非接触空中超音波探傷試験の新素材、自動車部品等への応用

非接触空中超音波探傷試験の新素材、自動車部品等への応用
ジャパンプローブ(株) 高橋 雅和
星野 秀和
小倉 幸夫
概要
ハイパワー矩形バースト波を用いた非接触空中超音波探傷検査法(Non Contact Air Coupled Ultrasonic
Testing(NAUT))を開発した。本報告では NAUT の原理、適正な周波数、波数、入射角及び探触子の選定方法な
どを述べる。また薄板のきず検出、溶接部の欠陥探傷、新素材、自動車部品等の各種の応用例について述べる。
1.まえがき
矩形バースト超音波はパルス超音波に比較して強力
なパワーが出せること、周波数や波数が容易に可変で
き最適探傷条件を見いだし易いなどの利点がありハイ
パワーで送受信が必要な NAUT に適している。本報告
では NAUT の開発の経緯、原理及び応用例について述
べる。
4.NAUT の応用例
4.1.CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の探傷例
図4は厚さ 3mm の CFRP の中央部に衝撃荷重を加
えて生じた層間剥離を透過法で探傷した透過波の分布
例を示す。剥離部分では透過波は減少する。
層間剥離部
2. NAUT21の開発
矩形バースト波・チャープ波複合装置と画像処理機
能を有する装置(NAUT21)を開発した。図1に本装置の
外観を示す。本装置の特長は小型・軽量でソフトウエ
アーは Lab VIEW 対応可能である。
Fig.4. The echo distribution of CFRP in detection by the
transmission method
4.2. 板波によるステンレス鋼板の探傷例
板波(薄い板状の固体を伝搬する波)を用いて厚さ
1mm のステンレス鋼板を探傷した例を図 5 に示す。
Fig. 1 Outside appearance of NAUT21
3.NAUT の原理
通常の超音波探傷では図 2 に示すように超音波を伝
搬させるため探触子と試験体の間に油、水等の接触媒
質(超音波を 伝搬させる媒質)が必要であるが、NAUT
では図 3 に示すように空気を媒体とするので、非接触
で超音波探傷が可能である。
しかし、
探触子から空中に超音波が伝搬する場合に、
探触子と空気の音響インピーダンス(音速と密度の積)
の相違によって、大きなエネルギー損失(金属で約
90dB)が生じ、
この大きな損失をカバー出来る①高感度
の探触子、②60dB のプリアンプ、③高出力・高感度の
装置が必要である。
T:Transmitt
T
R
Plate wave propagation
(a) Plate wave method
(b) Transmission
Fig.5. Transmission method by plate wave in one side
for stainless steel plate
4.3. 薄板の溶接部の探傷例
図 6 にタンデム法による薄板の溶接部の探傷例を示
す。
R:Receiver
R
probe
R:Receiver
couplant
T:Transmitt
1∼2mm
T
specimen
Fig.2. Conventional method
specimen
(a) Arrangement of
(b) Defect echo
Fig.6 Example of tandem method for detecting weld
defect in thin plate joint
probe
air
wel
ultrasonic waves
specimen
Fig.3. NAUT
5.まとめ
高感度の探触子とハイパワーの矩形バースト波パル
サ・レシーバ及びプリアンプを用いて NAUT の適用を
試みた。その結果、薄板のアルミニウム、鋼板、鋼板
の溶接部などの応用が可能であることが分かった。