現代フランスの音楽事情

永島茜
『現代 フランスの音楽事情』
大学教育 出版、 2010年 4月
本書の構成
1.本 書の意義
2。
従来、 フランスの文化政策 につ
(1)第 1部
い ては、 国家予算 の 1%が 文化 に
第 1章
(「
(「
現代フランスの
音楽事情
文化振興と音楽」
)
文化政策の変遷 と文化省
文化大 国"と
充 て られ るな ど、 “
しての側面 が 強調 され、 “日本 も
命後 の文化政策の起源 か ら説 き起
これに倣 うべ きである"と い った
こし、戦前 の 第 3共 和制、戦時中
論調 が多 く見 られる。 しか し、 こ
の ブ ィ シー 政権 を経 て、戦 後 の
れ らは、文化予算の額の多 さや政
第 4共 和制 までを概観す る。 特 に、
策 の一面 のみが取 り上げ られる と
第 4共 和制期 に、今 日につ な が る
いった傾向 が強 く、同国の文化政
芸術文化 に対 す る国の関与の基礎
現在 におけるその 明示的承認 を確
策 の根底 にある歴 史的経緯や もの
が築 か れた と結論付 けている。
認す る とともに、公的関与 の必要
の役割」
)で は、 まず、 フランス革
の考 え方、法制面 の実態、具体 的
次 い で、第 5共 和制 の発足 (1958
な施策内容 まで深 く掘 り下げた分
年)と 文化省 の 創 設 (1959年 )に
析や考察 が行 われて いる とは いえ
伴 うAマ ル ロー 文化大 臣 に よる
な い。
政策、 5月 革命 (1968年 )後 のG.ポ
の運 営 について、従来 の「公 施設
ンピ ドー大統領 による政策、左派
法人」 によるものか ら、今 日では
フランスの文化政策 の変遷、文化
芸術 へ の公的 関与 の論理 につ いて
政権 の発足 (1981年 )と nミ ッテ
多様 な方法 が採 られるようになっ
ラン大統領及 びJ,ラ ング文化大 臣
てお り、特 に 2002年 に制定 され
考察 す る とともに、 特 に「音楽」
の分野 に焦点 を当て、 “
音楽政策"
に よる政 策、 1986年 か ら現在 に
た「文化 のための協 同施設法人 J
至 る までの保 草 共存 政権 下 の政
につい ての法律 (EPCC法 )に 言及
に関 し、具体 的な資料の綿密 な分
策 について、やや詳 しく通覧す る。
す る とともに、具体的 な運営事例
析 を通 して検証 して いる。 また、
特 に、」 シ ラク政 権 (1995年 )を
2例 を取 り上 げて紹介 す る。 そし
従来 の文化政 策論 では捨象 されが
ちな “
音楽教育 "に ついて も検討
ンコ ジ政権 下 で
経 て現在 の Nサ ノ
て、 フランスでは、芸術文化 に対
は、 文化 に姑 す る公 的関与の再検
す る公 的関与 は、実質 が先行 して
を加 えている。 その意味で、本書
討 がな され始 めた ことに言及 して
ヽる。
ヽ
お り、今 日で も、実際の文化事業
その よ うな中 にあって、本書 は、
は、「芸 術 活動 としての音楽 に対
て いる。
また、音楽分野 における公役務
な どに対す る公 的関与 には公役務
公的な文化 関与の論理 と
の原理が適用 され、 助成 に対す る
その運営J)で は 、 従 来 フ ラ ンス に
内容 の拘束 とその評価 を通 じて コ
レが可含
ン トローノ
ととなって いるこ
第 2章
す る取組 み とその基盤 となる音楽
教育 を見 ることで、音楽 を取 り巻
性 についての 当否 の議論 も紹介 し
(「
)を 把握
く状況全体 」 (「 はじめ 」
1よ
し、 考察 した こ とに大 きな意義 を
論 的根拠 として「公役務」の概念
'里
と、 その意味で、行政 が芸術文化
有す る といえる。
力Sあ った が、1988年 、Cト ロマ
創造 の主導権 を握 って いる ともい
なお、本書 は、著者 が東京藝術
トロン文化大臣 による「実演芸術
える と結論付 けている。
大学 に提 出 した悼士論文 (2008年
に封す る公 役務 の任務 に関す る憲
博士号取得)及 び それ までに発
章」 とその通達 によ り、公的関与
では、 まず、文化省設置以後、同
表 した論文 を基礎 に、 その後の科
の法的根拠 とその方針、及 び芸術
省 の中に設 け られた音楽課 (1966
学研究費補助金 による石
升究成果 を
教育 を除 く公的文化サ ー ビスの責
年)と これ を主 導 した M.ラ ン ド
加 味 して集 大 成 した もの であ る
任体系 が再確認 された 旨を検証す
クス キ課長 に よる「 フ ランス に
る。 その上で、公役務概念 に係 る
お け る音 楽機 関 の組織化 の た め
コ ンセ イユ・ デタの判例 を跡付 け、
の 10年 計 画」 (1969年 )か ら説 き
t三
3月
(「
あとがきJ)。
「文化 に対す る公的関与」の
第 3章
(「
音楽政策の開始 と確立J)
音楽芸術マネジメント 第3号
197