2016.11.5 金融機関の融資先への対応 目 次 1. 金融機関の組織 2. 金融機関の利益構造 3. 金融機関の融資先の見方 (1).定性的に (2).定量的に(B/S,P/L による) (3). 融資先のランク付け (4).取引面からの視点 4. 金融機関の融資スタンス 5. 金融機関とのつきあい ~お互い信頼関係を築く 1.金融機関の組織 支 店 長 副 支 店 長 事務課 融資課 渉外課 各課とも管理職で ある支店長代理等 と一般社員、パート から構成される ・一般の中小企業は融資課、または渉外課が担当 ・各取引先は地域、業種、規模、取引内容等により 融資課や渉外課の管理職や一般社員が担当する ・融資先は渉外課と融資課で担当するのが一般的 融資案件の流れ お客さま ⇒ 銀行支店 (⇒本部) ⇒融資実行 支店の中では・・・ ①渉外課担当者 ⇒②渉外課管理職 ⇒③融資課担当者 ⇒④融資課管理職 ⇒⑤副支店長 ⇒⑥支店長 または ①融資課担当者 ⇒②融資課管理職 ⇒③副支店長 ⇒④支店長 2.金融機関の利益構造 預金先 金融機関 預金預入・払出 預金利息 貸出先 貸出実行・回収 利鞘の縮小! 貸出利息 (2016/8) 0.002%(普通預金) 0.701% 0.703% (2007/10) 0.198%(同上) 1.601% 1.799% 単純に 100 百万円融資すると、年間 1.6 百万円利益が あったのが、0.7 百万円となっている。 ・ここ数年、手数料収入に注力(投信、保険 その他) 3.金融機関の取引先の見方 (1).定性的に (ⅰ)業種 ・成長性、収益性、安全性はどうか ・社会性、公共性には問題ないか (ⅱ)社長 ・どんな経歴か ・信用できるか ・情報開示に積極的か ・ビジョンがあるか ・会社のため、社会のため仕事しているか ・会社の内容を把握しているか ・個人資産はどの程度あるか (ⅲ)経営陣 ・一枚岩になっているか ・どんな経歴か (ⅳ)社員 ・経営陣の意思、思いが届いているか ・キビキビ仕事しているか ・不平不満、文句はないか (ⅴ)現場 ・現場は明るいか ・整理整頓(5S)はできているか(トイレはきれいか) ・あいさつはできているか (ⅵ)その他 ・貸出金の返済に遅れはないか ・当座預金の決済が遅延しないか ・貸出条件等の変更の話はないか ・他の金融機関の対応に変化はないか ・おかしな動きはないか ・主な取引先の業況に問題はないか 等 (2).定量的に(B/S,P/L による) ・お客さまの決算書は最大の資料 ・決算書を表面の数字ならず、実態ベースで見ている 例えばある会社の28年 3 月期決算から考えます 表面的には優良会社に見えますが・・・ 提出された貸借対照表 (単位:百万円) 現・預金 10 支払手形 50 有価証券 30 買掛金 50 受取手形 50 短期借入金 100 売掛金 350 その他 0 棚卸資産 350 (流動負債計) (200) その他 10 長期借入金 100 (流動資産計) (800) その他 0 土地 100 (固定負債計) (100) 60 資本金 50 建物(未償却額40) 40 利益剰余金 650 機械(未償却額40) (固定資産計) (200) (純資産計) (700) (総資産合計) (1000) (負債、純資産計) (1000) 財務指標 ・流動比率 400% (=800/200) (トヨタ自動車:174%) ・自己資本比率70% (=700/1000) (トヨタ自動車:67%) 安全性の高い会社! ??? 提出された損益計算書 (単位:百万円) 売上高 1200 売上原価 800 ※但し減価償却(20)未実施 売上総利益 400 (売上原価) 販売費・一般管理費 200 営業利益 200 財務指標 営業外損益 0 ・売上高営業利益率 17% (=200/1200) 経常利益 200 税引前当期純利益 200 (トヨタ自動車:12%) 法人税等(50%) 100 ・売上高経常利益率 17% 税引後当期純利益 100 (=200/1200) (トヨタ自動車:20%) 実態ベースで各資産を洗い替えする(いろんな見方がある) (ⅰ)実態貸借対照表~決算書付属資料から(単位:百万円) ・有価証券 (有価証券種別) ・A 社(東証上場)株式 (簿価)(時価)(含み損益) 20 10 ▲10 ・B 社(非上場、倒産先)株式 10 0 ▲10 有価証券には含み損▲20 百万円を内包 ・受取手形 (社名) (支払期日) (簿価) (修正) (価値) A社 28.4.5 10 0 10 A社 28.5.5 10 0 10 B 社(倒産先)28.5.31 20 ▲20 0 C社 10 ▲10 0 28.2.29 倒産先 B 社からの受取手形は回収が難しい、また C 社からの受取手形は期日経過しており、不良債権 (計 30 百万円資産から控除すべき) ・売掛金 (社名) (簿価) (修正) (価値) A社 100 0 B 社(倒産先) 100 ▲100 0 ▲50 0 ▲100 0 C 社(BK 業況不振把握先) 50 D 社(毎期同一額計上) 100 100 (回収困難見込先) 上記の 250 百万円は回収困難で不良債権であり、 資産性なしとする ・棚卸資産 当社へヒアリングし、不良在庫や陳腐化した商品の有 無を確認する ⇒ なかなか教えてもらえない また同業他社平均の在庫量が月商の何倍程度かを確 認し、超過分を不良在庫として看做す。 例えば、当社のケースでは同業他社平均を月商の 1 倍とすると・・・当社の不良在庫=350 ―(100×1 ケ月) =250 ⇒ 250 百万円を資産性なしとする ・土地 (種別) 本社工場用地 (簿価) 10 ※新工場計画予定地 90 (時価) (含み損益) 活用中であり評価せず 10 ▲80 ※新工場計画はバブル期に計画されたが、当面は 実施予定なく、用地は更地のまま 土地には含み損▲80 百万円を内包 ・建物 (種別) 本社工場建物 (簿価) (時価) (含み損益) 60 ※20 ▲40 ※減価償却不足 40 百万円を控除して、本建物の 現価値を 20 百万円となる 建物には含み損▲40 百万円を内包 ・機械 (種別) 各種機械 (簿価) 40 (時価) (含み損益) ※0 ▲40 ※減価償却不足 40 百万円を控除して、機械の 現価値を 0 百万円となる 機械には含み損▲40 百万円を内包 修正された実態貸借対照表 (単位:百万円) 表面 控除 実態 現・預金 10 0 10 支払手形 有価証券 30 ▲ 20 10 買掛金 受取手形 50 ▲ 30 20 短期借入金 売掛金 350 ▲ 250 100 その他 棚卸資産 350 ▲ 250 100 (流動負債計) その他 10 0 10 長期借入金 (流動資産計) (800) (▲550) (250) その他 土地 100 ▲ 80 20 (固定負債計) 60 ▲ 40 20 資本金 建物(未償却額40) 40 ▲ 40 0 利益剰余金 機械(未償却額40) (固定資産計) (200) (▲160) 40 (純資産計) (総資産合計) (1000) (▲710) 290 (負債、純資産計) (ⅱ)実態損益計算書 表面 控除 実態 50 0 50 50 0 50 100 0 100 0 0 0 (200) (0) (200) 100 0 100 0 0 0 (100) (0) (100) 50 0 50 650 ▲710 ▲60 (700) (▲710) (▲10) (1000) (▲710) 290 ・当期減価償却未償却分 20 百万円 ・貸倒損失の計上(受取手形、売掛金の明らかな回収困難 な先 B 社分) 120 百万円 ・有価証券評価損 20 百万円 ・過年度減価償却未実施分 60 百万円(=80-20) 在庫除去損、不動産評価損は実現損でなく修正せず 表面ではトヨタ並みの優良会社が実態は債務超過、赤字! 修正された実態損益対照表 (単位:百万円) 表面 修正 実態 売上高 1200 0 1200 売上原価 800 +20 820 当期減価償却+20 売上総利益 400 ▲20 380 販売費・一般管理費 200 +120 320 貸倒損失(B社)+120 営業利益 200 ▲140 営業外損益 経常利益 特別損益 60 0 ▲20 ▲20 有価証券評価損 20 200 ▲160 40 0 ▲60 ▲60 過年度修正損60(減価償却未実施分) 税引前当期純利益 200 ▲220 ▲20 法人税等(50%) 100 ▲100 0 税引後当期純利益 100 ▲120 ▲20 (ⅲ)おカネの面から ・おカネを産み出せるか? ⇒営業キャッシュフロー or 経常収支 はプラス? ・返済原資(=税引き後当期純利益+減価償却額)は 十分あるか? (3).融資先のランク付け (ⅰ)信用格付 ~機械的、画一的にはやらない ・以上定性面、定量面より取引先を 10 ランク程度に信用格 付けする。 超優良>優良>水準上位>・・・>注意>危険・・・ ・取引先への対応方針もこの格付がベースとなる (例)超優良:超積極方針 水準上位:積極方針 ︙ 水準下位:案件ベース 注意 : 消極方針 ︙ (ⅱ)債務者区分 債務者区分 正常先 要注意先 要管理先 破綻懸念先 実質破綻先 破綻先 ~以下の6つに区分される 基準 具体例 業績が良好で財務内容に 特に問題ない先 業績が低調、不安定で 短期間返済が遅れる 財務内容に問題あある先 赤字 等 要注意のウチ延滞3ケ月以上 3ケ月以上返済が遅れる 金利減免、棚上げ先 リスケ実施先 等 経営破綻に至らずとも、 延滞してなくとも過大な借入 経営難で経営改善計画の 金の完済が厳しい先 進捗が不十分な先 3ケ月以上返済が遅れる 等 法的には経営破綻してい 相当期間、大幅な債務超過な先 ないが、深刻な状態の先 経営改善計画の進捗が大幅未達 法定、形式的な経営破綻 となった先 破産、清算、会社整理、会社更 生、民事再生、手形交換所の取 引停止処分等 (4).取引面からの視点 ・主力、準主力、その他 ・シェア ・ボリューム(預金量、貸金量) ・採算(収益、費用) ・売上代金回収や支払ルートの有無 ・関連取引内容(社長や従業員との取引) ・日頃の信頼関係 4. 金融機関の融資スタンス ・基本的には、融資は利益の源泉であり、対応したい ・ただし、不良債権になるのは、避けたい ・5つの原則を遵守する 公共性の原則 安全性の原則 流動性の原則 成長性の原則 収益性の原則 ・定性的、定量的から、信用格付・債務者区分を決め、 その他の要因等を勘案して、融資先へのスタンスを 定める 5.金融機関とのつきあい ~お互い信頼関係を築く ・日頃から Face to face の関係で ・自社の業務内容をアピール ・定期的に業況、資金繰り、計画と実績等を知らせる ・借入以外にも相談を持ちかけ、依頼する ・金融機関の依頼事項にも出来るだけ協力してあげる ⇒お互いに Win – Win の関係 を築く
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