偽関節を呈した胸骨骨折に対し,プレート固定術を施行した1例웬

〔症 例〕
偽関節を呈した胸骨骨折に対し,プレート固定術を施行した1例웬
高
橋
都
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瀬
田
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知
香웬웬 堺
定웬
웬 浅 岡
秀웬웬 町 田
慎웬웬 大
隆
慶
川
匡웬
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浩웬웬 山 内 直 人웬
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太웬웬
田 明 央웬
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:胸骨骨折,偽関節,ロッキングプレート
Ke
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胸骨体部に骨折線を認めた
(Fi
。受傷3カ月
g1)
【は じ め に】
胸骨骨折は,
経過した単純X線でも骨折部には仮骨を認め
通事故によるハンドル外傷や
シートベルト外傷など,鈍的胸部外傷の増加と
ともに増えてきており,胸部外傷の5%を占め
ず,CT では骨折間
間の不整や骨
化像を認
めた(Fi
,3)
。
g2
術中所見:全身麻酔下に仰臥位で前胸部正中
る骨折である웋
。多くは保存的に治療できるが,
웗
切開を行い胸骨を露出した。胸骨体部のほぼ中
まれに保存治療の経過中に偽関節を呈し疼痛な
央に線維性癒合し不安定性のある横骨折を認
どの症状が遷
め,偽関節に矛盾しない所見であった(Fi
)。
g4
することがある워
。今回,我々は
웗
偽関節を呈した胸骨骨折に対しプレート固定術
偽関節部の瘢痕組織を可能な範囲で除去した
を施行した1例を経験したので,若干の
後,尾側の骨折部の皮質骨を t
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pboneにしてオ
察を
スフェリオンと共に骨移植を施行。BI
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加え報告する。
【症
社製 St
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naLock12 ワイドラダー型プレー
例】
トをベンディングし,ロッキングスクリューで
固定した(Fi
,6
)
。
g5
症 例:3
2歳 男性
主 訴:体動時前胸部痛
術後経過:術後は速やかに疼痛改善し,術後
既往歴:特記事項なし
1週で職場に復帰している。
術後 1
0カ月で単純
職 業:トラック運転手
現病歴:自動車運転中に中央
X線・CT ともに良好な骨癒合を確認できた
離帯に衝突し
受傷。前胸部痛を主訴に当院搬送となった。単
純X線にて胸骨骨折と診断。バストバンド固定
とし帰宅とした。しかし,その後も疼痛改善認
めず,受傷3ヵ月のX線・CT にて偽関節の状態
(Fi
,8)
。プレートはその後,皮膚に当たり痛
g7
みがあるとの訴えがあり,抜去した(Fi
)。
g9
【
胸骨骨折の多くは
察】
通事故,以前はハンドル
と判断。仕事にも支障を認めたため手術を施行
外傷,最近ではシートベルトによって起こると
した。
いわれている웍
。診断は患者の訴えと視診,触診
웗
画像所見:来院時胸骨単純X線側面像では,
によって胸骨骨折を疑い,胸部側面X線写真等
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:勤医協中央病院 整形外科
,★★★★,★.
.36 3
7
Vol
北勤医誌第 36巻
201
4年 12月
Fi
g
.1 来院時
単純X線
Fi
g.2 受傷3カ月
Fi
g
.3 受傷3カ月
単純X線
単純 CT
によって確診することとなるが特に難しいもの
もその大部
の症例が治癒するはずであるが,
ではない。ただ,胸骨骨折には脊椎骨折や縦隔
中には観血的治療を必要とするものもある。須
臓器の損傷などを合併することがあり,合併症
賀ら웏
は胸骨骨折例を集計し,骨 折 1
7
5例 中
웗
を疑ったときは,特にこれらの合併症は治療方
保存的治療 1
48例,手術 23例,死亡4例で手術
針を左右するだけに,CT など他の検査を追加
例の割合は 1
3.
5%あったと述べている。
して合併症の確診が必要である웎
。治療として
웗
骨折部が偽関節になる原因として,骨折部の
は保存療法が原則であり,手術を選択しなくて
感染,固定不良,循環障害が挙げられる。本症
.3
6 38
Vol
偽関節を呈した胸骨骨折に対し,プレート固定術を施行した1例
Fi
g4 術中所見
Fi
g5 術後写真
Fi
g6 術後単純X線
例の場合,受傷後も疼痛を我慢しながら重労働
れている원
。本症例は上記の⑴と⑵には該当せ
웗
を継続しており,労作による激しい胸郭の運動
ず,保存療法を選択したことは妥当と
により,骨折部が固定不良になったため偽関節
術式としては,鋼線固定術,プレート,胸骨ピ
を呈したと
ンなどが報告されている웋
。本症例では,偽関
웗
웑
웗
えられた。
える。
一般的に胸骨骨折の手術適応としては,⑴転
節を呈した胸骨骨折であったこと,術後早期職
位が大きく非観血的に整復困難な場合,⑵骨折
場復帰のため,より強固な固定を目指す目的で
片によって他の臓器が損傷されている場合とさ
胸骨専用のロッキングプレートを選択した。胸
.36 3
9
Vol
北勤医誌第 36巻
201
4年 12月
Fi
g7 術後 10カ月
単純X線
Fi
g8 術後 10カ月
単純 CT
Fi
g9 抜釘後単純X線
骨骨折は本来,保存療法が原則である。それに
対して本症例のような何らかの理由で観血的な
治療を行う場合には,骨折の病態に応じて確実
した
・偽関節を呈し,疼痛が続く胸骨骨折は手術治
療を
慮してもよい
な手術術式を工夫することが必要である。
【ま
と
め】
・偽関節を呈した胸骨骨折に対し,胸骨専用の
ロッキングプレートを用いた骨接合術を施行
.36 4
0
Vol
参
1)遠藤重厚
文
献
他:胸骨骨折の治療経験,整・災害
30
:505
−509,1
987
.
2)高田昌彦
他:偽関節を呈した胸骨骨折の1手術
偽関節を呈した胸骨骨折に対し,プレート固定術を施行した1例
例
日本呼吸器外科学会誌
2
008
:22(
7):38
−
5)須賀弘泰,他:胸骨骨折の手術適応と術式.日本
4
2
救急医学会関東地方会雑誌 18
:710
−712
3)長田博昭:臨床呼吸器外科,p22
1−22
2,医学書
6)Je
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院,東京,19
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4)SaabM,Kur
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8)
:6
23−6
26.199
8
7)森川洋匡,他:胸骨骨折に対する観血的固定術を
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:25
6−257
,1
997
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施 行 し た 症 例 の 検 討.日 本 呼 吸 器 外 科 学 会 誌
20
04
:18(7
):44
−48
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1
Vol