冷媒の環境課題に対するダイキンの方針

冷媒の環境課題に対するダイキンの方針
Daikin’s Policy
and Comprehensive Actions
on the Environmental Impact of
Refrigerants
ダイキンは、冷凍空調機器メーカーと冷媒メーカーの両面を持つグローバル企業として、
大きな
環境課題の一つである地球温暖化に対して、自社が製造する冷凍空調機器のエネルギー
効率の向上と環境影響の少ない冷媒を選択していくことで貢献します。
ダイキンの基本的な考え方は
『冷媒選択の多様性』
です。冷媒のライフサイクル全体にわたる
環境影響を低減するため、さまざまな側面から総合的な評価を行い、各機器の用途に合った
適材適所の冷媒選択を推進しています。
ダイキンが考える冷媒選択の方向性
キンが考える冷媒選択の方向性
性※
適材適所の冷媒を選択済み
R-32
CO2
家庭用エアコン
適材適所の冷媒を検討中
ビル用マルチエアコン
HFO
混合冷媒
R-32
チラー
給湯機
R-32
店舗オフィス用エアコン
R-32
冷凍冷蔵機器
R-32
HFO
ヒートポンプ式
冷温水空調給湯機
HFO・混合冷媒
R-32
CO2
アンモニア
※ ※
ダイキングループが現在販売している代
ダイキングループが現在販売している代表的な製品についての冷媒選択の方向性を示しており、
代表的な製品についての冷媒選択の方向
向性を示しており、
その他の製品では上図で
示す冷媒以外も使用される可能性があります。
ウインド型エアコンや家庭用冷蔵庫
示す冷媒以外も使用される可能性があり
ります。例えば、弊社では製造しておりませんが、
弊社では製造しておりませ
せんが、
には炭化水素系冷媒
(R-600a、R-290など)
、
カーエアコンにはHFO系冷媒が使用できる可能性があります。
炭化水素系冷媒
(
など)カ
ど)
にはHFO系冷媒が使用できる可能性があります
系冷媒が使
ダイキンの冷媒選択の考え方
ダイキンは各機器の用途に合った適材適所の冷媒を選択します。そのために、
1)安全性、
2)環境性、
3)
エネルギー効率、
4)経済性の観点から、総合的な評価を実施しています。
冷媒選択時の総合的な評価項目
(すべての機器に共通)
安全性
環境性
エネルギー効率
経済性
安全性
環境性
冷媒は、ライフサイクル全体(製造、輸送、貯蔵、
環境に直接影響を与える指標には、オゾン層破壊
機器における使用、据付、回収)
を通じて、安全に使用
係数
(ODP※1)
や温暖化影響
(GWP※2×機器ごとの
できなければなりません。
充填量)
があり、これらの値が小さい方が、環境性が
安全性評価においては、毒性や燃焼性といった
高いとされています。
冷媒物性のほか、ヒューマンエラーも含めた機器使用
省資源の観点から、機器のコンパクト化や冷媒
時のリスクについても観点にいれる必要があります。
充填量の削減に寄与する熱交換特性も重要な視点で
ある特定の機器において安全に使用できても、他の
あるほか、冷媒の生産プロセスにおける環境影響や
機器では充分に安全性を確保できない場合がある
冷媒のリサイクルのしやすさも考慮に入れる必要が
ため、製品群ごとの安全性評価の実施が必要です。
あります。
また、たとえ不燃で毒性の低い冷媒であっても、
必ずしも環境性が優れているとは言えない場合も
あり、多面的な評価が不可欠です。
エネルギー効率
冷媒のエネルギー効率は機器使用時のエネルギー
経済性
地球温暖化抑制のためには環境性の高い技術の
起因による間接的なCO2 排出に影響を与えます。
普及が必要です。普及のためには経済合理性がキー
そのため、ダイキンは、世界中のすべての気候帯に
となります。冷媒の価格や入手性のほか、機器の
おいて冷凍空調機器のエネルギー効率を向上させる
使用時や据付・メンテナンス時に過剰な安全対策を
ことが必須と考えており、それを実現できる冷媒を
要しないか、機器のコンパクト化に寄与するか、再生
選択しています。機器の普及が進むとCO2 排出要因
可能な冷媒であるか、低コストで再生ができるか
に占める冷凍空調機器の割合は大きくなるため、
などの観点も、冷媒を選択する際に考慮されなけ
機器のエネルギー効率を向上させることは、各国の
ればなりません。
CO2 排出量の削減に大きく貢献します。
※1 オゾン層を破壊する程度を定数値化した値。R-11
(CFC)
を1.0として、同一質量の他の物質が放出されたときのオゾンへの
影響を相対値で示すもの。
※2 温室効果ガスについて、
どの程度の温室効果があるかをCO2基準で表した値。一定期間での温暖化影響を積分値で計算。
ダイキンのめざす姿
ダイキンは、これまで機器のエネルギー効率の向上および気候変動への影響が小さい冷媒への
転換に取り組んできました。これにとどまらず製品のライフサイクルを通し、幅広いソリュー
ションの提供により、環境負荷の低減をさらに進めていきます。今後さらに重要度の増す、
冷媒の適切な回収・再生に向け、さまざまなステークホルダーを巻き込みながら、適切な制度や
インフラの確立などの仕組みづくりに取り組み、循環型社会の実現に寄与していきます。
冷媒にかかわる取り組みとめざす姿
1
2
冷媒メーカー
としての役割
機器メーカーとしての役割
機器・システムのエネルギー効率の向上と多様なニーズに
応える最適な冷媒の選択に取り組み続けます。
ニーズの多様性に応える冷媒を提供し
つつ、
冷媒の再生および再利用を実行し、
循環型社会をめざします。
冷媒メーカーとの連携による機器に応じた最適な冷媒選定
冷媒漏れの少ない機器設計
下記特性を持つ冷媒の開発/生産
省冷媒設計
温暖化規制に応じた冷媒
安全で妥当な価格の冷媒
機器の能力とエネルギー効率の
バランスを考慮した冷媒
冷媒の
開発/生産
再生/再利用のための技術確立
機器の
開発/生産
冷媒破壊
冷媒再生および
再利用
機器据付
冷媒
冷媒と機器の
媒
器の
ライフサイクル
ライフ
フ
クル
機器および
冷媒回収
3
ステークホルダーと
一体となった役割
ステークホルダーとともに、漏洩を防止し、確実な冷媒回収を
実施することによる循環型社会実現に向けて取り組みます。
確実な冷媒回収の実行および実現するための回収技術の開発
漏洩を防止する確実な据付
冷媒管理の徹底に向けた啓発/技術教育
回収/再生・破壊の新たなスキーム構築
機器使用
保守・
メンテナンス
ダイキンのこれまでの経験と今後
ダイキンは冷凍空調機器メーカーと冷媒メーカーの両面を持つ企業として、90年の歴史と
経験を持ち、常に環境課題解決のために先進的な取り組みを行ってきました。
2020年
国際的な冷媒動向の変遷とダイキンの経験
オゾン層破壊物質もなく、
温暖化影響の低い冷媒
国際的な冷媒動向の変遷
2010年
オゾン層破壊物質は有しないが、
温暖化影響の高い冷媒
2000年
京都議定書
第一世代冷媒
不燃・無毒であるが、オゾン層破壊物質を
有し、温暖化効果が高い冷媒
モントリオール
議定書
1980年
1990年
Continue to Innovate
R-32を使用した空調機を上市
CO2を使用した給湯機を上市
R-410Aを使用した
空調機を上市
R-134aを使用した
冷凍・チラーを上市
R-32
R-3
R
-32
32
3
2
CO
C
O2
HFO
O / 混合冷
混合冷媒
冷媒
プロパン
アンモニア冷凍システム
をラインナップ
ダイキンの経験
ダイキン
ダイキンは、これまで冷媒メーカーとしてオゾン層を破壊しない冷媒をいち早く市場に提供してきました。近年では空調機器メーカーとして
HFC-32
(以下、R-32)
を使用した空調機を世界に先駆けて日本で上市いたしました
(2012年11月)
。ダイキンはスプリット型の家庭用・業務用
空調機器において、総合的な観点から評価した結果、R-32が最もバランスの取れた冷媒と考えます。現在、空調機にR-32を選択するメーカー
は徐々に増えつつあり、販売地域も日本からアジア、欧州、中東などへ拡大しています。
今後に向けて:
The Sooner, The Better, for the Future
現在、モントリオール議定書をはじめとした国際的な枠組みで気候変動への対応が議論されています。
その中でダイキンは、冷媒による環境影響軽減に向けた議論に積極的に参画しています。また、環境影響
が小さく、エネルギー効率の良い冷媒を適材適所に使用するために、各国・地域に対して業界を通じて
情報提供をするなど、ルール形成にも貢献しています。
冷凍空調機器の環境影響を低減させるためには、メーカー・社会・環境など多角的な視点での取り組み
が重要です。ダイキンは、各国政府やさまざまなステークホルダーとともに、適材適所の冷媒の選択に
向けて今後も活動を続け、地球温暖化抑制に貢献してまいります。
お問い合わせ先
CSR・地球環境センター
〒530-8323 大阪市北区中崎西二丁目4番12号 梅田センタービル
TEL(06)
6374-9325 FAX(06)
6374-9321 E-mail: [email protected]
発行:2015年10月
一般空調機器
(スプリットエアコン、一体型エアコン/給湯・冷暖房機器)
機器の特徴とニーズ動向および冷媒選定の視点
冷媒選定の基本評価項目 :
安全性、
環境性、
エネルギー効率、
経済性
機器の特徴およびニーズ
節電効果が高く、ランニングコストが低いこと
家庭用、
業務用、
ビル用 安心して使えること
マルチエアコン
機器コストが安価であること
(特に小型機)
冷媒選定の視点
エネルギー効率
安全性
安全性
経済性
据付工事やメンテナンスが容易であること
作業容易性
少ないエネルギーで効率良く高温のお湯を作れること
エネルギー効率
給湯用タンクを小さくできること
設置容易性
寒冷地でも効率良く動作できること
エネルギー効率
既存の温水ボイラの配管を利用できること
作業容易性
給湯機
ヒートポンプ式
冷温水空調給湯機
機器に合わせた最適な冷媒選択
ダイキンはこれまでさまざまな冷媒(R-32、混合冷媒、自然冷媒、HFOなど)について、4つの基本的な指標
(環境性、エネルギー効率、安全性、経済性)
をもとに、総合評価を実施した結果、現時点ではスプリット型エアコンや
一体型エアコンではR-32が最適な冷媒であると考え、順次商品化を進めています。
そのために、R-32単独冷媒を用いた空調機の製造や販売に関する基本特許を全世界に開放したほか、安全性評価
の実施を行っています。
このような活動により、冷媒がすべてR-410AからR-32に転換されると、スプリット
エアコンでは冷媒転換のみで冷媒の温暖化影響の76%削減(GWP×機器の充填量)が
見込まれます。加えて、エネルギー消費量の削減も可能です。
また、世界各地域の気象条件や住宅環境、生活習慣の違いによって、お風呂・シャワー
や温水暖房など、必要とされるお湯の使用量や温度が異なります。例えば、大量のお湯を
必要とする場合はより高温のお湯を作ることができるCO2 が適切であり、お湯の使用量
が比較的少ない暖房と一体化したシステムなどではR-32が適していると考えています。
このように、冷媒を使い分けることで、ニーズに合った商品開発を積極的に進めています。
アプライド機器
(セントラル空調・産業用プロセス冷却機器)
機器の特徴とニーズ動向および冷媒選定の視点
冷媒選定の基本評価項目:
安全性、
環境性、
エネルギー効率、
主な用途
アプライド機器
全体
水冷チラー
• 空調用途
• 工場プロセス用途
水冷
• 大規模空間向け空調
• 対物冷却用途
産業用
• 対物冷却、冷凍、
ブライン・冷凍・
冷蔵用途
冷蔵用チラー
空冷
空冷チラー
• 家庭用、ライト
コマーシャル市場
向け空調
• 大規模空間向け空調
経済性
機器の特徴およびニーズ
冷媒選定の視点
• 熱源と二次側を組み合わせたシステム
全体におけるランニングコストを
低減できること
エネルギー効率
• 建物内の機械室への設置ができること
• 建物内の有効スペースを最大化できること
安全性
機器のコンパクト化
• 冷却対象への供給水温が安定していること
• 高い吐出温度へ対応できること
信頼性
安定性
• 家庭用∼ライトコマーシャル市場向けの
小型チラーや、工場などの
大規模空間向けの大型チラーなどの
幅広いラインナップに対応できること
幅広い用途への対応力
安全性
信頼性
機器に合わせた最適な冷媒選択
現在、
アプライド機器用の冷媒としては、機器
現状の冷媒
の特徴に応じて『R-410A』
『 R-134a』
『 アンモ
容量
(小)
ニア』などを適材適所で使用しています。
1.5RT ロータリー スクロール
スイング
(5kW)
地球温暖化防止の観点では、
「省エネ」
「GWP
総量削減」
を重要な軸と捉え、
多様な機器の用途
容量
(大)
65°
C
ボ
ターボ
3000RT
(10MW)
R-134a
R-410A
温水
給湯
に合わせて、最適な冷媒を選択してきました。
スクリュー
ターボ冷凍機
水冷チラー
将来の冷媒としては、容量や温度帯ごとに、
R-134a
R-410A
『HFO系(混合含む)』や『R-32』を含め幅広く
検討を進め、最適な冷媒を選択していきます。
ターボ冷凍機
空調
水冷チラー
さらに、利用者のニーズに合わせて熱源・二次
空冷チラー
側・制御を組み合わせ、最適なシステムの提供
に加え、冷媒管理も含めて、地球温暖化防止に
最大限貢献していきます。
‒35°
C
冷蔵
冷凍
R-717
R-404A
R-507A
ブラインチラー
冷凍・冷蔵用チラー
発行:2015年10月
低温機器(冷設機器)
食品や医薬品など空調より低い温度帯での保管が必要な商品を、
農家や物流倉庫などの生産地からスーパーマーケットなどの
販売の最前線まで、幅広い用途で適材適温で保管するための冷凍冷蔵装置
機器の特徴とニーズ動向および冷媒選定の視点
冷媒選定の基本評価項目 :
安全性、
環境性、
エネルギー効率、
経済性
機器の特徴およびニーズ
冷媒選定の視点
安全性
火気のある場所でも安心して使えること
経済性
節電効果が高く、ランニングコストが低いこと
エネルギー効率
工事・メンテナンスが容易であること。対応した機器、部品が容易に入手できること
作業容易性
品温の維持・管理のため庫内温度が安定すること
安定性 信頼性
中温エアコン(2-10HP)
スプリット式冷凍冷蔵装置(2-20HP)
コンデンシングユニット(4-20HP)
用途例
用途例
用途例
• 食品加工工場
• 食品梱包場
• 栽培設備 など...
• 低温倉庫
• 店舗
• スーパーマーケット など...
• スーパーマーケット
• 工場 など...
機器に合わせた最適な冷媒選択
冷設業界では、R-22代替としてR-404Aを中心に転換が進められてきましたが、当社では、GWPがR-404Aの
半分以下で機器効率にも優れたR-410Aへの転換を進め、業界に先んじて環境に貢献してきました。さらなる環境
貢献に向けダイキンでは『R-32』を中心に、使用環境に応じて『HFO系(混合含む)』
『 CO 2』なども候補に入れ、リ
スクアセスメントを実施しながら検討を進めています。
低温機器(海上コンテナ)
世界中の海上輸送において、温度管理が必要な貨物を運ぶコンテナ用冷凍装置
機器の特徴とニーズ動向および冷媒選定の視点
冷媒選定の基本評価項目 :
安全性、
環境性、
エネルギー効率、
経済性
機器の特徴およびニーズ
冷媒選定の視点
温湿度管理が必要なカーゴ
(貨物)
を安心安全に運べること
安全性
信頼性
経済性
TCO(Total Cost f Ownership) における
コストが低減できること
エネルギー効率
全世界(海上・港)
で機器のメンテナンスができること
グローバルでの入手性・
作業安全性、作業容易性
外気温度の変動
(50℃∼−30℃)庫内設定温度
(30℃∼−30℃)
に対応できること
幅広い温度域への対応
製品が12∼14年間、問題なく使えること
持続性・互換性
機器に合わせた最適な冷媒選択
ダイキンではこれまで、海上コンテナ用途では『R-134a』を冷媒として使用してきました。温暖化影響の抑制と
いう観点から、海上コンテナ用途の冷媒においても、さらに温暖化影響の低い冷媒への転換が求められています。
ダイキンでは、海上コンテナのニーズに対して優れた特性を有する
『R-32』
や『HFO系(混合含む)』
を候補として、
検討を進めています。それらを安全に使用するために、
リスクアセスメントの実施や、国際規格への貢献を行っています。
低温機器(船舶用エアコン)
船上で使われる専用の空調機や食料庫の冷凍・冷蔵装置
機器の特徴とニーズ動向および冷媒選定の視点
冷媒選定の基本評価項目 :
安全性、
環境性、
エネルギー効率、
経済性
機器の特徴およびニーズ
冷媒選定の視点
機器コスト・ランニングコストが低いこと
経済性
全世界(海上・港)
で機器のメンテナンスができること
グローバル入手性・作業安全性、作業容易性
船上
(密閉空間)
で安心安全に使えること
安全性
エネルギー効率
機器に合わせた最適な冷媒選択
ダイキンでは現在、船舶エアコン用途では
『R-404A』
を冷媒として使用しています。温暖化影響の抑制という観点
から、世界的に環境意識が高まり、船舶用途の冷媒においても温暖化影響の低減が求められています。
このような状況を受け、ダイキンでは現在『R-407C』商品ラインナップを完了し、さらなる低温暖化に向けて、
幅広い検討を進めています。
発行:2015年10月