◎ 保証契約の成立 ・保証債務は、債権者と保証人との間の保証契約によって成立する(遺言によ っても発生させうる)。 ・保証契約は書面で行なわなければ効力を生じない(電磁的記録も可)。すなわ ち、要式契約である。 ・ 主たる債務者からの委託が無くても、さらには、債務者の意志に反しても、 保証人になることができる。 ◎ 保証人となる資格 原則、保証人となる資格に制限は無い。 債務者が法律上あるいは契約上、保証人を立てる義務がある場合には、①行為 能力者であること、②弁済の資力があること、の 2 つの要件が必要である。た だし、債権者が保証人を指名した場合は、上記の要件を満たす必要はない。 弁済の資力があることという要件が欠けた場合、債権者は代わりの保証人をた てることを請求できる(450 条 2 項) (注意:行為能力者であることという要件 は満たさなくなったとしても代わりの保証人は請求できない!)。 保証人を立てる義務のある債務者が、2 つの要件を満たす保証人を立てることが 出来ない時は、債権者は、主たる債務者に対して、直ちに債務の履行を請求で きるほか、債務不履行を理由として契約を解除することが出来る。 債務者は、2 つの要件を備えた保証人を立てることが出来ない場合は、他の物的 担保を提供して、これに代えることができる(451 条)。 ◎ 保証債務の法的性質 (1) 独立性 附従性に反しない限り、主たる債務と、その態様などを異にすることができる。 例:主たる債務が民法上の債務の場合であっても、保証債務は商事債務(5 年の 短期消滅時効)でもよい。 (2) 同一内容性 保証債務は、主たる債務と同一内容の給付を目的としている。ただし、例えば、 特定物給付債務の保証をした場合でも、主たる債務が損害賠償債務に転化する ことを条件に保証したものと解することにより同一内容性の概念が維持される。 (3) 附従性 ① 原則 ・主たる債務が無効、取消、解除等で成立しなければ、保証債務も成立しない (成立に関する附従性) ・ 主たる債務が弁済などで消滅した場合、取り消された場合、時効によって消 滅した場合などは、保証債務も消滅する(消滅における附従性)。 ・ 保証債務は、その目的や態様において、主債務よりも重いものであってはな らない(448 条)。 ・ 原則、主たる債務の内容が変更されれば、保証債務の内容もそれに対応して 変更されるが、主たる債務の変更の内容が、当初、定められた内容よりも重 いものとならない場合に限られる。主たる債務の内容が拡張または加重され る場合は、保証契約が変更されない限り、主たる債務の変更の効力は保証債 務には及ばない。 ② 例外 行為能力の制限により取り消しうる債務を保証する保証人が、保証契約当時、 その取消原因を知っていた時は、主たる債務が取り消されると、保証人は同一 内容の独立した債務を負担したものと推定される。(449 条) 449 条は、あくまで行為能力の制限による取消に限って適用があり、それ以外 の取消原因(詐欺や強迫)については本条の推定は適用されない。 また、あくまで、知っていた(悪意)の時のみ、本条の適用があり、過失い よって知らなかった場合は、本条の推定は適用されない。 ◎ 主債務者と保証人の間の絶対効、相対効 (1) 主債務者に生じた事由 主たる債務者に生じた事由は、原則として、保証債務の内容を加重するもので ない限り、すべて保証人に効力を及ぼす(附従性からの絶対効) 。 ① 債権の譲渡 主たる債務者に対する債権が譲渡された場合において、債権譲渡の対抗要件が (467 条)が主たる債務者について具備されれば、保証人についても効力を生ず る。 (保証人のみに対して、債権譲渡の通知がなされても、主たる債務者に譲渡 を対抗できず、また、通知を受けた保証人にも債権譲渡の効果対抗できない) ② 主たる債務の時効中断 主たる債務の消滅時効の中断は、中断事由の如何を問わず、すべての保証人に ついて効力を及ぼす。 ③ 主たる債務が限定承認された場合 主たる債務者が死亡して、相続人が限定承認した場合であっても、保証人の責 任は軽減されない。 (2) 保証人に生じた事由 保証人に生じた事由は、債務を消滅させる行為(弁済、代物弁済、供託、相殺、 更改、受領遅滞等)の他は、主たる債務者に影響を及ぼさない。 ◎ 主債務者の有する抗弁の援用権 保証人は、主たる債務に附従することから、主債務者の有する抗弁権を援用す ることができる。 (1) 同時履行の抗弁権 保証人は、主債務者の同時履行の抗弁権を援用して、保証債務の履行を拒むこ とが出来る。 (2) 時効の利益の援用 主たる債務者が時効の利益を放棄しても、保証人は時効の利益を援用して保証 債務の消滅を主張できる。 (3) 相殺 保証人は、主たる債務者が有する反対債権を援用して、相殺することができる (全額)。 (4) 取消権 主たる債務者が契約の取消事由を有している場合でも、保証人は取消権を行使 できない。 ◎随伴性 主たる債務が移転すれば、これに伴って保証債務も移転する。 ◎ 補充性(保証人固有の抗弁権)(連帯保証人には認められない) 1. 催告の抗弁権(452 条) 債権者が主たる債務者に履行の請求をすることなく、いきなり保証人に保証債 務の履行を求めてきた場合、保証人は、まず主たる債務者に催告するように請 求できる。 ・ 催告の抗弁権が無い場合 (1) 主たる債務者が破産手続きの開始決定を受けたとき(主たる債務者が、単に 無資力であることを保証人が知っていた場合は催告の抗弁権は有る) (2) 主たる債務者が行方不明の時 2. 検索の抗弁権(453 条) 債権者が債務者に催告した後でも、保証人は更に、主たる債務者に「弁済をす る資力があり」、「執行が容易であること」を証明して、まず主たる債務者の財 産につき、執行すべき旨を主張することができる。 ・ 「弁済をする資力があり」というのは、必ずしも債務の全額を弁済する資力 があることまでを意味しない。 ・ 「執行が容易であること」というのは、現実に弁済を受けることが容易かど うかによって決まる。 ◎ 保証債務の内容 保証債務の内容、態様は主たる債務のそれより重いものであってはならない。 もし、主たる債務より重い場合には、主たる債務のそれと同一の限度に縮減さ れる。 ただし例外的に、利息違約金、損害賠償の予定については、保証債務のみに、 それらを定めても問題は無い(447 条 2 項)。
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