システムエンジニアリング : インテリジェント な製品を効果的に

システム エンジニアリング
システム エンジニアリング : インテリジェント
な製品を効果的に提供するために重要な手段
今日、ほぼすべての業界で製品が急速に高度化し、相互接続されたソフトウェア集約型のシステムオブシステ
ムズへと進化しています。システム エンジニアリング手法においては、こうした複雑性がもたらす課題に対
応し、成功の妨げとなる障害を克服する必要があります。
し始めました。このパラダイムは、今やモバイル デバイ
ス自体が、アプリケーション、サービス、情報という形
で顧客価値を提供し続けるための単純なプラットフォー
ムとして扱われるまでに進化しました。ソフトウェア更
新プログラムを配信することで、ハードウェア設計の欠
陥さえもシームレスに修理または対処できます。
はじめに
インテリジェントな製品はこの 10 年間に、人命救助、リ
アルタイムのグローバル コミュニケーションと制約のな
い情報利用の実現、旅行時の安全性の向上、戦闘手段の
変化、消費者製品での想像を越えた機能性の実現など、
重大な社会的変化をもたらしてきました。これに伴い、
ディスクリート系製造製品は非常に複雑なシステムオブ
システムズとなり、製品が相互接続し、支援エコシステ
ムとも接続して、リモートによる欠陥検出、新機能の
追加、センサー データの解析、製品コンフィギュレーショ
ンの変更、サービス スケジュールの自動設定、ユーザー
への広範な情報の提供などが可能になりました。相互接
続されたインテリジェントな製品の可能性は、現時点で
は無限とも言えるでしょう。
最新世代の自動車も、数々の高度なセンサーの使用、「電
子制御方式による運転」技術、車両全体におけるソフト
ウェア使用の拡大により、すでに変貌を遂げています。
自動車メーカーは、今では車両を情報やサービス ネット
ワークに接続して、最新世代のスタンドアロンの車両を
システムオブシステムズへと変えるプロセスを進めてい
ます。このアプローチにより、どれほど高機能でも接続
されていない車両では不可能だった機能が可能になって
います。
私たちを取り巻くインテリジェントな製品
たとえば、サービス ニーズを自動検出して通知する機
能を持つ車両がすでに消費者に提供されています。今後
数年でこのアプローチにより、渋滞がひどい地域で車両
の制動や加速を集中的にリモート制御して交通量を最適
化するなど、さらに重要な機能が実現されるでしょう。
数年前から、グローバルな電話網や通信会社のネットワー
クに常時接続されている携帯電話などの複雑なシステム
オブシステムズの到来により、製品やサービスにおける
システム思考を示す兆候が私たちの生活にも影響を及ぼ
ページ :
1
2
3
4
5
6
7
PTC.com
システム エンジニアリング
また、集中交通管理システムやその他のインターネット
ベースの情報源との永続的な通信リンクを利用して、従
来の自律制御と最適化された 2 地点間ナビゲーションを
組み合わせたコンピュータ制御車両の製造もすでに行わ
れています。
インテリジェントな製品による複雑性の増大
このパラダイムの変化は製造メーカーにとってイノベー
ションの好機であるだけでなく、矛盾も生み出していま
す。こうした機能は、製品ライフサイクルのあらゆる局
面で本質的に複雑化を伴います。1 世紀以上前の第 1 次
産業革命から始まって、製造製品は機械的設計から電気
機械的設計、メカトロニクス設計、ソフトウェア依存型
の設計へと変化しています。このような遷移により、製
造メーカーは迅速なイノベーションを実現し、コスト削
減、品質改善、コンプライアンスの合理化、製品の市場
投入までの期間の短縮などを達成してきました。
農業機械や建設機械でさえもこの思考の転換の影響を受
けています。穀物収穫機は高機能のシステムオブシステ
ムズへと変わりつつあります。現在の収穫機には、セン
サー、携帯電話、衛星データ通信リンクが装備され、ソ
フトウェアの量も増大しています。インターネットベー
スの支援ソフトウェア システムと通信することで、機械
を常に最大効率で稼働し続けるために必要な点検修理を
調整できます。非稼働時間が大きな損失をもたらす収穫
最盛期には、保有しているすべての機械をリアルタイム
で監視し、支援ソフトウェアを使用して、機械の保守が
必要になる時期を事前に予測することができます。
しかし同時にこの遷移によって複雑性が劇的に増大しま
した。製品の複雑性は前述の目標を達成する妨げとなる
ため、ここに矛盾が生じます。製品が複雑になると、製
品を設計する前にニーズ、リスク、要件のより詳しい理
解が必要になり、設計、製造プロセス、さらに製品の耐
用期間中のサポート プロセスもより複雑になります。こ
れらがすべて積み重なり、コストの増大、品質の低下、
コンプライアンスの不徹底、開発サイクルの長期化へと
つながり、イノベーションを妨げます。
インテリジェントな製品の導入により、製造メーカーは、
製品に比例費用を上乗せすることなく付加価値を加え、
個々の設備の販売から回収できる利益を増大する数多く
の方法を手に入れました。しかしそれ以上に重要なのは、
主力製品に伴うサービスを基盤とした新しい反復的な収
益源が生まれたことです。このようなサービス中心の製
品モデル、つまり製品のサービス化により、製造メーカー
には、製品の耐用寿命を通して製品のエンジニアリング /
製造コストの大半またはすべてを償却する自由が与えら
れました。また、今日では物理的な製品が、高価値サー
ビスを提供するためのプラットフォームになっているた
め、「陳腐化」の概念も終わろうとしています。「時間とと
もに進化する製品の設計」という概念がこれに取って代わ
るでしょう。これは「第 3 次産業革命」とも呼ばれる、製
品製造パラダイムで現在進行中の大規模な根本的変化の
一端です。第 1 次、第 2 次産業革命と同様、私たちの世
界もこの産業革命によって劇的に変わることでしょう。
最も新しい、メカトロニクスからソフトウェア依存型製
品設計への変化は、製品の複雑性の劇的な増大だけでな
く、別の種類の複雑性、つまりソフトウェア特有の性質
に関連した複雑性ももたらしました。この特有の性質の
1 つとして、ソフトウェア コードの 1 行に一見些細な変
更を加えたことで、プログラムの変更を加えた部分とは
何の関連性もないように見える別の部分で予期しない不
要な動作が起きるという性質があります。このようなソ
フトウェア欠陥は、副作用とも呼ばれ、ソフトウェア依
存型製品のある種の動作を表し、予測不可能で無作為の
ように見えます。実際には、副作用は無作為な動作など
ではなく、ソフトウェア プログラムの高い複雑性に起因
しています。ソフトウェアがもたらす複雑性の理解はい
まだ不十分であり、関連リスクを効果的に予測し、管理
するために必要なレベルに達していません。
最後に、今日では、スタンドアロンのソフトウェア依存
型製品からシステムオブシステムズを構成するインテリ
ジェントな製品への移行によって、システムオブシステ
ムズに特有の新たな複雑性ももたらされています。その
結果、製造メーカーは、従来の製品エンジニアリング、
製造、サービス プロセスを大幅に変化および前進させな
ければならないという新しい課題に直面しています。
ページ :
1
2
3
4
5
6
7
PTC.com
システム エンジニアリング
製品の複雑化がエンジニアリングにもたらす課題
イノベーションの障壁
インテリジェントな製品は、実用技術や設計行為だけで
なく、製品開発プロセス自体も複雑化させ課題となって
きているこの複雑化を分類する 1 つの方法として、コス
ト、スケジュール、パフォーマンスという従来のエンジ
ニアリングが抱えていた 3 つの制約という観点から見て
みましょう。
新製品や既存の製品の機能強化でよいアイデアが生まれ
ても、その実現に伴う複雑性の増大によって生じるコス
ト、スケジュール、リスクに関する懸念から、アイデア
が棚上げにされてしまうことがよくあります。さらに、
エンジニアは、製品にすでに内在する膨大な複雑性に気
を取られ、イノベーションに取り組む時間もエネルギー
もありません。このため、新しいアイデアも詳しく調べ
る前に棚上げにしてしまいがちです。
開発コストが増え、市場投入までの期間が長期化する
製品が複雑であるほど、その仕様作成、設計、構築には
コストがかかります。実際、製品の機能、コード、電子
部品の量が増えると、その複雑性は幾何級数的に増加す
る傾向にあります。これは組織にとって致命傷になりか
ねない追加の諸経費を生み出し、コストの上昇と開発サ
イクル時間の長期化を招きます。
新たな複雑性
ディスクリート系製品の高機能性と複雑性が増し、相互
接続された大規模なシステムの一部になったことで、複
雑性のレベルが増大するだけでなく、新たな特徴を帯び
るようになっています。
システム エンジニアリングは本来、単一システムの複雑
性に対応するために生まれました。システムオブシステ
ムズは新たな複雑な動作を示す傾向にあるため、これに
対応するにはシステム エンジニアリング手法の適応や拡
張が必要になります。
リスクが高まり、品質が低下する
製造物責任と法規制順守のコストは急増しています。製
品が複雑化すると、使用方法や環境、稼働期間を問わず
に製品が意図したとおりに機能することを保証するのが
困難になります。製造物責任と法規制が急激に厳格化し
ている現在の環境においては、製品の 1 つに壊滅的な不
具合が生じただけで、製造メーカーは巨大なリスクに直
面することになります。このため、製造メーカーは、リ
スクの特定、管理、緩和だけでなく、より費用のかかる
品質保証、検証、テスト プロセスにもさらに労力を注ぐ
ことを余儀なくされています。
ソフトウェアの使用の増大
システム エンジニアリングに変化を促す最後の、そして
同等に重要な課題は、製造製品におけるソフトウェアの
使用が爆発的に増加していることです。ソフトウェア集
約型製品は、ほぼ同等の機能を持つメカトロニクス製品
と比べて、より多くの処理を迅速に低価格で行うことが
でき、信頼性にも優れています。
以下の図は、ソフトウェア集約型製品が、メカトロニク
ス製品と比べてどれほど大きな利点を製品製造メーカー
に提供できるかを示しています。
継続的なイノベーションのためにソフトウェアを活用
ソフトウェアの修正は安価でタイムリーに行える
ソフトウェアは設計後半でも柔軟性を提供する
ハードウェア設計は
早期に固定される
ソフトウェアのアップグレードと機能は制限なく提供
可能で製品の耐用期間を延長する
イノベーション
ソフトウェアは製造コストの
増加をほとんど伴わずに進
化する
ハードウェアは消耗し、
修理代が高い
ハードウェアは変化しない
設計
ページ :
1
2
製造
3
4
サービス
5
6
7
PTC.com
システム エンジニアリング
ただし、これらの利点には、うまく管理しないと、すべ
ての利益、さらにそれ以上のものも帳消しにしかねない
よく似た課題が伴います。この重要な違いを管理するこ
とに慣れていないと、望ましくない手痛い結果に驚かさ
れることになるでしょう。一例を挙げると、自動車メー
カーが現場のすべての対象車両モデルにリモートでソフ
トウェアの変更を加えたときに、その変更に安全を最重
視するサブシステムの故障を招く新しい欠陥が含まれて
いた場合、生じる結果は広範で壊滅的かつ高価なものに
なります。ソフトウェアはハードウェアでの複雑性とは
異なる別の種類の複雑性をもたらします。
ソフトウェアこそがインテリジェントな製品のイ
ノベーションの決め手
「
ソフトウェア主導のイノベーション
は市場競争における未開拓領域です
が、ソフトウェアベースの製品の柔
軟性と機敏性の向上により、企業に
よる 迅速な イノ ベーションを 支援
し、好機をもたらします」
このような利点や課題は、ソフトウェアが本質的にハー
ドウェアと異なるという事実から生じるものです。その
根本には、ソフトウェアが物理的実体を持たないという
事実があります。基本的にソフトウェアは、製品に組み
込まれたマイクロプロセッサによって実行される一連の
命令です。ソフトウェアは本質的に、ある行のコードが
別のコードに及ぼす副作用を理解するのが難しく、2 行の
コードが別々のハードウェア コンポーネントを構成する
異なるソフトウェア モジュールに存在する場合はさらに
理解が困難になります。この結果、次のことが言えます。
ジム・ブラウン (Jim Brown) 氏
Tech-Clarity, Inc. 創業社長
Issue in Focus: Systems and Software-Driven
Innovation – Complexity and Opportunity in the
Mechatronic Era, Tech-Clarity, Inc., 2011.
• ソフトウェア開発作業は、計画、見積もり、測定が難
しい。
システム エンジニアリングに変化をもたらしているその
他の要因
• ソフトウェアがもたらすリスクは特定と緩和が難しい。
製品の複雑性はシステム エンジニアリングの分野に変化
をもたらす主な役割を果たしてきましたが、その他にも
システム エンジニアリング手法に変化をもたらしたもの
があります。
• ソフトウェアの欠陥は予測と検出が難しく、品質を保
証して測定するのが難しい。
• ソフトウェアの変更は、計画、見積もり、測定が難しい。
グローバルな競争、顧客基盤、および開発 :「より良く、
より速く、より安く」
• ソフトウェアの変更は、ハードウェアの変更よりも頻
繁に行われるため、従来のエンジニアリングの変更管
理プロセスやツールを用いた管理が難しい。
製品製造メーカーは、製品の投入と収益を世界市場へと
拡大し始めています。この結果、新しい競合他社が地域
市場に次々と参入し、同時に世界市場にも参入できるよ
うになったため、当然競争が激しくなっています。消費
者や製造メーカーは、明らかに、この結果として生じる
イノベーション、製品コストの低下、市場投入までの期
間の短縮の恩恵を受けたと言えるでしょう。しかしこの
事象には別の側面もあります。「より良く、より速く、よ
り安く」を執拗に追及し続けた結果、製造メーカーは製
品の市場投入方法を改善するという非常に大きなプレッ
シャーにさらされるようになりました。現在も一般的に
使用されている業務プロセス、エンジニアリング プロセ
ス、製造プロセス、サービス プロセスの多くは、重圧の
下で崩壊し、
ニーズを満たすための拡張に失敗しています。
インテリジェントな製品のソフトウェアへの依存はさら
に高まり、性質的な違いから、エンジニアリング、製造、
サービスを含む製品ライフサイクル全体において、プロ
セスとツールに大幅な変更が生じています。つまり、ソ
フトウェアがハイテク製品に急速に導入されたことによ
り、製品製造業界に、途方もない好機と課題が溢れるまっ
たく新しい世界がもたらされたと言えるでしょう。
ページ :
1
2
3
4
5
6
7
PTC.com
システム エンジニアリング
インテリジェントな製品に対応したシステム エンジニア
リング
責任と法規制の負担の爆発的増加
増大し続ける製品責任と法規制負担に関連したコストは、
近年の製品製造メーカーの主な懸念となっており、しば
しば、はたから見ると非合理的な行動を引き起こしてい
ます。この傾向に関連したリスクは、事前にリスクを管
理して軽減する手段が限られている場合、ビジネスに壊
滅的な結果をもたらす可能性があります。これらの問題
に対処するには、製品の品質、安全性、信頼性を改善す
ると同時に、政府の規制当局および業界標準の増え続け
る相容れない需要に対応しなければならないことを製造
メーカーは理解しています。
製品の品質、安全性、信頼性を改善すると同時に、製品
をより良く、より速く、より安く提供するための複雑性
の増大に対処するため、製造メーカーは製品ライフサイ
クル全体におけるビジネス方法の見直しを迫られていま
す。この困難なシナリオの中で小さいながらも重要な助
けとなるのは、この課題に対処するために必要な変更が、
「より良く、より速く、より安く」という課題への対処に
必要な変更とほぼ同じである点ですが、この 2 つの優位
性を実現するためには、共通する変更を慎重に組み込ま
なければなりません。
システム エンジニアリングが今まで以上に大きな
付加価値をもたらす
「
システム エンジニアリングをより効
果的かつ広範に行うことで、たとえ
複雑性が増しても、40 % 以上スケ
ジュールを短縮できます」
Boehm, et al, The ROI of Systems Engineering:
Some Quantitative Results for SoftwareIntensive Systems, Journal of Systems
Engineering, vol. 11, 2008.
現在、エンジニアリング組織の大部分は、分野別に編成
された独立したエンジニアリング チームが、それぞれ主
に自分の分野で作業するという従来型のモデルを実践し
ています。システム エンジニアは、サブシステム、コンポー
ネント、インタフェース仕様を「垣根越しに」機械、電気、
ソフトウェア担当チームに投げ入れています。これらの
チームは主に自分たちだけで作業し、それぞれの設計や
コードを提供しており、エンジニアリング サイクルの後
半になるまで、これらの設計やコードがシステム レベル
で統合され、テストされることはありません。このため、
開発サイクルの後半になってからやり直しが必要になり、
高価で時間のかかるテスト修正サイクルが生じています。
テクノロジの急激な進歩
材質科学やナノ テクノロジ、センサー、ワイヤレス接続
など、製品製造に影響を及ぼしている重要な分野での最
近の技術的進歩は、製造メーカーやシステム エンジニア
にも多大な影響を及ぼしています。これらの進歩は、形
勢を一変させる急速な製品イノベーションを可能にしま
すが、それぞれの進歩があらゆるエンジニアリング分野
での実践、方法、ツールの調整を必要とします。言うま
でもなく、各分野におけるそのような変化のためには関
連分野の調整も必要です。その結果、システム エンジニ
アには、新しい技術的変化にすばやく効果的に対応し、
最大限に活用することに対する多大なプレッシャーがか
かっています。
このような課題は、革新的でスマートで信頼性に優れた
製品を少しでも速く安く市場に投入しようとする組織の
能力を妨げるものです。これらの課題は分野横断的で総
体的な性質を持っているため、従来の「分割統治」型のエ
ンジニアリング戦略では対処できません。
製品とシステムは何年も前に複雑性の目に見えない敷居
を越えました。ライフサイクルの早期に最も重要なリス
クを特定して除去するには、従来のウォーターフォール
型のシステム エンジニアリング手法では不十分です。そ
のような手法では、後期段階でやり直しが必要になって
コストが大幅に超過したり、市場投入が遅れたり、さら
に悪い結果を招くこともあります。
このため、製造メーカーがこの複雑性を掌握するには、製
品設計に対して多様な専門分野にまたがる反復的なシステ
ム エンジニアリング アプローチの採用が不可欠です。
ページ :
1
2
3
4
5
6
7
PTC.com
システム エンジニアリング
反復性が求められるシステム エンジニアリング
新しい製品ライフサイクルへの対応が求められるシステ
ム エンジニアリング
前述したとおり、検討対象のシステムが複雑化するほど、
製造メーカーが早期に重要なリスクを除去して、最初か
ら製品を正しく効率的かつ効果的に設計し、構築できる
可能性は低くなります。システム要件やアーキテクチャ
からコンポーネント設計および検証まで、ライフサイク
ルの早期の段階を繰り返すことで、エンジニアは「自分た
ちが知らないことを学習」し、システム要件やアーキテク
チャをそれに合わせて調整することができます。
今日の高度な製品の複雑化に伴い、新製品の当初のニー
ズの定義から始まり、製品の使用が終わるまで続く、よ
り総体的な製品ライフサイクルのアプローチが求められ
るようになっています。さらに、ディスクリート系製品
を主な収益源とする状況からインテリジェントな製品や
サービス化を主な収益源とする状況にパラダイムが変化
したことは、システム エンジニアが製品ライフサイクル
のサービス段階にもっと力を入れなければならないだけ
でなく、ライフサイクルをまったく新しい見方で捉える
ように適応していく必要があることを意味しています。
高い協調性が求められるシステム エンジニアリング
複雑なシステムオブシステムズを構築する際の最大の課
題は、分野横断的かつ総体的であることであり、もはや
分野別にエンジニアをチーム分けすることは理にかなっ
ていません。製造メーカーは、その代わりに多様な専門
分野にまたがる小規模チームを再編成する必要性を認識
し始めています。そのチームには、システム、機械、電
気 / 電子、ソフトウェア、製造、サービス エンジニアな
どのすべての重要なエンジニアリング部門の代表者が参
加します。このような環境では、多様な専門分野にまた
がる近接したコラボレーションが奨励されるだけでなく、
無駄のない反復プロセスと高度なコラボレーション技術
によってコラボレーションを実現する必要があります。
コンフィギュレーション管理、変更管理、欠陥管理など
のコア プロセスの相互分野サポートをハードウェアとソ
フトウェアの両方に組み込み、受け入れる必要がありま
す。そのような環境においてのみ、複雑な製品に伴う最
も重要な問題をライフサイクルの早期で突き止め、緩和
することができます。
システム エンジニアリングでは要件の早期かつ頻繁な検
証が必要
製品エンジニアリング ライフサイクルの非常に早い段階
でシステム要件を十分に検証できるように、適切な製品
を構築するために要件が正しいかどうかを判定する要件
検証のプロセスを調整する必要があります。この目標を
達成するには、数々の方法やツールを併用しなければな
りません。
モデル中心主義が求められるシステム エンジニアリング
具体的には、システム エンジニアリング手法において、
モデリングとシミュレーションが新しい役割を担う必要
があります。何十年もの間、システム エンジニアにとっ
て、テキストや静的な図表が仕様を作成しコミュニケー
ションを取り合うための主要かつ中心的なツールでした
が、インテリジェントな製品およびシステムの複雑な性
質に対応するためにモデルへと移行が進んでいます。一
般にモデルは、エンジニアリングにおける仕様作成とコ
ミュニケーションを行う際に曖昧さが少なくより総体的
なツールとなります。
MBSE ( モデルベース システムズ エンジニアリング ) を
システム シミュレーション言語と組み合わせることで、
1 つのシームレスなモデルでシステム要件とアーキテク
チャのあらゆる要素を捉え、検証するための不可欠な手
段になります。この移行によって、システム エンジニア
リング手法全体が変化する可能性があります。以下に例
を挙げます。
• SysML はシミュレーション モデル表記とともに使用
され、テキストや図表を用いた仕様の一部またはすべ
てを置き換えるものとして、多くのエンジニアリング
組織で採用されています。
• システム モデリングが進歩したことで、近い将来シス
テム エンジニアは、システム要件モデルをシームレス
かつ自動的にシステム アーキテクチャ モデルに変換
し、それをさらに高レベルのハードウェアおよびソフ
トウェア設計モデルに変換できるようになると考えら
れます。
ページ :
1
2
3
4
5
6
7
PTC.com
システム エンジニアリング
• システム モデルは、システムの動作、アルゴリズム、
エンジニアリング手法とソフトウェア エンジニアリング手
法の間の高い相関性がもたらす価値も増大し、システム エ
ンジニアとソフトウェア エンジニアが双方の手法やツール
を互いに共有し、適応させていくことになるでしょう。
パラメータ シミュレーションを進めるために使用され
ることが増えており、製品のニーズ、システム概念、
システム要件の検証をすばやくより明確に行うことが
可能になっています。
システム エンジニアリングの詳細
モデルは強力であり、非常に有望ですが、ほかのアーチ
ファクトと同様にライフサイクルを通じて管理する必要
があります。変更管理とコンフィギュレーション管理、
トレーサビリティ、組織的再利用はすべてライフサイク
ル管理の概念であり、モデルに一様に適用して、モデル
の価値を最大限に高める必要があります。
リーダーは、目標を達成するために、多様な専門分野に
またがるコラボレーション プロセスをチーム間で合理化
する必要があります。PTC のシステム エンジニアリング
アプローチにより、製造メーカーはあらゆる製品要件を
正確に確認および検証すると同時に、最高の製品品質を
確保することができます。詳細については、
PTC.com/solutions/systems-engineering をご覧くだ
さい。
結論
システム エンジニアリングとソフトウェア エンジニアリ
ングのシームレスな連携が必要
PTC のシステム要件と検証ソリューションは、グローバ
ルな製造メーカー向けの高度なシステム エンジニアリン
グをサポートするのに理想的です。
前述したとおり、ソフトウェアとハードウェアは異なる
ため、ソフトウェアの複雑性と変更もハードウェアのそ
れらとは異なります。システム エンジニアリングとソフ
トウェア エンジニアリングは多くの点でシステムとハー
ドウェア エンジニアリングと似ており、この類似性は、
システム エンジニアリングとソフトウェア エンジニアリ
ングを専門とするトップ企業も注目しています。システ
ム エンジニアリングとソフトウェア エンジニアリング
の緊密な関係は、単なる偶然ではありません。これはソ
フトウェアがその独自の性質上、アーキテクチャ、設計、
モデリング、シミュレーション、開発、テストなど、あ
らゆる局面でシステムとして扱われるという事実を考え
れば当然と言えます。したがって、製品におけるソフト
ウェアの量と役割が今後増していくにつれて、システム
ページ :
1
2
3
4
PTC.com/solutions/system-requirements-validation
© 2013, PTC Inc. (PTC). All rights reserved. ここに記載された情報は、情報提供のみ
を目的としたものであり、事前の通知なしに変更される可能性があり、PTC が保証、約束、
条件提示、提案を行うものではありません。PTC、PTC ロゴ、Windchill、およびその他
すべての PTC の製品名およびロゴは、米国およびその他の国における PTC またはその
子会社、あるいはその両方の商標または登録商標です。その他の製品名または企業名は
すべて、各所有者の商標または登録商標です。新製品や新機能のリリース時期は予告な
く変更されることがあります。
J2765-System-Engineering-ebook-JA–1013
5
6
7
PTC.com