過去問集(2001~2005) - 名市大医学部2009年度入学者のための過去

法 医 学 過 去 問 ま と め
長 尾 先 生 出 題 分
H13
写真(白黒で、創端・創縁の性状はなかなか見難かったです)を見て、
①創口の位置と性状を判断せよ(写真中に物差しあり)。
②成傷器の性状をできる限り具体的に推測せよ。
③考えられる死因を3つ挙げよ。
(参考)有尖片刃器による損傷で、片方の創端が尖鋭でもう片方が線分状であること、刃の幅や厚みについても
言及しろとのこと。
解答?
(検案書があって)訂正すべきところがあれば訂正せよ。
(参考)SIDS と思しき乳幼児死亡の例。
解答?
H14
次の文章を読んで以下の問いに答えよ
年齢不詳の男性の死体が、名古屋市北区北7条西1丁目「新森山アパート」2階共用廊下で発見された。平成1
4年2月21日午前7時23分現在で、死斑は背側上部、両側腹部、大腻後部に薄い死斑があり、指圧によりわ
ずかに消退する。角膜は軽度混濁し、全身に強度硬直がみられる。
問1)創口の位置と性状を診断し、成傷器を可能な限り具体的に推定せよ。
問2)検案時の死体検案書を作成せよ。
問3)解剖後に作成されると思われる検案書を書け。(解剖日は検案日と同日とする)
解答?
H15
1.
(1)死体現象の法医学的意義について説明しなさい。
(2)早期死体現象について3つとりあげそれについて説明しなさい。
2.鈍器損傷と鋭器損傷について各々3つずつあげてそれぞれについて説明しなさい。
cf.この問題で挫裂傷、刺切傷と答えてはダメだそうです。バラバラは OK!
3.5つの文の中から正しいものもしくは間違っているものについて○をつける問題が5
題出題(結構簡単)。

死体検案書に記載されないものはどれか。

脳死判定基準で誤っているものを選べ。

異常死体として届けなくてはならないものはどれか。

医師法について

死の徴候について
解答
1.
(1)1.死の確徴 2.死後経過時間の推定 3.死因や死亡の種類の判断に役立つ
(2)体温低下、乾燥、血液凝固、死斑、死後硬直など
まとめ参照
2.まとめ参照
3.?
H16
1.晩期死体現象について3つあげ、法医学的に説明せよ。
2.鈍器損傷について 3 つあげ、法医学的に説明せよ。
3-1.死体検案書についての問題
成人男性
小川でうつぶせに倒れているところを発見
角膜混濁は中等度
死斑は死体下面に見られ、指圧により消退しない
強度硬直は全身に及ぶ
表面に目立った外傷はない
鼻翼を圧迫することで鼻腔内から泡沫がでる
3-2.
上記の所見に加えて、剖検所見がいくつか書いてあり

気管内に砂など (泥水も?)

肺の中に血性液が存在
これらから、死因を特定できるか。できるなら死因を答えよ。もし、そのほかの検査が必要なら、必要な検査名
と、その理由。
解答
1.まとめ参照 「死の確認」ということが書いてないと減点 5 割。
2.まとめ参照 鋭器損傷との違い。創洞内の組織の「架橋状残存」について書かないとアウト。
3-1 ?
3-2 正解は 死因は特定できない。(溺死の所見は多くみられるものの)成人が小川でおぼれるということは
考えにくく、薬物中毒を疑わなければならないので、それに対しての検査が必要。
H16 追 試
(1) 早期死体現象とは何か?具体例を3つ挙げて、法医学的に説明せよ。
(2) 鈍器損傷とは何か?具体例を3つ挙げて、法医学的に説明せよ。
(3) 道路に近い小川で男性がうつぶせで死んでいるのが見つかった。死斑はあり、指圧で消褪する。角膜中
程度混濁、などの症状が並ぶ。(ただ溺れただけ、という感じで書かれていた。)
(あ)死体検案書を作成せよ。(必要があれば欄内に斜線を施すこと。)
(下記死亡診断書の(16)死亡の原因の部分だけが出され、空所を埋めるというものでした。)
(い)解剖の結果、明らかな損傷や病変はなく、気管・気管支に砂泥が付着し、左右肺に血性の水があり、肺水
腫が見られた。また、血中エタノールは検出されず、肺内にはプランクトンが見られた。これで死因は確定でき
るか。確定できるなら死因を書き、確定できないなら確定に必要な検査とその理由を書け。
解答
(1)まとめ参照
(2)まとめ参照
(3)これらの所見だけでは溺死と確定することは出来ない。気管、気管支の砂泥の付着は死後に投げ込まれても
発生しないとはいえない。血性の水が肺にあっても溺死の所見とはいえない(多量の胸腔内出血なら溺死を強く
疑う)。肺内のプランクトンは水圧でも侵入しうる。溺死を強く疑わせる所見としては心臓血中の珪藻の存在が
ある、胸腔内の血性液。手に水中のものを握っているなどがある。また他の薬物中毒などを疑うのも重要と思わ
れる。
推定できないばあいは死体検案書には原因不明とするべきである。
H17
問1.スライド問題。計 15 問。スライド1枚(図 or 写真&問題)あたり2分。
2分経過すると、次のスライドに。よって計 30 分(確か、17:30~18:00 まで)。
ちなみにスライドは、全て、授業中に出てきたもの…のはず。
2005/12/07 現在、だいぶ忘れちゃったけど、覚えている分だけ書いておきます。
順不同。問題文は不正確だけど許して。誰か補足プリーズ。
(1)エッセンシャル p.55 の図を見て、(確か)創縁、創端、創底を答える。
(2)歯牙と歯式図を見て、この2つは同一か否かを答える。その理由も答える。
治療痕の不一致とか、歯があるのに歯式図では欠失とかで、違うものだったはず。
(3)写真を見て、溢血点を答える。
(4)写真(顔面がうっ血)を見て、死因を答える。(絞死だっけ?)
(5)写真(タイヤマーク、たぶんエッセンシャル p.89 と同じ)を見て、創傷名を答える。また、それと同じ
受傷機転によって生じる損傷を2つ答える。
(6)写真を見て(接射だったっけ?)この射入口の名称を答えよ。また死因を答えよ。
(7)写真(腐敗網)を見て、この晩期死体現象の名前を答えよ。また、死後どれくらい
で生じるか答えよ。
(8)写真(詳細忘れました…晩期死体現象関係だったはず。)を見て、この現象の名前を答えよ。晩期死体現
象関係の写真は、白骨化か死ろう化だったはず。
(9)写真(肺浮揚試験、たぶんエッセンシャル p.186 と同じ)を見て、この試験の名前を答えよ。また、結果
を答えよ。
(10)写真(二重条痕、たぶんエッセンシャル p.73 と同じ)を見て、この創傷の名前を答えよ。また、これが
生じるような成傷物体を2つ挙げよ。
(11)写真(切創だったっけ?)を見て、この創傷の名前を答えよ。また、これが生じるような成傷物体を2つ
挙げよ。
(12)索痕だか索溝だかを答えさせる問題?
(13)よくわからないけど、心臓まで創傷が達しているっぽい写真が出て、創傷名と死因を答える。心臓の写真
は、心タンポナーデ?
(14)よくわからないけど、頭に創傷がある写真。創傷名を答えよ、だったはず。
(15)親子鑑定の問題(バンドの写真を見て、親子か否かを答える)。
問2.窒息について説明しなさい。
解答
問1
(1)まとめの図参照。
(2)?
(3)?
(4)絞死であれば顔面に鬱血が見られる。一般に頸静脈は圧迫されるが椎骨動脈は圧迫されず頭部に血液の流入
が続くからである。それに対し縊死では椎骨動脈も圧迫されるために生じず、扼殺では椎骨動脈は圧迫されない
が、一般に死亡後にすぐに首の圧迫は解除されるために浮腫は生じにくい。
(5)タイヤマークは体表面にタイヤのトレッドパターンが印象される。一般的にタイヤ
の凸部やショルダーが表皮剥脱として,凹部が皮下出血として印象されやすい。この皮下出血はタイヤ凸部によ
りその下の血管が圧迫され周囲へ血液が押し出され皮下出血を見ることによる。これと同じ機転で発生する損傷
はすりこぎのような鈍器で殴打された際に生じる二重条痕、縊死の際にみられる Zwischenkamm などがあげられ
る。
(6)接射であれば射入口は不整形。近射であれば射入口整形、汚物輪が見られる。遠射であれば射入口整形、汚
物輪は見られない。
(7)腐敗網は皮膚の表在静脈周囲にヘモグロビンや硫化ヘモグロビンが浸潤するために、暗赤色ないし緑青色の
樹枝状血管紋様が肩部、上胸部、下腹部および下枝部の血管の走行に一致すること。死後 2-3 日で見られる。
(8)?
(9)肺浮遊試験は呼吸肺の比重が 1 より小さいのに対し未呼吸肺は比重が 1 より大きいことに基づくものである。
胎児の時点で死んでいたつまり死産か、生まれた後に死んだかを確認する試験である。肺が浮遊すれば呼吸があ
ったことになり、生後に何らかの理由で死んだことになる。但し腐敗があった場合には信頼性が低下する。
(10)(5)参照。すりこぎ、バット、鉄パイプなどにより見られる。
(11)まとめ参照。
(12)頸部圧迫によって生じた索状物の痕跡を索痕、それが溝状に陥没している場合は索溝と呼ばれる。
(13)ショック死?失血死?心臓停止?
(14)頭の創傷であれば鈍器による座裂傷が多いと思われる。支持組織が直下にあるからである。
(15)?
H17 追 試
損傷について以下の点を法医学的に解説せよ。
(1)鋭器損傷(2)鈍器損傷(3)自他為の鑑別
解答
(1)まとめ参照
(2)まとめ参照
(3)まとめ参照
岩 佐 先 生 出 題 分
H13
爆発火災事件に関して、発見された 2 名の男性遺体の所見が書いてあり、
①2 名の死因をそれぞれ述べ、そう判断した理由を加えよ。
(参考)2 名とも全身炭化、1 名は CO-Hb が12%でもう 1 名は42%。前者は火傷死、後者は焼死だそうです。
さらにその 2 名は兄弟とされており、妹だとされる 2 名の血液と合わせて個人識別の経緯が提示されています。
②この 4 名の血縁関係について述べよ。
③親子鑑定や個人識別における、Y-STR やミトコンドリア DNA の有用性について考察せよ。
(参考)提示された情報は 4 人の ABO 血液型とミトコンドリア DNA 型、焼けた2名の男性の Y-STR 型。
解答
①COHb濃度から推測したものと思われる。COHb10%程度では火傷によるショック死、40%程度では CO や酸素欠乏
などの同時競合による焼死、80%程度では CO 中毒による死になるものと思われる。
②?
③?
前 野 先 生 出 題 分
H13
死体所見を読んで死因を推定し、そう判断するにいたった経緯を述べよ。
(参考)顔面に化学熱傷によると思われる手掌2面大の表皮剥脱。解剖所見は脳や肺の水腫、心筋の凝固壊死、
有機溶剤など。
解答
シンナー中毒により呼吸中枢が抑制されたことにより死亡したと思われる。
顔面の化学熱傷はシンナーの皮膚粘膜刺激作用によるもの
解剖所見として急死のトリアスが見られている。
心筋の凝固壊死はシンナー中毒に見られる所見。
有機溶剤はシンナーそのもの。
①乱用薬物に関して、精神的依存・身体的依存・耐性を全てもつ薬剤の組み合わせを選べ。
②薬物の性質に関して誤った記述があれば記号を選択せよ。
(参考)教科書の表なんかを参考にすれば大丈夫。
解答
①モルヒネ
②?
H14
問1.火災現場でA、B2人の死体が見つかる。
Aは全身に第1度~3度の熱傷があり、頭部と足部に一部4度の熱傷が見られた。気道内には媒片が見られ、
心臓内血液は鮮紅色流動血。死斑も鮮紅色。血中COHb80%、エタノール0.5mg/dlであった。
Bは全身に第4度の熱傷。気道内には多量の媒片。頭蓋内硬膜外に凝血が見られ、心臓内血液は流動性。血
中COHb40%、エタノール1.2mg/dlであった。
1)A,Bの死因を推定せよ。
2)火災時に発生するガス体の中毒機序を説明せよ。
問2.自分の家の納屋で死んでいるのを家族が発見した。口腔内に飛沫、瞳孔0.2cm、臓器のうっ血、肺は
水腫状、心臓内血液流動性、気道内の泡沫性の粘液、血中ChE活性低値であった。
1)死因を推定せよ。
2)その作用機序を説明せよ。
解答
問 1.
1)
A は B と比べて全体的に火傷の程度が軽い。
気道内に煤煙が見られた、これは火災時に呼吸を行っていたことを示している。
心臓内血液は鮮紅色流動血、CO の濃度が高く、また急死の所見である。
死斑の鮮紅色は CO 中毒を強く示唆している。
HbCO が 80%であり CO 中毒による死亡がおこる濃度である。
エタノール濃度は日本酒一合程度の飲酒量であり、急性アルコール中毒は考えがたい。
以上のことから A の死因は CO 中毒によるものと推測される。
B は全体的に火傷の程度が重い。
気道内に煤煙が見られた、これは火災時に呼吸を行っていたことを示している。
頭蓋内硬膜外に見られた凝結は燃焼血腫と呼ばれ熱の強く加わった側に生じる硬膜外血腫である。
流動性血液は急死の所見。
COHbは 40%であり一酸化炭素中毒による死としては低いと思われる。
エタノール濃度は死を惹起するほどの高濃度ではない。
以上から焼死と推測する。
2)火災により発生するガスとしては一酸化炭素が主なものである。機序は他の問題参照。
問 2.
1)急死のトリアスが存在しており他に瞳孔の縮小、コリンエステラーゼ活性が低値、また納屋という場所から推
測するに、有機リン系の農薬あるいはカルバメート剤による中毒死と考えられる。
2)
有機リン剤
有機リン剤は AChE の活性中心であるセリンの水酸基残基と強く結合し,AChE の活性を失わせる。これにより神
経接合部でのアセチルコリンの濃度が上昇し 副交感神経刺激症状、交感神経刺激症状 、汗腺刺激症状、中枢神
経刺激症状、神経行動毒性を生じる。最も多い死因は呼吸中枢の麻痺によるものと考えられている。なお治療薬
として PAM を用いるが、時間が経ってからでは効果がない。
カルバメート剤
作用機序は活性中心をカルバモイル化することによる。中毒機序は有機リンと同じ。治療に PAM を用いると無効
どころか却って別の有毒物質を発生させてしまうとされる。
副交感神経刺激症状=縮瞳、流涎、流涙、気道の分泌昂進、消化管の蠕動昂進による嘔吐、下痢、便失禁、尿失
禁、急性膵炎、徐脈、低血圧、
交感神経刺激症状=頻脈、高血圧、蒼白、高血糖、尿糖、体温上昇(低下)、汗腺を支配する交感神経の刺激症状
=発汗
中枢神経刺激症状=不安、興奮、不眠、情緒不安定、言語不明瞭、筋肉のれん縮、意識レベル低下、昏睡、ケイ
レン、
神経行動毒性=抑鬱、記憶障害、焦燥感、感情鈍磨、集中力欠如、持続力欠如、悪夢、分裂性反応、妄想、幻聴、
無関心、攻撃性、
H15
1.
(1)CO 中毒の作用機序について2つあげ、その概要を述べなさい。
(2)急性 CO 中毒死の特徴的な所見について3つ以上述べなさい。
(3)間欠性 CO 中毒について述べなさい。
2.
(1)有機リン酸系農薬とカルバモイル系農薬の作用機序について述べ、その違う点に
ついて述べなさい。
(2)治療における 2-PAM の効果をそれぞれについて述べなさい。
3.
(1)Drug Abuse について説明しなさい。
(2)上記の具体例を2つあげ、その解剖所見及び検査について述べなさい。
解答
1.
(1)他の問題参照
(2)他の問題参照
(3)間欠性 CO 中毒とは急性期の症状から回復し一度意識を回復した後に、数日から 10 数日の無症状ないし症状
軽快期を経て急性または徐々に意識混濁、錯乱など重篤な精神神経障害が再び出現、死亡や再回復の経過をたど
る。CO 中毒では安易に予後の楽観ができない所以とされる。
2.
(1)有機リンでは AChE 活性中心のセリンの水酸基をリン酸化することにより活性を消失させる。非常にゆっくり
とだが加水分解により、活性は復活する。リン酸化反応から時間を経ると aging がおこりリン酸基が脱アルキル
化し非常に安定になる。この反応は不可逆である。カルバモイルでは AChE の活性中心をカルバモイル化するこ
とにより活性を消失させる。活性阻害作用は強いがカルバモイル基は加水分解されやすいため却って有機リンよ
りも活性の回復は早い。
(2)有機リン中毒における PAM(pyridine aldoxime methiodide)の働きはリン酸化された AChE のリン酸基に結合
しリン酸基を遊離させることにより活性を回復させる。有機リン剤の根本的治療として行われている。一方カル
バモイルでは活性中心に結合しているのはカルバモイル基であり PAM は無効である。それどころか PAM とカルバ
モイル系薬剤が結合すると別の有毒物質を作るとされている。
3.
(1)薬物乱用の定義は
①
医薬品を医療目的からはずれて使用すること。
②
医療目的のない薬物を不正に使用すること。
とされる、精神的あるいは肉体的な生じることから使用を続けているうちに耐性が生じ、使用量が増加し重篤な
副作用がおこる。また薬物を手に入れるために犯罪を犯すことがあり、社会問題となっている。
(2)乱用薬物の例としてアヘン、モルヒネ、ヘロイン、バルビツール酸誘導体、有機溶剤、コカイン、覚せい剤、
大麻、LSD などがあげられる。
ヘロイン
剖検所見:急死のトリアス、高度な急性肺水腫、腎障害
検査方法:フェノール性水酸期がアセチル化されているので加水分解後にモルヒネと同様の呈色反応を示す。生
体内ではアセチル基が速やかに加水分解されるため尿中にグルクロン酸抱合の形で排出される。
フレーデ試薬、メッケ試薬、オリバー反応、ヨウ素酸反応などで呈色する。
バルビツール酸
剖検所見:急死のトリアス、肺水腫
検出方法:ミロン試薬による白色沈殿、硝酸コバルト反応、銅ピリジン反応、バイルシュタイン銅線反応
H16
1.日本で最も多い中毒の原因は何か?
その機序を2つ書け
その剖検所見を5つ書け
2.パラコート中毒の作用機序と治療における注意点。
3.身体依存と精神依存を共に持つ薬物は?耐性も。選択肢は LSD、コカイン、アンフェタミン、モルヒネ、大
麻、トルエンの6つ
4.麻薬および向精神薬取締法についての問題。麻薬中毒と思われる患者を診察したときに診察した医師の義務
はどのようなものがあるか?
5.薬物中毒死の死体から
・どのような検体が採取できるか?
・その保存方法は?
・どんな検査機器があるか?
解答
1.最も多いのは CO 中毒
中毒の機序として

HbCO の形成による窒息

ヘモグロビンの解離曲線を左にシフト(末梢神経での酸素量が減尐)

ミトコンドリア機能を阻害

虚血からの回復時にラジカルが発生し組織障害
死体の所見として

流動血、脳浮腫、点状出血(急死のトリアス)

鮮紅色(時にはまぶしいくらいに鮮やか)

脳の白質の脱髄

心筋や肝の脂肪変性
2.パラコートは除草薬として広く用いられている。自殺企図をもってパラコートを飲む例が多発し、現在では濃
度を下げダイコートと混ぜて使用されている。
毒性の機序としては NADPH-シトクローム C レダクターゼによりパラコートが還元されラジカルとなり、酸素を
スーパーオキシドに変化させる。さらにこれが 1 重項酸素や水酸ラジカルを発生させ、これらのラジカルが細胞
膜脂質を過酸化させることにより細胞毒性が生じる。またミトコンドリアの機能と構造を破壊して細胞壊死に至
るとも考えられている。
治療の大切な大切な点は迅速さと徹底さである。いかに早く腸管内に残存するパラコートを体外に出すか、また
血中・組織中に吸収されたパラコートをいかに早く血中から取り出すか、の二点がもっとも重要なポイントであ
る。最も注意するべきことは酸素投与が絶対禁忌であるという点である。上のような作用機序であるため、酸素
の投与はラジカルの量を増すことになる。
3.まとめの表参照
身体と精神両方に依存性を持つのはモルヒネ、アルコール・バルビツール酸塩。さらに耐性ももつのはモルヒネ。
4.麻薬中毒者の警察への通報は法令で規定されていない。麻薬及び向精神薬取締法第 58 条 2 による規程は知事
への届出。従来は刑法第 134 条、医師の守秘義務違反に抵触するおそれがあったが、平成 17 年7月 19 日の最高
裁判決で「治療や検査中に違法薬物を検出した場合、これを捜査機関に通報するのは正当。守秘義務に違反しな
い」との初判断が示された)。しかし治療を行っていく上で捜査機関に通報して信頼感を損ねることには疑問を
感じる。
5.
採取できるもの:血液(心臓内血、大腻動静脈血)、尿、胃内容物、諸臓器、脂肪組織(毒物の種類によっては
非常に移行し易い)、脳脊髄液、毛髪、爪、骨、眼房水
保存方法:経時的変化を防ぐために-70℃で保存
検査機器:ガスクロマトグラフィー、HPLC、マススペクトル
H16 追 試
(1) 中毒死亡した体内には鮮紅色血液となる、わが国で最も死亡事例の多い中毒の原因物質を挙げよ。また、
その物質が中毒を起こす機序を説明せよ。
(2) 有機リン剤中毒の機序を述べよ。また、特徴的な中毒所見を記せ。中毒になった場合の治療方法も述べ
よ。
(3) 次の6つの薬物のうち、身体的依存性、精神的依存性、耐性を持つものはどれか?
アンフェタミン
LSD
モルヒネ
コカイン
大麻
トルエン
解答
(1)最も多いのは CO 中毒
中毒の機序として

HbCO の形成による窒息

ヘモグロビンの解離曲線を左にシフト(末梢神経での酸素量が減尐)

ミトコンドリア機能を阻害

虚血からの回復時にラジカルが発生し組織障害
死体の所見として

流動血、脳浮腫、点状出血(急死のトリアス)

鮮紅色(時にはまぶしいくらいに鮮やか)

脳の白質の脱髄

心筋や肝の脂肪変性
(2)有機リン剤は AChE の活性中心であるセリンの水酸基残基と強く結合し,AChE の活性を失わせる。これにより
神経接合部でのアセチルコリンの濃度が上昇し 副交感神経刺激症状、交感神経刺激症状 、汗腺刺激症状、中枢
神経刺激症状、神経行動毒性を生じる。最も多い死因は呼吸中枢の麻痺によるものと考えられている。
副交感神経刺激症状=縮瞳、流涎、流涙、気道の分泌昂進、消化管の蠕動昂進による嘔吐、下痢、便失禁、尿失
禁、急性膵炎、徐脈、低血圧、
交感神経刺激症状=頻脈、高血圧、蒼白、高血糖、尿糖、体温上昇(低下)、汗腺を支配する交感神経の刺激症状
=発汗
中枢神経刺激症状=不安、興奮、不眠、情緒不安定、言語不明瞭、筋肉のれん縮、意識レベル低下、昏睡、ケイ
レン、
神経行動毒性=抑鬱、記憶障害、焦燥感、感情鈍磨、集中力欠如、持続力欠如、悪夢、分裂性反応、妄想、幻聴、
無関心、攻撃性、
(3)全てを持つのはモルヒネ まとめの表参照
H17
問1.死斑が鮮紅色調を呈する死因をできるだけ挙げよ。またその中で、薬物中毒による
ものについて、中毒作用機序および死体所見を述べよ。
問2.覚醒剤の薬理作用について説明せよ。また、覚醒剤の中毒症状を3つ挙げよ。
解答
問 1.
死斑が鮮紅色を示す理由としては以下の 3 つが考えられる。
1.一酸化炭素中毒
中毒の機序として

HbCO の形成による窒息

ヘモグロビンの解離曲線を左にシフト(末梢神経での酸素量が減尐)

ミトコンドリア機能を阻害

虚血からの回復時にラジカルが発生し組織障害
死体の所見として

流動血、脳浮腫、点状出血(急死のトリアス)

鮮紅色(時にはまぶしいくらいに鮮やか)

脳の白質の脱髄

心筋や肝の脂肪変性
2.青酸中毒
中毒の機序として

シトクロムオキシダーゼの活性阻害(酵素毒)

細胞内の酸化還元機能を喪失させる(実質毒)

多量により呼吸麻痺をおこす(呼吸毒)

中枢神経を興奮後直ちに麻痺(神経毒)

心臓の収縮作用を麻痺させる(心臓毒)

ヘモグロビンと結合し変性させる(血液毒)

強アルカリにより腐食させる(腐食毒)
死体所見として

急死のトリアス

アーモンド臭

実際は CO より尐量で死亡するためそれほど鮮紅色ではない
3.死体が冷所におかれていた場合
この場合死体が鮮紅色を示す理由は、冷所におかれていたことにより酸素のヘモグロビンからの解離が抑制され
た。酸素が皮膚を通過してヘモグロビンと結合したなどが考えられている。
問 2.
H17 追 試
問1 中毒死を引き起こす有毒ガスのうち主要なものを 3 つ以上挙げ、そのうち 1 つにつ
いて中毒の作用機序、中毒死の根拠となる解剖所見を書け。
問2 有機リン剤について作用機序、死亡症例での解剖所見、検査所見を書け。
問3 Drug Abuse について、(1)定義(2)なぜ社会的問題になるのかを書け。
解答
問1
主なものとして CO、青酸、硫化水素
CO と青酸は他の解答参照
硫化水素中毒
中毒作用
呼吸器粘膜より吸収→チオ硫酸塩、硫化物として尿中に
メトHbと結合してSHb形成
多量になると、Cytochrome Oxdaseの活性阻害
頸動脈小体の刺激作用で反射的な窒息
解剖所見
急死の所見+死斑(帯緑暗赤褐色:SHb・SメトHbの色ではない、大脳皮質に及ぶ)、肺水腫、腐卵様臭
検査
肺からの硫化水素の検出(但し、沸点が低いので普通の温度においておくとすぐ検出できなくなる )
チオ硫酸塩の証明
問2
有機リン剤は AChE の活性中心であるセリンの水酸基残基と強く結合し,AChE の活性を失わせる。これにより神
経接合部でのアセチルコリンの濃度が上昇し 副交感神経刺激症状、交感神経刺激症状 、汗腺刺激症状、中枢神
経刺激症状、神経行動毒性を生じる。最も多い死因は呼吸中枢の麻痺によるものと考えられている。
解剖所見として口腔内に飛沫、瞳孔の縮小、臓器のうっ血、肺は水腫状、心臓内血液流動性、気道内の泡沫性の
粘液などが見られる。
検査所見としては血清アセチルコリンエステラーゼの活性の低下が見られる。また TLCG、GC により検出される。
問3
(1)薬物乱用の定義は
①
医薬品を医療目的からはずれて使用すること。
②
医療目的のない薬物を不正に使用すること。
と定義される。
①の具体的なものとして、
覚せい剤(昏睡、うつ病などの改善薬)、モルヒネ(鎮痛薬)、コカイン(表面麻酔薬)など。( )内は医療
目的。
②の具体的なものとして、
有機溶剤(ペンキなどの薄め液)、大麻(繊維採取、種子は食用)、ヘロイン(特に利用される用途なし。モル
ヒネを化学合成して製造)などが。( )内は、本来の使用目的です。
(2)薬物乱用者の依存性や副作用が乱用者個人に障害をあたえ、また薬物を手に入れるために犯罪(強盗、殺人
など)を惹き起こす可能性がある。さらには乱用者が新たに乱用者を生み、最近では小学生にまで乱用者の範囲
が広がっており深刻な社会問題となっている。なお国連により「国連薬物乱用根絶宣言(1998 年~2008 年)」
が出されている。
小 山 先 生 出 題 分
H14
血液試料の個人識別手段に対して、法医学的有用性と関連させながら述べよ。
解答
H16 参照
H15
唾液の吸収試験について(1)原理と方法(2)得られる結果の意味を説明しなさい。
解答
(1)唾液の吸収試験とは唾液中に血液型物質が分泌されいるかを確認するために行われる試験である。原理とし
ては和紙を口に入れ、唾液を吸収させ、その和紙に抗 A 血清または抗 B 血清にいれる。もし唾液中に型物質が存
在していれば、抗体は和紙に吸着される。吸着させた後に和紙を取り除き、血清を 2 倍の希釈系列を作って希釈
し、A 型血球または B 型血球を加え凝集を確認する。
(2)凝集が見られなければ、抗体が存在しないことになり、和紙に吸着された、つまり唾液中にその型物質が分
泌されていたことになる。もし一つでも凝集が見られなければその凝集されなかった型物質が分泌されているこ
とになる。つまり遺伝子型は SeSe か Sese となる。両方とも凝集した場合には唾液中に型物質がないことになり
遺伝子型は sese となる。
H16
身元詐称男性がアパートの一室から変死体で発見された。死因の究明のために解剖が行われ、以下の検体が採取
された。また、この部屋からタバコの吸殻が発見された。

この男性の血液

この男性の毛髪(毛根がついている)

タバコの吸殻(フィルターに噛んだ跡がある)
以上のものから何がわかるか?検査の概要とあわせて答えよ。
解答
この問題としては身元詐称という部分に何か意味があるように思われる。つまり本人であることを確証させる何
かを示すべきではないだろうか。

血液
血液型検査
一般的に行われる検体赤血球をもちいて、抗血清を加えることにより凝集を観察する試験がある。これは ABO、
MN 型の判定に用いる。
またブロメリンを用いることにより赤血球表面のゼータ電位を下げ Lewis 式の判定を行うことができる。
血清型・酵素型検査
ハプトグロビン、トランスフェリン、PI、ITI などの多型が電気泳動法を用いて移動度の違いとして検出される。
免疫グロブリンアロタイプは血球凝集阻止反応などの免疫学的方法で識別される。
白血球抗原検査
血清学的検査法と DNA タイピングで行うことができる。
DNA 型検査
DNA フィンガープリント
1個のマルチローカスプローブで多種の VNTR を同時に検出する方法。理論的に保証がない、各人固有であるた
めデータベースのとりようがない、プローブが相同配列も認識するために洗浄法によっては結果が異なってくる、
などの
問題点がある。
VNTR(ミニサテライト)
シングルローカスプローブを用いて一箇所のサテライトを検出。DNA フィンガープリントの欠点を克服したが、
増幅すべき配列が長いため古くなった試料では DNA が分解されている可能性が高く、信頼性が低下する。
STR(マイクロサテライト)
VNTR より短い繰り返し配列を検出する。古い試料でも比較的検出しやすい。
性別判定
キナクリン染色を行うことにより Y 染色体由来の蛍光小体の出現を持って男性と確認することができる

毛髪
毛髪の太さを測定、白髪かどうかの確認によりある程度の年齢を知ることができる。髪の太さは加齢に伴って太
くなり、ほぼ15歳くらいで一定になる。
また毛根が残っているので付着部の細胞をキナクリン染色を行うことにより Y 染色体由来の蛍光小体の出現を
持って男性と確認することができる。また毛根部が付着しているので DNA 検査を行うことが可能である。毛幹部
や脱落毛ではミトコンドリア DNA の分析以外は行えない。
毛髪からは解離法により ABO 式血液型の判定が可能であり、毛根部の毛胞部分が付着している場合には PGM、PGD
の判定ができる。

タバコの吸殻
タバコの吸殻からは唾液が採取できる。この男性が SeSe または Sese の遺伝子型を持っているとすれば唾液中に
型物質が分泌されており、唾液吸収試験で葉凝集が見られないかもしれない。またフィルターにつ歯形がついて
いれば、その男性と照合することにより、あるいは歯科治療の履歴が残っていればそれと照合することにより、
被害者男性が吸っていたかどうか、被害者男性の身元はどうかなどを確認できる。
また唾液中に含まれている細胞からの DNA 抽出も可能かもしれない。抽出できた場合 DNA 型の検査が行える。
H16 追 試
(1)~(3)について、個人識別の情報において分かることを検査の概略とともに述べよ。
(1)血液
(2)毛根
(3)唾液
解答
(1)血液
(2)毛根
毛髪は容易に脱落あるいは除去され、犯行現場に残されたり、成傷器などに付着することが多いので、再証学上
重要な検査対象である。
中でも毛根が付着していれば以下のような事が推定できる。
1.性別
2.本人鑑定
(3)唾液
唾液には血液型物質が含まれている事があり、それらの確認を行うことにより遺伝子型の推定が行える。また唾
液中にふくまれる細胞から DNA を採取し DNA 鑑定を行うことも出来る。