地ビール - 秋田県総合食品研究センター

単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名
県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用(その1)
―近赤外分光法による地ビールの分析―
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門食品加工担当
研究期間:完
担当者:熊谷昌則
平15年度(平13∼15年度) 協力・分担関係:
酒類分門酒類第2担当 進藤昌
秋田大学工学資源学部 小川信明、高橋豊
1.目的
食品の品質向上や新規食品の開発を行うためには、その品質を正しく評価することが求
められる。そこで本研究では、県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用を行う。初
年度は農産一次産品である米や小麦粉、そば粉などの穀類に対する近赤外分光法の適用に
ついて検討し、昨年度からは加工品にも範囲を広げ、稲庭うどんの原料小麦粉の判別(原
料管理)や製品の水分測定など(工程、品質管理)に近赤外分光法が適用できることを示
した。今年度は近赤外分光法のビールへの適用について検討した。
2.方法
供試サンプルは、一般の小売店で購入した秋田県産地ビール15検体と大手ビール会社が
販売するビール12検体ならびに発泡酒10検体の計37検体である。サンプルの近赤外スペク
トルはポータブル型近赤外分光装置PlaScan-SH(オプト技研)により、0.5mmの石英セル
(藤原製作所)と白色セラミック板を用いた透過反射法により1200∼2400nmの領域を測定
した。サンプルの理化学分析値は、ビール酒造組合のビール分析法に基づき、苦味価、総
ポリフェノール、全窒素、pH、色度、外観エキス、エタノールをそれぞれ定量した。
3.成果の概要
サンプルの近赤外原スペクトル(図1)は、主に水OHの倍音または結合音に帰属される
1450、1940nm付近のバンドピーク、そして主としてCH 2 の結合音に帰属される2310nm付
近のバンドピークが重なり合った、やや単調な形状を示した。
サンプルの理化学分析値(図2)は、地ビール、ビール、発泡酒ではエタノール含量に
差は認められなかったものの、それ以外の分析項目では有意差が認められた。地ビールは
全窒素、外観エキスが高い傾向を示した。
近赤外原スペクトルのデータセットに主成分分析を適用したところ、図3に示すような
スコアプロットが得られ、地ビールがビール、発泡酒と識別されることが分かった。主成
分1は外観エキスと最も相関が高く、また主成分2は全窒素と最も相関が高かったことか
ら、近赤外スペクトルは理化学分析値の違いを良く反映していることが分かった。
近赤外スペクトルから総ポリフェノール量をPLS回帰分析によって推定(図4)したとこ
ろ実測値との相関係数は0.73であった。図5のPLS回帰係数プロットから、推定に関与する
のは主として1450、1940、2080、2280nm附近のOHの倍音や結合音に帰属される波長であ
り、ポリフェノールの化学構造との対応が示唆された。近赤外スペクトルは苦味価や全窒
素量とも相関が高かったものの、現状ではやや精度に問題があるので改良が必要である。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
引き続き、ビールの理化学成分と近赤外スペクトルの関係を調べ、定性・定量的な新規
分析評価法の確立を目指す。
5.結果の発表、活用等
熊谷昌則, 高橋豊, 李華,進藤昌,小川信明, 日本素材物性学会(2004)で口頭発表の予定