Le journal - Tara Expeditions

Le journal
Free newspaper published by Tara Expeditions. Legal representative and director of the publication: Étienne Bourgois. Editor in chief: Michel Temman. Editorial director: Éloïse Fontaine.
Coordination: Magali Puiseux. Scientific director : Éric Karsenti. Artistic direction & layout: be-poles. Artwork: Benjamin Flao. Cover photo: F. Bernard/PolePictures.
Printer: Roto Champagne. A print run of 60,000 copies. Publication date: 1/11/13. ISSN 1953-6798. The Tara Foundation, 12 rue Dieu, 75010 Paris, France – +33 1 53 38 44 89 - www.taraexpeditions.org
of actions
special issue 2014
タラ号 10年の軌跡
2014年 特別号
2003-2013
10 years of actions
社説
結局は海が主役
タラ号プロジェクト事務局長 ロメイン・トゥルブレ
© E.Quesnel/Tara Expéditions
早 10 年…。私たちの海、ひいては私たちの
地球に迫っている脅威に関する啓蒙活動を行う
タラ号プロジェクトが 10 年目を迎えた。私たち
がこれまでに取ってきた方法はユニークであり、
それがまた目標でもある。私たちは全長 36mの
スクーナー船、タラ号で国境なき航海へと乗り
出し、2003 年にエティエンヌ・ブルゴワが中
心となり、アニエスベーのサポートを得て、タ
ラ号プロジェクトが発足した。当初の考えは、
航海中のタラ号の乗組員たちの話を伝えること
で話題を集め、現代の経済開発モデルが引き起
こしている事態や課題について人々の関心を高
めようというものだった。現代の開発モデルに
疑問を投げかけ、中長期的な変化をより正確に
予測するためには、科学、つまり、それに直接
関わっている人たちに発信してもらい、私たち
の限られた知識の限界を押し広げてもらうのが
一番良いと考えたのだ。
タラ号
プロジェクト年表
2013.5 - 12
タラ号北極圏プロジェクト
科学的、教育的任務を遂行するため、
タラ号が北極海を周航。
2009.9 - 2012.3
2006.9 - 2008.2
タラ号北極プロジェクト
EUのDAMOCLES研究プログラムの一環として、国際北極年の期間中、
507日間かけて2,600kmに渡り北極を航海。
こうした情熱は発見や冒険といったような私
たちの子供時代の夢を蘇らせてくれる。それこ
そが私たちが分かち合いたいことだ。発見する
べきことはまだ膨大に残されているし、私たち
はこれからまだ望むような未来を創ることがで
きる、ゲームはまだ始まっていない、というこ
とをみなさんに知ってもらいたい。ただし、今
すぐ行動しなくてはならない。まずは気候の変
化に対応し、環境に優しい開発モデルを採用し、
新たなエネルギー源を見つけ、教育と知識にお
ける南北格差をなくす必要がある。これは世界
を救おうと言っているのではなく、科学者たち
何年間にも渡りタラ号が訪れる海洋域が膨 を介して国際的な研究に関わりを持ち、私たち
大になるにつれ、私たちのチーム(というより の海洋惑星についての知識を深めるための新し
は
「家族」と呼ぶほうがしっくりくる)も拡大し、 い道筋を作ろうということだ。私たちが行って
成長してきた。科学者や教育機関、スポンサー、 いることにより海洋が未来の環境に優しい開発
そしてみなさんのおかげでプロジェクトはしか モデルの主要問題となり、敢えて恐れずに言う
るべきレベルを保つことができている。若者や ならば、その経済面での大きな可能性を明らか
フランスのメディアも自発的に活動してくれている。 にすることで、海洋の保護が進むことを期待し
ている。私たちをより環境に優しい方法へと本
「タラ号プロジェクトに関わることは、 当に動かすのは、この経済的可能性だ。
多大なる情熱があったからこそ私たちはここ
まで来ることができた。40ヵ国もの科学者たち
が関わり、2 年半に及んだタラ号海洋プロジェ
クトの背後にあった情熱は忘れがたい。実験は
手順通りに何度も同じことを繰り返し行う作業
であったが、海洋について再発見し、私たちの
世界における海洋の真の原則を理解するために
新たな見解を得たい、という人間的欲求に突き
動かされた揺るぎない情熱がタラ号を支配して
いた。
タラ号地中海探検プロジェクト
タラ号海洋プロジェクト
プランクトンの生態系および気候の変化による影響を研究するため、
2年半に渡り世界中の海を航海。
私たちはタラ号と共に、過去 10 年以上に渡
る長い道のりを歩んできた。初期のプロジェク
トは数か月に渡り、グリーンランドや南極まで
アーティストや科学者を同行した。こうした初
期のプロジェクトは、後に気候や海洋生物の多
様性を調査するために行われた、タラ号北極プ
ロジェクト
( 2006〜2008 年)、タラ号海洋プロ
ジェクト
( 2009〜2012 年)、そしてタラ号北極
圏プロジェクト
( 2013 年)という、3 つの大規模
なプロジェクトのためのテスト的な役割を果た
した。
物事を進歩させることに積極的に関わり、
今日の環境問題の現実に対峙し、私たち
の未来を手に入れるために立ち上がると
いうことだ。」
2014
タラ号プロジェクトに関わることは、物事を
進歩させることに積極的に関与し、今日の環境
問題の現実に対峙し、私たちの未来を手に入れ
るために立ち上がるということだ。今回記念す
べき 10 号目となるタラ号ジャーナルでは、タラ
号に関わった特別な人たちのうち、何名かに聴
いたお話をみなさんにお伝えする。そうは言っ
ても、この号の主役は間違いなく我らが世界の
タラ号だ。そして、結局は海が主役なのだ 。
2004 - 2006
グリーンランド、南極、
パタゴニア、
サウスジョージア島へ6回の航海を達成。
2005.1
アーティストのセバスチャン・サルガド
(ブラジル)
とピエール・ユイグ
(フランス)が
順に南極でタラ号に乗船。
サルガドは自身のプロジェクトGenesisのために写真を撮影し、
一方、
ユイグも自身の映像作品 “A Journey That Wasnʼt” のための映像を撮影。
2004.11
団体Les Montagnes de Silenceと共に、
サウスジョージア島へ航海。
聴覚障害者と健聴者が共にアーネスト・シャクルトン卿の足どりをたどる。
2004.6 - 9
北極自然調査団CREA Arcticの自然学者と研究者がタラ号に乗船し、
環境評価を実施。
2003.10.13
エティエンヌ・ブルゴワとアニエス・トゥルブレがシーマスター号を購入、
タラ号と名付ける。
2001.12
ピーター・ブレイク卿がブラジル航海中のシーマスター号船上で殺害される。
1999
伝説的ヨットレース走者、
ピーター・ブレイク卿がアンタークティカ号を購入、
シーマスター号と名付ける。
ブレイク卿が航海を始める。
1990 - 1996
ジャン=ルイ・エティエンヌがアンタークティカ号で南極、
パタゴニア、
スピッツバーグへ航海。
1989
探検家ジャン=ルイ・エティエンヌの発注を受け、
リュック・ブーヴェとオリビエ・プティの設計によるアンタークティカ号が
造船会社SFCNで誕生。
2
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2003-2014
研究
発見の新時代
大規模に実施されたタラ号北極プロジェクト(2006年~2008年)
とタラ号海洋プロジェクト(2009年~2012年)
は科学界から高い評価を得た。
科
学の世界では、データ収集は氷山のほんの一角に ノミックス***と呼ばれるものはすでに始まっている。こ
すぎない。それが科学分野の記事となるまでには、 のプロジェクトは世界規模でプランクトンの生物多様性
長期間に渡る分析、比較、追加研究が必要となる。 の本質と役割を理解するためにタラ号海洋プロジェクト
研究に着手してから、その発見が「公式」なものとして発 で収集された数千ものサンプルとデータを構造化してお
表されるまでには膨大な時間がかかるのだ。 CNRS(フラ り、最終的には、例えば生物燃料や製薬などに応用でき
ンス国立科学研究センター)および欧州分子生物科学研 ると見込まれる、ある種の生物活性のプランクトン化合
究所
(EMBL)で研究長を務めるエリック・カルセンティ 物を取り出すことを目的としている。
によると、集積データが限られた段階のプロジェクトで
さえ、それに数年かかる場合もあるが、タラ号プロジェ
クトのような大規模なプロジェクトでは「すべてが違うス
ケールで実施」
されていくと言う。
タラ号北極プロジェクト
―理解を深め、より正確な予測を
2006 年から 2008 年かけて航海したタラ号北極プロ
ジェクトは、すでに 24 件あまりの科学論文の発表へとつ
ながっている。タラ号北極プロジェクトの科学プログラ
ムとDAMOCLES研究プログラムの責任者で、CNRS研究
長のジャン=クロード・ガスカールによれば、すでに膨
大な量の情報が分析済みだという。「航海中に収集された
データは深刻な変化を遂げている北極システムに関する
参考資料として役に立つだろうし、10 年後もまだ人々が
同じデータを用いて研究発表を行っていたとしても私は
驚かないだろう。」タラ号北極プロジェトの結果でまず重
タラ号海洋プロジェクト
要だったのは、漂流という航海の方法そのものに関連す
―プランクトンの秘密が徐々に明らかに
る事柄で、そこからすでに多くの発表がされてきた。航
海はもともと、フラム号が 1 世紀以上前に行ったように
CNRS、フランス原子力・代替エネルギー庁、そして
EMBLを巻き込んだ、タラ号海洋プロジェクトが始動し
1,000 日に渡る行程を予定していた。しかしタラ号はわ
てすでに 4 年が経ち、8 つの科学論文が発表された。この
ずか 500 日で漂流を終え、それは北極の氷の流れが速く
ことはタラ号海洋プロジェクトから膨大な情報が得られ
なっていることを実証することとなった。この最も重要
る可能性を示している。例えば、ある論文では、ある種
な発見に続いて、氷、大気、海洋という 3 つの北極シス
類のウィルスと他のプランクトン生物の関係が明らかに
テムの構成要素の相互作用についていくつかの研究が発
されている。エリック・カルセンティはこの発見に非常
表された。
「タラ号によって、海面に上がってくるフラジー
に満足している。
「それはタラ号の集めたデータが、異な
ルアイスと呼ばれる氷の結晶の生成が着目されるように
る生物間の相互作用を解明するのにいかに有効であるか
なった。」ジャン=クロード・ガスカールは説明する。「南
を示した、初めての記事。私たちがどうしても知りたかっ
極におけるこの現象はすでに良く知られていたが、私た
たことの 1 つが、海洋に存在する何と何が相互作用を起
ちは北極の氷の生成においても多くみられる現象である
こすのかということだったんだ。」こうした初期段階の結
と示すことができた。」大気に関しては、タラ号船上で行
果は素晴らしいものだったが、タラ号海洋プロジェクト
われた研究により、氷に接触しており、空気と氷の相互
が行った多分野に渡る研究のほんの 1 つにしかすぎない。
作用にとって重要な低層にある北極の大気が、より厳密
しかも、この特殊な研究は航海中に採取された全サンプ
に定義されるようになった。「衛星や自動化された観測ス
ルのうち、17 種しか対象にしていない。タラ号が持ち帰っ
テーションでは、研究することが難しいこれらの低層の
たサンプルは全部で 28,000 にものぼることから、今後
大気についてはこれまで非常に限られた情報しかなかっ
もかなり多くの発見が成されるであろうことを示してい
た。」ガスカールは言う。「タラ号北極プロジェクトのま
さに優れた点は、人間が乗船して、まだ自動化すること
る。ここ数か月間に発表された別の論文では、サンプル
ができない装置を操作しているという点だ。」ついには地
内のバクテリアの生物多様性を分析するための新たな方
震学の技術を用いて氷盤の動きの研究が行われるように
法や、ガンビエ諸島(太平洋)で発見された新種の珊瑚に
ついての説明が掲載されている。今後分析されるべきデー
なり、それについて複数の発表がされてきた。タラ号海
タは膨大に残っているため、こうしたこれまでの論文は プランクトンは海流で運ばれる全ての生物に関係している。プランクトンは私た 洋プロジェクト期間中に収集されたデータをもとにした
少数の非常に特化した内容に限られている。すべてのサ ちが吸う酸素の 50 %を生成し、大気中の二酸化炭素の大部分を吸収し、気 発見は全て、複雑な北極システムをよりよく理解し、予
ンプルを整理するだけでも 2、3 年はかかると見られてい ©候の調整に重要な役割を担っている。
測モデルを改善するのに役立つだろう。これらの ITシス
L.Gutierrez/UCD - M.Ormestad/Kahi Kai - C.Sardet/CNRS - Tara Oceans
る。
「私たちは現在、真核生物*に関して、大域的および
テムを用いて大気、海洋、氷の動きをシミュレーション
局所的な規模の生物多様性が地域によってどのように異
2013 年末までには、初めのデータ一式が専門家たちに することで、短期的シナリオの氷図や天気の予報だけで
なるのかを発表するための準備を進めている。」エリック・ 公開されオンラインで入手できるようになる。エリック・ なく、気候の変化の研究に不可欠でより長期的なシミュ
カルセンティは語る。「また、バクテリア遺伝子の包括的 カルセンティはこう語る。「同じような航海の中では、間 レーションも行うことができる。今後数年間で、タラ号
違いなくこれまでで最も素晴らしい業績である。そのウェ 北極プロジェクトによって導き出された結論が他の研究
な目録が含まれた別の研究も発表される予定だ。」
ブサイトでは世界中の研究者たちが図書館のようにタラ に加わり、予測の精度を改善するための様々なデジタル
しばらくの間は暫定的な結果で我慢するしかない。タ 号海洋プロジェクトのサンプルを使用することができる モデルに採用されることになるだろう。すでにこのよう
ラ号海洋プロジェクトのおかげで、これまで考えられて ようになる。そしてそこからどんな発見につながるかは に、タラ号で行われた研究が初の実用化に向けて動き出
いた 10 万程度を遥かに超える 100 万種以上の原生生物** 未知数なのだ。」
しているのだ。
が存在すると今では考えられている。153 箇所のサンプ
ヤン・シャヴァンス
ル採取地のうち 28 箇所から採
取された原生生物のサンプル 「 世 界 中 の 研 究 者 たちは 図 書 館 のように
核を持つことを特徴とする単細胞または多細胞生物。
*
** 核を持つ単細胞組織で、全ての生物の原種。珪藻のように、光合成を行う
を整理した段階で、そのうち タラ号海洋プロジェクトのサンプルを使用
ものもある。
85 %がこれまで知られていな することができるようになる。
そこからどんな
*** オセアノミックス・プロジェクト OCEANOMICS – (wOrld oCEAN
かった遺伝子配列を有するこ
biOresources, biotechnology, and earth-systeM servICeS:世界海洋生物
発見につながるかは未知数なのだ。」
資源・バイオ技術・地球システムサービス)は、フランス政府より「未来
とが分かっている。タラ号海
への投資」プログラムに選ばれた。
洋プロジェクトチームが行う
調査に加えて、多くの調査がここ数年のうちに開始され
る可能性がある。そうしたプロジェクトのうち、オセア
3
Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
10 years of actions
共有
アニエスベー
エティエンヌ・ブルゴワ
agnès b. & étienne Bourgois:
アニエスベーと息子、エティエンヌ・ブルゴワはある意味タラ号の 2 本柱だ。
当然彼らは未来を見据え、総帆を張って前進している。
彼らに話を聞いた。
アニエスベー
略歴
1975
アニエスベーブティック
第1号店をオープン
1979
ブランドを代表する
<カーディガン・プレッション>
を発表
1983
ギャラリー デュ ジュールと
NYのブティックをオープン
2012
タラ号船上にて
国連事務総長の潘基文を
迎える
2012-2013
映画
“Je mʼappelle Hmmm…
(わたしの名前は・・・)”
を監督
4
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タ
ラ号は何よりも家族の物語だ。海、 役割はアニエスベーによる寄付基金を作
地球、人々、そして自然を愛する母 り、他の精力的なパートナーと一緒にタラ
と子の物語である。「タラ号には感 号とそのプロジェクトに共同出資するこ
動的な物語があるのよ。」アニエスベーブ と。」未来を見据えた、寛大で著名なファッ
ランドの創設者であり、源であるアニエ ションデザイナーであるアニエスベーは
「タラ号の 10 年あまりに渡る物
ス・トゥルブレは言う。
「この船はアンター こう語る。
クティカ号として誕生した。ジャン=ル 語は自然に展開してきたし、それを止め
イ・エティエンヌと、造船技師のリュック・ るなんて考えられないわ。」
ブーヴェとオリビエ・プティによって作ら
れた後、ピーター・ブレイク卿の下で、シー
「私たちは火を相手にした氷山のよう
マスター号になるけれど、残念なことに彼
緊急に行動を起こさなくては。」
は船上で亡くなってしまう。その後、ピー なもの。
アニエスベー
ター卿の妻、レディ・ブレイクが私の息 子のエティエンヌの北極へ科学調査の航
海に出たいという夢に興味を持ったの。」
1986 年よりアニエスベーグループのマ
そして、続きは周知の通りだ。「 2003 年 ネージングディレクターを務めるエティ
にエティエンヌと私は、船を購入して環境 エンヌ・ブルゴワの方は、実際にタラ号に
に関わる活動をすることにしたわ。私の 乗船することは稀になったとはいえ、7 人
の子供を育てながらもタラ号プロジェク
トを取り仕切る時間を未だに捻出してい
る。「 10 年前、タラ号で科学的な調査を行
うことは私の原動力だった。」彼はこう説
明する。「というのも、私たちの暮らしは
海に依存しているのに、実際のところ私
たちは海について知らなさすぎるからだ。
でも私は当時、自分たちのプロジェクトが
ここまで大規模で広がりを見せるように
なるなんて、想像できなかった。2,000 人
の従業員を抱えるアニエスベーのような
会社の経営では日々業務の処理を要求さ
れるが、タラ号に乗船した科学者たちとの
仕事では長期的な視野が必要とされる。」
アニエス・トゥルブレは何よりもタラ号
ジュニア*の取り組みによって、タラ号が
素晴らしい教育ツールとなっていると考
2003-2014
「私たちを団結させるのは
他者への気遣い」
タラ号
350HP+350HP=700HP
錨鎖庫
最高速度=11ノット±20KHP
120トン
乗組員15名
建築士 ブーヴェ/プティ
冷凍庫 -80℃
サンプル保管庫
潜水用酸素ボンベ
充填スタンド
脱塩水メーカー
環境に配慮した
新型発電機
シャワー室
士官室 肉眼検査室
エティエンヌ・ブルゴワ
略歴
1960.12.2
パリに生まれる
1980.8.23
「無水」実験室
顕微鏡サーバー/
データ
帆船への情熱を教えてくれた
祖父アド・トゥルブレが死去
1986
電気機材室
ストーブ
アニエスベー社の
ゼネラルマネージャーとなる
1996
コミュニケーション室
+映像視聴室
友人ベルナール・ブイグと共に
北極の環境を目の当たりにする
2003
タラ号を購入、
タラ号プロジェクトが始動
環境に配慮した
新型発電機
デッキエリア
デッキ内
「有水」
実験室
サンプル濾過
Le Journal Tara Expeditions n°9
環境に配慮した
より強力な新型発電機
© A.Ricardou/be-poles
えている。
「タラ号海洋プロジェクトの期 少しているとされている。2012 年の終わ
間中
( 2009〜2012 年)、世界中で 1 万人も りには晩夏の氷山は 800 万㎢からおよそ
の子供たちがタラ号を訪れたわ。10 年後 300 万㎢まで減少した。「黙って見ている
には彼らは 20 歳になる。私はこの新しい わけにはいかない。」エティエンヌ・ブルゴ
世代を信じているの。若者の意識は高まっ ワが母親の懸念事項を再び口にする。「だ
てきていて、地
からタラ号は国境
球が直面してい 「私たちの暮らしは海に依存しているのに、 を越えた国際的な
る脅威を認識し
イニシアチブなの
私たちは海について知らなさすぎる。」
ている。彼らは
だ。自分たちのた
エティエンヌ・ブルゴワ
めではなく、他者
私たちが高いリ
への想いが母と私
スクにさらされ
ていることを知っていて、氷山がみるみ を団結させている。タラ号がそれを体現し 物たちが支援してくれることを望んでい
る溶けていると分かっているの。中国人 ている。タラ号の上ではエゴや、オピニオ る。
「他の裕福な人たち、そうね、敢えて『裕
のように、汚染問題は二の次で、これま ン・リーダー、誇示や派手さは存在しない。 福な』という言葉を使いましょう、彼らが
で汚染を広げてきた人たちでさえも、行 私たちのプロジェクトの目的は、結果を このプロジェクトに関わって欲しいと本
動を起こし始めている。アメリカ人もね。」 皆で大きな規模で分かち合うことでもあ 当に思う。寛大な人もいれば、そうでない
緊急に行動を起こす必要があるのだ。ここ る。」アニエス・トゥルブレは今後のタラ号 人もいる。地球上の人口はどんどん増え
30 年間で、晩夏の北極海の氷は 75 %も減 のプロジェクトをさらに影響力のある人 続けていているのだから、裕福な人たち
が分かち合わなければ成り立たないわ。」
私たちは警告を受けている!
ミッシェル・テマン
*www.tarajunior.org
5
2003-2014
© F.Latreille/Tara Expéditions
2005 年、南極でのタラ号。以前もすでにピーター・ブレイク卿の指揮するシーマスター号として同じ場所を航海していた。
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2003-2014
伝送
レディ・ブレイク
Lady Blake
アーティストで、タラ号プロジェクトの熱心なサポーターである
ピッパ・ブレイクは、当時シーマスター号と呼ばれていたタラ号の
前オーナー、故ピーター・ブレイク卿の妻である…
運
命から逃れることはできるのか?必然を避けて通ることは?ピッパ・ブレイクは
こうした疑問を問い続けている。2001 年 12 月 6 日水曜日、午後 10 時すぎ以来
絶えることなく。アマゾン川河口部の北岸に位置するマカパで、彼女の夫、ニュー
ジーランド人で素晴らしいヨットマンのピーター・ブレイク卿は彼の帆船シーマスター
号に乗って航海を指揮していた最中に、武装した海賊グループ(地元では ʻWater Ratsʼ
として知られている)に襲われ、自衛しようとして殺害された。53 歳だった。そのよう
なトラウマを負った後で、一体どのように人生を続け、そして傷を癒すことができると
いうのだろう?
大きな瞳を持つ優雅な女性、レディ・ブレイクはここ 10 年あまり、以前にも増して
あるテーマで絵を描くことが多くなった。殺し合う人間たち、めちゃくちゃな自然、地
球の狂気、カオス…。彼女はイギリス南部の海岸にあるポーツマスのアトリエで、素晴
らしく美しい絵や繊細で悲痛な絵、そして時には驚くほど暴力的な絵を描いている。
彼女はテロや、地震による衝撃、戦争、破壊といったものを、全て半抽象的な
手法で描く。彼女の筆跡には孤独や悲しみが滲み出ている…。私が以前、彼
女の作品は美しい*と言った時、彼女はこう答えた。「そう思う?それはどう
かしら。でも私にはそのような言葉が必要ね。それによってより鮮明に物
事を見ることができるから。」
絵を描く他に、彼女が何よりも楽しみにしているのは 2 人の子供の成長
だ。息子のジェームスは、自然の歴史に関する映画監督で海のボート乗り
であり、間もなくメキシコ海岸沖のホホジロザメを撮影する予定だ。娘の
サラ・ジェーンは実験舞台デザイナー兼アーティストで、大西洋と太平洋
を航海したばかり。レディ・ブレイクはまた、2003 年より、かつてシーマ
スター号と呼ばれていた夫の帆船でタラ号となった船の冒険をたどってき
た。
「エティエンヌ
(ブルゴワ)とアニエス(トゥルブレ)、そして彼らのチー
ムが、もともとはジャン=ルイ・エティエンヌが所有していたアンターク
ティカ号
( 1990〜1996 年)であったシーマスター号を引き継ぎ、そしてそ
れがタラ号になると聞き、とても嬉しかった。買い手がいなかったわけで
はなく、むしろたくさんいたわ。けれども、その中でエティエンヌとアニ
エスだけが、ピーターと同じようなビジョンを持っていた。彼らが実現しよ
うとしていたのは、ある意味、ピーターが意図していたことの延長線上にあ
るものだったの。タラ号のチームが今でも彼らの活動を私に知らせ続けてく
れているというのも嬉しいこと。そこにはつながりがあるのよ。彼らの冒険
について知らないことはないし、タラ号がどこで何をしているか、私には分かっ
ているの。
」
それはピーターの魂も同じではないだろうか?
ニュージーランドの英雄で夫のピーターは、自分の所有していた船が気候の
変化が与える影響を研究するために定期的な航海に出ていると知って喜んでい
るに違いないとピッパ・ブレイクは言う。「そう、ピーターは喜んでいるはずよ。
タラ号プロジェクトの運営者たちは素晴らしい集団で、とてもよくやっているも
の。彼らは皆にとって最も重要な問題である地球温暖化に、科学と冒険をもって
取り組んでいる。イギリスの政治家たちのように、この問題についてあまり関心が
ない、或いは無関心な人
た ち が 多 す ぎ る。
(中 略 ) 「私たちが方針を変えるとしたら地球の未来はタラ号の
だから私はタラ号がいま ような任務にかかっているわ・
・・。」
だにピーターの夢を引き レディ・ブレイク
継いで航海に出ているこ
とを誇りに思っているわ。タラ号は地球にとって不可欠な仕事をしている。もし私たち
が方針を変えるとしたら、地球の未来はタラ号のような任務にかかっているわ…。」ピッ
パ・ブレイクは一呼吸して、自信を持って付け加えた。「そう、これをあなたに伝えなく
ては。ピーターが世界中を航海していた時、彼は乗組員たちと一緒だった。その乗組員
たちはまるで 1 つの家族のようだった。そして今、タラ号のチームも 1 つの大家族だとい
うことが私には分かるの!」レディ・ブレイクはその名の通り、レディ(偉大)な女性だ。
ミッシェル・テマン
ピッパ・ブレイク
略歴
1954
イギリスのポーツマスに生まれる
1976
キャンバーウェル美術学校で
学ぶ
1999
ピーター・ブレイク卿が
アンタークティカ号を購入、
シーマスター号と名付ける
2005
ウェスト・ディーン・カレッジで
視覚芸術を学ぶ
1975 - 2014
イギリス、
ニュージーランドなど
で展示を行う
*www.pippablake.com
7
Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
© F.Latreille/Tara Expéditions
タラ号北極プロジェクト、世界の頂点にて。2006 年 9 月から 2008 年 2 月まで、タラ号は過酷な状況下での 507 日に渡る異例のユニークで歴史的な調査任務を果たした。
12 名余りの男女の乗組員たちを乗せ、タラ号は日々、空気、大気、海氷を研究し、北極における気候の変化の調査に一役買った。
写真は 2007 年 4 月に、北緯 88 度で撮影されたものである。
8
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2003-2014
初の日本人参加者
緒方博之
HIROYUKI OGATA :
日本からプランクトンへ
タラ号の研究プログラムに関わる科学者たちの中で、
日本人の科学者である緒方博之は海洋ウイルスおよび微生物の分析における
専門家として欠かせない存在となった。彼に話を聞いた。
タ
ラ号プロジェクトに参加した初の日本人である緒
方博之は、地球、自然そしてその神秘に触れなが
ら育った。彼は、東京近郊の鶴川で過ごした子供
時代に思いを馳せる。「私が子供の頃にはまだ林や川、田
んぼがあって、友達と一緒に昆虫や動物を探しに出かけ
たものだった。近代的で無機質なビルが建ち始めていた
が、地平線のあちこちにまだ美しい風景が点在していた。
残念ながらそれは過去のことになってしまったが。」
17 歳にして、彼の運命は決まっていた。「日本の多く
の若者同様、孤独で友人や社会から自分が孤立している
ように感じていた。私は科学や本に救いを求め、そこか
ら生まれる大きな謎めいた問いは私を惹きつけ、驚くべ
き真実を教えてくれた。ニュートンやアインシュタイン
は私の英雄であっただけでなく、私にとって友人のよう
な存在でさえあった。」優秀な学生だった緒方は科学の道
を歩み続け、物理学と生物学を専門とし、さらには名門・
京都大学の生物情報学部に入学した。これは画期的な選
択で、彼にとっては革命的ともいえるものだった。「私
は非常に重要な時期に、コンピューターの力を通して遺
伝子分析に出会った。というのも 90 年代初期、科学界の
関心はヒトゲノムのプロジェクトに集まっており、それ
は大きな挑戦だったのだ。」緒方は、遺伝子情報の優秀な
解析者として自らの情熱に導かれ、過去 20 年間で徐々に、
進化する生物学と微生物およびプランクトンの生態学の
研究へと移行してきた。
彼の歩みとタラ号が後に交差するのは必然であったと
もいえる。最近まで海は彼にとって怖い存在であった
が、その魅力を教えてくれる出会いがあった。「沖縄でス
キューバ・ダイビングを始めてから、サンゴ礁と海洋生
物の素晴らしさに私は魅了された。」1999 年に彼はマルセ
イユにあるフランス国立科学研究センター(CNRS)の研
究所に入所し、2012 年まで働いた。その期間に、彼はタ
ラ号の
「父親」的存在である、タラ号プロジェクト責任者
のエティエンヌ・ブルゴワと、タラ号海洋プロジェクト
( 2009〜2012 年)の科学ディレクターであるエリック・
カルセンティに出会った。
「私はすぐに快諾した。」彼は言う。「それが私にとって、
巨大な海洋環境システムの中心にあるウイルスや他の生
物を含む膨大な数の遺伝子を分析できる機会になること
は明らかだった。」緒方はさらに説明を進める。「タラ号
海洋プロジェクト( 2009〜2012 年)の期間中、タラ号の
緒方は、2013 年に日本に帰国して以来、東京工業大学
船上で収集された海洋ウイルスの一部の整理を担当した。
ウイルスは海洋中に溢れており、微生物にとって重要な にて海洋環境におけるウイルスの生態研究を続けている。
2009 年初めから、生物学者でタラ号海洋プロジェク 役割を担っている。私は、遺伝子情報学を用いて、これ 海洋生態系の神秘だけではなく、気候の変化について理
トの科学ディレクターの 1 人、コロンバン・ド=ヴァル らのウイルスの多様性と生態学的役割をさらに解明する 解することは、彼にとってますます重要になってきた。
「ア
ガスが中心となり、単細胞真核生物と海洋原生生物の研 ために遺伝子データの分析を行った。それらは海洋微生 ジアでは、よりコントロールされた形での経済成長が優
究を行っていた。彼は、緒方に
物界の構成をコントロールして、 先されるべきだ。この地域では、新しい経済政策が理想
「タラ号プロジェクトは様々な研究所の力を
タラ号の研究チームに入り、海
海洋の調整にとって不可欠な役 的だ。けれどもそれは経済成長を謳うスローガンと相反
海洋の秘密をより迅速 割を担い、プランクトン種の進 するものであり、CO2 排出の削減や核エネルギーへの
洋ウイルスの未知の世界を研究 集結して研究を行い、
しないかと声をかけた。それら に解明するためにすごく変わった主導的役割 化において重要な役割を担って 依存を最小限に抑えるという考えと矛盾する。日本では、
の生物学的粒子は文字通り寄生 を担っている」
いる。」海洋ウイルス学の研究は、 代替エネルギーとして、メタンハイドレードやレアメタ
ルと並び、海洋エネルギーの利用への新しい期待からこ
生物であり、生存し、繁殖する 新たな海洋ウイルスの発見にも
緒方博之
ために宿主細胞に影響を及ぼす。
つながる可能性があり、それが れまでにない問題が持ち上がっている。それ故、タラ号
の目的である根本的な研究の実施は、アジアにおいても
海洋にはこうしたプランクトン微生物粒子が溢れてお 遺伝子研究に影響を及ぼすことが予想される。
重要だ。タラ号の科学者たちによって、海洋生物と生態
り、その数は海水 1 ミリリットルあたり、数百万にも及ぶ。
ウイルスのサイズは 200 ナノメートル( 1 ナノメートルは
「私はタラ号プロジェクトの重要性を徐々に実感するよ 系における世界的な変化の結果を地域別に定義すること
10 億分の 1 メートル)以下であることが多いが、数百〜 うになった。それは様々な研究所の力を集結して研究を を手助けできるのだ。」
ミッシェル・テマン
1,000 ナノメートルに及ぶものもある。(よってこれらは 行い、海洋の秘密をより迅速に解明するために、すごく 「ジャイルス」
または巨大ウイルスと呼ばれる。)
変わった主導的役割を担っている。」
9
Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
10 years of actions
警告
フィリップ・スタルク
Philippe Starck:
「タラ号はエレガントで高潔だ」
有名な東京のアサヒビール・スーパードライホールの「炎のオブジェ」、
大阪のバロンヴェールビルの建築や、その他多くの先駆的な作品で名高い
フランス人デザイナー、フィリップ・スタルクがその先見的スピリット、
海への愛情、そしてタラ号のサポートについて語る。
タラ号はあなたにとってどんな存在ですか?
全ての人間の行動には自然と、ポジティブな面とネガティブ
な面の両方がある。私たちはこの考えに慣れてしまって、そ
れを、いつも仕方がないものと受け入れている。私はこの残
念なバランスから抜け出すプロジェクトを求めている。タラ号
は、全てがポジティブである稀な例だ。全てが人間にとって
有益で、何 1 つネガティブなマイナス要素がない。そうした状
況は極めて珍しいから、タラ号にはそれだけで存在意義があ
ると言えるだろう。発見し、開拓し、分析し、統合し、警笛
を鳴らす、リーダーであるタラ号の活動は非常に重要だ。全
ての人間の活動はそんなふうに行われるべきだ。タラ号は美
しく、つつましく、かつエレガントな形で機能していて、それ
が強さとなっている。人間が行う全てのプロジェクトがこれほ
ど上質でタラ号のように系統立てられていたなら、私たちはも
はや緊急事態には置かれてはいないだろう。
あなたはタラ号サポート委員会のメンバーであり、
タラ号は「私たちを救うために活動していて、極めて
重要だ」
と発言されています。日々、何百もの依頼や
誘いが舞い込む中、なぜタラ号をサポートすることを
選ばれたのでしょうか?
確かに、私の置かれている立場では非常に多くのプロジェ
クトや活動を目にする機会がある。私がそのうちの 95%を拒
否するのは、それらがそもそも欲や認識不足から動機付けら
れたものだからだ。こうしたおぞましい状況においては、なん
としてでも可能な限りタラ号のような活動をサポートしたくな
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2003-2014
数字で見るタラ号プロジェクト
10年で25,000キロメートル
航海距離:
40ヵ国の国籍より330名の乗組員が
タラ号プロジェクトで乗船
1,800日
訪問国:38ヵ国
航海日数:
20
の科学研究分野:
海洋生物学、分子生物学、生物分類学、海洋学、
生物情報科学、生化学、
ゲノム学、画像、生態学、
モデリング、微生物学(細菌学およびウィルス学)、
気象学、放射収支、雪学および氷学、動物学、
鳥類学、考古学、地質学
70ヵ所
タラ号に関連した発表済みの科学論文:34
ネット上に公開された写真および映像:50,000
整備のためドライドックへ入渠した回数:8回
関連研究所および科学機関の数:
多くの時間を船上で過ごした乗組員たち:
エルベ・ブルモー、
ロイック・ヴァレット、
サミュエル・オドレイン、
サラ・シャールソン、
マルク・ピシェラル、
グラント・ルヴェール
最大の嵐:
82
2010年12月マゼラン海峡入口にて、 ノットの強風
最北緯:N88°28°4 - E 129°(2007年5月)
最南緯:S65°52 - W 64°18(2005年2月)
数字で見るタラ号
36
10
1.5 3.5
120
300
40,000
6,000
7,000
14
全長:
メートル
全幅: メートル
喫水:
メートル
重量:
トン
リットル
生産水量:毎時
燃料タンク容量:
リットル
水タンク容量:
リットル
廃水タンク容量:
リットル
寝台: 台
る。しかも、活動が罰を受けている気分にさせるのではなく、
必要なことと情熱を組み合わせて行うことができるというのは、
いいものだ。妻のジャスミンと私は、水陸両生気質で、海で
長く過ごしており、人として、あるいは海マニアの夫婦として、
美しく賢い船であるタラ号の姿そのものに魅了されてしまった。
90%の船が人々の社会的地位を誇示することに重点を置い
て製造される中、エレガントで高潔なタラ号に出会えて嬉しい。
デザインや建築においてあなたが望むことと、
海洋つまり、
その生物多様性と生態系を保護する
必要性との間に関連があるとお考えですか?
海洋とそれに伴うあらゆるものを保護することが何をおいて
も緊急に必要であると理解するのに、デザイナーや建築家で
ある必要はない。実際、「私たちの呼吸の半分は海洋によっ
てもたらされている」
という事実に目覚めるきっかけを私にくれ
たのはエティエンヌ・ブルゴワだった。閉所恐怖症気味な私
には、それがとても響いたのだ。
「生分解性プラスチックに関して強制力を持つ法律の
制定のために尽力したい。」
フィリップ・スタルク
タラ号は2015年と2016年にアジアと太平洋を
航海しますが、
あなたはこの地域のことを
よくご存知です。
タラ号は重要なメッセージを伝える
手助けになり得るでしょうか?
アジアは広大で多様だ。成熟期に突入し、問題を認識し る限り、その案はかなり現実的なものだ。非常に興味深い
た上で、海洋を守るために行動を起こしている国々がある一 ことに、バイオプラスチックの中には藻類から作られるもの
方、発展段階の混沌の中、環境保護とは矛盾する動きをと もある。そうしたつながりは簡単なものに思えるが、それを
る国々もある。もちろん、後者のような国々もいつかは行動
可能にするのは政府による強制しかない。これは 1 つの解
を起こす時が来るだろうが、地球環境は一刻を争う問題だ。 決策となりうる。ますます避けられないただ 1 つの疑問は、
タラ号のメッセージは明瞭だから、それによって理解を深め、「私たちは縮小方策を要求するべきか?それは地球にとっ
である。
まだ残されている守るべきものを守っていこうとする人々も出 て良いのか悪いのか?」
てくるだろう。
インタビュアー:ミッシェル・テマン
「私たちは縮小方策を要求するべきか?それは地球に
とって良いのか悪いのか?」
フィリップ・スタルク
明快なクリエイター
若きフィリップ・スタルクが新たな水平線に向かっ
て飛び立つ翼を得たのは、おそらくエンジニアで発
明家である彼の父が飛行機をデザインしていたから
だろう。数々の賞や栄誉に輝き、現代を変えてきた
巨匠であり、非常に多くのプロジェクトやアイコン
無限の多様性を持ち、奥の深いプランクトンは、私のよ 的なオブジェを生み出してきたフィリップ・スタルク
うに形や色を作り出す者にとってはもちろん手本となってい は、人々を揺り動かし目覚めさせることに躊躇しな
る。プランクトンは創造の名人だ。しかしそのこと以上に、 い。彼はより多くの人々の人生をより美しくし、
「人々
私はタラ号のおかげで、作品の多くがプラスチックから作り の脳の中にある扉を開きたい」
と考えている。
「破壊
出されるモノの作り手としての自分の責任を自覚し、プラン
的、道徳的、環境保護的、政治的で楽しい。私は
」情熱
クトンの生存にとってこのプラスチックが有害であることを デザイナーとしての自分の仕事をこう見ている。
的で明快、海を愛する地球人である彼は、今、これ
認識することができた。私は生分解性プラスチックに関して
「民主主義的エコロジー」の存在を強く信
強制力を持つ法律の制定のために尽力したいと思っている。 までになく
プラスチックはプランクトンの餌にだってなりうる。私の知 じている。
タラ号の科学チームが発見したプランクトンの形状か
ら、
デザイナーとしてのインスピレーションを得られましたか?
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Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
逐語録
10 years of actions
「タラ号のチームと仕事するの 「フランスで全ての小学生が暗唱する詩がある。「 25 年前に誕生したタラ号が海洋探検と
は本当に楽しかった。彼らは映 シャルル・ボードレールの『人と海』という詩で「自 自然科学のプロジェクトを立派に遂行して
由な人よ、いつも海を愛せよ!海は自分の鏡であ いるなんて素晴らしい!このユニークな帆
画『プラネット・オーシャン』
に多
る…」。実際、
その詩が世に出た1世紀半後の今、人 船には類まれな歴史がある。
」
大な貢献をしてくれた。彼らが
は海を保護することによって自分の自由や運命の
いなかったらこれほど多くの賞 コントロールができることを、より理解するように を受賞していなかったかもしれ なってきた。これこそが、タラ号プロジェクトが開催
ジャン=ルイ・エティエンヌ
医師・探検家
ないし、
これほど素晴らしい映 する本展覧会のメッセージであり、旅への招待状 「水のサイクルは 1 つしかない。水を飲むことは、
画になっていなかったかもしれ であり、そして良心への訴えなのだ。」展覧会『海、 海水を飲むということだ。私たちは地球を守るため
ない。
彼らのおかげでプランクト
ンについてたくさん学ぶことも
できた。
ありがとう、
タラ号。」
ヤン・アルテュス=ベルトラン
写真家
生命の源:環境問題の海洋への影響を考える』の
オープニングに際し、
ユネスコ本部にて。
ではなく、私たち自身の生命を守るために、海洋と
気候を守らねばならない…。
そのためには情報が
イリーナ・ボコバ 必要だ。過去 10 年以上に渡り、
タラ号は科学分野
ユネスコ事務局長 において並外れた業績を残すことで、特にプランク
「私はずっと前からタラ号のチームのことが
大好きで、
プロジェクトを実現してきたタラ号
トンが関わる海洋について私たちがより知識を深
め、理解し、
もっと海を愛するための手助けをしてき
た。
タラ号と海洋に関わる重要な機関らが手を組ん
「タラ号は海洋生態系に新たな統合的アプローチ の全乗組員やアニエスベーの社員の努力を
で、2012年にリオにて海洋のための同盟を結ぶこと
を組み合わせることで、海洋学に新たな命を吹き込
称賛する。科学者たちが世界を知るための壮
ができたことを名誉に思っている。」
んだ。
タラ号は、
ある特定の生態系モデル
(海洋生物
の中で大多数を占める海洋プランクトン)
にフォーカ
スすることで、
近い将来の発見者となるだろう、
新しい
タイプの科学の調査団を集結させてきた。
大な冒険に出るというフランスの昔ながらの
伝統を再現し、
それを行っているということが
素晴らしい。
」
そこに何があるのか?何と一緒に?どこに、
どうやっ て?海面の生命に関して言えば、
間もなくその答えが
イザベル・オティシエール
ジャン=ミシェル・クストー
グリーンクロス フランスおよびフランス領代表、
Ocean Future Society代表
ヨット操縦者・WWFフランス局長 「タラ号とそのプロジェクトは私たちに感動と
情報を与え、情熱を呼び覚まし、責任ある行
明らかになるだろう。
それは、再び海を私たちの地球 「 私 にとってタラ号 は 、夢と科 学 の 2つの 要 素
動をとるべきだと教えてくれる。
」
の発展の中心に据えることを最優先事項とする、 を 体 現している 。水 平 線 の 彼 方 の 夢 、冒 険 の
クローディー・エニュレ
環境維持開発という流れにとっては喜ばしいことだ。
」 香り、極 端 な自 然 環 境との 出 会 い の 約 束 … 。 私の得意分野である科学的には、科学者たちが 科学者、宇宙飛行士、Universcience代表
フランソワーズ・ゲイル 知識の追求のために自ら現場に出向き、見て、分
CNRS研究ディレクター 析したいという意欲…。タラ号はエンデバー号、
「その日は今でも思い出す。1989年5月、ヴィルヌ
アストロラーベ号、ボストーク号、
プルクワ・パ号
ーヴ=ラ=ガレンヌ号の船台からその
『浮いている
「タラ号プロジェクトは2006年に北極へ初めて の時代と同じ達成と探検の精神を宿している。す
奇妙な物体』
を乗組員全員で見ていた。
ジャン=ル
航海するための準備を行う本拠地としてロリアン べての船にはそれぞれの性格があり、それぞれ
イ・エティエンヌが指揮する南極横断航海の一部
港とブルターニュを選んだ。そして現在、同プロジ の物語がある。私は中でもタラ号の物語が一番
ェクトは、十分なインフラと高度の専門知識と技
術があるという理由でロリアン港を母港としてい
る。タラ号は私たちの街の大使であり、力強いシ
ンボルであり、人間と科学の冒険である。年月を
好きだ。」
として、
ハイテクの帆船で南極を航海するという並
リュック・ジャケ 外れたプロジェクトに大きなエネルギーを費やすこ
『皇帝ペンギン』、
『Once Upon a forest』
とが果たして正しいのか、私は疑問に思っていたん
映画監督
だ。
当時アンタークティカ号は作られて間もなかっ
そして、2003年10月にモスクワのタクシーの中
経て、ロリアンの人々はタラ号に愛着を持つよう 「この船は地球をもっとよく知る た。
で、友人のエティエンヌ・ブルゴワから、
シーマスタ
になってきているのだ。」
ノルベール・メテリ
ロリアン市長・ロリアン市議会議長 「このグローバルな実験船、タラ号の航海はなんと
素晴らしい冒険だろう!この伝説的な船にまた乗る
ことができて本当に嬉しい!ダブリンのパブでも、市
役所でもタラ号がどれだけ人気があるのかを目の当
たりにしたばかりだ。神話によるとアイルランドの古
都はタラと呼ばれていたらしい!」
タラ号船上より、
ツイッターにて。
ための膨大な努力の産物だ。」
「私はタラ号海洋プロジェクトの科学者たちに、現
代社会は
(地球の)発展と未来を調和させるための
助けを期待していると言いたい。
さらに、今後の主
言を言ったんだ…。
でも今、
タラ号が航海した場所、
さらに、
ここ10年
間でタラ号が成し遂げた結果を見ると、
エティエン
要課題は、
科学者と政治家たちの間の溝を埋めるこ ヌは衝動で行動したのではなく、探検と科学の分
タラ号、その
と。正しい判断をするためには、科学的研究、分析、 野に本気でコミットしたんだと思う。
論文発表が必要だ。」
パトリック・ポワヴル・ダルヴォール ジャーナリスト、
ライター
ー号(前アンタークティカ号)
を購入したばかりだ
ステファン・エセル と電話をもらったことも覚えている。
(1917~2013年)2012年11月
その時、私は、
あいつはばかなことをしていると独り
チームとプロジェクトがいつまでも続くことを願う。
」
ジャン=ルイ・ボルロー 前環境大臣、2010年3月 ベルナール・ブイグ
探検家
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2003-2014
独占 インタビュー
潘基文 パン・ギムン
BAN KI-MOON:
「私たちは一丸となって
取り組む必要がある」
タラ号に乗船して以来、国連事務総長の潘基文は
タラ号の研究プロジェクトを熱心に支援してきた。
彼は2012年のリオ+20サミットの期間中や、
最近では「パリ・公海のための呼びかけ」のローンチ時に、
タラ号について繰り返し述べている。
彼に話を聞いた。
あなたはタラ号のことをよくご存知ですね。
2012年2月にはニューヨークで
2時間ほどタラ号に乗船もされて
いますが、2003年からのタラ号の業績を
どのようにお考えですか?
潘基文:タラ号がニューヨークに来航した
際に乗船することが出来て嬉しかった。地球
の海洋の未来に向けて持続可能なアプロー
チを私が支持していることを皆様にお伝えする
よい機会となった。
当時私たちは、2012年6月
に開催を控えていた国連持続可能な発展会議
の準備の最中だった。
タラ号海洋
(リオ+20)
プロジェクトのチームに国連と共に活動するよ
う要請したところ、実際に彼らがそのように動
いてくれて嬉しく思っている。
近年、世界中で破壊的な自然災害が増え続
けていることを大変危惧している。人的にも物
的にも甚大な被害がでている。私たちは洪水、
地震、
サイクロンや他のそのような自然災害に
よるリスクを軽減し、影響を最小限に抑えるた
めにあらゆる手を尽くさなければならない。科
学調査を遂行し、人々の認識を高めることで、
人々をより安全に導くことができる。
自然災害
によるリスクを軽減する助けになることであれ
ばあらゆる新たな取り組みを歓迎したい。
インタビュアー:ミッシェル・テマン
あなたはタラ号プロジェクトについて
「科学界が追随すべき手本」
と
述べられました。
タラ号の研究によって、
私たちは気候の変化に対する理解を
深めることができると思われますか?
気候の変化との闘いに貢献することはすべて、
その規模に関係なく非常に重要だと私は思
う。全ての国の政府が協力し、2015 年までに
は気候の変化に関する協定を結ぶ必要があ
る。
その時まで、
そしてそれ以降も、国際的なコ
ミュニティの協力が必要。知識人や科学界の
イニシアチブ、小さい機関までも。誰もが問題
を正確に示し、解決策を見出すために出来る
限りのことをしなくてはならない。
海を愛する前外交官
1944 年 6 月 13 日 に 陰 城 郡(ウ ム ソ ン 郡・ 韓 国 )で 生
ま れ た 潘 基 文 は、 朝 鮮 戦 争( 1950 〜 1953 年 )を 背 景
© L. Bourgois
<Nature Climate Change>によると、
2050年の洪水被害総額は
年間数千億ドルにも及ぶそうです。
被害を食い止めるためにタラ号が何か
手助けできることはあるのでしょうか?
2012 年 2 月 11 日、ニューヨーク国連本部にて。
左から、ロメイン・トゥルブレ、アニエスベー、潘基文、
エティエンヌ・ブルゴワ、エリック・カルセンティ
に子供時代を過ごす。ソウル大学とハーバード大学を
卒業後、外交官を経て、大韓民国の外務大臣を務める。
2007 年に国連事務総長となり、2011 年 6 月より第 2
任期目に入った。潘基文はいわゆる「私たちの大切な海」
を守ることに情熱を注いでいる。「国連、各国政府、民
間企業そして各個人が力を合わせれば」それは可能だと
彼は言う。国連持続可能な発展会議(リオ+ 20 )におい
て彼が制定した大洋協約(Oceans Compact)は、海洋
に関連した指令を発する国連組織の戦略的展望を定め
るための新しい構想である。
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Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
© Sébastião Salgado / Amazonas images
2005 年、セバスチャン・サルガドのカメラが捉えた南極半島でのタラ号。
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2003-2014
視点
セバスチャン・サルガド
Sébastião Salgado:
エデンの男
世界中で作品展示を行い、多くの偉大な賞を獲得してきた
フランス・ブラジル人の写真家でユニセフ大使の
セバスチャン・サルガドは、2005年にタラ号に乗船し、南極を訪れた。
我々は、いつも数台のカメラを首から下げ、
厳しい環境をものともしない、この人物を訪ねた。
彼
は猫のように、自分の周囲の移ろう光や自然、人、動物、
植物を観察しながら、じっと目を光らせ、跡を追い、必
要であれば何時間も待つ。彼は夜が明ける時、あるい
は雨の後で待ち望んだ光が空に射す時、光と戯れながら影の間
をさまよう。彼は大きな青い目で現実に焦点を絞り、いつでも
撮影できる態勢でいる。彼は空、雲、様々な形の生命が動くの
を観察する。この、超敏感で、直感的で、予見力のある人物こ
そがセバスチャン・サルガドで、地球の姿を写真に収めている。
その結果、彼は人とその苦しみをも捉えることになる。サヘル、
ルワンダ、手つかずの自然や破壊されてしまった自然…。
「ここ数年の変化は激しく、残酷といってもいいほどだ。」ア
マゾンから帰ってきたばかりのサルガドはこう口にする。「本
来あるべき形でもはや機能していない場所が世界中にたくさん
ある。パタゴニアの氷河が溶けつつある一方で、他の場所の氷
の表面は耐えている…しかしそれがいつまで続くのだろうか?
私は、ブラジル北東部などで、海面が上昇したり、村が砂に覆
われたり、砂浜が玄関のドアまで達したり、海に浸食されて樹
齢 100 年のヤシの木が水の中に倒れたりするのを頻繁に目にし
てきた。急激かつ大幅な変化が起こる、劇的な時期というのが
あるが、その情報は流れてこない。メディアは本当に重要なこ
とを人々に伝えていない。私たちは大きな障害に立ち向かって
いるのに、人々はそのことに気付いていないんだ。」
るし、深い敬意を払っている。」
全ての始まり、サルガドが初めてタラ号と関わるようになっ
(タッシェン社) たのは 2005 年のことだ。
サルガドの最近出版された作品集、
『Genesis』
は生涯についての作品であり、生涯についての重要な証言でも
「エティエンヌ・ブルゴワとそのチームにパリで会った。す
ある。この本にはサルガドの鋭い目線が捉えた地球と人々の姿 ぐに意気投合した。そして気がついたら、タラ号に乗っていた
が収められている。32 か国に渡る 8 年間の冒険の真骨頂ともい よ。南アメリカ最南端のウシュアイアでタラ号に乗船し、そし
えるこの作品では、地球のその生々しく最も繊細な姿と、息を てそこから南極へと向かった。南極は驚くほど素晴らしかった。
のむような写真
( 2013 年秋にパリのヨーロッパ写真美術館にて 巨大な氷山の壁が粉々になって海に崩れ落ちていく...。ウェッ
展示された)
を目にすることができる。
デル海入口最大級の氷山のように巨大な氷山を頭上に眺めるこ
とが時折あったが、船上で私たちはもしかけらが落ちてきたら、
もともと経済学者として養成されたサルガドは、シグマ、ガ タラ号はおしまいだろうなと言いあったものだ。」
マ、マグナムといったエージェントでキャリアを積んでいるた
彼の記憶にはタラ号は「その船体は非常に細く薄いにも関わ
め、自分が撮影しているものをよく認識している。彼は地球の らず、荒れ狂う海にも耐えられる帆船」として残っている。そ
してタラ号のことをこう表現する。
美をカメラで捉えようと試みるだけ
ではなく、地球の不正義と大きな不 「メディアは本当に重要なことを人々に伝 「タラ号はきちんとした資金繰りの
えていない。私たちは大きな障害に立ち向
努力のおかげで、酸性化や温暖化が
均衡を写真に焼き付ける。その象徴
的な例である
『lʼhomme en détresse
かっているのに、人々はそのことに気付いて 海の生物にもたらす影響や多くのこ
( 1986 年 )
』
、
『Exo¬des
( 2000 年 )』、 いないんだ。
と関する情報を与えてくれる動く実
」
』と い っ た 作 品 が、
『Africa( 2007 年 )
セバスチャン・サルガド 験室。タラ号船上で行われた調査は、
彼の作品集
『Sahel』に掲載されている。
近い将来ますます重要になるだろう
彼は現在パリに住みながらも、妻レイラ・ワニック=サルガド し、私たちの地球が直面している短期的および中期的な変化に
(夫婦が 1994 年に一緒に設立したAmazonas Imagesのディレ ついて私たちの理解を深める手助けになるだろう。」
クター)と共にInstituto Terraプロジェクトの一環で 200 万本
の木を植えたブラジルの家族農園へと自由に行き来している。
サルガドはまた人々にも目を覚ますよう呼びかけている。
「排
人生の頌歌もしくは大地への遺産ともいえるこの農園は、サル 気物質を吸収するのに数千万の木を植える必要がある。それな
ガドにとってエデンの園の 1 つである。彼にとって人間のこと のに私たちは逆のことをしている。一体いつになったら私たち
を気に掛けることは、つまり生態系、生物多様性、そして海洋 は根本的な問題に本当に気づくことができるのだろうと思わず
を守るということでもある。「私は内地に育ったので、海を初 にいられない。」
めて見たのは 15 歳の時だ。」彼は言う。「けれども海を愛してい ミッシェル・テマン
Le Journal Tara Expeditions n°9
セバスティオ・サルガド
略歴
1944
ブラジルのミナスジェライス州
アイモレスに生まれる
1960
両親の農場を後にし、
ブラジルのエスピリトサント州、
ヴィクトリア市に移る
1964
妻レイラ・デルイス・ワニックと
出会う
1973
ロンドンで経済学者としての
キャリアを捨て、
パリで写真家となる
1998
レイラ・ワニック=サルガドと共に、
ブラジルの大西洋側の森林を
再生させるための非営利団体
Instituto Terraを設立
15
2003-2014
© J.Girardot/Tara Expéditions
世界の海の探検:2009 年 9 月から 2012 年 3 月まで、タラ号海洋プロジェクトは、ウイルス、バクテリア、植物性プランクトンおよび動物プランクトンといった微生物を含む海洋プランクトンの生態系について世界的な調査を初めて実施した。
現在タラ号は北極海周辺を航海中で、その生態系を研究し、タラ号海洋プロジェクトで開始した調査を完成させる予定だ。またタラ号はプラスチック片を探すことで、汚染に関する調査も行うことになっている。
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2003-2014
生物多様性
エリック・カルセンティ
éric Karsenti:
ネプチューン
(海洋の神)
の乗船
エリック・カルセンティ
略歴
1979
パリ第7大学にて
生物学の博士号を取得
1981
カリフォルニア大学
サンフランシスコ校にて
3年間学ぶ
1985
ハイデルベルグの欧州分子生
物学研究所(EMBL)
グループ長となる
1994
欧州分子生物学研究所
(EMBL)部長となる
2009
タラ号海洋プロジェクトの
共同ディレクターに就任
タラ号海洋プロジェクト(2009~2012年)
およびタラ号北極圏プロジェクト(2013年)の
共同ディレクターである彼は、経験豊かで
評価の高い科学者であるだけではなく、
「幸運な男」でもある。
博識豊かな彼のインタビューをお届けする。
こ
の根っからの科学者に会った人は、
彼の情熱と好奇心に魅了されずに
はいられないだろう。
タラ号のおかげで、彼は今や自分の情熱
をより多くの人たちと共有できるように
なった。
「それが科学が持つ非常に大きな
」彼ははっきりとした声と滑
問題の 1 つだ。
らかな口調でそのことを認めた。「科学者
は実験室に籠って一生を過ごす可能性が
ある。私は研究者であるが、ある時自分
が外の世界から孤立していることに気が
付いた。そう考えると、タラ号は私にとっ
て非常に意義深い。私は再び市民社会と
の接点を取り戻せたのだ。タラ号は私を
象牙の塔から引っ張り出してくれた。今、
私たちは科学について皆さんにそして子
供たちに伝えることができている、こん
な素晴らしいことはない!」
ソルボンヌ大学科学部で生物物理学を
専攻したエリック・カルセンティはすぐに
海へと繰り出し、エリック・タバリーと
途 有 望 な 最 初 の を用意しなくてはならなかった。皆少しば
航海にも出た。時を経て、海は彼の
研究結果がすでに かりストレスを感じていたけれども、緊迫
お気に入りの研究エリアになった。現在、
発表されている(P3 参 していて楽しかったし、笑えるときもあっ
CNRSの研究ディレクターと欧州分子生物
学研究所(EMBL)の部長を務めるエリック
照)。彼は言う。
「タラ号海 たよ!」
の研究は、どのようにして分子事象が細 洋プロジェクトはこれほどの専門的なプ
胞周期を調整するかに焦点を当てている。 ロジェクトだから、私たちの研究が科学
ま た 彼 は、2012 年 11 月 に ブ エ ノ ス ア
」
その一例と イレスとウシュアイアの間で、3 週間ずっ
細胞の形状とその分割が複雑で強力な相 界からの信頼を得てきたのだ。
( 2013 年 9 月号) と 30〜80 ノットの強風が吹いていたとき
互作用からどのようにして生じるかを解 して、名高いネイチャー誌
のことも忘れられないと言う。
「科
明するために、エリックが新し
いアプローチを展開した功績を、「私たちは科学について皆さんにそして子供たちに伝え 学チームの責任者として、私はス
ケジュールを天候に合わせて調整
彼の研究仲間たちは認めている。
ることができている、
こんな素晴らしいことはない!」
しなくてはならなかったから、エ
エリック・カルセンティ
ルベ・ブルモー船長の助けを借り
タラ号船上でのエリックの研
て、衛星地図を利用してサンプル
究は彼の想像力のみならず、大
勢の研究者たちの異分野にまたがる強い に掲載されたエリックについての最近の記 採取の水域を定めた。そして相応の場所
に、良いタイミングで行けるように的確な
協力体制による成果だ。これまでの実績で 事があげられるだろう。
また、タラ号のおかげで、彼は申し分 航海戦略を立てる必要があった。それはと
最も特筆すべきは、プランクトンのデータ
バンクを作るためにタラ号海洋プロジェ なく満足のいく思い出をたくさん手にし ても面白かったし、リアルタイムのちょっ
クトの期間中に 28,000 ものサンプルを収 た。「テレビ番組<Talassa>のスタッフが、 としたテレビゲームみたいだった...。」素晴
集したことだ。それらのサンプルは紛れも 2009 年プロジェクトの始めに乗船してい らしきエリック・カルセンティ!
なく「科学の宝」であり、これから何年にも たことがあった。私たち科学者が計画表 ミッシェル・テマン
渡りその研究が行われるだろう。そして前 をまとめ、彼らが毎週金曜日に 5 分の番組
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Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
© Pascal Tournaire
2005 年、団体Les Montagnes de Silenceとのプロジェクトの際に、サウスジョージア島近海でヒゲペンギンの群れの近くを航海するタラ号。写真にはもちろん 一切の合成を加えていない。
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2003-2014
北極
ジャン=クロード・ガスカール
Jean-Claude Gascard:
科学を第一に
科学界で活躍する著名な科学者、ジャン=クロード・ガスカールは
過去30年間に渡り、極地に関わる無数のプロジェクトに参加してきた。
フランス国立科学研究センター(CNRS)の名誉海洋学者であり、
2010年までDAMOCLESプログラムの中心的役割を果たしてきた彼は、
2006年から2008年に北極をドリフトしたタラ号北極プロジェクトの
科学責任者を務めた。
タラ号の物語には欠かせない人物である彼に話を聞いた。
ガ
スカールは極地の環境を熟知しており、それゆえ
常に頼りになる存在だ。「ジャン=クロード・ガ
スカールがどれほど私たちの助けになってくれ
たかは筆舌に尽くしがたい。」エティエンヌ・ブルゴワは
言う。
「DAMOCLESプログラムのコーディネーターとし
て、彼は重要な役割を果たしてくれた。彼はタラ号北極
プロジェクトの魂だといっても過言ではない。」
1976 年に
ラブラドル海で極地海洋学に注力しはじめ、1983 年から
2005 年までの間にヨーロッパ連合(EU)の下で様々な極
地研究プログラムに関わってきた科学研究者について言
及するのに、そうした賞賛の言葉が出るのは当然だろう。
精力的な物理学者であるガスカールは、ピエール・マ
リー・キュリー大学(パリ第 6 大学)を経て、北極海洋科
の会長を務めたこともある人物だ。今日彼
学会議
(AOSB)
は、CNRSの中でも最もよく知られた研究者の 1 人で、空
気と海と氷の相互作用および熱塩循環(温度と塩分濃度の 「 2006 年
違いによって引き起こされる海水の大規模な循環)に関 9 月にタラ号を
する専門家として世界的に知られている。穏やかな口調 着氷させるために、私
とはっきりとした声で話すジャン=クロード・ガスカー たちが氷原上でタラ号を乗
ルは、科学を北極の問題に応用することに成功してきた せる場所を探していた時、私
好感の持てる教授である。EUのDAMOCLESプログラム は乗船していたロシア人の砕氷船
( 2005 〜 2010 年)に引き続き、現在進行中の北極海の の船長に真夜中に呼ばれ、今後ど
氷の変化について研究を行うACCESSプログラムのコー んなことが起こってもロシア当局は
ディネーターとして、彼は将来「氷山は、存在はするが、 一切責任を負わない、という書面にサイン
今とは全く異なる形となるだろう。」と考えている。
をさせられた。明らかに、私たちが行おうとしていたこ
とは、彼らの目には達成不可能だったようだ。3 日後に、
「 2006 年から 2008 年まで私たちがタラ号を使って、 乗組員 8 名を砕氷船に残した時は辛かった。また、その
タラ号北極プロジェクトを実施できたことは非常に有意 後 2007 年 4 月に、北極近くで砕氷船と再び合流して、疲
義だったと明言できる。1893 年から 1896 年にフリチョ れ果ててほぼ極限状態に達していた乗組員とDAMOCLES
フ・ナンセンがフラム号で同様の航海を行ってから 115 の科学者たちが交代した時のことも忘れがたい。そして
年後のことだ。
」ガスカールはタラ号をまさに「極地という 2008 年 1 月、タラ号が無傷で 507 日間にわたる極地横
軌道に乗るスペースシャトルである」と表現し、その船 断の航海を終え、氷原を後にした時は特に感慨深かった。
そうした瞬間を経験すると、生
はDAMOCLES関連の 48
「タラ号は極地という軌道に乗るスペースシャトルだ。
」
カ所の実験室に研究の
涯に渡って忘れられないもの
ジャン=クロード・ガスカール だ。」
ための
「戦 利 品 」を 航 海
か ら 持 ち 帰 っ た。 こ の
研究は分析の範囲を広げ、その結果については 21 の科学
「でも、タラ号の冒険はまだ終わったわけではないし、
論文として発表されている。ガスカールはこう説明する。 これからも続く。」ジャン=クロード・ガスカールは言う。
「タラ号は北極の変化を細かく、長期に渡って、そして現 「これから 1 か月後( 2013 年 8 月)に私はタラ号北極圏プ
実的なコストで調査できる唯一の船だ。船上で研究を行 ロジェクトの一環で、タラ号に合流し、かのカナダ北西
う生物学者、海洋学者、雪氷学者、大気の専門家らを乗せ、 航路で更なる調査を行う予定だ。」北極の男が再び氷原に
氷によるすさまじい物理的圧力に耐えられるという点で 戻ってくる。
ミッシェル・テマン
タラ号は類のない観測船だ。タラ号は衛星つきの巨大な 装置、中継アンテナ、ロジスティックスの基盤、そして
高度な技術装置としてDAMOCLESプロジェクトで中心的
な役割を果たしたのだ。」
彼は航海中の忘れがたい思い出についても語った。
ジャン=クロード・ガスカール
略歴
1942
クレルモン・フェランに生まれる
1977
パリ大学ピエール・マリー・キュリー大学
(パリ第6大学)
にて博士号を取得
2000-2001
ヨーロッパMASTプログラムの
フランス代表を務める
2002-2004
北極海洋科学会議(AOSB)
の
会長を務める
2005-2015
第6、第7回研究・技術開発枠組み計画
それぞれにおいてEUの
(FP6 & FP7)
DAMOCLESおよびACCESS
プログラムのコーディネーターを務める
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Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
© J.Girardot/Tara Expéditions
プロジェクトに欠かせない装置、CTDロゼット。(CTD:電気伝導、水温、深度)
深さ2,000 メートルまで潜り、ボトルを数回に渡って開いて微生物のサンプルを採取する。
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2003-2014
独占 インタビュー
モナコ公国 大公アルベール2世
Prince Albert II of Monaco:
「タラ号は海を愛する方法を
教えてくれる」
モナコの大公アルベール 2 世は、2006 年 4 月、地球温暖化について人々の関心を高め
るために北極への航海を実施した。
今日の地球温暖化問題についてどう思われますか?
世界中の人々は十分な関心を持っていると思いますか?
大公アルベール 2 世:この極めて重要な問題について、
私はこれまでかつてないほど懸念している。非常に多く
のことが危機にさらされており、やるべきことが山積み
だ。2012 年の北極の氷の溶解に関する最新のデータでは
最悪のシナリオであることがわかる。その一方で、気候
の変化とその影響に関する私たちの知識は絶えず向上し
てきた。現在、例えば海洋酸性化について非常に多くの
ことが明らかになってきたし、私の財団もそれに関する
研究を行っている。人々の関心は、市民社会においては
高まってきている。
しかし、2009 年のコペンハーゲン会議での対話の不成
功に続き、経済危機が起こった。以来、多くの政府が環
境問題よりも経済や社会問題を優先してきた一方で、大
都市ではエネルギー効率の重要性の認識が高まり、その
分野において努力がなされてきた。人々の関心が非常に
高まってきていたのに、新しい安価なエネルギー源が存
在するという、近年のシェールガスブームが現実の温暖
化問題を覆い隠してしまっていることが非常に残念でた
まらない。さらに残念なことに、シェールガスは温室化
ガスも生成する。こうした問題は未だに過小評価されて
いるので、人々とそして同様に政府を説得するためにや
るべきことがたくさんある。
タラ号が航海を始めてから10周年目を迎えます。
あなたの財団も支援をされていますが、
タラ号の役割をどのようにお考えですか?
タラ号に乗船した研究者たちは科学的な航海プロジェ
クトに新しい風を吹き込んだ。何よりもまず、タラ号は、
アルバート 1 世が初めて調査した項目である海洋と大気
の間のガスの移動など、海洋生物学における全く新しい
領域の調査に成功した。
タラ号はまた南極でのプラスチック汚染による影響に
焦点を当て、海洋の生態系がどのように機能しているか
を示した。さらにタラ号のチームは、高い専門技術があ
ればタラ号のように比較的小さな船でも大きな科学プロ
ジェクトを行うことが可能であると証明した。
しかしタラ号海洋プロジェクトの最大の成果は、プラ
ンクトンに的を絞ったことで科学に全く新しい道を開い
たことだ。本当に素晴らしい先見の明だ!タラ号はこう
したプロジェクトを通して人々の関心を高め、非常に複
雑な海洋生態系とそれらが気候の調整のために担ってい
る重要な役割についての情報を提供している。タラ号は
海を愛する方法を教えてくれる。タラ号の最新のプロジェ
クト、北極を周航するタラ号北極圏プロジェクトは特に
意義深い。この領域に関して、特に海洋生物が関わる分
野についての科学的情報は、地球上でも非常に限られて
いる。それゆえ、タラ号の発見が待ち望まれているのだ。
人々が地球温暖化に対して注意を払うよう、
モナコ公国の大公としてこれからどのような活動を
行っていこうとお考えですか?
モナコ公国は現在、かつてないほど多くの気候と生物
多様性に関する国際交渉に関わっている。2015 年のパリ
気候変動会議では、先ほど述べた海洋酸性化について関
心を呼び起こすつもりだ。近々では他の国々と協力して、
国連海洋法の枠組み内で公海に関する法律文書を導入す
るための交渉を開始する働きかけを行っていく予定だ。
モナコ公国においては、エネルギー効率と輸送効率を改
善するために先を見越した政策を展開しつつある。私の
財団は、気候、生物多様性、そして水という分野におけ
る革新的なプロジェクトの支援において、極めて重要な
役割を果たしている。タラ号がその素晴らしい例だ。ま
た私の曽々祖父の代から 1 世紀以上に渡り、教育と人々
の関心を高める役割を担っているモナコ海洋博物館も同
様だ。
インタビュアー:ミッシェル・テマン
21
Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
教育
タラ号と子供たち
RA
RTNERS
MAJOR PARTNER
TARA
TARA
TARA
TARA PARTNERS
PARTNERS
PARTNERS
PARTNERS
MAJOR PARTNER
MAJOR PARTNER
2013~2023年:これからの10年の間に、気候の変化に関する重要な決断がなされなければならない。
タラ号プロジェクトで働くチームにとってこれからの10 年は、可能性に満ちていて、多くの発見が期待されている。
はたしてどんな挑戦なのだろうか。
「ここ10年間、
タラ号と教育省(フランス)
は一緒に進んできた。
タラ号は科学に関する日々の最新情報を提供する。過去の記録や最新情報へのアクセスを含め、
リアルタイムでプロジェクトを追う
MISSIONS PARTNERS
MISSIONS PARTNERS
ことで、
子供たちはまさに世界への扉の前に立ち、将来の使命につながる真の洞察力を手に入れる。
タラ号はまた、
人々に科学に関する情報を伝え、今日の大きな問題に焦点を当てる役割を果たし
ている。環境維持開発や温室効果、海洋汚染、天然資源などの問題に科学的なアプローチを図ることで、議論をより明瞭にし、私たちがそれぞれの責任に向き合うよう促してくれる。
そしてなによ
り
MISSIONS
PARTNERS
も、
タラ号は 冒険なのだ!科学的そして教育的なアプローチ、両方の点において、魅力的で確実な情報源にアクセスできるのに、教室のほこりをかぶった古いやり方にとどまる必要などない。実り豊
MAJORMAJOR
PARTNER
PARTNER
かな長い旅に乾杯!」
R
TNERS
TARA TARA
TARA
PARTNERS
PARTNER
PART
TARA
PARTNERS
タラ号協力機関
TARA
PARTNERS
総括監視官
ジェラール・ボヌール
教育および環境維持開発のための生命科学責任者
(フランス)
教育省
MAJOR
MAJOR
PARTNER
PARTNER
MISSIONS
MISSIONS
PARTNERS
PARTNERS
MISSIONS
MISSIONS
PARTNERS
PARTNERS
メイン協力
SCIENTIFIC PARTNERS
ミッション協力
MAJOR PARTNER
SCIENTIFIC PARTNERS
MEDIA PARTNERS
科学技術協力
MEDIA PART
SCIENTIFIC PARTNERS
MAJOR PARTNER
MISSIONS PARTNERS
メディア協力
特別協力
SCIENTIFIC
SCIENTIFIC
PARTNERS
PARTNERS
MEDIA PARTNERS
INSTITUTIONAL SUPPORTS
協力団体
公式サプライヤー
MEDIA PARTNERS
MEDIA PARTNERS
INSTITUTIONAL
EDUCATION PARTNERS
SUPPORTS
EDUCATION
PARTNERS
OFFICIAL
SUPPLIERS
INSTITUTIONAL SUPPORTS
Sous le patronage de
FUROAN
by FUROAN
MEDIAMEDIA
PARTNERS
PARTNERS
SCIENTIFIC
PARTNERS
PARTNERS
MISSIONS PARTNERSSCIENTIFIC
Organisation
des Nations Unies
pour l’éducation,
la science et la culture
Commission
océanographique
intergouvernementale
INSTITUTIONAL
INSTITUTIONAL
SUPPORTS
SUPPORTS
NERS
OFFICIAL SUPPLIERS
Sous le patronage de
Organisation
des Nations Unies
pour l’éducation,
la science et la culture
Commission
océanographique
intergouvernementale
Commission
océanographique
intergouvernementale
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
DU DEVELOPPEMENT DURABLE
ET DE L’ENERGIE
EDUCATION
EDUCATION
PARTNERS
PARTNERS
OFFICIAL
OFFICIAL
SUPPLIERS
SUPPLIERS
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
DU DEVELOPPEMENT DURABLE
ET DE L’ENERGIE
Sous le patronage de
日本のみなさま、タラ号へようこそ
INSTITUTIONAL
INSTITUTIONAL
SUPPORTS
SUPPORTS
C PARTNERS
Sous le patronage de
EDUCATION PARTNERS
Sous le patronage de
Organisation
des Nations Unies
pour l’éducation,
la science et la culture
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
DU DEVELOPPEMENT DURABLE
ET DE L’ENERGIE
O
Sous le patronage de
Sous le patronage de
Commission
Organisation
Organisation
océanographique
des Nations Unies
des Nations Unies
intergouvernementale
pour l’éducation,
pour l’éducation,
la science et la culture la science et la culture
Commission
océanographique
intergouvernementale
LICENSED
SUPPLIERS
: ARMATEURS DE FRANCE - ENTRE LES LIGNES - INTERNATIONAL
LICENSED
PEINTURE
SUPPLIERS : ARMATEURS DE FRANCE - ENTRE LES LIGNES - INTERNATIONAL PEINTURE
EDUCATION
EDUCATION
PARTNERS
PARTNERS
OFFICIAL
OFFICIAL
SUPPLIERS
SUPPLIERS
ASSOCIATIONS : EXPEDITION MED - MISTER GOOD FISH - MOHAMMED VI FOUNDATION
ASSOCIATIONS
FOR THE ENVIRONMENT
: EXPEDITION MED - MISTER GOOD FISH - MOHAMMED VI FOUNDATION FOR THE ENVIRONMENT
LICENSED SUPPLIERS : ARMATEURS DE FRANCE - ENTRE LES LIGNES - INTERNATIONAL PEINTURE
MEDIA PARTNERS
ASSOCIATIONS
: EXPEDITION
MED
- MISTER
GOOD
FISH - MOHAMMED
FOUNDATION
THE ENVIRONMENT
TARA MÉDITERRANÉE EXPEDITION IS UNDER THE HIGH PATRONAGE OF JANEZTARA
POTOČNIK,
MÉDITERRANÉE
MEMBER OF THE
EXPEDITION
EUROPEAN
COMMISSION
IS UNDER THE
(IN
HIGH
CHARGE
PATRONAGE
OF ENVIRONMENTAL
OF JANEZ
POTOČNIK,
QUESTIONS)
MEMBER OFVITHE
EUROPEANFOR
COMMISSION
(IN CHARGE OF ENV
まもなくタラ号はアジア方面に舵を取ります。
日本は長い航路の中、理にかなったベストな目的地で、
当然タラ号の寄港地となります。
2016年春頃、
タラ号は日本の5港に寄港予定です。
TARA
MÉDITERRANÉE
EXPEDITION
IS UNDER THE HIGH PATRONAGE OF JANEZ POTOČNIK, MEMBER OF THE EUROPEAN
タラ号の夢の実現に日々切磋琢磨している冒険家で科学者のスタッフ達にとって避けて通るこ
とのできない経済、
タラ号の最大のスポンサーのagnès b.は日本に上陸して31年になります。
産業、科学大国の日本。
タラ号は海、海洋で気候の変化や生命体の多様性の研究をしています。
これまでの10年間に10の航海をし、
フランス、
ヨーロッパ
(そして米国)
の著名で権威のある
ERS
50の研究所と共同で研究を進めています。
MEDIA PARTNERS
LICENSEDLICENSED
SUPPLIERS
SUPPLIERS
: ARMATEURS
: ARMATEURS
DE FRANCEDE
- ENTRE
FRANCE
LES- ENTRE
LIGNESLES
- INTERNATIONAL
LIGNES - INTERNATIONAL
PEINTURE PEINTURE
今日、
日本では東京と京都の研究団体と科学者とのパートナーシッ
プが始動。
更なる充実を待つばかりであり
ます。
タラ号は日本と日本人に望みをかけ、
短期・中期だけではなく長期の2025年
ASSOCIATIONS
ASSOCIATIONS
: EXPEDITION
: EXPEDITION
MED - MISTER
MEDGOOD
- MISTER
FISHGOOD
- MOHAMMED
FISH - MOHAMMED
VI FOUNDATION
VI FOUNDATION
FOR THE ENVIRONMENT
FOR THE ENVIRONMENT
くらいまでを念頭にいれての期待をしています。
TARA MÉDITERRANÉE
TARA MÉDITERRANÉE
EXPEDITION
EXPEDITION
IS UNDER THE
IS UNDER
HIGH PATRONAGE
THE HIGH PATRONAGE
OF JANEZ POTOČNIK,
OF JANEZ POTOČNIK,
MEMBER OFMEMBER
THE EUROPEAN
OF THE EUROPEAN
COMMISSION
COMMISSION
(IN CHARGE(IN
OFCHARGE
ENVIRONMENTAL
OF ENVIRONMENTAL
QUESTIONS)QUESTIONS)
個人様でタラ号の科学プロジェクトを今すぐに応援してくださる方々には、
特に2016年­2017年のアジア太平洋域での珊瑚プロジェクトにおいて多くの利益が
日本の大企業及び中小企業、
もたらされるこ
とでしょう。
(寄付控除、
ロゴや話題の露出、
)科学的パートナーとしてだけでなく、
イメージ向上においても日本国を超えて多く露出することでしょう。
フランス及びヨーロッパ、
ENT
EDUCATION
PARTNERS
OFFICIAL
SUPPLIERS
LICENSED
LICENSED
SUPPLIERS
SUPPLIERS
: ARMATEURS
: ARMATEURS
DE FRANCE
DE FRANCE
- ENTRE -LES
ENTRE
LIGNES
LES-LIGNES
INTERNATIONAL
- INTERNATIONAL
PEINTURE
PEINTURE
で取り上げ、
タラ号を応援し
て
く
れています。
国際的なそし
て日本のメデ
ィ
ア1
0数社が紙面やネッ
トや
TV
ASSOCIATIONS
ASSOCIATIONS
: EXPEDITION
: EXPEDITION
MED - MISTER
MED - GOOD
MISTER
FISH
GOOD
- MOHAMMED
FISH - MOHAMMED
VI FOUNDATION
VI FOUNDATION
FOR THE FOR
ENVIRONMENT
THE ENVIRONMENT
THE EUROPEAN COMMISSION (IN CHARGE OF ENVIRONMENTAL QUESTIONS)
日本のみなさま、
ぜひタラ号で共に航海しましょう!
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
DU DEVELOPPEMENT DURABLE
DU DEVELOPPEMENT DURABLE
ET DE L’ENERGIE
ET DE L’ENERGIE
Commission
Commission
Organisation
Organisation
océanographique
des Nations Unies des océanographique
Nations Unies
intergouvernementale
intergouvernementale
pour l’éducation, pour
l’éducation,
la science et la culture
la science et la culture
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
MINISTERE DE L’ECOLOGIE,
DU DEVELOPPEMENTDU
DURABLE
DEVELOPPEMENT DURABLE
ET DE L’ENERGIE ET DE L’ENERGIE
TARA MÉDITERRANÉE
TARA MÉDITERRANÉE
EXPEDITION
EXPEDITION
IS UNDERISTHE
UNDER
HIGHTHE
PATRONAGE
HIGH PATRONAGE
OF JANEZOFPOTOČNIK,
JANEZ POTOČNIK,
MEMBERMEMBER
OF THE EUROPEAN
OF THE EUROPEAN
COMMISSION
COMMISSION
(IN CHARGE
(IN CHARGE
OF ENVIRONMENTAL
OF ENVIRONMENTAL
QUESTIONS)
QUESTIONS)
EDUCATION PARTNERS
OFFICIAL SUPPLIERS
ロメイン・トゥルブレ
タラ号探索ジェネラル・セクレタリー
Romain Troublé
Secrétaire général de Tara Expéditions
COLOGIE,
ENT DURABLE
タラ号プロジェクトに協力頂いた全ての皆様に感謝いたします。
CE - ENTRE LES LIGNES - INTERNATIONAL PEINTURE
OD FISH - MOHAMMED VI FOUNDATION FOR THE ENVIRONMENT
タラ号公式ウェブサイト:www.taraexpeditions.org
R THE HIGH PATRONAGE OF JANEZ
POTOČNIK, MEMBER OF THE EUROPEAN COMMISSION (IN CHARGE OF ENVIRONMENTAL QUESTIONS)
売上金はタラ号とタラ号プロジェクトに役立てられます。
Facebook、Twitter、Youtube、Instagram、Google+でタラ号をフォローしよう。
iPad用の無料のタラ号アプリケーション(英語版のみ)のダウンロードはQRコード
からアクセス
(フラッシュコードまたはアップルストアにて)
ES LIGNES - INTERNATIONAL PEINTURE
22
HAMMED VI FOUNDATION FOR THE ENVIRONMENT
www.taraexpeditions.org
ATRONAGE OF JANEZ POTOČNIK,
MEMBER OF THE EUROPEAN COMMISSION (IN CHARGE OF ENVIRONMENTAL QUESTIONS)
2003-2014
未来
これからの10 年は?
2013~2023年:これからの10年の間に、気候の変化に関する重要な決断がなされなければならない。
タラ号プロジェクトで働くチームにとってこれからの10 年は、可能性に満ちていて、多くの発見が期待されている。
はたしてどんな挑戦なのだろうか。
非
常に濃密な 10 年間の活動を終え、海洋そして地上で働くタラ号のチームと科
学者たちにとって、タラ号プロジェクトの枠組み内における仕事はまだ山積
みだ。
「今止めるなんてことは問題外。」タラ号の一番の支援者であるアニエ
スベーは強調する。「そしてタラ号プロジェクトの規模を拡大するにはより多くのス
ポンサーが必要!未来のスポンサーたちに伝えるわ、『私たちと一緒にこの旅をしよ
う!』
」
壮大な科学的挑戦
最大の挑戦は科学的な挑戦だ。研究に関して言えば、今後 10 年間でタラ号海洋プ
ロジェクトによって収集された複雑なデータの詳細な分析が次々と行われていくだろ
う。
「私たちの目的は、世界中のプランクトン系を解明することだ。プランクトンが
地球にとって人間の脈のように重要である
ことを考えれば驚くほど少しのことしか分
かっていない。私たちはまた、それを利用
したバイオテクノロジーの可能性を算定す
ることも視野に入れるべきだろう。」タラ号
海洋プロジェクトのディレクター、エリッ
ク・カルセンティは言う。
タラ号のチームによって発見されたもの
は、2020 年まで行われるオセアノミックス
の枠組み内における科学生態学の研究にな
る予定だ。タラ号海洋プロジェクトではウ
イルスから動物まで 28,000 のサンプルを収
集した。オセアノミックスのおかげで科学
者たちはサンプル内に含まれる情報を抽出
するための配列と高速画像化プロトコルの
組み合わせに成功した。その結果、プラン
クトンの生物多様性について初めて詳細が
明らかになると見られている。
2015~2018年:アジアと北極に向けて
能力の向上と交渉力
これまで多数の民営または公共の研究室や機関との協力を行ってきたことから、タラ
号プロジェクトでは今後「発展途上国」と「先進国」の間での科学的な対話の促進を目指し
ている。「海洋プロジェクトを実施する能力がある国はわずか 6、7 カ国しかない。」ロメ
イン・トゥルブレは言う。私たちの知識と情報を恵まれない国に共有しなければならない。
地球の 71 %を占める海洋の今後について合意を目指すならばその必要がある。2013 年
6 月 27 日に、ユネスコ事務局長のイリーナ・ボコバとエティエンヌ・ブルゴワの間で同
意書が交わされた。ユネスコとタラ号プロジェクトが「さらなる科学研究と国際協力を実
施し、データの共有および人々の関心を高めるために共通のプロジェクトを実施する」と
ある。これで人的な側面は対処されたが、科学的な側面はどうだろうか?「公海の重要
な研究に関しては、全ての人々にとって有益となるよう、特別な扱いとする。」という一
文をロメイン・トゥルブレは指摘する。タラ
号チームのアンドレ・アブリュは公海、生態
系と汚染、北極と気候といった様々な分野で
すでに動き始めている。「私たちは大きな課題
から活動を行う。リオ+ 20 サミットでのタラ
号プロジェクトの成功以来、私たちは気候に
関するサミット、国連での討論、バルセロナ
会議などを含む議論に参加できるようになっ
た。私たちの目的はもちろん他の機関と協力
して事を進めて行くことだ。それは少しずつ
実践できているし、継続していかなくてはな
らない。」
教育への注力
今後 10 年間でタラ号は子供達への教育の
取り組みに力を入れて行く予定だ。これまで
19,000 の学級がタラ号プロジェクトについて
学んできた。「若い世代と知識を共有するこ
とは最優先事項となるだろう。」教育担当責任
者のグザビエ・ブジャールは言う。大きな気
候の変化の問題、そして彼らの未来について、
子供たちや若い世代の意識を高めることは重
要な任務だ。
極地へ向けた次の航海がおそらく進行さ
れる。
「 2016 年から 2018 年の間に実施さ
れる可能性が大きい。」タラ号プロジェクト
幹事長 ロメイン・トゥルブレは断言する。
目的意識の高い人々を増やすために
どんな特別なものになるのだろうか?「タ
「動くべき時期がやって来た。」アニエスベー
ラ号の初の北極航海はフランスおよびヨー
が続ける。「そして目的意識を持たなくてはい
ロッパからのスタッフによるものだった。」
けない。自分たちの直感を信じるのよ。これ
ロメインは続ける。「次は、様々な国から科
まで何が上手くいったのか?何に成功してき
学者や船乗りを含め、おそらく 8 名程度の
たのか?それから、上手くいかなかったこと
乗組員から成る、国際的なものにしたい。」
は?何を改善できるのか?」ロメイン・トゥル
タラ号プロジェクト責任者のエティエンヌ・
ブレが同意する。「しかもタラ号には目的意識
ブルゴワがそれについて触れる。「私たちは
の高い人々を増やすという課題がある。カト
すでに次の漂流航海に向けて動き出してい
リーヌ・シャボーと共に、12 名余りの運動家、
る。ただ、
現在のところは、映画監督のリュッ
企業、団体、そしてもちろん国連と国連事務
ク・ジャケと彼の団体Wild Touchと協力し
総長の潘基文らの直接支援を受けて『公海のた
て、海面と深海におけるサンゴ礁の研究の
めの呼びかけ』を立ち上げたときに、より強く
ための航海を 2015 年に計画している。こ
そのことを感じた。」
「タラ号は科学と教育の基
の航海でタラ号は太平洋および東南アジア
海洋は地球の表面積の 4 分の 3 を占め、気候の調整に重要な役割を担っている。
© J.Girardot/Tara Expéditions
盤であり、それは素晴らしいことだわ。」アニエ
へと向かい、オーストラリア、ニュージー
スベーは言う。「けれども目的意識の高い人々を増やすためには、政治的にならざるを得
ランド、韓国、中国、そして日本に寄港して、そこからベーリング海峡を通って漂
ない。気候の変化は政治問題!政治はずっと中傷されてきたから、私たち市民は、別の
流航海に入る予定だ。」
「アジアの人々のタラ号に対する関心は非常に高い。」アニエス
形で関与する方法を探さなくては。私たちは幸運なことに選挙やロビー活動をしなくても
ベーは言う。
「日本、香港、中国で人々はとても興味を持って耳を傾けてくれた。」タ
良いし、メディアの圧力もない。タラ号の強みは独立していることよ!」
ラ号プロジェクトの広報責任者、エロイーズ・フォンテーヌは、タラ号財団は活動範
ミッシェル・テマン
囲を広げようとしていると話す。「ここ 10 年間、メディアが興味をもち、サポートし
てくれたおかげで、フランス、ヨーロッパそしてフランス語圏の国々では幅広い人々
にタラ号を知ってもらうことができた。さらに国際的な場において私たちは力を入れ
ていかなくてはならない。目標は世界中の人々にタラ号について知ってもらうこと。」
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Le Journal Tara Expeditions n°9
2003-2014
私たちは海を愛しているわよね?
アニエスベー