BOYS LIKE GIRLS

フロントマン交代を経て、ついに今春、新作を発売!
キルスウィッチ・エンゲイジのあらたな世界観とは!?
KILLSWITCH ENGAGE
BULLET FOR MY VALENTINE
BOYS LIKE GIRLS
DROPKICK MURPHYS
HADOUKEN!
MAN WITH A MISSION
BAD RELIGION
HATEBREED
FUNERAL FOR A FRIEND
HOLLYWOOD UNDEAD
BUCKCHERRY
ARCH ENEMY
COHEED AND CAMBRIA
BLACK VEIL BRIDES
THE SWORD
SHOTGUN REVOLUTION
HOLY GRAIL
MY DYING BRIDE
NEUROSIS
UNDEROATH
METALLICA
Northern19
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインの4作目完成!
フロントマンのマット・タックにロングインタヴュー!
!
KILLSWITCH ENGAGE - BOYS LIKE GIRLS
DROPKICK MURPHYS - HADOUKEN!
MAN WITH A MISSION - BAD RELIGION
HATEBREED - FUNERAL FOR A FRIEND
HOLLYWOOD UNDEAD - BUCKCHERRY
ARCH ENEMY - COHEED AND CAMBRIA
BLACK VEIL BRIDES - THE SWORD
SHOTGUN REVOLUTION - HOLY GRAIL
MY DYING BRIDE - NEUROSIS
UNDEROATH - METALLICA - Northern19
Vol.76
February - March 2013 Issue
特別両面表紙
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FREE! FREE!
Vol.76
February - March 2013 Issue
特別両面表紙
CONTENTS
GrindHouse Magazine
February - March 2013 Issue
グラインドハウス・マガジン Vol.76
www.grindhouse.jp
Latest Interviews
08 ......... BOYS
LIKE GIRLS
MURPHYS
12 ......... BLACK VEIL BRIDES
14 ......... THE SWORD
16 ......... MAN WITH A MISSION
18 ......... HOLLYWOOD UNDEAD
20 ......... BUCKCHERRY
22 ......... BAD RELIGION
23 ......... HATEBREED
24 ......... COHEED AND CAMBRIA
25 ......... FUNERAL FOR A FRIEND
10 ......... DROPKICK
BULLET FOR MY VALENTINE
Interview with
Matt Tuck
Pick-up Artists
26 ......... HADOUKEN!
27 ......... ARCH
ENEMY /
REVOLUTION
............. SHOTGUN
04
06
GrindHouse Disc Reviews
28 ......... 国内盤・輸入盤レヴュー
KILLSWITCH ENGAGE
Interview with
Adam Dutkiewicz
Next
Issue of
グラインドハウス・マガジン Vol.77 (April - May 2013 Issue)
フリーペーパー
2013年3月31日発行予定
ウェブマガジン
www.grindhouse.jpにて随時更新
What is GrindHouse!?
2000年の創刊以来、US、UK、日本を中心としたシーン最前線のロックアーティストを紹介してきた「グライン
ドハウス・マガジン」。情報提供のスピードアップと、誰でも自由に無料でアクセスできる手軽さを重視し、12周
年をきっかけにウェブマガジン&フリーペーパーとしてリニューアル! ウェブマガジンwww.grindhouse.jpに
は、アーティストのインタヴュー、ライヴレポート、ディスクレヴューなど、最新情報を随時アップ。このフリー
ペーパーでは、注目アーティストのロングインタヴューとカラーグラビアを厳選してお届けします。「グラインドハ
ウス・マガジン」フリーペーパーは毎奇数月末の発行。次号Vol.77は2013年3月31日発行予定です!
グラインドハウス・マガジン編集部
〒153-0052
東京都目黒区祐天寺1-20-8-301
有限会社 グラインドハウス
TEL: 03-3794-6405 FAX: 03-3794-6406
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発行人:有島博志/Publisher: Hiro Arishima
編集:権田アスカ/Editor: Aska Gonda
スタッフ:松本美和、望月裕介
Staff: Miwa Matsumoto, Yusuke Mochizuki
デザイン:一乃瀬光太郎 印刷:株式会社 八紘美術
2013年1月31日発行
Where to Get? [ 配布場所 ]
全国のタワーレコード、ディスクユニオン、HMVの店舗ほか、ア
パレルショップ、バー、ライヴやイベント会場にて、無料で配布
中! フリーペーパーの設置や配布にご協力いただける店舗も、随
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す。どうぞお気軽にご連絡ください!!
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February - March 2013 Issue
03
Cover Artists
ミドルテンポの曲を増やし、スピーディな曲を減らした。
̶前々作『スクリーム・エイム・ファイア』(2008
今回はスローな作風を求めた。多くの人たちがスピード感
年)までと比べると、前作はBFMVらしさをキープしつ
ことを歌った曲を作品に入れるけど、マットはどう?
のある方が複雑でヘヴィな曲が作れると思っているけど、
つ、少し作風が変わった印象を受けたのね。今作も前作と
まだ書いていないね。ツアーを含め忙しい生活をしている
実は逆でスローな方がよりヘヴィになるんだ。意図的にミ
はまたニュアンスやヴァイブが異なっている。もちろん
から、そういう曲を書く余裕がない。すべてが短期間のう
ドルやスローなテンポにすることで、曲にさらなるヘヴィ
BFMVの作品以外の何物でもないし、過去3作品のどれか
ちに起きる感じで、アックスワウンドだって、11日間で
さを与えるようにしたね。次に目指したのが、ミッドテン
らもそんなにかけ離れてないんだけど、そのかけ離れてい
アルバムの曲作りをしたしね。今後、時間ができて機会に
ポでメタルなサウンド感あふれる作品を作ること。そう
ないところで新しい領域を切り開こうという思いがあった
恵まれれば、ロックやメタルというジャンルから離れ、子
いった影響が散りばめられた作品になっているよ。これま
のかな?
供のことについて曲を書きたいとは思うよ。子供を持つと
でのような典型的なメタルアルバムを作ることもできたけ
バンドとしてキャリアが長いことが新しい領域を切り開かせ
いうことや親になるということなど、パーソナルなことに
ど、すべての作品が同じ作風になることを避け、1枚1枚
ているのかもしれないね。自分たちにある独特のサウンドと
ついて書いてみたいんだ。今は多忙だからと理由づけしつ
の作品にそれぞれ独特のヴァイブを持たせるようにした
アイデンティティを理解しているよ。それはとても重要なこ
つも、決して今後一切そういう曲を書かないと言っている
かったんだ。
とだから。常にそれを維持し、BFMVらしいサウンドを保つ
レット”“ライオット”“セインツ・アンド・シナーズ”
前作でドンとイイ仕事ができ、だからこそ今回も組んだっ
などの第一印象は強烈だったよ。
ていうこと?
そうした力のある表情豊かな曲も欲しかったんだ。だか
そう。ドンとの関係は上々さ。前作では互いのことをまだ
ら、いかにもスタジオで歌っている感じではなく、もっと
よく知らなかった。スタジオでの仕事ぶりとか、互いの性
わけじゃないよ(笑)。
̶新作をどういう作品にしたいと思い描きながら曲を書
き、制作に挑んだの?
ある特定のことを思い描いたという感じではなかったけど、
特定 の領域 に留 まらず
新作 でさら なる進化 をとげた、
ブレット・フォ ー・
マイ ・ヴァレンタイン を聴 け!
Interview with
̶プライベートな質問だけど、2010年3月に第一子が
生まれたじゃない。アーティストによっては自分の子供の
いくつかアイディア程度のものは最初からあった。まず、
リズムのテンポ面でこれまで以上にスローにすること。
Matt Tuck
̶いよいよ新作『テンパー・テンパー』が発売を迎えるね。
前作『フィーヴァー』から約3年。ブ
パフォーマンス感あふれるヴォーカルに挑戦した。まるで
格やユーモアの度合いとかも。現場で互いを理解しようと
発売が楽しみだし、作品にはとても満足しているよ。すばらしい出来だし、これまで発売してきたなかでもベストな作品さ。
レット・フォー・マイ・ヴァレンタイ
ライヴで歌っているときのように躍動感のあるヴォーカル
したんだけど、最初はどうしてもストレスが溜まった。曲
ンが4枚目のニューアルバム『テン
ように心がけている。と同時に、常に新しい領域を探し求め
にね。それに、作品全体をライヴのように伸びがあり、
作りの手助けをしてくれたり、自分たちがなにか違うこと
パー・テンパー』を発売する。『ザ・
ていることも事実。アイデンティティを保ち続けるのも重要
エッジも豊かなものにしたかった。だからライヴ感あふれ
に挑戦するよう助言してくれる人なわけだから、相手のこ
だけど、フレッシュさを求めることも大切で、新作ではドラ
るレコーディングをし、本当に必要だと思わなければオー
とをよく知らないっていうのはちょっと微妙じゃない? ムとヴォーカルパートを刷新している。だけどギターやテク
バーダブもしなかった。ヴォーカルに関しても、できる限
だけど、前作でそういった経験があったからこそ、互いの
ニックにおいては、これまでと同じなのが、聴けばわかると
りライヴで再現できるような歌い方をしたんだ。そこをわ
関係をうまく構築できた。おかげで、新作制作では前のよ
思うんだ。そこが、これまでと違うところだと思う。部分的
かってもらえてうれしいよ。
うなぎくしゃくした感じが取り去られた。以前よりリラッ
に変化を加えることで、いつもの自分たちのアイデンティ
̶もちろん、ジェイソン“ジェイ”ジェームス(b,vo)
クスできたし、楽しんでやれた。ドンとは友人にもなれた
ソングライターとしても、またバンドとしても最善をつくし、これ以上ないくらい作品が輝きを増すように作り上げた。
̶昨年8月には完成していたわけだから、今はかなり客観的に新作を捉えられる時期にあると思うけど、今の話だと当
然胸を張って断言できる自信作だよね?
新作には100%満足しているし、今聴いても変更の必要性をどこにも感じない。1曲1曲がキラーチューンさ。同じリズム
パターンなどの繰り返しもなく、過去の曲と重複した感じもないし、最高のメタル作だ。これ以上にないくらいの最高の
サウンドプロダクションだし。スタジオを出たときの印象と、今現在のそれとの間に変化はないな。曲作りを始めたとき
となんら変わらない。当初と同じフィーリングを今も感じる。すべてが揃い、あるべきところにちゃんとあるという感じ
ポイズン』(2005年)など初期2作で
確立した彼ららしさを維持しながら
も、前作では音楽的新境地を切り開く
などの大きな進化・成長をとげた。そ
がするから。
れは一部のファンの間で物議を醸した
ティを保ち続けながらも、常に新しく活気のあるバンドとい
のスクリームも健在だけど、マットはこれまで以上に多く
し、すべてがバッチリ合ったんだ。
̶昨年は新作を完成させ、並行してサイドプロジェクトであるアックスワウンドのアルバム『ヴァルチャーズ』も出
けど、新作ではさらに前へ前へと歩を
うイメージが作り出せるんだからね。
の声色を使っているよね。コーラスパートもちょっと感じ
̶今作でリスナーにもっとも伝えたい、そして一緒に共
し、ライヴも演ったりしたので、例年とはまた違う充実感があったんじゃない?
進めている。
̶新作には2分台の曲もあるし、曲の尺が過去のどの作品
の違うものがあるし。
有したい音楽的なこと、歌詞的なことってなに?
そのとおり。最高の年だったよ。静かな年になるかと思いきや、アックスワウンドとして活動し、ブレット・フォー・マ
マット・タック(vo,g)に話を聞いた。
より短いね。ムダを削ぎ落としたっていう言い方もできる
先に言ったヴォーカル面を刷新したっていうのは、まさに
特に共有したいことは考えていなかったな。歌詞はアルバ
けど、それ以上に1曲1曲の純度、濃度を高め、聴く人に与
そういうことでね。インスピレーションあふれる、独特の
ムタイトルが物語るように、怒りのこもった内容でね。短
えるインパクトをさらに強めたっていう気がするんだけ
声色にしたいと思ったんだ。だからいろいろなヴォーカル
気を起こしたりして自己制御不能になったり、世のなかや
ど、もしかして今作でそれに一番こだわったんじゃない?
スタイルとテクニックに挑戦した。それはコーラスパート
家族や友だちに怒りを覚えることについて書いている。
ず、ほかの空港から本国に引き返したっていう話を聞いたよ。JEFF KILLED JOHN時代を含めるとマットのバンド歴は
曲の尺を短くすることで、もっとパワフルな作品を作りた
も同じ。自分の声でありながらも違う側面を引き出してい
BFMVとしての人生やツアー生活はすばらしいけど、不安
15年近くになるけど、こういう経験はこのときが初めてだったんじゃない?
かったというのが本音でね。前は最短でも1曲が4分から5
る。それでも、もともとのアイデンティティはそのまま
定でクレイジーな人生でもある。歌詞の多くでは、BFMV
日本にはもう何度も行っているし、前にも地震を体験していたから、初めての経験という感覚ではなく、自然が猛威をふ
分の長さだった。だけどそれはもうすでにやってきたこと
キープしている。このことを念頭に置き、違うトーンに
であることはタフなことでもあるということを歌ってい
るうさまを目の当たりにしたっていう思いだった。日本では何万という人々が大きな被害を受けたわけだから、それを考
だから、今回はもっとパワフルで短い曲を作りたかったん
シャウトにスクリーム、そしてこれまでとは異なった歌い
る。バンドのことは好きだし、すばらしい仕事だし、自分
えるといたたまれないけど、自分たちが危機を回避できたことに感謝している。あのときはちょうど飛行機が成田に着陸
だ。音楽的なことを濃縮・凝縮するために、つなぎの部分
方などにチャレンジした結果、とてもイイ効果を生むこと
たちも好きでやっているけど、ときに体力的にも精神的に
寸前だったけど、機長が不可能と判断し、着陸地を変更することになった。それで、台湾の台北へ路線変更したんだ。混
を短めにした。素早く本題に入ることで、曲自体を短くで
ができたと思う。
も過酷なんだ。BFMVの実生活に迫る歌詞さ。もし共有し
乱し、恐怖に包まれた瞬間だったよ。まったく事態の把握ができず、その深夜にTVで、日本でなにが起きていたかを知る
きる。曲頭ですぐにヴォーカルが入るとかさ。その方がコ
̶今回もプロデューサーはドン・ギルモアだね。前に
てもらえるなら、普段は外側からしか見えないBFMVの実
ことになった。恐ろしい光景だったし、ホテルの一室で混乱した。公演が中止になったわけだから、ファンには申し訳な
ンパクトで滑らかだし、断然おもしろいよ。
マットは人を信頼し、心を開くまでに時間がかかるって
生活を体験してほしいな。
いし、残念ではあるけれど、実際にこの地震を体験した日本の人々のことを思えば、ライヴのひとつがキャンセルになっ
̶それぞれの曲の表情、性格もより豊かになったよね。
言っていたじゃない。で、前作制作中にドンに対してその
たことなど、オレの人生のなかではとるに足らないことさ。
“ブレイキング・ポイント”“ダーティ・リトル・シーク
ハードルを少し下げたとも言っていたけど、ということは
イ・ヴァレンタイン(BFMV)の新作制作をしたりと忙しかった。とても達成感のある年となったよ。
̶2011年3月、アイアン・メイデンやライズ・トゥ・リメインと日本で共演することになっていたけど、東日本大震災
で公演が中止になったじゃない。震災のあった11日、バンドは飛行機で日本へ向かっていたけど、成田空港へは降りられ
04
February - March 2013 Issue
文・有島博志/text by Hiro Arishima
translation by Miki Yonezawa
February - March 2013 Issue
05
Interview with Adam Dutkiewicz
しかしこのリリースにあたって、気にかかることがいく
のか…という思いもある。疑っているわけではなくて、
OF WAR: BLOOD & METAL』(日本盤未発売)に“My
つかある。まず、今回の新作は、2009年発売の前作『キ
ジェシーとハワードはシンガーとしてタイプが違うのだ。
Obsession”を提供しているが、当然これはハワードが
ルスウィッチ・エンゲイジ』から実に4年ぶりとなるこ
試しに、ジェシーが参加している『キルスウィッチ・エン
ヴォーカルを取っている。ジェシーが歌うことを前提にし
と。シーンの回転はますます速くなり、さまざまなバンド
ゲイジ』(2000年)と『アライヴ・オア・ジャスト・ブ
た、キルスウィッチ・エンゲイジとしての純粋な新曲に関
がデビューしては消えていくなかで、この年月はかなり長
リージング』(2002年)の初期2作品と、ハワードによ
して、現段階では知る術はない。アダムも少しだけ作風に
いものだ。もちろん彼らは、なにかにつけてツアーやフェ
る『ジ・エンド・オヴ・ハートエイク』(2004年)、
ついて教えてくれたが、「ファストな曲が多い。ギターリ
スティバル出演を続けてきた。しかしそれも、アメリカや
『アズ・デイライト・ダイズ』(2006年)、『キルス
フが満載で、もちろん歌やスクリームのパートもたくさん
は、いやでも期待がかかる。今回はギタリストのア
ヨーロッパでのことなので、たとえばここ日本ではなにか
ウィッチ・エンゲイジ』(2009年/注:セルフタイトル
入っている。柔軟性のあるアルバムだよ。ジェシーが戻っ
ダム・デュトキエヴィッチへのメールインタヴュー
トピックがないと、その情報はメディアを通じて知ること
作は2枚ある)を聴き比べてみてほしい。ジェシーは絞り
てきたことで、ヴォーカル面での変化は感じられると思
での発言を抜粋しつつ、バンドを再考察してみた。
ができない。やはりライヴをやるか、アルバムなど直接
出すような声で叫んでおり、テクニックよりも表現重視な
う。アグレッシヴさを損なわないまま、そこかしこでメロ
次号では、より新作の内容に踏み込んだインタ
ファンが触れることのできるものをリリースするかしない
タイプだ。ジェシーはバンドがブレイクし始めたころのツ
ディを際立たせた作風だ。バンドの自然な進化を反映させ
ヴューをお届けする予定だ。
と、アテンションを維持するのは難しいのだ。キルス
アーに関して、「テクニックと感情表現のバランスがわか
た作品だけど、変わらずキルスウィッチ・エンゲイジの作
ウィッチ・エンゲイジはこれまで、基本的に2年に1枚の
らず、すぐにノドをつぶしてしまっていた」と振り返って
品だ」という説明にとどまっている。ぶっちゃけ、いかよ
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki
ペースで作品をリリースしてきた。前々作『アズ・デイラ
いる。それほどの身を削った表現こそが、根強いジェシー
うにも解釈できる発言だ(笑)。さすがにミックスもマス
translation by Miwa Matsumoto
イト・ダイズ』(2006年)と前作の間は3年と少し長
のファンを生み出したわけだが、その身体的なことのほ
タリングも終えていない中では、話せることはどうにも限
かったが、今回ほどではない。今こそバンドの真価と底力
か、精神的な面での疲弊が、彼の脱退を招いた要因でも
られてしまうのだろう。
が問われるときだ。
あった。
前述したとおり、キルスウィッチ・エンゲイジはハード
そしてもうひとつどうしても見逃せないのが、バンドが
対してハワードは、声量を生かして声色をコントロール
コアとデスメタル両方から影響を受けたバンドだ。もともと
フロントマンの交代をしているということだ。2002年に
するタイプ。どちらがいいということではない。それぞれ
アダムとジョエル・ストローゼル(g)はAFTERSHOCK
加入し、約10年間にわたってバンドのイメージを決定付
スタイルはもとより、体のつくりが違うのだ。より細かな
で、マイク・ダントニオ(b)はOVERCASTで活動してい
けてきたハワード・ジョーンズが昨年初頭に脱退。数人と
テクニックや声量が必要とされるハワードの曲を歌いこな
たメンバーだった。前者にはアダムの兄であるトビー
のオーディションを経て、なんと初代シンガーであるジェ
すことは、並大抵のことではないはず。僕自身もそれを危
(vo)が、後者には現シャドウズ・フォールのブライア
シー・リーチが電撃復帰した。2002年の脱退後、
惧していたひとりだ。先にあげたロードランナー設立25
ンらが在籍していたことでも有名だ。解散後に双方からメ
SEEMLESSやTHE EMPIRE SHALL FALLのほか、いく
周年記念ライヴを収録したDVD『ロードランナー・ユナ
ンバーが集まり、いっしょにスタジオ入りしたことが結成
つかのプロジェクトで活動してきたジェシー。脱退後も
イテッド∼ザ・コンサート』(2008年)でハワードと
のきっかけとされている(どちらも後に期間限定で再結成
2005年に行われた所属レーベルRoadrunner Recordsの
ジェシーが“マイ・ラスト・セレナーデ”を歌っている映
した)。つまり、もともとキルスウィッチの主戦場はハー
設立25周年記念ライヴで共演するなど、バンドとの交流
像を観ることができるが、安定したパワーでハワードが圧
ドコアシーンだったのだ。もちろん、当時はすでにメタル
は続けていた。それに、2010年にハワードが個人的な理
倒していた感がある。ジェシー復帰の一報を聞き、彼の歌
とハードコアの境目は曖昧になっていたし、メタルバンド
由からツアーを離脱した際はヘルプとしてフロントに立っ
うキルスウィッチのライヴが日本で実現する可能性に喜ん
と共演する機会も少なくはなかっただろう。ただ、こう
たり、アダムと再び手を組みタイムズ・オヴ・グレイスを
だものの、「大丈夫なのか…?」とも思った。いくら同じ
いった前身バンドやキルスウィッチ・エンゲイジの初期音
結成。2011年に『ザ・ヒム・オヴ・ア・ブロークン・マ
メンバーがやっているとはいえ、タイムズ・オヴ・グレイ
源を聴くと、明らかにハードコアの要素が強いことがわか
ン』をリリースしたりもしていた。そういったことが伏線
スを比較対象にすることもできない。…で、迷ったあげ
る。ハワードが加入して以降、よりツインギターの絡みが
ひとつの時代を作ったバンドが動き出す瞬間というもの
としてあったものの、ジェシー自身も、あくまで候補者の
く、誘惑に勝てずにジェシーが歌っているライヴ映像を観
増えたし、いわゆるモッシュを誘発するようなパートも
には、心が動かされずにはいられない。メタリカや
ひとりとしてオーディションを受けたそうだ。そのオー
た。2012年6月1日∼3日にドイツのニュルブルクリンク
減っていき、メタル化していった。2006年にディオの
KORN、リンキン・パーク、スリップノット、リンプ・ビ
ディションやジェシーの復帰に関して、アダムは次のよう
にて開催されたRock am Ringのものだ。彼らは初日に出
“ホーリー・ダイヴァー”をカヴァーし、メンバー全員で
に語っている(以下、発言はすべてアダムのもの)。
今号の表紙を飾ったブレット・フォー・マイ・ヴァ
レンタインとともに、2013年のメタルシーンを掌
握するのは、間違いなくこのキルスウィッチ・エン
ゲイジだ。再びのフロントマン交代を経ての新作に
演し、約40分のセットを披露していた。ハワードの曲を
RPGゲームよろしくのコスプレ(しかもアダムがお姫
がなにかアクションを起こすとなれば、一気に視線が集ま
「オレたちは、バンドとして正しい選択をしたと思ってい
中心に数曲、映像を観てみたのだが、結論から言うと、
様)を披露するPVまで制作したのも象徴的だ。しかし
る。それがひさしぶりの始動であれば、なおさらだ。必ず
る。もちろん、キルスウィッチ・エンゲイジというバンド
まったく問題ない。ジェシーは以前より歌がうまくなって
ジェシーは、ライヴで7 SECONDSやバッド・ブレインズ
しもポジティヴなものばかりではないかもしれない。「大
のオリジナルシンガーであり、ずっとオレたちの友だちで
いるだけでなく、声量、パワーも格段にアップ。彼自身特
といったハードコアパンクバンドのTシャツをよく着てい
丈夫か?」「今度はなにをやらかすんだ?」̶̶そういっ
もあったジェシーは、ほかの候補者より有利な立場にいた
訓を積んだのか、SEEMLESSやTHE EMPIRE SHALL
る。彼が加入したことでハードコアの要素が復活し、原点
た不安の混じった声もあがるだろう。そして、実際に作品
ことは否定しないよ。だけどオレたちはあくまでバンドと
FALLでの活動のたまものなのか、それは正直わからな
回帰的な作風へとシフトする可能性は十分にある。同時
をリリースすれば、賛否両論とともに上へ下への大騒ぎと
しての判断を優先したんだ。ほかの候補者も、キルス
い。もしかしたら昔よりもちょっと太ったことも無関係で
に、ジェシーのスキルアップしたヴォーカルを生かし、こ
なる。今度は、キルスウィッチ・エンゲイジの番だ。
ウィッチ・エンゲイジの曲をすべて歌える、実力のあるシ
はないのかもしれない。まぁ、それはいずれジェシー本人
こ最近の作風を推し進めてくることも予想から外すことが
キルスウィッチ・エンゲイジは、マサチューセッツ州
ンガーばかりだったから、悩んだよ。いろいろ考慮してみ
に確認する機会を待つことにするが、アダムの発言がウソ
できない。もしかしたら、こういった憶測を根底から裏
ウェストフィールドで1999年に結成され、ハードコアと
た結果、ジェシーがこのバンドにもっとも適任だと思っ
でも、大きく言い過ぎたわけでもないことはわかった。
切ってくるかもしれない。しかし、どのようなアルバムを
デスメタル双方からの影響を絶妙なバランスでブレンドし
た。オレたちの曲をまた彼が歌ってくれることになって、
そしてリリース日が刻一刻と迫る新作の内容なのだが、
出してくるにしろ、キルスウィッチ・エンゲイジというバ
た、メタルコアシーンのパイオニアだ。その彼らが、今年
うれしいよ。彼自身もとても興奮し、喜んでくれた。辞め
3月27日にリリースされるということと、『ディスアー
ンドの根幹が変わることはないはずだ。彼らが素晴らしい
の3月に通算6作目となる新作をリリースするのだ。バン
たハワードが作った曲には独特のエネルギーや躍動感が
ム・ザ・ディセント』というタイトルで12曲入りである
アルバムを携えて、再び僕たちの前に戻ってくることは間
ドの頭脳であるアダム・デュトキエヴィッチによれば、レ
あったけど、ジェシーはそれを見事に歌いこなしている」
ことが明らかになっている。先行シングル“イン・
違いない。新作はもちろん、ジェシーにとっても初となる
コーディングその他に9ヵ月を費やし、現在はミックスと
ここまで言われては、文句の付けようがないだろう。
デュー・タイム”も、2月5日より配信開始予定だ。ただ
来日公演にも期待したいと思う。
マスタリングの作業に入っているとのこと。
ジェシーがバンドに復帰するのは必然だったのだ。
し、これを書いている1月8日の時点では、サウンドに関
次号では新作に関するインタヴューをお届けする予定だ。
ただ、アダムが「ジェシーはハワードの曲も歌いこなし
してはなにも明らかになっていない。2010年にビデオ
ている」と断言しているとはいえ、実際のところはどうな
ゲーム『GOD OF WAR』シリーズのサントラ的なEP『GOD
ズキット、オフスプリング、ザ・プロディジーなど、彼ら
06
February - March 2013 Issue
February - March 2013 Issue
07
Cover Artists
KILLSWITCH ENGAGE
カウントダウン開始!!
4年ぶりとなる
キルスウィッチ・
エンゲイジの
6作目が今春発売に!
人間的にも音楽的にも大きくなったボーイズ・ライク・ガールズが3枚目の新作でカムバック!
キラキラしたメロディと、はっちゃけ感の強いヴァイブで、パンキッシュなロック好きに人気
を博したボーイズ・ライク・ガールズ。そんな彼らが、しばしの活動休止期間を経て、3年ぶ
りのニューアルバム『クレイジー・ワールド』をリリース。再びシーンに戻ってきた! 活動
を休止していたこの長い期間が、バンドをあらゆる方向に向けて成長、進化させたようだ。ギ
タリストのポール・ディジョバンニに話を聞いた。
文・有島博志/text by Hiro Arishima translation by Sachiko Yasue
BOYS LIKE GIRLS
やめた!」と言ったわけではなかった
̶で、新作だけど、CDを聴く前に、ジャケットにドーンって出ているバンドの表
し、様子を見ようっていう感じだった
情を見て、デビュー作『ボーイズ・ライク・ガールズ』(2006年)や前作の時代は
んだ。その間にメンバーそれぞれが自
卒業し、大人になったなって思った(笑)。そういう意識ってあった?
分のことをやりつつ、連絡を取り合っ
そうだね、少しは大人になったかな。タイトなTシャツを着て、ネオンの下でダンス
ていた。それから1年ぐらいしてからか
をするっていう時代は終わったということさ(笑)。あのジャケットは、いつもイイ
な、マーティンがボクとジョンにいく
写真を撮っている友だちに撮影してもらったんだ。私服を着て、ロサンゼルスの自然
つか曲を送ってくれて、“ロサンゼル
の中、車を走らせ、いつもの姿を撮ってもらった。今回は奇をてらうんではなく、今
スにこないか? レコーディングしよう
のありのままの自分たちをとらえたかった。山ほど撮ってもらったけど、全員が気に
ゼ!”って言ってきた。だから、“よ
入ったのがあの写真だったんだ。ボクたちのうしろに、白い柵があるだろ? その柵
し、やろう”っていう話になったん
が、バンド名とボクたち4人の間の絶妙なところに位置していて、見た目的にもクー
だ。タイミング的にもちょうどイイ気
ルだと思った。ちょっと大人になったボクたちの姿も映し出しているから、これでい
がしたしね。
こうってことになったんだよね。スタイリストがついたわけでもなく、いつもの格好
̶活動休止状態を解き、新作制作に
で決して気取らず、じゃあ、このへんで撮ろうか、みたいに自然な形で生まれたもの
突入してから間もなく、ブライアンが
なんだ。
脱退したよね。
̶新作はマーティンによるセルフプロデュース作だね。なぜ、今回そういう方法を
あれは、大きな決断のひとつだった。
とったの? そして、マーティンに冷静かつ客観的に曲や作風などを捉えてもらえる
ブライアン自身の音楽的興味が、ボク
よう、まわりはどんな助言をしたの?
たちのそれとはズレ始めていたし、
今作が復帰作っていうことを強く意識していたから、今回は自分たちでやろうって話に
ムード的にも少し外れてきていたん
なったんだ。マーティンは最近よくプロデュースや曲作りをしているし、イイものを
だ。再結集するときには、全員が同じ
作っているから適任だった。自宅にスタジオも作ったし。全員でアイツの家に泊まり込
認識のもとから出発したかった。みん
んで作った作品なんだよ。みんなで話し合い、全体像を掴みながらね。イイやり方だっ
なで連絡を取り合っていたけど、ブラ
たと思う。大体はマーティンが主導権を握っていたけど、ボクもジョンもきたんなく意
イアンはときにはなかなか捕まらない
見が言えたし、方向性に関する助言もできた。いろんなプロデューサーのところに飛ん
こともあった。伝言を残しても折り返
でいくよりもよかったと思うな。もしかしたら次作は外部プロデューサーを使うかもし
しがなかったこともあったし。で、
れないけど、今回はマーティンにやってもらってよかったと思う。その方が、ボクたち
いっそのこともう、ブライアンのこと
らしい気がするし。
は切り離して考えようってことになっ
̶とはいえ、新作を初めて聴いたとき、正直ビックリしたよ。前2作とベクトルが違
たんだよね。
うし、描く世界観も異なるから。なぜ今回、前とは違う方向性でいくことにしたの?
̶確かにブライアンは前々からハー
いろんな理由があるんだ。音楽のトレンドが少し変わったし、ボクたちの曲の書き方
ドコア好きといったように、方向性の
も変わった。だから、今回は曲を書いたあとのプロダクションを変えたんだ。大きな
違いが大きかったよね。かつEMBだけ
壁に囲まれ、ドラムからヴォーカルまで、なにもかもをデカい音を出しつつ録るん
ではなく、もうひとつTHE TOWER
じゃなく、よりオーガニックに作った。その方が、強弱が出ると思ってね。おかげ
AND THE FOOLもかけ持ちしていて、
で、何度も聴き返したい作品になったと思うよ。今まではベースとギターとドラムの
それらがBLGの活動の妨げになってい
音があるだけだったけど、今回はギターもエレクトリックとアコースティックの両方
̶2010年1月に実現した前回の来日以降、ボーイズ・ライク・ガールズ(BLG)
̶アパレルブランドは前々からやりたかったの?
たとも聞いたけど、アナタはEMBをブ
を使ったし、マンドリンも入れたし…。ボクたちはみな、トム・ペティとか、いわゆ
にはいろんなことがあったじゃない。まず前作からの1stシングル曲“ラヴ・ドラン
オフになにかできることはないかなってずっと考えていたんだ。それでいくつかデザイ
ライアンとやっていたわけだし、一緒に
る60年代以降のシンガーソングライター系のアメリカンロックの大ファンだから、
ク”のコーラスパートがザ・キラーズの“サムバディ・トールド・ミー”(2004年
ン画を描いたらイイのができ、名前もクールなのを思いついたからやってみたんだ。
過ごした時間も長かったろうから、彼に
今回はそういう音楽に、今らしさをプラスしたかった。それで必要と思う音をいろい
発売のデビュー作『ホット・ファス』収録)と酷似しているとメディアから指摘さ
ビッグな商売にならなくとも、友だちとかに着てもらえたらイイなと思ってさ。デザイ
自制をうながすこともできたんじゃな
ろ入れていったら、イイ響きになったんだ。
れ、ちょっとした話題になったけど、あのときバンドは、特になにもコメントしな
ンからウェブサイトの立ち上げ、発送まですべて自分でやったんだよ。スゴく楽しかっ
い? 「このままではマズいよ」とか。
̶前2作のメロディやサウンドメイキングにあった、キラキラ感やパンクロックを通過
かったよね。
たけど、BLGが本格的に活動を再開したから、今は二の次といった感じだね。
ボクたちはバンドだから、お互い言いた
してのエッジ、そして四方八方に弾けるはっちゃけ感みたいなものは今作には皆無だけど、
その話は確かに耳にしたけど、あっちの曲を聴くまで気づかなかったよ。だけどすぐ
̶ウェブで商品を見たけど、自分の中ではBLGとしての前作までのイメージが強
いことが言い合える仲じゃないといけな
そのぶん広大なるスケール感や穏やかさ、そして聴く人を包み込むような優しさがあるね。
に忘れちゃったね。気に留めることでもなかったから。明らかに違う曲だし。まぁ、
いから、もっとポップな色合いとかデザインとかを想像していたら、全然違うね。
いと思うよ。まぁ、今回はみんなが成長
今作を聴いて再度、バンドが大人になったことを実感したよ(笑)。温かさもあるし。
なにをやってもケチをつけるヤツはつけるから。なにかとなにかを比べたがるのは人
もっとダークな感じだよね。黒やスカルを多用しているし。音楽というよりバイクに
していくなかで、ブライアンの方から自
うれしいね! まさにそういうふうに作りたかったんだ。ポップなパンクロック色を
間の性なんじゃない?
影響を受けているんだ。ボクはバイク狂だから。コンセプトは特になかったけど、自
然に離れていったっていう感じかな。だ
薄め、もっと多くの人たちが聴けるものにしたかったんだ。新作を気に入ってもらえ
̶その後、メンバーはBLGの活動から離れ、各自思い思いのことをやっていたよ
分や友だちが好きなデザインを思いついたから作ってみたっていう感じさ。だからバ
から、ボクからわざわざ「ちゃんと話し
てうれしいよ。ボクたちにとっては、スゴく大きな意味のあることだから。温かいっ
ね。マーティン(・ジョンソン/vo,g)はソロ作の構想を練りつつ曲を書き、ジョン
ンドとの関連性は特に意識しなかったよ。
合おうゼ!」なんて制することはしたく
て言ってもらえたのは初めてだな。ありがとう。
̶その後、BLGは突然一時的な活動休止宣言をするわけだけど、なにが原因だっ
なかった。それに、ボクがEMBの一員
̶今作を介して、リスナーに伝えたいこととは?
ヒュー/b,vo)は別バンド、EARLY MORNING BLUE(EMB)を始めたし。ポー
たの?
だった事実はなく、単にヘルプしてい
ヘッドホンか、いいスピーカーで、最初から最後までじっくり聴いてほしいんだ。か
ルはEMBに参画しつつ、アパレルブランドBlack Carbon Customも立ち上げたよね
アメリカのラジオなど音楽を取り巻く環境が変わっていったのが理由のひとつ。ラジオ
ただけだから。ブライアンと同じ町に
つてレコードをそうやって聴いたみたいにね。じっくり聴いてもらえるようにできて
でロックがあまりかからなくなっていた。ボクたちの音楽はギターを多用しているか
住んでいたから1、2週間に1回は会っ
いる作品だと思うから。たとえは、“ヘイ・ユー”。イントロのピアノパートを録っ
ブライアンがプロジェクトをやろうとしていたから、ボクはスタジオに何度か遊びに
ら、そういう作品を今後出しても、うまくいくかどうかわからなかった。なにもかもが
ていたけど、今後はそれぞれの道を行
ているとき、救急車が近くに乗りつけ、スライドドアを開けた音をマイクがたまたま
いき、リードラインやソロを少し録ったりなど手を貸していたんだ。EMBの音楽は
変わってしまったから、多くの人たちに受け入れられないかもと思ったしね。で、少し
く方が、自然な気がしたんだ。だから
拾ったんだ。曲の雰囲気に合うと思ったから、そのまま残した。スゴく小さな音だか
BLGとは全然違う。2006年、2007年頃のヘヴィなエモに近いかな。実はジョンの
エレクトロ寄りの作品を作ろうともしたんだけど、それってやっぱり、ボクたちがやる
アイツをクビにしたとか、そういう感
ら、よく注意しないとわからないかもしれないけど、ぜひ聴いてみてほしいな。
THE REBELSにも練習やライヴに何回か助っ人として参加したんだ。ボクはボクで
べきこととは違うって思って。ボクたちらしくないっていうかさ。ボクたちが一時的に
じではないんだ。指摘のとおり、音楽
アパレルブランドをやったり、みなそれぞれ自分のことで忙しかったね。
第一線から身を退いたことを理解してくれない人たちもいた。だけど「もう、音楽は
的な違いも大きかったと思うよ。
(・キーフ/ds)はTHE REBELS(現EMPIRE KIDS)とコラボし、ブライアン(・ドナ
(http://blackcarboncustom.com)。
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̶2011年初春に発売された前作『ゴーイング・アウト・イン・スタイル』は、
きだし、だったらやれることを最大限にやってみよう、このまま新しいアルバムを作ろ
らなければいけないし、レコーディン
ているよ。ドロップキック・マーフィ̶ズのメンバーとは、できるだけ距離を置きた
コーネリアス・ラーキンなるアイルランド移民のストーリーを追ったコンセプトアル
うって話になったんだ。そのおかげで、すごくいい作品が完成したと思うよ。
グ中はとにかく精神的に疲弊するん
いね(笑)。今後もあいつらと長い時間を過ごさなければならないんだから、クリス
バムでした。通算8枚目となる新作『サイン・アンド・シールド・イン・ブラッド∼
̶前作『ゴーイング・アウト・イン・スタイル』は、ビルボード初登場6位を記録
だ。完成した作品を手にしたり、でき
マスくらいは会わないようにしないと! 1月にはヨーロッパツアーが始まるし、短
勝利への約束』は、前作の反動なのか、とても多彩で自由度の高いアルバムですね。
しましたが、バンドは当時、その成功をどのようにとらえていたんでしょう?
たアルバムを聴いたりするのは楽しい
い休暇ではあるけれど、のんびり過ごして英気を養うつもりだよ。
そうだね。確かに反動は少しあったかもしれない。コンセプト作はコンセプト作でお
とにかく興奮したよ。これまで何枚も作品を出してきたけれど、毎回少しずつとはい
から、結果だけが好きで、プロセスは
̶ちなみに、アルのお気に入りのクリスマスソングは?
もしろかったけれど、たとえいい曲ができても、その世界観を壊すようなものであれ
え成長し、よりよい作品を作れるようになっていたから、7枚目にして、それを認め
苦手ということだね(笑)。
1曲挙げるなら、「リトル・ドラマー・ボーイ」かな。
ば、アルバムには入れられないし、どうしても制約ができてしまうから。でも、意識
てもらえたような気がした。普段、それほどチャートアクションを気にしているわけ
̶新作を聴いて一番驚いたのは、
̶「ラパパンパーン♪」のコーラスで有名な、あの超定番曲?
的に前作とは異なるアルバムを作ろうとしたわけではなくて、自然とこういう形に落
ではないけれど、上位にランクインするということは、それだけ大勢の人たちがアル
“The Season's Upon Us”なるクリ
そう。オリジナルのハリー・サイムワンのヴァージョンはイマイチなんだけど、ビン
ち着いたんだ。というのも実は、前作に伴う長期ツアーを終えたあとも、クリエイ
バムを聴いてくれた証なわけだから、純粋にうれしい。音楽業界全体が冷え込んでい
スマスソングが収録されていることで
グ・クロスビーとデヴィッド・ボウイがデュエットしているカヴァーは大好きなんだ。
ティヴィティの大きな波のようなものにまだ乗っている感じで、これで一段落って雰
る中、いい作品を作り続け、少しずつファン層を広げられたんだからね。
す。めずらしいなと思いましたが、ド
̶クリスマスネタはこのへんにして、1stシングル“Rose Tattoo”について。
囲気ではなかった。ツアー中にすでにいろいろ曲のアイディアが生まれていたし、そ
̶前作に引き続き、今回もプロデューサーはテッド・ハットですね。
ロップキック・マーフィーズならでは
リリースに合わせ、ファン向けにタトゥーコンテストを開催していましたよね。
の勢いのまま、曲作りを続けることにした。テーマなどは特になにも決めずに、とに
テッドは優れたプロデューサーだし、常にアイディアにあふれている。人柄もすばら
のジョークにあふれていますね。
ファンと一緒になにかおもしろいことをやりたかったから、タイトルにちなんで、タ
かくいい曲を書くということだけを考えていたから、自然とヴァリエーション豊かな
しいし、信頼をおける人物なんだ。前作で一緒に仕事をして、すべてがすごくうまく
町中で流れているようなクリスマスの定
トゥーの写真を募集したんだ。ドロップキック・マーフィーズのファンにはタトゥー好き
作品になったんじゃないかな。
いったから、今回も引き続きプロデュースをお願いすることにした。
番曲は、どうも安っぽいというか、ベタ
が多いし、バンドのロゴを入れているやつらも結構いるからね。何百と届いたので、それ
をジャケットやミュージックビデオで使うことにしたんだ。ウェブでも紹介しているよ。
̶創作意欲がまったく衰えないというのは、アーティストとしてすばらしいことで
̶レコーディングは、順調に進んだんですか?
な感じだからね。俺たちはもっと、バカ
しょうけど、さすがに長期ツアーで疲れたし、少しは休みを取りたいなと、正直なと
いや、レコーディングは常に長くてツライ。順調だと感じたことは、これまでに一度も
で楽しい感じにしたかったんだ。残念な
̶アルもバラのタトゥーを入れているんでしたっけ?
ころ思いませんでした?
ないね(笑)。すべての工程を終えさえすれば、苦労した甲斐があったと最終的には思
がらラジオで繰り返しかかることはない
ふたつ、いや、もっとあるかな? 体中にいろんなタトゥーを入れているから、細かいところ
まあ、個人的にはちょっとは思ったんだけど(笑)、みんながすごくやる気だったから
えるんだけど、やっている最中は本当にイヤで、とてもじゃないけど耐えられない。他
だろうけど(笑)、モダンロック系のラ
は把握してなくて…。ちゃんと探せば、4、5本のバラが咲いているかもしれない(笑)。
ね。それに、音楽マーケットの現状は非常に厳しいものだし、聴き手の好みほか、すべ
のメンバーや別のバンドがどう感じているかはわからないけど、個人的にはレコーディ
ジオ局の評判はすごくいいんだ。ロック
̶この“Rose Tattoo”に「Signed and Sealed in Blood」という歌詞が出てきま
ての移り変わりが激しいから、アーティスト側は一度つかまえたファンを逃さないため
ングは大嫌い! 身を削るばかりで、なにもおもしろいことがない。絶対に必要なこと
系の番組が初めてオンエアしたクリスマ
すが、なぜこれをアルバムタイトルに選んだんですか?
に、どんどん新しい作品を世に送り出さなければならない。曲を作るのはもちろん大好
であるのはわかっているけど、ベストなものを生み出すために、自分自身に批判的にな
スロックソングだよ。
タトゥーは血をにじませて肌に墨を入れることであり、いわば血の契りだよね。血で書か
̶この“The Season's Upon Us”
れた契約書であり、約束である。今後も音楽や俺たちのファンに対し、俺たちはコミット
は2ndシングルとしてプロモーション
していきたい。そんな思いを込めて、このフレーズをアルバムタイトルにしたんだ。
DROPKICK MURPHYS
前作から2年も経たずして、ドロップキック・マーフィーズが8作目『サイン・アンド・シール
ド・イン・ブラッド∼勝利への約束』を発売する。全米チャートでバンド史上最高位の6位を
マークした前作『ゴーイング・アウト・イン・スタイル』は、アイリッシュ移民の物語にもと
づいた、彼らにしてはめずらしいコンセプトアルバムだったが、ニューアルバムの方向性はい
かに? クリスマス直前、ヴォーカルのアル・バーに電話で話を聞いた。
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文・権田アスカ/text by Aska Gonda
アイリッシュ・パンクバンド、ドロップキック・マーフィーズのアグレッシヴな新作が登場!!
ビデオも作られていますが、撮影はい
̶1曲目の“The Boys Are Back”は、ドロップキック・マーフィーズの帰還を
かがでしたか?
高らかに宣言する曲ですよね。ラストの“End of the Night”はその逆で、まさにエ
歌詞に出てくるトラブル続きのクリス
ンディングにふさわしい楽曲です。合間にはミドルテンポのフォークソングも、ファ
マスパーティの雰囲気を再現したんだ
ストなパンクナンバーもある中で、アルバム全体に大きな流れを感じました。曲作り
けど、友だちや家族を大勢呼んで、バ
の段階から、曲順がある程度見えていたんでしょうか。
ンドと一緒にビデオに出演してもらっ
いや、そんなことはなくて、試行錯誤を続け、いろんなパターンを試しているうち
たから、おもしろかったよ。
に、最終的にあの形に落ち着いたって感じだった。ただ、中盤の流れ以上に、最初と
̶ケン・ケイシー(b,vo)はたくさ
最後はとても重要だし、勢いのある“The Boys Are Back”を頭に、終焉を思わせ
ん映っていたけど、アルはほとんど出
る“End of the Night”を最後に持ってきたいというのは、イメージとして初期段階
てないですよね。アルがボーッとしな
からあった。ゼロから組み立てるより、始まりと終わりを先に決めてから間を埋める
がら、子供みたいにテディベアを抱き
方が、全体の流れを作りやすいんだ。
しめている姿は、なかなか素敵でした
̶前作にはブルース・スプリングスティーンやNOFXのファット・マイクなど、大
けど…。
物ゲストが参加していましたが、今回はどうなんでしょう?
ああ、アレね(笑)。実は、前日に妻
イギリスのフォークロックバンド、マムフォード・アンド・サンズのウィンストンが
が出産して、俺は寝ないまま撮影に向
バンジョーを弾いているくらいかな。今回はゲストらしいゲストはいないんだ。先の
かったんだ。徹夜明けで疲れていた
ことを深く考えずに作り始めた作品だし、自分たちだけで密にやる、こういうアルバ
し、無事子供が生まれて気が抜けたん
ムもあっていいんじゃないかと思って。
だと思うけど、ディレクターに話した
̶バンドは毎年、アイルランドの守護聖人・聖パトリックの命日である3月17日の
ら事情を察してくれて、俺の出演シー
祝祭前にショートツアーを行なっていますが、今年のツアーは過去最大規模で、ボス
ンを少し撮って、みんなより先に帰し
トンのTD Gardenでのショウは“Dropkick Murphys Irish Festival”と銘打って2
てくれたんだ。妻のもとに早く戻れた
ステージを組み、多くのバンドが参加するとか。
かわりに、出演シーンは少なくなった
そうだね。大きいハコだし初めての会場だから、すごく楽しみにしているんだ。もと
というわけ。
もと、セント・パトリックス・デイの当日にやっていただけのライヴが、ここ数年は
̶この曲では、家族や親戚が集まっ
1週間にわたってボストン界隈でショウを何回もやるようになり、ついに今回は全米
てもロクなことがないし、クリスマス
ツアーとは別に、セント・パトリックス・デイ・ツアーとして1ヵ月近く各州をまわ
なんて面倒なことばかりで、年に一度
ることになった。今後しばらくはツアー漬けだよ。最近、「今回のツアーはいつから
だけで本当によかったといったことが
いつまでですか?」と聞かれたら、「15年前からずっとツアー中だ」と答えるよう
歌われていますが、アルの2012年の
にしているんだ(笑)。
クリスマスは、どんな感じになりそう
̶そんなお忙しい中ではありますが、日本にはいつ来てもらえるんでしょうか。
ですか?
もうツアーはしたくない…というのは冗談で、考えてみたら2008年以来、日本に
プロモビデオとは真逆の、家族だけの
行ってないんだから、ブランクが長過ぎるよね。できるだけ早くジャパン・ツアーを
静かなクリスマスを過ごしたいと思っ
実現したいと思っているよ。
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ブラック・ヴェイル・ブライズは今年、間違いなくメタルシーンの“台風の目”になる!!
ブラック・ヴェイル・ブライズが前作『セット・ザ・ワールド・オン・ファイア』(2011
年)から約1年半ぶりとなる通算3枚目の新作『レッチド・アンド・ディヴァイン』を発売し
た。80'sメタルとクラシック音楽からの影響が濃厚なブラック・ヴェイル・ブライズ節が、
デッカいスケール感を伴うシアトリカルな作風の下で大炸裂する! 2013年一発目の、必聴
作である。フロントマンのアンディ・ビアサックが語ってくれた。
文・有島博志/text by Hiro Arishima translation by Sachiko Yasue
BLACK VEIL BRIDES
ら。曲作りは集中してやらないといけ
に行き、いろいろ話をしたらすぐに意気投合してさ。オレたち2人がいろんな意味で似
ない。特に今回みたいにロックオペラ
ていることがわかったんだ。だから一緒にいるのがあまりに楽しくて、2人で曲を書き
のような、スケールが大きくて劇場型
始めてしまったくらいさ。と言っても、BVB用にとかそういう意図があったわけでは
のものを作る場合、頭をそれでいっぱ
なく、似たような目線の2人がただ一緒に書いただけという感じだった。そんなふう
いにしてほかのことは考えられないぐ
だったから、今作を作ろうという話になったとき、彼とやろうと思ったのはまったく自
らいにしないとね。
然な流れだった。ジョンはジョシュとはまったく違うタイプのプロデューサーでね。
̶今作はコンセプト作ですね。ス
ジョシュは週に2、3回やってきてあちこちに手を入れてくれるような感じだったけ
トーリーやコンセプトを簡単に教えて
ど、ジョンはスタジオに入ったその瞬間から、直接関わってくれるタイプなんだ。朝早
ください。
くやってきて、夜は誰よりも遅く帰る。終日、熱心に作業していたよ。
最初にオレが短いストーリーを書いた
̶ジョンと一緒に書いた曲って、もしかして今作に入っていたりします?
んだ。ヨーロッパツアーを終え、ロサ
“ウィ・ドント・ビロング”がそうさ。
ンゼルスに帰る飛行機のなかでひらめ
̶長期ツアーをやった成果のひとつだと思いますけど、今作ではよりBVBという
いた。ジョージ・オーウェルの『1984
バンドの個性や存在感がデフォルメされ、音自体がより強く、かつ太くなっています
年』(近未来世界の恐怖を描いた物
ね。そういったところはアンディ自身も自覚しているのでは?
語)風の話だった。あるいは『V
そうだね。ソングライターとしても確実に成長したと思う。オレにとってこの新作
フォー・ヴェンデッタ』とか。映画化
は、史上最高の傑作だと、自信を持って言えるよ。
もされたコミックなんだけど知って
̶それは、今作がコンセプト作ということにも関係しているんですかね?
る? 未来において科学や絆が社会か
そうだと思うよ。コンセプトという必然性ありきの作品だから、それに合わせてがん
ら抹殺されてしまい、一挙手一投足を
ばったのがよかったのかもしれない。ロックオペラを書くっていう目的が目の前に
なんらかの大きな存在にコントロール
あったから、自分にハッパをかけることができたんだと思うな。
されてしまう世界の話でね。オレが書い
̶今作ではスケール感、ダイナミクスがさらに増し、よりドラマ性も加わり、壮大
たのは、とある反逆者のグループが大き
なコンセプト作にふさわしい音像、作風に仕上がりましたね。もともとBVBの音楽
な悪者に反逆を試みるというストー
にはクラシック音楽からの影響がありますけど、それもより色濃く出ていますし。
リー。書いているうちに、これをもとに
そうだね。聴いてのとおりストリングスを多用しているし、中盤にはオーケストラが奏
アルバムを作ろうと、どんどん話が発展
でる2分半のインタールードまであるから。バッハからの影響は大きいよ。オレたちに
していったんだ。今作は劇仕立てのよう
言わせれば、メタルという音楽そのものが、クラシック音楽から派生したものだから。
な感じになっている。話の流れを説明す
70年代、80年代のギターゴッドたちは、みなクラシック音楽の影響を強く受けている
るナレーターがところどころに出てくる
し、うちのジンクス(g)もクラシック音楽に影響されている。今作では、オレたちが
んだ。こういう制作プロセスは、今まで
受けてきた音楽的影響を、これまで以上にディープに掘り下げているんだ。
取ったことがなかったよ。
̶新作制作中にもっとも心がけたことってなんでした?
̶ストーリーの内容と曲のスタイル
これまでにやってきたことからのステップアップになること。新作で、自分たちが向
をうまく噛み合わせるために、注意し
上できるように心がけた。「みんなが気に入るとイイな」なんて思いながら作品を
た点や苦労した点とは?
作ったことは今までないんだ。すべては自分たちのため。自分たちの実力を試すため
途中で、ストーリーに深く入り込み過
にやっている。もちろん、多くの人たちに気に入ってもらえたらうれしいけど、こう
̶新作『レッチド・アンド・ディヴァイン』が発売になりましたね。かなりの力作
あった当日も、ファンがサインをもらいにホテルの前まできてくれたんだから。「飲
ぎる前に、曲のことをもっと話し合わ
いう楽しくてスケールの大きなものをやろうと思ったら、まずはバンドが一致団結し
ですから、相当自信も持っているでしょう?
みにいかない?」なんて誘ってくれたヤツらまでいた。東京でさえ、あんな大変なこ
ないといけないって気づいたんだ。ス
て、一生懸命がんばることが先決だから。
今はスゴく興奮しているし、その出来に自信を持っている。今まで作ってきた作品の
とが起こっているというのに、オレたちを楽しませようとしてくれていたんだ。アメ
トーリーラインばかりが気になってし
̶“デイズ・アー・ナンバード”にはザ・ユーズドのバート・マクラッケン
なかでは、一番スケール感が大きいんじゃないかな。全体がロックオペラのコンセプ
リカだったらみんな、家に閉じこもってしまうだろうから。
まうと、曲作りがおろそかになってし
(vo)がゲスト参加し、アンディとデュエットしていますね。彼はどういう経緯で
ト作みたいな感じでね。もちろん、制作は難航したけど、とても楽しみながらできた
̶もしかしたら、アンディのストレスを和らげようとしてくれていたのかも。
まう。ストーリーは頭の片隅に置き、
参加したんです? ジョンの人脈からですか?
し、そのすべてに納得しているよ。
そのとおりだと思う。オレもそのときそうだと思ったよ。日本人は自分たちの築いて
とにかくイイ作品を作ることに力を注
そう、ジョンを通じて。ジョンはザ・ユーズドを発掘しブレイクさせた人だから。
̶ブラック・ヴェイル・ブライズ(BVB)はV-ROCK FESTIVAL '11に参戦しま
きたものに誇りを持っている。ああいう震災が起き、「(史跡などを)観光できなく
いだよ。そうすれば、自然な形で物語
バートはよくスタジオでジョンとツルんでいたよ。そんな中ある日、バートと話す機
したね。マーダードールズとの初来日のときとはファン層も違うので、興味深い体験
て可哀相に」って思ってくれるヤツらがいたんだ。オレたちをあちこち連れ回して、
は流れていくから。
会に恵まれ、1曲歌ってみないかって自分から誘ってみたんだ。彼らしい声をオレた
ができたのでは?
日本の文化を見せてやりたいと思ってくれていたらしい。イイ話だよね。
̶前作のプロデューサーはジョ
ちの曲に入れてくれって頼んだ。バートはこの曲に向いていると思ってさ。スゴく楽
そうだね。あのフェスでは、日本のロックにどんなものがあるのかを垣間見ることが
̶前作発売に伴い、一昨年から昨年にかけて、ほぼノンストップでツアーを続けま
シュ・エイブラハムでしたけど、今回
しかったよ。計画的な参加ではなく、単なる成り行きだったけど。「ちょっとスタジ
できたよ。そういうバンドを観たり、メンバーと会ったりするのはなかなかできない
したね。日本では震災を経験し、ワープド・ツアーに出る直前にはアンディが演奏中
はジョン・フェルドマン(ベテラン・
オに寄って楽しんでってよ」みたいな感じだったから。彼とはこれをきっかけに仲よ
ことだから。彼らのライヴの仕方や、共演するアーティストたちとの関わり方とかを
にステージの柱から転落し、肋骨を骨折するというアクシデントもありました。様々
メロディックパンクバンド、ゴールド
くなれたしね。
目の当たりにして、スゴくクールだと思った。
なことが起きた長期ツアーを振り返って、今どう思います?
フィンガーの一員でもある)を起用し
̶今作発売とワールドツアー実践で成しとげたいこととは?
̶初来日のときの単独公演(2011年3月11日)の開始直前、サウンドチェックを
ツアーに出て毎晩プレイできるというのはスゴく幸運なことだと思うんだ。観客と強
ています。プロデューサーを代えた理
正直言って、今は新作を携えてツアーに出られるっていうことにワクワクしている、
やっているときに東日本大震災を経験しましたよね。再来日の話が来たとき、またあ
いつながりを持つことができるから。もちろんツアーには私生活の犠牲も伴うけど、
由は? そして、なぜ今回はジョンを
それだけさ。またファンの前でプレイができるということがうれしくて仕方ないか
の恐い経験を…と、来日に躊躇するようなことはありませんでした?
ずっとやりたかったことだし、とても楽しいよ。
起用したんです?
ら、そのことばかり考えている。次のステップなんてまだ考えられないよ。新作は全
いや、それはなかった。まさかまた大地震を経験することにはならないだろうと思っ
̶おそらくそのツアーの合間を縫って今作の曲作りをやったと思うんですけど、そ
プロデューサー選びをわざわざやった
力投球した作品だから、リアルな手応えを感じたいね。
たし。ただ、こっちでパーティなんかにいくと、「震災があったとき日本にいたん
こまでツアーに時間を割いていたわけですから、なかなかじっくり腰を据えての作
わけじゃないんだ。ジョンとオレたち
̶次はいつごろ来日してくれるんでしょう?
だって? どんな感じだった?」ってよく聞かれたものさ。そういうとき、自分の日
業ってできなかったのでは?
とは共通の知り合いがたくさんいた関
多分夏以降じゃないかな。今度は長いジャパンツアーをやりたい。今まではツアーと
本での最初の経験が大災害だったと話すのは、ツラいものがあった。それにしても、
イヤ、実は半年ぐらい楽曲制作に時間を取っていたんだ。これほど長い期間ライヴを
係で、向こうからオレに会いたいと
いうほどの規模ではなかったから、もっと本格的な長いツアーをやってみたいね。東
一番印象に残ったのは、日本の立ち直りのはやさだね。マグニチュード9.0の地震が
やらなかったことは、これまでなかったよ。不思議な感じだったけど、必然だったか
言ってくれた。それである日、彼の家
京以外のところにもいきたいんだ。
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February - March 2013 Issue
February - March 2013 Issue
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サンティアゴもケヴィン同様、オレたちと同じテキサス州オースティン出身のドラ
たよね。しかも、今回はデビュー以来
ウンドも出してみたくてね。60年代∼70年代のクラシックロックから感じること
い。前作は初めて明確なストーリーを持たせたコンセプト作でしたね。リリース後の
マーなんだ。サンティアゴのことはずっと前から知っていて仲がよかったから、一度
初めてとなるメンバーチェンジも経験
ができた、サイケデリックな空気感も強くしてみたんだ。グルーヴと合わさったと
秋にはメタリカのサポートとして日本にも来てくれました。そういった新たな挑戦を
スタジオでオーディションのような形でいっしょにプレイしてもらった。それがよ
しています。制作に当たって、プレッ
きに、より大きなダイナミズムも生み出せるように、いろいろと試行錯誤もしてみ
した作品とそれに伴う活動を今振り返ってみて、どう思われますか?
かったから、バンドに加わってもらうことになったんだ。バンドにはピッタリだと思
シャーを感じたりはしませんでした
たよ。
オレとしては、とても満足しているよ。またメタリカのツアーについて世界中を旅す
うよ。人間的にもいいヤツだし、なにしろ昔からの友だちだからうまくやっていけそ
か?
̶そのクラシックロック的なヴィンテージ感というか、枯れた味わいも格別です。
ることもできたしね。あの作品のクオリティはもちろんだけど、ほかにもいろいろな
うだよ。なにより、いっしょにいて気がラクなんだよね。ツアーも好きだと言ってい
いや、そんなことはないよ。ただ単に
でもこういったものは、出そうとして出せるものではないですよね。ある程度経験を
状況が重なったおかげで、それまで以上にファン層が広がったと思う。オレたちはと
たから、心配していた活動方針についても変える必要がない。プレイスタイルとして
新しいアルバムを出すだけだと思って
積んだり、年齢を重ねないと出せないテイストというものがあると思います。作品を
ても運がいいと感じているよ。
は、とてもダイナミックなドラマーだと思う。ソウルフルだし、オレたちのサウンド
いる。もし少しでもプレッシャーを感
3枚リリースして絶え間なくツアーを行い、キャリアを作り上げてきたおかげで、以
̶ただ、前作のツアー中にドラムのトライヴェット・ウィンゴが脱退してしまいま
と合わさったときに生まれるグルーヴも素晴らしいよ。彼の加入によって、オレたち
じるようなことがあるようなら、まず
前よりもバンドとしての表現力が増したと感じているのではないでしょうか?
したね。彼は前作リリース時、体調を崩したあなたの代わりにインタヴューに応じて
はさらに前進することができたし、彼なしでは新作も生まれていなかったと思う。
はそれを取り除いたり、気にしないで
あぁ、その意見には賛成するよ。そう言ってもらえてうれしいね。ただ、レコーディ
くれた(Vol.62参照)ので、とても印象的だったんです。驚きましたが、なにが
̶そういった経緯を経た新作ですが、曲作りなどの制作を始めたのはいつごろだっ
すむようにするべきだと思う。オレは
ングに関して言えば、オレたちにフィットするプロデューサーといっしょに仕事でき
あったんですか?
たんですか?
そういった経験がないけど…。プレッ
たことが大きいと思う。J・ロビンズは、オレたちのことを誰よりも理解してくれた
正直に言うと、彼はツアーがあまり好きではなかったみたいなんだ。オレたちはデ
レコーディングには2012年の7月をまるごと費やしたけど、作曲を始めたのは
シャーがある状態で作曲やレコーディ
んだ。オレたちが求めているもの、オレたちがより強化すべきもの、特性、欠けてい
ビュー以来、活動の大部分をツアーに費やしてきた。彼はバンドのために耐えてき
2011年の12月ごろだったと思う。ツアーもあったから、少しずつだったけどね。
ングといった、アーティスティックな
るもの、逆にいらないものなど、本当にすべてをわかっていた。そのうえで新作をど
たんだと思うけど、さすがに限界が来たのかもしれない。でもだからといって、オ
収録する曲がすべてできあがってから、レコーディングに移った。で、これまでの
ことをするべきではない。作品の内容
んなサウンドにすべきかを見定めて、的確な方向に導き、プロデュースしてくれたん
レたちも活動方針を変えるわけにもいかないからね。いろいろなところをツアーし
作品はすべて地元のテキサスでレコーディングしていたけど、今回は初めて州外に
に悪い影響がでてしまうことは間違い
だ。このサウンドにはとても満足しているけど、それもJがいてくれたからこそさ。
て、ファンの心をつかんできたんだから。それで、お互いのために別れることにし
出てみたんだ。メリーランド州のボルチモアにあるマグパイ・ケージというスタジ
ないからね。そのせいで表現したいこ
̶リズムも凝っていますよね。ジャズっぽくスウィングしてみたり、ちょっと変
たんだ。
オでレコーディングした。新作をプロデュースしてくれたJ・ロビンズ(元
とが見えなくなってしまったり、まし
わったシャッフルがあちこちで取り入れられています。キャッチーなメロディやギ
̶トライヴェット脱退後は地元の友だちだというケヴィン・フェンダーをサポート
JAWBOXほか)のスタジオなんだけど、いつもと違った環境でのことだったか
てや商業的なことを優先したり、リス
ターリフとは違った形で耳に引っかかるパートがとても多いですね。
に迎えてツアーをこなし、2011年にサンティアゴ・ヴェラ三世を新しくメンバーと
ら、新鮮な体験ができたよ。
ナーの顔色をうかがうような作品に
それはサンティアゴのプレイによるものだよ。今までのオレたちだったら、あまり取
して迎えましたね。彼はどういった経緯で加入したんですか?
̶先ほど話に出たように、前作はこれまで以上にバンドの評価を高めた作品でし
なってしまったら、音楽をやることが
り入れることがないようなリズムを発見することができた。さっき、彼とオレたちが
なんの意味もなくなってしまうよ。だ
生み出すグルーヴについて話したけど、それは彼がとてもいい耳を持っているからな
からプレッシャーやまわりの評価とい
んだよね。どんなリズムで叩けば、その曲がよりよい形に進化するかをすべて感覚的
うものは完全に無視するべきだし、本
にわかったうえでプレイしている。ダイナミックでソウルフルと言ったのは、そう
THE SWORD
クラシカルで新しいそのサウンドに磨きをかけ、貫禄さえ漂わせはじめたザ・スウォードの新作とは!?
ストーナー・ロック譲りのヘヴィネスと正統派ヘヴィメタル由来のドラマ性、そしてクラシッ
クロックに通じる重厚な質感…。このたび日本盤化されるザ・スウォードの4作目『アポクリ
フォン』は、いぶし銀のサウンドを封じ込めた、たしかな前進を確信させてくれる味わい深い
逸品となっている。すでにツアーで忙しく飛びまわっているバンドから、リーダーのジョン・
D・クロニス(vo,g)がライヴ前にインタヴューに応じてくれた。
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February - March 2013 Issue
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki translation by Junko Akatsu
̶まずは前作『ワープ・ライダース』(2010年)を少し振り返ってみてくださ
当ならそんなことが頭に浮かんだりす
いった部分も指してのことなんだ。
るようなことさえないようにしなけれ
̶今、シーンのなかで一部ではありますが、ヴィンテージな空気感のあるサウンド
ばならないんだ。
というものが見直されているように思います。たとえばハイ・オン・ファイア、マス
̶新作のアートワークは、これまで
トドン、バロネスなどは、どれもブルースやクラシックロックの影響が濃いサウンド
以上にファンタジックで、かつSF的な
ですし、なによりその実力から高い評価をされています。そういった動向を、あなた
要素もありますね。今回も前作同様
自身はどのように感じていますか?
に、コンセプトやストーリーを持った
ああ、それはオレも日々感じていることだよ。正直、トレンドというほど大きな動き
作品になっているんですか?
のあるものではないかもしれないけど、面白いよね。今君が言ったバンドはどれもも
いや、今回は特になにも設定せずに制
ちろん素晴らしいと思う。みんな違った、独自のサウンドを出しているけれど、それ
作することにしたんだ。いくつか新し
と同時にリスナーは彼らから共通のテーマとか、似たような要素を感じているんじゃ
いテーマを託した曲もあることはある
ないかな。オレたちの音楽もそうやって注目してもらえるとうれしい。作品を出すご
けど、それはその曲だけのものにとど
とにチャートアクションも上がっているから、少しずつそうなり始めているんじゃな
めた。だから、全体に共通するテーマ
いかな。
が流れているとかそういうことではな
̶前回、メタリカのサポートとして日本に来たときのことは覚えていますか?
い。ただ普通のロックアルバムになっ
もちろんだよ。とても大きなアリーナ(さいたまスーパーアリーナ)でプレイしたん
ているよ。いつかまた、ストーリーを
だよね。あの会場も素晴らしかったし、なによりもメタリカとの共演は、いつだって
考えてコンセプト作に挑戦することも
すごい経験になるんだ。初めて日本に行ったときはラム・オヴ・ゴッドといっしょ
あるかもしれないけど、今はなんとも
で、小さなクラブでのライヴだったけど、そのときとは全然違うように感じたのを覚
言えないな。
えているよ。
̶曲に関しては、前作以上にグルー
̶でも、サポートアクトということもあって音量が小さかったですし、なにより機
ヴが強調されているように感じまし
材にトラブルがありましたよね。次こそはしっかりとした環境で、ザ・スウォードの
た。またタイトル曲の“アポクリフォ
ライヴを見せてほしいところです。
ン”に代表されるように、前のめりに
そういえば、二日間プレイしたうちの一日はそうだったね(笑)。まぁ、ああいった
アグレッシヴな要素もありますね。お
トラブルはどこでも起こりうることだし、ある程度は仕方がないさ。でも、日本には
かげでサウンドがよりファットになっ
またぜひとも行きたいよ。2012年の12月で全米ツアーが一段落してから、年明けの
た感覚です。
2013年からはヨーロッパ、そしてオーストラリアのフェスティバルという順番でま
そのとおりだね。ヘヴィで太い感じを
わっていくんだ。今あれこれと調整しているところなんだけど、オーストラリアに行
出そうとしたんだ。テクノロジーに頼
く前後のタイミングはちょっと難しそうというのが、正直なところ。でも2013年の
り過ぎない、オーガニックで重量感の
どこかで日本には行きたいと思っているんだ。今度こそ、ヘッドラインとしてね。
あるサウンドこそが狙いだった。それ
と、これまでとは少し違った質感のサ
February - March 2013 Issue
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あのオオカミ軍団についに接触! ニューシングル『Emotions』で見せた新境地に迫る!!
我々ヲイワユルラウドロックヲ鳴ラス
盛り込まれていますよね。わかりやすいところはもちろん、ちょっと聴いただけでは
バンドダト思ッテイル人モタクサンイ
わからないような細かいパートにも、トリッキーな装飾がなされていますし。その感
MISSION。頭はオオカミ、体は人間という謎めいた存在ながら、話題が話題を呼び続けてい
ラッシャルノデ、ソウイッタ人タチニ
覚も、ライヴの楽しさや一体感につながっているのかなと思います。
る彼らが、ニューシングル『Emotions』を発売する。すでに今春のパンクスプリングや、
モ聴イテイタダケルノデハナイカナ
非常ニ細カイトコロニ、アリエナイコトヲ詰メ込ンデイルノハ、ソノ通リデス。ソレ
Ozzfest Japan 2013出演も決定しているなど、今年も彼らがなにをやらかすか目が離せな
ト。チョウド曲作リヲシテイタトキ、
ト音楽ヲ非常ニ楽シミナガラ作ッテイルトイウカ、遊ンデイルノハ事実デスネ。モチ
い。Jean-Ken Johnny(g,vo)に初インタヴューを敢行した。
久々ニYouTubeヲ観テ、アサッテイタ
ロン真摯ニ、ソシテマジメニ取リ組ンデハイルンデスケド、ヤハリ制作ノ段階デ面白
ンデス。自分ガ好キダッタラウドロッ
サヤ遊ビ心ガナイト、イイモノハ生マレナイノデハナイカトイウノガ、我々全員ガ感
クバンドヲ見ルト、超ド直球ノ“漢”
ジテイルコトデス。タトエバDEMO段階デ、オ蔵入リニナッテシマッタアイディアガ
ロックダケドドコカアホッポサモア
アルトシマスヨネ。ソレヲ後カラ思イ返シテミルト、イカニ完成度ガ高クテモチョッ
リ、デモカッコイイッテ言ウ(笑)。
ト遊ビ心ガ足リナクテ、チーム全員ガ魅力ヲアマリ感ジラレナイモノダッタリスルン
バカカッコイイ、言ウナレバ、バカッ
デス。ソレハヤハリ面白ミヤ遊ビガナイト、発信スルモノモ、イイモノニハナラナイ
コイイ、デスカネ(笑)。ソウ言ウ雰
ンダナト思イマスネ。
MAN WITH A MISSION
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki
19XX年に生まれ、2010年より活動を開始した究極の生命体によるバンド、MAN WITH A
囲気ヲ醸シ出シテイル楽曲ヲ創リタ
̶また、ライヴを観て感じたのが、放っているグルーヴの質がほかのバンドと違う
カッタト言ウノガ、事ノ始マリダッタ
んですよね。よりコシがあるというか。その遊び心を伝えることにも、一切の妥協が
カモシレマセン。
ないように感じられます。
̶そういった直球でありつつも、
ソウデスネ。ライヴデハイツモCD音源ソノモノノ音ヲ再現スルヨリモ、ソノ会場デ
MAN WITH A MISSIONならではの
楽曲ヲシッカリト伝エルタメニハドウイッタ音作リガイイノカヲ考エテイマス。モチ
フィルターを通っているので、やはり
ロン、CD音源ノ中デモ、聴コエテホシイ要素トイウノガアリマスカラ、ソレヲ浮キ
一味違った曲に仕上がっていますね。
上ガラセル努力ヲシツツ、「コノパートノ音ガ太イホウガイインジャナイカ?」ト
今鳴ッテイル新シメノラウドロックヤ
カ、バンドダケデナク、PA、モニター、スタッフトイッタ、チーム全員デ意見交換
ヘヴィロックノシーンニオイテ、アア
ヲシテイマスネ。
イッタアプローチハ逆ニナカッタン
̶この『Emotions』リリース後、4月にはパンクスプリング、5月には武道館公演
ジャナイカナト思ッテ。ドラムナンカ
に、Ozzfest Japan 2013出演が決定していますね。特にOzzfestに関しては…。
モ、コノ曲ダケチョウセイヲ少シ変エ
スデニイロイロナトコロデ情報ガ飛ビ交ッテイルミタイデスネ(笑)。我々トシテ
テ、ヨリ生々シサヲ出シタリモシテイ
ハ、アレダケノ反応ヲイタダケルノガ非常ニアリガタイデスヨ。ヤッパリ、ヘヴィメ
マスシ。ナノデ、聴イテクレタ人タチ
タルヤソノ層ノコアナファンハ、外カラ新シイモノガ入ッテキタ時ニ少シ身構エルト
カラノ反応ガ非常ニ楽シミナ楽曲デモ
イイマスカ、ドングライヤルンダヨオマエラ、ミタイナ(笑)。デモ私自身、ソウイ
アリマスネ。ソレコソ、モーターヘッ
ウシーンノアティテュードガ好キデスシ。アトハ、乗リ込ム我々ガドンナモノヲ見セ
ドナンカヲ聴イテキタ世代ノ人ガ聴イ
ラレルカダト思イマス。モチロン、MAN WITH A MISSIONガゴリゴリノヘヴィメタ
タラ、爆笑シテシマウンジャナイカト
ルヤハードコアヲヤッテイルノカトイワレレバ、我々自身モソウハ思イマセン。オ客
(笑)。デモソレヲシラナイ人ニハ新
サンタチガ我々ヲ見ルトキ、最初ハ色眼鏡ヲカケテイルト思イマス。デモソレハ、
鮮ニ感ジテイタダケルト思ウノデ、ソ
我々ガ最初ニバンドヲ始メタトキカラマッタク変ワッテイマセンカラ。アトハ、ス
ノ反応ガ今カラ恐クテ楽シミデス
テージデドレダケノモノヲ発信デキルノカ。ソレヲドレダケ受ケ入レテモラエルノ
(笑)。
カ。ソシテ、ドレダケノモノヲソノ瞬間ニ生ミ出スコトガデキルノカニツキルコトデ
̶これまでの作品やこのシングルを
スノデ、気負イハ感ジテイマセン。ア、デモプレッシャートスレバ、スリップノット
トイッショニデキルコトガ、非常ニ大キイデスネ(笑)。
̶2月20日にニューシングル『Emotions』をリリースするわけですけど、この曲
過ギルト、泥クサクナルトイウカ、熱ッポクナリスギテシマウコトガアルンデスヨ
聴いて、あらためて思ったんですけ
作りはいつからやっていたんですか?
ネ。モチロンソウイッタ曲モ好キナンデスケド、今回ハソレヨリモ無機質ナ、冷タイ
ど、ヘヴィなギターのサウンドや音圧
̶また武道館は歴史ある会場で、いろいろなアーティストが思い入れを持って上が
本格的ナ制作作業ニ入ッタノハ2012年ノ秋ゴロカラデスネ。イワユルDEMOトナル
感触ノアンサンブルノナカデ、メロディガ漂ッテイルヨウナ曲ニシタカッタンデス。
だけで押すタイプではないですよね。
るステージですよね。そこに立つことについて、どう感じていますか?
モノハ、モット前カラアッタノデスガ。
̶このシングルの本格的な制作を始めたのは2012年の秋だったとのことでした
全パートの一体感やダンサブルなリズ
今オッシャッタヨウニ、モトモト武道館ハライヴハウスデハアリマセンガ、ヤハリコ
̶まずタイトル曲の“Emotions”を聴いたとき、「こうくるか!」と思いまし
が、この曲の歌詞はテーマが春ですよね?
ムがキモになっているというか、エレ
ノジャパントイウ国デハ、武道館ニ絶大ナイメージヲ持ッテイルンダナト感ジテイマ
た。不思議なナレーションに導かれてメンバーのコーラスが入ってくるという構成に
実際、コノ曲ガデキアガッタノハ2012年ノ春ゴロダッタンデス。トキドキ衝動的
クトロ・ミュージックやクラブ・
ス。我々モ間違イナク憧レハ持ッテイマシタシ。ソコニタテルトイウノハ、本当ニ応
は完全に裏をかかれたんですけど、これは新作の制作で特に意識したことなんでしょ
ニ季節感ノコモッタ曲ヲ作リタクナッタリスルンデスヨ。前々作『MAN WITH A
ミュージックの感覚でロックをやって
援シテクレテイル人タチノオカゲダト思ウノデ、ヒトツノ集大成トナルダロウト考エ
うか?
MISSION』
(2011年)ノ“RAIN OF JULY”ナンカガマサニソウデ、アレモ夏ノ雨
いるような印象です。
テイマス。ソレヲ見セタイナトモ思イマス。
アレハ、ベースのKamikaze Boyガ元トナルアイディアヲ持ッテキタンデスケド、映
ヲ意識シタ曲デシタ。“アカツキ”ヲ作ッタトキハ、タマタマソノ衝動ガ沸キ上ガ
ソノ意識ハ非常ニ強クアリマスネ。クラ
̶そのほかの2013年の活動の予定と抱負を教えてください。
画ヲ観テイルヨウナ感覚ノ曲ヲ…トイウイメージダッタミタイデス。スローナイント
ル周期ニアッタンデショウネ(笑)。
ブ・ミュージックヤエレクトロ・ミュー
次ノ作品トイウモノガデキアガルノガイツゴロニナルノカハ、マダ分カラナイデスケ
ロガ始マッタ瞬間カラ、ストーリー性ヲ感ジラレルヨウナ…イッソノコト、オオゲサ
̶歌詞に別れや出会いが出てきますが、そういった部分も春の季節感を表現してい
ジックトイウノハ…自分ノ感覚デスケ
ド、DEMO段階ノモノハ、イツモ作ッテイマス。曲ヲ書イテイルトキハ、バンドヲ再確
ニ感ジラレルクライノモノヲ作ッテミタイ、ト本人モ言ッテイマシタネ。実際、今マ
ますね。無機質なサウンドと情緒的な歌詞の対比も面白いです。2月20日という、こ
ド、音デトテモワカリヤスクミンナノ心
認シテイルト思ウンデス。新シイモノノ発見ダッタリ、逆ニ立チ返ルトコロガ見エタリ
デニハナカッタ合唱団ノヨウナコーラスヲ取リ入レテミタリ…ロックトイウヨリハ非
れから春を迎える時期にリリースするのも狙ったところですか?
ヲツカムジャンルダト思ッテイマス。タ
シマスカラ。ソウシタ曲ノ制作ニモ励ンデイマスガ、ホカニハ海外ニモ足ヲ運ベルヨウ
常ニワイドデスケール感ノ大キイ、映画ノサウンドトラックノヨウナモノヲ作ッテミ
ソウデスネ。前作『MASH UP THE WORLD』ハ2012年ノ7月トイウ春ガ終ワッタ
トエバ四ツ打チノビートヒトツニシテ
ニ模索シテイマス。2月ト3月ニハ、フランスヤドイツニ行クコトガ決マッテイルンデ
タイトイウ気持チガアリマシタ。ソレヲドウイッタ形デMAN WITH A MISSIONトシ
後ニリリースシテイタノデ。タイトルモ、コレカラ春ニナッテイクトイウコトデモア
モ、簡潔ニワカリヤスクシタモノダト思
ス。ソレヲ契機ニシテ、ホカノ土地ニモ積極的ニ行ケタライイナト思イマスネ。
テ表現スルカトイウコトデ、作ッタ楽曲デス。
リマスシ、ソウイッタトコロニモ、共感シテモラエタラウレシイデスネ。
イマスシ。ソノ姿勢デ、ラウドロックノ
̶個人的に特に印象的だったのが、静かな“アカツキ”です。少しマッシヴ・ア
̶また“Take What U Want”はアッパーで、これまでのMAN WITH A MISSION
熱サトイウモノモ発信シタイトイウコト
後日、グラインドハウスのオフィシャルサイトgrindhouse.jpにて、MAN WITH A
タックのようなトリップ感があって、これも新境地ですよね。
像の延長線上にある曲だと思います。ほかの2曲で今までと違ったものを出してか
ハ、漠然トデハアルモノノ、確実ニ意識
MISSIONが何者なのかにさらに迫ったインタヴューをアップ予定。そちらもあわせ
オーウ(笑)! 私モ大好キナバンドナノデ、ソウ言ワレルト影響ヲ受ケテイルカモ
ら、バンドのいつもの持ち味を出した曲も聴かせるという構成も意識しました?
シテイルコトデスネ。
てチェックしてほしい。
シレマセンガ(笑)。イワユル日本語詞ノバラードトイウモノハ、バンドデ作リ込ミ
MAN WITH A MISSIONノ真骨頂トイウツモリデ書イタ曲デハナカッタノデスケド…
̶どの曲にも、遊び心がふんだんに
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品だから、このタイトルにフィットすると思ったんだ。新作を通して聴いていると、1
の影響を直接取り入れようとはせず、
そう。そして新作は個人的に期待以上のものになった。前作では、録り終わったあと
ウンド』が今日、アメリカで発売されました(1月8日)。今夜はハリウッドの
曲ごとにまるでページをめくりながら本を読んでいるような感覚になれるから。
ルーツであるヒップホップに正直かつ
もいじくり回すようなことをたくさんしたけど、今回は録ったものをそのままにして
キークラブで新年一発目のライヴがあります。HUが演るハコとしては、かなり小
̶前作はチャートパフォーマンス面でも、またセールスなどの商業面でも、デ
忠実であろうとしてきたよ。
おいて、あとからなにか手を加えるというようなことはしなかったんだ。だけど、自
さいですよね。
ビュー作『スワン・ソングス』(2009年)をはるかにしのぐ実績を残しました。そ
̶ロックヴァイブを強く感じさせる
分で作曲から録音まですべてをこなす身としては、そういう決断って、実は難しいこ
確かに、いつもオレたちはもう少し大きな会場で演っているから、今晩のライヴは特
の理由はどこにあると思います?
ヒップホップグループってほかにもい
とだったりもするんだよね。
別楽しいものになるハズだし、新作のプロモーションを兼ねたリリースパーティ的な
わからないなぁ…。音楽を取り巻く環境は絶えず変化していて、次になにが起こるか
るじゃないですか。たとえばコットン
̶前作はプロデューサーにドン・ギルモア(リンキン・パークほか)らを起用しま
ものでもある。だから、興奮しているよ。
なんて誰にもわからない。次に誰がもっと売れ、誰が消えていくのかなんて予想もつ
マウス・キングスとかインセイン・ク
したけど、今回はナイン・インチ・ネイルズ人脈のひとりとして知られ、マリリン・
̶2013年が明けてからもう1週間経ちますけど、イイ新年の迎え方ができまし
かないさ。次に出る作品がイイものなのか、どうしようもないものなのかだって、ホ
ラウン・ポッシー(ICP)などがそう
マンソンほかとの仕事で有名なダニー・ローナーと再タッグを組み、グリフィン・ボ
た? 昨年はJ-ドッグ個人にとって、またHUにとってどんな1年でしたか?
ントに読めない(笑)。その時々の音楽シーンに身を置くリスナーたちが手にとって
だと思うんですけど、彼らと交流があ
イス、S*A*M & Sluggoらも招いていますね。今回、このプロデューサー陣に託した
昨年は新作のためにずっと曲作りやレコーディングをして過ごしていたんだ。世界で
選ぶものだからさ。
るとか、音楽的に共鳴するところが
意図とは?
はさまざまなクレイジーなことが起こっていて、みんなにとってだけではなく、オレ
̶HUの音楽を聴くと、バンドがアンダーグラウンドヒップホップと同じくらい、
あったりします?
ドンは人として好きだし、作業していて本当に楽しかったんだ。だけど今回はスケ
たちにとっても奇妙な1年だったんじゃないかな。ツアーに出ずに家にずっといて、
ロックやメタルからも影響を受けていることがわかります。主たるツアーを、アヴェ
ICPの連中はクールなヤツらだから仲
ジュールが合わず、見送らざるを得なかったけど、ダニーは、また一緒に仕事をした
曲作りをしながら世界が終わるんじゃないかとか考えてみた。明らかに世のなかはク
ンジド・セヴンフォールド、ストーン・サワー、オール・ザット・リメインズ、ライ
よくしているよ。だけど彼らの音楽
いと思っていたプロデューサーなんだ。前作でダニーとやらなかったのは彼が忙し
レイジーな方向に進んでいたから。だけど今年はもっと前進していくだろうし、多く
ズ・アゲインストらと一緒にやっていますし。アナタたちの感覚でいうと、HUはロッ
はオレたちとは違うし、彼らもそう
かったからで、都合が合いさえすれば、今後も彼と組むことは間違いないね。グリ
のことが起こるような気がするんだよね。
ク/メタルのアティテュードでヒップホップを演っている感じなんでしょうか? もし
思っているハズさ。互いに独自のカ
フィン・ボイスはヒップホップ系のすばらしいプロデューサーで、今後も彼と仕事を
̶新作のタイトルですが、ロシア人作家ドストエフスキーの小説『地下室の手記』
くは逆で、ヒップホップのマインドでメタル/ロックを演っているというか…。
テゴリーにいると思っているんじゃ
する機会はもっと増えていくと思うよ。
(1864年/英題:NOTES FROM THE UNDERGROUND)と、なにか関連性があ
イイ質問だね。今まで聞かれたことがないよ(笑)。オレなりの解釈だと、ロック色
ないかな。オレたちはもうちょっと
̶新作の曲作りやレコーディングのときに、もっとも注意した点とは?
るんですか? アートワークもどこか小説の表紙みたいですし。
が強いところに、ヒップホップを加えたようなものかな。オレたちはみな、アンダー
ロックで、彼らはヒップホップ寄り
一歩引いた位置での視点を持つようにしたね。スタジオのコンソールの前に居座り、プ
あの作品からタイトルを拝借したのは事実だよ。メンバーの1人がドストエフスキーの
グラウンドヒップホップを聴いて育ってきたけど、歳を重ねた今になって、前より
だと思うな。
レイバックしながらちょっとでもよくしようと次々に手を入れることもしなかったし、
ファンで、いつかこれを、なんらかの形で使ってみたいと思っていたようでさ。新作
ロックに触れるようになった。ツアーに出て多くのロックバンドたちと触れ合い、
̶いわゆる“ど”ヒップホップな
歌詞やヴォーカルメロディをこれまで以上に意識した。実はそういうことって、HUが
で3枚目になるし、今回のアルバムはひとつのストーリーのような流れを持っている作
ロック/メタルからの影響も受けてきたんだ。ただ、作曲というレベルでは、メタル
アーティストたちとツルみ、本格的な
始まったときにやっていたことそのものなんで、だからこそ今回はうまくいったと言え
ヒップホップツアーとかはやらないん
るね。考え過ぎることなく、生まれてきたものをそのままの形にしていったんだ。
ですか?
̶新作の作風は、前2作からあまり離れることなく、さらなる進化・成長をとげた
ぜひ、やりたいと思っているよ。だけ
ものですね。多少、サウンドプロダクションがストレートかつシンプルになった気が
どそれには問題がひとつあって、思っ
しますけど、その一方でエレクトロ色が強くなったようにも思います。
た以上にギャラが発生してしまうん
まさにそのとおりだし、自然とそうなった感じなんだ。さっきも言ったとおり、音楽は常
だ。有名なアーティストにコラボをお
に変化していて、今日人気があっても、明日には違ったりもする。そして、将来的に人気
願いする場合、1曲歌ってもらうだけ
が出ることが確約されたものなんてない。今流れている音楽を聴き、そこから影響を受け
で約10万ドル(900万円弱)必要にな
ないわけにはいかないものでね(笑)。エレクトロミュージックを聴いているときに書い
る。そうなると、オレたちは「スヌー
た曲は、その音楽からいくぶん影響を受ける。それは自然と起こることであり、意図的に
プ・ドッグに1曲歌ってもらうのに、
そうしたわけではないよ。エレクトロミュージックで言うと、今スウェーデンのDJグ
そんなに払う必要がある?」と考えて
ループSWEDISH HOUSE MAFIAがお気に入りでさ。それに、スクリレックスとはもう長
しまい、結局自分たちだけでやればイ
いつき合いで、よく知っている。DJ RASCALとも仲がよくて、最近彼のライヴを観に
イということになるんだ。オレたちは
いったばかり。ほかにもたくさんのDJをチェックしては聴いているよ。だから、彼らの
常々、コラボには積極的だし、ギャラ
音楽を聴いて影響を受けずにはいられない(笑)。ひとつつけ加えたいことがあるんだけ
を要求されなければぜひやりたいね
ど、新作に“レイン”っていう曲があるんだ。個人的にとても気に入っている曲でね。ア
(苦笑)。
コースティックでスローな曲で、クールな歌詞とメロディなんだ。オレは普段、メタルや
̶で、新作ですけど、今回はどうい
エレクトロミュージックを聴いているけど、それらからは距離を置き、自分たちの音楽と
う作風を考えていたんです?
向き合うときは、ソフトで耳あたりのイイものを聴きたくなるときもある。そういった理
2枚目だからこそのプレッシャーや、ま
由もあり、新作の収録曲においてもっとも好きなのが、この曲なんだ。
わりからイイ結果を出してほしいという
̶日本盤のボーナストラックとして追加収録されている“アイ・アム”は、HU風
期待があったから、前作のときはかなり
ダブステップですかね?
深く考え込んだけど、新作ではそんなに
そんなことないんじゃない? オレたちはバンドワゴンに乗り込んで飛び跳ねるよう
考えなかったよ。今回は「よし、こうい
なバンドではないし(=流行に乗るという意味)、みんながやるようなことに飛びつ
う作品にしよう!」ということは考えず
いたりしないよ。この曲はダニーに手がけてもらったもので、オレはどちらかと言う
に、ただ単に新曲を書き、かつてHUが
とインダストリアルミュージックのようなヴァイブを感じるね。確かにこの曲では、
始まったときのように楽しみながら作っ
ダブステップ系プロデューサーと組まないかっていう話もあったけど、それは断った
HOLLYWOOD UNDEAD
3枚目の新作発売! 音像がよりシンプルでストレートになり、少々エレクトロ色増量!?
謎の覆面集団ことハリウッド・アンデッドが、前作『アメリカン・トラジディ』(2011年)
に続く通算3枚目の最新オリジナルスタジオ録音作『ノーツ・フロム・ジ・アンダーグラウン
ド』を発売した。アンダーグラウンドヒップホップとロック/メタルとの間を自由往来するそ
の音楽は、完全に次のステージに到達した。元構成員デュースに関する質問がご法度だったの
は残念だったが、J-ドッグ(vo,g,b,key)が新作をおおいに語ってくれた。
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February - March 2013 Issue
文・有島博志/text by Hiro Arishima translation by Tomohiro Moriya
̶ハリウッド・アンデッド(HU)の新作『ノーツ・フロム・ジ・アンダーグラ
ていったんだ。だから、新作になにを期
(笑)。みんなと同じことをやるつもりはホントにないから。
待してイイのかわからなかったし、ある
̶新作を介してリスナーにもっとも伝え、一緒に共有したい音楽的なこと、歌詞的
意味、期待以上の作品に仕上がった。ラ
なこととは?
ジオ向けのシングル曲だとか、受け入れ
とにかく、『ノーツ・フロム・ジ・アンダーグラウンド』を聴いてほしい。好きに
られやすい曲を狙ったりする必要がな
なってもらえないからと言って、オレたちがリスナーを嫌いになるなんてことはない
かったから。
し(笑)、ぜひオレたちにチャンスを与えてほしいんだ。もしこの新作を聴いてもら
̶では、HUにとってイイ環境で新
えれば、それだけでオレはハッピーだよ。今年のどこかで、日本にいけたらイイなっ
作を制作することができたんですね。
て思っているんで、日本のファンにぜひ新作を聴いてほしいな。
February - March 2013 Issue
19
ら、なぜかザ・フーのピート・タウン
(envy)の7つがそれに当たる。実際、今作にもそれぞれの欲望や感情をタイトルに冠
ゼントの言葉を思い出していた筆者。
した楽曲があり、もとになっているのは、ジョシュ自身の子供時代の試練と苦悩、そ
楽しさもロックンロールならば、悩み
して大人になるまでの変遷での経験だという。
や苦しみに寄り添うのもまたロックン
となると、『告白』というアルバムタイトルも意味深なものに。アルバム自体が
ロール。それは昔も今も変わらない。
ジョシュの自伝的な内容とも取れるし、「ずいぶん欲望に流されやすい少年だったん
そして、アコースティック調で本編
だねぇ」と皮肉のひとつも言ってみたくなる。いや、それ以前にすっかりいい“大
最後をヒューマンに締めるのが、“ド
人”になってから̶̶しかもロックンロールの形を借りて̶̶昔を懺悔するというの
リーミン”。心に優しく響き、気持ちが
は、大人げない気もするが、どうなんだろう(笑)。まあ、冗談はさておき、ジュ
スッと軽くなるような感すらある。
シュの頭には今作と関連した映画を作る構想もあるらしい。
ジョシュ自身もアルバム一枚をかけて
とはいえ今作には、7つの大罪それぞれを題名に冠した楽曲のほかにも、“ナッシ
告白することで、最後に晴れやかな気
ング・レフト・バット・ティアーズ”“ウォーター”“エア”“ドリーミン”などの
分を表したかったのではないだろう
ナンバーも存在。大罪曲との関連性も気になる。アメリカのエンタテイメント総合サ
か。と書いても現時点ではなにを言いた
イトPop Culture Madnessが、キース・ネルソン(g)に「新作はコンセプトアルバ
いのか分からないかもしれないが、ここ
ムなのか」と質問した際のキースの返答が興味深い。ちょっと長くなるが、そのまま
ではのちの布石ということで、そのまま
次へと進んでいただければと思う。
バックチェリーが、7つの大罪をテーマに“告白”とタイトルした6枚目の新作を発売!!
昨年10月のラウドパーク出演もまだ記憶に新しいバックチェリー。約3年ぶりの新作『コン
フェッションズ』は、バンドとしてのエモーションとキャリアに裏打ちされた、懐の深さや引
きの巧さが共鳴し合った一枚に。その一方、ジョシュ・トッド自らの少年期から青年期にかけ
ての体験をもとに、キリスト教の“7つの大罪”がテーマのコンセプチュアルなアルバムでも
ある。濃密で劇的な作品として、最後まで一気に聴かせてしまう快作だ。
文・兒玉常利/text by Tsunetoshi Kodama
BUCKCHERRY
引用しよう。
「元来、コンセプトアルバムは“7つの大罪”をベースにする形でスタートするけ
さらには、センシティヴな感情をス
ど、今作の場合はそのテーマからさらに発展していったんだ。だから俺は、今作はコ
ケールの大きなオールドロック・スタ
ンセプトアルバムというよりは、明確なテーマを持った作品だと思う。ジョシュの人
イルに昇華した“ザ・トゥルース”。
生に起きた出来事をベースに、彼が書いた脚本を発展させたものなんだ。アルバムに
再結成以来不動の5人によるエモー
込められたストーリーは映画に伴うし、映画もまたアルバムに関してそう。一緒に
ションがダイナミックに交錯する“セ
なってひとつの物語を語るけど、それぞれ独立した作品なんだ」
ヴン・ウェイズ・トゥ・ダイ”。スト
となると、映画のほうもが然楽しみになってくる。現在のところ、映画に関する具
リングスを用いながら、ジョシュの歌
体的な話は進んでいないようだが、いずれは映像をバックに『コンフェッションズ』
声もソウルフルに迫る“スロース”。
の全曲を完全再現するライヴが行われたりして…。そんな風に早くも期待が勝手に膨
ラップライクに感情の起伏を言葉に込
らむが、まずはアルバムをじっくり聴き込みたいと思う。
める“プライド”。濃密で劇的であ
今回、プロデュースを務めたのは、キースと、マーティ・フレデリクセン(エアロ
り、最後まで一気に聴けてしまう。
スミス、パパ・ローチなどとの仕事でおなじみ)の2人。マーティはコンポーザーと
なお、バックチェリーは『コンフェッ
して『15』(2006年)にも関わっているが、プロデューサーとしては『ブラック・
ションズ』でセンチュリー・メディアと
バタフライ』(2008年)、『オール・ナイト・ロング』に続く、3作連続のコンビ
契約。アメリカでは同レーベルより今作
ということになる。考えるに、違うプロデューサーと組んで新たなことにチャレンジ
が発売され、それ以外の国ではこれまで
するよりも、気心の知れたマーティを三たび迎えることで、それまで培ってきたバッ
どおりにニッキー・シックスのイレヴ
クチェリー節をさらに深化させたかったということなんだと思う。実際、レコーディ
ン・セヴン・ミュージックがリリース
ングもキースの自宅で行われたという話があり、“バックチェリー節”云々といった
(よって日本も以前と変わらず、ユニ
筆者の仮説もあながち間違いではないように思う。ここらへんの話は、グラインドハ
バックチェリーが『オール・ナイト・ロング』(2010年)から約3年ぶりの6作目『コ
とも想像に難くない。もしも俺がステージでクレイジーに歌うことを選ばなかったと
バーサルが発売)。センチュリー・メ
ウスのウェブ版に掲載予定のインタヴューでキッチリ確かめるのでご期待を! それ
ンフェッションズ』を2月13日に日本先行リリースする。前作も全米ビルボードチャート
したら…。そっと目を伏せるジョシュの表情からは、そんな思いが頭をよぎったよう
ディアのサイトでジョシュは、今作を以
こそ、制作中のエピソードもあれこれ聞けると思う。
で最高位10位をマークするなど、あらためてその存在感をシーンに示した一枚だった
にも感じられた。
下のように語っている。
さて、今後のバックチェリーだが、2月2日からはキッド・ロックの“レベル・ソ
が、新作もまさに「バックチェリー、ここにあり!」といった快作となっている。
残念ながらラウパで新曲が披露されることはなかったが、『コンフェッションズ』
「これは俺たちの作品で最もクールなア
ウル”ツアーにスペシャルゲストとして帯同。混沌とした時代の中、ロックンロール
端的に『コンフェッションズ』を評するならば、ロックンロールに備わったダイナ
からの先行シングルとして昨年12月に配信がスタートした“グラットニー”からし
ルバムだ。多くの人々に気に入っても
に備わったダイナミズムやグラマラスさ、スリリングさを体現してくれることだろ
ミズムやグラマラスさ、スリリングさを基調に、表情豊かに練られた佳曲、好曲が並
て、アルバムの内容を期待させるには十分だった。同曲は今作のオープニングナン
らえると思う。バックチェリーのこと
う。彼ら自身、昨年12月27日よりソロツアーを行っており、それに引き続いてキッ
ぶアルバムだということになると思う。これまでの作品の延長線上に、持ち前のエ
バーでもあり、砂埃を上げながらハイウェイをぶっ飛ばすかのような、痛快なロック
が好きならば、バンドの輝かしい歴史
ド・ロックと回るだけに、本領発揮のライヴですでに温まった状態であることは間違
モーショナルな部分と、懐の深さや引きの巧さが共鳴し合った1枚。バックチェリー
チューンとなっている。
の一端に参加することのできるチャン
いない。そして、前回の来日からまだ3ヵ月しか経っていないものの、日本でも早く
らしいワイルドなポップ感が随所に息づき、聴けば聴くほどに味わい深さを感じるの
YouTube上のオフィシャルチャンネル等には、2種のビデオクリップもアップ。
ス̶̶革命に加われよ、そしてロック
エモーショナルなパフォーマンスをフルセットで観てみたいと思う。
も、また今作の特徴だ。
ひとつは教会でワイルドにロックするオフィシャルトレイラー・ヴァージョン。随所
しようぜ!」
バックチェリーへの電話インタヴューをまとめた記事は、近々、grindhouse.jpに
昨年10月にラウドパークに出演した彼ら。自分はグラインドハウスのウェブ版用
に頭の固い人たちの神経を逆撫でしそうな映像をインサートするあたりも、バック
このコメントだけでも、新作に対す
アップされる予定。お楽しみに! この原稿を書いている時点で、すでに取材スケ
にライヴレポートを執筆することになっていたため、3ステージを回らなければなら
チェリーらしくて思わずニヤリである。もうひとつは、ジャケット等に次々と歌詞が
る自信のほどが伺える。
ジュールが出てきており、バンドを代表してジョシュが質問に答えてくれることに
ない関係上、フルでバックチェリーのパフォーマンスを観ることはできなかったが、
映し出されていくヴァージョン。楽曲自体がシンガロングなナンバーだけに、歌詞を
そんな『コンフェッションズ』は、
なっている。こちらとしても、これほどゴキゲンなアルバムを届けてくれただけに、
バンドは“ライディン”“オール・ナイト・ロング”“リット・アップ”“クレイ
覚え、ライヴで一緒に歌ってほしいということなのかもしれない。
“7つの大罪”をテーマにしたコンセプ
本人の声を直接聞かずにはいられない。ちなみに筆者は、セカンドアルバム『タイ
ジー・ビッチ”など、これまでの代表曲をフェス用のコンパクトなセットにまとめ、
アルバム2曲目は、
“ラス”
。
まずはオリエンタルなサイケ感が妖しく息づくイントロ
チュアルな側面を持った作品でもあ
ム・ボム』(2001年)がリリースされた際に、ジョシュとキースを取材。最初の質
場内を煽動。少なからず音響環境が悪い中ではあったが、自他ともに認めるライヴバ
が耳に残る。ミドルテンポによるロックグルーヴに思わず体を合わせたくなるグラマ
る。7つの大罪とは、キリスト教におけ
問をしようとしたときに、事件は起きた。いきなりジョシュが「ちょっと待って!」
ンドとしてのポテンシャルを存分に見せつけた。中でも“ソーリー”でスクリーンに
ラスなナンバーで、ジョシュのヴォーカルも狂おしく、キャッチーなサビも印象的だ。
る人間を罪へと向かわせる可能性を
と、なにかを真剣に考えている様子。なんなんだろうとしばらく黙っていると、軽く
大映しになったジョシュ・トッド(vo)には、酸いも甘いも噛み分けた男の哀愁が
続く“ナッシング・レフト・バット・ティアーズ”は、小気味好い引きの妙技か
持った欲望や感情のこと。具体的に
腰を浮かして、ブッブー。そして、悪びれもせずに「ガハハハ。ゴメン、ゴメン」。
滲み、彼自身のさまざまなドラマを想像させた。3年間の解散期間がありながらも20
ら、溜まりに溜まった焦燥感が心に迫るサビへと展開。1曲の中で、パーソナルな切
は、暴食(gluttony)、色欲(lust)、強
いきなりのご挨拶だった。そういえば、こちらに向けて匂いを仰いでいたような記憶
年近くにわたって、浮き沈みの激しいロックシーンをサヴァイヴしてきたバックチェ
迫感とロックンロールの高揚感がせめぎ合う。「ロックンローラーは悩みを解決なん
欲(greed)、憤怒(wrath)、怠惰
も…(笑)。まあ、今となってはいい思い出だけどね。
リー。その過程には華々しい面もあれば、失ったものも数えきれないぐらいにあるこ
かしない、君たちはただ悩みを抱えながら踊り続けるだけだ」。この曲を聴きなが
(sloth)、傲慢(pride)、嫉妬
20
February - March 2013 Issue
February - March 2013 Issue
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な経験だと思う。新作におけるもっ
る。心を込めて人のためになにかを
をすれば、それはずっと生き続け
人に対してなにかポジティヴなこと
アートワークもこれまでにな
̶
CDやアナログ盤を買ったときに持
ください。
すれば、それが何倍にもなって返っ
時期だったのかもしれない。新しい
Honor
つ、芸術作品を手にしたような感覚
てくると、オレは思っているんだ。
長らく在籍したロードラン
とも強いメッセージは、〝
を取り戻したかったんだ。昔のアイ
ヘイトブリードはこれまで定期
̶
かったものですよね。これや歌詞と
しい要素を積極的に取り入れた作品
アン・メイデンやスレイヤー、メタ
的に日本に来てくれていましたが、
〟に込められている。
Never Dies
でしたね。しかし新作は再びハード
リカのジャケットは絵画みたいだっ
前作﹃ヘイトブリード﹄︵200
̶
コアな作風に戻った印象です。
た。今回のアートワークを手掛けた
9年︶はギターソロやピアノなど新
そうだね。前作は %がメタルだっ
レーベルと、またいい関係を築いて
﹄
DIVINITY OF PURPOSE
をリリースしたヘイトブリー
ド。再びハードコアの原点に
帰った新作をもって、足場を
固めんとツアーに出ている総
話した。
帥ジェイミー・ジャスタ
︵ ︶と
年明け早々からツアーに出てい
̶
るそうですね。
今はアメリカをシャドウズ・フォー
ルやダイイング・フィータス、
とツアー中
THE CONTORTIONIST
なんだ。これが2月末まで続くんだ
けど、その後はイギリスに行くし、
実は2014年までスケジュールが
埋まっているんだ。ひたすらツアー
で忙しくなりそうだよ。今年は世界
中をまわる予定で、東欧や北欧、東
南アジア、南米にも行くつもり。早
くいろんなところで新曲をプレイし
たくて仕方がないよ。
新作の話の前に、まずなにより
̶
驚いたのが、ヘイトブリードがロー
ドランナーを離れたということです。
アメリカでは Razor & Tie
、ヨー
たそうですね。
ロッパでは Nuclear Blast
と契約し
レーベルについては、オレたちにど
うにかできることではなかったん
だ。世界各地のロードランナーの上
層部が替わってしまったからね。み
んなオレたちを熱心にサポートし、
も抜きん出たものにするよう心がけ
ヘヴィな、ほかのアルバムと比べて
逸脱していない。それでいてすごく
き慣れているヘイトブリードからは
てもらえると思うけど、みんなが聴
いったものをね。新しい要素も感じ
シュパート、ファストなビートと
であるビッグなシンガロング、モッ
しさを追及した。このバンドの強み
材も昔のものに戻して、オレたちら
クなヘイトブリードらしい感じ。機
部分を占めている。新作はクラシッ
たけど、今作は逆にハードコアが大
しては相反する力の陰陽、葛藤、そ
点によっても変わると思う。オレと
意味するのかは、解釈次第だね。視
天使が描かれている。それがなにを
て、その右側には悪魔が、左側には
らったんだ。この絵には主人公がい
合ってイメージを共有し、描いても
ないかと思って、エリランと話し
画を取り入れたら素晴らしいんじゃ
いた人だ。オレたちもああいった絵
トやソドムなんかのジャケットを描
エリラン・キャンターはテスタメン
約束するよ。
に感謝したい。だから、必ず行くと
当にうれしいし、みんなのサポート
メッセージがたくさんくるんだ。本
ブックやツイッターに、日本から
ラウドパークもいいね。フェイス
だ。ツアーができれば最高だけど、
秋頃に行きたいなと思っているん
次はいつごろになりそうですか?
してバランスを表現したかった。で
〟
〝 Nothing Scars
Man Breathing
同感だよ。
後半は〝 Indivisible
〟
〝 Dead
思います。
分のまわりにいる人々を観察して、
めるのは、君自身なんだ。今回、自
しているのかもしれない。それを決
しくはその力を完璧にコントロール
で苦しんでいるのかもしれない。も
も、解釈は自由にしておきたい。中
たよ。
〟といった曲でどんどん勢いが増
Me
ひとつわかったことがある。たった
央にいる主人公はふたつの力の狭間
して、最後は〝 Idolized And Vilified
〟
ひとつの選択が、人生を永遠に変え
またサウンドメイキングはより
̶
で締めくくる。すごく焦点を絞った
てしまうかもしれないということ。
生々しく、無骨になっているように
アルバムだ。実験的な要素が少ない
かったのが不思議なくらい︵笑︶。
し、曲数も多すぎないしね。今振り
トゥルー・ノース
︵真北︶というア
̶
人生の目的 父
…親になることでも、
曲作りは常に僕とブレットでやっ
ルバムタイトルも意味深ですが 。
…
返ると、前作でのオレたちはレーベ
ているけど、昔から一緒に書くこ
僕たちは方位磁石でマグネティッ
ミュージシャンになることでも、オ
んでしょうか?
とはなかったんだ。ブレットと、
ク・ノース︵磁北︶を知ることはで
レは長年に渡って人生の目的があっ
あまり過去を振り返らないから、な
こんなアルバムにしようと方向性
きても、真の北がどこかはわからな
ルを満足させようとしたんだと思
にかをやり遂げて満足感にひたると
を共有するだけで、アイディアを
い。誰かが計画を立てて、それに
う。レーベルから﹁もっとたくさん曲
いうよりは、俺たちにはまだ未来が
交換することなく、別々に曲を作
沿って物事を進めようとしても、真
たおかげで、今こうしていることが
あると、次のプロジェクトを楽しみ
る。お互い曲が揃った時点で、二
の方向は示されないんだ。自分なり
できる。人生の目的が、自分を破滅
にするような気分だったかな。何枚
人で付け合わせをし、まだダメだ
の真北を探り、道を切り開かなけれ
を入れよう!﹂と言われたんだ。で
アルバムを出そうと、次の新作はよ
なと思ったら曲作りに戻り、これ
ばならない。磁石に頼ってちゃいけ
もう考えはじめていたね。 周年ツ
い、過去の作品の焼き直しに終わる
させるクラシックなサウンドにした
今回はすべてテープでアナログ録音
で、本当にカッコいいですよね。
が、音がすごく生々しくパワフル
にいるんですか?
かりやるのではなく、新曲を常にプ
に出るときは、人気のある古い曲ば
としてどれだけ成長したかを見せら
にを学んできたか、ソングライター
したから、クラシックなサウンドに
などに頼ることなくレコーディング
移しはしたけどね。オートチューン
したんだ。編集用にプロトゥールに
ピレーションを受けたと言っていま
ル・オア・ナッシング﹄からインス
今回、ペニーワイズの新作﹃オー
速いから、曲の長さは一般的なロッ
バッド・レリジョンの曲はとにかく
とは?
すよね。短い曲を書くことの難しさ
2分どころか1分の曲もありま
̶
メリカ、夏はヨーロッパをツアーす
僕らもそれを願っているよ。春はア
が多いと思います。
来日してほしいと思っているファン
現していないので、2013年こそ
しばらくジャパン・ツアーが実
̶
つもりだった。だけどいざやって
れまでと同じようにツアーをする
だ。だから普通に新作を出し、こ
と同じことで悩み、社会に抵抗して
成長を通して、若い彼らが昔の僕ら
もあるし。個人的には、息子などの
かな。好きでやってるんだけどね
クニックを要するのが難しいところ
から、作るのにもプレイするにもテ
シンプルではなく、凝縮されている
を待っているところだよ︵笑︶。
タイトルには驚きました。
それにしても、1 シングルの
̶
︵笑︶。
いることを知り、次世代にも訴えか
けられる作品にしたいという思いが
みると、
にとても特別なものになった。長
強くあった。
ルだと思う。とてもバッド・レリ
﹁ファック・ユー﹂は完璧なタイト
ジョンらしいし、これまで書かな
が、グレッグは東海岸で過ごす時間
出ないんでしょうか?
が長くなりました。曲作りに影響は
他のメンバーは西海岸在住です
̶
きにわたりバンドをこれまで支え
てくれたファンに感謝しっぱなし
だったね。
ひとつの区切りを迎えた達成感
̶
のようなものを味わう瞬間もあった
st
素晴らしい経験をさせてくれたか
りよいものにしようと毎回思ってい
ならいいアルバムになると確信を
ない。そんな思いをこのタイトルに
の道から救ってくれるなんて、神聖
るからね。挑戦し続けるのは大変だ
持った時点でバンドに聴かせるか
も、曲が少ないほうがいい場合もあ
けど、やりがいがあるから。
ら、大きな問題はないよ。ちなみに
込めたんだ。
る。新作がまさにそうなっているよ。
ろからあったんでしょう。
今回は、﹃サファー﹄
︵ 年︶
や﹃ノー・
アーで憔悴しきって、バンドはもう
ことなく、この 年で自分たちがな
その新作ですが、構想はいつご
̶
前回のツアーが終わったころには、
グレッグは現在、バンド活動の
̶
アルバムが作れなくなったとファン
いや、今は自宅だよ。昨日、学期末
れる簡潔な曲を書こうと話し合っ
前作﹃ディセント・オブ・マ
̶
したが、グレッグはどうですか?
る予定で、今は日本からのオファー
なったと思う。
ン﹄はデビュー 周年という記念の
サウンドというより、バンドの歴史
クソングの半分でも、トータルの
お互いに課したんだ。
レイしたい。だから、ツアー後すぐ
テストが終わったから、大学は今日
に曲作りを始めたんだ。
え、これからテストの採点をしな
年に発売されましたが、ツアー終了
ビート数は上回っている。短いけど
きゃいけないんだけどね︵笑︶。
後の心情はどんなものでした?
楽を作り続けている頼もしい友人で
メンバー自身はもともと、
周年
や伝統に影響されるね。常にいい音
ブレット・ガーヴィツ︵g ︶は
̶
からクリスマス休暇なんだ。とはい
た。それで、1曲2分という課題を
アルバム全体に言えることです
̶
かたわら、ニューヨーク州にある
に思われたくないし︵笑︶。ツアー
コントロール﹄
︵ 年︶などを彷彿と
コーネル大学で教鞭をふるっている
89
30
30
周年記念ツアーは本当
をあまり意識していなかったん
30
30
ら、とても感謝している。でも、も
しかしたらオレたちもなにか変わる
枚目となる新作﹃トゥ
シングル﹁ファック・
60
そうですが、もしや今、キャンパス
グラフィンを電話で直撃
超知性派シンガー、
グレッグ・
とは? 大学教授の顔も持つ
ユー﹂に込めたバンドの真意
1
ルー・ノース﹄をリリース!
算
説、バッド・レリジョンが通
強 、 L Aパ ン ク の 生 け る 伝
ント・オブ・マン﹄から2年
年に発売された前作﹃ディセ
デビュー 周年という記念の
ナーを離れ、新天地より6作目
ハードコア・シーンの親玉ヘイトブリードが、レーベル移籍の真相と新作について赤裸々に語る!!
ともに、新作に込めた思いを教えて
怒れるパンクロックアルバム、再び! バッド・レリジョンの新作は、16曲35分の超速作!!
いきたいよ。
BAD RELIGION
となるニューアルバム﹃ THE
30
30
23
February - March 2013 Issue
February - March 2013 Issue
22
HATEBREED
!!
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki
translation by Mariko Kawahara
文・権田アスカ/text by Aska Gonda
88
16
st
vo
1月 日に、東京で一夜限り
の来日公演 good evening
with…FUNERAL FOR A
を行ったフューネラ
FRIEND
オレは 年代のパンクロックやハー
これまでになくヘヴィですよね。
てもメロディックですが、サウンドは
驚きました。あなたのヴォーカルはと
新作﹃コンディット﹄の作風には
̶
がどう感じるか期待しているし、受
る仕上がりにもできたしね。みんな
な曲調ばかりじゃなくて、起伏のあ
もらえるんじゃないかな。同じよう
るし、何度も聴いてみようと思って
バーツ/g ︶が担当している。オレ
き、スクリームはクリス︵・ロ
てね。ライヴで過去の曲をやると
の一部として成立していると思っ
そのまま残したんだ。彼の声が曲
これはライアンが叫んだパートを
激しい表現に感情を揺さぶられてき
ドコアを聴いて、そのストレートで
気はどのようなものでしたか?
と。自分たちのスタイルでやるよ
ていたことを無理にマネしないこ
よ。重要なのは、ライアンがやっ
う。今回はライアンが脱退すること
感情移入ができていなかったと思
ればならなかった。百パーセントの
とリリースできない﹂と言われてい
が完成しても、2013年にならない
ね。しかもレーベル側から﹁アルバム
退することはすでに決まっていたから
ていたんだけど、アルバム完成後に脱
マシュー・エヴァンズなんだ。この
にバンドでヴォーカルをやっていた
実はこれを手がけたのは、オレの前
なかったタッチのものですね。
うに心がけているんだ。
やほかのメンバーもやっている
そんな彼らが、いよいよ新作
正直、ぎこちない感じだった。曲作り
ル・フォー・ア・フレンド。
け入れてくれると信じているよ。
﹃コンディット﹄をリリース
た。それにずっと憧れていたんだけ
を始めたときはまだライアンが在籍し
口には、新作はもちろん、バ
が決まった上で制作したから、なに
アートワークは、新作の制作プロセ
作曲や制作時、バンド内の雰囲
̶
する。一気にしゃべるマッ
ど、バンドではオレは一歩引いて、
ンドの今後への自信と意欲が
も気にせず、自分の感情のおもむく
た。それだと、ライアンがドラムを叩
た印象です。
とにかくムダを削ぎ落とし、凝縮し
また、どの曲も短いですよね。
̶
けど、パットのおかげでよりおもしろ
はもともと満足のいく仕上がりだった
ドラムのパートだけ再録したんだ。曲
る。だから、パットが加入してから、
経ってからリリースされることにな
らも、ずっと友人だった。彼のアート
だよ。マシューはバンドを離れてか
アルイメージが完璧に融合した感じ
代弁していると思う。曲とヴィジュ
スや表現のエネルギーなどすべてを
アートワークも、これまでに
̶
驚いたことに、2012年の初
̶
いたアルバムが、彼の脱退後1年近く
みなぎっていた。
頭にライアン・リチャーズ
︵ / ︶
ままにやれた。だからこれまでの作
曲を書いているうちに自然と短く
ワークを重要なピースのひとつとし
と言えばいいのかな。新作に収録し
今回はそういう曲に出会わなかった
特に話し合ったわけじゃないけど、
ラード曲がないんですよね。
ウェールズ出身の人間が曲を書
いているよ。オレのような南
したバンドが持つ責任について書
ファンとの絆や、ステップアップ
えてください。
て、新作に込めたメッセージを教
て使えることがとてもうれしいよ。
いものになったと思う。
ている曲のなかで最初に書いたのが
き、東京でライヴをやって、みん
ろに聴いていたハードコアを思い出
〝ハイ・キャッスルズ〟なんだけど、
ながオレたちの曲をいっしょに
歌詞や作品タイトルと合わせ
̶
これがアルバムの方向性を決定づけ
歌ってくれるなんて、素晴らしい
また、今回は〝ヒストリー〟や
̶
たと思う。すごくダイレクトでアグ
じゃないか。音楽は壁を取り去
〝 ウ ォ ー ク・ア ウ ェ イ 〟の よ う な バ
レッシヴな、一瞬で爆発するような
り、人と人をつなぐ。そういった
終えた感想はいかがですか?
﹃ジ・アフターマン﹄の二部作を作り
まずは新作をリリースし、
̶
︵ /g ︶に再び話を聞いた。
クラウディオ・サンチェス
この二部作の持つ背景とは?
ヒード・アンド・カンブリア。
なストーリーを描き出したコ
リリースし、またひとつ新た
ターマン∼第二章 下降﹄を
天﹄に続き、第二部﹃ ジ・アフ
アフターマン∼第一章
昇
昨年発売の新作第一部﹃ジ・
ラスには隠していたんだけど、ある
して、妊娠してしまう。それをサイ
在中、メアリーはほかの男と浮気を
崩壊が始まりなんだ。サイラスの不
たサイラスとメアリーの夫婦関係の
1年半の旅を終えて惑星に帰ってき
らすじを、改めて教えてください。
ストーリーとのことですが、そのあ
降﹄はもといた惑星に戻ってからの
るストーリーですよね。今作﹃下
字どおり昇天し、上の世界を発見す
前作﹃昇天﹄は、サイラスが文
̶
にするかが、当面の課題だからさ。
よね︵笑︶。次のツアーをどんなもの
ま
…だなにも書き始めていないんだ
笑︶。
んな心情から発展した曲なんだ︵苦
を殺すことになる﹂と不安で 。
…そ
ね。﹁もし事故を起こしたら、彼女
せるときはいつも緊張するんだよ
転が大の苦手でさ。助手席に妻を乗
から生まれた曲。実はオレ、車の運
は、自分の車の運転に対する恐怖感
出た〝グラヴィティズ・ユニオン〟
いったんだ。たとえばさっきも話に
とにして思いつくままに曲にして
ンセプトも考えず、自分の体験をも
とは以前も話したよね? 最初はコ
アー後にとったオフの間に作ったこ
レ イ ン ボ ウ ﹄ ︵ 20 1 0年 ︶ の ツ
は﹃イヤー・オヴ・ザ・ブラック・
のかもしれないな。この二部作の曲
ヴだとメンバー4人で再現すること
りたいことを実現させるけど、ライ
ばならない。レコーディングではや
いう現場での表現方法は考えなけれ
やりたいと思うよ。だからライヴと
品を完全再現するような企画はまた
ら、以前やったような、ひとつの作
だとなかなか難しいんだよね。だか
だ。でも現実的には、通常のライヴ
トに反映させたい気持ちも強いん
のコンセプトをライヴのセットリス
オレとしては﹃ジ・アフターマン﹄
違ってきますよね。
いるものが同じでも、表現の仕方が
ライヴという現場では、プレイして
ると、コンセプトを内包した作品と
から選んでいくと思います。そうな
思いが散りばめられているんだ。
サウンドだから、これ以上なにかを
終盤で、昔のようなスクリームが聴
その〝ハイ・キャッスルズ〟の
̶
足す必要を感じなかったんだ。
すよ。ダイレクトに感情に訴えかけ
なったんだ。オレたちが子どものこ
思う。
品で、もっとも魂がこもっていると
はバンドを脱退する決意を固めてい
たんだ。当時、彼の親戚が病気に
なってしまったり、彼自身に子ども
ができたのに家族から離れてツアー
をしなければならないという境遇
が、プレッシャーになっていた。で
もメンバーも彼の悩みは理解してい
たし、ライアンもバンドが続いてい
くことを願っていた。それでお互い
合意のうえで、彼は離れることに
なったんだ。
そして後任に元ライズ・トゥ・
̶
リメインのパット・ランディを迎え
ました。
パットのプレイは最高だよ。情熱的
で、ほかのメンバーの音楽的嗜好を理
解し、バンドの方向性を見極めてい
る。おかげでここしばらく忘れかけて
いた、必死に音楽と向き合うという姿
勢を思い出した。バンド結成時に自分
もう最高の気分だよ! この二部作
し、メアリーが口を滑らせたこと
日、車中で口ゲンカがエスカレート
けますね。
はバンドのキャリアにおいてとても
作も、あなたがずっと表現してきた
この﹃ジ・アフターマン﹄二部
̶
とを願ってやまないよ。
れまで以上に多くの人たちに届くこ
ン〟に描かれているよ。その後、サ
シーンは〝グラヴィティズ・ユニオ
アリーが死んでしまうんだ。この
は運転ミスで交通事故を起こし、メ
まう。その事実に動揺したサイラス
で、サイラスは妻の妊娠を知ってし
戻ろうとする。そこからまた発展し
﹃昇天﹄の始まりのストーリーへと
と繋がっていくんだ。サイラスは
実はこの曲、前作﹃昇天﹄の冒頭へ
とともに締めくくられますね。
フェイヴァリット・ワン〟はピアノ
ラストの〝トゥーズ・マイ・
̶
力は、自然発生的でワイルドなとこ
る。基本的にオレたちのライヴの魅
シャンの力を借りる必要性も出てく
プログラミングやサポートミュージ
には限度があるし、場合によっては
スに〝メアリーは最初から君の旅に
あう形になりますね。
合わせると色違いの生き物が向かい
この二部作のアートワークは、
̶
いるんだ。サイラスとその妻メア
ターマンになるまでの過程を描いて
そう、今回はサイラスがジ・アフ
﹃昇天﹄はそのタイトルから、なに
いや、自然とこうなったよ。でも
が、これは意図的なものですか?
かな側面が強い作風だと感じました
﹃昇天﹄よりもメロディアスで、静
今作﹃下降﹄のほうが、前作
̶
あなたたちの作品はすべてコン
̶
ら、周囲の雰囲気がかなり違うこと
入ったような感じになっているか
新作﹃下降﹄ではガラスにヒビが
された様子が描かれている。そして
が何者かに捕獲され、コントロール
ろだと思うね。
﹃ THE AMORY WARS
﹄のストー
イラスはメアリーの浮気相手の男と
昇天﹄
反対していた。それを聞かずに彼女
まさにこれがサイラス・アモリーな
﹃ジ・アフターマン∼第一章
ヴューで、新作は﹃ THE AMORY
をひとりにした君は、ここに戻って
ていくんだ。
﹄の登場人物サイラス・アモ
WARS
くるべきじゃなかったんだ〟と告げ
対面する。そこで、その男はサイラ
リーの物語であり、今後の作品でもサ
︵ 2012年︶リリース時のインタ
イラスの物語を続けていくと語ってい
るんだ。
リーの関係が物語の鍵になってい
セプト作ですよね。ライヴのセット
んだ! 前作﹃昇天﹄ではサイラス
ました︵ 号参照︶。次作への構想は、
る。いつになるかはわからないけ
かしらの前進が感じられる。でも
リストを組む際は、いろいろな作品
少しずつ進めているんですか?
ど、サイラスの物語が終わるまで、
ら、より繊細で複雑なものになった
﹃下降﹄は落ちていくばかりだか
がわかってもらえると思う。
くことになるよ。でも次作の構想は
﹃ THE AMORY WARS
﹄も続いてい
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki
translation by Keiko Yuyama
photography by Ryan Russel
75
たちが持っていた努力する姿勢を、
特別な意味を持つ自信作だから、こ
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki
translation by Miki Yonezawa
photography by Tom Barnes
リーの一部なんですよね?
前作
vo
ds
パットが取り戻させてくれたんだ。
二部作とともに壮大な宇宙を表現しきったコヒード・アンド・カンブリアを体験すべし!!
が脱退してしまいましたね。
vo
実はライアンは、2011年の秋に
ト・デイヴィス︵
ほかのメンバーのことを尊重しなけ
メンバーチェンジを経たフューネラル・フォー・ア・フレンドが、
焦点を絞った新作を発売!
︶の語り
FUNERAL
FOR A FRIEND
COHEED AND CAMBRIA
vo
25
February - March 2013 Issue
February - March 2013 Issue
24
90
15
ている。バンドが選んだ曲のほか、
な曲を、1枚にまとめた仕様になっ
イヴだ。それから選出されたベスト
うけ、急遽企画されたスペシャルラ
国公演がキャンセルになったことを
アーのあとに決まっていたはずの韓
た 作 品 だ 。 こ の 2公 演 は 、 日 本 ツ
ロホールで行われたライヴを収録し
多くが、日本に強固なファンベー
い。また、ここに挙げたバンドの
いけど、決してそれだけではな
メタルが取り沙汰されることが多
がある。昨今はメロディックデス
ロックンロールバンドを生む土壌
界。間違いなく北欧には良質の
などを輩出してきた北欧ロック
ズ、ハードコア・スーパースター
H I M、 バ ッ ク ヤ ー ド ・ ベ イ ビ ー
イン・アイズ、ヘラコプターズ、
の後はザ・シックスティナ
くはハノイ・ロックス、そ
﹁ロックンロールこそ、ショットガ
が言う。
者 の マ ー テ ィ ン ・ フ ラ ン ク ︵g ︶
めて教えてくれるバンドだ。結成
して真髄でもあるということを改
の基本であり、真骨頂であり、そ
こそ、ロックンロールという音楽
ルさ、わかりやすさ、覚えやすさ
無垢に鳴らす。その実直さ、シンプ
き、等身大のロックンロールを純粋
こともない。ただただ、肩の力を抜
わない。必要以上に派手に演出する
飾ることもなければ、ギミックも使
クンロールバンドだ。
いところも潔い。おすすめのロッ
影響が特濃なことを、一切隠さな
ガンズ・アンド・ローゼズからの
よう心がけたんだ﹂
め、できる限り一発録りができる
し、よりリアルなサウンドを求
トなどを使い過ぎないように注意
コーディングでは最新のエフェク
のようなサウンドを求めた。レ
葉さ。だから今回、むき出しの骨
ドをもっともよく表現している言
も多いと思うが、今作はそのツアー
のサイトで募集され
Entertainment
ン・レヴォルーションというバン
日本の所属レーベル
て、新たにそこへ名を連ねるバン
Trooper
のうち4月 日と 日に原宿アスト
た﹁ライヴでプレイしてほしい曲﹂
スを持つことも見逃せない。そし
レイするセットリストだ。
2枚目﹃レガシー・オブ・チャイル
ドフッド・ドリームス﹄で日本正式
ドが出てきた。それが、昨年末に
正直音質がいいとは言えない。で
ヴォルーション。デンマークはコペ
デビューをした、ショットガン・レ
ンハーゲン郊外の町カストラップ出
は、破綻したサウンドなのかという
地力というか、安定したプレイアビ
身の5人組だ。デビュー作﹃
している。経済的な理由が大きいこ
以外、基本的にはライヴ活動を休止
3年、いくつかのフェスに出演する
アーチ・エネミーは 201
存知の方も多いと思う。
CDのほか、 日の様子をまるごと
生まれる濃密な空間が感じられる。
た端正なプレイと観客との強い絆で
ばかりにも関わらず、だ。引き締まっ
ニック・コードル︵g ︶が加入した
わかるようになっている。新しく
サウンドを構築しているのかがよく
たなかで最高のロックバンドだ!﹂
そ、デンマークがこれまでに遭遇し
ング・ラスムッセンから﹁彼らこ
レコーディングエンジニア、フレミ
だ、メタリカほかとの仕事で高名な
/日本盤未発売︶でタッグを組ん
﹄
︵2010年
THE REVOLUTION
ソウ
︵ ︶が声明を出している。もち
間がほしいからと、アンジェラ・ゴ
それがよりハッキリとわかるはず。
収録したDVDも付属されるので、
ろん、必ず戻ってくるとも。
は、多くのメタルファンの思いだ。
観る機会を失いたくないというの
これほどのライヴができるバンドを
いったん体勢を整えたアーチ・エネ
その彼らが、新しいライヴ DVD
ミー大復活の日を、焦らず、しかし
を知ってもらう良い機会にもなっ
フィシャル・ライヴ・ブートレッグ﹄
た。ツアー中にダン︵g ︶が自分のP
心待ちにしたいと思う。︵望月裕介︶
Cで作った途中のものを見せてくれ
をリリースした。2012年4月に
に入りとして挙げてくれた曲だ。
〝 Bliss Out
〟。ジェイムスが、お気
たんだけど、みんなそれがクールだ
行われた日本ツアーに足を運んだ人
自信作﹃エヴリィ・ウィークエンド﹄
年で7年。貫禄すら漂わせる圧巻の
﹁本当に楽しみながら作ったよ。
と思い、最後まで完成させるべきだ
つも集めて作ったんだ。僕らの曲を
や、同年リリースのデビュー作
が、い よ い よ 2月
と最初に作業した、ダブス
Noisia
と提言したんだ。で、実際にアップ
聴いたことのない人たちに、バンド
﹃ミュージック・フォー・ザ・アク
る 。 フェス、クラブのイメージに
テップが根底にある曲だけど、
したら予想をはるかに超えて、す
そして、ゴスペルのような荘厳な
ションをすぐにでも見てみたいな。
セラレイテッド・カルチャー﹄の
ヴォーカル的には違う方向に持って
コーラスワークが美しくかつ新鮮な
プレイはもちろん、ライヴでは歌詞
ギーク感とマッチした。バンドは2
ピッタリな、ライヴでのパフォーマ
いきたかったんだ。M やマイ・ブ
に駆られたファンは私だけではない
も共有したい。僕らの想像を超える
作目の﹃フォー・ザ・マッシズ﹄
ンスを想定した楽曲には耳を奪われ
はず。とはいえ、バンド結成から今
ファンのリアクションがライヴで得
︵2010年︶で、タイトルどおり
少年の印象だった。それが、8ビッ
られることを期待している﹂。ジェ
サウンドの対象を大観衆へ拡大し、
7年、対面取材をしたジェイムスの
イヴス﹄を発売し初来日した200
ハドーケン!がEP﹃リキッド・ラ
信があふれている。
ルへ と
…、一気に遠く手の届かない
からレザージャケットの大人スタイ
ファッションもTシャツ&キャップ
ラスのパートなどの凝った作り
ントロが特徴的。ラップや男女コー
は壮大で、一気に惹き付けられるイ
ディアが気に入ったんだ。ヴォーカ
て、壁のようなヴォーカルのアイ
シューゲイザーな音楽を聴いてい
ラッディ・ヴァレンタインといった
リースになるわけだから、ぜひ、
る〝 Levitate
〟との組み合わせでリ
のになるよ。僕らの気に入ってい
いう。第二弾はもっとビッグなも
べてがうまく転がっていったって
チェックしてもらいたいね﹂
ルを重ねることでドリーミーな
このビデオ企画はもちろん、シング
は、ライヴで聴くことを想像する
フィーリングを加えている。個人
だけで気分が高揚する。最高の楽
的にはフェスティバルみたいなも
かった曲で、あまりにも多くの方向
﹁これは仕上げるのに一番手間がか
リングを持てるようにアレンジを
のを感じるし、そういったフィー
待った甲斐のある最高傑作だ。
という月日は長い。しかし、新作は
いたものの、ファンにとっては3年
ルのリリースやライヴなどを行って
けたよ。結果には満足しているし、
意識したよ。朝に二日酔いのよう
最大限の強さを持ち合わせた楽曲に
へと展開していったために6、7回
週末を意味しているのさ﹂
仕上げた自信もあるんだ﹂
﹁本当に長くかかったよね。2年半く
そして、彼がお気に入りに挙げたもう
彼の自信が決して過信でないこと
な感じで目覚めながらも、まだ夢
1曲 が、先行シングルの〝 Levitate
〟。
を、ぜひあなたの耳で確かめてもら
見心地でハイなままの状態を歌っ
だ。観客がぐるぐる回る姿は、竜巻
実はこのシングル、ファンの方には
ほど軌道修正をしたくらいなんだ
ら、サークルピットを竜巻に見立て
︵ vortex
︶が起こるのと似ているか
おなじみかもしれないが、ハドーケ
いたい。
︵ 笑 ︶。こ の 曲 の 持 つ 強 烈 さ が 気 に
てみたんだ。僕らはライヴでプレイ
ン!が2010年 月末に公開し、
らい前から取りかかり、キチッとし
している最中、竜巻が起こる瞬間を
驚愕の試聴回数を記録している
た方向へ持っていくのに、時間をか
目の当たりにしているけれど、そこ
﹁ People Are Awesome
﹂ビデオシ
ているんだ。ハメを外した前夜、
にシンセによるレイヴのクリシェみ
リーズ待望の第2弾として、近く発
そしてまた始まるお祭りのような
たいなサウンドが重なり、そしてそ
表予定なのだ。
クルピットについて歌ってみたん
れらがシンクロしてサークルピット
アップすることになったもので、
﹁あれはマーケティング会社の提案で
ユーチューブにあったビデオをいく
は、サークルピットがお約束になる
10
まう曲なんだ。この曲のプレイ中
と思う﹂
︵宮原亜矢、通訳・守屋智博︶
がピタっと止まる光景を想像してし
入っている。ライヴ中に起こるサー
ナンバーだ。
曲が揃った今作でも、特別に輝く
ところへ行ってしまったような思い
13
印象は、猫背で小声の内気なオタク
83
vo
日に発売とな
イムス︵ ︶のコメントからは、自
る。特にオープニングの〝 Vortex
〟
トミュージックを取り入れた同作
と早くも太鼓判を押されている。着
とと、ツアー生活での疲れを癒す時
JOIN
リティと、いかに彼らが気を配って
と、断じて違う。むしろ、バンドの
オフィシャルとはいえ、タイトル通
古
に興奮しているし、ファンのリアク
︵有島博志、翻訳・松本美和︶
ベスト もカウントダウン形式でプ
20
りブートレッグ︵海賊盤︶なので、
10
﹁アルバムリリースを迎えられたこと
SHOTGUN REVOLUTION
19
20
ご
﹃ ア ストロ・ケイオス 2012 ̶
オ
vo
27
February - March 2013 Issue
February - March 2013 Issue
26
ARCH ENEMY
HADOUKEN!
OUT
OUT NOW
ハリウッド・アンデッド
バックチェリー
『ノーツ・フロム・ジ・アンダーグラウンド』
OUT NOW
2.13
OUT
OUT
OUT
2.6
2.6
2.6
OUT NOW
フューネラル・フォー・ア・フレンド
『コンフェッションズ』
『コンディット』
バンドの頭脳だったデュースの電撃的脱退から
LA出身のロックンロールバンドの6作目。解散
フィンチやザ・ユーズドなどのブレイクに端を
さほど日を空けずに作られたからだろうか、前
と再結成を経てからは、4作目のアルバムとな
発したスクリーモムーブメント初期、US勢には
作『アメリカン・トラジディ』は、90万枚売り
る。ガンズ・アンド・ローゼズやモトリー・ク
ない憂いを感じさせるメタリックサウンドが衝
上げのデビュー作『スワン・ソングス』(2009
ルー、そしてエアロスミスといったバンドたち
撃的だった初フル作『カジュアリー・ドレスド
年)と似ていて、興奮を得きれなかった。しか
の人脈で語られることがなにかと多い存在では
&ディープ・イン・カンヴァセーション』から
昨年リリースされた第一章『昇天』の続編で、
ビルボードチャートで最高位17位を記録した4
ボストンのパンクバンドによる8作目。前作が全
2012年の彼らの目玉、季節ものコンセプトシン
し今作は一度聴いただけで、彼らの進化と新た
ある。もちろん、そういったグラマラスさやい
10年、シーンを代表するバンドへと大きく成長
完結作。前作に比べると、より静かで繊細なメ
枚目。ドゥーミーに地を這うヘヴィグルーヴが
米6位の大成功を収めたが、そのプレッシャーや
グル最終章。パンクで四季を表現する粋な試み
な試みに興奮しきり。これぞ、現体制における
かがわしさを漂わせてはいるが、その本質はパ
したFFAF。前作『ウエルカム・ホーム・アルマ
ロディを意識した作風だ。目まぐるしく変化し
刺激的であり、ザクザクとしたギターリフが不
気負いを感じさせない、パワフルでキャッ
を、今作もコンパクトながら充実の内容で楽し
ハリウッド・アンデッドを象徴する一枚と断言
ンクロック譲りのムダを削ぎ落としたシンプル
ゲドン』(2011年)で再び疾走感やアグレッ
ていくのではなく、少しずつ物語とサウンドを
穏な心の叫びをともなって暗黒世界の妖しい高
チー、かつ哀愁感の漂うアイリッシュパンク満
ませてくれる。ニーヨの“ソー・シック”の
できる完成度なのだ。ホラーな幕開けの“デッ
さにこそあると思う。2005年のサマソニでその
ションを強め、原点回帰的サウンドをみせた彼
積み上げていく様には、彼らの懐の深さを見る
揚感を生む。さらなるバンドの深化が息づき、
載の仕上がりに。フォーキーで温かみのあるケ
ファストなカヴァーなんて、細部まで彼ららし
ド・バイト”、バンド史上最高にドラマティッ
ライヴを初めて観たとき、ジョシュ・トッド
ら。6枚目となる今作でも、サウンドのベクトル
かのよう。現在絶好調だというバンドのライヴ
ブラック・サバス直系のサウンドを2010年代に
ンと、硬派さを増したロックンロールなアルに
く、エッジィかつ大胆にアレンジを変えている
クな“フロム・ザ・グラウンド”、スリップ
(vo)の鍛え抜かれた体と、立っているだけでに
は同方向だが、スクリーム担当のライアン
OUT
を観たいので、早く日本に来てほしい。
とってリアルな音として響かせている。
よる対照的なヴォーカルも絶妙だ。
のに、原曲が持つ哀愁はキープ。最高!
ノットのクラウンことショーン・クラハン監督
じみ出るようなワルさと男気に、スリップノッ
(ds)脱退で、これまでのようなスクリームはな
DATE
によるビデオが話題のシングル“ウィー・
ト目当てだった僕はしびれたものです。さて、
い。しかし、マット(vo)いわく「バンドに欠
アー”は、これまで彼らが通して磨いてきた
ジョシュの少年期の経験をもとに、キリスト教
けていた最後の1ピースを埋めてくれた」後任の
コーラスパートの進化も感じさせる。ジョニー3
にある7つの大罪をテーマとした作品となってい
パット(元ライズ・トゥ・リメイン)のタイト
ティアーズ(vo)のお気に入りというドストエ
る、この新作。いつになくシリアスで、代表曲の
かつ重量感あふれるドラミングで、よりヘヴィ
フスキーの小説(英題:NOTES FROM THE
ひとつ“クレイジー・ビッチ”のような能天気で
でエッジィなサウンドとなった。また、ほとん
UNDERGROUND)から付けられたアルバムタ
猥雑な曲はなし。随所にホーンやストリングスを
どの楽曲が2分台と、これまでになくコンパクト
イトルも、これまで独白調な歌詞を綴ってきた
取り入れつつも、生々しくて骨身、そしてほんの
に仕上がっているため、まさに弾丸のごとく一
彼らのスタイルとピッタリ。今作を聴けば、
りと哀愁をにじませる。簡潔だが、それでいて深
気に最後まで駆けぬける感覚で、これまでとは
「こいつら何者?」という疑問が一蹴されるこ
い、ソリッドなロックンロール作だ。
違った景色を見せてくれる作品だ。
とだろう。
(宮原亜矢)
ユニバーサルインターナショナル:UICA-1065
(望月裕介)
ユニバーサルインターナショナル:UICN-1027
コヒード・アンド・カンブリア
OUT NOW
IMPORTED
ザ・スウォード
『ジ・アフターマン∼第二章:下降』
(望月裕介)
ユニバーサルインターナショナル:UICN-1028
(兒玉常利)
OUT NOW
(権田アスカ)
ユニバーサルインターナショナル:UICN-1029
OUT NOW
(宮原亜矢)
CATCH ALL RECORDS:CKCA-1051
OUT
OUT NOW
2.20
GrindHouse recordings:GHRCD-1014
ヘイトブリード
OUT
OUT NOW
2.6
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン
『テンパー・テンパー』
ホーリー・グレイル
『ザ・ディヴィニティ・オブ・パーパス』
MAN WITH A MISSION
『ライド・ザ・ヴォイド』
『エモーションズ』
LAパンクレジェンドによる16作目は、もちろん
衝撃のレーベル移籍を経ての6作目。メタル色と
マット・ハイド(スレイヤー、チルボド)がプ
究極の生命体たちによる2ndシングル。今まで
高速!! 名盤『サファー』を思わすエッジの効い
実験的な要素が強かった前作から、直球のハー
ロデュースした2年ぶりの2枚目。前作の荒削さ
になかった壮大なコーラスを用いたスケール感
たクラシックサウンド、高揚感がハンパないド
ドコアへと回帰。ただ、ギターソロやウィス
が微笑ましく思えるほどダイナミックにスケー
の大きいタイトル曲のほか、無機質かつ叙情的
ラマティックなコーラス、現状に甘んじるなと
パーヴォイスなど、前作で学んだことも生かさ
ルアップ。攻撃性やドラマ性も増し、正統派メ
なバラード、モッシュ必至のヘヴィチューンを
訴えるメッセージ性の強さに、いちいち痺れ
れている。ブルータルなハードコアとしてのア
タルスタイルの今を刻みつけた。ガンと闘う家
収録。あらためて、その卓越したテクニックと
る。SHAM 69へのオマージュだという“Robin
イデンティティを強固にしつつ、前進すること
族を思って作られたというメランコリックな本
センスには脱帽する。見た目にはおののくばか
Hood in Reverse”もカッコよすぎ!
を恐れない意欲作。やはり、格が違う。
編ラスト曲など、深化も随所に。
りだけれど、その実力は本物だ。
(権田アスカ)
『レッチド・アンド・ディヴァイン』
『ウィンター・ウィンター』
(松並慎一郎)
バッド・レリジョン
ブラック・ヴェイル・ブライズ
Northern19
『サイン・アンド・シールド・イン・ブラッド∼勝利への約束』
ワーナーミュージック・ジャパン:WPCR-14857
『トゥルー・ノース』
OUT NOW
ドロップキック・マーフィーズ
『アポクリフォン』
(望月裕介)
(兒玉常利)
(望月裕介)
ボーイズ・ライク・ガールズ
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:EICP-1569
『クレイジー・ワールド』
日本コロムビア:COCB-60083
ユニバーサルインターナショナル:UICN-1026
CROWN STONES / 日本クラウン:
初回生産限定盤CRCP-10284、通常盤CRCP-10285
2010年のデビュー以降、さまざまなフェスへの
2005年前後にデビューした新世代のメタルバン
前作『ラヴ・ドランク』から3年強ぶりとなる3
出演、音楽誌主催のアワードでの新人賞獲得、
ドのなかでも随一の成功を手にした、ブレッ
枚目。P.8のポール・ディジョバンニ(g)のイ
大作映画のサントラへの楽曲提供など、破竹の
ト・フォー・マイ・ヴァレンタインの4作目。前
ンタヴューを併読してもらいたいが、それにして
勢いでその名を広め、ファンベースを拡大して
作『フィーヴァー』(2010年)同様、リンキ
も、今作を初めて聴いたときの驚きといったらな
きたモダングラムメタルバンドの3枚目となる新
ン・パークほかをメガヒットへと導いたドン・
かった。なんといっても、前作までの持ち味だっ
作。本作で描かれているのは、独裁政権により
ギルモアのプロデュースだ。前作の路線を引き
たメロディや楽曲にみなぎっていたキラキラ感、
若者たちが無気力化した未来において、The
継いだ、スケール感とメジャー感あふれる作風
あちこちでパチンパチン弾けるはっちゃけ感、そ
Wild
Onesなる難民が子どもたちに、ありのま
だが、今回は全体的に尺を短くすることで、曲
してパンクロック的エッジが一掃されているか
まの自分になり反乱を起こすよう煽動するとい
そのもののパワーを凝縮。全体の攻撃力が底上
ら。全体を貫くのは、おおらかでときに穏やか
うストーリーだが、これがアンセミックな
げされている。また、どの曲もスピード感が抑
に、またときに優しく流れていく壮大なアメリカ
ヴォーカル、激しく疾走感のあるリフ、ドラマ
え目なのも特徴だ。瞬間的な勢いに頼らず、ひ
ンロックだ。おもしろいのが、何度も聴いている
ティックさを増幅させるキーボードやオーケス
とつひとつ踏みしめるかのように放たれるサウ
うちに、彼らのメロディや曲の根幹が、以前と変
トラといった彼らの音楽性と相性抜群。宣戦布
ンドからは、絶対の自信に裏づけされた圧倒的
わっていないことに気づくところ。つまり、表現
告のような力強さを見せる“アイ・アム・ブ
な存在感がにじみでている。初フル作『ザ・ポ
をアメリカンロック的アプローチに転進させたの
レットプルーフ”から、ザ・ユーズドのバート
イズン』(2005年)からの続編である“ティ
だ。曲作りを主導するのはマーティン・ジョンソ
をゲストに迎えた“デイズ・アー・ナンバー
アーズ・ドント・フォール(パート2)”もおも
ン(vo,g)。彼のそのセンスには前からギラリと
ド”、子どもたちのコーラスから劇的に展開する
しろく、原曲のテイストを残しつつ、新しい曲
輝くものがあり、それにさらなる磨きがかかって
“イン・ジ・エンド”まで、不気味さを醸し出
として進化を遂げている。さすがにマット自
いるゆえ、じっくり聴け、知らず知らずのうちに
すナレーションをはさみながら物語を表現すると
ら、「100%の自信作」と語るだけの出来ばえ
耳を奪われ、心を持っていかれる。派手さは皆
同時に、リスナーの感情を激しく揺さぶる。妖し
だ。新世代の旗手から、新たな基準値へ。ひと
無。だけど、とにかく温かみがある。そんな良質
さだけでなく、たくましさも大きく増した1枚。
皮もふた皮もむけたBFMVの姿がここにある。
なロック作だ。
(松並慎一郎)
(望月裕介)
(有島博志)
IMPORTED
OUT NOW
メタリカ
MY DYING BRIDE
『ケベック・マグネティック∼戦場の夜』
デラックス・エディションUICN-9009、通常盤UICN-1025
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-3730
February - March 2013 Issue
IMPORTED
UNDEROATH
『HONOR FOUND IN DECAY』
『ANTHOLOGY 1999-2013』
2009年、カナダのケベックでの公演を収めた映
UKブラッドフォード出身の、ベテランゴシック
スラッジ/ポストメタル界の王者の10作目。
解散を表明した、スクリーモ/ポストハードコ
像作品。『デス・マグネティック』(2008年)
メタルバンドによる11枚目。一時は脱ゴシック
ダークさを感じさせる作品ではあるけれど、聴
アの重鎮のベスト盤。各アルバムから選ばれた
からの選曲を中心としながらも、当然、これま
メタル路線を歩んでいたものの、数作前から再び
き手を追い詰めるようなかつての重苦しさは薄
楽曲が、新しいものから順に並んでおり、その
での人気曲もたっぷり披露。若干、演奏でヒヤ
原点回帰するかのごとく、鬱積するくらいダーク
れ、じんわりと沁みる歌声とメロディが目立つ
キャリアとサウンドの変遷がすぐに分かるよう
ヒヤするところもあるが、そこはご愛嬌で。監
で重量感にも事欠かないサウンドを、ズルッズ
作風になっている。幻想的で酔わせてくれるこ
になっている。しかし目玉は、2曲の未発表曲。
督と編集は、これまでいくつも彼らのPVを手掛
ルッと引きずるように奏でている。これぞ、彼ら
のサウンドもいいのだが、もう少し緊張感もほ
さらなる進化を見せるこれらの楽曲を聴くと、
けてきたウェイン・アイシャムだ。
の真骨頂だ。自分は好きだ。
しいところ。次作ではどう来るか?
解散が本当に解せない。
(有島博志)
(望月裕介)
(望月裕介)
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-3589
ユニバーサルインターナショナル:
Blu-Ray盤UIXR-1001、DVD盤UIBR-1030~1
28
NEUROSIS
『A MAP OF ALL OUR FAILURES』
(松並慎一郎)
ユニバーサルインターナショナル:
IMPORTED
PEACEVILLE RECORDS:CDVILEF406X
NEUROT RECORDINGS:NR085
TOOTH & NAIL / SOLID STATE RECORDS:
5099973090427
February - March 2013 Issue
29