西安に於けるブラザー工業の工業ミシン事業展開 林 敏雄(西安兄弟標準工業有限公司総経理) <会社の概要> 西安兄弟標準工業有限公司は、名古屋を拠点に各種の事務機器・家庭用ファクシミリ・ 工業用及び家庭用ミシン・工作機械等の製造・販売を行っているブラザー工業と、当地西 安を拠点に工業ミシンの製造・販売を行っている中国標準ミシン集団有限公司との合弁で 1993 年に資本金 2,000 万 US$(出資比率 6 対 4)で西安高新技術産業開発区に設立され、工 業用本縫いミシン・糸切りミシン・オーバーロックミシンの生産を行い、中国国内はもと より世界各地に出荷しております。 事業規模は、従業員数約 500 名(内日本人 3 名)、生産能力約 2 万台/月、昨年の売上額 は約 3.6 億人民元で、輸出金額についてはブラザー工業の仲介販売で西安地区の第 1 位 (1600 万 US$)を続けています。 経営理念として「日本の品質を中国から世界へ・・・」を掲げ、顧客重視・品質重視の 事業運営に努め、中国ではいち早く 1998 年に ISO9000 の認証を受け、また昨年には中国 ミシン協会によるオーバーロックミシンを対象とした品質・性能評価で第 1 位に認定され ました(本年 5 月にも本縫いでも第 1 位に認定された)。 更に、企業義務として 1999 年に ISO14000 を取得し環境保護にも努めております。 <西安への立地理由> 世界経済のグローバル化に伴い製造業の海外移転が時代趨勢となっており、その対象国 として、政治的安定・人材・人件費・インフラ・部品業界の成熟度・市場規模・地理的距 離・文化の類似性等から中国が第一候補になることが多い。 中国に於ける企業立地は、地理的条件・関連業界の成熟度などから一般の業種では沿海 部が中心である。 工業ミシンに関しても、外資系企業も関連部品メーカーも多くが上海地域・天津などの 沿海部に立地し、ユーザーである縫製工場も沿海部が多いなか、地理的に不利な西安を選 んだ理由は、合弁相手先として選んだ中国メーカーの中で最高の技術力を有する標準公司 の所在地が西安だからである。 * 標準公司の尽力・人材提供で複雑な設立手続きも順調に進み、税関、税務、外貨管 理などの管理面の実務運営を円滑に遂行することが出来た。 * 製造・品質管理面についても標準公司からの人材提供・部品供給なくして順調な生 産立ち上げ・運営は、ブラザーの支援だけではあり得なかったと考えている。 又、市当局関連部門や高新開発区の支援も力強いものであった。 特に高新開発区の電気・水道・ガス・スティーム等のインフラの充実はありがたく、開 発区に適用される優遇税制も魅力である。 更に西安の利点を挙げるなら、北京に次ぎ大学が多い学園都市で人材が豊富で定着率 も高く、近年の人件費上昇率は高いものの、額的には沿海部よりは低い。 以上から西安地区の投資環境は総じて中国内で良いほうだと認識している。更に西部 大開発の中核都市として、その優位性は一層高まるものと思います。 <中国の縫製関連業界の状況> 1 工業ミシンの市場としての中国 2000 年の中国の縫製品生産量は全世界の 40%以上で、縫製関連従事者は 1 千万人程度、 各種工業ミシンの導入台数は 150 万台強と言われています。 昨年 12 月の WTO 加盟により各国の輸入規制枠が緩和されることと、経済発展に伴う 縫製品の国内需要の増加で、2005 年には 750 万人・250 万台との予測がなされています。 こうした動きは逆に中国以外の需要はある程度(かなり)減少することになり、中国市 場の比重が更に高まることが明確である。 又、縫製品の高品質に対するニーズは輸出向けのみならず、国内向けにも高まるものと 思われる。 2 生産基地としての中国 2000 年の中国に於ける工業ミシン生産量は世界の約半分の 250 万台とされるが、価格 競争力の観点から外資企業の中国生産が加速しており、世界の生産基地としての位置付け が、すでに確立されたと言っても過言ではない。 外資企業との取り引きで部品メーカーの品質が向上しつつあることや、自助努力によっ て、完成品の品質レベルはかなり向上しつつある。 上記縫製品に対する高品質ニーズの高まりと競争激化で、中国ミシン協会加入社だけで も 60 社を超える完成品メーカーは次第に集約されると思われる。 <ブラザーグループの西安に於ける事業展開> 上記の如く工業ミシンの市場及び生産基地としての中国の重要性に鑑み、更に西安の投 資環境から、ブラザー工業は合弁会社・西安兄弟標準工業有限公司に次いで、合弁先の中 国標準ミシン集団有限公司の協力の下に、特殊ミシンの生産を担当する独資子会社・兄弟 縫籾機(西安)有限公司を昨年 8 月に西安市内に設立し操業を開始して現地生産化の拡張 を強力に進めております。 又、開発部門につきましても、順次現地化する方向で計画を進めています。先に述べま した様に西安は学園都市であり優秀な人材が非常に豊富です。このような人材を有効に活 用すべく、今年の春より開発設計者の採用活動を開始しており、開発・製造・販売を一元 化して、より現地に密着した体制を整えていきます。 今後とも、標準公司との協力・連携関係を一層進め、標準公司・合弁会社・独資会社と で、当地西安を中国の、強いては世界一の工業ミシンの生産基地に成長させ、地元に貢献 して行きたいと考えています。
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