第5回フォーラム議事録(女性活躍)(PDF:558KB)

第5回仙台市国家戦略特区(地方創生特区)
ソーシャル・イノベーション・フォーラム
テーマ「女性活躍・子育て関係」
平成 27 年 8 月 7 日(水)14:00~
TKP ガーデンシティ永田町
カンファレンスルーム2E
○出席者一覧
NO
氏名
所属
役職
1
青野 里美
特定非営利活動法人 ひよこ会
理事長
2
大日向 雅美
恵泉女学園大学大学院 平和学研究科
教授
3
奥山 千鶴子
NPO 法人子育てひろば全国連絡協議会
理事長
4
重原 達也
社会福祉法人 希望園 田子希望園
園長
○意見紹介
5
平山 乾悦
特定非営利活動法人
みやぎ・せんだい子どもの丘
理事長
○要約
「女性活躍・子育て」をテーマとして、
「地域限定保育士試験の実施」、
「都市公園内への保育
所設置」、
「人材の確保」
、
「地域型保育の促進」という 4 つの課題について討論が展開された。
「地域限定保育士試験の実施」に関しては、資格取得の機会が増えることに歓迎の声が多く
寄せられた。また、保育士の定着には、給料をはじめとする処遇改善や現場研修等のフォロ
ーが必要との意見が出された。
「都市公園内への保育所設置」では、土地の確保といった恒常的な問題が解決できる一方、
公園は公共の場であることから、地域の方々の理解が必要との意見が述べられた。
「人材の確保」については、新卒の保育士を増やすだけではなく、一定の人生経験を積ん
だ人材を保育補助者として育成することの意義が語られた。
「地域型保育の促進」では、3 歳未満の待機児対策という観点からだけでなく、未満児だ
からこそ、少人数で手厚く保育ができる小規模保育や家庭型保育が必要であるという見方が
披露された。併せて、幼稚園を含めた連携施設の確保も重要であるとの意見が出された。
1
○出席者自己紹介
◆青野 里美 氏
青野:保育園の運営、障害児通所支援施設、そして行政委託事業の児童クラブの運営をさせてい
ただいております。現在、県内で 20 カ所ぐらいの施設の運営をさせていただいている中、日々い
ろいろな課題があり、そして日々反省し、向上するために頑張っております。
◆重原 達也 氏
重原:定員が 120 名の保育園の園長をしております。今年の 4 月から仙台市保育所連合会という
仙台市の公立と私立の保育園の団体の会長に就任しました。併せて、仙台市の私立保育園の協議
会がありますが、その会長もさせていただいております。
◆大日向 雅美 氏
大日向:多摩市にございます恵泉女学園大学に勤めておりますが、同時に NPO 法人あい・ぽーと
ステーションで、子育てひろばの運営や地域の子育て・家族支援者の養成にも努めております。
専門は発達心理学で、40 年余り育児不安、育児ストレスの研究を行い、大学では親子関係や子ど
もの発達、男女共同参画論などを講義しておりまして、その実践の場として NPO の活動をしてお
ります。
◆奥山 千鶴子 氏
奥山:横浜で活動をしております NPO 法人びーのびーので、地域子育て支援拠点を 2 カ所運営さ
せていただいております。また、子育てひろば全国連絡協議会の理事長をしております。この組
織は、地域子育て支援拠点事業の中間支援組織となっており、全国で会員が 1100、9 割が団体の
会員でございます。
○座長挨拶
伊藤副市長: 3 月に仙台市が国家戦略特区に内定したことを受けまして、9 月をめどに区域会議
を開催し、区域計画を定めたいと思っております。このソーシャル・イノベーション・フォーラ
ムは、それに向けまして、有識者の皆さまからお話を伺って、どのような特区にしていくかとい
うことをご議論いただこうと開催しているものでございます。
今回 5 回目でございますが、全部で 6 回を予定しております。東京で 3 回、仙台で 3 回開催し
ます。テーマは、社会起業、女性活躍・女性起業、それからエリアマネジメントと三つに分かれ
ています。きょうは、女性活躍・女性起業の中で、子育てに絞って、皆さんからご意見をお伺い
したいと思っています。
皆さまがたから、あらかじめお渡ししてある論点等に基づいてお話をいただくというのが趣旨
でございます。何度もお話を回してお伺いすることになると思いますので、大変恐縮ですがよろ
しくお願いしたいと思います。
2
○プレゼンテーション
◆大日向 雅美氏のプレゼンテーション
大日向:本日は特に地域の人材養成に絞ってお話をさせていただきます。今、子育て支援が各地
で精力的に進められておりますので、かつてに比べれば子育て環境は随分便利になったといえる
かと思います。しかし現場から見ますと、依然として子育ての現実は厳しいのです。とりわけ育
児の負担に苦しみ子どもの預け先に困っている親は、たくさんおられるわけです。こうした厳し
い子育ての実態を解決すべく、今年 4 月に子ども・子育て支援新制度がスタートしたわけです。4
月にスタートしたばかりですので、これから解決しなくてはならない課題もたくさん残されてい
ることも事実かと思います。新制度が主に目指しているのは、全ての子どもに良質な発達環境を
保障すること。そして、親の多様なライフスタイルを尊重しつつ、安心して子育てと仕事の両立
ができる環境を保障すること。この 2 点です。
本日は、冒頭、申しましたように地域の人材養成についてお話をさせていただきますが、それ
は新制度が目指しているものに直結するとお考えいただいてよいかと思います。OECD の教育委員
会、あるいはアメリカの NICHD(国立子どもの健康と人間発達研究所)の研究等では、いずれも
保育の質について大変参考となる研究を蓄積していますが、ここで明らかにされている保育の質
とは、環境的な整備はもちろんですが、同時に保育者の質の重要性です。子どもの発達を保障し
て、家庭の子育てを支えるためには、保育の量的な拡充だけではなく、いかに質・特に保育者の
質を確保しながら増加させていくかということです。これを国、市区町村、事業主、そして地域
が連携して協働で推進していくことが必要かと思います。
きょうは、その一つの実践として、私が代表理事を務めております NPO 法人あい・ぽーとステ
ーションの実践について少しご紹介したいと思います。NPO 法人あい・ぽーとステーションは、
地域の新たな子育て・家族支援の拠点となることを目指して、公立幼稚園の跡地を港区からお借
りして、区と協働で運営実施しているものです。2003 年のスタート時から一貫して、
「つどいの
ひろば事業(子育てひろば「あい・ぽーと」)
」「一時保育事業」「地域の人材養成」を主な事業内
容としております。
「あい・ぽーと」で私が開所当初から力を入れているのは、親と子が楽しく遊
ぶ場の提供と共に、親支援・特に母親支援です。子育てに喜びを見いだせるようになるためにも、
母親にゆとりと学びが大切だと考えてきました。育児中だからこそ視野を広く、地域にも社会に
も国際情勢にも広げながら学んでいただきたいと願って、親の学びの講座にも力を入れておりま
して、図書ルームも整備しております。またいろいろな子育て相談にも力を入れております。そ
れから、恵泉女学園大学と協働で本格的な有機野菜を作っています。都会の親子が土に触れ、作
物を育てることを通して、命の大切さや恵みの豊かさを実感する機会となっています。そして、
こうした子育て支援の現場を全国の皆様にも体験していただくための機会として、1 年に 1 回、
住友生命保険相互会社の子育て支援の助成をいただいて、東京フォーラムでキッズジャンボリー
にも参加しています。毎年 1000 人以上の親子が来てくださっています。
そして、もう一つ力を注いでいるのが、理由を問わずお預かりする一時保育です。親がゆとり
をもてるように、親の学びやリフレッシュへの支援も含めて、理由を問わずお預かりすることを
3
モットーとしておりまして、
開設当時としては非常に新しいものでした。
施設内の一時預かりは、
朝の 7 時半から夜の 9 時、年中無休です。お休みは 12 月 31 日と、お正月の 3 日間、年 4 日間だ
けです。現在では施設の中だけではなく、アウトリーチ型で、派遣型(訪問型)一時保育として
地域にも展開しています。そのためにも、地域の人材養成、
「子育て・家族支援者」の養成に力を
注いできました。
「子育て・家族支援者」となるためには、子育て経験の有無は問いません。20
歳から大体 60 代までの方々で、地域の子育て家庭のために役に立ちたいという熱意をもった方々
が、あい・ぽーとの講座に集まって下さっているのです。その講座は養成校の保育士養成にも勝
るとも劣らないほどレベル的にも非常に高度なものです。保育士さんと一緒に一時保育を担当す
る「子育て・家族支援者」の 3 級だけでも 90 分が 30 コマ、そして区立保育園やひろば等で実習
もしていただいています。これまでの 10 数年間で、港区・千代田区・浦安市・高浜市等で、1500
名を超える支援者の方々が誕生しています。しかも、認定を受けた後を私たちの NPO では非常に
大切にしております。この方々の活動は行政と協働で有償であることを保障しております。そし
て、認定後も毎月、バックアップ講座の受講を義務付けていて、知識や技術の維持向上を図ると
共に、活動中のさまざまな課題に対して、事務局あげてバックアップする体制を整備しておりま
す。 厚労省が子育て支援員という制度をこの 4 月に立ち上げましたが、その参考の一つになっ
たのが、恐らくあい・ぽーとの人材養成ではないかと思っております。
この養成講座は段階を踏んで実施しているというところも特徴です。3 級の認定を受けると、
ひろばの一時預かりを保育士と一緒にやることができます。2 級になりますと、アウトリーチ型
で子育て家庭等に出向いて一対一で保育をするなど、責任がさらに重くなります。その次に、ひ
ろばコンシェルジュというものがあります。今、ひろばに来てもなかなか仲間がつくれない親も
少なくありません。そういう親にさりげなく寄り添って、ホテルのコンシェルジュのようにいろ
いろ館内のご案内をしています。そして最後に、子育てコーディネーターです。新制度の中にも
利用者支援事業というものが盛り込まれたことは、ご存じだと思います。ワンストップで、地域
の子育て関係の社会的資源をご紹介したり、さまざまな育児相談等にお応えしております。
さらに 2 年ほど前から、地域の人材養成として、団塊世代の男性を対象とした講座を開講し、
認定者の方々(
「子育て・まちづくり支援プロデュ―サ―」)が素晴らしい力を発揮してくださっ
ています。今、団塊の世代の方々が大量に定年を迎えているわけです。この方々には組織人、企
業人としてのすばらしい経験・知識等のお力があるのですが、これまでは地域にあまり還元され
てきませんでした。もったいないことです。そこで私はご経験をぜひ、地域に活かしていただき
たいと願いました。呼びかけは“現役時代の名刺で勝負”とうたいました。名刺人間は地域には
無用といわれてきたことへの逆転発想です。地位や名誉等への執着は捨てていただきますが、む
しろ、名刺に盛り込まれた 30 年・40 年の企業人・組織人としてのお力は是非とも地域に活かし
て欲しいと願って、2 年ほど前、この近くの六本木ヒルズで呼び掛けのシンポジウムをいたしま
したら、全国から 400 名近い方々が集まってくださって、そこから 50 数名が、子育てや地域支援
について学ぶ講座を受け、
「子育て・まちづくり支援プロデューサー」としての認定を取得されま
した。3期生まで誕生して、今、港区や千代田区の子育てひろば等の施設で、実にすばらしい活
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躍をしてくださっています。
今、地域の保育に携わる人が少ないという危機感から保育士をいかに増やすか、あるいは眠れ
る保育士をいかに発掘するかということが中心に議論されているかと思います。それもとても大
事なことだと思います。しかし、地域の子育て支援は保育士だけで担えきれるものではなりませ
ん。これは NPO 活動を通して得た実感です。今、地域にはいろいろなニーズを持ったいろいろな
家族がいます。人生経験豊かな方々が活躍することで、地域の保育士不足を補っていけるのでは
ないかと思っております。今まで地域の保育というと、女性と子どもだけの世界でしたが、団塊
世代の男性の方々も非常に大きな可能性を秘めているということもお伝えしたいと思います。
◆奥山 千鶴子氏のプレゼンテーション
奥山:NPO 法人びーのびーので、地域子育て支援拠点を 2 カ所運営させていただいております。
一つが商店街の空き店舗で 2000 年から始めております、おやこの広場びーのびーの。もう一つが
2006 年に横浜市からの委託事業として取り組んでいる港北区地域子育て支援拠点どろっぷ、それ
からファミリー・サポート・センター事業はどろっぷ内で実施しております。また、この 4 月か
ら小規模保育事業、ちいさなたね保育園を開設しております。自主事業として、2、3 歳児向けの
グループ保育まんまーる。これは就労要件を問いませんので補助が入らないですが、地域ニーズ
があるということでさせていただいております。
今、子育て支援施設というと、玄関にはセキュリティーでロックが掛かっているイメージだと
思うのですが、おやこの広場びーのびーのは、ドアにロックはかけず、子どもたちが通路で三輪
車に乗って遊んでいるような所です。商店街の方々の目が、安全の目になっていて、三輪車に乗
ったり、たらいを出して水遊びをしたり、昭和な感じの商店街になっております。ひろばでは、
一日 3 組までですが、一時預かりも実施しています。1 日 4 時間、1 カ月 8 回までということで限
定して、多くの方に利用していただいています。スタッフは有資格者ではありませんが、研修を
受けて担っており、日常的に通う場での一時預かりとして定着しています。
次に、どろっぷです。こちらは少し大きな施設で、仙台市にある、のびすく仙台さんのイメー
ジだと思います。下が 200 平米、上が 100 平米の一戸建てで、1 日 80 組ぐらいの親子利用があり
ます。特徴は、行政と協働契約書を結んで実施している点です。毎年、行政と共に目標をつくっ
て、その確認をしながら実施するという形になっています。普通ですと施設管理というイメージ
があると思うのですが、ネットワーク事業と人材育成事業が入っておりますので、地域全体、港
北区全体の子育て支援のネットワークづくりと人材育成が求められています。地域担当が 1 人、
また 13 連合町内会がございますが、地区担当が決まっておりまして、地域のお祭り、パパプログ
ラムなど外に出て活動したり、コーディネートする形になっております。
また、各区に 1 館、こういった地域子育て支援拠点があるのですが、全ての区で 1 月より利用
者支援事業を始めるということになっています。そして、港北区では子どもの数が実は増えてお
りまして、今後も増やす方向です。もちろん、ひろばが 4 カ所あり、支援センターが 1 カ所ある
ので、計 6 カ所地域子育て支援拠点事業がありますけれども、中学校区に一つが目標となってお
5
りますので、まだ 3 カ所足りないのです。
この 4 月より小規模保育事業、ちいさなたね保育園を開設致しました。19 人定員で 18 人利用
しています。108 平米あります。100 平米を超えますと用途変更が求められるのですけれども、こ
こは急いで整備しなければならないということで、横浜市建築局とこども青少年局で調整をしま
して、用途変更なし、事務所扱いで行っています。これは 3 階建てなのですが、2 階、3 階はマン
ション、1 階が事務所です。消防設備等について、建物全館を網羅するための許認可や調整の部
分での難しさがありましたが何とか 4 月にオープンさせていただきました。また、実施場所の確
認申請に図面が全部そろっていないといけないのです。場所を探すのに苦労しました。
子育てひろば全国連絡協議会は中間支援組織で、地域子育て支援拠点事業に取り組む人たちの
支援をさせていただいております。また、研修事業にも取り組んでおります。地域子育て支援に
おいても人材育成ということが求められていると実感しております。
きょうのお題であります規制改革の部分、地域限定保育士でございますが、今年度、神奈川県、
大阪府、沖縄県、成田市で始まります。神奈川県も今年秋にも実施するということで、この 8 月
中旬までに申し込み、秋に試験ということです。年に 2 回のチャンスがあるというのは、とても
大きなことではないかなと思います。それから、担い手不足の解消につきましては、今、子育て
支援員研修の活用が、非常にキーワードになってくると思います。4 本目の矢ということで、ヒ
トノミクスというようなことを提唱されている方がいます。3.11 の後、東北を応援したいという
方々はたくさんいらっしゃると思うのです。そうした人も含め、外部を巻き込む物語を作ってい
くことがとても大事ではないかと思っています。
また、地域型保育の推進ということです。仙台市内はマンションが多くて、緑が多いという話
もございました。やはり、家庭的な保育、小規模保育を推進するといいと思います。その一つと
しては、私どもは事務所でしたけれども、空き家活用ということもあるのかなと思います。私ど
もの横浜でも 1 カ所、
古い家屋を使った空き家活用の小規模保育ができてきております。
実は今、
私は国土交通省の空き家活用の委員をさせていただいておりまして、これから高齢化に向かって
空き家がどんどん生まれてくるということなのです。ただ、利活用は難しいのです。相続の問題、
規制の問題、建物の問題、いろいろなものをクリアしなくてはいけません。横浜では、今年、弁
護士会、土地家屋、司法書士会、それぞれの分野で空き家対策の窓口をつくって、さらにまちづ
くりの窓口がもう一つあって、行政や地域との関係の中で空き家をどう使うかということのコン
サルティングも入れたのです。空き家をどう使うかということについて、もう少し考えていくと
いいと思うのです。
やはり 3.11 後、人々は日本全体としてつながりを求めています。ある意味、今起業したい、何
かしなければ、人と人がつながらなければという思いが、とても膨らんできているいというふう
に思います。多分仙台も同じ状況ですから、活動の場所をいかに提供するかを整理していくとい
いと思っています。
少し年齢別に仙台市さんのお子さんの状況などを聞かせていただいたところ、全国に比べてゼ
ロ歳児の保育所の入所率も結構高いというふうに見ました。また、小規模保育を含めますと、ゼ
6
ロ歳児、1、2 歳児の所も上がってきているということです。やはり小規模保育は、非常に有効に
なってきていると思います。また、外国籍、外国にルーツがあるご家庭、養育に不安のある家庭
も含めて、家庭的な中で家族全体を見て支援ができるという良さを感じています。
あとは、どこの地域でも少子化の問題は非常に大きいわけですけれども、まずパートナーの協
力が非常に大事だということです。21 世紀家庭動向調査の結果によると、お子さんがまだいない
ご夫婦で、妻が子どもを持ちたいと思うかどうかは、パートナーの家事の遂行頻度にかなり影響
があるということです。
「ほとんどしない」という方であると 48.1 パーセント、
「よくする」とい
うと 70.4 パーセントです。また、子どもがお一人いらっしゃるご家族の場合、これまで結婚した
夫婦は 2 人が希望のお子さんだったのですが、昨年の結果では下がってきているという状況があ
ります。1 人は何とかなるけれども、2 人目になりますと、やはりパートナーの協力、さらに自分
のママ同士の関係性があるかどうかです。上の子が幼稚園であれば、送り迎えを誰がするのかと
いう話になるのです。そうすると自助共助です。友達のママが見つからない場合には、公助とい
うか共助というか、ファミリー・サポート・センター事業などの活用、地域の人たちの出番とい
う形になるわけです。
今回、女性活躍の環境ということだったので、自分のこと、家族のこと、地域社会のことと見
たときに、リーダーとして活躍したいと思う女性を増やすということです。その中では、福祉事
業は一つ、子育て支援が入りやすいものと思っています。また、利用者支援事業はこちらが提供
する側なのですけれども、相談に乗って、一緒に伴走する中で、その人なりの子育てということ
を実現するために、ぜひとも利用者支援事業をいい形で実現させていきたいというふうに思って
います。
また、家族ということでいいますと、やはり夫婦共にというところが非常に大事です。私も東
北の人間なので、何となくイメージが湧くのですけれども、男性を立てるという地域性だと思い
ます。
なかなか男女の問題が表面化してこないというのが東北の現状だと思うのです。
それから、
先ほどもいいました第 1 子の子育ての充実と、夫とのパートナーシップということが、第 2 子の
決意になるだろうということです。私たちは地域子育て支援拠点の中でできることもたくさんあ
ると感じております。
地域社会も重要です。子育てしやすい地域環境がありませんと、いくら子育て支援の場が良く
ても駄目なのだろうというふうに思います。地域の底上げということが大事なので、地域子育て
支援、地域人材育成ということになります。私どももファミリー・サポート・センター事業の提
供会員をいかに増やすかということに苦心しておりまして、今は提供会員の半分が 40 代、50 代
なのです。小学校に入ったら提供会員になってくださいということなのです。どんどん掘り起こ
しをします。活用する人材をしっかりと考えていくことが大事だというふうに思います。また、
子どもが苦手という親が増えてきています。学生時代から子どもと触れ合う、世話をする経験が
とても大事ですので、今、学生を子育て支援の場にということで、いろいろな仕掛けを考えてい
る所です。
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○ディスカッション
1.地域限定保育士試験の実施について
青野:やはり私どもは、保育士確保に困っています。また保育士さんが、養成校からこんなにた
くさん卒業するのに、どうして遠くに行ってしまうのかということです。また、県で実施してい
る保育士試験の合格率が本当に低い、もう少し高めだったらいいなと、つくづく思います。もう
一度機会を与えて、試験の回数を増やしたらいかがでしょうか。試験ではないですけれども補講
といったものをして、微妙な点数の所にいる方に関しては、もう一度再試験というチャンスがあ
ったら、もう少し幅が増えるのではないかと思ってもります。
重原:保育士試験の機会が年に 1 回から 2 回に増えるということであれば、例えば 1 回目に不合
格になった人も、再度受験できるチャンスを得ることになり、合格する人数も単純に考えれば増
えることになります。保育士の人材確保という意味で言えばこの制度自体に反対するものではあ
りません。
ただ、試験の実施に当たっては単に保育士の数を増やすという目的のために、試験の内容を意
図的に安易にしたり、問題をやさしくしたりすることがないようにして欲しいと思います。私た
ち現場としては、養成校を卒業して資格を得ても、又は保育士試験を受験して資格を得ても、い
ずれにしても資格を取得した人たちが進んで保育の現場に来て保育士として働いてもらいたいと
思っています。
保育士試験での取得は現場での実習がないので、現場で働くに当たっては実際に保育の現場に
立ったときに不安や戸惑いもあるでしょう。でも、
その辺りについては各現場で研修を設けたり、
サポート体制を整えたりしながら、保育の仕事にスムーズに取り組めるような援助や努力が必要
だと考えます。
大日向:現状は、試験が 1 回です。あれだけの難しい試験を 1 回でパスするということは、なか
なか大変です。私の所でも、保育士試験バックアップ講座をやっているのですが、結構年配の方
がチャレンジされています。3 年計画で取得される方もおられます。それがもし年 2 回になれば、
チャンスが増えるわけですから、これは基本的に反対する理由はなく、ぜひ進めてほしいと思い
ます。ただ、もともと何のためにこういう試験をやるかというと、やはり保育士の確保が狙いで
す。試験の回数を増やすことだけではなくて、やはり処遇の問題が一番ネックだということでは
ないかと思います。もちろん処遇にはお給料の問題もあります。しかし、それだけではなくて、
今、保育士の方々は親対応に非常に苦労をしています。初めて保育の現場に立って、子どもの保
育に力に精いっぱい、力を注いでいるところにいろいろと難しい親対応が迫られてきます。さら
に仲間とのチームワークの難しさもあるようでして、それらが離職の理由にもなっているかと思
います。そうしますと、今、重原さんがおっしゃったように、入ってきてからいかにケアをして
いくかという OJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニング的なこと、あるいはバックアップ体制をい
かに組むかということにも、ぜひ注力をしていただきたいと思っております。
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奥山:2 回機会があるということは大事なことだと思います。ぜひとも進めていただいたらいい
と思います。私どもも今回新設園ということで、初めての子ども、そして初めての保育チームに
なります。そういうところで初年度だからこその振り返りやサポートということが、すごく大事
になると思っております。行政側からも、研修の養成プランをどうつくるのか、処遇改善をどん
なふうにするのかということをしっかり把握をされて、バックアップをしていくことが大事では
ないかというふうに思っております。また、これはお勧めしていいのか分からないのですけれど
も、横浜は保育士定着のために宿舎保証をしているのです。これは、いい、悪いではなくて、そ
の動きが少し出てきているという中で考えなくてはいけないことかもしれないです。
大日向:東京へ出たいという人を無理に押しとどめることはできません。しかし、帰ってきたい
と思うようにすることです。東京よりもこの杜の都の仙台のほうがはるかに良かったと思えるよ
うな町をつくっておくことが大事だと思うのです。さらにはパートナーが仙台で定職を持ってい
る女性をターゲットに、保育士試験の受験をすすめることも一つの方法かと思います。たとえば
転勤のない男性と結婚している女性を対象に、保育士資格取得を促すこともいかがでしょうか。
重原:昨年、宮城県保育協議会と保育士養成校との懇談会で伺った話では、関東圏や他県に就職
した学生数は全体の 1 割弱程で、
私たちが思っているほど数的には多くないことが分かりました。
学生さん達は意外と地元志向が強いということだったのです。
また、養成校を卒業しても全ての学生さんが保育の現場に就職する訳ではなく、残念ながら一
般企業や子ども関連の会社に就職される学生さんもおります。保育士の資格を取得したものの、
保育士という仕事への適正を判断して別の仕事に行く方もいるとのことですが、保育士資格をせ
っかく取ったのに保育現場に就職しない一番の理由はやはり何と言って処遇の問題です。仕事の
重要性や責任の重さと処遇状況を比較するとその賃金が見合っていないのです。労働の内容に対
して給料が安いのです。
保育士は子どもの命を預かり、子どもの心と身体の成長を助け、保護者の子育てを支える本当
に重要な仕事です。やりがいも大きいと同時にストレスも大きい仕事です。子どもの保育はもち
ろんのこと、保護者対応も近年益々難しくなっています。この保育士の仕事に対してそれに見合
った処遇の改善を図らなければ、保育の仕事に積極的に就こうとする人は今後も増えるはずはあ
りません。
その意味で行政はもっとこの問題に対してお金をかけるべきだと思います。
特に今、子ども達の育ちが非常に危うい状況です。保育士の専門性、保育士の質を上げていく
ことも、保育の大きな課題ですが、この状況ではそれもままなりません。保育士の処遇の改善は
喫緊の課題です。
青野:私は 16 年前に保育園事業をやらせていただいたときは、本当に思いのある、子どもを何
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とか成長させるためのボランティア精神がある方のみでつくり上げてきたように思うのです。や
はり今残っているのは、よその処遇がどうであれ関係なく居てくれる、10 年以上も勤めてくれる
スタッフが居るからこそ、私はできるのです。やはり若い 20 代の方ですと、どうしても処遇面で
動いてしまう方向にあると感じております。家賃保証ということをやるようになりましてから、
若い保育士が定着しました。そして、それ以上に今何をしたらいいのかという段階で、やはり事
業所内保育園です。保育士不足なのにもかかわらず、保育士の資格を持っているけれども生かせ
ないという保育士さんがたくさん居ます。ママさん保育士がおりますので、その方たちが働ける
場ができたらいいなと考えております。
奥山:自主事業のまんまーるという 2、3 歳児向けのグループ保育のスタッフは、有資格者が多
いのです。なぜかというと、やはり 8 時間は働けない。子どもがまだ幼稚園、小学生なので、子
どもが帰ってくるまでは自分の資格を生かして仕事をしたいというので、9 時から 1 時半、2 時ま
での仕事なのです。それだったら働けるということです。まんまーるの有資格のスタッフが、子
どもが中学校や小学校の高学年になったら、保育の現場に戻ってきてほしいと思っています。そ
ういう 4 時間、5 時間の働き方ができる事業を、もう少し組み合わせてみるといいかなというふ
うにも思っております。
【平山氏の意見】
保育士試験実施の頻度は現在の 1 回ではなく、回数を増やすことがのぞましいと思います。我
が子の子育ての経験はあるものの、
専門的な統計だった知識を有しない、
働く意欲はあるけれど、
資格を有しない等が通信教育を通じて資格を取得しようとしており、機会を拡大するためにも推
進すべきだと思います。
2.都市公園内への保育所設置について
大日向:今、保育所不足なのですが、保育所を造ろうと思うと土地の確保が難しいですし、近隣
が大反対する所もあります。そういう問題を解決するという意味では、都市公園の中に保育所を
設置すると、問題は一挙に解決するでしょうし、何より公園付きの保育所となるという点では、
いいかなと思います。ただ一方、公園そのものはどうなるのでしょうか。いろいろな人たちが遊
びに来ていた公園のスペースが減るということになるのでしょうか。その辺りの問題をどう考え
て、市民の理解を得るかということも課題ではないかと思います。
奥山:先ほどご紹介させていただきました、ちいさなたね保育園は、町が保育園ということがコ
ンセプトなのです。1 階の事務所ということで、園庭が基本的にないのですが、隣が公園です。
お向かいが神社なのです。それで、午前中はずっと外に出て活動しております。都市公園の中と
なりますと、横浜で見ていても公園愛護会の方、それから町内会、自治会の方、いろいろな方が
やはり関わっておられます。一つの公園に三つぐらいの保育園などが時間差で利用されていると
10
いうような形もあります。やはり、いろいろな年代層の方にお使いになっていただいている部分
があります。実際、現実的にやれるというのは、かなり大きな公園で、地域との調整がつくこと
というのが条件になるのではないかというふうに思います。一方で、そういった意味で公園が大
事であることは間違いないのです。園庭のない保育園などもあるわけですから、そういった意味
で地域の方と共存していき、子どもたちが遊んでいることも認めていただくことです。園の私た
ちも、清掃に行くのです。このように園側もちゃんと地域に貢献するのです。こういったような
ことが大事ではないかなと感じているところです。
重原:都市部では仙台市に限らず園庭がなかったり、ビルの中に保育園があるところも沢山あり
ます。実際に仙台市でもそのようなところが増えている印象があります。
公園内に保育所を設置することについては、公園のイメージとしては木立があって、緑があっ
て子どもが走り回れるような広場があってという、子どもの居場所の環境としては非常にいいと
思いますが、実際に保育所を設置することになれば、色々とクリアしなければいけない問題はあ
るでしょう。公園はまさに公共の場ですから条例の変更なども含め、周りの理解を得ることが何
より必要だと思われます。
青野:基本的には、やはりすごくいい環境だと思います。都市公園の中に保育園があるのは、す
ごくいいなと思います。それに当たり、やはりたくさんの課題はあるかと思います。公共の場で
あるために、たくさんの方の理解が必要なのかなと思っております。また、認可保育園でも基準
の中で、
代用として近くの公園が園庭として認可が下りている保育園がたくさんあると思います。
その保育園はどうするのだろうかとか、その保育園が園庭の代わりに使っているのだとしたら、
そこの公園に保育園を建てるのはちょっと厳しいのかなという思いはあります。
【平山氏の意見】
賛成します。以前に仙台市に認可保育園の設置について問い合わせたことがあります。その際
の返答は、
「仙台駅前か泉中央駅周辺に 2000 ㎡(約 700 坪)の土地の用意があれば申請することが
可能です。
」とのことでした。仙台市中心部にはそんな土地は無いので、現状としては利用者の多
い便利な場所に保育所を設置することはできないと理解していました。それが、都市公園内への
保育所設置が可能となれば土地の準備についての負担は軽減され、民間の参入に関しても期待で
きます。
3.人材の確保について
青野:福祉関係には進むのですが保育園には進まないという保育士さんも居ます。私どもが障害
児通所支援施設と保育園をやっている中で、就職ガイダンスなどに行きますと、圧倒的に障害児
通所支援施設のほうが人気なのです。先日も行ったのですけれども、20 対 1 の割合でした。保育
園で働きたいという保育士さんが 1 名しか居ませんでした。障害児通所支援施設のほうが 20 名居
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まして、
「どうして」
と聞いたら、
支援という言葉が今の若い方にすごく響くということなのです。
保育と支援というと、
「支援が響くのです」というお話を聞きました。
重原:子育て支援という意味では保育士さんに限らず子育てを支援する方は沢山いた方が良いと
思います。先程の大日向先生の活動では 20 代の方だけではなく、様々な年令の方、また、子育て
経験のある方等が子育て支援に関わっていることがわかりました。その中で特に研修のシステム
が充実しているのが印象的でした。これはとても大切なことだと思います。
翻って、今私たちの保育の現場で懸念されるのは、保育士の資格がなくても子育ての経験があ
ることや、ある一定の研修を受けることで直ぐに保育の現場に入れるということを一般化しよう
とする動きが見えることです。
通常、保育士の資格を取得する為には大学や短大、専門学校で 2 年から 4 年勉強して卒業する
か、先ほどの話題に上った保育士試験で合格するかのいずれかになります。一方では保育士の資
格がなくても、ある程度の研修を受ければ保育の現場に入ることも可能になっています。これは
何故かと言えば保育士不足が最大の要因です。しかし、保育の人手が足らないから、ちょっとの
講習や研修でそれでいいという安易な考えはやはり問題です。
今、特に保育士の質の向上が子ども達の育ち保育を考えた上で非常に大きな課題である時期だ
からこそ、保育士の研修を重ね、深めていくことが何より重視視されなければいけません。
人手不足の問題は保育の現場で今、日本全国どこでも深刻な問題です。だからといって安易な
方法で人手を入れればいいという考えはまずいのではないでしょうか。
青野:付け加えさせていただきます。私の経験からなのですが、もちろん保育士の資格を持って
いる有資格者の保育園もやっておりますし、一つは厚労省のモデル事業でグループ型家庭的保育
という事業をやらせていただきました。本年度は小規模保育に移行したのですが、保育補助者の
研修というものは本当に素晴らしいです。保育士の資格を持っているけれども、まだ経験の浅い
20 代の若い保育士さんというよりも、子育てを経験して結構厳しい研修を受けているお母さんに
働いていただいた結果、とても人気というか、保護者の方から「安心して預けられます」といっ
たご意見もいただきました。私が今までやっている中で、保育士の資格は国家資格だから、これ
がなければいけないというこだわりがあったのですが、モデル事業をやらせていただく一つの挑
戦をして、本当に素晴らしいと感じました。今後も家庭的保育、そして保育補助者といった方を
多くしていきながら、また質の下がらない研修を行って広げていっていただけたらなと感じてお
ります。しかし、その研修は、県内でも確か年に 1 回なのです。そういったものも、もう少し回
数が増えると、人材の確保につながるのではないかと思っております。
奥山:とにかく子どもに関わる人がたくさんいることです。その家族のこと、お子さんのことを
知っている地域の人をいかに増やすかということが、すごく大事だというふうに思っているので
す。私どもは、まずファミリー・サポート・センター事業の提供会員を増やすというところから
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始めているわけです。保育所があまり夜間遅くなるということは、保育士さんにも負担が掛かり
ます。そうであれば、保育園に提供会員が迎えにいって、自分の家で預かっていて、そこにお母
さんが迎えにいくというほうが、
家庭的にも子ども環境的もいいのかなという気もしております。
もちろん、今皆さんが危惧されているように、適正というものは確かにあります。どうしても非
常にしっかりした人の所に仕事が回りがちであることは間違いないのです。それでも、できれば
30 代、40 代の若い人たちで子育て経験があり、小学生でかなり手が離れた家であれば、小学生が
いる中に乳幼児が来るという良さもあるのです。そういったことも含めて、こういった事業を通
じての人材育成ということが大事だなと思って、今活動をしているところです。あとは有資格者
で、まだ仕事せずに地域で埋もれている方から、私がニーズを聞いたところ、むしろ派遣に登録
した方が働きやすいというのです。なぜかというと、園の保育方針や女性の人間関係など、いろ
いろ大変であるというわけです。そうではなくて、子どもと向き合いたい、子どもを保育するこ
とは何の問題もないけれども、その関係の中でいろいろあるということです。あまり運営面に関
わらずに、子どもだけというようなことをおっしゃる方が中にいらっしゃいました。それではい
けないと思います。しかし、一面を表している部分もあるなというふうに思います。
大日向:私が人材養成を始めたのは、地域の子育て支援に欠かせないと考えたからです。とりわ
け親支援に注力するために必要と考えたのです。これまでは子どもを産んで母親になったら、子
どもの預け先がなくて美容院に行くこともままならない、勉強もしたい、でもそれもお母さんに
なったら許されないという中で、
ストレスをずっとためていたお母さんたちの声を 30 年余り聞い
てきました。それで、子育てひろばを開設できた時に、理由を問わない一時預かりをしようと考
えたのです。しかも、親支援ですが、子どものために保育の質は絶対に質は下げてはならないと
も考えました。一時預かりは保育園等と異なり、いつどんな子どもをお預かりするのか、決まっ
ていません。その時々で、お預かりするお子さんは変わりますので、安全で、しかも子どもが楽
しく過ごせるようにすることを一番心がけなくてはなりません。やはり一番必要なことは保育に
携わる人の数の十分な確保なのです。日曜に 1 人のお子さんを預かるときでも、安全のために保
育者は 2 人体制を取っています。保育者の数を確保するために、人材養成を始めたのです。
また、子育て中の親のニーズは多様ですし、変化も大きいです。そこに寄り添いながら臨機応
変にフットワークを軽く対応できる人材が必要です。人生経験豊かな地域の方々はその点、本当
にすばらしい働きをして下さいます。もちろん、先ほども申しましたように、高度な講座をしっ
かり学んでいただくことを基本としておりますが、私の NPO でやっている人材養成講座には、全
国有数の先生が集まってくださっています。命を預かるというときには、やはり自分の時間や健
康をしっかりと管理する力も必要ですので、遅刻欠席はしない。そして、毎回レポートも提出し
ていだきます。しかも、先ほども申しましたように、認定をさせていただいた後が本格的なお付
き合いだと考えています。毎月、バックアップ研修を受けていただいて、足りないところを補わ
せていただきます。もう一つ大事なことは、この方々の活動は有償とすることを行政と協議して
始めました。これだけの時間と労力を掛けて学び、活動してくださるのですから。このことは一
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例にすぎませんが、人材養成を通して、私が感謝しているのは、行政が NPO と真剣に協働体制を
取ってくれているということなのです。これからの子育て支援は、行政と市民、NPO との協働が
大切ですが、市民や NPO を活かせるか否かは行政のやる気と誠実さにかかっているのではないか
と思います。
【平山氏の意見】
昨今の保育士不足は保育士資格を有する絶対数が少ないということではないと感じています。
仙台市内だけでも沢山の大学・専門学校があり、保育士資格を得て卒業する学生は市内の保育所
の必要とする職員数をはるかに上回ります。保育の現場において課せられる仕事量とその責任の
重さは、他の職種に比べて重いのにもかかわらず給与所得が低いというのが、保育士不足の原因
だと私は思います。たとえば臨時・非常勤職員が、ワーキングプア層のボーダーラインといわれ
る年収 200 万円を得るためには、時給 962 円の条件で、週 40 時間・52 週働くことが必要です。
逆に言えば、臨時・非常勤職員は、時給 962 円であっても年収 200 万円だということで、保育士
という仕事に非正規職員としてかかわるのであれば「わりにあわない」ということです。正規職
員だとしても、私の知っている私立保育園の園長は、初任給 17 万円程度、契約期間 3 年間という
勤務条件では、人材がなかなか確保できない。初任給の少し高い首都圏の園にどんどん流失して
しまっていると言っています。現在の公立・私立保育所の雇用状況、職員の収入状況をあらため
て見直し、仕事に見合う収入を保証することができる助成が必要だと思います。そして、
「仙台市
では保育士の月額給与前年度比○円 UP」等わかりやすい目標を掲げ、知らしめていくことも有効
だと思います。また、女性の社会参加という観点から考えれば、保育所の拡充とともに放課後児
童クラブの拡充も合わせて必要です。
現在、私は仙台市内 8 箇所の児童館、宮城県内では合計 16 箇所の児童館・児童クラブを指定管
理者業務委託者として運営していますが、その登録希望者は年々増加しています。それに加えて
これまでの小学 1 年生から 3 年生という対象枠を、国は 6 年生までに広げることと定めました。
さらに個別支援を必要とする児童の数も増えており、児童館・児童クラブの職員数を増やすこと
が必要ですが、その指定管理料は十分ではありません。なにより、対処療法的ではありますが、
他市町村に負けない職場の勤務条件を整備し、給与所得額をあげなければ、保育士不足の解消に
はさらに時間がかかるものと思います。
4.地域型保育の促進について
奥山:自分たちも 15 年、地域子育て支援をしてまいりましたけれども、本当に地域の状況が大
きく変わりました。もっと小規模で家庭的な保育をしたいという思いがあって、私も地域型保育
に手を挙げたのです。地域型保育のやり方も、土地とやりたい方とのマッチングというところも
あるでしょうし、自主整備したいという人たちもいらっしゃいます。いろいろな可能性のメニュ
ーがあって、手が挙げられるということも大事かと思います。
それと、どなたが園長なのかということです。園長先生の人となりと経歴、実績、場所の内容
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がどうかというところです。増やしていくということには賛成ですけれども、質を落とさない形
でやっていくということが、非常に大事であろうというふうに思っております。
重原:小規模施設は仙台でも随分増えてきました。その小規模施設で問題となっているのは、い
わゆる 3 歳の壁の問題です。つまり、子どもが 2 歳児から 3 歳児になる時の子どもの行き場所の
問題です。小規模施設は 0 歳児から 2 歳児までの施設ですから、子どもが 3 歳になればその施設
を卒園しなければなりません。でも、子どもが 3 歳になったからといって保護者が仕事を辞める
訳ではありません。3 歳児になった時に子どもをどこに預ければいいのかが大きな問題です。
現在、待機児童が多いのですが、とりわけ 1 歳児、2 歳児が多く、現場の保育施設ではその年
齢は定員いっぱいで入っています。一般の保育所では殆どの子どもが 2 歳児クラスからそのまま
上の 3 歳児クラスに上がってきます。3 歳児クラス自体も受け入れ人数はある程度決まっていま
すから、そんなに人数の枠は増やせません。ですから、小規模施設を卒園した子ども達が一般の
保育所へ入園を希望し、仮に保育所側が受け入れたいと思っても実際には希望者全てを受け入れ
られないという現実があるのです。
小規模施設は確かに 0 歳から 2 歳の未満児の子どもの待機児童の解消にはつながりますが、そ
の後の見通しのある施策を講じないと 3 歳の子どもの行き場所がなくなってしまいます。その辺
りで問題の解決には、幼稚園との連携も有効ではないでしょうか。保育所だけでは 3 歳の壁の問
題はどうにもなりません。
青野:私の法人でも、今年の 4 月から小規模保育園を 2 園やらせていただいています。一つは仙
台市で公募があり、その地域で応募させていただいて、決まり、補助をしていただきました。そ
れと、県外でも一つ、先ほど申し上げたグループ型家庭的保育から小規模保育の C 型というもの
に移行がありました。やはり、これも補助があるからこそ整備できるものだなと、思っておりま
す。自主整備となると、かなり厳しいハードルがあります。設備上、増やすのであれば高コスト
を掛けるのではなくて、認可基準よりもちょっと簡素化したようなものがあってもいいのかなと
思っております。小規模保育の一つは、空き家を利用してのモデルを立ち上げました。空き家を
利用すると、かなり低コストでできます。今ある物を再利用するということは、子どもたちにと
ってもすごくいい教育です。そして、小規模保育園がたくさん増えると同時に、認可保育園から
の移行ということ、
やはり園長教育ということが、かなりできていないのかなと思っております。
先日、仙台市のほうで小規模保育の連絡協議会というものができまして、うちの園長が出席させ
ていただいて、
「なぜ私たちはこんなに分からなかったのだろう。たくさん学びがありました」と
いうことで、今後そういったものには参加していきたいという意欲も持てたので、OFF-JT と OJT
は非常に大事です。
大日向:小規模保育は、今は待機児が多いから、未満児の待機児対策というところで議論されて
いると思います。現実的にそういう面があると思いますが、私は逆の面もあると思うのです。未
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満児にこそ小規模保育、つまり丁寧に少人数で見てもらう必要があるという、発想の転換もあっ
ていいだろうということです。名古屋の高浜市では、そのために乳児憲章というものを作ってい
ます。ゼロ、1、2 歳は小規模の所で丁寧に保育をされる権利があるのだということを打ち出して、
それが結果的に待機児対策につながっていくというのであればいいのではないでしょうか。発想
を逆転したほうがいいだろうと思います。もう一つは皆さんがおっしゃっているように、3 歳に
なったときは連携園の確保です。どんなに小規模保育がいいということが分かったとしても、3
歳になったときに行き場所がないことが非常に深刻だということです。それに対しては、幼稚園
に余力があれば、認定子ども園になっていただくようなご指導もあっていいのではないかと思い
ます。いずれにしろ、こういうことをロードマップにして見える化をしていくことが行政の役割
だと思います。今、ここまではできる、あるいはこういうふうにやっていくと 1 年半にはこうな
るというように、子育て支援の施策の進捗を見える化をして市民に説明することです。行政がい
かに市民の信頼を得るかという点では、見える化を図りながら市民と協働で課題の解決に当たる
ことが必要ではないかと思っております。
【平山氏の意見】
受け入れるワクを拡大するという意味では 0~2 歳を対象とする小規模保育所の促進に賛成で
す。ただし、課題は「連携施設」の確保です。たとえば、0 歳児 3 人・1 歳児 8 人・2 歳児 8 人の
小規模保育園の場合、翌年 4 月には 2 歳児 8 人を卒園後の受け皿となる「連携施設」に進級させ
ることになりますが、仙台市においてその連携施設の確保は非常にムズカシイと思います。
5.終わりに
大日向:きょうは、女性活躍・子育て支援ということで、特に私は子育てに関わる人材養成の話
を中心にさせていただきました。ただ、この子育ての問題、あるいは女性活躍の問題は、そこに
だけ特化して議論しても全然解決はしません。一言でいうと社会保障の問題なのです。例えば、
介護との関連も非常に重要になってきます。30 代の若者の 17 万人が、親の介護をしながら働い
ています。これから 2025 年は、団塊世代が後期高齢者になります。そう致しますと、どれだけ社
会全体で介護を担えるかということを一方で進めていかない限り、女性の活躍も進まないでしょ
う。ましてや子育て世代は子育てと親の介護の両方を担うというダブルパンチになりますので、
子どもも産めなくなって、ますます少子化が深刻化する、という悪循環になります。社会保障全
体の中に位置付けをした議論も、当然していらっしゃると思いますが、そこも大事であるという
ふうに思っています。
奥山:私が横浜で子育て支援を始めたきっかけは、阪神淡路大震災、地下鉄オウム事件などです。
そのときに第 1 子で育休中でした。それで、ちょっと仕事だけではなくて地域に目を向けなけれ
ばとか、家族を守らなければというところがありました。やりながら思ったことは、子どものふ
るさとづくりという思いなのです。私は八戸で子ども時代を送って、非常に地域の人に支えられ
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て、子どもとして群れで遊んで育ったということがありました。横浜で育てている私たちの子ど
もには、そのふるさと感があるのかということを思ったときに、大人が連帯をしなければいけな
いと感じました。わが子だけではなくて、子どもたちがうまく育っていく地域をつくらなければ
いけないという思いが根底にあったのです。
多分、仙台の地域子育て支援や、3.11 後にこれから何かしようと思っている人たちは、皆根底
にそういうものをお持ちではないかと思うのです。そういう意味では非常にチャンスです。地域
の人たちは、今何かしなければいけないと思っているところを、しっかり取り込んでいくという
ことが大事だと思います。私が子育て支援をやっていて思うことは、子どもが見ているというこ
となのです。自分が小さいときに、親だけではなく地域のおばちゃん、おじちゃんが関わってく
れた、商店街のおじさんが見ていてくれた、どれだけ家族以外の人の支えをもって自分が育てら
れたのという記憶が、親になるときに利いてくるというふうに思っています。
青野:子育て支援は、言葉では簡単なのですけれども、あらためて奥が深いなと思いました。赤
ちゃんが産声を上げてから、誰でも幸せで、誰でも笑顔で過ごせるとは思わないです。やはりハ
ンディキャップもあるなしに関わらず、1 人でも多くの子どもたちが笑顔になり、周りの環境も、
周りの人たちも明るく元気に過ごせる環境づくりということは、本当に大事だなと思います。そ
して、やはり家族支援ということも、非常に大事なことです。子どもたちが生きづらさがなく、
明るく元気に過ごすためにも、家族支援ということは大きな課題で、非常に大事だなと思いまし
た。
重原:今朝の朝刊に学校基本調査の結果の一部が掲載され、その中で宮城県の中学生の不登校率
が全国でワースト2位であるとの記事が載っていました。宮城県に住む者として非常に残念なこ
とだと思います。
不登校は中学校だけの問題だけではありません。その問題の根っこは必ず幼少期まで遡ります。
まさに保育の現場である保育所や幼稚園の子ども時代、0 歳から就学前までの育ちがどうだった
のだろうか、人が育つ根本的なこの時期に保護者や周りの大人からたくさんの手や目を掛けられ
てきたのだろうかということが問われてきます。人として出発する大事なこの時期だからこそ十
分な愛情を注がれて育てられることが大事だと思います。
われわれ保育の現場としても出来ることは最大限に頑張っていこうと思いますが、行政もこれ
まで以上に現場の声に耳を傾け、子どもをとりまく現状にもっと踏み込み、子どもが育つより良
い環境作りの為に更に努力して欲しいと思います。
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