ドイツ・ミュンスター市

ドイツ・ミュンスター市
ミュンスター市の環境先進都市地球温暖化対策への取組み/ミュンスターガイ
(ミュンスター市の環境先進都市地球温暖化対策への取組み
ストフリーエコ住宅訪問
/ミュンスターガイストフリーエコ住宅訪問)
1.
視察日程等
(1)期 日
平成 22 年 10 月 7 日(木)
(2)場 所
ドイツ ミュンスター市
(3)応対者
市の担当者
(4)通 訳
青木氏
2.
ミュンスター市の概要
ドイツ北西部に位置し、ノルトライン・ヴェスト
ファーレン州の都市であり、ルール工業地帯を擁し
人口 28 万人の緑豊かな市である。また、30 年戦争
の終戦条約締結地として名高い観光都市で学生
55,000 を抱える大学都市である。この市は、地球温
暖化問題や廃棄物問題、自転車利用の促進にドイツ
で最も積極的に取り組んでいて「環境首都」の称号
を得られている。また、暮らしやすさを審査する国
連環境計画が主催したコンテストでは、425 都市の
ミュンスター市役所前で
中から金賞も受賞されている。このコンテストでは、
環境保護や景観保全・市民参加・歴史的遺産なの審
査基準に基づき審査され、すべての頄目で最高の評
価を受けている市である。
1990 年頃から地球温暖化問題に取り組み始め、バスの路線の増設やお得な乗車券の
作成などにより、自家用車から公共交通機関への乗り換えを促進したり、企業や学校・
家庭での省エネ対策、発電施設の改善や燃料の変更など 80 以上の地球温暖化政策がお
こなわれている。また、ミュンスター市議会は 1990 年代の初めに廃棄物処理の為に焼
却場を造る計画を破棄し、それ以降廃棄物を出さない・出した廃棄物は徹底分別・再資
源化に力をいれてきた。 現在、出される廃棄物の減尐とともに、84%が再資源化され
ていて、ドイツの自治体の中でも、もっとも高い数値となっている。
また、1997 年ドイツで信頼されている商品テスト(Test)誌では、自転車にやさしい町
をテーマに調査をおこなわれた。その結果、ミュンスター、フライブルグなど3つの都
市が Test 誌のお墨付きをもらったが、その中でも読者アンケートによる人気投票で、
“もっとも自転車にやさしい町”に選ばれた。
ドイツ語に“freundlich”という言葉がある。
「親切な」
「思いやりのある」という意
味だそうだがミュンスターの街を形容する言葉は、“Fahrrad freundlich”で「自転車
(Fahrrad)にやさしい」街であるといえる。
その為自転車の所有率も高く、市民の日常生活の足は自転車を使われている。
3.
研修内容
(1)ドイツ ミュンスター市役所
このミュンスター市では、市役所職員の担当者より説明をうけた。ミュンスター市
はいろいろな施策に取り取組みがなされていた。その中で現在、主に3つの政策に取り
組まれていた。
① munster packt’s 参加宣言(意思表示をする)
ミュンスター市の為に何をするのか。環境の為に自分が何ができるのか。という事を
ハガキで宣言する事業に取り組まれている。この中には、11の頄目があり自分ができ
る事をハガキにチェックし、市役所に送付する。自主的に宣言する事で、自分の中で環
境に取り組んでいるという自負が生まれ、自覚へと繋がって行き、市と一緒になってや
るという事に繋がるという説明があった。
但し、この際最も重要な事は、強制的にハガキを出させるのではなく、市民自らが進ん
で提出をされている点である。この事業も草の根的に広がっていったそうであり、大変
興味深く説明を受けた。
○ 使わない時は、スイッチを切る。(部屋から出る時は電気を切る。)
○ エネルギー対策に新しい装置をつける。
○ 洗濯物は、乾燥機は使わず自然乾燥させる。
○ 部屋の温度を1℃以上おとす。
(ドイツは、冷房はほとんど使わず暖房である。
)
○ 車をなるべく使わない。
等などの11頄目である。
例えば、この頄目の中の1つの<車をなるべく使わな
い。>については、自動車の排除ではないかと考えが
ちだが、現代社会にあっては、自動車の排除は非現実
なことである。現実を見据えた上で、自転車で行ける
所は自転車で行きましょうがこの街の考え方である。
つまり、自転車利用による自動車利用の抑制策である。
そのことを裏付けることとして人口一人当たり3台
の自転車が登録されている。但し、市はこの政策を達
成する為に、第2次世界大戦後の 1948 年には、既に
すべての幹線道路に自転車の通る道をつけるように
決められている。その後、プロムナード(自転車しか
通れない道)の整備を充実させ、駐輪場の整備も行っ
市街地の簡易駐輪場
ている。この駐輪場も、街の外観を損なわないように
地下に多くの駐輪場(ラートシュタッィオン)を設け、
これだけではとても収容しきれないので、路上パーキ
ング等の整備も行われている。もちろん自動車につい
ても制限がある。ドイツでは、自動車に緑・黄・赤色
の各色を排気ガスによって色分けし、フロントガラス
に貼るように決められていて、その為、まず環境ゾー
ミュンスター道路網図
ンに入れる車は排気ガスの基準をクリアしたもの(緑
(赤線が環境ゾーン)
色のステッカー貼付)でなければいけないし、現在は
中間の車(黄色のステッカー貼付)も入れるところが
あるが、ここも徐々に緑色のステッカー貼付の車しか
通れない規定にしていくとのことだった。また、赤色
のステッカーの車は、環境ゾーンの外で車を駐車し、
そこから公共交通等を利用しなければ、ミュンスター
市には入って来れないようになっている。このように
環境政策に対し徹底している点が、ドイツの中でも先
進的であり特徴的な政策の一つであった。
② munster bekennt farbe
市担当者によるレクチャー
カラフル(カラー)宣言
ミュンスターにあるアーズィ湖(アー湖)の周りで環境に関する事をたくさん行なわ
れている。その中の取り組みの一つで、空気の循環を良くする為にも高い建物は建てな
いこと。そうすることにより、この湖が天然のクーラー代わりになり、自然の力だけで
車の中に冷たい風が入ってくる。他にも、自宅にいても出来ることとして、自分の庭や
バルコニーに花の種を植え、気持ちよく過ごせるようにする。市は、緑や緑地を増やす
ために家庭菜園の土地を貸し付けたりもしている。たくさんの色でカラフルに彩り、ミ
ュンスターの街を明るくしていく、その事で自分だけでなく、街全体が素晴らしい街に
なっていくという取り組みをおこなっていた。
③ Kuscheln furs klima
ブランケットで温まろう宣言
ドイツは寒い地域で、ミュンスターも大変寒くなる。でも、外の景色を楽しみながら
食事をしたい人も多い。その為飲食店ではこれまで暖房機を使い寒さ対策をされていた。
以前はキノコのような形の暖房機から出る排気ガスが、公害の元になっていた。その為、
無料でブランケットを使用できる政策に賛同してくれる飲食店にこの「Kuscheln furs
klima 」のチラシを立てて置いてもらい、市が飲食店に無償でブランケット支給を行
った。外で食事する時にこのブランケットを使用すれば、環境に貢献している事になる
のである。つまり環境の為に、恋人同志のように、ブランケットでひと肌に温まろうと
いう政策である。
(2)ミュンスターガイストカーフリーエコ住宅
エコ住宅アパートは州のプロジェクトで’90 年代の
中頃からはじめられ、2000 年に建設がはじめられま
した。ここは第 2 次世界大戦が終わるまでは軍隊が所
有する土地で、それから更地のままでした。そのあと
はヨハニズムという赤十字のような団体が管理され
ている。
自転車とトランスポーター
ここには 140 世帯約 400 人が暮らしているが、ここに住む方は車の所有ができませ
ん。車が持て無い代わりに自転車が活用されてます。通常の移動、輸送には自転車が使
われていて、自転車の後ろには子供や荷物を乗せるトランスポーターをつけられていま
す。これは、車のトランクと同じくらいの量の荷物を載せることができます。
また、ここは比較的街に近い位置にあり、自転車だけで生活でき車が無くても自由に
動けます。そして、バス停が近所にありネットワークが良い位置にあります。ここから
歩いて 5 分くらいの位置にバス停がありバスは 10 分おき出ています。
ドイツでは1アパート 1 室に対し1台の駐車場があるのが通常ですが、ここはカーシ
ェアリングが行われ 10 台のカーシェアリング用の駐車場と来客用の駐車場が整備され
ています。但し、例外もあり身障者やここに転住したばかりの人でどうしても車の運転
が必要な場合は例外で車を使っていいことになっています。ここの敷地内の広場は車が
入って来ないので学校が終わった子供たちや小さい子供たちも自由に遊んでいてお母
さんたちも安心してアパートの上から見ているだけです。そして、建物と建物の間が広
いのは、車の駐車場を必要としないため緑地を広く取れ住んでいる人にはとても良いこ
とだといわてます。街の中でも緑の多い場所でもあり、ゴミ置き場までも緑化で目立た
ないよう覆っています。
また、ここの敷地内には車が入れないように
なっていますが、消防車、救急車などの緊急車
両が入れるように通路を確保されています。
この建物はエネルギーの消費量が尐ないとい
うことで造られた建物でもあり、市からの補助
金により作られた建物で、実証実験として建て
られた第 1 号の建物です。車が敷地内に入って
こない、エネルギーの消費量が尐ない建物とし
住宅地内の通路
て作られました。
エネルギーの消費量が尐ない量とは1年間 50kwh(1㎡当り)以内でこれは12年前
の基準で、現在は随分尐なくなって 15kwh/㎡になっています。近年ドイツではエネル
ギーを作り出す住宅になってきて、具体的には太陽光などを利用した建物が増えていま
す。太陽光発電については日本も同じ取り組みをしている。また、建物にはエネルギー
を使わなくてよいように工夫した設計がなされています。まず、建物の屋根は緩やかな
傾斜があり、植物が生えている。これは、雤が降ってゆっくりと雤水がながれ、排水溝
や土に流れてくるようにしてある。真夏の場合温度を下げる効果もあります。緑が多い
ほうが温度が上がらないということです。次に、この住宅はソーラシステムも考えられ
ていて南向きに建てられバルコニーなどがあります。植物もよく育ちブドウなどを植え
ています。また、冬は、太陽光線が斜めから入ってきて暖かくなるよう作られて暖房を
焚かないでもよいほど暖かいです。逆に、夏は太陽が真上を通るため直射日光が部屋の
中に入ってきません。また、建設コストも抑えられています。共有部分である階段部分
は冬になるととても寒く外の気温とほとんど同じですが、家のドアや壁は気密度が高く
ほとんど外気が入ってくることはありません。これは住宅部の壁には、断熱材を使われ
ていますが階段や通路には使われてなくメリハリつけて施工されています。暖房の入っ
ていない室内の階段部分は、全体的にガラス張りにすることで温かい空気を作り循環さ
せることで暖房費を節減でき建設費も安く抑えられます。
この住宅の家賃は市から補助が来ているので比較的低収入の方が入居されています。
ドイツでは、子供が出来た後の離婚が多く母子、父子家庭が増えているそうです。この
ため、仕事に影響が出てきてついには収入にも影響が出てくる。そういう方がこのアパ
ートに多く住んでいる。ここに住んでいる住民の 35~40%は子供です。1K~5DK タ
イプの間取りがある。5DK は1階から3階までが1軒になっていて 3 人以上の子供を
持っている家庭が住居しています。
ここの住宅敷地内には 2003 年から 1 軒分の住居(3DK 70㎡)を自治会の集会
場として利用している。自治会への参加は希望者のみで全体の約1/4の人が加入され
ていて、毎週水曜日と日曜日はカフェとして利用されている。みなさん自由意思で入っ
て来られていて、必ず入らなければならないという事はありません。ここに住んでいる
人は車が無いところに住みたいということで納得して入居され満足されている。このこ
とにより住民が一緒になることで繋がっています。この集会所は、自治会の人やそうで
ないよそから来た方の誰でも使えることとして、そして収益を家賃として賄っている。
またカフェの売り上げも家賃に使っていて、ケーキを作った材料費は集会場から支出し
て、その売上金は集会場の収入になっています。また、ここは自転車修理工場もあり、
いらなくなった自転車を修理して売っています。そういうリサイクルも自治会で運営さ
れています。こうして、住民同士が共有する時間が多いので絆は深いそうです。
当初から 2 年後に第 2 期の募集で入居された方たちは今までと違う車の無い生活で尐
し不満に思われている方が中にはいます。それは第 2 期の入居者は選ばずに誰でも入れ
るようにされたので不満が出ている。だから、入居者については自分たち自治会が主導
権を握って入居者を選別したいと市役所に強い願いを出された。そこで 2004 年からは
自治会で誰が入って来るか、入居者希望者と実際あって話し合いをして、みんなが一体
となって住めるように車の無い生活で本当に良いのか確認してから入居してもらって
いる。自治会の力がないとここまでのコンプセントは取れないし、ここまで権限を持っ
ている自治体は無いそうです。
問題点もいくつかあり1つは、車を所有しないことが入居条件だが、こっそり車を所
有して近所の駐車場に止めている人がいて、このため監視機構を作って監視されている。
もし発見された場合は、車を手放すか手放さない場合は退去してもらっているという。
2 つ目は、隣の敷地には、介護を必要としない年配専用のアパートが建つ予定ですが、
しかし年月が経つと介護を必要とされる方が増えてきて車が敷地内に入って来られな
いのが問題にあります。
植物で覆ったゴミステーション
4.
集会所の部屋の中
質疑応答
●ドイツ ミュンスター市役所
◎「munster packt’s」について
Q1:現在、4万人が参加表明されているそうですが、今も増え続けていますか?
A:これは、1年前から始めた物ですが、口コミで広がっている。人気のあるラジオ番
組で放送もしてもらった事も功を奏しているが、それ以上に口コミで広がっている感
が強いです。もちろん、署名が大切なのではなく、実践が大事です。
Q2:この11頄目の選定方法とか、工夫されて点について教えてください。
A:市民が簡単に始められるものと、尐し実行するのが難しいものをシャッフル(混ぜ
て)います。
Q:この頄目の達成度とかを集計されるんですか?
A:よく聞かれる質問です。敢えて集計はしていません。私たちが考えるのは、強制的
行わせたり、管理する事ではなく、個人が責任を持って自発的にやることが大切だと
考えるからです。
Q3:環境ゾーンに対する反応はどうですか?
A:商店等に搬入する車が古いと入ってこれない。その問題で大変時間がかかりました。
半年間の最初をゾーンの中には入れないという周知に費やす等の措置を取った。ラジ
オ・新聞等による周知を図り、今年からは罰金が必要です。今のところ80€(ユー
ロ)の罰金となっています。
Q4:車を監視する人がいるのですか?
A:自治体警察をつくりまして、車のステッカーでチェックします。(青いユニフォー
ムを着て働いています。
)60 名程度です。自治体の職員もいますが、24 時間体制で
警備会社に委託しています。他にディスコ等の騒音がひどい場合も取り締まっていま
す。
Q5:駐輪場のキャパはどのくらいですか?
A:2か所大きい所があります。ちょうどもう一つ新しい駐輪場を造っています。今、
100 万台程度あります。ゴチャゴチャに置かないように、使う人も良い雰囲気を保ち
たいと思っている。その為、大きい所は地下に駐輪場を造っています。
Q6:日本は中国製の自転車が大変普及しているが、ドイツではどうですか?
A:ほとんどがドイツ製です。中国製は質が悪くすぐに壊れるので使わない。90 件以
上の自転車屋さんがある。他には、オランダ・フランス製の自転車は使われている。
◎「Kuscheln furs klima」について
Q7:ブランケットの普及率はどのくらいですか?
A:79%です。これも、1年前から始めています。
◎その他
Q8:この政策の予算はどのくらいかかっていますか?
A:27 万 5000€(3 つのプロジェクトを合わせて)ぐらいです。来年は、スポンサーを
募る予定です。最初は小さい予算から始めて、徐々に大きくしていく方法が良いと思
います。
Q9:なぜ、環境都市になったと思われますか?
A:市民が非常に良い街にしたいという意識が多かった。また、1 番の街になりたいと
いう意識も強い。世界で 1 番の環境都市という賞も 2 回頂いた。
Q10:エネルギーを化石燃料から他の燃料に変えていますか?
A:はい、もちろんです。環境整備として、電気や天然ガスの自動車に乗るようになっ
ている。天然ガスの自動車を増やした方が良い。但し、国によって給油口の形状が違
うのが困る。現在、お隣のオランダでは給油口の形状が違う為、天然ガスが入れられ
ない。
●ミュンスターガイストカーフリーエコ住宅
Q11:最初に建てられた住宅と後から建てられたものの家賃の差がありますか?
A:家賃の差はない。最初に建てられたものに対し後から建てられたものは安く仕上げ
られている。
Q12:今後こういう建物が増える予定はあるのか?
A:空き地に予定はあるが、まだいつになるのかわからない。
5.
感
想
テーマをはっきりさせて、ゆっくり着実にやっていく。始めから「こうしなければい
けない」と決めるのではなく、市民が自主的に参加する事に意義がある。その後、それ
らの実現の為に市が行うべき事を当然やっていくというスタンスは、特筆すべき点であ
ると言える。
市は、
「私たちが一緒になって環境保護をしましょう。
」という提案をしただけという話
が大変印象的であり、市民の意識の高さも重要であるが、市民に任せる(信頼する)こ
とが事業を展開する上で大変有意義な結果を導き出す事を学んだ。
つまり市民と自治体が一緒になってやることが大切であり、市民の意見を政策に活か
し、自治体職員として、
「佐賀県(各市町)として何ができるのか。」を考える為の政策
立案等の手立てを学べた研修であった。
持続可能な社会(環境保全)を築くためには、行政だけでは到底できない。地域住民
や各種団体、企業が参画して、計画策定から施策の立案、実施まで参加させ責任の一端
を負わせることが大切だと実感した。現在、私たちの取組みの実態を見ていると、行政
への住民協力というふうになっている。まずは、住民の意識改善の啓発活動と住民が自
主的に参画できるような仕組みを作ることが求められていると強く感じました。
ミュンスター市長と 30 年戦争の終
戦締結があった部屋にて