佐賀裕実(Saga Yumi) どんな分野あるいは地域を専門に研究するにせよ、 「グローバル・リーダー」の名にふさ わしい経済分析者となるには、英語による意思伝達能力の養成が不可欠であることは言う までもありません。とりわけ、今回、開設された「EU におけるガバナンスと経済運営」の プログラムのように、ヨーロッパ諸国の現況の調査・分析に取り組むのであれば、ネイテ ィヴ・スピーカーに引けをとらない英語の運用能力が前提されてくるのは必然です。別言 すれば、刻々に展開していく EU 経済の現状について、正確な語彙を使い、的確な議論を英 語で展開することができなければ、どれだけ高度な知識・精緻な分析力の持ち主であろう とも、グローバルな場での活躍は望めないということです。求められるのは、今、動きつ つある EU について語る力です。 以上のことを踏まえて開講しているのが、「経済語学 A(および B)」と名付けられた英語 の選択コースです。このクラスでは、実際に放送された英語による経済関連ニュースを教 材化し、EU 諸国の経済の現況を音声と映像を通して理解するレッスンを行っています。と りわけ、ニュースの鮮度を重視し、理想的には 1 週間前、古い場合でも 1~2 か月前の経済 事象に焦点を絞ることを基本にしています。例えば、今学期に既に取り上げたトピックと しては、 「EU 圏における銀行家のボーナスの上限設定」、 「ギリシャ危機に伴う同国からの頭 脳流出」 、「キプロスへ危機とその国民生活への影響」などが挙げられます。いずれも所謂 ビジネス・ニュースの枠内で放送された話題であるため内容が高度に過ぎず、経済関連の 一般常識を英語で身に着けるような感覚で学ぶことができます。また、グローバルな場で は、自国の状況についても的確に説明・議論することを求められることが多いでしょう。 この点を考慮して、日本経済に関する英語ニュースもできるだけ取り入れるように努めて います。 「経済語学」が、EU の現在について時差を設けずに学ぶ枠であるのに対し、私の「基礎 ゼミ」においては、全く異なるアプローチによってヨーロッパの長い知の伝統を紐解いて います。テーマは、現代の思想家のチャールズ・テイラーによる自己(自我)論を基軸と して、ヨーロッパにおける「近代的な道徳的自我」の成立を辿るというものです。プラト ン、アウグスティヌス、デカルト、ロック、シャフツベリー、ハチスン、およびアダム・ スミスらの著述を通して、古代から近代までのヨーロッパにおいて、神、人間、理性と感 情などがどのように議論され、かつ、その中から現在にまで継承される「自我」の観念が いかにして生成されたのかを検証しています。将来的に経済の研究や分析に携わる学生さ んにも、こうしたヨーロッパの伝統的な思想の面にも関心を寄せてもらい、各々の専門を 極める上での補助的素養としてもらえたら、という思いを込めて開講している講座です。 研究科教員紹介: http://www.econ.hit-u.ac.jp/~koho/jpn/introduce/professor/EP_saga.html 研究業績・経歴詳細
© Copyright 2024 Paperzz