教本とセッションで学べる プロのノウハウを凝縮 主要DAW

ダムス、ジェム、ペット・ショップ・ボーイズなどを手
グインをダウンロードして試す
がけるエンジニアであり、Wavesのプラグインの開発に
こともできる。iLokとDAWソ
も関わっている人物。そんなプロが普段行っているミキ
フトだけ持っていればOKだ。
シング手法が「∼だから、∼を使って∼の処理を∼のよ
楽曲は生楽器中心のロックサ
うに行う」というように解説され、ハッキリとした目的
ウンド、シンセを多用したリミ
とその解決法は、まさに目から鱗。ここまで教えちゃっ
ックス、アンプラグドなアコー
ていいの? という驚きの内容だ。
スティック・バージョンと3パ
1つ注意をするとすれば、本書はあくまで「ミキシン
DAWソフトやプラグイン・エフェクトの使い方は、製品マニュアルや解説本
を読めば理解できる。しかし、実際にどのように使い、ミックスを完成させてい
くのか、そのノウハウが明かされることはほとんどないのではないだろうか。そ
んな中、1つ1つの処理の仕方や方法、具体的なパラメーターまでプロのノウハ
ウを解説してくれるのが、OPEN MIXシリーズの「Hit Record with Waves」
。
141ページの書籍と5枚のDVDにはアレンジ、ミキシング、マスタリングの実
践的なテクニックが惜しげもなく語られている。これで学べば確実にレベルアッ
ターンが収録されているので、
グの具体的な方法論」について解説するものであり、エ
ジャンルによるアプローチでの
フェクターやDAWソフトの使い方やパラメーターの意
違いも体験することができる。
味などは割愛されているので、エフェクトの基礎知識は
メインとなるロック・アレンジ
ある程度事前に学んでおくことが望ましいと思う。とは
版は50トラックを超える大規模
言っても、セッション・データと本書をしっかり読んで
プロジェクトなので、音数やト
いけば、読み終わるころには基本的なエフェクトの使い
ラックの多い楽曲をいかにまと
方がマスターできていることだろう。
め上げていくか、というよくあ
る悩みを解決してくれるだろう
プできる、そんな全DAWユーザー必見の1冊だ。
主要DAWソフトに対応
し、各パートがどのように成り
画面1
いく
メイン・ミックスでは50トラックを超えるプロジェクトを使って、ミキシングを学んで
立ち、曲を構成しているのかと
いうアレンジ面での勉強にもなるはずだ。
教本とセッションで学べる
OPEN MIXシリーズ第2作の「Hit Record with
・ベース・トラックの編集
WAVES」。形式としては書籍という形を取っているが、
・エレキ・ギター
Nuendo、Pro Tools、Digital Performerといった主
ラグインでも同様のアプローチは可能だろう。
本書の中で「あくまで私が使っているテクニックです。
同梱される5枚のDVDにはCubase、Logic、
◇ ◆ ◇
私が用いている限りではうまくいっていますが、これが
DVDに収録されたDAWソフト用のセッション・ファイ
・アコースティック・ギター
要DAWソフトのセッション・データ(曲や内容はすべ
DAWソフトやプラグイン・エフェクトが手軽に揃え
ルと併せて読んでいくことで「どうしてその処理が必要
・ピアノ
て同じ)が収録。プラグインやフェーダーまでが設定さ
本書価格は1万80円と、決して安いものではないと思
どうすれば自分が気持ちよく感じるのかを探り、他のエ
られるようになり、自宅でもレコーディング・スタジオ
なのか」、「その処理を行うことで、ミックス全体にどの
・シンセサイザー
れた状態で学習を開始することが可能だ。また、これ以
うが、DAWを使うすべての人は一度目を通して欲しい。
ンジニアのアプローチをよく見て、そして、自分自身の
と同等の作業ができるようになって久しいが、どうして
ような変化があるのか」といった、具体的なミキシン
・ボーカル収録
外のソフトを使う場合も、マルチ・トラックのオーディ
プロのエンジニアがどのような手順とテクニックを使っ
法則を見つけるようにしてください」と語られている通
も思うようなミキシングができない、と思い悩んでいる
グ・テクニックの習得を実現する非常に実践的なミキシ
・ボーカル編集について
オ・ファイルを読み込むことで対応できる。
てミキシングしているのかを見られるケースはなかなか
り、曲作りやミックスという作業は決して正解があるも
人は少なくないはず。というのも、DAWソフトやプラ
ング教本だ。
ないと思うので、ミキシングに悩みを持つ人はもちろん、
のではない。しかし、ミキシングに対する取り組み方や
使用されているプラグインはすべてWavesの定番のも
曲作りの唯一の方法であるということではありません。
グイン・エフェクトの機能や使い方が分かっても、それ
●第二章 : Open Mix(オープン・ミックス)
の。セッション・ファイルで使われているプラグインは
すでに満足できるミキシングができる人にとっても本書
考え方は、どんなサウンドや曲でも共通する部分は多い。
をいかに使っていくかは別問題。解説本や書籍を読めば
・ドラム
Platinum以上のバンドルで揃えることができるが、7日
を読むことで得られるものは大きいはず。ちなみに、
本書はそんな基礎知識をしっかり学べ、応用も利かせる
・ベース
間フル機能を使用可能なデモ・バージョンのWavesプラ
Wavesのプラグインで解説されてはいるものの、他のプ
ことができる数少ない書籍だ。
そのソフトや機能のことは理解できても、実際に曲を作
プロのノウハウを凝縮
・アコースティック・ギター
る上で具体的にどうすれば良いのか、どのようなアプロ
ーチができるのかということは、文字だけでは理解する
ハードカバーで141ページからなる書籍には、各素材
のが難しいし、音としての“変化”を体験することで初
の下準備からレコーディング時のTips、パート別のエフ
・ピアノ
めて見えてくるものも多い。
ェクト処理、マスタリングまで、音作りの知りたい内容
・シンセサイザー
がすべて網羅されているといっても過言ではないだろ
・ボーカル
う。大まかな構成は以下のようになっている。
・リミックス・バージョン
例えば、EQやコンプレッサーの使い方。書籍では
「∼の音は∼Hz辺りをブーストして…」と書かれること
・エレキ・ギター
●本のコンセプトや執筆に至った経緯を教えてください。
したいプロデューサーやエンジニアのために執筆しまし
まず、私は自分のアナログとデジタル環境の中で得た
た。様々な音楽制作のテクニックや手法を網羅している
経験や知識を共有したかったから本の執筆をすることに
ので、ミュージシャンにとってもプロデューサー/エン
・キックに対する一連の処理
しました。また、今からこの分野に入ろうとしている若
ジニアにとっても何か新しい発見があると思います。
・ミキサーについて
・スネアに対する一連の処理
い人達にとって、古いアナログ機器に接する機会がない
・モニタリングについて
・ベースに対する一連の処理
と思うので、それらの概念を明らかにすること。そして、
・ドラム・トラックの編集
・エレキ・ギターに対する一連の処理
それを踏まえた上でアナログでやってきた方法と今現在
この本の内容が日本の読者の皆さんにとって何かしら
・ベース・ギター
・ボーカルに対する一連の処理
のデジタルでの方法の違いや類似性を提示してあげたか
のアドバイスや興味につながれば良いなと思っていま
ったというのが理由です。
す。日本の音楽シーンに興味のある私にとって、自分の
・アコースティック・バージョン
が多いと思うが、これはあくまで参考にしかならない。
というのも、EQで補正する音や他のトラックとの兼ね
●第一章 : トラック作成(その収録と編集)
合いで処理や目的はまったく変わってきてしまうから。
・ドラム・トラックの作成
●第三章 : アナログ機材を使った処理
文字で書かれている通りの処理を、使っている音やパー
・使用するマイクについて
ト構成の異なる曲で行っても、本当の効果は発揮してく
れないはずだ。
そこで、DAWソフト上のお手本セッションのデータ
を使いながら、書籍でミキシングの方法論を学べるのが
Hit Record著者、ヨアッド・ネヴォ氏インタビュー
本が日本で出版されることはとても素晴らしいことであ
●第四章 : マスタリング
・マスタリングとは
・マスタリングに使う機材
・Open Mastering
●読者に一言お願いします
●執筆にあたり、気をつけた点を教えてください。
この本はいろんな可能性を広げたいミュージシャンに
り、この本が私と日本の読者の皆さんとの架け橋になれ
ばと思っています。
だけでなく、より専門的な技術/手法のレベルアップを
これらの項目について、著者のヨアッド・ネヴォ氏に
よる素材や音作りの詳細、使用しているプラグインのパ
ラメーターに至るまで細かく解説。氏はブライアン・ア
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アーティストの創造力を最大限まで引き出し、新しい独特な趣
向と新鮮なサウンドを持つ作品を生み出し続けるプロデューサ
ー/エンジニア。20代から有名ミュージシャンのレコーディン
グ、プロデュースに携わり、同時にWaves Audio社に参加しレ
コーディング・スタジオのコンサルタント、プラグインの開発か
らデザイン、設計までも担当。今日リリースされているWaves
Audio社のほとんどの商品に関わっている。
オルタネイティブ・ポップ・バンドJemの「Finally Woken」、
クラブ・サウンドSophie Elis Bextorの「Murder on the
Floor」、インディー・ロック・バンドDandy WarholsやThe
80's Matchboxなど幅広いジャンルを手がけ、Pet Shop
Boys, Sugababes, Girls Aloud, The Bangles, Air,
Goldfrapp, Morcheeba, Bryan Adams, Duran Duran,
Moby, Dave Gahan作品にも関わっている。
www.yoadnevo.com
www.nevosound.com
写真1
お手本セッションを前に読み進めていけば、どうして、そこにその処理が必要だったのかが手に取るように分かる
写真2 主要DAWソフト用のセッション、エフェクト処理済みのオ
ーディオ・ファイル、Wavesのデモ・プラグインの合計6枚のディ
スクを付属
■問い合わせ:メディア・インテグレーション MI事業部 ■お客様窓口:03-3477-1493 ■http://www.minet.jp/waves
DiGiRECO 130|MARCH・2012
DiGiRECO 130|MARCH・2012
ヨアッド・ネヴォ(Yoad Nevo)
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