親が参画する保育について 2015 年 6 月 13 日 森美香 親の参画について調査した経緯 ■時間延長保育の調査で出会った「ニュージーランドのプレイセンター(playcentre) 」 先生がいない園 親の学習コース受講が必須 自主的な遊びを通じて学ぶ・異年齢 家族が一緒に成長する(Families growing together) 質の高い保育(大人の数が多い) 出版『失われる子育ての時間』 2000 年に日本プレイセンター協会設立 ■保育への株式会社参入の調査で知った「親が先生を雇って自分たちで運営する園」 2013 年生協総研プロジェクトとして海外調査 出版『親が参画する保育をつくる』 スウェーデン、フランス、ノルウェー、ドイツ、アメリカ、カナダ、韓国、イギリス なぜ海外では親運営の園が広く見られるのか 施設の量的不足より質の追求(公立園で理想の保育が実現できない保育士、理想の園を 求める親、公立園の画一的な運営に対して柔軟な運営を求める親、密室保育に対する 不安、保育の質をチェックし安心したい親) 親同士のつながり・支えあいや学び・情報への欲求(核家族化、夫不在) 政府の注目・支援(質の高い保育の観点から補助、親の満足度が高く公的投資の正当性 の観点から注目、法制度で位置づけ、統計の整備) 園立ち上げや運営を支援する団体の存在(素人でも運営できるようサポート) 親の柔軟な働き方(事業所内保育で父親も参加可能) ■海外調査で明らかになった「園の運営委員会への親の参加を義務化する動き」 デンマーク、オランダ、ノルウェー、ドイツ、韓国 子どもの権利を守るために親の教育権を重視 子どもの代弁者として親の意見を聞く 学校教育における制度化が先行 国連の子どもの権利条約の影響 ノルウェーでは保育園児にも意見を聞くことを保育園法で推奨 ■海外調査で明らかになった「保育の質向上に親という資源に着目する動き」 親が保育の質をモニタリング(質に最も関心が高くチェックできるのは親である) 親の特技を生かしたボランティアの奨励(楽器、読み聞かせ、園芸、修繕など) 親同士で助け合う関係性の構築(園でのお茶会・飲み会、親子ピクニックなど) 物資・サービスの提供で予算の有効活用(園修繕の日、おもちゃづくりなど) 親の持つ情報と保育士の持つ情報をあわせる(家庭訪問、日常的なコミュニケーション) 1 図 アメリカの共同保育の哲学 親や子どもは保育サービスの消費者ではなく 子ども 共同生産者という考え方 保育者・親・子どもが共に学び成長する 親 保育者 (資料)Parent Cooperative Preschools International (2004) How to Start a Preschool or Child Care Cooperative 日本の幼児教育・保育における親の参画の状況 親運営保育所の実態不明(ごたごた荘(練馬区)などの事例、学童保育には多くの事例) 社会福祉法人以外の私立認可保育所、都認証保育所等には親参加の運営委員会の設置義務 幼稚園における取り組み(親が常に園に来ていて誰が先生か親かわからない、親の活動の ためのスペースの確保、園における親のボランティア) 保育所・学童保育は「保育に欠ける」子のみ利用可なので親のボランティアは想定外 保護者対応、保護者支援というとらえ方(パートナーではない) 個人情報保護による親のつながりにくさ 世田谷区で何ができるか 保育所における親の参画に関するルールの明確化(親代表が参加する運営委員会の設置義 務化、親の会の設置義務化、親の会の権限、園舎利用のルール、親ボランティアの推奨、 親による保育の質モニタリング団の制度化など) 親の参画に関するハンドブックの作成・配布(親参画に関するルールの周知、親の権利・ 義務、具体的な取り組み事例、問い合わせ窓口など) 保育者に対する研修(親に対するイメージを変える、具体的な手法) 園の評価のあり方(幼稚園の学校関係者評価) 参考文献: 池本美香編著『親が参画する保育をつくる―国際比較調査をふまえて』勁草書房、2014 年 Janis Keyser, From Parents to Partners: Building a Family-Centered Early Childhood Program, Redleaf Press, 2006 池本美香『失われる子育ての時間-少子化社会脱出への道』勁草書房、2003 年 2
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