解ける数独の条件を探す 3 年理数科 村井 友海 <Abstract> This study is aimed to find out requirements for solvable Sudoku. I used a small size of 4 ×4sudoku, not 9×9 size (the common type of Sudoku) in order to make solving problems easy in this study. I translated the rule of Sudoku into twelve simultaneous equations and expressed some variables with the others. Then I searched for requirements to determine the variables. I finally got some solvable Sudoku. I want to make further examination in future. <研究目的> ある数独が解ける数独となるために、数独を解き始める段階で満たすべき数字の配置を調べる。 <研究の前提> 1.今回の研究で使用した数独について 数独というと、9×9 の枠を用い、1 から 9 までの数字を使う数独が一般的である。しかし、 一般的な数独には、配置パターン(後述)が膨大な個数あるなど、研究を行う上で不都合な点が いくつかあった。そこで、今回は 4×4 の枠と、1 から 4 までの数字を使った小さな数独で研究 を行い、研究対象となる問題が簡単になるようにした。 2.数独のルールについて 4×4 の合計 16 個のマス(右図)の中に、1 から 4 までの数字を入れて、空欄 を埋めていく。 その際、縦の列、横の行、太線で囲まれた 2×2 の枠の中に、それぞれ 1 から 4 までの数字が 1 つずつ入るようにする。 3.用語について 本文に出てくる「配置パターン」という用語について、次のように定義する。 ・・ ・・ 配置パターン:ある数独において、同じ数字が入る場所だけを考えたもの。入っている数字の違 いは考慮しない。 例えば、次の 2 つの数独は、1 と 2 が入っている場所が入れ替わっている。そのため、数独と しては異なる数独である。しかし、同じ数字が入っている場所の位置関係は同じである。このと き、この 2 つの数独の、数独全体の配置パターンは同じであるとする。 また、16 個ある数独のマスの中で、特定のマスについての配置パターンを考えるという場合、 その特定のマスの中で同じ数字が入る場所を考えたもののことを指す。この時、特定のマス以外 のマスについては考慮しない。 <研究方針> 以下の手順で研究を行った。 (1) 16 個の変数を用いて、数独のルールを数式化する。 (2) (1)で得られた数式を変形して、16 個の変数を 8 つずつの 2 グループ(1 群と 2 群とする) に分ける。そして 1 群の変数を用いて 2 群の変数を数式で表す。 (3) 1群の数字についての配置パターンを考える。 (4) (3)で求められた1群の数字の配置パターンについて、各配置パターンを決定するための条 件を求める。 (5) (4)で求められた条件を組み合わせて、解ける数独となるような数字の配置を求める。 (6) (5)で求めた数独を整理し、解ける数独を求める。 <研究内容> (1) 数独のルールの数式化 a1~a4、b1~b4、c1~c4、d1~d4 の 16 個の変数(位置との対応は下図 参照)を用いて、数独のルールを以下のように 12 個の連立方程式、及び 56 個の不等式で表す。ただし、16 個の変数は全て自然数であるとする。 (等式)縦の列、横の列、2×2 の小さい枠の中の数字の合計が 1+2+3+4=10 であることを意味 する。 a1+a2+a3+a4=10 b1+b2+b3+b4=10 c1+c2+c3+c4=10 d1+d2+d3+d4=10 a1+b1+c1+d1=10 a2+b2+c2+d2=10 a3+b3+c3+d3=10 a4+b4+c4+d4=10 a1+a2+b1+b2=10 a3+a4+b3+b4=10 c1+c2+d1+d2=10 c3+c4+d3+d4=10 (不等式)縦の列、横の列、2×2 の小さい枠の中に同じ数字が入らないことを意味する。 a1≠a2, a1≠a3, a1≠a4, a2≠a3, a2≠a4, a3≠a4, b1≠b2, b1≠b3, b1≠b4, b2≠b3, b2≠b4, b3≠b4, c1≠c2, c1≠c3, c1≠c4, c2≠c3, c2≠c4, c3≠c4, d1≠d2,d1≠d3, d1≠d4, d2≠d3, d2≠d4, d3≠d4, a1≠b1, a1≠c1, a1≠d1, b1≠c1, b1≠d1, c1≠d1, a2≠b2, a2≠c2, a2≠d2, b2≠c2, b2≠d2, c2≠d2 a3≠b3, a3≠c3, a3≠d3, b3≠c3, b3≠d3, c3≠d3 a4≠b4, a4≠c4, a4≠d4, b4≠c4, b4≠d4, c4≠d4 a1≠b2, a2≠b1, a3≠b4, a4≠b3, c1≠d2, c2≠d3, c3≠d4, c4≠d3 またこの方程式の a1,a2,b1,b2 に定数を代入して解くことによって、4×4 の数独には数独全体 の配置パターンが 12 個あることが分かる。 (2) 数式の整理 (1)で得られた 12 個の連立方程式を整理して、次の 8 つの式を得る。 a4=10-a1-a2-a3 b2=10-a1-a2-b1 b4= a1+a2-b3 c4=10-c1-c2-c3 d1=10-a1-b1-c1 d2=a1+b1-c2 d3=10-a3-b3-c3 d4=a3+b3+c1+c2+c3-10 上の 8 つの式で右辺に来ている変数(a1、a2、a3、b1、b3、c1、c2、 c3)を 1 群とし、左辺に来ている変数(a4、b2、b4、c4、d1、d2、d3、 d4)を 2 群とする。1 群の変数は、右図で色が付いている場所にある数字 を表し、2 群の変数は色が付いていない場所にある数字を表している。 上の 8 つの式から、1 群の変数を用いて 2 群の変数を表せることが分 かる。また右図からも 1 群の変数の値が分かり、かつその数字が数独のルールを満たすように配 置されていれば、その数独は解けることが分かる。 (縦の列、横の列、2×2 の小さい枠の中で 3 つの数字が分かると、もう 1 つの数字は自動的に決まるため。) (3)1 群の数字についての配置パターンの考察 (2)で求められた 1 群の数字についての配置パターンを考える。このとき 1 群の数字の中に含 まれる同じ数字の個数に注目して、配置パターンを考える。すると次の 19 パターンが得られ る。(●が書いてある場所に同じ数字が入る。▲は、●が書いてある場所に同じ数字が入った ときに、自動的に同じ数字が入ることが決定される場所である。 ) ① 3か所に同じ数字が入る配置パターン(3 通り):左から順に青 1、青 2、青 3 の配置パターン とする。 ② 2か所に同じ数字が入る配置パターン(13 通り):1 列目左から右へ順に赤 1~赤 6、2 列目 左から右へ順に赤 7~赤 13 の配置パターンとする。 ③ 残り 7 か所全てと異なる数字が入る配置パターン(3 通り):左から順に黄 1~黄 3 の配置パ ターンとする。 これらの図から、青 1、青 2、青 3 の 3 つの配置パターンはそれぞれ、赤 10、赤 11、赤 7 の 配置パターンと同じである事が分かる。同時に、赤 1 と赤 3 を組み合わせると青 1 が、赤 4 と 赤 6 を組み合わせると青 2 が、赤 9 と赤 13 を組み合わせると青 3 の配置パターンになることも 分かる。 また、これら 19 個の配置パターンを 4 個ずつ組み合わせると、(1)のルールの数式化のところ で得られた 12 個の数独全体の配置パターンが得られる。 (4) 1 群の数字の配置パターンを決定するための条件の探求 (3)から、19 個ある 1 群の数字の配置パターンを 4 個ずつ選んで組み合わせると、(1)の数独全 体の配置パターンが得られることが分かる。つまり、1 群の数字の配置パターンの組み合わせを 1 通りに決めることが出来れば、その数独全体の配置パターンを決定出来ると言える。 そこで 1 群の数字の配置パターンについて、個々に配置パターンを決定するための条件を求め て、その条件を組み合わせることで数独全体の配置パターンを決定しようと考えた。そうすれば、 その後 1 群の数字の配置パターンについて、各配置パターンに対応する数字を決定することで、 数独を 1 つに決定することができる。 この方針に従って、まず 1 群の数字の配置パターンを決定するための条件を、各配置パターンに ついて求めた。 求め方の例として、赤 2 の配置パターンを決定するための条件の求め方をあげる。 <赤 2(a1=c3)を決定するための条件の求め方> 赤 2 の配置パターンを決定する方法として、次の 3 つ場合を考える。 (Ⅰ) a1 と同じ数字が入る可能性のある c3 以外の場所に a1 とは違う数字 を入れることで、a1=c3 となるようにする。 (Ⅱ) c3 と同じ数字が入る可能性のある a1 以外の場所に c3 とは違う数字 を入れることで、a1=c3 となるようにする。 (Ⅲ) a1 と c3 に初めから同じ数字を入れる。 赤 2 の配置パターン (Ⅰ)について、a1 と同じ数字が入る可能性のある c3 以外の場所は b3,c2 である。また a1 は残 り 7 つの数字の内少なくともどれか1つ同じ数字が入ることが 19 個の配置パターンから分かる。 (残りの 7 つの数字と異なる数字が a1 に入るような 1 群の数字の配置パターンは存在しないか ら。 )従って(Ⅰ)の方法で赤 2 の配置パターンを決定するためには、b3 と c2 に a1 とは異なる 数字が入ればよいので、その条件は a1≠b3 かつ a1≠c2 <a1≠b3 かつ a1≠c2 を満たすときに数字の配置> ○印をつけた数字が入っていれば、残りの数字(この場合は 3 つの 1)が 決まり、赤 2 の配置パターン(a1=c3)が満たされる。 (Ⅱ)について、c3 と同じ数字が入る可能性のある a1 以外の数字は a2,b1 である。しかし c3 は 残り 7 つ全てと異なる数字が入る場合がある。 (黄 2 の配置パターンが存在するから。)従って赤 2 の配置パターンを決定するためには、c3 には a1 と同じ数字が入らなければならない。よって a1 以外の場所に c3 とは違う数字を入れるという(Ⅱ)の方法では、赤 2 の配置パターンを決定す ることはできない。 (Ⅲ)について、a1=c3 とすると赤 2 の配置パターンが決定する。 よって赤 2 の配置パターンを決定するための条件は以下の 2 つである(この 2 つの うちのどちらか 1 つが成り立てば良い) a1≠b3 かつ a1≠c2 c3=a1 その結果、各配置パターンを決定するための条件は下のようになった。 配置パターン 条件 青 1 (a1=b3=c2) b3=c2 青 2 (a2=b3=c1) b3=c1 青 3 (a3=b1=c2) a3=c2 赤 1 (a1=b3) a1≠c3,a1≠c2 b3≠a2,b3≠c2 赤 2 (c3=a1) a1≠b3,a1≠c2 c3=a1 赤 3 (a1=c2) a1≠b3,a1≠c3 c2≠b3,c2≠b1, a1=c2, c2≠b3 赤 4 (a2=b3) a2≠c3,a2≠c1 b3≠a1,b3≠c1 a2=b3, b3≠c1 赤 5 (c3=a2) a2≠b3,a2≠c1 c3=a2 赤 6 (a2=c1) a2≠b3,a2≠c3 a2=c1, c1≠b3 赤 7 (a3=c2) a3=c2 赤 8 (a3=c1) a3=c1 赤 9 (a3=b1) a3≠c2,a3=b1, 赤 10 (b3=c2) b3=c2 赤 11 (b3=c1) b3=c1 赤 12 (c3=b1) b1≠a3、b1≠c2 c3=b1 赤 13 (b1=c2) b1≠a3,b1≠c3 c2≠a1,c2≠a3 黄 1 (a3 のみ) a3≠c1, a3≠b1 黄 2 (c3 のみ) c3≠a1, c3≠a2, c3≠b1 黄 3 (c1 のみ) c1≠a2, c1≠a3 a1=b3, b3≠c2 b1≠c3,b1≠c2 b1=c2, c2≠a3 これらの条件の内、青 1 と赤 10、青 2 と赤 11、青 3 と赤 7 の配置パターンを決定するための 条件は同じであることが分かる。従って今後の作業では、青 1、青 2、青 3 の配置パターンのみ を採用して考える(すなわち、赤 10、赤 11、赤 7 の 3 つの配置パターンについては以後考慮し ない) 。 (5) 1 群の数字の配置パターンの組み合わせ (4)で得られた条件を組み合わせることによって、数独全体の配置パターンを決定し、どのよ うな数字の配置であれば解ける数独となるかを調べる。 このとき、各数独は解いたときに a1=1 a2=2 b1=3 b2=4 となるように各数字を入れた。 このように数字を入れることで、同じ場所にある数字の違いがそのまま配置パターンの違いを表 すようになり、この次の(6)の作業を簡単にすることが出来るからである。 (6) (5)で求められた数独の整理 (5)で得られた数独について、数字の配置が全く同じものがあるか調べて、整理し、解ける数 独を求める。 このとき、ある解ける数独に、その数独を解いたときの答えの一部を加えたものも1つの数独 として扱う。 例えば、下の 2 つの数独はともに解ける数独である。そして左の数独の c3 の場所に 2 を加え ると右の数独になり、かつ左の数独を解いたとき、c3 の場所には 2 が入る。 これらのことから、少なくとも左の数独の配置を満たしていれば、その数独は解けると言える。 このとき、右の数独は左の数独と同じものとして扱い、左の数独のみを考える。 すると、(5)で求めた数独を 62 個の数独にまとめることが出来た。 (7) 今後の課題 今回の研究では、解ける数独の一部を求めることは出来たが、(6)で得られた結果について、 元の配置パターンなどに注目して、規則性があるかどうか調べを調べることは出来なかった。今 後の課題として、(6)の結果の規則性などについて考察し、よりまとまった形で解ける数独の条 件を求めていきたい。 また、今回の研究では a1,a2,a3,b1,b3,c1,c2,c3 の 8 つの数字に注目して、解ける数独となるた めの条件を考えた。だが注目する数字を別の数字にすることで、2、で得られた式と同値で、異 なる数字に注目した式を得ることが出来る。その時に得られる解ける数独の条件や、2、の式か ら得られる条件との関連についても考えたい。
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