血液透析患者の貧血にビタミンCって有効?

薬 の 疑 問
平成 23 年 No.5
Q.エポジンを使用しても改善されない貧血患者にビタミンCが有効であると聞いたのですが、情
報をください。
一部の血液透析(HD)患者で貯蔵鉄(血清フェリチン 100ng/ml 以上)が十分にあるにもかかわらず鉄
飽和度(TS)およびヘマトクリット(Ht)が低値(30%以下)を示す、いわゆる機能性鉄欠乏状態が存在
し、エリスロポエチン(rHuEPO)に抵抗をきたすことが報告されています。一方ビタミンC(VC)は組
織貯蔵から鉄の遊離を促進することが知られています。
そこで、HD患者で rHuEPO に抵抗性を示す貧血治療にVCの投与を行った例を紹介します。
≪対象と方法≫
週3回HDを受けている全症例 76 例から rHuEPO1500 あるいは 3000IU を毎HD後静注されている安
定期慢性腎不全患者で、C-反応性蛋白陰性、急性感染症はなく、血清アルミニウム濃度および intact-PTH
の異常高値を示さない症例 35 例を対象とし、VC非投与例(対象群)9例、VC100mg 週 3 回HD後静注
例 13 例および VC500mg 週1回HD後静注例 13 例の 3 群に分けた。採血は2週間毎HD前に行い、
Ht,Hb,Fe,総鉄結合能(TIBC),血清フェリチン,VC 濃度を測定した。
*VC 投与有効例:8週間VC投与中 Ht3%以上の有意な上昇を示す。
*VC 投与無効例:8週間VC投与中 Ht3%未満の変動に留まるか減少をきたす。
≪結果≫
Ht と TS について VC500mg 週1回静注および VC100mg 週 3 回静注の各有効例で、同じように上昇が
みられ、無効例では有意な変化が見られなかったので、VC 投与群を有効群と無効群に統括し、対象群(VC
非投与群)の 3 群間で比較検討を行った。
その結果、VC 投与有効群の Ht,Fe および TS は他の2群(対象群と VC 投与無効群)に比して0週では
有意に低値であり、VC 投与8週後では有意に上昇した。フェリチン及び TIBC は0週、8週とも 3 群間に
有意差はなかった。VC 濃度は0週で3群間に有意差はなかったが、VC 投与有効群は8週で有意に高値を
示し、VC 投与無効群とともに対象群に比して有意な上昇であった。なお、VC 投与無効群では0週と8週
の VC 濃度に有意差は認めなかった。
VC500mg 週1回投与有効群では、22週まで経過を観察したが、VC 投与中は勿論中止後も0週に比し
て有意な Ht の上昇が持続し、TS も0週に比して16週および18週で有意な上昇であった。
安定期 HD 患者に VC100mg 週 3 回あるいは 500mg 週 1 回 HD 後静注を 8 週間行ったところ、TS30%
未満を示すいわゆる機能性鉄欠乏状態の症例で有意な貧血の改善を認めたが、TS30%以上の症例ではその
ような効果は見られなかった。したがってこのような症例には、VC 効果は期待できないといえる。
追補:
HD 患者への VC 過剰投与は高しゅう酸血症を起こす可能性があることから、VC 連日投与を行うときは
1 日 100mg~150mg に抑えるべきであるとされている。副作用を考慮すると 100mg 週 3 回静注法が推奨
される。また血管痛を生じるためゆっくり投与することが望ましい。
参考資料:扶桑薬品工業株式会社資料
「血液透析患者のエリスロポエチン抵抗性貧血に対するビタミンC静注効果」
長寿会長寿クリニック
吉本忍 大野卓志 清水健司
近畿大学医学部境病院内科 今田聡雄
作成:北澤