11 Nov. 2013 Vol.38 Medical Device Daily 米国で急増するリスク回避を狙った病院の M&A……1 Medical Device Daily アジアの画像診断市場の概況……3 Same-Day Surgery 薬に頼らない手術前のリラックス法……5 Case Management Advisor 心と体をつなぐ医療サービスが健康増進のカギ……7 インド専門ニュース インド通信……8 メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ 米国でささやかれる「癌治療の危機」……9 The Academia Highlight[38] 先進医療機器開発を突き動かす源……10 by うのめ・たかのめ Medical Device Daily……11 Kawanishi Hotline……19 カワニシホールディングス トムソン・ロイター AHC Media LLC Nov. 2013 Vol.38 米国で急増する リスク回避を狙った病院の M&A Booz & Co.社シニア・パートナー Gary Ahlquist 氏インタビュー ――Jim Stommen/MDD シニア・エディター 近年、日本の病院を 対して、そのつど報酬が支払われる出来高払いと 取り巻く環境は厳しさ 違い、 「医療の価値」に対して支払う制度では、一 を増している。長く続 連の治療にかかる医療費がまとめて単一料金とし いた診療報酬のマイナ て支払われます。別の言い方をすれば、医療提供 ス改定の影響もあって、 者は、特定の処置や特定の患者集団のアウトカム 赤字経営の病院も少な やコストに対してリスクを負っているのです。今 くない。医師や看護師 は再入院や感染症でも改めて請求が可能ですから、 のみならず、後継者不 病院にリスクは全くありません。しかし、将来的 足も深刻だ。公立・公的 に「医療の価値」に対して支払う新しいモデルが 病院の民間委譲、大型医療法人による買収などの流 導入されれば、それらは医療提供者にとってリス れは、今後も続いていくと予想されている。 クとなるでしょう。 一方、以前から日常的に病院の M&A が行われて 病院が保険会社と同じようにリスクを負うとい いる米国では、一時下火になっていた合併がここに うことは、予測不可能なバッド・リスク(リスク きて急増しているという。相次いで行われる合併の に見合う収入が得られず、引き受けると採算が合 背景やその影響、今後の予測について、世界的なコ わないもの)を最終的に抱えることになった場合 ンサルティング会社 Booz & Co.のシカゴ事務所で、 に備え、より多くの財源が必要になるということ シニア・パートナーとして同社の国際医療事業を担 です。ですから「コストの大幅な削減」と「規模 当している Gary Ahlquist 氏にうかがった。 の拡大」は絶対に必要であり、これが病院の合併 につながっていると考えられます。 米国の病院合併は、猛烈な勢いで進んで 昔は、患者を「再来患者」にすることは いるようです。その背後には何がありますか? 病院にとって良いことでした。 Ahlquist Ahlquist 統合へのプレッシャーはマネジドケア インセンティブのあり方が変わってき の時代にも存在していましたが、現在は当時を上 ているのです。眼科のレーシック手術を例に説明 回る年間 150~200 件もの経営統合・合併・買収・ しましょう。 提携が行われています。今後 5~7 年で、米国に レーシック手術は、事実上単一料金で、患者の ある約 5,000 の病院のうち、1,000 の病院で所有 満足が保証された手術です。もちろん簡単な手術 者が変わると我が社は予測しています。 ではなく、両目が対象で、レーザーを使い、診断 このように合併が急増している最大の要因は、 やアフターケアをともないます。修正が必要にな 病院事業にリスク要因が持ち込まれたことです。 ったり術後に問題があったりした場合には、患者 米国の医療費支払制度は、 ゆっくりですが確実に、 は再び病院に行けばよく、その費用は手術を受け 出来高払いから「医療の価値」に対して支払う制 る際に支払った単一料金で大体カバーされます。 度(Pay for Value)へと進化しています。患者に そのため、医師は最初からできるだけ効果的、効 提供された医療行為とそれを提供した医療機関に 率的に手術を行おうとします。 1 Nov. 2013 Vol.38 Ahlquist この新しいモデルでは、基本的にどんな支払方 リスクを抱える世界では、規模が大き 法・保険の患者であっても受け入れなければいけ なこと、あるいは財務的に安定していることは良 ませんから、病院への支払いが減ることが予測さ いことですし、重要なことです。それは、財務的 れます。病院はいっそうのコスト削減を迫られる に必要なだけでなく、戦略的にも必要です。 でしょう。また、検査や診断、手術、リハビリな それ以外でパートナー選びに重要なのは、能 どの医療行為、またはそれを提供する医療機関を 力・機能のマッチングでしょう。例えば、入院患 できるだけ統合することも重要です。1 カ所で医 者重視の小規模病院で、連携している医師も少な 療のあらゆる側面を扱うほうが、インセンティブ く、IT に多額の投資を行っていない病院の場合、 の面でもリスク管理の面でも有利だからです。 電子システムを導入しており、医師とどう連携す ればよいかを知っている病院で、さまざまな外来 治療に対応できる施設を持っているパートナーを 病院の統合が続くこの傾向を、保険会社 我々は探します。これは、欠けているものを相手 はどう考えているでしょうか? に提供するという能力・機能のマッチングです。 Ahlquist 医療機関側の規模が大きくなれば自分 たちの価格交渉力が損なわれますから、歓迎して はいないでしょう。しかし、驚いてもいないはず です。医療制度におけるさらなる説明責任、料金 値下げ、あるいは、2 桁近くにもなる医療費の伸 びやそれにともなう保険料の伸びを減速させるこ となどは、保険会社自身や政府が要求しているこ とだからです。 地方の病院が生き残りに必死であること また、地理的条件も大切です。医療は明らかに はよく知られています。これらの病院はどれくら 地域的なものですし、いまだに実践的なビジネス い危機的な状態にあるのですか? でもあります。例えば、ウィスコンシン州南東部 Ahlquist には、Aurora Health Care のような完全に統合 病院が地域に 1 つか 2 つあれば、おそ らく 5 年以内にその病院名は変わると思います。 された高度な医療提供ネットワークがあります。 愛すべき古き地域病院のアイデンティティは失わ Aurora は、専門医、プライマリ・ケア医、薬局、 れるかもしれませんが、逆に、 「少なくとも閉鎖さ 病院、クリニックなどさまざまな医療機関を地域 れなくてよかった」となるかもしれません。 で管理しており、小売業者と同じように、消費者 長期にわたって独立を維持しようとしている病 のアクセスのしやすさを追求しています。かつて 院には、今後も大きなプレッシャーがかかるでし は、病院さえ建てれば患者がやって来ましたが、 ょう。生き残るためには、費用対効果を高め、IT、 今では、患者に来てもらえるように病院側が努力 外来サービス、医師との連携などに投資する必要 しなければなりません。 があります。短期的、例えば今後 3~5 年はかな り良い財務状態を保つことができても、今後の物 医療機器の観点から、病院間での統合傾 価圧力や投資要件の負担を考えれば、独立を維持 向は市場にどのように影響しますか? することは難しいと思われます。 Ahlquist すでに広く見受けられる購買・調達に おける標準化の動きは、 これからも続くでしょう。 合併しようと思っている病院にとって、 「理想的な」パートナーとはどのような存在で 購買を最善の価格で行うためにその規模を利用す しょうか? ることは、航空会社であろうとウォルマートであ 単に財源があるかどうかですか? 2 Nov. 2013 Vol.38 いるオバマケアですが、とにかく起こる必要のあ ろうと医療機関であろうと共通の戦略です。 しかし、医療機器においては、コスト削減のた った多くの変化を促す触媒になっていることは、 めの 1 つの方法として、 「技術の進歩」に目が向 1 つのプラス面です。時がたてば変化は起こった けられるようになるでしょう。技術の進歩はケア かもしれませんが、何もなければこれほど早くは を改善し、医療の価値を高めます。価値の向上は 起こらなかったでしょう。 将来、さらに重要になります。人工関節インプラ インセンティブのあり方が変わったために、病 ントでいえば、価格・寿命・QOL の最善の組み合 院の経営統合や合併の流れは加速しています。オ わせを提供する製品が選択されるようになるでし バマケアが推進する IT 分野の統合も、それを後 ょう。医療機器では、 「質を維持しながら医療コス 押ししています。現在、病院やそのシステムは接 ト全体を削減するために、どのようなイノベーシ 続され、多くの場合、共通の通信網によって問題 ョンを行っていくか」が焦点になると思います。 なく機能するようになっています。IT 分野の統合 が進んだことで、より早く、より効果的な病院の 統合が可能になっているのです。 現在の医療業界について、最後に何か付 け加えることはありますか? 「Medical Device Daily」 Ahlquist (2013 年 8 月 22 日& 8 月 30 日号) 多くの人々が何かと強い感情を持って アジアの画像診断市場の概況 空前の成長を遂げるアジア市場 ――Ames Gross/MDD 寄稿者 アジアの画像診断市場が、世界のほかの地域に 人口と医療支出の多さである。現在、日本人の 3 類を見ない勢いで成長しつつある。市場規模は年 人に 1 人は 60 歳以上で、その多くが画像診断を 平均 10%で拡大しており、2012 年には世界市場 必要とする慢性疾患を持っている。また、日本人 の 33%に当たる 80 億ドルに達した。 の平均年収は高く、医療費の支払い能力も他国に 近年国民 1 人当たりの GDP が上昇しているア 比べて高い。しかも国民皆保険制度が整備されて ジアでは、高齢化も相まって、医療支出が増加し いるため、日本で費用が画像診断を受ける際の障 ている。各国の政府も画像診断に対する保険償還 壁になることはほとんどない。 を増やす傾向にあり、市場の成長につながった。 今後は、持ち運びが可能で、放射線量の低い装 ただ、そのニーズには地域差がある。各国の市 置の需要がいっそう高まるものと思われる。2011 年の福島第一原発の事故後、多くの日本人が画像 場を分析してみよう。 診断による被曝を懸念し、より少ない被曝量での 日本 アジア最大の画像診断市場であり、その規模は 診断・処置を求めるようになっている。 45 億ドルに相当する。超音波、CT、X 線などの 装置はほとんどが国産品だが、核医学診断装置と 中国 毎年 17%の成長を見せており、2012 年には市 MRI の大半は輸入品で、市場売上高のうち約半分 場規模が 15 億ドルに達した。ハイエンドの装置 を海外メーカーが占める。 は輸入に頼っているものの、国内メーカーはミド ル~ローエンドの装置を大量に生産している。 日本の画像診断市場を支えているのは、高齢者 3 Nov. 2013 Vol.38 中国では、2009 年に医療制度改革のために 機種を低価格で生産しており、その最新モデルは 1,240 億ドルを支出する計画を政府が発表してお 付属品やアクセサリーを極力省いている。また、 り、医療機関が画像診断装置などへの投資を加速 販売先も中国やインドのより小さな都市や地方へ させている。主要病院はより高額な高機能機種へ と拡大しつつある。例えばフィリップスは、2012 の買い換えを進め、中小病院は基本機能に絞り込 年 に 画像 診 断装 置の 購 買サ ポー ト プログ ラ ム んだ廉価機種や中位機種を購入する傾向にある。 「Dandelion Plan」を中国の郊外で開始した。専 そのため、GE ヘルスケアやフィリップスなど 用の装置とあわせて、医師のトレーニングプログ の大手海外メーカーは、中位機種のラインナップ ラムや装置購入費用のサポートオプションを提供 を増やし、柔軟な支払いプランを用意している。 することで、中国での CT 装置の売り上げを今後 一方、国内メーカーも負けじと自社製品を開発し 数年間で 65%伸ばす狙いだ。 ており、例えば国内大手のマインドレイは、ハイ GE も同様に、求めやすい医療機器と中国の医 エンド装置の開発に着手し、国内メーカーならで 療従事者向けの特別なトレーニングサービスを提 はの強みを生かして海外メーカーに挑んでいる。 供する「Spring Wind」キャンペーンを、2011 年 さらに 2013 年には米国の超音波診断装置メーカ に中国で開始した。GE は 2011 年に X 線の事業 本社を米国から北京に移しており、2010 年には 5 ーZONARE Medical Systems 社を 1.1 億ドルで 億ドルを投じて、中国に 6 つの「カスタマーイノ 買収し、欧米に進出している。 ベーションセンター(顧客のニーズやトレンドを 把握し、顧客と GE の事業拡大をめざす機関) 」を インド 市場規模は 2012 年でまだ 6 億ドルだが、年率 設立している。 11.5%の割合で成長している。以前は、ムンバイ やデリーなどの都市部にしか画像診断センターが なく、地方での画像診断装置の普及率が非常に低 かった。現在では、多くの私立病院が地方に展開 して中位機種の装置を設置するようになっており、 これが近年の急成長につながった。 インドでは、医療費が常に大きな問題となって (http://www3.gehealthcare.cn/) いる。公的な医療保険が無いに等しく、医療費の 自己負担分を賄えるほどの収入がない人も多いた シーメンスは、2009 年から他社の同等品と比べ めだ。この財政事情の厳しさから、インドでは同 て価格が 40%も低い画像診断装置「SMART」シ じ画像診断装置でも中位機種、もしくはリビルト リーズをインドで販売している。SMART シリー 品(修理済みの中古品)の売り上げが急速に伸び ズは、設計・生産・販売のすべてがインドで行わ ている。一番高くても市場価格の半分程度の金額 れており、中位機種の X 線装置や持ち運びができ で新品同様の装置を購入することができるので、 る胎児用の心電図モニターなどが含まれる。現在 多くの病院はリビルト品を好む傾向にある。 までにシーメンスは、同シリーズを製造するイン ド工場に 2.5 億ドル以上もの投資をしている。 このようにアジアでは、特に高齢者の医療支出 アジアにおける海外メーカーの活躍 画像診断装置を手掛ける多くの海外メーカーが、 増加にともない、画像診断装置の市場が順調に伸 すでにアジアでの販路と生産工場を確保している。 びている。 ハイエンド装置に強い海外メーカーも、 今まではハイエンド装置は欧米メーカーが独占状 製品のグレードを落とし、市場のニーズにあった 態で、アジアのメーカーはローエンドの製品一辺 仕様の装置をラインナップに加えることで、アジ 倒だったが、中国のマインドレイの台頭に見られ アメーカーに対抗できるだろう。 るように、状況は変化しつつある。 「Medical Device Daily」 (2013 年 8 月 15 日号) 多くの海外メーカーは、アジア市場向けに中位 4 Nov. 2013 Vol.38 薬に頼らない手術前のリラックス法 不安を取り除いて治療効果と患者満足度をアップ 今年度のイグノーベル賞(「人々を笑わせ、そして 不安を感じにくくするのにたいへん役立つ」と Gooding は説明する。 考えさせてくれる研究」に与えられる賞)の医学部 門は、 「心臓移植したマウスにオペラを聴かせると免 音楽療法に魅了された人は多い。ある小児患者 疫が活性化して延命する」ことを発見した日本人の の母親は、音楽療法によって自分の子どもの不安 研究チームが授賞した。近年はこのような音楽療法 が取り除かれたのを目の当たりにし、病院全体の や動物介在療法などへの関心が高まっており、楽器 イメージが一変したという。 「これこそが私たちが の生演奏、ビデオ、花やバスローブなどを用意して めざす、患者とその家族を中心にした治療だ」と Gooding は語る。 患者をリラックスさせる医療機関が登場してきた。 これらは単なる顧客満足度向上を目的とした演出で はなく、実際に手術前の抗不安薬の投与量が減った り、回復が早まるケースも確認されている。 (編集部) 音楽療法で不安を取り除く ケンタッキー大学(UK)が行った研究では、 術中術後に音楽をかけておくと患者が不安を感じ (http://uknow.uky.edu/) にくく、早く回復できることが分かっている。使 用する抗不安薬も少なくて済み、治療への満足度 小児患者にはビデオ鑑賞が効果的 ビデオ鑑賞にも、患者の不安を軽減する効果が も高い。テンポが緩やかで落ち着いた音楽には、 患者をリラックスさせ、痛みを軽減する効果があ るのだ。 あることが確認されている。 音楽療法の第一人者である Lori Gooding 博士 カナダの医療機関 IWK Health Centre IWK で は、音楽は特に創傷治療に効果的だと話す。その は、小児患者が家で観ているテレビ番組を日帰り ため UK の外来手術では、術前に音楽を流す。 「音 手術の開始前に見せることで、麻酔導入中の不安 楽を聞くことで、患者は痛みや不安を感じにくく を軽減している。小児患者はビデオを見ながら前 なるので、スタッフは効率的に治療できるように 室で待機し、手術室に移動してからは、普段は研 なる。UK ではさまざまなジャンルの音楽を用意 修医が使用する手術用スクリーンで続きを見るこ し、患者に好きなものを選んでもらっている」 。 とができる。上映は、麻酔導入中も続けられる。 音楽療法士は、患者が音楽を聞いてリラックス IWK の臨床心理士 Jill Chorney 博士は、小児 できるよう手助けし、音楽にあわせて呼吸法や誘 患者に対してはビデオの効果は抜群だと語る。麻 導イメージ療法を行う。通常は楽器の生演奏を行 酔導入時に「苦痛を感じなかった」と答えた割合 うが、感染症が懸念される場合は録音した音源で は、ビデオを見せた群では 25%、ビデオを見せな 代用することもある。また、患者に太鼓を叩かせ かった群ではわずか 5%だった。また、前室から たり、歌を歌わせたり、替え歌を作らせたりもす 手術室へ移動する際の不安感は、ビデオを見せた る。 「人間は 2 つ以上のことを同時にこなすのは 群ではあまり変化しなかったが、ビデオを見せな 難しい。これらの活動は心配事から気をそらし、 かった群は明らかに不安が増したという。 5 Nov. 2013 Vol.38 は、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS: 同様の効果は、ほかの研究でも確認されている。 ある研究では、小児患者に好きなアニメを見せる 医療環境にある子どもや家族に、心理社会的支援 と、麻酔や手術を受ける前の不安感を、効率よく を提供する専門職)やマーケティング課、カメラ 安全に軽減できた。 「不安を感じなかった」もしく マンが協力して完成させたもので、治療を行う部 は「あまり感じなかった」と答えた小児患者は、 屋やスタッフが紹介されている。子どもたちは家 アニメを見せた群では 43%だったが、おもちゃを でゆっくり読むこともできるし、病院のウェブサ 与えた群では 23%、何もなかった群では 7%と、 イトからも閲覧可能だ。 「スタッフや手術器具、手術室の様子などを事前 その差は顕著だった。 に伝えておくことは大切だ。これから何が起こる しかし、患者に何を見せるかについて親と話し 合い、ビデオを用意するのには時間がかかる。 か分かっていれば、 当日にびっくりしなくて済む」 IWK では主にインターネットの動画サイトから と Zerwer は説明する。 番組を調達しているが、ラインナップは限られて いるのが現状だ。また、ビデオはすべての小児患 者に効果があるわけではない。 「映像を見ることで 疲れを感じる子もいるため、こうした患者には静 かな環境を用意したほうが効果的だ」と Chorney は忠告する。 事前の情報提供で心の準備 ニューヨーク州にある総合病院 Finger Lakes Surgery Center では、月に 1 回、小児患者向けの (http://bit.ly/19dQzAL) 院内見学会「Kids Tour」を行っている。子ども たちは手術用のガウンや帽子を着用して院内の治 また、Methodist では、小児患者に接するスタ 療エリアを巡り、担架に乗って手術室に行くこと ッフの数を制限することで、リラックス効果を高 もできる。手術室では、担架から手術台に移動し めている。術前準備を行うスタッフは患者 1 人に たり、酸素マスクをつけたりしながら説明を受け 付き 5 人以下で、彼らは何をやっているのか患者 る。 手術の前に患者と親に心の準備をさせながら、 に説明しながら、ゆっくりと作業を行う。 過剰な緊張を取り除くことが狙いだ。 手術当日になると、小児患者はゲームをしたり、 イリノ イ州の医療機関 Unity Point Health 映画を見たり、プレイルームで遊ぶなど楽しく過 Methodist でも、小児患者が手術器具に触れ、説 ごす。また、ボランティアが作った手術帽のなか 明を聞くことができる術前の見学会を行っている。 から好きなものを選んだり、前室から手術室まで Methodist はこのほかにも、小児患者への抗不安 の移動手段を徒歩・車椅子・電動バッテリーカー 薬の投与を減らすためにさまざまな取り組みを行 のなかから選ぶこともできる。 っており、使用量の削減に成功している。 さらに、術後できるだけ早く子どもと会えるよ 同院の看護師 Juli Zerwer は、 「以前は、患者を うにしていることが、親の満足度を高める大きな 前室から手術室に連れて行くまでに多量の抗不安 要因になっている。退院までのステップはなるべ 薬を使用したが、いまでは薬を投与することのほ く手術前に説明し、親を安心させておく。 うが珍しいくらいだ」と話す。85%だった同院の 「患者やその家族に、病院やスタッフ、手術につ 患者満足度は、取り組みを始めて 3 カ月で 100% いて説明して心の準備をさせ、積極的に治療方針 に達し、その後も 95%以上を維持し続けている。 の決定に参加してもらう。信頼関係を築くことが 同院の取り組みの 1 つが、手術日が決まった小 何より大切だ」と Zerwer は語った。 児患者に渡される、 「Let’s Get Ready for Surgery at Methodist」と呼ばれるパンフレットだ。これ 「Same-Day Surgery」(2013 年 8 月号) 6 Nov. 2013 Vol.38 心と体をつなぐ医療サービスが 健康増進のカギ 心と体は互いに影響を与え合っている 身体疾患と精神疾患の関係は深い。精神疾患患者 「精神疾患患者は精神科医やメンタルヘルスの は糖尿病や脳卒中などの身体合併症を発症する割合 専門家にかかることが多く、 プライマリ・ケア医を が高く、逆に、身体疾患患者はうつ病などの精神疾 受診して、糖尿病や COPD といった身体疾患の治 患を患いやすいという。しかし、これまでは精神科 療に取り組むことが少ない。また、一般の喫煙者 とそれ以外の診療科間のコミュニケーションが不足 より大幅に喫煙量が多いうえに、食欲を増進する しがちで、包括的な治療が行えているとは言えなか 薬を飲んでいる可能性もある」 。 った。その反省の下に、米国では診療科の垣根をな Bergeson は、こうした精神疾患患者の多くは くすさまざまな対策がとられており、日本でも国立 治療計画に従わないと話す。慢性疾患の患者は一 高度専門医療研究センターの共同研究として「身体 生涯治療が必要だということを認めたがらないも 疾患患者へのメンタルケアモデル開発ナショナルプ のだが、彼らはさらに精神疾患だというレッテル ロジェクト」が昨年より始まった。精神科とほかの にも立ち向かわねばならず、自らの状態を恥じて 診療科をつなぐ試みが本格化している。(編集部) 薬を飲みたがらない。ほかにも、軽快したと感じ たり、薬の副作用を嫌ったりして服薬を止めるこ ともあり、病気の再発に苦しんでいる。 心と体の健康状態に相関があることを示す研究 は極めて多い。例えば、米国疾病予防管理センタ ー(CDC)の機関紙『Preventing Chronic Disease』 で Daniel P. Chapman 博士は、 「精神疾患と慢性 疾患は相互に関連があり、うつ病は慢性疾患を引 き起こし、慢性疾患は抑うつ症状を悪化させる」 と報告している。 この研究によると、ぜんそく患者では、50%近 (http://www.optumhealth.com/) くで深刻な抑うつ症状がみられるという。ぜんそ く患者が精神疾患を併発する割合は、発作の頻度 こうした精神疾患患者の再入院を防ぐために、 が低い患者では 25%であるのに対し、発作が頻繁 Optum 社は地域医療を担う医師(FCA)と提携 に起こる患者では 87.5%だった。また、うつ病患 し、再入院のリスクがある精神疾患患者に対し、 者は冠動脈疾患を発症しやすく、深刻なうつ病患 適切なケアと併存疾患の治療が確実に受けられる 者は、症状の軽い患者に比べて脳梗塞リスクが 2 よう働きかけている。FCA は患者の治療計画をフ 倍、うつ病でない人と比べると 4 倍以上であるこ ォローし、身体疾患の担当医と精神疾患の担当医 とも判明した。 がコミュニケーションを取るよう促す。さらなる 医療管理サービスを提供する Optum 社(ミネ 援助が必要なときは専門家と連携し、患者の生活 ソタ州)の消費者対策部部長 Sue Bergeson は、 習慣を変える手伝いをする。 ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)でも、 精神疾患を持つ患者は、一般の人たちよりも平均 で 25 年寿命が短いと指摘する。彼らは喫煙量が 身体疾患の治療担当者と精神疾患の治療担当者を 多く体重過多で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に 結びつける「Connected Care」が行われている。 苦しむ傾向があるからだ。 このプログラムは、精神科とそれ以外の科の連携 7 Nov. 2013 Vol.38 不足が患者に悪影響を及ぼしている現状を変えよ り、身体疾患を治療する生活指導に従えなかった うと開発されたと、メンタルヘルスを支援する非 りする。心と体の健康を一体的に管理するサービ 営利団体 Community Care Behavioral Health スが、患者の健康増進を手助けするカギだ」と Schuster は語る。 Organization で医療部門の主任を務める James ほかにも保険会社 Aetna 社は、労働者支援サー Schuster は話す。 同団体の会員と、メディケイドの管理医療プラ ビ ス 「 Disability and Absence Management ンである UPMC for You の会員に提供される Services」を提供し、精神科医が、職場復帰しに Connected Care では、 精神疾患と身体疾患で別々 くい精神疾患を持つ会員の治療を行っている。精 の治療計画を組むのではなく、同時に回復できる 神疾患が見つかると、すべての診療部門が精神科 ような統合した治療計画を提供している。また、 医と連携し、身体疾患の治療や社会復帰の妨げに 両団体のケースマネージャーは、会員の治療情報 なりそうな精神的な問題を特定する検査を行うと がある共有データベースにアクセスし、治療が困 いう。同サービスの責任者 Adele Spallone は、 難な症例について定期的に話し合いの場を設けて 「我々は患者を全人的に見て、複数のアプローチ いる。 で対処している」と語っている。 「深刻な精神疾患を持つ患者の多くは貧しく、精 「Case Management Advisor」 (2013 年 8 月号) 神疾患のせいで指示された薬を服用できなかった インド通信 インド専門ニュースサイト「インド新聞」より、運営会社ムロドーの 許諾を得て、最新情報をお届けします。(http://indonews.jp/) アザド保健相、 医療関連の研究開発に期待(9/26) 進歩や政府の補助金、規制改革の推進などにより 国際競争力が高まる可能性が高く、海外の世界的 グラム・アザド保健・家族福祉相は、政府が医療従 大手による国内メーカーへの出資や買収、生産拠 事者の育成や医療関連施設の拡充に着手したこと 点の設置などの後押しもあって、年率 15.5%のペ を踏まえ、次の段階として研究開発の充実に力を ースで成長するとの見通しだ。インド半導体協会 入れる考えを示した。具体的には、 「医科大学への によると、国内には約 700 社の医療機器・設備メ 学際的な研究所の設置」 「すべての国立医科大学と ーカーが存在し、市場規模はアジアで 4 番目、世 国立研究所へのウイルス関連研究施設の開設」 「農 界でも上位 20 カ国に入る規模を誇るという。 村部の住民の健康状態を調査する機関の設立」を アポロ病院とメドトロニック、 透析システムの開発で合意(10/17) 進める方針で、すでに複数の研究所や機関の設置 が承認されている。また、癌治療専門病院を 20 カ所に建設する事業や、既存の癌治療向け医療機 大手病院チェーンのアポロ・ホスピタルズと米メ 関 27 カ所の拡張事業も承認されている。 ドトロニックは、インド国内で透析装置を共同開 発することで合意した。メドトロニックがインド 医療機器市場、16 年度に 78 億ドル規模に拡大(10/4) で製品の開発を行うのは今回が初めて。両社は 2016 年の発売をめざし、 従来品と比べて 10~20% 会計事務所グラント・ソントン・インディアは国内 程度割安で性能面でも優れる製品の開発に取り組 の医療機器・設備市場について、現在の 44 億ドル む。メドトロニックが研究開発施設を設立し、技 から 2014 年度には 58 億ドル、16 年度には 78 億 術面を主導する一方、アポロは病院経営で蓄積し ドル規模に拡大するとの予測を発表した。技術の てきた医療分野に関する知見を提供する。 8 8 Nov. 2013 Vol.38 米国でささやかれる「癌治療の危機」 治療方法の多様化が招く落とし穴 ――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ 世界的に見て、癌の患者数は年々増加する傾向 織の弊害から、患者を担当する複数の医師間で連 にある。早期発見や治療法の開発により死亡率の 携ができておらず、患者の全体的な健康状態を把 伸びは停滞気味だが、今年 9 月に発表された米国 握できないまま癌治療が行われることもある。こ 医学研究所(IOM)の報告では、米国の癌治療に のような連携不足は、CT や MRI などの検査の重 関する深刻な状況が指摘された。米国は、癌の専 複を招き、患者の金銭的・身体的負担を増加させ 門医の数や研究費が世界一を誇るにもかかわらず、 る要因にもなっている。 「癌治療の危機」に陥っているというのだ。 また、精神科などほかの診療科との連携不足も 具体的には、効果的な治療法がありながら、最 問題だ。長期入院患者の血中ビタミン濃度を調べ 新の治療法があまりに多様化しているために 1 人 たある研究によると、多くでビタミン C と D が不 の担当医では最適な治療法を網羅しきれず、治療 足しており、うつ病などの精神疾患を併発してい オプションを十分に患者に提示することなく、誤 た。そこで、彼らをビタミン C を摂取するグルー った治療が行われるケースが挙げられる。ほかに プと D を摂取するグループに分けて比較したと も、患者中心の治療やエビデンスに基づいた治療 ころ、C を摂取したグループはうつ病の症状が大 が行われていない、副作用の軽減が考慮されてい 幅に改善したという。メンタルヘルスは一見通常 ない、治療費が高額といった問題もある。 の「癌治療」とは直接関係ないように感じるが、 米国は、1971 年にニクソン大統領により「米国 実は癌治療に欠かせない要素の 1 つなのだ。 がん法」が制定されたことで、予防や治療を含む 癌対策に莫大な研究費を投入してきた。しかしな がら、癌による年間死亡数は 50 万人を超え、心 臓病に続き死因の第 2 位となっている。米国で癌 と診断された患者は 2012 年は 160 万人、2030 年 には 230 万人に増加すると予想されている。患者 が増加傾向にあるのに対して、癌の専門医は減少 しており、 患者と医師の比率は危機的状況にある。 ほかにも、日本と同じように米国で高齢化が進 んでいることも問題に拍車をかけている。高齢者 現在は情報化が進み、世界中の治療計画やベス は癌治療と並行して高血圧や糖尿病の薬を摂取し トプラクティス(最も効果的な方法)をいつでも ている患者が多く、癌以外の専門医が、 「抗癌剤に 収集・参照でき、自ら活用できる時代である。患 より血糖値などが急激に上がる」といった癌治療 者も積極的に治療に介入し、医師とともに最適な 特有の副作用を把握しきれていない場合がある。 治療計画を考える必要がある。 さらに、抗癌剤の製薬メーカーが、臨床試験で癌 日本は、米国のように高額な医療費によって低 以外にいっさい病気を持たない 60 歳以下の患者 所得者層の治療オプションが極端に限られるとい を対象としている場合は、一般的な癌患者よりは うことはないが、高齢化で複数の疾患を持つ患者 るかに若い層のデータしかなく、高齢者に対する が増えていることには変わりないため、 「癌治療の 治療効果や安全性は万全とは言い切れない。 危機」に陥らないよう十分な対策を講じておく必 治療方法の多様化に加え、医療機関の縦割り組 要があるだろう。 9 Nov. 2013 Vol.38 The Academia Highlight アカデミア・ハイライト [ 38] 先進医療機器開発を突き動かす源 うのめ・たかのめ by 米国先進医療機器の主要団体・米国先進医 研究助成、ベンチャー企業育成ファンド助 療 技 術 工 業 会 ( AdvaMed ) が 主 催 す る 成、大手企業によるベンチャーの M&A が AdvaMed2013 が、9 月末に首都ワシントン し易い環境づくり等が上手く回転して、世 で開かれた。総会では、「新製品開発のイノ 界市場を視野に入れた製品が次々と生み出 ベーション促進」、「創業間もない駆け出し企 されている。最近では、革新的な機能を搭 業のアピール機会」、「新技術に対する規制作 載した心肺機能の補強訓練プログラムや、 り」といったセッションが設けられ、パネル 在宅医療向けモニタリングシステム等のソ 形式でオープン・コミュニケーションが図ら フトが開発された。 れていた。わが国にも医療機器の研究開発の さらに、各州が税制、資金提供に積極的 推進、安全性の向上や医療事故防止をめざす なことも製品化を後押ししている。特に全 日本医療機器工業会は存在するが、AdvaMed 米 7,000 社の医療機器メーカー(この 60% は 20 名以下の中小企業)の過半 4,000 社を の場づくりの巧みさは群を抜いている。 ことに、大小さまざまな医療機器メーカー 擁するミネソタ州は、創業や人材育成に至 の気鋭の CEO3~4 名が、参加者の関心が高 るまで手を貸し、事業環境や市場情報提供 いトピックスに関して、司会者の巧みな誘導 の整備に努めている。 で持論を戦わす“CEOs Unplugged Series” 翻ってわが国では、原理的には公知の高 頻度振動換気法の実用技術で米国国立衛生 は、「新技術の規制」から「スタートアップ 企業の経営」、「当工業会の明日の挑戦と機会」 研究所(NIH)の人工呼吸器コンペを獲得 した 1980 年代のメトランに始まって、世 といった幅広いテーマを扱い、いずれも満席 界に先駆けて「生体吸収性ステント」を製 状態で盛り上がった。 また、今大会で初めて設けられた「AdvaMed 品化した京都医療設計、金属部品メーカー 生 涯 功労 賞 」は 、ス ト ライ カ ー中 興の祖 で ながら独自の医療機器開発に挑み、 「リュー 2009 年まで会長であった John W. Brown 氏 ザブル単孔ポートⅡ」の上市を成功させた が授賞したが、その授賞講演は、社是に忠実 スズキプレシオン、この 3 月に薬事承認さ に従っただけと簡潔であった。 れた「内視鏡手術用ナビゲーションシステ AdvaMed は、新しい治療技術に対する規 ム」のパルステック工業など、ようやく中 制や標準化への取り組みにも積極的である。 小企業の活躍も目に付くようになった。し 再生医療の臨床応用では、米国はようやくそ かし、依然として大手医療機器メーカーが の 実 施へ 向 けて 本格 的 に動 き 出し たわが 国 積極的に製品化に加担する流れは出来てお の数歩先を歩み、昨年 8 月の時点で、皮膚・ らず、製品化は遅れ、成功事例は限られて 軟骨の 54 件以外に、神経・心血管・膵臓等 いる。 でも 34 件が治験中である。こうした FDA の 官主導の画期的な医療機器開発事業に寄 認可基準作りにも、この組織の不断の活動が りかかるだけでなく、チャレンジングなも 大きく貢献している。 のづくりにスピード感をもって挑める重層 的で自律的な仕組み作りが、今求められる。 米国では、技術シーズを生み出す大学への 10 Nov. 2013 Vol.38 Medical Device Daily 2013/10/1― 2013/10/31 ( ) Diagnostics 用の圧力センサーデバイス「Verasense」の CE マークを取得し、欧州で発売する。 Verasense は、人工膝関節のインサートの形を CDx Diagnostics 社の したディスポのデバイスで、内蔵した圧力センサ 食道粘膜の 生検デバイス WATS3D ーにより術中の人工膝関節や周辺組織への負荷を 測定し、ワイヤレスでパソコンにデータを送信す 2013 年 10 月 21 日 る。画面では負荷の状態が色で表示されるので、 医師は人工膝関節の安定性をリアルタイムで確認 バレット食道の治療にアブレーションを用いる できる。偏った負荷がなくなり、前後左右のバラ と、胃と食道の接合部周辺で腸上皮化生が再発す ンスが取れた時点で、通常のインサートと入れ替 ることが多い。しかし従来の生検鉗子では採取で えて手技を完了する。 ストライカーの TKA 用インプラント「トライ きる範囲が限られるため、見落としの問題があっ アスロン」もしくは、バイオメットの「Vanguard」 た。 CDx Diagnostics 社の生検デバイス 「WATS3D」 と組み合わせて使用可能で、膝にかかる負荷を最 は、内視鏡で使用する細胞診ブラシと 3-D の解析 適化できるため、術後の痛みとインサートの磨耗 サービスからなる。一般的な生検鉗子が点でサン を軽減し、インプラントの安定性向上に効果があ プルを採取するのに対し、WATS3D はブラシ部分 る。今年 6 月に市販前届 510(k)を完了し、米国で が回転しながら上下に動くため、1 度に広範囲の は発売している。 サンプルを絡め採ることができる。サンプルは CDx 社のラボで解析され、異形成や化生細胞が識 別される。市販前届 510(k)は完了している。 バレット食道を治療した患者 33 人を対象にし た試験では、従来の生検鉗子と WATS3D を使用 (http://www.orthosensor.com/) した生検を行い、 腸上皮化生の検出率を比較した。 その結果、従来の生検で検出できたのは 6 人だっ Tyber 社の たのに対し、WATS3D では倍の 12 人と優れた検 チタンでコーティングした PEEK 製椎体間スペーサー 出率を記録した。 (http://www.cdxdiagnostics.com/) 2013 年 10 月 17 日 Orthopedics Tyber Medical 社 が 、 椎 体 間 ス ペ ー サ ー 「Interbody Spacer」シリーズの市販前届 510(k) OrthoSensor 社、 を完了した。 人工膝関節の圧力センサー VerasenseのCEマークを取得 同社の PEEK 製スペーサーは、椎体終板と接す る面にチタンパウダーを溶射する独自の加工技術 2013 年 10 月 7 日 「TyPEEK」を用いている。これにより、PEEK OrthoSensor 社は、全人工膝関節置換術(TKA) の癒合性を実現している。腰椎後方椎体間固定術 素材の持つ生体適合性と X 線下の視認性、チタン 11 Nov. 2013 Vol.38 (PLIF)用、前方椎体間固定術(ALIF)用、経 Carmat 社(仏)は、全置換型人工心臓システ 椎間孔進入椎体間固定術(TLIF)用などがあり、 ム「Carmat Heart」の CE マーク取得をめざし、 さまざまなアプローチ法で使用できる。 FIM 試験(初めてヒトを対象として行う臨床試験) を実施する。 (http://tybermedical.com/) Carmat Heart は、人工心臓本体と体外式のバ ッテリーパック、 モニタリング装置で構成される。 京都大学の CiRA、 ヒトの皮膚細胞から 軟骨様細胞へ直接変換に成功 本体は、立つ・横になるなど患者の動きや姿勢を 感知して、血圧や血流を調整する機能を備えてい る。また、内部の弁やポンプ部分はウシ由来の組 2013 年 10 月 24 日 織で作製しているため、生体適合性が高い。耳の 上部に本体と有線接続されたポートを装着し、バ 京都大学の iPS 細胞研究所(CiRA)の妻木範 ッテリーやモニターと接続することで、電力供給 行教授や、元 CiRA 王谷英達研究員らの研究チー とデータ通信を行う。リチウムイオンのバッテリ ムは、ヒトの皮膚線維芽細胞から、iPS 細胞を経 ーパック 2 本は専用のホルダーで肩から掛け、最 ずに軟骨細胞様細胞へと直接変換すること(ダイ 大 12 時間の連続可動が可能だ。腰に装着するモ レクト・リプログラミング)に成功した。これま ニターは、患者情報を表示できるうえ、自動的に で、マウス皮膚線維芽細胞ではダイレクト・リプ 医師にデータを転送してくれる。 ログラミングに成功していたが、今回は、ヒト皮 臨床試験は、フランスの 3 病院で 4 人の患者を 膚線維芽細胞に 3 つのリプログラミング因子 対象に行われる予定で、心臓移植へのブリッジ用 (c-MYC, KLF4, SOX9)を導入することにより、 として、植込み後 1 カ月の生存率を評価する。 軟骨細胞様細胞を直接誘導できることを証明した。 誘導された軟骨細胞様細胞は、軟骨細胞の遺伝 子パターンを示しており、線維芽細胞特有の遺伝 子パターンは消去されていた。また、免疫不全マ ウスに移植したところ、軟骨組織を形成し、奇形 腫など腫瘍の発生は確認されなかった。 ダイレクト・リプログラミングは iPS 細胞を使 う方法よりも短期間で軟骨細胞が得られ、生体内 で局所的にリプログラミングを誘導することへの 道が開ける。今回用いた方法では、腫瘍化に大き (http://www.carmatsa.com/) な影響を与える遺伝子導入を行っているため、ヒ トの治療に応用するためには、遺伝子導入ではな Endotronix 社の く化合物等を用いてリプログラミングを誘導する 肺動脈圧 モニタリングシステム 技術を開発する必要がありそうだ。 (http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/) 2013 年 10 月 10 日 Cardiology Endotronix 社は、うっ血性心不全(CHF)患者 Carmat 社が全置換型 人工心臓 Carmat Heart の 用の肺動脈圧モニタリングシステム「Endotronix 2013 年 10 月 8 日 ウェアからなる。カテーテルで肺動脈に留置され Care Management Solution」を開発している。 このシステムは、植込み型の肺動脈圧センサー 臨床試験を開始 と携帯電話大の無線スキャナー、分析用のソフト 12 Nov. 2013 Vol.38 るセンサーは非常に小さく、リードやバッテリー トランスカテーテル心臓血管治療学会(TCT) は必要ない。スキャナーを胸部に 20~30 秒かざ で、エドワーズライフサイエンスの経カテーテル すと測定でき、同時にセンサーに電力が供給され 大動脈弁留置術(TAVI)用デバイス「Sapien」 る。測定データはワイヤレスで医師のパソコンや の臨床試験を主導した Cohen 医師が、TAVI の普 スマートフォンへ送られ、即座にソフトウェアで 及状況について語った。償還価格は普及に大きな 分析される。患者の肺動脈圧が異常値を示した場 影響を持つ要因の 1 つで、比較的高いドイツでは 合には警告が発せられるので、医師は早急にケア 普及率が TAVI の対象となる患者全体の 26%程度、 を行うことができるという。 低いポルトガルでは 1.8%と大きな差がある。 CHFでは早期発見が予後改善に直結するため、 この現状に対し Cohen 医師は、 「TAVI は高く 自宅で使用できるモニタリングシステムは有用性 つくと思われているが、費用対効果は薬物療法と が非常に高いと考えられる。同社は現在、市販前 変わらない」とアピールする。TAVI の手術にか 承認(PMA)の取得をめざしている。 かる費用は 8 万ドルで、獲得生存年は 1.6 年。つ まり、5 万ドルで寿命を 1 年延ばすことができる。 (http://endotronix.com/) また、1 年間のフォローアップにかかる費用は、 薬物療法が 5.4 万ドルなのに対し、再入院率の低 アボットが MRの 治療デバイス MitraClip の 市販前承認を取得 い TAVI は 2.9 万ドルと、TAVI に軍配が上がる。 開胸手術ができない患者にとって、TAVI はほ かの治療法と比べて費用面で遜色はなく、QOL 面で優れているという。技術が発展して TAVI を 2013 年 10 月 28 日 受けた患者の平均余命が延びれば、さらに費用対 アボットは、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の治療 効果は高くなる。長期的な費用対効果が明らかに デバイス「MitraClip」の市販前承認(PMA)を なれば保険適用の幅も広がり、TAVI の普及を後 取得した。今年 3 月には FDA の諮問委員会が承 押しするだろう。 認見送りを勧告し、承認される可能性は低いと見 られていただけに、アナリストのなかには驚きが DES と BVS の 広がっている。MitraClip はすでに CE マークを 最新臨床試験結果 取得し、欧州では年間 1.5 億ドルを売り上げてい 2013 年 10 月 29 日 るため、市場規模の大きい米国では、年間 5 億ド ルの売り上げが期待できるとの予想もある。 MitraClip は、経皮的に僧帽弁前尖と後尖をク トランスカテーテル心臓血管治療学会(TCT) リップで留めて MR を治療するデバイス。入院期 で、薬剤溶出ステント(DES)や生体吸収性スキ 間は 2~3 日と短く、早期回復が見込めるうえ、 ャフォールド(BVS)を開発する各社が臨床試験 低侵襲なため今まで手術が行えなかった患者を治 の結果を発表した。 療できる可能性が広がる。同社は、MitraClip の (1) Arterial Remodeling Technologies 社(仏) 治療効果を評価する市販後調査を欧米で行ってお ART 社の冠動脈と末梢血管用の BVS「ART’s り、治療範囲の拡大や保険収載をめざす。 bioresorbable stent」はポリ乳酸製で、1~2 (http://www.abbottvascular.com/) 年で生体に吸収される。30 人を対象にした試 TAVI の普及を左右する 験で留置後 30 日の治療効果を評価したとこ 2013 年 10 月 29 日 療効果を評価する予定という。 ろ、血管の再狭窄率は 4%と低く、有害事象 費用対効果 もなかった。今後は留置後 1 年の長期的な治 (http://www.art-stent.com/products.php) 13 Nov. 2013 Vol.38 だ。次に、取得した画像データを iScreen Vision (2) Micell Technologies 社 社に送ると、LED の光が眼球に反射するパターン 「MiStent SES」は、シロリムスと生体吸収 性ポリマーをコーティングした DES。ポリマ が分析され、24 時間以内に測定結果が医師にメー ーは 3 カ月で生体に吸収されるが、シロリム ルで返信される。この結果を参考に、医師は小児 スの効果は最大 9 カ月持続するため、ポリマ の視力障害を早期に発見できる。 ー曝露による炎症と、再狭窄を抑制できる。 臨床試験では、留置後 8 カ月と 18 カ月で遠 隔期内径損失に変化はほとんど見られなかっ た。また、非吸収性ポリマーを使用したメド トロニックの DES「エンデバー」と比較した 別の試験では、2 年間の有害事象発生率はエ ンデバー群 13.3%に対し、MiStent 群 6.7% となり、安全性が示された。今年 6 月に CE マークを取得しているが、米国では未承認だ。 (http://www.iscreenvision.com/) (http://www.micell.com/pipeline/mistent.asp) Oncology (3) Reva Medical 社 冠動脈用の BVS「ReZolve 2」は、生体吸収 前立腺癌の診断には CEUS が有用!? 性のポリカーボネートに、シロリムスを溶出 するポリマーをコーティングしている。65 人 2013 年 10 月 7 日 の患者で留置後 30 日のフォローアップを行 ったが、虚血性疾患や心臓発作などの有害事 象はなかった。同社は最終的には試験に 125 前立腺癌の診断には、MRI や超音波診断、血液 サンプルから測定する PSA(前立腺特異抗原)検 人を組み入れ、CE マーク取得をめざす。 査が用いられてきたが、造影が不十分だったり、 (http://www.teamreva.com/) 偽陽性が出たりすることがあった。また、より正 Ophthalmology 確な CT や PET による検査は高価なうえ、患者が 被曝するというデメリットがあった。このような なか、放射線を使わない造影超音波検査(CEUS) iScreen Vision 社の が前立腺癌の診断に有用であるという調査結果が 小児用視力検査デバイス International Contrast Ultrasound Society の年 iScreen 次集会で発表され、注目を集めている。 CEUS は、特殊な造影剤を使用することで鮮明 2013 年 10 月 10 日 な画像を得られる超音波検査で、低価格ながら、 iScreen Vision 社は、従来の視力検査表を使う 従来の超音波診断、MRI、PSA 検査よりも精度の 方法よりも短時間かつ簡単に検査ができる小児用 高い検査が行える。また、CT や PET のように被 の視力検査機器「iScreen」を開発している。 曝の心配がないため安全に診断できる。 iScreen は、カメラに画像確認用のモニターと 承認済みの CEUS の造影剤には、Lantheus 情報入力用のキーボードを備えた小型機器で、生 Medical Imaging 社の「Definity」や、GE ヘル 後 6 カ月から使用できる。まず、患者の瞳孔を開 スケアの「Optison」があるが、米国では心臓用 くため1分間暗室に入れた後、患者から 1 メート に限定されている。すでに欧州ではほかの臓器へ ル離れて本体の LED ライトを点灯させ、眼球の の使用も認められており、米国での適用拡大が待 画像を撮影する。撮影にかかる時間はわずか数秒 たれる。 14 Nov. 2013 Vol.38 与えることで舌筋の緊張を保ち、気道を確保でき 肺小結節の悪性度を識別する Integrated 社の 血液検査キット Xpresys Lung る。施術時間は約 1 時間で、設定変更や本体の充 電は体外式のコントローラーで行う。CE マーク を取得している。 2013 年 10 月 17 日 Integrated Diagnostics 社は、良性肺小結節を 識別できる血液検査キット「Xpresys Lung」の臨 床試験結果を発表した。 Xpresys Lung は、血中タンパク質の量から肺 小結節が肺癌になるリスクを識別する、非侵襲的 (http://imtheramedical.com/) な診断法。371 種類の肺癌のバイオマーカーを指 標に、質量分析計を用いた多重反応モニタリング イノベーションサミットの 革新技術コンテスト によって、精度の高い検査を行うことができる。 肺癌もしくは良性肺小結節患者 104 人の血液サン 2013 年 10 月 15 日 プルを用意した臨床試験では、良性肺小結節の診 断精度は 90%以上と良好だった。 肺小結節は、画像診断で良性・悪性を見極める クリーブランド・クリニックが主催するメディ のは難しく、侵襲性の高い生検や外科的手術によ カルイノベーションサミットの特別企画として、 る診断が行われてきた。そのため、低侵襲的な診 医療機器やアプリを開発するベンチャー企業を対 断法に対する期待は高い。 象とした革新技術のコンテスト「New Venture Healthcare Challenge」が開催された。予選を勝 (http://www.indidx.com/) ち抜いた 11 社のうち 3 社を抜粋して紹介する。 Other Products (1) Kinsa 社 「Smart thermometer」はスマートフォン(ス ImThera Medical 社の OSA 治療用神経刺激 システム aura6000 マホ)で体温を測定するシステムで、最優秀 賞に輝いた。イヤホンジャックに体温センサ ーを接続するだけで、一般的な体温計と同じ 2013 年 10 月 1 日 要領で測定を行える。アプリを使えば、結果 や測定時の症状を簡単なスタンプで記録・保 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療には、通常 存できる。また、SNS(ソーシャルネットワ 持続気道陽圧(CPAP)装置が用いられるが、マ ーキングサービス)機能により、地域や学校 スクを装着する煩わしさから治療の継続率は低い。 単位でグループを作り、グループ内の感染情 米国で 80 万人以上いるとされる OSA 患者のうち、 報や症状を共有することも可能だ。 継続的な治療を行っているのは 20%程度だ。 ImThera Medical 社は、この現状を改善すべく、 OSA 治療用の神経刺激システム「aura6000」の 治療効果と安全性を評価する臨床試験を、米国な ど 5 カ国で行っている。 aura6000 は、患者毎にプログラミングした小 さな刺激発生装置を鎖骨の近くに、リードを頸上 部に植込んで使用する。舌下神経に微弱な刺激を (https://www.kinsahealth.com/) 15 Nov. 2013 Vol.38 (2) WalkJoy 社 号を刺激にして患部にフィードバックする。この 歩行補助装置「WalkJoy」は、末梢神経障害 トレーニングを繰り返すことで、損傷していない で歩行に支障がある患者用で、バイブレータ 健康な脳組織に筋肉を動かす信号パターンを学習 ーを内蔵した本体をマジックテープで左右の させ、麻痺した部位の運動機能を再建できる。 トレーニングは自宅で行え、1 回 30 分間程度、 膝に固定して使用する。患者の足取りを検知 し、かかとが接地した瞬間に振動することで、 週に 3~5 日行うことで効果を得られるという。 患者の歩行感覚を再建できる。臨床試験では、 通常の脳卒中モードのほか、信号を識別する感度 歩行とバランスの感覚に改善が見られた。市 が 5 倍になる脊椎損傷モードがある。市販前届 販前届 510(k)は完了済み。 510(k)を完了し、CE マークも取得している。 (http://www.zynexneuro.com/) IMT 社の 下垂足リハビリ用ロボット Anklebot 2013 年 10 月 28 日 (http://www.walkjoy.com/) Interactive Motion Technologies(IMT)社は、 (3) AdhereTech 社 歩行補助ロボット「Anklebot」をマサチューセッ 錠剤を保存する「Smart pill bottles」は、内 ツ工科大学(MIT)と共同開発している。これは、 蔵のセンサーでボトル内の錠剤の残存数をリ 下垂足患者の膝上と靴にストラップを巻き、両方 アルタイムで検知し、データをクラウドに無 のストラップをモーター内蔵のアームで連結した 線送信して管理できる。また服薬時間になる システム。患者の歩行にあわせてアームが伸縮す と、携帯電話もしくはメールで知らせてくれ ることでつま先が上下し、リハビリが行える。 る。臨床試験では、服薬遵守率が約 60%から 脳卒中の一般的な後遺症である下垂足は、前脛 90%に改善されたという。米国では未承認。 骨筋や長・短腓骨筋が収縮することで足首が垂れ 下がり、歩行が不安定になる。Anklebot でリハビ (http://www.adheretech.com/) リを継続すれば、足首周辺の収縮した筋肉がほぐ れ、背屈(つま先を足の甲の方向へ曲げること) 中国で薬事承認を取得した Zynex 社のリハビリ用 デバイス NeuroMove 能力を回復できるという。 米国では今後、ベビーブーマーの高齢化が進む につれて脳卒中患者が増え、後遺症のリハビリに 2013 年 10 月 28 日 対するニーズが高ま ると見られている。 Zynex 社は、脳卒中や脊椎損傷による麻痺患者 Anklebot は現在、リ のリハビリ用デバイス「NeuroMove」について、 ハビリセンターを中 中国国家食品薬品監督管理局(CFDA)の薬事承 心に使用されている 認を取得した。 が、同社は家庭用の NeuroMove は、パッチ型のセンサー兼刺激用 廉価版の開発にも着 手している。 電極と、筋電図モニターを搭載した本体からなる デバイス。麻痺した部位に電極を貼り付け、患者 が患部を動かすように意識すると、NeuroMove が 筋肉を動かそうとする脳の信号を検知し、その信 (http://web.mit.edu/newsoffice/) 16 Nov. 2013 Vol.38 M&A ジアで独占的に販売する。 ReWalk は下半身麻痺の患者用で、下肢にモー ターを組み込んだロボット義肢を装着し、コント セント・ジュード、 リードレスペースメーカを 開発する Nanostim社を買収 ローラーやバッテリーを搭載したバックパックを 背負って使用する。筋電位センサーではなく、使 用者の重心位置を検出して歩行を補助するアルゴ 2013 年 10 月 15 日 リズムにより、自然な歩行を実現している。 今回の提携により安川電機は、日本・中国・シ セント・ジュード・メディカルは、リードのな ンガポール・台湾・タイ・韓国で ReWalk を販売 いペースメーカを開発する Nanostim 社を 1.24 する権利を獲得した。日本では 2014 年から病院 やリハビリ施設で試験的に販売し、2015 年から本 億ドルで買収する。 Nanostim 社のペースメーカは、全長 18mm 以 格的に個人向けの販売を開始する予定という。 下の円筒状で、大腿静脈からカテーテルで右心室 に挿入され、一端にあるコイル状のアンカーで右 心室内に直接固定される。断線やずれといったリ ードに起因する合併症を防止できるうえ、本体を 格納するポケットを作る必要もない。バッテリー の寿命は 9~13 年で、簡単に回収できるため、交 換や位置の変更もスムーズに行える。 臨床試験では、非常に小型であるにもかかわら ず、従来品と同等のペーシング性能があることが 判明した。手術時間は平均 28 分と短く、患者へ の負担が少ない外来手術で行える。最近 CE マー (http://rewalk.com/) クを取得し、 セント・ジュードは欧州での発売準備 を進めている。米国でも承認取得に向け、来年か テルモ BCT 社、血液製剤の 病原体除去装置 Mirasol で 大型契約を受注 ら臨床試験を開始する予定だ。 2013 年 10 月 22 日 テルモ BCT 社は、血小板・血漿分画製剤の病 (http://sjm.com/corporate/media-room/) 原体を減らす「Mirasol System」について、米国 Agreement&Contract 国防総省から最大 2,990 万ドルの費用分担契約を 受注した。これにより同社は、戦場での緊急輸血 で使用できるよう、全血処理用に Mirasol を改良 安川電機が Argo 社の ロボットスーツ ReWalk を アジアで販売 し、市販前承認(PMA)取得をめざす。 Mirasol は、血液製剤中の免疫反応を起こす白 血球、HIV・ウエストナイルウイルスなどの病原 2013 年 10 月 3 日 体、バクテリアなどを不活性化できるシステム。 血液製剤にリボフラビンを加えて装置に入れ、紫 外線を 5~10 分照射すれば作業は完了する。血液 工業用ロボットを手がける安川電機は、Argo Medical Technologies 社 (イスラエル) と提携し、 はそのまま輸血に使用できるほか、 貯蔵も可能だ。 Argo 社の歩行用ロボットスーツ「ReWalk」をア (http://www.terumobct.com/) 17 Nov. 2013 Vol.38 Global Market とで製品価格を下げ、医療費を抑制する狙いがあ る。流通する医療機器の約 6 割が輸入品である韓 国は、海外メーカーとの取引にも意欲的だ。今回 ボストンが上海に イノベーションセンターを開設 の規制緩和は、国内メーカーの振興に役立つだけ でなく、韓国に進出していない海外メーカーにと 2013 年 10 月 3 日 って参入の大きなチャンスになる。 ボストン・サイエンティフィックは、医療機器 社によると、韓国の医療機器市場は 2012 年で 39 市場が年々拡大する中国での教育や製品開発の拠 億ドル、 アジア 3 位の規模に成長している。 また、 点となる「Institute of Advancing Science(IAS)」 韓国は 80 年代に急成長した「アジアの虎(香港・ と「Innovation Center」を上海に開設した。 シンガポール・韓国・台湾) 」のなかで最も医療支 コンサルティング会社 Pacific Bridge Medical 出が多く、高齢化も進んでいることから、今後 5 IAS は、年間 700 人以上の中国人医師を受け入 年間は 2 桁成長を続けると見られている。 れ、医療領域について幅広く臨床トレーニングプ ログラムを提供する。実技の研修だけでなく、専 Market Prospect 門家による講義や複雑な疾患に関するシンポジウ ムなど、学術的なプログラムも提供する予定だ。 Innovation Center では、ボストン製品のフィー PwC が語る ドバックを医療機関から収集し、市場にあった製 品作りに活用する。 同社の 2013 年第 2 四半期の売り上げの 29%は、 中国・インド・ブラジル・ロシアの 4 カ国が占め ている。特に中国の売り上げは、5 年前と比較し 医療機器業界の将来像 2013 年 10 月 24 日 プライスウォーターハウスクーパース(PwC) て 25%も増加しており、今後も継続的な成長が期 は医療機器業界について、医療機器メーカーは過 待できるという。競合メーカーであるメドトロニ 去数十年にわたり革新的な製品を発表し続け、医 ックも昨年 8 月、 開発拠点を上海に設立しており、 療におけるイノベーションの牽引役となっていた ジョンソン・エンド・ジョンソンは今年中に上海 が、ここ数年は革新的な技術の登場が減り、費用 に開発センターを設立する予定だ。 対効果が釣りあわない新技術が多いとするレポー トを発表した。PwC は今回のレポート作成に際し、 Administration 50 を超える医療機器メーカー、医療機関、保険会 社などにアンケート調査を実施した。その結果、 メーカーの 64%が「革新的技術の開発がメーカー 韓国の医療機器規制、 一部緩和へ 間の競争力に直結する」と回答したのに対し、医 療機関や保険会社は、 「低価格で治療効果の高い製 2013 年 10 月 21 日 品を求めている」と回答したという。 韓国の食品医薬品安全処(MFDS、旧:KFDA) める技術革新の間にはギャップがあり、メーカー は、4 段階ある医療機器認証分類のうち、クラス はニーズを再調査する必要がある。また、単に最 I(潜在的危険性がほとんどない医療機器)の規制 新技術を盛り込んだ機器だけがイノベーションで を緩和した。今後は適正製造規範(GMP)の認証 はないことをメーカーが理解しなければ、業界の 取得および 3 年毎に行う GMP の更新が不要にな さらなる発展は期待できない」と指摘している。 この結果を受け PwC は、 「メーカーと市場の求 るため、メーカーは製品技術文書を提出するだけ で、迅速に製品を販売できるようになる。 編集部注:本社所在地が米国の企業は、国名記載を省略し ています。 韓国政府には、申請にかかるコストを抑えるこ 18 Nov. 2013 Vol.38 Kawanishi Hotline 前号の Medical Device Daily から、カワニシグループの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。 神経再建用素材を開発する AxoGen 社〈9/12〉 メドトロニック、リードのない ペースメーカを開発中〈9/5〉 ブタ由来の神経保護・再建用素材「AxoGuard」 には、筒状の「Nerve Connector」とシート状 の「Nerve Protector」があり、1 年半室温で保 管できる。ヒト由来の神経移植用組織「Advance Nerve Graft」は、-40℃で 3 年間保存できる。 チタン製のカプセル型ペースメーカで、大きさ は約1立方センチメートル。リードの替わりに 本体表面に電極があり、心臓に直接取り付ける。 バッテリーの寿命は10年。ヒトに使用する臨床 試験は、今年後半に開始される予定。 • 現在市場に出回っている、東洋紡製造、泉工医科 • 現行のペースメーカはリードが必須であり、リー 工業が販売代理店の神経再生誘導チューブ「ナー ド断線等の不具合や植込みによるデバイス感染 ブリッジ」の競合品。ナーブリッジは 7 月に保険 のため、全システムを抜去して再植込みとなるケ 適用されたばかりで、臨床成績などはまだ出てい ースも少なくない。リードレスペースメーカはこ ないと聞いているが、ドクターの注目度は高い。 のような現状を根底から変えるコンセプトであ 自家神経移植のように健常な部位の神経を採取 り、その登場は衝撃的である。リードにともなう する必要がなく、患者の負担軽減や早期社会復帰 トラブルを回避できるだけでなく、傷痕が小さく、 につながるうえ、手術時間の短縮も期待できるか 本体植込み部分の皮膚のふくらみもなくなるの らだ。特別な手術器具も必要なく、開業医でも扱 で、整容性の面で特に女性に喜ばれる製品だ。し える手軽さも魅力。AxoGen 社の製品はナーブリ かし、右心室の心尖部に植込むことになるため、 ッジよりも形状やサイズバリエーションが豊富 右室心尖部ペーシングを極力回避することが望 なため、選択の幅も広がるのではないか。ただ、 ましいとする風潮を考慮すると、症例によって使 ヒト由来の人工神経は、保存期間が-40℃で 3 い分けはなされるだろう。現行システムの機能す 年と管理が大変そう。ナーブリッジと同等の償還 べてを備えていないことも、使い分けにつながる。 価格がつけば、ボリュームもおおいに期待できる。 市場ボリュームで言えば、適応拡大ではないため ドクターへの紹介がしやすく注目を集めやすい 増加はあまり期待できない。(松井) • 手技の手間や患者への侵襲度、合併症のリスクを 製品なので、国内導入の際にはいち早く情報を提 供できるようにしたい。(若江) 考えると、リードがないことはたいへんメリット • ナーブリッジの引き合いは比較的あるようで、 が大きい。また、現在は植込み後の腕の可動範囲 採用する施設も増えてきている。388,000 円の償 に制限があるが、それも回避できるだろう。将来 還価格がついているため、使用に際してのドクタ 的には全メーカーがリードレスの方向へ向かう ーの抵抗も少なそう。ある程度の症例数は見込め、 のではないか。不整脈の専門医からも、「非常に 今後も増える見込みは十分にあると予測される。 期待している。交換や抜去方法等、情報がもっと 従来は神経縫合術が主流だったこともあり、神経 ほしい」と言われている。競合としては、セント・ の欠損部の再生という治療は、国内ではナーブリ ジュード・メディカルが同様のペースメーカを開 ッジが独占状態。競合製品が出てくれば、 ノウハ 発する企業を買収しており、日本への上市のタイ ウの蓄積やコストダウンが期待できる。特に、ナ ミングによってはメドトロニックの独占状態に ーブリッジは岡山では商権がないため、AxoGen はならないかもしれない。(松本) 社の動向は非常に気になる。(原田) 19 Nov. 2013 Vol.38 NeoTract社の革新的な 前立腺肥大治療システムUroLift〈9/26〉 注目のデバイス関連記事を ピックアップ!(未掲載記事より) 尿道からアプローチし、前立腺にH型のワイヤー インプラントを貫通させて尿道を広げた状態で 固定するシステム。前立腺を残すので術後の回 復も早く、後遺症の発生も抑えられる。 ■ Integra LifeSciences Holdings 社の リバース型人工肩関節「Titan System」〈9/24〉 通常の肩関節置換術とは逆に、肩甲骨側にヘッ ドを、上腕骨側のステムにインナーとソケット を取り付ける。肩の可動範囲を向上できるだけ でなく、消耗品交換時の手術が容易。市販前届 510(k)は完了済み。 • 前立腺肥大症は、80 歳までに 80%以上の日本人 男性がなると言われるくらい多い疾患であり、市 場はかなり大きいと思われる。経尿道的前立腺摘 除術(TURP)が標準的治療として確立されてい • リバース型がようやく国内でも普及しよう るが、 「UroLift」は前立腺を切除しなくてよいう としており、いろいろ使用してみたいと思っ ている肩専門のドクターもおられるようだ。 適応症例は少ないものの、新規施設の取り込 みなどには有用かもしれない。(若江) え早期回復が見込め、術後 1 週間程度で社会復帰 が可能という点で、患者 QOL がかなり高い治療 法といえる。また、従来の外科的治療よりも手技 が容易で手術時間が短く、出血や失禁、勃起不全 といった後遺症が少ないので、十分市場に割って ■ Sharklet Technologies 社の薬を使わな 入る力を備えている。レーザー手術(HOLAP、 い抗菌フィルム「Sharklet」 〈9/10〉 HOLEP、PVP など)が新しい治療法と言われな サメ肌を模して表面に小さなリブ模様のひし型 がらもなかなか普及しないのは、機械の高さや手 をちりばめた保護フィルムで、90%の抗菌作用 がある。製品の表面に貼付するほか、直接製品 技の難しさなどがネックになっていると思われ、 UroLift がこれらの問題をクリアできれば最適な の表面にこのパターンを施すこともできる。ク ックメディカルは、同社の技術を使用したフォ 治療方法となれるだろう。(河野) • TURP に代わる新しい手技ということで、術後の ーリーカテーテルを開発中。 経過が良ければ、今後適応が増えるのではないか。 ディーラーとしては、症例毎にディスポ製品が使 用される点が魅力的。(間中) メドトロニックが人工膵臓MiniMed 530Gの市販前承認を取得〈9/30〉 • シリコン、シルバーに続く抗菌素材。シルバ ー加工品は高価なため、価格次第では普及率 が高くなる可能性もある。ただ、バルーンの ような軟質な素材へのコーティングができ るのか、償還内に収まる価格帯で実現できる のかが気になる。(中井) ■ Entellus Medical 社の慢性副鼻腔炎用 持続血糖モニターと完全自動制御のインスリ ンポンプを組み合わせたシステムで、低血糖を 防止する機能を備えている。グルコースセンサ ー「Enlite」は、従来品より 69%も小型化され、 血糖値の測定精度が 31%向上している。 デバイス「XprESS」 〈9/12〉 先端部に LED 照明を搭載した副鼻腔炎の炎症を ドレナージするためのバルーンカテーテル。光 源装置は不要で、バルーン拡張用のシリンジポ ンプや吸引・灌流機能も備えている。 • 周術期や救急・集中治療部門においても血糖管理 • 「XprESS LoProfile Multi-Sinus Dilation Tool」は、1 台でドレナージ、吸引、還流、 観察が行える非常に便利なデバイス。もしレ ントゲンを撮らずに済むのであれば、検査代 の削減にもつながるだろう。(河野) の重要性は年々増してきている。現在、日本でグ ルコース注入まで行える人工膵臓を持つのは日 機装のみだが、デバイスが大きく携帯は不可能。 今後「MiniMed」にグルコースの自動注入機能が 加われば携帯型としては唯一の製品になり、市場 の急拡大も期待できるだろう。(眞壁) ※〈 〉は MDD の配信日、 ( )内は回答社員の名字 20 Nov. 2013 Vol.38 [出典紹介] MDD (Medical Device Daily) トムソン・ロイター HRM (Healthcare Risk Management) AHC Media LLC 医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録したデイリーニュース。 医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、FDA、新製品、VIP インタビュー等。 医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。 CMA (Case Management Advisor) 入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわるさまざまな問題やその解決方法を収録。 HCM (Hospital Case Management) 病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、成功/失敗事例の紹介。 SDS (Same-Day Surgery) 感染症コントロールから償還、コスト削減策まで、日帰り手術の効果と安全性を高める情報を幅広く収録。 HEH (Hospital Employee Health) 安全機能付き器材、感染管理、危険有害性など、医療従事者の安全と健康を維持するための情報を提供。 アドバイザリー・スタッフ――メリー・コーベット/宇野恵裕/福山健/前島達也 エディトリアル・スタッフ――佐藤崇/海野裕美/岩田斐/宮長夕紀/岡山大学 MESS/三宅優美 デザイン・フォーマット制作――川畑博昭 Medical Globeの定期購読はこちらから Medical 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