出す力/資料の収集方法/データの提示の仕方/考え方の整理……
3.卒論に求められる学術的スキル
1) 《 自 分 で 》 計 画 を 立 て 、 こ れ に 基 づ い て 〆 切 日 ま で に 《 自 力 で 》 論 文 を 仕 上 げ る 。
2) 必 要 な 資 料 を 収 集 し 、 適 切 な 手 法 で 分 析 し 、 分 析 結 果 を 正 確 に 解 釈 で き る 。
3) テ ー マ に 関 す る 先 行 文 献 ・ 周 辺 文 献 を 、 図 書 館 等 で 探 し 出 せ る 。
4) 論 理 的 な 流 れ と 正 確 で 適 切 な 文 章 表 現 が 備 わ っ て い る 。
II.卒論の構成と特徴
1.卒論の構成
序論:あるテーマのもとで「問い」を切り出し、 本論:これについて論理的・実証的に論述を展開し、
結論:問に対する「答え」を与える。 感情・利害
←→
による説得
ではない!
2.卒論の特徴
1) 一 定 の 形 式 を 備 え た 文 章 → 論 理 的 形 式
2) 誰 が 読 む の か 分 か ら な い 文 章 → 公 共 性
3.具体的な流れ
序論:
1) 問 い = 目 的 … … 問 う
2) 問 い の オ リ ジ ナ リ テ ィ = 先 行 研 究 … … 調 べ る
3) 問 い に 答 え る 道 筋 = 資 料 と 方 法 … … 選 ぶ
1
本論:
4) 結 果 と 分 析 : 立 て た 問 い へ の 答 え の 根 拠 と な る 具 体 的 な デ ー タ … … 確 か め る
5) 考 察 : な ぜ そ の よ う な 結 果 に な っ た の か を 理 由 を 説 明 … … 裏 づ け る
結論:
6) 1) ~ 5) の プ ロ セ ス の 要 約 … … ま と め る
4.補足説明
1)「問い」を立てる。 → ★最重要★
( 学 術 的 ) 価 値 を 示 す ← 1) 研 究 史 上 へ の 位 置 づ け 、 2) 未 解 明 ( 新 発 見 )
・論じる分野や対象を明確にし、その範囲を限定する。← 【絞りに絞る!】
・テーマを選んだ動機や理由:個人的な動機 → 公共的な意味(論じる価値)
2)「先行研究」を調べる。
研究史上での位置づけ → オリジナリティの説明
3)「資料と方法」を選ぶ。
調 査 名
ポイント
具体的な方法(例)
量的調査
多くのデータ
実験、アンケート調査ほか
質的調査
良質なデータ
文献調査、インタビュー、観察
・どのようなアプローチ(方法、手順)によって、答えに向かうのか。
・再現性(= 科学論文の必須要件)を保証する。
4)「結果と分析」でデータを示す。
読者を説得できるデータを集め、効果的に整理(提示)する。 = 結論の証明
・専門家の意見(本ほか):原典の引用 → 「こう書いてある」という事実の提示
5)「考察」で裏づける。 ★ 大事 ★
示したデータの意味を解釈し、その結果になった理由を説明する。
・他人の意見(事実)と自分の意見とを、はっきり区別する。
・証拠(事実)の羅列は、論文ではない。 2
6)「結論」でプロセスを要約する。
序論で提示した「問い」に対する「答え」を書く。
・ 1) ~ 5) の 説 明 を 必 ず 含 め る 。
例.「本研究は……に注目し、……という方法を用いて、……の関係を明らかに
し よ う と し た 。 / 第 1章 で は … … が 明 ら か に な っ た 。 / 第 2章 で は … … を 示 し
た。/……」
・最後に「問い」に対する「答え」を、【一文で】要約する。
本論で出した証拠や分析、解釈を超える新しい議論を展開してはいけない。
×「だから、○○はもっと△△しなければならない」
III.その他
1.実際のイメージ
1) タ イ ト ル
2) 目 次
3) 本 文 = 序 論 / 本 論 / 結 論 ( 15% / 75% / 10%)
4) 注 ( 文 末 注 の 場 合 )
5) 資 料
6) 参 考 文 献 一 覧
2.タイトルの付け方
1) 友 人 ・ 先 生 の 興 味 を 惹 き つ け る 。
・具体的に書く → 分かりやすい。
2) タ イ ト ル に 入 れ る 情 報
・どういう問題に取り組むのか(取り組んだ問題)
・どこに着眼したのか(着眼点)/どうやって取り組むのか(方法)
・場合により → 何を対象にしたのか(研究対象)
3) NG集
~について(の考察)/~に関して/~の提案/~の可能性
×「イルカ漁について」
3.目次の意味
論文全体の構造を示す地図。
4)注
注はそのページの下に書く(ことを推奨)→ 脚注
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5)資料
・本文に組み込めなかった資料やデータ、図、グラフ、表、写真ほか。
・資料はできるだけ本文中に組み込む。
・必ず見出しをつける。図・写真:下、表:上。
参考文献
石 黒 圭 『 論 文 ・ レ ポ ー ト の 基 本 』 日 本 実 業 出 版 社 、 2012年
河 野 哲 也 『 レ ポ ー ト ・ 論 文 の 書 き 方 入 門 』 第 3版 、 慶 応 義 塾 大 学 出 版 会 、 2002年
IV.『スポーツ教養入門』輪読の進め方
★《全員》が、該当箇所を《必ず》読んで来ること。
★ レ ジ ュ メ の 〆 切 : 1) 担 当 者 → M : 月 の 18h00、 2) M → 和 田 : 火 の 13h00
■レジュメの構成(A4用紙1枚) ※.基本情報を忘れずに。
1.自分の問題意識 → 約80字(2行)
2.担当章の要約 → 約400字(10行)
・機械的な(丸写しの)要約はダメ。自分の問題意識に沿って要約する。
・ 要 約 箇 所 を 明 示 す る → 「 … … ス ポ ー ツ で あ る ( 10-11頁 ) 。 」
3.最近のスポーツの問題との関連性の提示 → 約120字(3行)
・最近のスポーツの問題(基本的情報を記す)→ 問いを立てる
4.議論 → 約360字(9行)
・著者の主張に基づき、この問題のポイントを明らかにする。(方法)
・著者への反論や否定を起こり込みながら、この問題に対する自分の意見を述べる。
a) 反 論 → 否 定 的 結 論
(考察)
b) 反 論 → 代 替 案 の 提 示
c) 限 定 的 な 否 定 / 肯 定 → 補 足 的 主 張 ・ 代 替 案 の 提 示
d) 批 判 的 検 討 → 肯 定 ( 補 足 )
5.まとめ → 約80字(2行)
「問い」への「答え」を書く。
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