この事例の詳しい内容

西大和学園中学校・高等学校
生徒の発案によって
タブレット端末と電子黒板を導入
主体的な学びの効果で新たな教育の形を生む
導入の狙い
教育の質の向上
授業内容の効率化
導入システム
タブレット端末『iPad Wi-Fi 16GB』
約800台
ノートブック
『MacBook Air』
タブレット充電カート
『エルゴトロン24-358-085』5台
デバイスマネジメントサービス
『たよれーるDMS』
無線LANアクセスポイント
『Ruckus ZoneFlex 7372』51台
電子黒板機能付きプロジェクター
『EPSON EB-590WT』42台
画像転送装置『Apple TV』42台
マグネットスクリーン
『泉 WOL-M30V』42本
導入効果
板書にかかる時間を削減して、スピー
ド感ある効率的な授業を実現
教員と生徒が共に学びあうという新
たな関係性が築けた
—USER
P R O F I L E ———————————————————
西大和学園中学校・高等学校
●業種:教育
互いに協力して目標を達成できるリーダーの育成を教育目標に掲げ、将来のビジョンを持てる生徒の育成を行っている
京都大学への合格者数全国1位という実績から、関西ではトップクラスの進学校とし
て注目を集めている西大和学園。15年ほど前から進めてきた教育改革の一環として、
学校をよくするための意見を生徒から募ったところ、
「情報端末を使った授業」という
声が上がった。生徒から自主的に出た提案の実現は授業に対するモチベーション向上
につながることもあり、生徒たちの思いが冷めないうちにと、検討から約半年という
短期間でiPadや電子黒板などのICT導入にこぎつけた。ICTを活用することで生徒同
士、そして教員と生徒が相互に教え合い、学び合うスタイルが生まれつつある。
●事業内容:中学・高等学校
●教職員数:107名
(2015年5月現在)
タブレット端末の導入により、生徒同士が目標達成
に向けて協力する活動を充実させた西大和学園
2016年1月取材
担う高い理想と豊かな人間性を持つ
生徒の意欲をかき立てる
授業内容を常に検討
リーダーの育成」だが、ここでいうリー
今年で創立30周年を迎えた西大和
はないという。集団の中でも自分の意
学園中学校・高等学校。京都大学の合
見を明確に示し、自分にはない他人の
格者数全国1位、東京大学・京都大学の
力を認めて、個々の力を活かして集団
合格者数では全国3位(2013年)
とい
で目標の達成に向かい邁進できるよ
う実績もあり、全国でもトップクラスの
うな人間に育ってほしいという思いが
進学校として注目を集めている。
込められている。
同校の掲げる教育目標は「次代を
西大和学園では、15年ほど前から
1
ダーとは、経営的な立場に立つことで
西大和学園中学校・高等学校
教育内容の改革を行ってきた。
年ではアメリカで語学研修、中学・高
「私立中学に進学する子どもたちの
校ともに、音楽、美術、体育の授業は
多くは、小学校低学年から学習塾に通
すべてネイティブの英語教師による英
い始めます。与えられた課題を集中的
語で行われる。これは、同校の海外教
にこなしていく勉強法が身につき、中
育機関である西大和学園カリフォルニ
学受験という目標は突破しますが、中
ア校で得たノウハウで、日常的に英語
には燃えつきたような状態の子も見ら
を使う環境を設け、英語に対する苦手
れます。このことに、私たちは課題意
意識を払拭させる目的がある。
識を持っていました。」と語るのは、学
また、学力向上に非常に効果を発揮
園長の上村 佳永氏だ。
しているという、課題研究を中心とし
中高6年間の教育期間で、大学入試
た課外授業プログラムが39以上ある。
を突破するための基礎学力を身につ
農家に泊まり農業体験をする「ファー
けることはもちろん重要だ。しかし学
ムステイ」や大学病院での「医療体験」
力偏重型の教育を行ってしまっては、
など、
それぞれが自分の興味ある分野、
大学に入ってから再び目標を見失い、
やってみたい研究を、体験を通して見
大学でどんな分野を学ぶのか、さらに
つけられる取り組みだ。
は将来のビジョンも持てないまま大学
「自分の目指す方向性をつかむこと
生活を過ごすような生徒になってしま
で、進学先の大学も将来のビジョンを
うという強い危機感があったという。
持って選べるようになります。そうする
「そこで、生徒たちの知的好奇心を
と、今の自分が身につけなければいけ
できるだけ煽っていけるような環境を
ないことが分かってくるので、目の前
整え、学ぶことの面白さ、知ることの
の授業に対するモチベーションが上が
楽しさを感じてほしいと思いました。
り、学習効果も向上します」と上村氏。
それが私たちの教育改革の、そもそ
成果は、徐々に表れてきているという。
ものスタートです」
(上村氏)
また、文 部 科 学 省 の 指 定を受け、
同校独自の教育プログラムのひと
ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ スクー ル
つに、
「多読」がある。これは、図書室
(SSH)/スーパーグローバルハイス
で英語の原書を辞書なしで読む授業
クール(SGH)の研究開発校としての
で、国際理解の基礎となる英語力を身
活動も行っている。SSHは「多様な場
につける目的と好奇心を尊重する目
で活躍し時代の科学技術系リーダー
的の両面から取り入れられた。読めな
となる人材」の育成と「国際性」
「問題
い単語があれば飛ばして読み、面白く
解決力」の育成を柱とした中高一貫プ
ないと感じたらすぐに本を変えてよく、
ログラムで、生徒が世界トップの研究
回数を重ねるうちに語彙力が培われて
機関と共同で研究開発を行うなどの
いく。読みたい本を自分で選べるよう
活動が行われている。またSGHは、ア
になるまでは、個々の生徒の語彙力と
ジアを中心に地域が抱える問題をどう
図書室の本の語彙レベルの双方を熟
解決していくのかを生徒たちに考えさ
知した指導者がフォローする体制だ。
せるところから始まる。高校では研修
そもそも英語教育に関しては、同校
旅行で、インド、ベトナム、シンガポー
創立当初から力を入れてきた。中学3
ルなどを訪問するが、自分の目で現地
2
学園長 上村 佳永氏
「電子黒板の導入で授業がスピーディーに
進むようになったので、いい緊張感が生ま
れるようになりました。またICTのおかげで
口頭や紙での連絡事項に時間をとられるこ
とがなくなり、事務作業の手間が省けたの
も効果の一つだと感じています」
学年部長
宮北 純宏氏
「教員は、タブレッ
ト端末の導入がきっかけに
なり、教科の壁を越えた交流が深まりました。
この連携をもっと深めていければと思ってい
ます」
の状況を知り、貧困など現地が抱える
確認やルール決定、そして学校として
問題を解決するためのアイデアを生
は保護者への事前の説明や理解を得
徒たちの目線で模索する。生徒たちの
るためのプロセスも踏まなければなら
柔軟な発想力から生まれたアイデア
ない。タブレット端末導入によって生
を、企業の協力を得てビジネスモデル
徒指導上の問題が起これば、予算と労
として成立させるのが目標でもある。
力をかけた導入が失敗に終わってしま
うだけでなく、保護者からの理解も得
進路指導室・情報科 井上 卓也氏
「ネットワーク環境が充実すればするほど、
管理者に作業が集中してしまう傾向があり
ます。そこをどう分散させるのか、連携をど
うとっていくのかも今後の課題の一つだと
思っています」
あらかじめ用意した板書内容をプロジェクターで映し出し、
書き込み可能な電子ペンを使って授業を行う。板書の一
部を隠し、進度に応じてめくっていくなどのデジタル機能も
簡単に活用できる
エプソンの湾曲黒板補正機能付き壁掛
け型電子黒板。82インチ16:10の大型
マグネットスクリーンで、教室の一番後ろ
の席からも見やすい
生徒からの発案で始まった
ICT教育環境の整備
られないだろう。だがそれも、生徒た
ち自身の手によって解決された。
「情報端末の導入は生徒たち自身が
このような独自の特徴的な取り組み
望んだことだったこともあり、生徒た
と活動から全国的にも注目されてい
ちが自主的にガイドラインを作ってき
る西大和学園だが、このたびタブレッ
ました。設置・設定にともなう準備など
ト端末800台や電子黒板などのI C T
の物理的な準備や、保護者の方への
機器を導入した。教育改革を進める
説明などを考えると、本来なら最低で
同校としては、教育業界のIT化を踏ま
も1年以上前から準備をしなければな
えると必然的な導入だったともいえる
りません。しかし、生徒たちが自主的
が、きっかけは意外なところにあった。
に進めてくれたので、検討を始めてか
学年部長の宮北 純宏氏はこう語る。
ら約半年、2015年8月には導入する
「学校をもっとよくしていくにはどう
ことができました」
(上村氏)
したらよいかという意見を生徒自身に
現在、同校では高校1・2年生全員
提案させたところ、あるグループから、
が1人1台のタブレット端末を所有し、
情報端末を授業に取り入れたらどうか
授業だけでなく自宅でも活用してい
という積極的な提案があったのです。
る。また、中学生は情報科の授業時の
もちろん簡単なことではありません
み、学校の備品として用意されたタブ
が、いずれは考えなければならないこ
レット端末を活用している状況だ。
とだとは思っていました」
また、同時に導入された電子黒板は
生徒からの自主的な要望は熱いう
各教室の黒板の上部にプロジェクター
ちに実現させていくことが、学習意欲
が設置され、必要に応じて黒板に板
に対するモチベーションの維持につな
書内容や画像を投影し、使用すること
がり効果が高いということを経験とし
ができるようになった。同校では以前
て知っていた同校は、さっそく複数の
から、一部ではプロジェクターを使っ
ベンダーから話を聞くとともに、大塚
た授業を行っていたが、授業のたびに
商会の実践ソリューションフェアなど
ポータブル型のプロジェクターを教室
にも足を運び、検討を開始した。
に持って行かなければならず、使用す
授業で一人一台タブレット端末を使う
るタイミングが重なれば教員同士で取
ことになれば、1クラス50人が一斉に
り合いになることもあったという。今で
ネットワークに接続することになる。安
は、電子ペンを使って投影した画面に
心安全なWi-Fi環境の整備も必要だ。
書き込みもできるので、板書の時間が
また、セキュリティ、運用面での仕様
圧倒的に短縮できるようになっている。
3
西大和学園中学校・高等学校
理想とする教育目標が
ICTの導入で実現
案をしていただけたことも、導入までの
確認事項や決裁ステップを減らし、判断
を早くさせてくれたと思います」
ICTの整備によって、授業の仕方だ
けでなく、生徒同士、そして生徒と教
員の関係性にも変化が表れた。
「例えば英単語を覚えるとき、これ
新たなアイデアにも
迅速に対応できる体制を
までは個人が単語帳を作っていまし
タブレット端末や電子黒板をはじめ
た。今では、英単語を覚えるためにア
とするICTの導入からまだ1年足らず
プリを活用し、クラス全員で分担して
だが、すでに目に見える効果を挙げ始
単語などを入力して、あっという間に
めている同校にとって、今後のICT活
学びやすい仕組みを作り上げてしまい
用に対する期待は大きい。
ます。私たちが指導しなくても、自然
「現在は、授業において教員1人対
にチームを作って協力して目的を達成
生徒50人というICTの使い方ですが、
するということができるようになって
ICTをより活用することで、今後はもっ
いるのです。なかには機器の利用に苦
と生徒同士が自主的に教え合い、学び
手意識がある生徒もいましたが、得意
合う教育へと進化できると感じていま
な生徒が講習会を企画し、フォローし
す。まずは10人ずつくらいのグルー
合っています」
(宮北氏)
プ内で生徒同士が教え合い、学んでい
生徒と教員の関係にも同じことがい
く活用を活性化させ、ゆくゆくは個人
える。機器の操作や技術面では、教員
同士で十分学び合える教育現場を実
が生徒たちから教わることもある。そ
現したいと思っています」
れに対して教員は、教育面でのアドバ
その兆しはすでに見えている。まだ
イスを与えることで応えていく。互い
有志ではあるが、コンピューター部部
にできることを理解し合ったうえで、
員が中心となってICT委員活動を行っ
生徒、教員、そして双方の自主的な要
ているのだ。こういうアプリを利用して
望を叶える環境を整える学校の立場
このような活用をしたい、といったアイ
と役割がはっきりしてきたといえるだ
ディアを積極的に提案してくるという。
ろう。誰もがリーダーであり、フォロ
「さらには、ICTの活用で教員と生徒
ワーでもある、これはまさに学校が目
との時間をもっと確保したいと思ってい
標としているリーダー教育の理想的な
ます。教員が抱える共通の事務的負担
形だった。
と業務課題を抽出して管理業務面の改
情報科を担当する教員の井上 卓也
善に取り組み、教員が今より本来の教
氏はこう語った。
育業務に注力できる時間を確保させた
「生徒たちの熱が冷めないうちに、と
いのです。企業同様に
「生産性」を高め
いう私たちの思いを受け止め、ICTの提
られるようなITの力を、大塚商会さんに
案から導入までたった半年という驚くほ
ぜひご提案いただきたいと思っていま
どの短期間で実現してくれた大塚商会
す」
と、上村氏は期待を寄せている。
さんの対応力は、本当にありがたいこと
生徒は一人一台iPadを持ち、授業中の利用もすでに浸
透した状態で活用されている
西大和学園中学校・高等学校のホームページ
http://www.nishiyamato.ed.jp/ny/
でした。インフラを含めてトータルな提
・会社名、製品名などは、各社または各団体の商標もしくは登録商標です。
・事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものであり、配付される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
・この記事は2016年3月に作成されました。
Copyright©2016 OTSUKA CORPORATION All Rights Reserved.
4