汚染防止の仕上げ? – ワシントン州が新たな法律を制定

汚染防止の仕上げ? – ワシントン州が新たな法律を制定
Perfecting pollution prevention? – The State of Washington enacts a new statute
海洋汚染に関する法律や規則の制定について、米国では州ごとにその取り組み姿勢が異なりますが、
ワシントン州はその中で最も積極的に活動している州の一つとなっています。
この新しい法律には以下の内容が含まれます。
– 原油流出の発生から数時間以内に対応可能な
ように準備することを主目的とする、タンカー
のコンティンジェンシープラン条項の強化(3
年ごとの大規模装置の配備を含む)。今後、環
境保護省から 5 年ごとに新計画基準が発表され
ます。まずは、タンカーに関する基準が 2012
年 12 月 31 日までに示される予定です。
– ワシントン州環境保護省は、流出原油の浄化
各州に独自の海洋汚染にかかる法律と基準(法
活動への参加を希望する多くの市民ボランティ
的限度の範囲内で)の制定を明確に認めた 1990
アに対応し、そのボランティアの活動に関して
年の米国油濁法(OPA 90)の成立以降、ワシン
州に免責を与えるためのボランティア調整シス
トン州は、他州に先駆けて、いわゆる「最も達
テムを構築することが求められる。このシステ
成可能な汚染防止」手法(Best Achievable
ムの目指すところは、2007 年のサンフランシス
Protection(BAP))を組み入れ、船舶の人員配
コにおける「Cosco 釜山」重油流出事故の際、
置、タンカーの設計・建造、修理、運航などを
カリフォルニア州が策定したボランティア対応
対象とする、独自の包括的な規則体系を導入し
に関する規則と同様のものです。新しい法令は、
OPA 90 の強化に動きました。しかし、この広
ボランティアに関することだけでなく、釣り用
範囲にわたる規則体系については、米連邦政府
ボートなどの VOO(Vessel of Opportunity)を原
の規則領域にまで踏み込んだものであり容認で
油流出の復旧作業に活用できるようにすること
きないこと、他州との間に深刻な相違が生じる
を盛り込むことも求めています。直近ではルイ
こと、遵守のための費用がかかり過ぎて実質的
ジアナ州沖の「ディープウォーター・ホライズ
に不可能であること、などの理由から業界の反
ン」事故において、小型船舶が原油流出対策と
発を招きました。2000 年 3 月、国際独立タンカ
して大きな役割を果たしことが確認されていま
ー船主協会(Intertanko)は、ワシントン州の
す。
11 の規則を実質的に憲法違反とする、米最高裁
判所の判決を勝ち取りました。これを受け、同
– 海上での緊急事態、油流出、あるいは流出の
州は同年 6 月にこれらの規則を撤廃することと
おそれが生じた場合、米湾岸警備隊に加えて、
なりました。
ワシントン州環境保護省に対しても、その発生
から 1 時間以内に報告を行わなければならない。
ただし、それ以降も、ワシントン州政府は、定
同様の規定は、すでに他のいくつかの州政府で
期的に法律に抵触しない汚染防止規則を発令し
施行されています。
ています。2011 年 4 月、州議会はタンカーに対
する最新の規則案を可決し、州知事の署名を得
– ワシントン州は、コンティンジェンシープラ
て成立にこぎ着けました。これらの法律は、
ンの提出後 65 日以内に承認の可否を決定し、
2011 年 7 月 22 日に施行されます。
通知しなければならない。
20
Perfecting pollution prevention?
– The State of Washington enacts a new statute
Gard News 203 August/October 2011
– ワシントン州法では、現在のところ、タンカ
ー船とタンカー以外の船舶において、それぞれ
の計画の使用が認められているが、包括計画で
はその両方の船舶の最大流出量を勘案し、それ
に対応可能な装備を備えなければならない。
– 事故に対して課せられる州の罰金額は 3 倍と
なったが(1,000 ガロン以上の流出については、
1 ガロン当たり 3~300 米ドル)、流出後 48 時
間以内に回収された油は、流出量から差し引か
れる。
これらの法律は、米国最高裁判所が州法に対し
て設定した法的範囲内に収まっているようです。
したがって、ワシントン水域で航行する船舶を
所有するタンカー船の運航業者(およびタンカ
ーとタンカー以外からなる混合船舶の運航業
者)は、これらの法律に準拠するプログラムを
作成・実施する必要があります。また、今後、
動向に合わせて、プログラムの修正作業も必要
となるでしょう。
米国の他の沿岸州は、当然ながらワシントン州
の新しい法律に注目しており、自州の法律に含
まれていない条項については、追従してくる可
能性があります。このように、ある州が流れを
作り、やがて他州が追随し、最終的に全米に広
がり「新たな基準」となるのです。各州政府は、
連邦政府の汚染規則についても関心をもって注
視しており、それぞれの州の状況に合う形で採
り入れて、法律の強化を進めていくでしょう。
米国の海洋汚染対策については、各州が、他州
や連邦政府の法律を参考にしながら法の整備を
進めているのが一つの特徴であり、他州・連邦
政府の計画を注視し、柔軟に採り入れているの
も特徴です。海洋汚染対策に関する計画と規則
が大きく変化していく中、Gard では、引き続き
その動向を注視し、皆様への報告を行って参り
ます。
Perfecting pollution prevention?
– The State of Washington enacts a new statute
Gard News 203 August/October 2011