食品の用途発明について審査基準が改訂されたと

藤本昇特許事務所 三条 英章◇弁理士
食品の用途発明について審査基準が改訂されたと聞きましたが、改訂点を含め、用途発明に
ついて教えてください。
1.用途発明とは
(ⅰ)ある物の未知の属性を
(宮城県 M.S)
たといえない場合、その発明は、用途
○用牛肉」等に係る発明は用途限定の
発明に該当しないと認定されます。
ない発明として解釈されます。
発見し、
(ⅱ)この属性により、その
食品に関する発明について、改訂前
物が新たな用途への使用に適する事実
は、
「食品分野の技術常識を考慮する
詳細は「特許・実用新案審査ハンドブッ
を見いだしたことに基づく発明を「用
と、食品として利用されるものについ
ク」の「附属書A」をご確認ください。
途発明」といいます。
ては、公知の食品の新たな属性を発見
(a)
「○○用組成物。
」
、
「○○用食品組
したとしても、通常、公知の食品と区
成物。
」との記載は、通常、当該用
別できるような新たな用途を提供する
途に適した成分を何らかの技術的
ことはない」と判断されていたため、
手段によって配合するなどして得ら
見したとしても、用途発明としての新
請求項に用途限定があっても、請求項
れた物を指し、動物又は植物を包
規性は認められていませんでした。
に係る発明を特定するための意味を有
含するものではないと判断し得る。
2.改訂の趣旨
従来、公知の食品の新たな属性を発
しかしながら、
「食品の新たな属性を
しないと認定されていたのです。
発見しようとする先行企業に対して研究
開発のインセンティブを高めることが重
留意事項の一部を以下に紹介します。
(b)
「○○用食品。
」との記載は、明細
書等の記載及び出願時の技術常
4.改訂点
識を考慮して、動物又は植物を包
要である」
「食品の新たな機能性表示制
本改訂により、食品に関する発明の
含すると判断される場合に、用途
度の下で、食品の特許権による保護が
請求項に用途限定がある場合、それは
限定のない食品として解釈する。
一層重要になる」との指摘がありました。
請求項に係る発明を特定するための意
そこで、食品について用途発明とし
味を有すると認定されます。例えば、
5.むすび
ての新規性を認めるべく、
「特許・実用
「○○用バナナジュース」
「○○用茶飲
今回の改訂で、食品に関する発明の
新案審査基準」および「特許・実用新
料」
「○○用魚肉ソーセージ」
「○○用
請求項に用途限定がある場合、用途限
案審査ハンドブック」が改訂されまし
牛乳」等に係る発明は用途限定のある
定は請求項に係る発明を特定するため
た(平成28年3月23日)
。本改訂は、同
発明として解釈されます。
の意味を有すると認定されることにな
年4月1日以降の審査に適用されます。
3.用途発明に該当しない場合
ただし、動物・植物については、用
りましたが、請求項や明細書の記載等
途限定が付されたとしても、動物また
によっては、そのように認定されない
は植物の有用性を示しているにすぎず、
こともあります。
未知の属性を発見しても、その技術
用途限定のない動物または植物そのも
したがって、食品に関する発明につ
分野の出願時の技術常識を考慮し、そ
のと解釈されます。例えば、
「○○用バ
いて出願する際には、専門家である弁
の物の用途として新たな用途を提供し
ナナ」
「○○用生茶葉」
「○○用サバ」
「○
理士に相談することをお勧めします。
2016 No.6 The lnvention 63