中国人の価値観と日本的企業管理 徐 炎 章 ・ 蔡 明 哲 日系企業は中国、特に“長三角(長江デルタ)”地域に多く進出しており、一部の企業は成功を収めている。しかし、日 系企業の中国での評価は思ったようには良くない。中国人の目から見れば日系企業は年功序列と遅い昇進、経験重視と能力 軽視などが酷すぎる上、中国人の従業員をあまり尊重、信任してない。ここに中日両国の文化差異、とりわけ価値観と労働 観の差異が見られる。日本人は“和”と謙遜を最も基本としており、集団主義を重視する。これに対して、中国人は個人の 価値、例えば地位や名誉などを追求する。日本企業はこうした中日管理文化の差異を直視し、中国の国情に基づいて、効率 的に日本的経営理念を中国化すべきである。 中高年者の再雇用促進を目的とする労働価値評価への取り組み 長 澤 宏 関西で大企業を筆頭にリストラの動きが続く中、中高年労働力の社会的再配分を円滑におこなうには、条件のミスマッチ により起こる摩擦的失業を緩和する必要がある。そのためには、「職業人としての値打ち」という意味での求職者の労働価 値に関する情報を提供して、求職者、求人企業の双方の再雇用を巡る意思決定をより合理的なものにしなければならない。 ここでは求職者の労働価値は、本人の全人的職務遂行能力ではなく、就業可能な職位の難易度を企業の壁を越えて職務横断 的に測定したものと定義した。そのような職務の難易度の評価システムは、米国労働統計局の一般的レベル分けにそのモデ ルを見いだすことができる。これをまねて関西の企業は求職者の労働価値を測り、年功にとらわれずに、労働価値に見合う 給与の支給に努力すべきである。 鉄のカーテンから欧州連合の中心地へ −欧州三国間の国境を越える協力を支える制度的基盤を求めて− ディ・マルチノ,ルイス・アルベルト 2004年5月1日に欧州連合は25カ国に拡大した。この拡大により欧州連合は旧鉄のカーテンを渡った。欧州の社会と経済 統合は以前より緊急課題になった。欧州において国境を越える協力の制度化は、最初のユーロリジョンの創立とともに1958 年に始まったが、特に1990年代に急速に広がった。しかし、オーストリア、イタリアとスロベニアの国境地域ではいまだに ユーロリジョンが存在していない。この地域はかつて鉄のカーテンにより分断されていた。そして、3つの民族(ゲルマン、 ラテン、スラブ)の結節点である。本稿では、ユーロリジョンの定義や一般的な特徴を論じてから、オーストリア、スロベ ニアとイタリアの国境をまたぐエウラドリアというユーロリジョン・プロジェクトを紹介する。最後に、オーストリアとイ タリアのそれぞれの国境地域の社会と経済の歴史および現状を踏まえ、エウラドリア実現の利点と実行可能性を考慮する。 ブルデュー社会学における「身体」の位置づけについて 棚 山 研 近年、諸科学において「身体」をめぐる議論が活発である。人文・社会科学においては永く「心身二元論」のなかで、「身 体」の位置を軽んずる傾向があったが、「心」の部分に位置づけられてきた「理性」への信頼が揺らぐにつれ、「身体」の 「復権」とも言うべき議論が現れてきたと言える。 ピエール・ブルデューは社会学者であり、また構造主義の流れに属するという点でフランス現代思想に深くコミットして きた。「身体」はフランス現代思想において、サルトルやメルロ=ポンティらの「主体の哲学」、また、レヴィ=ストロー ス、フーコーらの構造主義者から、ともに取り上げられてきた論点である。 本論では以上の背景を前提としつつ、ブルデューが「身体」というものを通じて、第一に現代フランス社会に何を見出したの か、第二に「身体性」の重要性を見出したアルジェリアでの民族学的研究、第三に構造主義の「巨人」レヴィ=ストロースを乗 り越えるキーワードとなった「身体」 、といった論点について考察し、全体としてブルデュー社会学の「主体」像において、 「身 体」が重要な位置を占めていることを論じた。 ホームヘルパーの就業実態 −京都府下において− 新 井 康 友 介護保険制度の施行により、ホームヘルプ事業には多様な事業主体が参入してきた。その結果、市場原理が働き、ホーム ヘルプ活動の「質」の向上とサービス供給量の増大が期待された。それに伴う、ホームヘルパーの雇用の安定も期待された。 介護保険制度施行後3年以上経過したが、本稿では、京都府下で働く非正規職員がどのような労働条件・待遇の状態に置か れているのかを明らかにした。さらに正規職員・非正規職員の「やりがい」「働きがい」についても探った。 バリアフリーツアー(障害者旅行)におけるボランティア −その現状と問題点− 遠 藤 京 子 現在、各旅行社は障害者向けの「バリアフリーツアー(障害者のための旅行)」を売り出している。障害者の旅行に対す るニーズは大きい。 しかし、添乗員と障害者とその家族だけでは到底サポートしきれないところに問題があり、これを解決するのが「ボラン ティア」の存在である。 今後、バリアフリーツアーがより発展し、安全でかつ充実したものとなるには、「ボランティア」の存在がぜひとも必要 であり、社会的にも重要な意義を担うと考えられる。 筆者は、バリアフリーツアーに同行し、障害者への聞き取り調査を行うことによって、現状把握と分析、考察を行った。 ブランド戦略の重要性に関する研究 −日本マクドナルド㈱のブランド戦略の歴史的分析− 于 建 珠 本稿は、企業にとってブランド・マネジメントがいかに重要であるかを経験的に分析し、理論枠組みを再検討することを目的 としている。まず、既存研究の文献展望を行う。そこから、本稿の仮説を導出する。次に、仮説の検証を行う。用いる方法論は 言説分析である。分析対象として日本マクドナルド株式会社を取り上げる。分析を通じて明らかにされたのは、マクドナルドの ブランド・イメージには4つの段階があるということである。以上の経験的分析を通じて、 (1)ブランド戦略は企業経営の成功 の鍵であり、企業の重要な資産であること、および(2)ブランド戦略のポイントは信頼性と一貫性であること、以上の二点が 検証される。
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