〈第26回山﨑賞〉 9 家庭から出る水やごみの研究 浜松市立富塚中学校 2年 永 田 豪 1.動 機 僕は、今年の夏、部活中足を骨折してしまった。そのためあまり動き回ることができず、家にいる時 間が増えた。それで食器洗いやゴミ出し前のゴミ集めの手伝いをしたが、 思ったよりも量(特にプラごみ) が多いことに驚いた。また、食器洗いの時に、 「この排水は今は下水から処理場のほうに流れていくけ れど、昔は全部佐鳴湖のほうに流れていったのかなあ?それはすごく水質汚染になるよね。 」と思った。 それで家庭から出る水やごみについて詳しく調べてみることにした。 ―様々な成分の液体が植物に与える影響について― <研究の目的> 毎日の食器洗いにかかせないのが、油汚れがきれいに落ちる台所洗剤だ。でも環境への影響は何もな いのだろうか?普段は使った洗剤をいとも簡単に流してしまうが、もし流れ出た洗剤が植物のもとへ流 れ着いたらどうなるだろうか?また環境に優しいと言われている無添加洗剤や、排水として流すことが 多い様々な液体や調味料は、植物にどのような作用を与えるのか?それらのことを、カイワレダイコン を使って、植物に与える影響の違いを調べてみた。 <方法> 下記の①~⑧までの物質でカイワレダイコンを育てる。 ① 濃度を変えた合成洗剤。 ⑧ 水道水 ② 濃度を変えた無添加洗剤 ③ 濃度を変えた食塩水・砂糖水・酢を混ぜた水 ④ 加える油の量を変え、それを水に注いだ液体 ⑤ 醤油・ケチャップ・ソース ⑥ 米のとぎ汁・牛乳のゆすぎ水・歯磨き粉の流水などの排水 ⑦ 米のとぎ汁をろ過したもの・佐鳴湖の水 <結果> (カイワレダイコンの5日後の様子) ⑴ 合成洗剤・10倍発芽せず 100倍全て発芽 1000倍全て発芽 ⑵ 無添加洗剤・10倍7つ発芽 100倍全て発芽 1000倍全て発芽茎は12㎝ ⑶ 食塩水・0.5%全て発芽茎は12㎝ 1.0%8つ発芽茎は5㎝ 2.0%発芽せず 3.5%発芽せず砂糖水・ 0.5%全て発芽茎は10㎝ 1.0%全て発芽茎は9㎝ 2.0%全て発芽茎は7㎝カビが生えた 3.5%9つ発芽 茎は1.5㎝カビが生えた 酢水・10倍発芽せず 100倍8つ発芽茎は1.5㎝カビが生えた 1000倍全て発芽茎は12㎝ ⑷ 油・10倍全て発芽茎は13㎝ 100倍全て発芽茎は11㎝ 1000倍全て発芽茎は12㎝ (水と油は分離 してしまった。 ) ⑸ 醤油・全て発芽茎は1.5㎝ ソース・ケチャップ・全て発芽したが、カビがかなり生えた。 ⑹ 米のとぎ汁・全て発芽茎は5.5㎝ 牛乳のゆすぎ水・8つ発芽茎は10㎝ 歯磨き粉・5つ発芽 −92− ⑺ 米のとぎ汁1回ろ過・全て発芽茎は9㎝ 2回ろ過・全て発芽10㎝ 3回ろ過・全て発芽茎は12㎝ 活性炭でろ過・全て発芽茎は13㎝ 佐鳴湖の水・全て発芽茎は11㎝ ⑻ 水道水・全て発芽茎は12㎝ <考察> ほとんどの液体は薄めると植物に与える影響が少なくなるが、洗剤や塩分はわずかな濃度でも成長に 影響がでることが分かった。だが洗剤は無添加洗剤にすることで、 植物への作用を抑えることができる。 また油は水と分離するので、植物は油を吸収しないことも分かる。他にも塩分を多く含む醤油などの調 味料は、特に影響が大きい。しかもその物質が食品で糖分を含んでいると、カビが生える確率が上がる。 これらの液体は水で薄めて流すのが普通だが、今回の実験だと1000倍に薄めるのには55ℓもの水を必要 とする。だから排水は十分にろ過してから庭の植物などに与えるのが一番良いだろう。そうすることで 環境汚染や水の無駄使いを防ぐことができる。 ―水の浄化を探る研究― <研究の目的> 前の実験から、僕たちは普段から自然に悪影響がある排水を流していることがわかった。そこでその 排水がどのくらい汚れているか疑問に思い、水の汚れを調べるCODパックテストを使って調べてみる ことにした。また排水をろ過することで、水に近づけることができるかも調べてみた。 <方法> ① 台所(料理) ・洗面所(洗濯) ・お風呂場(石鹸、バスタブの水)からでる排水を条件を変えてそ れぞれCODパックテストにかける。 ② 米のとぎ汁と佐鳴湖の水をそれぞれペーパーフィルターで3回ろ過する。ミョウバンと石灰粉末 を加える。この時リトマス紙の代わりに、実際にナスの皮で作ったpHを調べる指示薬を入れた。最 後に活性炭でろ過してそれぞれろ過したもののにおいや、黒の画用紙を使って汚れや色を比較する。 <結果1> 家庭から出る排水のCOD値 (水の中の有機物の多さ) 排水の 出た場所 調べた水の種類 水量 COD値 mg /ℓ 合成洗剤 1ℓ 300 無添加洗剤 1ℓ 240 水につける 1ℓ 230 ふき取る+水 1ℓ 190 3合 1000 台所 スパゲッティを 食べた後 米のとぎ汁 合成洗剤 洗面所 汚れた服 無添加洗剤 水につける 家族 4人分の 1日 −93− 80 70 40 お風呂場 シャンプー リンス ボディソープ 合成洗剤 500ml 100 無添加洗剤 500ml 90 合成洗剤 500ml 130 無添加洗剤 500ml 100 合成洗剤 500ml 25 無添加洗剤 500ml 20 <結果 考察> ⑴ COD値を測る実験から、油汚れがついているものや洗剤や石鹸類を使うことで、値が高くなった。 スパゲッティ皿以上に米のとぎ汁の値が1000で高いことは、意外だった。合成洗剤より無添加洗剤 のほうがCOD値が低い。 ⑵ 佐鳴湖の水や米のとぎ汁をろ過しただけでは、濁りは完全に取れなかった。しかし、ミョウバン を使うと濁りの元が凝集した。ミョウバンは、汚れている水の濁りの原因となっていた細かい浮遊 物を、凝集させる働きがあることが分かった。 石灰粉末を入れて、 酸性だった液を中性にすると、ミョ ウバンの浮遊物を凝集させる働きが強まり、凝集したものも沈殿しやすくなる。活性炭は水のにお いをとるのにとても効果があり、また、非常に細かい浮遊物や水の色を取り除く働きがあることも 分かった。 ―水面の油の性質と取り除き方の研究― <研究の目的> カイワレダイコンの実験で油を水で薄めた液を作っている時に、油分がペットボトルにくっついてし まい、すすぐのが大変だった。それで水と油を同時に混ぜた場合の油の特徴を調べてみることにした。 また大量の水を使ったり、洗剤を使って油を取り除く方法以外の、環境に優しい油汚れの除去の仕方を 調べてみた。他にも廃油とオルトけい酸ナトリウムを使ってリサイクル石鹸を作ることにも挑戦した。 <方法> 分離した水と油を混ぜる物質には、どんなものがあるかのかを調べた。またいろいろな油の水面での 広がり方を観察し、油を水で薄めたり、油に洗剤をたらしたときの変化を比較した。他にも水面の油や 容器に付着した油を様々なもので回収できるかを実験した。 <結果> ⑴ 油と水を混ぜ合わせるものは、レモン汁や牛乳などを様々試したが、洗剤のみであった。 ⑵ ごま油やラー油は水面での広がりが大きく、サラダ油や灯油などは中心で少し膨らんだが、広が らない。 ⑶ 油を125倍の水で薄めても油の粒は付着したままだった。 ⑷ 油に洗剤をたらすと無添加洗剤よりも合成洗剤の方が油の散る速さが速かった。 ⑸ 水面に広がった油は、新聞紙が一番油を吸い取った。容器に付いた油は、小麦粉をまぶして一緒 にふき取るのが効果的だった。 <考察> 合成洗剤や油を水で薄めるという方法は、とても油の除去には効果的だが、多量の洗剤を水に流した り、大量の水で油を薄めるのは、環境に大変悪いと思った。水面に浮いた油や食器にこびりついた油は、 あらかじめキッチンペーパーや新聞紙などでふき取ることで、水の量も洗剤の量もかなり減らせること −94− が分かった。他にも小麦粉や重曹を油にまぶしてふき取るといった方法もかなり油の除去に使えるので、 環境に優しいこれらの方法を進んで試していこうと思った。油は特にたくさんの量の水で薄めないと、 生き物が住むことができる水にならないので、少しでも油を流すようなことは食器洗い以外では絶対し ないようにしたいと思う。 ―二酸化炭素排出量・ごみの廃棄量調べ― <研究の目的> 私たちは、毎日様々なエネルギーや資源を使って生活している。しかしそれらの燃料やゴミなどを燃 やすことにより、二酸化炭素が発生する。そこで実際いったいどのくらいの二酸化炭素を僕のうちから 出しているのか?詳しく調べてみた。またコンポスト実験で生ゴミを減らせるかも調べた。 <方法> ① 我が家の電気・水道・ガス・灯油・ガソリンの使用量と、様々なゴミの廃棄量の1ヶ月分を調べ、 それを二酸化炭素排出量換算式にあてはめる。 ② リサイクルできるものや生ゴミ減量について考える。 (コンポスト実験) <結果> エネルギーの二酸化炭素排出量・232.4kg (1mの風船約242個分) ゴミの二酸化炭素排出量・30.32kg (1mの風船約32個分) ゴミからリサイクルできる物の値を抜くと(紙ごみ、生ゴミのみ)二酸化炭素排出量・約9.2kg(1m の風船約9個分に減らすことができた。 ) 今回はわずかだが、更にコンポスト実験によって155gの生ゴミを減らすことができた。 <考察> 実験によって、エネルギーによる二酸化炭素の排出量が一番多いことが分かった。ゴミの方は、リサ イクルできるものを抜くだけでも値が大幅に減った。またエネルギーの無駄使いや、生ゴミの廃棄を少 なくする事などを心がけていけば、更に地球温暖化を防ぐことができると思った。 <まとめ・感想> キッチンや洗面所、お風呂場から出る水は、今まであまり意識せずに流していた。でもこの自由研究 を終えてみて、排水口から流す前に「このままこれを流していいのかな…?」と意識するようになり、 無添加洗剤類をだいぶ家庭で使うようにもなった。また二酸化炭素排出量調査では、我が家でもたくさ んの二酸化炭素を排出していることが分かった。具体的に風船何個とかの数字が出てくると、とても分 かりやすく同時に、 「これは今のままでは大変だ…」と実感した。排水やエネルギー、ゴミの問題、ど れをとってもなかなか1人では解決できないと思う。でも個人個人のちょっとした心がけや、工夫が集 まれば、それは大きな環境保護へと繋がっていくかもしれない。今回の研究から今日からできること、 家や学校でもできることを真剣に考えるきっかけとなったので良かった。 −95−
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