今年に入り小売・卸売ともに倒産増加

2015/8/28
大阪市西区靭本町 1-6-18
TEL:06-6441-3100
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画
近畿地区
アパレル関連業者の倒産動向調査
今年に入り小売・卸売ともに倒産増加
~大型倒産なく、小規模倒産が増加~
はじめに
総 務 省 が発 表 する家 計 調 査 報 告 によると、今 年 1 月 以 降 の消 費 支 出 は 5 月 を除 き前 年 同
月 比 で実 質 減 少 となるなど、消 費 の回 復 は思 うように進 んでいない。このうち「被 服 及 び履 物 」へ
の支 出 は消 費 税 増 税 から 1 年 が経 過 した4~5月 はプラスに転 じたものの、6月 はマイナス
13.3%と再 び2ケタの減 少 に転 落 した。為 替 相 場 も 1 ドル=120 円 台 での推 移 が続 いたことで、
アパレル企 業 のコストを押 し上 げるなか、価 格 転 嫁 がしづらい状 況 が続 いている。
そうした状 況 を踏 まえて、帝 国 データバンク大 阪 支 社 では、2015 年 (1月 ~7月 )の近 畿 地 区
のアパレル関 連 業 者 の倒 産 動 向 (※)について、調 査 ・分 析 した。同 様 の調 査 は、近 畿 地 区 で
は初 めて。
※
負 債 額 1000 万 円 以 上 、法 的 整 理 のみを対 象 。
※
「男 子 服 卸 」「婦 人 ・子 供 服 卸 」「下 着 類 卸 」「男 子 服 小 売 」「婦 人 ・子 供 服 小 売 」を調 査 対 象 とし、卸 と小
売 に分 けて分 析 を行 った(かばんや靴 、アクセサリーなどの服 飾 雑 貨 を扱 う業 者 は含 まない)。
調 査 結 果 (概 要 )
1.2015 年 1月 から7月 までのアパレル小 売 業 の倒 産 件 数 は、前 年 同 期 比 61.1%増 の 29 件 、
卸 売 業 は同 20.0%増 の 24 件 となった。近 畿 地 区 アパレル業 者 全 体 では 39.5%増 となり、5
年 振 りに 90 件 を越 える水 準 で推 移 している。
2.負 債 総 額 は、小 売 業 で前 年 同 期 に比 べて 3.5 倍 の約 27 億 5200 万 円 、卸 売 業 では前 年 同
期 比 32.8%増 の約 28 億 8100 万 円 となったが、負 債 は年 間 100 億 円 を下 回 るペースで、
2013 年 以 降 は低 い水 準 を維 持 している。
3.負 債 規 模 別 に見 ると、小 売 業 で「1000 万 -5000 万 円 未 満 」の構 成 比 が減 少 しているのに対
し、卸 売 業 では「1000 万 -5000 万 円 未 満 」の構 成 比 が上 昇 傾 向 にある。
4.府 県 別 で見 ると、小 売 業 は大 阪 が半 数 を占 めるものの、全 府 県 で倒 産 が発 生 しており分 散
化 が見 られる。卸 売 業 は大 阪 府 が7割 以 上 を占 める傾 向 が続 いている。
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2015/8/28
近畿地区 アパレル関連業者の倒産動向調査
1. 小売・卸別倒産件数動向
2015 年 の 近 畿 地 区 ア パ レ
小売
ル企業の倒産件数は、1 月か
ら 7 月 ま で で 53 件 発 生 し 、
前 年 同 期 比( 38 件 )で 39.5%
の 増 加 と な っ た 。2014 年 ま で
2 年連続で倒産が減少してい
た が 、一 転 し て 増 加 の 兆 し が
出 て お り 、 5 年 振 り に 90 件
を超えるペースで推移して
~5年振 りに年間 90 件ペース~
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
(1~7月)
前年
同期比(%)
卸
前年
同期比(%)
合計
前年
同期比(%)
48
54
52
42
38
34
55
40
34
▲ 59.3
12.5
▲ 3.7
▲ 19.2
▲ 9.5
▲ 10.5
61.8
▲ 27.3
▲ 15.0
40
58
48
63
55
48
32
40
44
▲ 67.5
45.0
▲ 17.2
31.3
▲ 12.7
▲ 12.7
▲ 33.3
25.0
10.0
88
112
100
105
93
82
87
80
78
▲ 63.5
27.3
▲ 10.7
5.0
▲ 11.4
▲ 11.8
6.1
▲ 8.0
▲ 2.5
29
61.1
24
20.0
53
39.5
いる。
小 売 ・ 卸 売 別 で 見 る と 、小 売 業 は 7 月 ま で に 29 件 が 倒 産 し て お り 、同 61.1% 増
と 大 幅 に 増 加 。 卸 売 業 で は 24 件 が 倒 産 、 同 20.0% の 増 加 と な っ た 。 小 売 業 ・ 卸 売
業 と も に 倒 産 は 増 加 し て お り 、卸 売 業 の 倒 産 が 減 少 傾 向 に あ る 全 国 と は 異 な る 傾 向
が 見 て 取 れ た 。こ れ は 大 阪 を 中 心 に 、近 畿 は 中 小 繊 維 問 屋 の 集 積 地 で 近 年 の 円 安 や
消費者の低価格志向などによる影響をより強く受けていると見られる。
2. 小売・卸別負債総額動向
~アパレル小売で3倍に~
2015 年 の 近 畿 地 区 ア パ レ ル
業 者 の負 債 総 額 は、1 月 から 7
月 までで約 56 億 3300 万 円 とな
り、前 年 同 期 比 (約 27 億 7800
万 円 )で約 2倍 に増 え、急 激 な
増 加 となった。
小 売 ・卸 売 別 に見 ると、小 売
業 の負 債 総 額 は 3.5 倍 増 の約
27 億 5200 万 円 だった。卸 売 業
は同 32.8%増 の約 28 億 8100
小売
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
(1~7月)
前年
同期比(%)
卸
前年
同期比(%)
合計
前年
同期比(%)
4,157
4,501
5,858
24,616
12,004
1,821
5,912
1,295
955
▲ 83.2
8.3
30.1
320.2
▲ 51.2
▲ 84.8
224.7
▲ 78.1
▲ 26.3
6,140
17,996
23,425
19,560
58,329
9,490
17,835
7,249
6,392
▲ 77.0
193.1
30.2
▲ 16.5
198.2
▲ 83.7
87.9
▲ 59.4
▲ 11.8
10,297
22,497
29,283
44,176
70,333
11,311
23,747
8,544
7,347
▲ 80.0
118.5
30.2
50.9
59.2
▲ 83.9
109.9
▲ 64.0
▲ 14.0
2,752
351.9
2,881
32.8
5,633
102.8
万 円 となった。小 売 業 では兵 庫 県 で 5 月 に自 己 破 産 したシー・エス・ピー(株 )(負 債 約 16 億
8700 万 円 )が負 債 総 額 を押 し上 げたものの、近 年 のピークだった 2010 年 に比 べると負 債 は
大 幅 に減 少 。これは近 年 、負 債 100 億 円 を越 えるアパレル企 業 の倒 産 が発 生 していないこ
とがあげられる。
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2015/8/28
近畿地区 アパレル関連業者の倒産動向調査
3. 負債規模別
~大型倒産なく、中小企業の倒産が増加~
負 債 規 模 別 の倒 産 件 数 の推 移 を見 ると、小 売 業 において「1000 万 -5000 万 円 未 満 」の
小 規 模 倒 産 の構 成 比 が半 数 以 上 を占 めているものの、近 年 その構 成 比 は減 少 傾 向 にある。
また、負 債 50 億 円 以 上 の倒 産 は発 生 しておらず、大 規 模 小 売 業 者 の倒 産 は減 少 してい
る。
卸 売 業 では、「1000 万 -5000 万 円 未 満 」の倒 産 が増 加 傾 向 にある。卸 売 業 でも 2012 年
以 降 、負 債 額 50 億 円 以 上 の倒 産 は発 生 しておらず、近 畿 地 区 のアパレル関 連 企 業 は中
小 零 細 が大 半 を占 めている。
小売業
2012年
1000万-5000万円未満
5000万-1億円未満
1億-5億円未満
5億-10億円未満
10億-50億円未満
50億-100億円未満
合計
38
10
4
2
1
0
55
構成比(%)
69.1
18.2
7.3
3.6
1.8
0.0
100.0
2013年
38
2
0
0
0
0
40
構成比(%)
95.0
5.0
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
2014年
26
7
1
0
0
0
34
2015年
構成比(%) (1~7月) 構成比(%)
76.5
19
65.5
20.6
5
17.2
2.9
4
13.8
0.0
0
0.0
0.0
1
3.4
0.0
0
0.0
100.0
29
100.0
卸売業
2012年
1000万-5000万円未満
5000万-1億円未満
1億-5億円未満
5億-10億円未満
10億-50億円未満
50億-100億円未満
合計
4. 府県別倒産件数
14
4
7
2
4
1
32
構成比(%)
43.8
12.5
21.9
6.3
12.5
3.1
100.0
2013年
10
9
18
2
1
0
40
構成比(%)
25.0
22.5
45.0
5.0
2.5
0.0
100.0
2014年
24
3
15
1
1
0
44
2015年
構成比(%) (1~7月) 構成比(%)
54.5
17
70.8
6.8
1
4.2
34.1
4
16.7
2.3
1
4.2
2.3
1
4.2
0.0
0
0.0
100.0
24
100.0
~卸売は大阪が 7 割超、小売は分散化傾向~
近畿地区アパレル企業の倒産件数を府県別でみると、小売業では、大阪府が最も多
く 50% 内 外 を 占 め て い る 。 つ い で 兵 庫 県 で 毎 年 25% 内 外 と な っ た 。 ま た 、 滋 賀 県 は
2013 年 以 降 、 和 歌 山 県 で は 2012 年 以 降 に 倒 産 は な か っ た も の の 、 今 年 に 入 り 滋 賀 県
で3件、和歌山県で2件の倒産が発生し、分散傾向が見られる。卸売業でも大阪府が
最 も 多 い こ と は 変 わ ら な い が 、 3 年 連 続 で 構 成 比 70% 超 と な り 、繊 維 問 屋 の 集 積 地 で
あることがあらためて浮き彫りとなった。
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2015/8/28
近畿地区 アパレル関連業者の倒産動向調査
小売業
2012年
大阪府
京都府
兵庫県
奈良県
滋賀県
和歌山県
合計
30
8
14
2
1
0
55
構成比(%)
54.5
14.5
25.5
3.6
1.8
0.0
100.0
2013年
19
5
14
2
0
0
40
構成比(%)
47.5
12.5
35.0
5.0
0.0
0.0
100.0
2014年
21
3
9
1
0
0
34
2015年
構成比(%) (1~7月) 構成比(%)
61.8
14
48.3
8.8
1
3.4
26.5
7
24.1
2.9
2
6.9
0.0
3
10.3
0.0
2
6.9
100.0
29
100.0
卸売業
2012年
大阪府
京都府
兵庫県
奈良県
滋賀県
和歌山県
合計
22
3
6
1
0
0
32
構成比(%)
68.8
9.4
18.8
3.1
0.0
0.0
100.0
2013年
28
6
6
0
0
0
40
構成比(%)
70.0
15.0
15.0
0.0
0.0
0.0
100.0
2014年
34
3
7
0
0
0
44
2015年
構成比(%) (1~7月) 構成比(%)
77.3
20
83.3
6.8
3
12.5
15.9
1
4.2
0.0
0
0.0
0.0
0
0.0
0.0
0
0.0
100.0
24
100.0
5. 今後の見通し
2015 年 に 入 り 、 長 ら く 1 ド ル = 120 円 台 の 円 安 水 準 が 続 い た こ と で 、 輸 入 業 者 の 多
い近畿地区アパレル企業の倒産件数は増加傾向にある。また、全国に比べて倒産件数
の増加率は顕著であることから、為替動向が近畿地区のアパレル関連業界の倒産動向
に与える影響が大きいことがうかがえる。また、海外生産が多数を占めるアパレル業
界にとって中国経済の減速や人件費高騰などの影響は大きく、中小アパレル企業を取
り巻く環境は厳しさを増している。今後、仕入資金の負担が大きい秋冬物シーズンの
商戦期を迎え、体力のない中小アパレルの倒産増加傾向に拍車が掛かる可能性がある
だろう。
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