再帰最小 2 乗法による表面筋電図の適応ノイズ除去

再帰最小 2 乗法による表面筋電図の適応ノイズ除去
橋爪康知 野口義夫 徳島尚生
佐賀大学大学院工学系研究科生体機能システム制御工学専攻
Adaptive noise canceling on surface EM G w ith recursive least−square m ethod.
Yasutom o H ashizum e,Yoshio N oguchi,H isao Tokushim a
Advanced System s C ontrolEngineering,Saga U niversity,Saga,Japan
1 まえがき
本研究では入力信号 s(n)に測定した筋電図(図 2)、
表面筋電図では、筋内部で発生した 100m V p-p 程度
の活動電位が、人の導体組織中を伝導する際に大幅に
減衰し、皮膚表面では 1m V p-p 程度の微弱な信号とな
ってしまうため、ノイズの影響が大きいと考えられる。
そのため、本研究では再帰最小 2 乗(以下 R LS)適応フ
ィルタを用いて、筋電図のノイズ除去を試みた。
フィルタへの参照信号 r(n)として、ガウス分布によ
り発生させたランダムノイズ信号を用いた。
フィルタによって推定されたノイズ v(n)を図 3 に示
す。
2 R LS(R ecursive LeastSquares)法
R LS 法は信号の統計的性質を使用せず、適応過程
で必要となる逆行列の計算と、フィルタ係数の計算を
逐次的に行なう方法である。
フィルタ係数 w (n)は
w (n)= R −1P
R (n)= λR (n − 1)+ r(n)r(n)t
P = λP (n − 1)+ s(n)r(n)
図 2.s(n):筋電図
と表される。ここで、逆行列のレンマ
A −1uutA −1
(A + uut)−1 = A −1 −
t −1
1+ u A
u
を用いることにより、
1
R (n − 1)−1r(n)r(n)tR (n − 1)−1 
R −1(n)= R (n − 1)−1 −

λ 
λ + r(n)tR (n − 1)−1r(n) 
が導かれる。
また、R LS 法には、LM S 法や射影法、学習同定法
などの適応アルゴリズムよりも収束が速いという特徴
がある。ただし、系のインパルス応答が変化する場合
には、他の方法と同程度の収束速度となる。
本研究で用いた R LS 適応フィルタは、IIR 型のフィル
タであり、図 1 のようなブロック図で表される。
図 3.
v(n):推定されたノイズ
4 考察
R LS フィルタを筋電信号に適用した結果、比較的良
好にノイズ除去をすることができた。しかし、入力信
号の振幅が参照信号と比べ極端に低いところでは、う
まく機能しないため、入力信号のレベルに応じて、参
照信号を調節するといった課題が残る。
参考文献
[1]M .H .H ayes:StatisticalD igitalSignalProcessing and
M odeling,John W iley&Sons,Inc,1996.
[2]M etin Akay:Biom edicalSignalProcessing,
Academ ic Press,1994.
[3]S.ヘイキン著,武部 幹 訳:適応フィルタ入門,
現代工学社,1987
図 1 R LS 適応フィルタのブロック図
3 R LS フィルタの適用結果