<博報堂消費トレンドレポート2006> ヒット商品に見る2006年の消費

2006 年 12 月 5 日
<博報堂消費トレンドレポート2006>
ヒット商品に見る 2006 年の消費トレンドは
『自分超え』消費
●「なりたい自分になるために、今の自分を少し超えてみたい」そんな欲
求を満たす商品がヒット
●2001 年守り志向の「元本保証型」から、進化し続ける生活者の消費意識
博報堂研究開発局では、毎年、生活者の日々移り変わる消費現象のなかに秘められた特徴的なトレ
ンドについて研究しております。本年も、今年の消費傾向を『自分超え』消費と名づけた「消費トレ
ンドレポート 2006」をまとめました。また、同時に生活者に聞いた「ヒット商品ランキング」も調査
いたしましたので、ご紹介申し上げます。
戦後最長の景気拡大を記録した 2006 年。景気回復は生活者実感に乏しいと指摘されながらも、実
際の消費市場では今年も多くのヒット商品が誕生しました。
今年は、社会的に強まる自立と個人化志向と相まって、Web2.0 が象徴するように、IT の進化が個々
人がなし得ることの可能性を飛躍的に拡大させました。こうした状況変化の中で、生活者の関心は新
しい可能性をもった「自分」を自分の手で実現していく方向に向かっています。
今年のヒット商品からも、「賢くなる」「上質な生活を演出する」「誇らしい自分を感じられる」と
いった、「なりたい自分」を実現する商品・サービスが多く見られました。
自分らしさを肯定しつつ、自分を楽しく磨き直しながら、なりたい自分を実現させる、そうした傾
向の強かった一年、博報堂では、こうした意識変化に伴う今年の消費傾向を『自分超え』消費と名づ
けました。
景気の回復にともなって、意識が自分に向かった「自分超え」消費ですが、過去5年間の傾向から
見ていくと、日本の生活者の消費意識が時代に応じて、変わってきていることがよくわかります。
まだ不安な気分が取り巻く 2001 年は、消費者が選んだのは守り一辺倒だった「元本保証型」消費
でした。それが、2002 年「プチ欲」消費と少しだけ閉塞感から抜け出しはじめ、2003 年「脱・カネし
ばり」消費で「価格」の縛りから抜け出し、2004 年には「自信動力」消費、2005 年「マインド構造改
革」消費と生活者の消費に対する価値観が年々変化してきています。今年の「自分超え」消費は、す
でに「構造改革」を終えた生活者が、次の時代に向けて「自分」をもう一度見直し、なりたい自分に
なるための欲求を満たしたい、という段階にきているといえるでしょう。
詳細につきましては、資料編をご覧ください。
Ⅰ.生活者が感じた今年のヒット商品ランキング
Ⅱ.2006 年の消費トレンド「自分超え」消費の6つの傾向
①ちょっと賢い自分・・・今よりちょっと賢くなった自分を実感できる商品・サービス
:「脳年齢が測定されるゲームソフト」、「SUDOKU(数独)」、「大人の塗り絵・書写」など。
②上質な自分・・・自分にとっての上質な生活を演出する商品・サービス
:「プレミアムビール」、「上質感のある軽自動車」、「高級 IH ジャー炊飯器」など。
③健康っぽい自分・・・無理なく手間なく、キレイと健康が手に入る商品・サービス
:「体脂肪のためのトクホ飲料」、「酸素ウォーター・酸素缶」、「ハイカカオチョコレート」など
④繋がっている自分・・・よりいっそう繋がっている自分を確認できる商品・サービス
:「国内最大手のSNS」、「ブログ」、「米国の動画投稿サイト」、「ワンセグ対応携帯機器」など。
⑤キャラのたった自分・・・人と違う位置づけ(キャラ)の自分になれる商品・サービス
:「メガネ男子・メガネ女子」、「結婚できない男」、「エアギター」、「ネット発カリスマ」など。
⑥誇れる自分・・・いつもより少し誇らしい自分を感じられる商品・サービス
:「日本女性の髪の美しさを引き出すヘアケア商品」、「国家の品格」、「スポーツイベント(WBC など)」な
ど
Ⅲ.過去5年間の消費トレンド
<資料編>
Ⅰ.生活者が感じた今年のヒット商品ランキング
一般生活者639名を対象に今年11月に実施した「博報堂
2006年ヒット商品調査」による
と、今年のヒット商品ランキングおよび興味を持った商品ランキングは以下のようになりました。
生活者が「今年流行ったと思う」ヒット商品ランキング:ベスト10
%
順位
1
青いタオルハンカチ
87.5
2
脳年齢が測定されるゲームソフト
87.0
3
大画面薄型テレビ
86.4
4
トリノオリンピック
82.3
5
映画「ダ・ヴィンチ・コード」
81.4
6
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)
77.3
7
メタボリックシンドローム
74.3
8
サッカーW杯(ワールドカップ)
74.0
9
ナンバーポータビリティ
72.8
10
脳を鍛えるクイズ番組
72.1
10
小型・軽量化した携帯ゲーム機
72.1
生活者が「今年興味を持った」商品ランキング:ベスト10
%
順位
1
大画面薄型テレビ
83.6
2
脳年齢が測定されるゲームソフト
75.3
3
脳を鍛えるクイズ番組
66.0
4
コンパクトデジカメ
65.6
5
トリノオリンピック
63.4
6
体脂肪が気になる人のためのトクホ飲料
62.3
7
濃い味の緑茶
61.2
8
メタボリックシンドローム
60.7
9
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)
58.1
映画「ダ・ヴィンチ・コード」
57.6
10
<博報堂「2006 年ヒット商品調査」>
調査地域:首都圏、関西圏
調査対象:15-69 歳男女
合計 639 名(男性 316 名、女性 323 名)
実施期間:2006.11.2-11.8
実施方法:博報堂Hi-panel調査(インターネット調査)
※新聞・雑誌などの公開情報をベースにヒット商品の候補を選出。調査では、内容を説明する文章を添
えたヒット商品候補について、
「今年流行ったと思う」
「今年流行ったとは思わない」
「名前を聞いたこ
とがない」、「興味がある」「興味がない」のそれぞれどれかひとつを選んでもらった。
Ⅱ. 「自分超え」消費の6つの傾向
①ちょっと賢い自分・・・今よりちょっと賢くなった自分を実感できる商品・サービス
2006 年は、自分の能力を数値で表すといった形で視覚化したり、手軽なトレーニングを積んだり
することで「ちょっと賢くなった自分」を実感するような商品やサービスが支持された。
具体的には、自分の脳年齢を数値化して、そこからレベルアップしていくことを楽しむ「脳年齢が
測定されるゲームソフト」や、脳の活性化が期待できるといわれる「SUDOKU(数独)」「大人の塗り
絵・書写」、職業体験によって子供が一歩大人に近づく「キッザニア東京」、今よりちょっと賢い家
族を目指す父親、母親のための「父親も読む子育て雑誌」といったものが挙げられる。
②上質な自分・・・自分にとっての上質な生活を演出する商品・サービス
2006年は、価格の高さや世間の基準ではなく、“自分にとって”のぜいたくを提供し、ちょっと上
質な生活を演出するような商品・サービスがヒットした。
具体的には、週末のゆったり過ごす時間にマッチする「プレミアムビール」、デザインと経済性を
両立させた「上質感のある軽自動車」、本格的な味を追及した「奇抜なネーミングの豆腐」「高級
IH ジャー炊飯器」、日常の中でリッチさを味わえる「国内リゾート・スパ」といったものが挙げら
れる。
③健康っぽい自分・・・無理なく手間なく、キレイと健康が手に入る商品・サービス
2006年は、無理なく、手間をかけずに、体の内と外からちょっと「健康」で「キレイ」な自分にな
れるような商品やサービスへの人気が高まった。
具体的には、メタボリックシンドロームに日々の生活の中で気軽に対処できる「体脂肪が気になる
人のためのトクホ飲料」、手軽に酸素を補給して疲労回復を図る「酸素ウォーター・酸素缶」、お菓
子を食べながら健康になれる「ハイカカオチョコレート」、乗るだけでフィットネスができる「乗
馬フィットネス機器」、寝転んでいるだけで汗をかいてキレイになれる「岩盤浴・溶岩浴」といっ
たものが挙げられる。
④繋がっている自分・・・よりいっそう繋がっている自分を確認できる商品・サービス
2006 年は、Web2.0 の影響もあってか、自分を取り巻く人間関係や情報環境を IT によって確認し、
その繋がりをさらに強化するような商品・サービスが注目を集めた。
具体的には、友達やコミュニティとの繋がりややりとりを楽しむ「国内最大手の SNS」、いつでも
自分主体で情報を発信したり、また取り出すことができる「ブログ」
「米国の動画投稿サイト」
、子
供と親との繋がりを強化する「子供向け携帯電話」、ケータイを通じてモバイルで放送が楽しめる
「ワンセグ対応携帯機器」といったものが挙げられる。
⑤キャラのたった自分・・・人と違う位置づけ(キャラ)の自分になれる商品・サービス
2006 年は、いつもと違う角度から“自分”を眺め、新しい自分の位置づけ(キャラ)を見つけて、
それを楽しむような動きが目立ち、関連する商品・サービスも注目を集めた。
具体的には、
“メガネ”をかけた男性や女性にスポットを当てた「メガネ男子・メガネ女子」、未婚
男性をあえて“結婚できない”と呼んでキャラクター化した「結婚できない男」、人とはちょっと
違う自分なりの趣味を楽しむ「エアギター」
「女性の格闘技」、得意な知識を発揮してネットからリ
アルな世界まで活躍を広げた「ネット発カリスマ」といったものが挙げられる。
⑥誇れる自分・・・いつもより少し誇らしい自分を感じられる商品・サービス
2006 年は、日本人である自分に対して少し誇らしい気分を感じられるような、
「日本」や「日本人」、
また「かつての日本」といったものを再評価する商品・サービスが目立った。
具体的には、“日本女性の美しさ”を謳ってヒットした「日本女性の髪の美しさを引き出すヘアケ
ア商品」、日本や日本人の品格を取り戻すことを説く「国家の品格」、日本を応援し“日本”に熱く
なった「スポーツイベント(WBC など)」、古き良き日本の風景や思い出に浸り、そこにいた自分を
懐かしむ「昭和 30 年代」「つま恋 2006」といったものが挙げられる。
Ⅲ.
過去5年間の消費トレンド
博報堂が過去5年間に分析・発表した消費トレンドは、以下のとおりです。
・2001年 「元本保証型」消費
将来に対する様々な不安が生活者の気分を萎縮させる状況のなかで、ブランド品や低価格品な
どの「損をしない」「元が取れる」商品を選択するという、非常に手堅い消費傾向が支配的だ
った。
・2002年 「プチ欲」消費
生活防衛一辺倒の閉塞的状況から抜け出し、ちょっとしたプチな遊びや贅沢で癒しを得ようと
する傾向が見え始めた。癒しを求めて「和」や「昭和」へ回帰する現象が顕著だった。
・2003年 「脱・カネしばり」消費
バブルからデフレへと、十数年にわたって束縛され続けてきた「価格」という価値観から抜け
出し、心の余裕や常識からの逸脱を楽しむ自由な発想から生まれた商品がヒットした。
・2004年 「自信動力」消費
企業は守りから自信へ、生活者は不安から自信へ。
回復した自信を原動力に、日本の元気を体現するような商品が次々と提供され、生活者に支持
されることで市場が活気づいた。
・2005年 「マインド構造改革」消費
政治、企業の構造改革が進むと同時に、生活者においても意識上の構造改革が行われ、従来の
常識から新しい価値観への転換が進んだ結果、生活者の体質が強化された。
■ 2006年は 体質強化の年。
家計最終消費支出
305,000
(単位:10億円)
自信回復
300,000
解放
295,000
守り
290,000
285,000
280,000
「プチ欲」消費
「元本保証型」
消費
千と千尋の神隠し
東京ディズニーシー
発泡酒
現代版ベーゴマ
など
台場1丁目商店街
高級スーパー
ビンテージギター
ブランド塩
など
275,000
2001年
本件に関するお問い合わせ
2002年
博報堂
「脱・カネしば
り」消費
体脂肪低減緑茶
高級カップ麺
朝専用缶コーヒー
六本木ヒルズ
など
「マインド
構造改革」
消費
「自信動力」
消費
癒し
「自分超え」
消費
体質強化
価値転換
イチロー、 アテネ五輪、
高級セダン、 薄型大
画面TV、 アジアをコン
セプトにしたヘアケア、
老舗と共同開発した緑
茶
など
2003年
広報室
研究開発局
2004年
クールビズ
愛・地球博
携帯型デジタルオー
ディオプレーヤー
LEON、 電車男
旭山動物園 など
2005年
脳年齢が測定される
ゲームソフト
プレミアムビール
国内最大手のSNS
メガネ男子・女子
スポーツイベント など
2006年
宮川・藤本 Tel:03-5446-6161
関・田村 Tel:03-5446-6177