2012.11.10の勉強会の講演録はこちら

『NPHC 研究会』
(講演録,一部掲載)
日時:平成 24 年 11 月 10 日(土)18:30~20:00
場所:東京大学本郷キャンパス工学部1号館 3 階会議室
主催:こどもの病院環境&プレセラピーネットワーク(NPHC)
今回の研究会は学生さんによる発表です。杏林大学医学部学生さん他より,健常児(保育園児)に対して行う
医学教育「ぬいぐるみ病院」の活動経緯と概要,実際の子どもに関わる際の段取り・配慮点等に関する内容を。
順天堂大学医療看護学部学生さんより,学園祭で実施した「テディベアクリニック」の活動報告と専門家との協
働に関する内容が報告されました。
講演 1「ぬいぐるみ病院」の概要と活動
3.お医者さんごっことは
杏林大学医学部医学科 2 年 根岸 美帆 氏
お医者さんごっことは,ぬいぐるみを患者とした模擬診察のことです。
〔資料 1 参照〕
ぬいぐるみを患者役に,子ども達は保護者役,医学生が医師診察役として診察の流れを再
現し,子ども達に理解を促すと共にいたわりの気持ちを養ってもらう活動です。診察は,
導入・問診(症状分析 7 項目:部位,性状,程度,寛解・憎悪因子,随伴症状,症状の出
現状況,時間的経過)
・診察(検温・聴診)そして各症状に合わせた治療・処置・薬の処方
と進めていきます。導入では,看護師役の学生が誘導し,ぬいぐるみの年齢等を確認し,
問診では,はじめは子どもたちに症状を自由に話してもらい、質問を繰り返すことで上記
症状分析 7 項目を実施し理解を深めます。注射器等の必要に応じた道具を準備しており,例えばカゼの治療の場
合は,舌圧子を用い診察しております。
4.ぴあんずについて
杏林大学医学部医学科 3 年 頼元 雅慧 氏
「ぴあんず」とは,極低出生体重児の育児支援サークルです。昨今,高齢出産の増加や生活
習慣病の変化そして救命率の向上に伴い,極低出生体重児が増加しております。この子ども
達は,風邪をひきやすい等の健康上の問題や広汎性発達障害等の知的精神上の問題を伴うこ
とが多く,母親はじめ周囲の方々の育児上の悩みが大きく工夫が大切です。ぴあんずに参加
していた低体重で生まれた子ども達の中には,身体が小さく順番に遊ぶということが中々で
きないこと等,特徴があります。ぴあんずでは,極低出生体重児の家族が,子供の成長に伴
って変化する問題に適切に対応できるように支援することを目的に,保護者間の学びや交流
の時間中,子ども達に学生ボランティアがついて一緒に遊ぶ活動をしております。子ども達にかかわる時に心が
けていることは,発達に関する勉強をしておき,その子のできる出来ないを見極め,子ども達から目を離さない
ようにしております。
とても勉強になり,子ども達の成長・変化に嬉しさを感じる活動だと思っております。
〔資料 2〕
5.聖マリアンナ医科大学 ぬいぐるみ病院活動紹介
聖マリアンナ医科大学医学部医学科 2 年 遠藤 理紗 氏
聖マリアンナ医科大学(以下,聖マリ)においても杏林大学同様に「ぬいぐるみ病院」を
実施しております。ここでは聖マリの活動の特徴述べます〔資料 3〕。聖マリ医学部では,
保健教育に力を入れており,咳は 3mも飛ぶという話を子ども達に体感してもらうことで
エチケットの励行を呼びかけることや,熱中症に関する紙芝居を見せた後に,真夏の屋外
に持っていく「熱中症対策もの」を子どもに選んでもらい,実際身につけて皆の前で発表
してもらう等を行っております。
また,私は ABA(応用行動分析学)をぬいぐるみ病院や保健教育に活用することにも取り
組んでいます。
「行動前および行動後の出来事が,その行動(を起こすことに)に影響している」という ABA の
観点を利用し,学習内容の設定とフィードバックに工夫をしたかかわりです。行動前のかかわり(学習内容等)
は子ども達の行動に影響することは比較的理解しやすいのですが,行動後がどうして影響するのか……。以下説
明します。
「遊んでいる子供たちがいる(:行動前),話しかける(:行動),一緒に遊べた(:行動後)」この経
験が,その後の同じような出来事に遭遇した場合,話しかけるという行動が増える要因・動機になります。しか
し例えば断られた場合は,話しかけるということが減ります。つまり,行動後(一緒に遊べた・断られる)の違
いにより,子ども達のその後の行動に相違がみられます。であるならば,より良いものを提供することで(良い
後行動が得られるような配慮があること)が,その子の行動・動機に良い影響を及ぼすということを願った設定
が有効であり,子ども達の良い行動が作れるような保健教育ができるように取り組んでおります。
Ⅱ.
「テディベアクリニック」の活動報告
順天堂大学医療看護学部 2 年 羽藤千鶴氏,西田紗千氏
平成 24 年 10 月 21 日に開催された順華祭(順天堂大学・大学祭)で実施された
「テディベアクリニック」は,同年 6 月から教員・CLS(チャイルドライフスペ
シャリスト)
・卒業生らと共に検討・準備を重ね,当日の実施を迎えました。その
紹介とスライド〔資料 4〕で紹介いたします。
テディベアクリニックは,受付→測定コーナー→診察室→レントゲン室→なおそ
うコーナー→お薬コーナーと進んで体験していきます。実施後の評価(アンケー
ト)を,実施学生(1・2 年生),子ども達の保護者,実施協力者(小児病棟看護
師・本学部 4 年生)からいただきました。実施の経験やアンケートから,対応学生人数を増やすこと,子どもへ
のかかわり方を統一すること,子どもが参加している間の保護者の居場所を考えること,医療器具に自由に触れ
る機会を設ける提案,参加者を増やす PR 活動,等の改善策を得ましたが,総じて楽しく有意義な活動であった
と考えております。
教員・西村あをい先生より:学生達は頑張って取り組んでいました。話し合いを何回か持ち,卒業生らからいた
だく,子どもとのかかわり方に関する経験の伴ったアドバイスが役立ちました。今後恒例行事になるといいと思
います。一般には注射器が怖い子ども達ですが,一番先に手に取って見ていたのは注射器であったのが興味深か
ったです。カルテやテディベアのお土産も喜んでいらっしゃいました(テディベアは研究費で購入しました)。
順天堂大学には他に医学部,スポーツ健康科学部がございます。今後は協同して行っていきたいと思います。
記録:鈴木健太郎(NPHC 運営委員,杏林大学保健学部作業療法学科 講師)
総合監修:柳澤要(NPHC 代表,千葉大学大学院工学研究科 教授)