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7
Jul. 2012
Vol.22
Medical Device Daily
複雑な医療廃棄物リサイクル問題の解決策を求めて……1
Medical Device Daily
先⾒の明を養う眼科イノベーションサミット……4
Case Management Advisor
遠隔モニタリングでハイリスク患者を効果的に管理……7
インド専⾨ニュース
インド通信……8
メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
医療⽀出と医療サービスのアンバランスな関係……9
The Academia Highlight[22]
ストレスは侮れない……10
by うのめ・たかのめ
Medical Device Daily……11
Kawanishi Hotline……19
ヒューマンドキュメント医療機器を開発した⼈たち
「トレミキシン」開発物語-7-……21
Jul. 2012
Vol.22
複雑な医療廃棄物リサイクル問題の
解決策を求めて
HPRC ディレクター
Tod Christenson ⽒インタビュー
――Jim Stommen/MDD 寄稿者
Tod Christenson氏は
ソン・エンド・ジョンソン、キンバリークラーク、
多彩な顔を持っている。
Waste Management です。医療産業という共通の
環境工学や サステイナ
取引先があり、複雑な廃棄物処理問題の解決策を
ビリティーについての国
求める顧客ニーズをビジネスチャンスと捉えると
際的なコンサルティング
ころも共通していました。
企業であるAntea Group
の Global
また、これらの企業は元来 サステイナビリティ
Corporate
ーについてかなりしっかりとした考えを持ってお
Consultancy社の共同経
り、拡大生産者責任に非常に真剣に取り組んでい
営者であり、同グループ
ます。さらに関係者の情熱もあって、HPRCの設
のValue Chain Optimization Practice(バリュー
立につながったというわけです。
チェーン最適化事業)のリーダーでもある。また、
飲料業界全体の環境持続可能性を推し進めている
――――お仕事柄、かなりの量の統計情報をお持
国 際 的 な 飲 料 企 業 17 社 の 企 業 連 合 Beverage
ちと思いますが、廃棄物の量、リサイクル可能な
Industry Environmental Roundtable(BIER、飲
量など、いくつか数字を挙げていただけますか?
料業界環境円卓会議)のディレクターを、2006
年以降務めている。最も新しい肩書きは、国際的
Christenson
な医療機器メーカー、廃棄物処理会社、樹脂製造
を入手することは、我々にとって最大の課題の
会社、プラスチック・リサイクル会社 12 社の協
1 つです。米国で 1 日当たり 5,500~6,500 トンの
会であるHealthcare Plastics Recycling Council
廃棄物が病院から出ているといわれていますが、
(HPRC、医療プラスチック・リサイクル推進協
情報源ははっきりしません。
出所のしっかりした正確なデータ
議会)のディレクターである。HPRCは、
「医療に
2001 年に行われた調査から推定すると、そのう
おけるプラスチックのリサイクル方法を発案、実
ち 20~25%がプラスチックで、大部分は患者に接
現する」ことを使命としている。
触しておらず、汚染されていないもののようです。
一般廃棄物に含まれるプラスチックの量は通常
10~15%ですから、医療廃棄物はかなりプラスチ
――――HPRC 設立の経緯を教えてください。
ックの割合が高いといえます。問題は、医療プラ
Christenson
私が HPRC に加わったのは 2010
スチック廃棄物のリサイクルが事業として成り立
年 8 月でしたが、その 1 年ほど前には中心となる
つためには、どのくらいの量を集めなければなら
企業グループができていました。彼らは私が
ないかということです。
BIER でやってきた仕事を見ていて、自分たちの
持続性があり、経済的にも実行可能なリサイク
組織のビジョン、使命、目的、目標を定める手助
ル方法を編み出すには、信頼できるデータが不可
けをしてほしいと要請してきたのです。
欠です。そのため、我々は試験的調査を実施する
HPRC の設立メンバーは、ベクトン・ディッキ
ことにしました。ちょうど最初の調査が完了した
ンソン、バクスター、カーディナルヘルス、デュ
ところなのですが、我々は 9 カ月間にわたり、
ポン、Engineered Plastics、ホスピーラ、ジョン
1つの病院から出る無害のプラスチック廃棄物約
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Vol.22
9 トンを回収して分析しました。病院から出るプ
――――医療現場でプラスチックを分別する際に
ラスチック廃棄物の種類、量、形態(フレキシブ
妨げとなっている要因には、どんなものが考えら
ル包装か硬質プラスチック容器か)を明らかにし、
れますか?
バリューチェーンのマッピングを行ったのです。
我々には、病院や医療施設のリサイクルを妨げて
Christenson
いる障害や課題を把握し、体系化するフォーマッ
いことは問題です。点滴の紙ラベル、滅菌ラップ
トが必要でした。
を固定するための滅菌紙テープ、紙とプラスチッ
まず、紙や混合プラスチックが多
その結果、患者に接触する前の無害なプラスチ
クの混合包装材、金属化プラスチック、複数のプ
ック廃棄物は、その 50%以上が滅菌ラップと分か
ラスチックからできた製品……これらはすべてリ
りました。また、約 25%がパウチ、バッグ、スト
サイクルの障害であると理解すべきです。これら
レッチ、オーバーラップ包装であり、PETG トレ
はリサイクルの費用を引き上げ、回収、加工され
ー、紙ラベルのついたパウチ、注入ボトル、ポリ
たプラスチック廃棄物の市場価値を下げてしまい
スチレントレーがおのおの約 5%でした。実に多
ます。包装や製品をもっとリサイクルしやすいも
種多様なプラスチック廃棄物が、病院内のさまざ
のに再設計しながらも、必要とされる品質を維持
まな場所から排出されています。
できるかがカギになるでしょう。
――――最初の調査では、どんな課題が明らかに
なりましたか?
Christenson
最初の調査はバリューチェーンの
マッピングというより末端の廃棄物分析になりま
したが、
“万能の改善策”というものは存在しない
とよく分かりました。
医療プラスチック廃棄物リサイクルのバリュー
チェーンにおける障害はたくさんあり、利害関係
者は多様で、その相互関係は複雑です。例えば、
製品や包装の設計・製造に関する問題、医療施設
また、リサイクルに対する意識の低さも問題で
内の能力、医療施設を出た後の物流問題、再生材
す。医療施設で働いている人たちには、何がリサ
の市場や需要の不足など、最初の調査を終えただ
イクル可能で、何が不可能なのかについての研修
けでも数多くの課題が明らかになりました。
や意識向上が必要だと思います。例えば、リサイ
個人的には、単一製品に複数のプラスチックが
クル可能な物を明示したポスターは、適切な分別
使われていることが、後々どれほどリサイクルの
を行うのに役立ちます。さらに言えば、あなたの
妨げになるかに驚かされました。混合プラスチッ
いる地域のリサイクル市場への認識を高めること
クの問題は本当にやっかいです。
も重要です。地域が異なればリサイクル能力も異
また、ほとんどの人が紙の問題を過小評価して
なるので、あなたの地域では何がリサイクル可能
いるのも気になりました。紙はプラスチック廃棄
か、リサイクル施設は何を受け入れることができ
物を処理する際に大きな問題となります。飲料業
のるかについて知っておく必要があります。
界を見てください。10 年ぐらい前までは、ソーダ
最大の課題の1つは、引き取ってくれるまでの
やビール、水のプラスチック・ボトルと一緒に紙
期間、膨大な量の廃棄物を集積・貯蔵するスペー
が使われていましたが、いまは使われていません。
スが病院に不足していることです。有害物質を入
この業界は改善を重ね、より成熟したリサイクル
れないよう分別して別々に集め、積み降ろし場所
への取り組みを行っています。それに比べれば、
に運び、梱包、圧縮を行うのに必要なスペースや
医療業界はまだまだです。
管理システムが不足しているのです。
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いろいろと障害はありますが、病院からプラス
4 つ目は、残液や残留物の除去。点滴バッグな
チックを回収することができれば、市場がその利
どは、決して完全に使い切ることはありません。
用を引き出すと我々は確信しています。
リサイクルを可能にするには、残留物を取り除い
て水気処理の問題が起きないようにすると同時
――――では、これらのマイナス要因をどのよう
に、健康や安全、曝露の観点から、リサイクル作
に克服するつもりですか?
業員に有害、有毒物質を処理させないことが肝心
です。また、生産段階でパッケージから材料を取
Christenson
現在、我々はいくつかの材料試験
り除きやすくしておく必要があります。
プロジェクトを進行中です。混合プラスチックに
ついて、有用な樹脂がまだ取り出せるのはどのよ
うなブレンドなのか、材料の物理的性能に影響を
及ぼさない範囲で、どのくらいの紙を許容できる
のか、ラベルを紙からプラスチックに変更するこ
とが経済的、設備的に可能かどうかなどを検討し
ています。
また、病院との試験的調査のなかで、最も効率
のよい回収や集積方法を検討したいと考えていま
Photo courtesy of Engineered Plastics, Inc.
す。医療施設からリサイクル会社が回収に来る積
(http://www.hprc.org/)
み降ろし場所まで、どのように移動させるのがベ
ストなのかといったことですね。リサイクル会社
――――HPRC が事業を推進していくうえで、誰
が何を回収するかの基準は地域ごとに異なるの
が重要な利害関係者となりますか?
で、それぞれの地域の市場機会を見極める必要が
Christenson
あることも分かってきました。
最も重要な利害関係者は、医療施
設です。医療施設は、患者の治療と責任ある資源
――――HPRC の重要な取り組みの 1 つに、リサ
消費・管理とのバランスを取らなくてはなりませ
イクル可能な使い捨てプラスチック製品の設計
ん。また、病院は地域社会の中心である場合が多
ガイドライン作成がありますが、簡単に内容をご
く、責任ある企業市民という点で大きな期待が寄
説明いただけますか?
せられています。そのため医療施設は、もっと環
境に配慮しようと積極的に取り組んでいます。
Christenson
このガイドラインは、リサイクル
もちろん、利害関係者はほかにもいます。医療
の観点から望ましい、または望ましくない設計や
機器のメーカーやサプライヤー、医療施設の支援
特徴を明らかにしたものです。端的に言えば問題
サービス会社、プラスチック用樹脂製造会社や廃
となるのは次の 4 つです。
棄物処理会社、リサイクル会社、回収材料のエン
1 つ目は、1 つの製品または包装に複数のプラ
ドユーザーといったこれで事業を築き上げている
スチックや材料が使われていること。ゴムシール
人たち。医療規制当局、つまり FDA も重要な利
や、外側がプラスチックで内側に金属が張り付け
害関係者です。
てある金属化プラスチックが当てはまります。
2 つ目は、ラベルとテープ。紙付きプラスチッ
――――最初の調査が終わったところということ
クは、根本的な問題の 1 つです。
ですが、今後の予定を教えてください。
3 つ目は、リサイクル市場価値の観点からあま
り望ましくない(価値がない)材料が使われてい
Christenson
ること。例えば、再生ポリスチレンは高密度ポリ
同じくらい、分からないことが明らかになりまし
エチレンよりも市場価値は低くなります。
た。リサイクル・プログラムや廃棄物減量プログ
3
最初の調査では、分かったことと
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ラムの実施を手助けしようと思えば、我々にはも
廃棄物のほうが汚染されたものよりも量が多いと
っとたくさんの知識や理解が必要です。
考えられています。ただ、製品の設計や製造に問
1~2 カ月後に開始予定の第 2 段階の試験的調
題があり、医療施設に働く人たちは何がリサイク
査では、病院に入ってくるプラスチック製品につ
ル可能なのか分からず、インフラの不備によって
いての、さらに徹底的なマッピングや数量化を行
リサイクル会社は特定の廃棄物しか回収できず、
うことにしています。購買担当者とともに作業を
再生樹脂製品の市場が限られているのです。これ
進め、何が病院に入ってきて、それがどこに行き、
らすべてが組み合わさって、リサイクル能力を削
どのように使われ、どのような形態、形状、量と
いでいます。
なるのかを調査します。
我々は、付加価値の高い指導を行いたいと考え
――――医療廃棄物のリサイクルには、一般的な
ています。つまり、我々がよく聞かれる質問、
「リ
廃棄物にはない難しさがありますが、どう対処し
サイクルを始めるにしても、どこから始めればい
ていくつもりですか?
いのか?」「何を集めればいいのか?」に対して、
明確な答えを出したいのです。医療施設が独自の
Christenson
経済的な導入可能性評価を行ったり、コストやそ
ない廃棄物がいったんリサイクルの流れに入って
の成果に関するクロス分析を行ったりするのに必
しまうと、回収、集積、分別、加工という川下の
要なデータも提供するつもりです。
工程への悪影響は避けられません。しかし、第一
病院から出る有害または望ましく
線で働いている医療従事者への研修や意識向上に
――――かつては「プラスチックの医療廃棄物=
よって、また、患者さんが部屋に入る前にリサイ
汚染廃棄物」とみなす傾向にあったため、リサイ
クル可能な廃棄物を取り去ることによって、無
クルはあまり検討されてこなかったのかもしれ
害・無汚染の廃棄物を取り出すことは十分可能だ
ませんね。
と考えています。
Christenson
「Medical Device Daily」
たぶんそうでしょう。驚くべきこ
(2012 年 4 月 26 日& 5 月 3 日号)
とに、実際にはリサイクル可能な無害、無汚染の
先⾒の明を養う
眼科イノベーションサミット
OIS@ASCRS
2012 レポート
――Larry Haimovitch/MDD 寄稿者
4 月 19 日、眼科のイノベーションサミット
席者を集めている。
Ophthalmology Innovation Summit(OIS)が、
この OIS は、投資企業 Clarus Ventures 社の
米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)との共催
Emmett Cunningham 氏 、 同 じ く 投 資 企 業 の
で開催された。OIS は、新興企業の CEO・投資
Versant Ventures 社の Bill Link 氏と Gil kliman
家・企業幹部・医師・眼科の研究者たちの共同事
氏、眼科医院 Minnesota Eye Consultants の医師
業をサポートし、イノベーションを生み出すこと
Richard Lindstorm 氏、そしてアボットの眼科部
を目的としている。米国眼科学会(AAO)の年次
門アボット・メディカル・オプティクス社 CEO の
総会との共催では過去に 3 度開催され、多くの出
Jim Mazzo 氏が主導して行われた。
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眼科デバイス分野で最も成功したベンチャー投
「iStent」は、眼内の房水を自然に排出するシュ
資家といわれる Bill Link 氏が開会を宣言し、
レム管に開存口を作るデバイスで、臨床試験の一
「眼科の手術における技術革新は、多くの困難を
番手となった。進行中の 18 の臨床試験では大き
乗り越え、着実に増加している。時代は変わり、
な進展を得ており、組み入れた患者は世界中です
より厳しい規制環境におかれているものの、アン
でに 4,000 人以上、ピアレビューは 22 も存在す
メットニーズ(いまだ満たされていない要求)は
る。同社はさらに治療効果の高い次世代のデバイ
数多く存在しており、今まで以上の機会に恵まれ
スも開発中だ。
iStent は、2010 年 7 月に FDA 審査委員会の推
ているとも言える」と楽天的な意見を述べた。
薦を得ているため、近く承認されるものと見られ
今回の OIS で大きく取り上げられた緑内障は、
ている。同社は、iStent の承認取得後の保険償還
アンメットニーズの典型であるかもしれない。
確保と、早期の臨床使用に漕ぎ着けるため、メデ
2 番目に多い失明原因であるにもかかわらず、新
ィケア・メディケイド サービスセンター(CMS)
薬は 1996 年以降認可されておらず、侵襲性が高
にカテゴリーⅢの診療報酬コード 2 種類(コード
く副作用の危険もはらむ現在の外科手技は、何十
0191T と 0253T)の申請に成功している。Glaukos
年も前に承認されたものである。
社が開拓したルートを追って、今後ライバル会社
が FDA の承認を受けることになりそうだ。
「MIGS(micro-invasive glaucoma surgery,
超低侵襲な緑内障手術)――満たされないニーズ
と機会評価」と題した講演を行った世界的に高名
な 眼 科 外 科 医 で 、 ト ロ ン ト 大 学 准 教 授 の Ike
Ahmed 氏は、緑内障の治療が 40 年間変わってい
ないことを指摘し、重症度が軽~中度の患者には、
この MIGS という新しい手法が有効であると主
張した。彼が「ミドルクラス」と呼ぶこのカテゴ
リーの患者は緑内障患者全体の 60%を占めてい
て、疾患がひどく悪化する前に、できるだけ早く
(http://www.glaukos.com/)
治療する必要があるという。
Transcend 社は、「CyPass Micro-Stent」によ
Ahmed 氏は講演のなかで、
「MIGS とは、目詰
り近年目覚ましい発展を遂げている。
まりを起こした線維柱帯網から房水を流出しやす
くするために、小さなステント状のデバイスを微
CyPass は白内障手術時に植え込まれる小さな
小切開で設置する手技である」と定義した。デバ
ステントで、前房から上脈絡膜腔への房水の直接
イス全体を眼の中に植込むため、ab interno(眼
流出路を確保することで、より低い眼圧のところ
の内側からの)手技と言われることもある。彼は、
へ自然に排水させるというもの。隅角検査なしに
MIGS には大きな期待を寄せていると述べる一
植込みができるので、手技の大幅な簡略化が可能。
方、「MIGS を行ったからといって眼圧を劇的に
また、眼圧を下げることから、緑内障の進行を和
下げられるわけではなく、あくまで疾患の進行を
らげる効果も期待されている。
ASCRS 会合で発表された欧州での臨床試験の
和らげる安全かつ効果的な治療とみなされるべき
データによると、白内障手術で CyPass を使用し
だ」と注意を促した。
た患者は、術後 1 年では平均 34%の眼圧の低下と、
また、Lindstorm 氏はパネルディスカッション
で、MIGS を行うと緑内障治療薬への依存度を下
平均 35%の眼圧下降薬の減量が認められたとい
げられることから、「MIGS はライフスタイルを
う。Ahmed 氏は、「CyPass はよく研究された低
飛躍的に向上させる」と発言している。
侵襲的なデバイスで、上脈絡膜腔のドレナージ経
Glaukos 社は創立 10 年を迎えた、MIGS 用デ
路の生理機能を利用して減圧できる。植込みもと
バイスのリーディングカンパニーである。同社の
ても簡単で、効果的に眼圧を低下させるので、患
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Sanford Clinic の 高 名 な 眼 科 外 科 医 Vance
者は早期に回復できるだろう」と評価する。
同社は米国で進める臨床試験において、予定登
Thompson 氏は OIS のプレゼンで、「ついに術中
録患者の半数に当たる 505 人の登録を済ませてお
の収差測定を行う時がきた」と宣言した。白内障
り、さらに欧州で 2 つの臨床試験を実施している。
治療や屈折矯正手術を行う外科医たちも、
「術中の
屈折率測定は必要不可欠」「現在白内障手術を受
けている患者にぜひ推薦したい」などと強く支持
した。
業界の最大手 Wavetec Vision 社は、術中に屈折
率を測定する「ORA System」を販売している。
独自のアルゴリズムを使用した正確な術中屈折率
測定により、医師は最適な眼内レンズを選択でき、
患者の視力回復を高めることが臨床的に証明され
ている。CEO の Tom Frinzi 氏は、白内障手術後
(http://www.transcendmedical.com/)
に目標の視力との屈折矯正誤差が 0.5D 以内だっ
Aquesys 社のデバイスは、眼内レンズのように
た患者の割合は、ORA 使用の場合は 80%、ORA
挿入するコラーゲン由来のゼラチンからできたデ
不使用の場合は 50%だったと発表。ORA を使用
バイスで、眼内に挿入すると柔らかくなって眼圧
することにより、将来的には、屈折矯正誤差が
を下げる。また、その手技は簡便で融通が効き、
0.5D 以内の患者の割合を少なくとも 85%にまで
必要に応じて除去や再植込みもできる。118 人の
引き上げることができると予測した。
患者を対象に、世界中で行われた臨床試験の 2 年
間のフォローアップデータによると、最適な投薬
治療に比べても眼圧を 37%(約 9mmHg)下げ、
緑内障治療薬を必要とする患者を平均 48%減少
させたという。この製品は、すでに CE マークを
取得しており、現在米国で FDA 承認に向けた臨
床試験を進めている。
これら MIGS 用デバイスのほか、OIS では術中
の収差測定も注目を集めた。医師が最適な眼内レ
(http://www.wavetecvision.com/)
ンズを選択するのを支援するこの技術は、今日の
Clarity Medical Systems 社は、白内障手術時
白内障手術の欠点を補うことができるという。
今まで行われてきた術前に眼内レンズの度数を
の眼内レンズ選択などさまざまな用途に使用でき
決定する手法では、最適なレンズが選択できない
る 術 中 の 波 面 収 差 測 定 シ ス テ ム 「 HOLOS
場合があった。レーシック手術では 85%以上の患
IntraOp」を開発している。同社によると、HOLOS
者が視力 1.0 以上、最低でも視力 0.5 以上にまで
は術中に継続的にリアルタイムの屈折率の映像を
回復しているにもかかわらず、白内障手術では患
見ることができる初めてのシステムであり、ORA
者の約 50%が標準視力(視力 1.0)に対する屈折
よりもさらに正確な眼内レンズの選択が可能で、
矯正誤差が 0.5D 程度発生している。40%以上の
視力回復に貢献するという。多くの眼科医たちに
白内障患者が術後に眼鏡や 2 次的な手術が必要に
支持される HOLOS は、現在、開発の最終段階に
なってくることに不満を抱いており、それら手術
あり、同社 CEO の Keith Mullowney 氏は、出荷
後の対応で外科医の医業収益も半減することか
は 2013 年中になるだろうと見ている。
ら、術中の屈折率測定の必要性に対する認識が深
「Medical Device Daily」
(2012 年 4 月 27 日号)
まりつつある。
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遠隔モニタリングで
ハイリスク患者を効果的に管理
コ・メディカルの作業効率を向上させるテクノロジーの活⽤例
医療機関は、さまざまな場面で最新のテクノロ
同クリニックで公衆衛生マネジメントを行う
ジーを駆使し、ケースマネジャーや看護師といっ
Doreen Salek 氏は、「遠隔モニタリングは、ケー
たコ・メディカルの作業効率を向上させようと努
スマネジャーの作業域を広げる、効率的で新しい
めている。同時に、病状が悪化してしまい、救急
技術だ。日々の遠隔モニタリングにより、感染症
外来を受診したり入院したりする患者が少しでも
や慢性疾患の悪化、その他異常だと思われる症状
減るよう、早期に異常を発見し、診療できる体制
を早期に発見することができるので、患者は安心
を整えようとしている。
できるし、我々も入院や救急外来の受診者を減ら
Geisinger クリニック(ペンシルバニア州)は、
すことができる」とその効果を強調する。
従来型のケースマネジメントに加えて、自動音声
また、Billings クリニック(モンタナ州)が提
応答装置(ボタン操作に応じて音声で自動応答す
供する心不全治療のためのプログラムは、
るシステム)による遠隔モニタリングを活用した
Geisinger クリニックのものとは逆に、患者が同
患者管理を提供している。
クリニックの遠隔管理システムに毎日電話し、質
この遠隔モニタリングシステムは、週 1 回、4
問に答えるようになっている。システムが患者の
週間連続でセットされた時間に自動的に患者に電
回答から治療の必要性を判断し、看護師に報告す
話をかけ、患者の体調に関する質問を行うという
るのは同じである。このプログラムを統括する Jo
もの。患者はそれらの質問に回答するだけで済み、
Rowland 氏は、看護師が遠隔地に住む多くのハイ
患者の回答に異常があった場合は、ケースマネジ
リスク患者の体調を管理するのに、このシステム
ャーに知らせがいくようになっている。
は非常に役立つと言う。
同クリニックは、272 床のレベル 2 の外傷セン
ターや 90 床の介護リハビリセンターを有し、310
以上の専門医と契約してグループ診療を行う総合
医療施設だ。モンタナ州・ワイオミング州・ノー
ス&サウスダコタ両州西部に住む患者に医療サー
ビスを提供している。患者が住むモンタナ周辺地
域の多くは、1 平方マイル(2.59 ㎢)当たりの住
人が 6 人以下で、1 人の医師が広大な範囲をカバ
ーしている田舎だという。患者を担当するプライ
マリ・ケア医は非常に遠い場所におり、吹雪や洪
このシステムの導入により、同クリニックは従
水により道路が寸断されることもしばしばある。
来のケースマネジメントのみの患者管理に比べ、
「いくら私たちが遠くに住む患者の治療計画を
退院後 30 日以内の再入院率を 44%削減すること
立て、それを管理したとしても、あまりうまくは
に成功した。ケースマネジャーからの評判も上々
いかない。このあたりでは、患者が医師の診察を
で、96%が「自動音声応答装置の導入で、より効
受けたり来院したりするのは簡単ではないから
率的に作業できるようになった」と言い、85%以
だ。その点、遠隔モニタリングを利用すれば、私
上が「この技術で救急外来を受診する患者が減っ
たちは患者が日々かけてくる電話で病状をチェッ
た」と回答している。
クでき、異常があれば患者に直接電話してさらに
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遠隔モニタリング技術を開発する AMC Health
詳しい情報を聞き、どのような治療が必要か決定
できる」と Rowland 氏は語る。
社(ニューヨーク州)の Maria Lopes 博士は、
「患
全米 51 カ所にオフィスを構え、在宅医療を提
者の遠隔モニタリングは、ケースマネジメントを
供する Bayada ホームヘルスケア(ニュージャー
より合理的なものとし、効率的な患者管理を可能
ジー州)も、遠隔モニタリングデバイスと電話を
にする」と、その効能を説明する。日常業務に遠
併用した疾患管理プログラムを整備し、在宅医療
隔医療を組み込むことで、ケースマネジャーの作
に従事する看護師をサポートしている。
業効率は上がる。しかも効率だけでなく、有用な
Bayada ホームヘルスケアの在宅医療部門長で
情報を元にトリアージが行えるので、患者に最適
ある Eric Thul 氏は、同社が使用している技術は
な治療を提供できるという。
まだ満足のいくものではないと話す。患者が体調
「こうしたテクノロジーを活用することで、ケー
を自己管理でき、看護師やケースマネジャーの作
スマネジャーは患者の状況を簡単に把握でき、最
業効率を上げ、患者と密接に連絡を取り合える機
も援助を必要としている患者から優先順位をつけ
能を持つ低価格なソリューションを、同社は求め
て、スマートに働くことができる」
ているという。
「私たちは、患者の参画を促し、入
「Case Management Advisor」
院削減につながる治療や医療サービスを求め、遠
(2012 年 5 月号)
隔医療の可能性を追求し続ける」。
インド通信
インド専門ニュースサイト「インド新聞」より、運営会社ムロドーの
許諾を得て、最新情報をお届けします。(http://indonews.jp/)
眼科⼤⼿の CFS、同業⼤⼿を買収
レーシック治療でアジア最⼤⼿(5/30)
隔治療システムなどを順次販売予定で、先ごろ第
1 弾となる超音波装置「ClearVue」を発売した。
デリーを拠点に各州で展開するセンター・フォ
独 DHL、ムンバイに医療業界向け
物流センターをオープン(6/19)
ー・サイト(CFS)が、同業大手ニュー・ビジョン・
レーザー・センター(本社ムンバイ)を買収。拠点
数は 35 となり、レーシック手術を行うクリニッ
新興国で医療業界向け物流拠点の整備を進める
クとしてはアジア・アフリカ地域で最大手の 1 つ
ドイツの物流大手 DHL サプライ・チェーンが、
になる。CFS は 2015 年をめどに 15 億ルピーを
ムンバイに物流センターを新設。在庫・流通機能
投じて拠点数を 2 倍に増やす計画で、地方の中小
はもちろん臨床試験機能まで備えており、医薬品・
都市を中心に、新会社設立や競合他社との合併、
医療機器メーカーの業務効率改善が期待される。
主要病院内への診療科設置等を進めている。
セコム、インドで病院運営事業に参⼊
(6/20)
蘭フィリップス、
農村市場向け製品の開発を強化(6/5)
セコムは 4 月にインドの中堅財閥のキルロスカ、
フィリップス・インディアは、50 億ドルに上る国
トヨタグループの豊田通商と合弁会社「タクシャ
内医療機器市場での需要取り込みをめざし、農村
シーラ・ホスピタル・オペレーティング」を設立、
市場向け製品の開発を強化する。同社は 3 年前ま
2013 年 4 月の病院開設をめざす。脳神経外科や
で国内で生産した製品はすべて海外に輸出して
整形外科を中心とした 288 床の総合病院を、バン
おり、方向転換した現在も依然輸出の割合が高
ガロール東部に建設する予定という。日本企業が
い。低価格の心臓病や子宮頸がんの治療機器や遠
インドで病院施設の運営を手がけるのは初めて。
8
Jul. 2012
Vol.22
医療⽀出と医療サービスの
アンバランスな関係
医療費が⾼い国の患者アウトカムがよいわけではない
――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
米国の医療制度改革を推進する団体コモンウェ
治療しやすいはずのぜんそくでさえ、死亡に至る
ルス・ファンドが、経済協力開発機構(OECD)
ケースが非常に多い。最新の治療を受けるために
などのデータをもとに、先進国の医療関連支出や
医療に大金をつぎ込んでいる米国人にとって、こ
サービス内容の比較分析結果を発表した。対象と
の結果は想定外に違いない。
なったのは米国、日本、英国、オーストラリア、
一方日本は、医療支出を抑えるための政策や、
オランダ、カナダ、スイス、スウェーデン、デン
人口に対する MRI や CT といったモダリティーの
マーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、
配備台数の多さなど、医療の仕組みやアクセス性
フランスの 13 カ国。最も支出が多かったのは予
といった点で高い評価を受けている。
想通り米国で、医療サービスや患者アウトカムは
各国の医療制度、文化、国土といった違いもあ
それに見合っていないことが指摘された。逆に、
るため、コモンウェルスのレポートだけで単純に
最も支出が少なかったのは日本で、支出に対し質
現状を比較するのは難しい。このレポートが公表
の高い医療サービスを提供していることが評価さ
された後に投稿されたインターネットの書き込み
れた。
を見ると、人々はまた違った評価をしているよう
2009 年のデータによると、米国は年間平均の医
だ。日本に住む外国人が、日本と母国を比較し日
療支出が1人当たり 7,960 ドル(約 64 万円)だ
本の医療サービスに対して出したコメントは、特
ったのに対し、日本は 2,878 ドル(約 23 万円)
に興味深い。
「救急車で運ばれる患者がいくつもの
と最も低かった。国内総生産(GDP)に対する医
病院に受け入れを断られるなんて聞いたことがな
療支出の比率は米国で 17.4%、日本で 8.5%と両国
い」とか、「病院を受診しやすいのはいいけれど、
間で倍以上の開きがあった。
日本人は軽い症状の風邪でもすぐに病院に行くの
米国における医師の訪問回数や医師の人数を見
で、流行期には患者でごった返す待合室での感染
てみると、意外にも米国人が医師に会って医療サ
に注意すべき」など、実体験に基づいて、コモン
ービスを受ける回数は、年に 3.9 回とスウェーデ
ウェルスのレポートには表れない問題点を指摘す
ンに次いで最も少ない。人口 1,000 人当たりの開
る意見が目を引く。
業医数は 2.4 人と日本並に少なく、13 カ国の平均
日本でも医師不足問題はよく耳にする。レポー
をはるかに下回っている。では、いったい何が米
トでは触れられていないが、OECD のデータを見
国の医療支出を引き上げているのか。その要因の
ると日本の人口に対する医師の数は、先進国のな
1つは、高額な費用を要する最新の医療技術の利
かで最も少なく、かなり深刻な事態である。さら
用にあるとコモンウェルスは見ている。
に高齢者だけではなく、肥満人口も急増している
しかし米国の患者は、最新の技術に多額の費用
という問題もあり、肥満大国アメリカやドイツの
を支払っているにもかかわらず、決して良好なア
ように糖尿病関連の下肢切断や透析が増えれば、
ウトカムを得ているとは言いがたい。確かに喫煙
日本の医療システム全体の運用が危ぶまれる。
率を見ると、米国は欧州や日本に比べて低い。し
今回はコモンウェルスから高い評価を得た日本だ
かし米国の肥満率は高く、慢性的な糖尿病による
が、他国との比較により多くの課題も見えてきた。
下肢切断は、ドイツと並び最も高い水準で発生し
少ない医療支出と質の高いサービスをいかに維持
ており、平均を 3 倍以上も上回る。しかも比較的
するかがポイントとなりそうだ。
9
Jul. 2012
Vol.22
The Academia Highlight アカデミア・ハイライト [22]
ストレスは侮れない
うのめ・たかのめ
by
細胞が受けるストレスは数多いが、ストレ
硬化・心血管障害・栄養障害による寝たき
スが細胞に与える機序が分子イメージング
りなどの加齢性疾患と、ストレス老化の鍵
等の実験手法やシーケンサの超高速化によ
を握る代謝酵素の健全性との関係を明らか
って、詳細に解明されるようになった。
にしようと、東大・北陸先端大・弘前大・
正常な高次構造に折り畳まれなかった変
同志社大など多数の研究機関が精力的に、
性タンパク質が小胞体に蓄積し、凝集体とな
ストレスの発症プロセスを研究している。
って細胞機能を損傷する、いわゆる小胞体ス
酸化ストレス等に対する防御は細胞の遺
トレスは、宮崎大などの分子レベルでの解析
伝子発現の調節が大部分を担っているが、
によれば、細胞自身の回避機能を超えると細
DNA マイクロアレイ法の開発で詳細な解析
胞死や神経変性疾患を惹き起し、小胞体で行
が進められ、微量の試料からの検出も可能
われるタンパク質の修飾にも異常を生ずる。
となってきた。親の受けたストレスがエピ
肝癌との関連についても京都大の追究で、ア
ジェネティクス変化により、子供に遺伝す
ポトーシス経路の変異が強く疑われた。
る機序まで解明された。
細胞のエネルギー源であるミトコンドリ
ストレスの矛先が神経細胞に向かった場
アはエネルギー代謝の副産物として絶えず
合は、心的ストレスが神経・精神疾患とし
活性酸素種を放出しているが、独自の遺伝子
ての鬱や認知症の発症に繋がるが、神経変
を持ち、細胞死をコントロールできるもの
性疾患が免疫系に作用し、癌の発症やその
の、中核機能であるリン酸化状態の調節作用
進行を加速するとされる細胞レベルでの研
に損傷を受けると、その影響はパーキンソン
究も数多い。英国ブリストル大のマイクロ
病や生活習慣病の発症から老化まで広範囲
RNA の生体分子群の発見は治療の方向性も
に及ぶ。
示唆しており、今後が期待される。なお、
理化学研究所が小胞体内で酸化ストレス
現在も根強く残る心療内科ないし神経内科
状態を認識する分子を発見し、カルシウム伝
が扱っている精神疾患は、「心は脳の機能に
達機構を制御していることを見出したが、そ
過ぎない」との考え方が浸透すると、神経
の知見はますます重みを増している。
疾患に統合されるかもしれない。
種々のストレスを長期間にわたって受け
細胞レベルのストレスには活性酸素を始
た細胞は、いわゆる慢性疾患である糖尿病
めとする化学的な因子、浸透圧・機械的・
(肝・膵)、心疾患(心筋・動脈硬化)、癌(諸
熱・紫外線・超音波・放射線等の物理的な
臓器等)などの発症源になるとされるが、人
因子、喫煙のような複合的因子等がかかわ
類が経験して日の浅い飽食はまず、脂肪細胞
っており、それらの及ぼす影響のデータ蓄
にダメージを与え、サイトカインを放出さ
積は膨大である。
せ、慢性疾患のトリガーになるとの仮説が最
米国サンフォード・バーンハム医学研究
有力視されている。
所による癌などの諸疾患におけるマイクロ
RNA の役割解明の技術がこれに結び付くと
その延長線上にある老化に付随する諸問
題、認知症悪化・骨粗鬆症による骨折・動脈
ストレス科学は新たな段階を迎えられる。
10
Jul. 2012
Vol.22
Medical
Device
Daily
―
2012/6/1 2012/6/30
(
)
値、遊離型 PSA、p2PSA からその後の生検の必
Diagnostics
要性を判断する。phi は、同社の全自動免疫分析
器「Access 2」や「ユニセル」シリーズで、Access
膵臓癌の個別化医療の
ための分⼦診断テスト
Hybritech PSA と同じように分析できる。
今まで、PSA 濃度が 4ng/mL 以上の患者は一律
FoundationOne
に前立腺癌が疑われ、生検が行われていたが、前
2012 年6 ⽉1 ⽇
立腺癌と良性腫瘍を識別できない PSA 検査の有
用性については議論がなされていた。同社による
癌 の 個 別 化 医 療 に 取 り 組 む Foundation
と、生検は 1 回につき 30~45 分の手術をともな
Medicine 社が、創設わずか 2 年で、膵臓癌を対
うだけでなく、562 ドルもの費用がかかる。その
象としたゲノム情報に基づいた診断テスト
うえ、PSA 濃度が 4ng/mL 以上の患者の最大 75%
「FoundationOne」の販売を開始した。
は、前立腺癌ではないという。
FoundationOne は、患者の腫瘍のサンプルから
臨床試験では、良性腫瘍を識別できる phi は、
癌に関連する 100 以上の遺伝子を解析し、分子標
前立腺癌を検知する精度が PSA 検査のみより 2.5
的治療や臨床試験が進行中のものまで含め、最適
倍も優れていることが証明され、不要な患者への
な治療オプションを提示する。患者 1 人ひとりに
生検を 31%削減させることができた。
ついて、検知された塩基置換やゲノムコピー数変
phi
異などのゲノム変異と、その治療オプションがシ
Access2
ンプルに示される。今までは検知できなかった変
異や、これから変異する可能性のある細胞の検知
も可能だという。
同社によれば、これまでにこの検査を受けた患
者の 70%にゲノム変異が見られたが、その半分は
ほかの検査では検知できていなかった。
FoundationOne の登場により、癌治療分野で分
(http://www.prostatehealthindex.org/)
子診断の利用がさらに拡大すると見られる。
Orthopedics
ベックマンの前⽴腺癌検査
Prostate Health Index で
不要な⽣検を削減
ビー・ブラウンエースクラップ、
PS 型膝関節置換システム
VEGA を発表
2012 年6 ⽉26 ⽇
2012 年6 ⽉18 ⽇
ベックマン・コールターが、PSA(前立腺特異
抗原)検査の補足的検査である「Prostate Health
ビー・ブラウンエースクラップは、人工関節の
Index(phi)」の市販前承認(PMA)を取得した。
学会 Current Concepts in Joint Replacement で、
ベックマンの PSA 検査「Access Hybritech PSA」
PS 型(後十字靭帯切除型)の膝関節置換システ
で血中の PSA 濃度が 4~10ng/mL と診断された
ム「VEGA」を発表した。
患者の補足検査用で、PSA タンパク質の総 PSA
VEGA は、特許出願中の post-cum 機構により、
11
Jul. 2012
Vol.22
Cardiology
表面応力を大幅に軽減し関節の自由な動きを実現
している。またスリムなデザインとスムーズな可
動面で、軟組織の損傷を抑制する効果も高い。 大
注⽬を集める CVT 社の
経カテーテル僧帽弁留置術
腿骨コンポーネントは 13 種、脛骨ベースプレー
トは 11 種と幅広いサイズ展開で、性別や体格に
TMVI
応じて患者に合ったものを選択できる。また大腿
2012 年6 ⽉18 ⽇
骨コンポーネントは、窒化ジルコニウム被膜仕上
げの 7 層コーティング「AS」が施されており、同
社の非 AS コーティングの人工膝関節に比べ磨耗
コペンハーゲン大学病院(デンマーク)は、重
度の僧帽弁逆流症を患う 86 歳の男性患者に、
を 60%軽減し、湿潤性と耐久性に優れている。
CardiAQ Valve Technologies(CVT)社の開発し
た経カテーテル僧帽弁留置術(TMVI)を行い、
無事成功を収めた。
TMVI は、人工弁を運ぶカテーテルを大腿静脈
から右心房へ入れ、心房中隔を経て左心房を経由
し、弁を留置する。血管形成術やステント留置術
に近い術式で、留置後に位置の再調整も可能。心
臓を止めることなくカテーテルで正確に人工弁を
留置できるため、開胸手術が不要で、患者の負担
軽減とコスト削減にもつながる。
(http://www.bbraun.co.uk/)
エドワーズライフサイエンスの大動脈弁
「 Sapien 」 や メ ド ト ロ ニ ッ ク の 肺 動 脈 弁
スミス・アンド・ネフューより
⾜関節等のプレート 2 種が
発売
「Melody」に代表されるように、カテーテルを用
いて人工弁を留置する治療法は注目を集めている
が、僧帽弁は複雑で困難とされてきた。
2012 年6 ⽉21 ⽇
CardioFocus 社の
スミス・アンド・ネフュー(英)は、踵骨用の
アブレーションシステム
HeartLight の臨床試験良好
固定プレート「VLP Foot」と足首用の関節固定プ
レート「Peri-Loc」を発売した。VLP Foot は、小
2012 年6 ⽉19 ⽇
切開から経皮的に挿入できる踵骨用プレートで、
最大 15 度の角度をつけてスクリューを固定でき
る。患者の骨の特性に合わせて 4 種のスクリュー
CardioFocus 社が、内視鏡を組み込んだカテー
がある。Peri-Loc は 4 種類のプレートがあり、前
テルアブレーションシステム「HeartLight」の臨
方・側方・後方といったさまざまなアプローチか
床試験結果を発表した。欧州で 56 人の心房細動
ら脛骨と距骨や、脛骨と距踵関節を固定できる。
患者を対象に HeartLight を用いて肺静脈隔離術
Peri-Loc
を行ったところ、手術直後の成功率は 98%、3 カ
月後の成功率は 86%を記録。また患者の 71%は、
治療後1年間薬物治療なしで心房細動の再発を抑
制できたという。
HeartLight は、ディスポのバルーンカテーテル
と 5~10 回の再利用が可能な内視鏡を組み合わせ
たシステム。直径0.5mm の内視鏡で鼓動する心臓
(http://global.smith-nephew.com/)
12
Jul. 2012
Vol.22
をリアルタイムで観察しながら、拡張性の高いバ
での独占販売権を取得した。
ルーンで肺静脈に接触でき、X線透視なしに正確
この製品は、近赤外線分光法(NIRS)と 40MHz
なアブレーションを行うことができる。エネルギ
の血管内超音波(IVUS)を組み合わせたシステ
ー源には、効率的で強力な処理が行えるレーザー
ムで、脂肪コアプラーク(LCP)の検出用として
を採用している。
FDA で唯一承認されている。
「TVC Insight カテ
HeartLight は米国では未承認だが、2009 年に
ーテル」を血管内に挿入し、コンソールのモニタ
CE マークを取得し、欧州ではすでに使用されて
ーで血管の組織や構造を評価する。鮮明な IVUS
いる。
の画像により、病変の位置・長さ・角度が分かる
だけでなく、NIRS により LCP の場所や血管に与
える負荷まで見ることができる。
クック、脛⾻動脈からの
アプローチで重症虚⾎肢を
治療する臨床試験を開始
IVUS は、冠動脈インターベンションで日常的
に使用されているものの、血管破裂や心臓発作を
引き起こす可能性がありステント治療の障害とな
2012 年6 ⽉26 ⽇
る LCP は確認できなかった。ステント治療の対
象者の合併症の予見に、TVC は効力を発揮すると
クックメディカルは、脛骨動脈からの逆行性ア
見られる。
プローチによる重症虚血肢治療の臨床試験を始め
ニプロは、TVC に関する日本の薬事承認取得・
る。この手技は、血管拡張用のステントやバルー
販売・マーケティング・広報活動を一手に引き受
ンカテーテルを足首から逆行的に挿入し、患部へ
け、技術的なサポートに加え医師のトレーニング
到達させるというもの。
も行う。2013 年には薬事承認を終え、日本国内で
試験ではイントロデューサー「Micropuncture」、 の販売開始を見込んでいる。
サポートカテーテル「CXI」、狭窄の貫通力の強い
ガイドワイヤー「Approach CTO」などを使用し、
重症虚血肢の患者 200 人を対象に、脛骨動脈から
のアクセス性と狭窄の貫通性を評価する。また、
患者は術後1カ月に電話インタビューで経過がフ
ォローされる。結果は 2013 年に公開される予定。
重症虚血肢は、現在一般的に行われている大腿
部や鼠径部からのアクセスでは到達不能な場所に
狭窄が発生してしまうと、下肢切断のリスクが非
常に高くなる。脛骨動脈からのアプローチによる
治療方法が確立すれば、切断リスクを減らし、手
(http://www.infraredx.com/)
術にかかる時間を削減できるだけでなく、患者の
Ophthalmology
早期回復も見込めるという。
ニプロ、Infraredx 社の
TVC イメージングシステムを
独占販売
AMD 治療のための新技術、
VOT 社の植込み式
超⼩型テレスコープ IMT
ニプロは、Infraredx 社の血管内画像診断シス
人 工 視 覚 デ バ イ ス を 製 造 す る VisionCare
テム「TVC イメージングシステム」の日本国内
Ophthalmic Technologies(VOT)社は、植込み
2012 年6 ⽉28 ⽇
2012 年6 ⽉11 ⽇
13
Jul. 2012
Vol.22
式 の 超 小 型 テ レ ス コ ー プ 「 Implantable
に効果を体感できる。CE マークは取得済み。
Miniature Telescope(IMT)」で、加齢性黄斑変
第Ⅰ相、第Ⅱ相の臨床試験では、Presby を植込
性(AMD)治療市場でのシェア拡大をめざす。
んだ患者は、一般的な視力検査において近見視力
直径 3.6mm 高さ 4.4mm のこの製品は、水晶体
で 5 段階(全 11 段階)、中距離視力で 1~2 段階
嚢に植込まれ、固定焦点の望遠レンズとして働く。
の改善が見られた。遠見視力は1段階低下したが、
対象のイメージを 2.2~2.7 倍に拡大して網膜の
視力は両目で 1.0 を保持していた。第Ⅰ相試験は
正常な部分に投影することで、患者の視力を回復
フォローアップ後 2 年が経過しており、患者の視
させる。中心視覚が消失した 75 歳以上の高齢者
力改善と角膜の良好な状態の継続が確認されてい
で、AMD の治療薬が効かない、もしくは効果的
る。臨床試験に参加した患者の 95%が結果を「良
な治療法のない患者が対象となる。
好」と評価しており、患者の満足度も高い。
2002 年から行われた臨床試験では、IMT が
Neurology
QOL 向上や視力回復、コスト削減に寄与すること
が確認されており、患者からの評判も上々という。
米国では 2010 年に市販前承認(PMA)を取得
し、昨年 10 月にメディケア&メディケイドの保
険対象に加わり、今年の初めから販売されている。
そのほかに CE マーク、イスラエルの薬事承認も
Mazor 社、⼿術⽤ロボット
Renaissance の
追加承認をめざし尽⼒
2012 年6 ⽉14 ⽇
取得済み。
Mazor Robotics 社(イスラエル)は、脊椎手術
用として市販前承認(PMA)を取得している手術
用ロボット「Renaissance」の適用を拡大し、脳
外科手術用としての承認をめざしている。
この製品は、X線透視法により綿密な治療計画
を作成するワークステーションと、手術器具の正
確な挿入をアシストするアタッチメントからなる。
患者の患部に取り付けるアタッチメントは、治療
(http://www.visioncareinc.net/)
計画に基づいて器具の挿入位置や角度を 1 ミリ単
ReVision 社、⽼眼⽤の
⾓膜インレーPresbyLens の
位でガイドできる。正確かつ低侵襲な手術が可能
2012 年6 ⽉12 ⽇
外科手術をドイツで行い、良好な成績を収めた。
というロボットの特性を生かし、これまでに
3,000 件を超える脊椎手術を行った実績を持つ。
最終臨床試験開始
Mazor 社は Renaissance を用いた初めての脳
水頭症に対するシャント手術や生検、深部脳刺激
ReVision Optics 社は、FDA から治験医療機器
(DBS)といった脳外科手術用として、年内の
FDA 承認を狙っている。
の適用免除(IDE)を受け、老眼用の角膜インレ
6 月 13 日には韓国の代理店 BR Holdings 社が、
ー(インプラントレンズ)「PresbyLens」につい
て米国で第Ⅲ相臨床試験(最終段階)を始めた。
Renaissance の韓国食品医薬品安全庁(KFDA)
PresbyLens は無色透明のハイドロゲル製で
の承認を取得しており、今後は韓国を足がかりと
80%が水でできている。直径 2mm で、厚さは人
してアジアへの進出も視野に入れていくという。
の毛髪の半分程度。片目の角膜内に植込み、角膜
の表面をわずかに変化させることで、近見視力を

回復できる。手術は 15 分ほどで、その日のうち
14


Jul. 2012
Vol.22
Urology
販前承認(PMA)が検討され、有用性がリスクを
上回るとの評決が下された。
MarginProbe は乳房切除術中に使用し、FFS
超⾳波で安定した
腎除神経を可能にする
という特殊なセンサーを先端につけたプローブか
ら電磁場を発生して、組織片からの反射を測定す
PARADISE
る。正常組織と癌組織の反射の違いをアルゴリズ
2012 年6 ⽉18 ⽇
ム等で解析し、癌組織をその場で特定する。臨床
試験では、癌組織をいちどに全摘出できた割合が、
ReCor Medical 社(独)は、経皮的腎除神経シ
病理組織検査では 22%にとどまるのに対し、
ステム「PARADISE」の臨床試験の結果を発表し
MarginProbe では 72%となり、再手術の減少に
た。治療抵抗性高血圧患者 8 人を半年間追跡した
大きく寄与した。FDA はこの製品の感度と特異度
結果、収縮期血圧は平均で 33mmHg 低下し、自
に難色を示してきたが、今回の諮問委員会では再
宅や救急センターでも安定した血圧低下が確認さ
手術の減少効果が高く評価されたようだ。
れた。経皮的腎除神経システムの臨床データの公
2006 年に CE マークを取得済みだが、米国では
表は、メドトロニックの「Simplicity」に続いて
治験用としてのみ承認されており、メディケアの
2 番目となるが、6 カ月時点での臨床成績は
償還コードもない。これについてコンサルティン
PARADISE が数段上回った。
グ会社 JR Associates は、「MarginProbe により
PARADISE は、カテーテルの先端に付いた円
的確かつ即座に癌組織を検知できれば、時間のか
筒部分から超音波を発し、腎動脈壁の交感神経を
かる病理組織検査を行わずに済み、手術時間も大
低侵襲的に不活化する。低出力の高周波を用いる
幅に削減できるし、医師の好みにも合う。償還コ
アブレーションカテーテルでは 1 カ所の焼灼に 2
ードの有無は米国市場への導入にあたって大きな
分かかるが、PARADISE はわずか 30 秒と、治療
障害とはならないだろう」と語っている。
時間の短縮が見込める。また、前者には生体組織
との接触により到達するエネルギーの量が変化す
るため一定の力で焼灼しにくいという問題がある
が、超音波を使用する PARADISE は組織に接触
しないため、安定した治療成果が期待できる。
腎除神経術の市場は急成長中で、2020 年には
21 億ドルになると見られている。現在、メドトロ
ニックをはじめ、セント・ジュード・メディカル、
コヴィディエン、Vessix Vascular 社など、多くの
(http://dunemedical.com/)
企業が製品開発にしのぎを削っている。
Other Products
Oncology
OCT 技術で⾮侵襲的な
FDA 諮問委員会、乳癌検知
システム MarginProbe の
⿎膜内診断が可能に?
2012 年6 ⽉4 ⽇
有⽤性を⾼評価
2012 年6 ⽉25 ⽇
イリノイ大学の研究者が、鼓膜内を非侵襲的に
診断できる OCT(光干渉断層撮影)デバイスの開
FDA 諮問委員会で、Dune Medical 社(イスラ
発を進めている。慢性中耳炎の効果的な治療につ
エル)の乳癌検知システム「MarginProbe」の市
ながると期待されている。
15
Jul. 2012
Vol.22
小児患者に多い中耳炎だが、慢性中耳炎になる
ートや小児患者でも安全に使用することができる。
市販前届 510(k)は完了済みで、CE マークとカ
と聴力障害を招く恐れがあり、時には鼓室形成術
など、手術が必要になる場合もある。慢性中耳炎
ナダ保健省の承認も取得している。
患者は、鼓膜内にバクテリアや雑菌がバイオフィ
ルムを形成していることが多く、それを検知・監
EnteroMedics 社の
視することが治療には重要だという。しかし、検
植込み型肥満治療デバイス
Maestro の使⽤が始まる
耳鏡の診断では鼓膜表面しか確認できないため、
バイオフィルムの検知は難しく、今までは侵襲的
2012 年6 ⽉6 ⽇
な検査が必要だった。
今回開発されたハンドヘルド型のデバイスは、
光を使用して1秒程度スキャンすることで、鼓膜
EnteroMedics 社の植込み型肥満治療デバイス
の数ミリ奥の 3-D 画像を作成できる。これにより
「Maestro Rechargeable System」を使った初め
医師は、バイオフィルムの形状だけでなく厚さも
ての治療が、クウェートの Hadi 病院で行われた。
このデバイスは、ペースメーカのような本体を
確認することができるという。
まだ試作段階にとどまっているが、研究チーム
腹腔鏡下で食道と胃の間あたりに植込み、2 本の
はよりコンパクトで使いやすく、低価格な製品を
リードで迷走神経を遮断することで患者の空腹感
めざし改良を試みている。さらに先端部の交換で、
と満腹感をコントロールし、肥満を治療する。体
耳内のみならず眼内、口腔、鼻内、皮膚等へも使
外から本体の上に伝達コイルをあてることで、体
用できるようになれば、プライマリ・ケア医に欠
表面から本体を充電したり、設定を変えたりでき
かせない診断ツールとなるかもしれない。
る。生活習慣や食事に厳しい制限がないため、患
者の負担が少ないのが特徴。
CE マークとオーストラリアの薬事承認(TGA)
Spring 社、安全な
は取得済み。米国では市販前承認(PMA)取得に
インスリン投与デバイスを
Twobiens 社にOEM 供給
向けて臨床試験を行っており、来年の初め頃には
結果が出る予定だ。
2012 年6 ⽉5 ⽇
インスリンポンプなど糖尿病製品を製造する
Spring Health 社は、糖尿病製品のサプライヤー
Twobiens 社(韓国)から世界的な OEM 生産を
受託した。この契約により Twobiens 社は、Spring
社のインスリンデリバリーシステム「Universal
Infusion Set」に自社の社名を冠して全世界に販
売できるようになる。
(http://www.enteromedics.com/)
Universal Infusion Set は、針の付いたチュー
ブを患者の腹部に貼り付け、チューブの反対側を
Intersect ENT 社の
インスリンポンプに接続してインスリンを投与す
副⿐腔炎治療⽤ステロイド
溶出インプラントPropel
るシステム。現在市場に出回っているほとんどの
インスリンポンプに対応しており、360°回転す
2012 年6 ⽉8 ⽇
るコネクターなどの機能を備える。注目すべきは
針を自動収納する Detach-Detect 機構で、針が患
者から外れるのを検知するとブロック機構が作動
Intersect ENT 社が、慢性副鼻腔炎の再発を防
し、自動的に内部にしまい込む。そのためアスリ
止するステロイド溶出インプラント「Propel」の
16
Jul. 2012
Vol.22
良好な試験結果を発表した。
正常組織のみが緑色に染まって見えるため、腫瘍
この製品は、副鼻腔の内視鏡手術後に炎症部に
部分を識別でき、腎臓の正常組織を温存しつつ腫
植込まれ、自己拡張して副鼻腔(し骨洞)の開存
瘍部分を残らず正確に摘出できる。
を維持し、抗炎症ステロイド剤(フランカルボン
ICG 染色は合計 3 回行われる。1 回目は、CT
酸モメタゾン)を 30 日以上にわたって放出する
スキャンや MRI には映らない腎臓の血管を視認
ステント状のデバイス。治療が終わると体内で分
し、血管の誤った損傷を防いで失血を押さえるた
解される。
め。2 回目は、腫瘍と正常組織を識別し、癌組織
105 人の患者を対象に行われた中枢試験と、現
の取りこぼしを防ぐため。3 回目は、腫瘍の摘出
在 Propel による治療を受けている 38 人の患者の
後、腎臓の血流を確認するため。
データでは、Propel を使用しなかった群に比べ、
Propel を使用した群は再治療を 35%、患部の癒着
を 51%、抗炎症ステロイド剤の服用を 40%、ポリ
ープの発生を 46%削減できた。
市販前承認(PMA)は取得済みで、年間 50 万
症例の副鼻腔炎手術が見込まれる米国市場に限定
的に供給している。また、米国外の市場にも進出
するべく、CE マークを申請中である。
(http://www.intuitivesurgical.com/l)
コヴィディエンが
パルスオキシメーター
Nellcor Bedside SpO2 発売
2012 年6 ⽉11 ⽇
コヴィディエンは、動脈血酸素飽和度を計測す
(http://www.intersectent.com/)
る パ ル ス オ キ シ メ ー タ ー 「 Nellcor Bedside
SpO2」を欧州麻酔学会議で発表する。
術中に蛍光観察できる
アプリケーションFirefly、
ダヴィンチに追加
新生児から成人まで幅広い患者の酸素飽和度と
脈拍数を継続的に測定できる製品で、ベッドサイ
ドに置いてもスペースを取らないコンパクトなデ
2012 年6 ⽉8 ⽇
ザインとなっている。標準のバッテリー駆動時間
は 5 時間だが、オプションで 10 時間にもなる。
Intuitive Surgical 社の手術用ロボット「ダヴィ
低灌流時の波長の誤差を修正する独自の技術
ンチ」は、低侵襲性と正確性が高く評価され、前
OxiMax を搭載し、正確な測定が可能。さらに、
立腺癌の手術など泌尿器分野での使用が拡大して
酸素脱飽和時のアラームを管理する SatSeconds
いる。腎臓癌の手術中に腫瘍部位を蛍光観察して
機能により、重篤な場合とそうでない場合を判断
識別できるアプリケーション「Firefly」が新たに
し、無駄なアラーム発生を抑制する。医療従事者
追加され、ダヴィンチの安全性と有効性がより高
はわずかな異変も早期に察知でき、緊急事態に素
まると期待されている。
早く対応できる。
同社が開発した Firefly は、血中のインドシア
Nellcor Bedside SpO2 の CE マークは取得済み
ニングリーン(ICG)に近赤外光をあて、ICG の
で、欧州諸国ではすでに販売されている。米国で
蛍光発色を特殊な撮影装置で可視化するシステム。 は市販前届 510(k)を申請中。
17
Jul. 2012
Vol.22
血糖を測定し、採血による測定値と Glycolaser
遠隔からコントロール
できる⼈⼯膵臓、
承認に向けて⼀歩前進
の測定値を比較した結果、平均測定感度は 90%と
まずまずの値となった。ほかの物質との干渉も起
こしておらず、商業化レベルには及ばないものの、
2012 年6 ⽉13 ⽇
技術革新により今後の展望が期待できる。
今後同社は、ISO や FDA の規定する最低基準
JDRF(若年性糖尿病研究財団)は米国糖尿病
である感度 95%を目標に改良を重ね、医療用・家
協会(ADA)で、スマートフォンやソフトウェア
庭用機器として FDA の市販前承認(PMA)や CE
を利用して外部からインスリンの投与を制御する
マーク取得をめざすという。
人工膵臓の予備試験の結果を発表した。
対象となった 1 型糖尿病患者 2 人は、ホテルで
の宿泊を含む 18 時間モニタリングされ、病院外
で夕食・朝食をとり、朝の散歩を行った。1 人は
18 時間すべてを通して、もう 1 人は 78%の時間
帯で「ほぼ通常」の血糖値を記録した。人工膵臓
の承認は、同種のインスリンポンプシステムであ
(http://glycolaser.com/)
るメドトロニックの「Veo」の臨床試験を参考に
することでスムーズに進むと見られており、早期
ALung 社の⼈⼯肺
Hemolung RAS、
の承認取得が期待されている。
残る懸念事項は保険償還で、多くの糖尿病患者
臨床試験で良好な成績
を抱えるメディケアは、
「人工膵臓の適用は、ヘモ
2012 年6 ⽉19 ⽇
グロビン A1c を指標とするのか?」「長期的な合
併症や低血糖の予防は?」といった疑問を挙げて
いる。一方、現在販売される血糖モニターの 9 割
ALung Technologies 社は、慢性閉塞性肺疾患
を保険償還対象としている民間保険会社には、償
(COPD)の急性増悪患者用の人工肺システム
還に向けすでに討議を始めているところもある。
「Hemolung Respiratory Assist System(RAS)」
の臨床試験結果を発表した。
このシステムは、移動式のコントローラーユニ
Gulya 社、
ット、15.5 フレンチの静脈カテーテル(脱血カニ
⾼感度のレーザー⾎糖測定器
Glycolaser を開発中
ューレ)、カートリッジからなる。カテーテルを患
者の静脈に留置し、遠心ポンプで血液を体外のカ
2012 年6 ⽉14 ⽇
ートリッジに送り、毎分 350~550ml の血流から
血中の二酸化炭素の約 50%をメンブレンで酸素
第 72 回米国糖尿病学会のサイエンスセッショ
化して体内に戻す。肺機能を代替することで、患
ンで、Gulya 社(伊)がレーザー光を用いた血糖
者の肺を休ませて治癒させる。
測定器「Glycolaser」のパイロット試験の結果を
臨床試験では、重篤な COPD 患者に Hemolung
発表した。従来のレーザー血糖測定器は精度に問
RAS を使用したところ、動脈血二酸化炭素分圧は
題があったが、Glycolaser はレーザーを 2 つ組み
24 時間で平均 28%下がった。また治療中に気管
合わせて照射角や波長に変化を付け、検査精度を
挿管が必要になった患者はなく、想定外の有害事
向上させている。
象も発生しなかった。現在、CE マークを申請中。
試験には平均年齢 47 歳の 1 型・2 型糖尿病患
者 167 人、低血糖患者 4 人の計 171 人が参加した。
空腹時または食後のどちらか一方のタイミングで
18
――――――――――――――――――――――
編集室注:本社所在地が米国の企業は、国名記載を省略し
ています。
Jul. 2012
Vol.22
Kawanishi Hotline
前号の Medical Device Daily から、カワニシの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。
Regentis Biomaterials社の膝の軟⾻を
再⽣させる液体インプラントGelrinC〈5/15〉
在宅で透析ができるNxStage
System Oneに⻑期有⽤性あり〈5/29〉
ポリエチレングリコールジアクリレートと変
性フィブリノーゲンからなり、紫外線照射で固
まる。損傷部分の空洞を埋め、軟⾻の再⽣を促
し、やがて⽣体内で分解される。臨床試験中の
欧州で数カ⽉以内のCEマーク取得をめざす。
⽔道⽔から簡単に透析液を調製できるので、従
来の透析システムのような特別な⼯事が不要
で、⾃宅や出先でも透析が可能。臨床試験では
末期腎不全患者に対し⻑期的な有⽤性が認め
られている。市販前届510(k)は完了済み。
 半年から 1 年で吸収されて自分の軟骨に置き換わ
 長期予後の点では腹膜透析よりも分があるとはい
る、いわば吸収性人工軟骨ともいうべき製品で、
え、長時間拘束される通院での血液透析は、時間
かなり期待できる。軟骨損傷については、自家軟
的・物理的に患者に大きな制約となる。血液透析
骨を採取して移植するモザイクプラスティーか、
が在宅で可能になれば、患者はその制約の大部分
骨髄を刺激し軟骨の再生を促すマイクロフラクチ
から解放され、QOL は格段に向上する。透析に要
ャー法しかないのが現状だが、GelrinC には自家
する時間について記載がないので判断はできない
軟骨を採らなくて済む手軽さがあり、非常に良い
が、もし腹膜透析同様に就寝中でも透析ができる
と思う。ただ、液体インプラントということで、
のであれば、非透析患者とほとんど変わらない社
関節鏡視下での手術は不可能ではないだろうか。
会生活を送ることも可能だろう。医療者側よりも
また、スポーツ整形のドクターに症例が集中する
患者側からの需要が高い製品だと思う。
ことが予想されるが、症例数は月に 1 例から 2 例
ただし、血管にアクセスするので、感染管理・安
で、それほどあるとは思えない。(青木)
全管理については腹膜透析以上に厳密さが要求さ
 本誌でもたびたび開発中の製品が紹介されている
れる。適応が限定される可能性もあるだろう。
ように、現在の市場は、低侵襲・長寿命の人工関
導入に際しても、介助者の一定の資格要件や緊急
節と、人工関節置換までの時間を稼ぐインプラン
時の体制整備など、多くのハードルがあると考え
トに 2 極化している。この製品のように軟骨を置
られる。現在の血液透析患者や新規患者がどれく
換、再生できるインプラントは、人工関節の置換
らいこのシステムを導入できるかわからないが、
に踏み切るタイミングを遅らせることができるた
仮に現在の血液透析患者のうち条件に恵まれた
め、非常に有効だと思う。(西山)
(=患者本人の健康状態がよく、かつ介助者など
 健全な軟骨を移植したり、損傷部分を傷つけたり
の環境面が整っている)上位 5 % 程度が移行した
するのではなく、自分の軟骨そのものを再生させ
としても、国内で 1 万人以上が対象となる。透析
るので、画期的な治療法といえる。膝軟骨の損傷
製品は確実な消費が
は患者数も多く、今後も増加が見込まれる分野。
見込め、ボリューム
膝関節の痛みの主な原因は軟骨の損傷によるもの
も非常に大きい。今
なので、患者の負担の少ないこの治療法が確立さ
のところ、事実上競
れれば、QOL は間違いなく向上すると思われる。
合はないので、将来
現在の主力製品である人工関節の使用が少なくな
性のある製品と言え
る可能性もある。(萬木)
る。(樋口)
(http://www.nxstage.com/)
19
Jul. 2012
Vol.22
てんかん性発作の重症度を測定できる
Affectiva 社の Q-Sensor〈5/1〉
注⽬のデバイス関連記事を
ピックアップ!(未掲載記事より)
情動を⽣理学的に計測する Q-Sensor で、脳波
計と同等にてんかん性発作の重症度が計測で
きると判明。⼿⾸等に装着するだけなので、頭
部に電極を取り付ける脳波計より利便性が⾼
い。医療デバイスとしての FDA 承認をめざす。
■ 膝インプラントの⼿術⽀援システムを
開発する OrthoSensor 社〈5/7〉
「OrthoSensor Knee Balancer」は、インプ
ラントに組み込んだセンサーがリアルタイム
に状態を伝え、正確な配置ができるようにする
 現在の検査は、経頭蓋的に脳波を記録するか、外
⼿術⽀援システム。
市販前届510(k)は完了済み。
科的手術により硬膜下に電極を設置し脳波を記録
するかである。それが手首・足首などにリストバ
 実用化されるととても面白い商品。膝の靭帯
バランスや屈曲、伸展角度をリアルタイムに
簡単に見ることができるのは、ドクターにと
って大きな恩恵。製品紹介ではストライカー
の膝インプラントを使用していたが、他社製
にも当然対応してくるだろう。(青木)
ンドのように装着することで記録できる、しかも
自宅での検査も可能となれば、患者にとっては大
きなメリットとなる。小児てんかんなどでは長時
間じっとしていることも難しいので、検査側も助
かるだろう。しかし、脳波記録はてんかん発作が
起こった際のてんかん波が起こった場所(焦点)
■ Interrad Medical 社のカテーテル
を突き止めることが重要。本当に経頭蓋的、外科
固定デバイス「SecurAcath」〈5/14〉
的電極設置に代わり、脳機能マッピング等が
縫合⽷や接着剤を使⽤せず、迅速かつ安全にカ
Q-Sensor でできるのか、検査の精度はどのくらい
かといった疑問が残る。その点がクリアになれば、
同等品もないので独擅場となるだろう。(田中)
テーテルに直接装着できるクリップタイプの
固定デバイス。⽪下のアンカーはとても⼩さく、
患者が痛みを感じることはない。
 カテーテルの挿入から固定までに要する時
間が短縮されることは、感染面からはメリッ
トがある。ただ、長期留置の患者には向かな
いかも。(中井)
BioVentrix社の⼼不全治療⽤経カテーテル
⼼室再建デバイスPliCath HF〈5/7〉
カテーテルを使って左⼼室の側⾯壁と⼼室中
隔をアンカーで留め、瘢痕化した組織を隔離し
て治療するシステム。侵襲性の⾼い⼿術に耐え
られない患者にとって有⽤な治療オプション
になる。今期中の CE マーク取得が⽬標。
■ オーソフィックス社、ブレインラボ社と
脊椎⼿術分野で業務提携〈5/31〉
オーソフィックス社の低侵襲の脊椎固定⽤ス
クリューシステム「Phoenix MIS」等と、ブレ
 低侵襲を追求し、外科的治療からカテーテル治療
インラボ社(独)の最新型脊椎⼿術ナビゲーシ
に移行するものすべてに言えることだが、このデ
ョンシステムを統合し、⼿術計画の作成や、術
バイスもかなりリスクが高いように思える。経血
中のリアルタイムのポジショニングを可能に
管的にカテーテルで設置するので、デバイスの脱
する製品を開発する。
落や心内膜損傷、穿孔等、左室内に何らかのイベ
■ 絹を使⽤した⾼分⼦繊維の
ントを発生させてしまう恐れがある。臨床試験で
スキャホールドで⾻折治療を改善〈5/3〉
実際に術後に心臓の活動が活発になるというデー
タフツ⼤学が、⾻折した⾻のサポートに使⽤す
タが挙がっている点は評価できるものの、母集団
る⽣分解性のスキャホールドを公開。ミクロサ
が少なすぎてなんとも言えない。心不全治療とい
イズの絹繊維を使⽤しており、コンクリートを
ったくくりであれば CRT(心臓再同期療法)が競
補強する鋼繊維と同等の強度と、幹細胞の分化
合になるかもしれないが、新しいデバイスでもあ
を促進する機能を持つ。
り、直接の対抗製品は見当たらない。(森田)
※〈 〉は MDD の配信日、
( )内は回答社員の名字
20
Jul. 2012
Vol.22
ヒューマンドキュメント医療機器を開発した⼈たち
敗⾎症に陥った⼈たちの命を救う世界初の⾎液浄化器
「トレミキシン」開発物語 -7-
―――取材・執筆
ふくやま
たけし
福⼭ 健
しょうじひさたか
鉛繊維の研究をしていた小路久敬である。その後入
この「トレミキシン」開発物語(全 10 回)は、NPO
れ替わるように、寺本は国家プロジェクト「バイオ
法人・日医文化総研の文化情報誌、
『知遊 Vol.9』
(2008
マテリアル研究所」に出向することになり、寺本の
年 1 月刊)と『知遊 Vol.10』
(2008 年 7 月刊)に連載
研究は小路に引き継がれるという経緯をたどる。
されたヒューマンドキュメントを転載したものです。
「まさか、これが、私のライフワークになるとは、
思ってもいませんでした」と、小路は語る。
「83 年 10 月ごろから大学に通い実験を始めまし
引き継がれていく
研究のバトン
たが、治療実験の成績は、不安定で、なかなか、決
定的な結果が出ませんでした。会社に戻り、再度、
人工肝臓とは別に吸着カラムの新しい用途を模索
ポリミキシンB固定化繊維をつくり直し、治療実験
てらもと か ず お
中の寺本和雄のところに、滋賀医科大学の大学院生
をやりました。問題は、ポリミキシンBをどのよう
たにとおる
であった谷 徹(現・同大学外科学講座教授)が訪れ、
に繊維に固定化するかが重要で、それに気づき、最
「新しいデバイスの研究を一緒にやりましょう」と
適化するまでに、およそ 2 年が必要でした。効果が
いう話になり交流が始まる。それからしばらくして
あるか否かは、動物実験でしか実証できず、大変な
寺本が大学を訪れた折、谷らから抗生物質のポリミ
試験でした。滋賀医大の先生方もよく一緒にやって
キシン固定化の提案を受け、注射用ポリミキシンB
を 1 バイアル(注・ガラス製の小瓶)渡され、固定
くださったものだと、いまでも思います」
開発政策上、とくに寄与した東レの人たちとして、
化の検討を本格的に始める。81 年夏のことだ。
寺本や小路は 4 人の人物を挙げる。滋賀医科大学の
寺本の頭にはポリミキシンBを固定化できる担体
谷医師を紹介して共同研究の契機をつくり、動物実
としてビリルビン吸着剤の合成中間体であるアミド
験が始まると滝内秀文研究員を派遣してくれた西海
メチル化繊維がすぐに浮かんだ。会社に戻り、ポリ
四郎・新繊維研究室長。医療材料といういままでの
ミキシンBの化学構造を調査し、固定
化できそうなことを確認した。早速、
試薬を購入し、固定化の実験に着手す
る。固定化繊維を試作し、大学に提供
し、それを用いての動物実験が開始さ
れる。
83 年 8 月、滋賀医科大学・東レ技
術連絡会で、敗血症のイヌの治療実験
で顕著な救命効果が得られたことが
報告される。敗血症犬の治療実験を数
多くこなすために、東レからも支援の
研究者を大学に派遣する必要が生じ
た。そこで、寺本が田中三千彦・新繊
維研究室長に要望して自分らのグル
ープに移籍してもらったのが、当時、
トレミキシンの開発に社長賞が授与された。受賞記念パーティには、開発功労者、
事業化関係者たちが勢ぞろいした(1997 年)。
21
Jul. 2012
Vol.22
繊維研究所になじまないテーマを強力なリーダーシ
るところは同じです。人工肝臓のときの反省から
ップで推進した川口達郎・繊維研究所長、その下で
ヘパリン吸着性が低くなるように作ってありま
研究推進の実行に当たった田中三千彦・新繊維研究
す)。
室長、それに事業化推進のリーダーとなった武山高
②性能
之・人工臓器事業部長である。
癌の進行とともに患者の血液中に増加してくる免
共同研究開始から 27 年が経過した今日、開発に
疫抑制物質(TGF-βが代表的なものです)や血管
携わった東レの人たちの多くはすでに現役から離れ
増殖因子に対する吸着能力が高い。
ている。寺本も昨年、定年後の 5 年間の嘱託勤務を
終え東レを完全退職した。しかし、研究者としての
〔治療効果の出る理由〕
現役を引退したわけではない。現在、研究生の身分
①癌治療と免疫抑制物質
で滋賀医科大学の小笠原一誠教授の病理学教室へと
体内では細胞増殖の際のミスで常時少数の癌細
通っている。
胞が生成していますが、健康時には癌細胞を殺す
細胞(腫瘍抗原特異的キラー細胞:CTL)が働い
初⼼を忘れない
⼀徹な研究者魂
ていて、すぐに排除されます。
「癌治療カラムは体外循環カラムの究極のターゲ
増殖が始まります。癌細胞は CTL の機能を抑える
ット」である。トレミキシン開発に携わって以来、
物質(TGF-βとか可溶性 CD40)を放出しますの
この考えは寺本のなかで一貫して変わっていない。
で、これらの物質の血液中の濃度はどんどん上昇
しかし、なんらかの原因でこの免疫機構の働き
しゅよう
が悪くなると、殺されない癌細胞が増え、腫瘍の
98 年ごろから白血球吸着繊維の研究に着手し、体
します。
外循環カラムを癌治療に使うことを検討してきた。
こうなると、存在しているにもかかわらず CTL
東レの機能材研究所に在籍し、京都府立医科大学外
が機能しなくなります。また、腫瘍の増殖には栄
科学教室や滋賀医科大学病理学教室とともに、癌治
養と酸素が必要なので、癌細胞は血管増殖因子
療に効果を発揮する体外循環用カラムの開発に挑戦
(VEGF)も放出して血管の新生を促進します。
をし続け、ラットの体外循環実験を繰り返し、試験
②カラムの意義
臨床に入れるまでに進歩を遂げた。癌治療に役立つ
このカラムは TGF-βとか可溶性 CD40 をよく
ことが期待できるまでに達したその成果は、第 66
吸着しますので、CTL の機能回復に役立ちます。
回日本癌学会学術総会(2007 年開催)において研究
また、VEGF も下がりますので血管新生も抑えま
発表されている。
す。これらの血中濃度は体外循環後 4 日目くらい
そこで関心を呼んだ発表スライド原稿を「ぜひ拝
で元に戻るので、効果が出るか心配でしたが、実
見したい」とお願いして送ってもらった。残念なが
際にやってみると、治療効果があることが確認で
ら、研究者用に英文で書かれた原稿をここで紹介す
きました。
る紙数はないが、興味を持たれる方も多いと思われ
ラットの体外循環には皮膚の切開が必要ですが、
るので、寺本が要約し添付してくれた資料中の「癌
人間の体外循環の場合は腕の静脈に針を刺すだけ
治療カラムの特性」と「治療効果の出る理由」につ
でできますから簡単です。また、抗癌剤と異なり
いての記述を紹介しておこう。
骨髄破壊のような大きな副作用がありませんから、
何回でも繰り返して使用できる利点があります。
〔癌治療カラムの特性〕
トレミキシン開発中から「究極のターゲット」と
①形状
して思い定めた癌治療カラムの開発にいまなお打ち
体外循環用カラム。吸着剤として特殊な官能基を
ふしょく ふ
導入したポリスチレン繊維の不織布をカラムに充
込む寺本の姿に、初心を忘れない一徹な研究者魂を
塡したもの(繊維の断面構造はトレミキシンと少
見る思いがする。
し異なりますが、アミドメチル化反応処理して作
(次号に続く)
22
Jul. 2012
Vol.22
[出典紹介]
MDD (Medical Device Daily)
医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録したデイリーニュース。
医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、FDA、新製品、VIP インタビュー等。
HRM (Healthcare Risk Management)
医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。
CMA (Case Management Advisor)
入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわるさまざまな問題やその解決方法を収録。
HCM (Hospital Case Management)
病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、成功/失敗事例の紹介。
知遊 (CHIYU)
特定非営利活動法人(NPO 法人)・日医文化総研が、年 2 回刊行する文化情報誌。今日の医療を取り巻く
文化状況を、芸術文化・歴史・経済など幅広い視点から取り上げている。(http://www.chiyuu.com/)
アドバイザリー・スタッフ――メリー・コーベット/宇野恵裕/福⼭健
エディトリアル・スタッフ――前島達也/佐藤崇/岩⽥斐/海野裕美/岡⼭⼤学 MESS/三宅優美/渡邊若菜
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Jul. 2012 Vol. 22
[発⾏⼈]―――野瀬洋輔
[編集⼈]―――前島達也
[発⾏所]―――㈱カワニシホールディングス
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